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正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[漫画]2013年上半期の読書感想まとめ

2013年上半期の読書感想系更新のリスト。もう半分終わっちゃったのか2013年…。
上半期が終わったので1月~6月分の更新をまとめました。いちおう恒例です。

更新数は79でした。以下、高評価なものから順に行きます。




★★★★★

世界を救うハードボイルド小学生漫画、復活ッ!『新装版 真・女神転生 デビルチルドレン』1巻
嘘と生きていく、弱く惨めなぼくらの『ブラパ THE BLACK PARADE』

最高点が2作。
「ブラパ」は7月に入ってからの更新ですが、この更新にねじ込むためにやったので例外的に上半期ということに…。

「新装版 真・女神転生デビルチルドレン」は発売されたことが大ニュース。
記事の方でたっぷり語っていますが本当に思い入れある作品。幼いころに気に入っていた漫画やアニメってその後の趣味に結構な影響を及ぼすとは思いますが、自分はまさしくこれに…。このエネルギーには今読んでも圧倒される!
児童漫画とは思えぬバイオレンス。クサいセリフを吐きながら、鮮血を浴びながら、ハードボイルドに小学生たちが戦争を生き抜く。この問答無用の格好良さ、不滅!!

「ブラパ THE BLACK PARADE」は思春期の闇と毒とかすかな光を描いた、臆病な2人の切実な物語。残念ながら打ち切りとなってしまった作品ではありますが、すさまじい緊張感に包まれた物語終盤と、迎えた素敵なエンディング。この展開の仕方に拍手を送るしか無い。
あまりに痛く、青く、心にネットリと絡みつくような悪意と淡い祝福を味わえる作品。
デビチルは新装版発売記念で★5つにした部分もありますので、実質この作品が2013年の「正直どうでもいい」のトップかも。






★★★★☆

途方に暮れるほど君が好き。『ディアティア2 マイディア』
今日もうまくいかなかった。今日も空が灰色だった。『空が灰色だから』5巻
青の時間は汚れあって消えていく。『うみべの女の子』2巻
終末のそばに儚い日常はある。『花と奥たん』2巻
痛いほど本能で踊って!『ボールルームへようこそ』4巻

それでも歩もう。だから手をつなごう。『朝霧の巫女』9巻
めんまは、やっぱり笑った。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』漫画版3巻
淡い日に僕らは揺れた。『BUTTER!!!』6巻
ひとりのオタクのひとつの終着点。『げんしけん』14巻(二代目の伍)

9冊。
「ディアティア2 マイディア」はすごく楽しく書けた更新。幸せすぎるイチャイチャ漫画。
「空が灰色だから」は完結巻もブレず安定の灰色っぷり。いろんな方向に心を揺さぶってくるショートショート漫画の傑作だったと思います。全5巻という尺でまとまったのもいい。
「うみべの女の子」はジクジク、ジメジメと精神攻撃を仕掛けてくる汚れた青春漫画。なんとも刹那的で、目をそらしたくなるような生々しさが鋭く突き刺さる。
「花と奥たん」2巻はひさーーしぶりのコミックス。もっと掲載ペース早くしてくれないとさぁ…!いや「雪にツバサ」も読んでるけどさ…!やっぱこの「花と奥たん」超面白いからさ!!
「ボールルームへようこそ」はいま特に勢いが出てきている漫画のひとつだと思う。この熱気!吹き飛ばされそうなド迫力!丹念な心理描写!4巻はまさに最高潮と言える。
「朝霧の巫女」はよくぞ完結巻が出てくれた…。深い感謝と感動が得られた一冊です。
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」のコミカライズは全編通して本当に出来が良かった!ストーリーは言わずもがな、巧みな演出や微妙な改変など「漫画版ならでは」といえる要素がとても魅力的でした。
「BUTTER!!!」最後まで熱中していた青春競技ダンス漫画の完結巻。最後まで、「コイツらかわいすぎるだろうが!!」と半ギレで読んでいたような感じですらある。青春とは試練だらけだね。
「げんしけん」は…うん。みんな斑目さんが大好きなんです。そういうことです。ある意味ではこれが本当の初代げんしけんのラストシーン。あの青春の日々に、いまひとつの決着を出す。
二代目のアニメも始まりますね。こちらも楽しみです。






★★★★

粉のように飛び出す、せつないときめきです『ラストゲーム』3巻
想いはつながりきっと実を結ぶ『1/11 じゅういちぶんのいち』5巻
あなたもきっと心ざわめく。『空が灰色だから』4巻
背筋ゾクゾク、脳はクラクラ、阿部共実の多彩なカオス『大好きが虫はタダシくんの 阿部共実作品集』
本気で吠えて本気で悔しがる、これぞ青春!『銀の匙 Silver Spoon』6巻

甘く痺れて逃げられない、貴女から。『沼、暗闇、夜の森』
もう一度君を助ける!『有線少女~plugーin girl~』1巻
和服少女とカヒーの香りと潮風と。『ちろり』3巻
かわいいお姉さんと愛し合う、なんと素晴らしいことか『ふたりの恋愛書架』1巻
この想いよ君に響け!『悪戯ちょうちょ』2巻

モンスター“だからこそ”かわいいのだッ!『モンスター娘のいる日常』2巻
間違えても、精一杯の恋でした。『屋上姫』4巻
いつから好きになったかなんて知らないけれど。『恋愛ディストーション』7巻
ここが百合ちゅっちゅパラダイスか……!!『桜Trick』 2巻
ショートショートの面白さを堪能できる、これぞアイデアの泉。『ひきだしにテラリウム』

本能ゆさぶるイチャラブフェチエロ放課後!『放課後プレイ High Heels』
アツアツしっとり、イチャラブ連打にノックダウン。『あまあま2』
爆裂!猟奇!搾精!なんでもアリの破天荒学園ウォーズ!『戦闘破壊学園ダンゲロス』3巻
さぁ、私達の恋を始めましょう。『名前はまだ無い』
あの超カオスなアマガミが帰ってきたぞ!『あまがみっ!SS+plus』

失敗しても、また跳べるよ。『銀の匙 Silver Spoon』7巻
悩んで悔やんで喜んで、心震わせて。『14歳の恋』3巻
もっと知りたい…女の子の秘密。『思春期のアイアンメイデン』1巻
祝福を鳴らすのさ。『ハレルヤオーバードライブ!』9巻
微熱のまま触れあって歌いあって『17歳℃』

ずっとイチャイチャしてればいいよ!『琴浦さん』5巻
寂しさだって賑やかさに塗りかえられて『僕らはみんな河合荘』4巻
怯える幽霊と忘れられない華の影。『惡の華』8巻
物語に惹きこまれっぱなし!運命を変えるSFサスペンス『僕だけがいない街』2巻
激闘で光るメンタルモデルの人間味。『蒼き鋼のアルペジオ』7巻

避けられぬ衝突!戦争への加速!『ブレイクブレイド』12巻
この血塗れた手は、世界を変える覚悟だ。『新装版 真・女神転生デビルチルドレン』2巻
ギリギリなネタ満載!出版社の擬人化マンガ『飯田橋のふたばちゃん』1巻

33冊。
「ラストゲーム」はなんなのお前らと突っ込みたくなる少女漫画。もどかしくて可愛らしくて…。柳くんがカッコよさげなことをするたび笑えてくる謎の面白さも出て来ましたw
「大好きが虫はタダシくんの 阿部共実作品集」トラウマ生産機である著者の中でも、だいぶ悪質な作品を納めています。柔らかな作品もあってバランス良好な1冊。
「ふたりの恋愛書架」は大人女性と学生男子の歳の差ラブが甘酸っぱいことこの上なし。散々のろけやがってこのヤロウ!爽やかさの中にインモラルな色気も潜む。
「悪戯ちょうちょ」疾走する思春期のロマンチック・ミュージック。熱気をたっぷり孕んだ音楽漫画としても、不安定な時期に輝ける女の子同士の禁断の感情。胸打つ鼓動が鳴り止まない!
「桜Trick」まさかのハイスピードでアニメ化が決定して百合ちゅっちゅ4コマ決定版!(と言いつつ4コマの読書量はとても少ない)とりあえず百合好きは読んで脳みそとろけろ!
「ひきだしにテラリウム」はまるでおもちゃ箱のように様々なショートショートを詰め込んだ、著者らしい遊び心あふれる一冊。
「あまあま2」こちらも大好物の全力投球イチャラブ漫画。第2巻は「学生のこの時期だからこそできる恋愛」という感触がいっぱい。ちくしょう!ちくしょう!
「戦闘破壊学園ダンゲロス」は超ハイテンションで爆走するスクール・ウォーズ。情け容赦のないぶっ飛びバトルの連続に震える!根っこは王道少年漫画だなぁ。
「ハレルヤオーバードライブ!」は次なる大盛り上がりに向けて確実にエンジン温め、今か今かと爆発の時を待つ。ワクワクが止まらないなぁ!音楽の魔法は恋でもっと色彩鮮やかに。
「17歳℃」は思春期を純粋をこじらせていく少年少女のドラマ。このメロディアスな爽快感、こっぱずかしい青春の暴走と迷走…!期待の作家さんです。
「惡の華」アニメも放送終了しましたが原作は高校編を着実に進めていく。不気味なくらい穏やかな日々の中やってくる佐伯ショック!静けさが不安を掻き立てられる作品。
「僕だけがいない街」はメチャクチャ続きが気になるSFサスペンス漫画。しまったなぁ…完結してから出会っておくんだった…まぁこれをリアルタイムで追う楽しみもあるかw
「飯田橋のふたばちゃん」ギリギリどころかアウトじゃんコレってネタを連発する出版社擬人化キレキレ4コマ。可愛い外見ですがたっぷり効かせたブラックジョークに冷や汗かく…。






★★★☆

クール・クーラー・クーレスト!スタイリッシュ学園コメディ『坂本ですが?』1巻
トラウマに立ち向かうループ・ミステリー『僕だけがいない街』1巻
世界が君で光った。『花と落雷』1巻
単眼少女のおっきな眼かわいいよ!『真子さんとハチスカくん。』1巻
ド淫乱オナニストの幼馴染に求められすぎて困る『君は淫らな僕の女王』

気持ち以外は、君のもの。『クズの本懐』1巻
かわいい妹ができました。『琴浦さん』4巻
見えない=楽しい?カノジョとのほっこり同居生活『のぼさんとカノジョ?』1巻
元気になれるわちゃわちゃ賑やかラブコメ!『恋愛暴君』1巻
八幡の腐った目もゆきのんの照れ顔もナイスなコミカライズ!『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。-妄言録-』1巻

むすんでひらいて君との物語。『むすんでひらいて』7巻
ブラックでサイケ。精神が病みそうな濃厚ダークファンタジー『世界鬼』1,2巻
DECO*27アルバム完全漫画化。爽やかすぎる青春模様!『ラブカレンダー』上巻
天然少女に和み癒され温まる。『あまねあたためる』1巻
今日もふんわり、大切な時間を重ねていこう。『喰う寝るふたり住むふたり』2巻

ますます賑やか!これは純愛ですよ?『恋愛暴君』2巻
深く息をして、僕らは悲しい恋をする。 『ばらのすべて』
炎の悲劇!燃やされても君のそばに。『春の包帯少女』1巻
俺と彼女は、友達にはなれっこなかった。『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。@comic』1巻
心に青さとみずうみを。『あおくて堅い』
剥き出しなシビア&爽やか青春劇『中卒労働者から始める高校生活』1巻

21冊。
「坂本ですが?」特別な露出もなくどうやらバカ売れ中らしいシュールギャグ漫画。さァッすが坂本くんだぜ。サクッと読めて嫌味のない笑いを届けてくれます。
「君は淫らな僕の女王」暴力的なほどの直球エロスを炸裂させた作品。何度読んでもニッコリできる、素晴らしいエロコメですね。清楚なあの子が淫語連呼で求めてくるという、まぁロマンです。
「恋愛暴君」はなんというか、サンデーの賑やかなラブコメを思わせる上質なドタバタ劇。むちゃくちゃやっているようで時にしっとりと読者を包み込むメッセージ性に危うく騙される。
「世界鬼」残酷すぎる世界が戦う少女の物語。だいぶ陰惨。でも2巻収録分から加速的に面白くなってきた!ダークで破滅的。読んでると心に闇が広げ、そして強烈な感情の波を呼び起こす作品。ああ…目が離せない…!
「喰う寝るふたり住むふたり」は2巻目にして安定感バツグンの恋愛漫画。男女別に視点を切り替えて日々を見つめていく構成は、ときに男女のすれちがいでもどかしく、ときに心の結びつきに胸をほっこりさせてくれます。
「春の包帯少女」は期待の1巻。まだまだ謎だらけです胸を締め付ける切ない設定と、スリリングな展開を予感させる序章の完成度は高いです。見守って行きたい。
「ばらのすべて」「あおくて堅い」リリカル切ないポエムBLを紡ぐ山田酉子先生の単行本が2冊出たのも嬉しかった。どちらも胸に降り積もる、鋭く甘い言葉に彩られていました。
「中卒労働者から始める高校生活」はリアル身分差ラブコメ。主人公の戦う姿勢が格好いいですし、ビタースイートな内容もグッとくる。揺さぶられる漫画です。





その他
「2013年上半期の読書感想まとめ」といっておきながら読書感想じゃないやつが多い!

「ラブライブ!」系
アニメからハマった勢いでラブライブ!ベスト盤全曲感想
ラブライブ!3rdライブのLVに参加してきたよ
アニメから入ってラブライブにどっぷり浸かった半年でした。
3rdライブ、神がかり的に楽しかったです。

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」系
独りの英雄は、ステージの輝きを浴びられない。『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』6巻
それでも彼らは当たり前の嘘をつく。『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』7巻
雪ノ下雪乃の内面を描く、アニメ俺ガイルOP『ユキトキ』
明るいと思いきや……隠し切れない心の傷。『Hello Alone』
前から応援していた「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」がいよいよアニメ化。いろいろとメディア展開があったので、追える範囲で追っています。
原作は引き続き読んでいくとして、今度ゲームも発売しますね。Vita持ってないけど…。

この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ。『虚ノ少女』
PCゲーム「虚ノ少女」、2013年を代表する一本では。
なおPCゲームは今年いまのところコレしかプレイしてません!抜きゲー体験版はやってる。

王道RPG的、剣と魔法とハーレム(願望)の物語。『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』1.2巻
ラノベ感想。ダン待ち、感想書きそびれましたけど3巻でググッと盛り上がって来ましたね。

大学生が読んでおきたい10の大学生漫画
更新する本が切れたので時期的に合ったテーマを考えて作品ピックアップ系にチャレンジしてみるも、うまくまとめられず文章はかさみ、いつも以上に時間かかりまくった。楽しかったけどこういう形式の更新はなかなかやれないですね…。

『ブレイクブレイド』中吊り広告について
『ブレイクブレイド』中吊り広告について(3月)
『ブレイクブレイド』中吊り広告について(4月)
この件は本当にビックリ。いい思い出になりました。

胸の鐘の音を鳴らしてよ。『アオハル』0.99号
アオハルはいいかげん定期発売してくれないでしょうかね。季刊ペースとかでいいんだけど。
とは言えポッと現れる感じがアオハルらしさとして確立しつつあるかも。

最高級の、雨ふる楽園の物語。『言の葉の庭』感想
新海誠監督の最新作。BDで繰り返し見てます。雪野さんは新海作品最強ヒロインかも。




下半期はどうなるかなぁ。たぶん減ります(リアルで諸々)が…適度にやれたらと。
それでは2013年のこりもよろしくです。
 

[漫画]嘘と生きていく、弱く惨めなぼくらの『ブラパ THE BLACK PARADE』

ブラパ THE BLACK PARADE(1) (ヤングガンガンコミックス)ブラパ THE BLACK PARADE(1) (ヤングガンガンコミックス)
(2012/04/25)
緑のルーペ、フジワラ キリヲ 他

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ブラパ THE BLACK PARADE(2)(完) (ヤングガンガンコミックス)ブラパ THE BLACK PARADE(2)(完) (ヤングガンガンコミックス)
(2013/04/25)
緑のルーペ

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   人間はいくら強がったところで 本当は弱いままだから

久しぶりに脳をガツンと殴りつけられたような衝撃を味わった漫画でした。
緑のルーペ先生(&原作協力フジワラキリオ先生)の一般誌での初連載作品「ブラパ」。
とにかく、心の痛覚を刺激されまくり。
思春期を通過した人たち。とくに、アニメや漫画など2次元にドップリな思春期を過ごした人たちにとって、きっと強烈なダメージを与える。
実際俺はガチ凹みしたし、それで泣いてしまったし、加えて感動に震えた…!

2013年上半期に読んだ漫画では、この「ブラパ」2巻が1番心に突き刺さった。
どう感想かいたものかと悩んでいたらもう6月終わって下半期になっちゃったので、急いでこうして書き始めた次第。
2巻が出たのはもう結構前になりますが、やはりこの作品の感想は書いておきたい…!
1巻2巻同時の扱いにしますが、実質2巻の内容を取り上げたいと思います。

ブラパ1巻の時点では、「緑のルーペ先生、こういうのも書けるんだなぁ」と新境地を見る感覚で楽しんでいました。しかしいやはや、この2巻は凄まじい。
「やっぱり緑のルーペ先生はこういう感じだ!」と大興奮ですよ!
「イマコシステム」で見せたあの曖昧で切実な幸福感。あれに近いものを感じる物語でした。やっぱりこの作者はこういうのが大好きなんだなーと確信。
しかしイマコシステムも好きですが、「ブラパ」はどうしようもない青春の過ちとか痛みとか、そういう色が濃くて俺のドストライクでした。2巻後半からの怒涛の展開はまさに必見!
毒の強い内容ではありますが、愛おしい、大切な作品として自分に刻まれました。



ざっとストーリーを。
思春期こじらせ型・青春ロールプレイ作品。という紹介で合ってるかな。

主人公の少年、留美は迷い込んだ不思議な場所で、「フジノ」という女の子と出会いました。なんとも芝居がかった振る舞いをするミステリアスなその少女と、留美は仲良くなり行動を共にしていきます。
2人は自分たちで決めたルールの中で、冒険をする。ダンジョンと称して建物に侵入したり、テリトリーに侵入してきた不良たちと戦ったり。
そんな2人の日々は、灰色の現実を忘れさせてくれる輝きに満ちていた。
しかしそんな日々を一変させる出来事が……2巻の中盤で起こるのです。

この作品は至る所で俺のツボを指摘してきます。
まずタイトルが「ブラパ」。THE BLACK PARADEですね…!
俺もリアル高校生の時、マイケミよく聞いていたので…まずそこから心揺れますよ!
さらに各話タイトルが既存の曲タイトルから取られているのですが、その多くが、「売れてるJ-POPはちょっとなぁ…」と妙な意識こじらせている10代が聞きそうなラインを見事についてくる。BUMPとかRADとかのロキノン系が主。テレビ露出をあまりしないロキノン系の中ではメジャー級バンド。オマケにアニソンまで混じってきて、ちょっとサブカルな方面に傾倒「しはじめた」くらいのヌルい高校生オタのセンスが見事に作中にパッケージされている。
まぁつまり読んでいて「高校時代の俺のどうしようもなさ」を思い出せられてしまう、という超個人的な面白さと苦痛があるんですよね…!!あああ!!俺は今でも所詮そんなもんなんだけど!!
この辺りの楽曲チョイスは意図的だと思うんですよね。作者の趣味もあると思うけれど、思春期に寄り添う音楽を選んだように感じる。

そしてそんな「しょーもないオタク高校生の現実逃避」を、その幻想を、その恥ずかしい行動の全てをいっきにブチまける。それが2巻の中盤。そこから物語は一気に加速と崩壊を始める。
全ては「ロールプレイ」だったのだと、その稚拙なフィクションを打ち砕く。
フジノの瞳にいつもきらめいていた星にヒビが入り、ガラガラと崩れ、そして輝きを失う……。
15話「羽虫のように」の緊張感には吐き気すらしてきた。
居場所を奪われ、心もへし折られた「フジノ」。壊れた瞳の彼女は、自分の体を留美に捧げることで、よすがを求める。しかし戸惑い流される主人公と、最後は致命的なスレ違いをお越し、幻想は完全に消え去った。

ブラパ3

うわ言のように繰り返す「好き」の言葉に、なんの意味も宿っていない。
なんて乾いてるんだ。心を締め上げる切なさに満ちてる…。
「好き」って言わなきゃ、今の自分たちを正当化できないから。結局は言い訳のために「好き」なんて言ってるだけなんだ。ダメダメだわぁこの2人。

こんなグズグズに狂っていく青春模様。見たくない。
けれど嫌悪感と同時にメチャクチャ胸が高なったりして、物語に引きずり込まれたみたいに目をそらすことができなくなってしまう。



浮世離れした楽しいファンタジーだった。甘酸っぱい感動があった。
しかしそこから冷徹なリアルの世界に突き落とされる。この落差。
ストーリーもさることながら読者の心を追い詰める演出面も冴え渡っている。
心踊る冒険ファンタジー。でもそんなものは現実には存在しない。
協力者と舞台とルールを手に入れた、2人で共有する妄想に過ぎなかった。

今まで楽しかったはずの日々が、根本から崩れ去る恐怖。ある種のカタルシスも感じましたが、それはあまりの悲しさと、目を背けたくなるような青春の過ちによるもの…。
ファンタジーだと思っていたはずが、生々しいリアルに突き返される。だってこっちが本来の居場所だから。生きていかねばならない現実は、紛れもなくこの冷えた世界なのだから。

ブラパ1

自分を好いてくれた少女が遠くなる。
摩耗しない恋。美しく清潔に保たれる恋。
そういうのも、きっと現実では、出会い難いものなんだろう。

このシーン、泣けたなぁ…。雛ちゃんの描かれ方に関してはなんの不満もない。最終話だって納得できたし爽やかだった。
ただこの場面は、主人公が自分の情けなさに真正面からブチあたって涙する。見てられない…。ただ、名シーンだとも思う…。

僕らは現実の中で、この世界の中で、生きていくしかない。
流さ流され、時に大事な選択をして。少しずつ自分を変えて。

ただ、決して現実が悪いものだとは描かれていない。
つまりは生き方の問題であり、留美は現実の壁を敗れるだけのエネルギーを、フジノの妄想の世界から、そしてフジノ本人から受け取っていた。
壊れてしまった2人の世界は、別の形でまた歩み出せるかもしれない。
そうやって「再生」へと駆けていく留美の姿に、またしても涙。
17話、堂々と現実に立ち向かう覚悟を決めた彼は、むしろ笑いながら遠く遠く駆けていく。
思春期をこじらせた少年の最後につかみとった、現実と戦う覚悟。

世界の秘密が暴かれる第14話以降の展開は、テンションの浮き沈みが激しくまさにジェットコースター気分。
感情を上に下に右へ左でブンブン揺さぶられ、感情の波に酔ってしまいそうな感覚すらした。
だけどもう!とにかく熱い!
なんて傷だらけの、なんて途方も無い痛みを伴う、愛おしい青春の物語なんだろう!



藤野という少女と、少女の結論について。

ようするに、思春期の薄っぺらなセンスや妄想をどこまで痛めつけられるかな、っていう所を鋭く描いた作品なんだと思う。
「変なフリ」としていたフジノなんかまさに象徴的。
現実での自己嫌悪の裏返しが、妄想の世界のまったく別の自分への憧れ。
カッコよくてかわいくて、まるで物語のヒロイン。
他人から求められたら嬉しくて嬉しくて。なりたい自分への自己陶酔。
でも本当に頭イカれたヤツがやってきたら慌てちゃう。ところどころで「フリ」を続けられない所にじわじわと本来の弱さが見えていました。

その弱さ、薄っぺらさがいっきに噴き出るのがあの種明かしのシーン。
どうしようもなくなって、ただ自分を求めてくれる「都合のいい人」に自分の価値を求めて、自爆する。「誰も本当の私を欲しがってはくれない」と心を折る。
妄想の中の自分が輝くほどに、現実に自分が惨めになっていく。そらいつかはぶっ壊れるさ。崩壊のきっかけ外部から、変な漫画家のオッサンに持ち込まれたけれど、それがなくてもいずれ彼女は限界を迎えていたんじゃないかな。

思春期のドロドロした憂鬱と、オタクのクソみたいな自意識でぐっちゃぐちゃになってるフジノを見てると、心の底がムズムズしてくる。本当に…。この気持ちはなかなか言葉にしづらい。
ただ、だからこそ淡い祝福が降り注いだラストシーンは、読んでからしばらくずっと、この作品のことばかり考えてしまったほどに、俺の中身に食い込んだ。

ブラパ2

一目惚れでした、と藤野は言う。
「私は彼のことが最初から好きだったのだ」と。それが嘘だとしても。そういう事にして自らを慰めたいだけだとしても。留美を自分につなぎとめておくための、とっておきのフィクションだとしても。
そう口にした藤野の心が、本当に尊いものなのだと、留美は言う。

ああ、なんて美しいエンディング!!
この不安定さ。アンバランス。単なる両思いで終わっただけでは、この作品にここまでのめり込まなかったと思う。
臆病なこの2人は、お互いの「好き」を確信することだって、きっと難しいから。
だからちゃんと言葉を投げかけ合って、抱きしめあって、互いで互いを信じあっていくしかない。いつだって不安はやってくる。

あの夜の廃車両で投げかけあった、なんの意味のない「好き」の言葉。あのどうしょうもなく不毛な、闇に墜落していくような接触にも、後から後から意味なんて加えられる。「あとづけ」でいいんだよ。どうせ弱いんだから。そうやって弱い自分を受け止めて慰めて、騙し騙し、幸せに進んでいければ、十分なハッピーエンド。
愚かでもいい。弱くていい。所詮そんなもんだ。

実際藤野は、留美とセックスしたことを後悔したような口ぶりで「大して好きでもない男の子とするの、本当は嫌だった」とザックリ心えぐる事を言っていました。
それが真意だったのか、留美を遠ざけるためのあの場だけの嘘だったのか、もう分かりません。
でも今の藤野は「一目惚れだった」と言った。ならそれでいい。それを信じればいい。

過去なんて「今」のために都合よく使ってしまえばいいのだ。
藤野が「一目惚れだったの」と言ったように。
あるいは俺が昔を思い出しながら身悶えして苦しみながらブラパを読んだ後、「でもあんな日々があったからこの作品をここまで愛せたんだもんな…」と賢者モードに入るように。
なんだって受け取り方次第なわけで、そこはもう、卑怯なくらい自分を騙してしまったほうが、いい。たぶん。ダメな自分を肯定したっていいんだよ!(キレ顔
そういう開き直り方を発見させてくれた作品だな「ブラパ」。ありがとう。でもきっと俺は痛いまんまなのでブラックパレードは永遠。



いわゆる「打ち切り」の憂き目にあってしまった作品。惜しいなぁ。
この終盤の展開は、もっともっと物語が長くなって、十分な「溜め」を持っていたら、さらに破壊力を増したはず!
2巻完結となった今にこれだけのダメージを負ってしまった俺が、仮にこの作品が予定通りの尺でこの終盤にたどり着いていたらどうなっていたか。あまりに落差が強烈すぎて、俺も壊れてしまったかもしれない…。
しかし結果的に打ち切りになってしまったことを作中でメタっぽく触れてしたりもしてニヤリとさせられる。加えて「妄想が中断され突如終焉する」という唐突さも、このクライマックスの展開の中ではひとつのポイントになっていたとも思う。まさに急転直下なスリリングさがあったよ!
打ち切りを残念なものとして完結させるのではなく、むしろ打ち切りにあったことすら作品に活かしてしまえというガムシャラな姿勢が感じられ、その熱意にまた震える。

そうそう。ちょっとメタ視点を含ませてる本作において、作品のカギでもあり半ば神の視点を持つ漫画家、動物園ひかる氏の存在は面白い。
こんなこと言い出した時には、ラスボス来たーって思った。

ブラパ4

うーんいい顔!!
でも彼は、藤野と留美と見守ることで読者よりもっと近くで心を揺さぶられる「大人」の代表キャラでもある。
いけ好かない、気持ちの悪い男。けれどどこか読んでいる自分自身と重なる所があったりして、なんかね。

緑のルーペさんはこの作品を
「大人になれなかった大人の、憧れと諦めによって生まれた物語」
と表現しています。

大人になれなかった大人。もしかしたらこれは緑のルーペ先生を含む製作者たちのことでもあるんだろう。でももっと言えば動物園ひかるのことでもあるんだと思う。
留美のだした結論を聞き届け、情けないくらいに弱々しく「…はは」と笑って手で顔を覆う。きっと最後に彼のことを救ってしまったんだな、藤野と留美は。
表現者として「妄想」を生み出した親でもある彼は、そこから巣立っていく子どもたちを見ることに、どんな思いを抱いただろうか。きっと、そりゃもう。
深読みし過ぎるとアレですが、動物園ひかる氏が緑のルーペ先生の投影キャラだとすると、なんか納得してしまうんですよね。なんとなく。



ちと長くなってしまいましたがそれだけ大好きだという事を詰め込めたかな。
「ブラパ」はズタボロになる少年少女と、思春期のよどみと煌めきと、絶望と再生が高密度に結晶した傑作だと思うんですよ!
面白いんだけど、面白いかどうかよりまず本能を鋭くえぐってくる作品だった。
追い詰められていく主人公たちと、崩れ去る世界。愕然とした気持ちで物語の後半を読み進めましたが、本当に素敵な着地を見せてくれた…!
フィクションに惑わされる少年少女、というメタ視点を見事に表現し、フィクションから踏み出す主人公らに到達する。
けれど二人が生きていく現実は、今も「ブラックパレード」の中。
妄想の世界から飛び立ったって、結局のところ弱く脆い2人は、時に嘘にすがって生きるしかない。でもそれでいいんだろう。幸せなんだろう。

嘘と生きていく、弱く惨めな彼らの「the Black Parade」。
どうかいつまでも夢を。信じられるものを。嘘かもしれないけれど、信じたいものを握りしめられたならそれでいいんだ。

崩壊と再生。徹底的に叩き潰されてからの、かすかな希望。
イタい思春期漫画、と片付けるには毒が強いけれど、間違いなく大好きな漫画で、きっと俺はずっと2人の幸福を願う。
思春期を通過したからこそ全力で楽しめる、あの頃の恥ずかしい僕らの物語、とも言えるかもしれない。痛覚を研ぎ澄ませて、めいいっぱい傷つけられて、最高に楽しかったです。

『ブラパ』1,2巻 ・・・・・・・・・・★★★★★
心がズキズキする思春期の迷走。打ち付けるリアルの脅威。臆病な男の子と臆病な女の子。ひっくるめて全部が愛おしくてたまらない傑作。
これで打ち切られてなかったらもっと大変なことになってたな。俺が。



ザ・ブラック・パレードザ・ブラック・パレード
(2006/12/06)
マイ・ケミカル・ロマンス

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元ネタのアルバム。これ聞きながら読む「ブラパ」も格別である。
懐かしいな。中高の時よく聞いていた…。



Welcome to the Black Parade!!
 

[漫画]2013年7月単行本の購入予定

7月の購入予定。とか言いつつ毎月抜けがある。

07/04 集英社 リビドーハンタータケル 1 丈山 雄為
07/05 講談社 イモリ201 4 今井 ユウ
07/05 講談社 ユウタイノヴァ 新装版 2 押見 修造
07/05 講談社 R-中学生 3 ゴトウ ユキコ
07/05 講談社 夏の前日 4 吉田 基已
07/05 竹書房 過ち、はじめまして。 2(完) 色白 好
07/05 白泉社 ラストゲーム 4 天乃 忍
07/08 秋田書店 あまねあたためる 2 佐渡川 準
07/12 講談社 海月姫 12 東村 アキコ
07/12 小学館 鉄楽レトラ 4 佐原 ミズ
07/12 双葉社 放課後おわらいぶ 1 高嶋 ひろみ
07/12 フレックスコミックス発行/ほるぷ出版発売 ブレイク ブレイド 【新装版】 1 吉永 裕ノ介
07/12 フレックスコミックス発行/ほるぷ出版発売 ブレイク ブレイド 【新装版】 2 吉永 裕ノ介
07/13 エンターブレイン発行/角川グループホールディングス発売 ヒナまつり 5 大武 政夫
07/13 エンターブレイン発行/角川グループホールディングス発売 山田酉子作品集(仮) 山田 酉子
07/13 徳間書店 モンスター娘のいる日常 3 オカヤド
07/17 講談社 アゲイン!! 9 久保 ミツロウ
07/18 一迅社 百合男子 4 倉田 嘘
07/18 アルファポリス発行/星雲社発売 ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 3 竿尾 悟/柳内 たくみ
07/22 スクウェア・エニックス クラスメート、上村ユウカはこう言った。 5 川上 真樹/桜井 慎
07/23 講談社 宝石の国 1 市川 春子
07/23 講談社 彼女とカメラと彼女の季節 3 月子
07/23 講談社 つるつるとザラザラの間 1 月子
07/23 講談社 新装版 真・女神転生 デビルチルドレン 3(完) 藤異 秀明/ATLUS
07/23 講談社 ヴィンランド・サガ 13 幸村 誠
07/23 メディアファクトリー デンキ街の本屋さん 5 水 あさと
07/25 ワニブックス こえでおしごと![限定版] 10(完) 紺野 あずれ
07/27 アスキー・メディアワークス発行/角川グループホールディングス発売 有線少女 ~plug girl~ 2 kaya8
07/27 スクウェア・エニックス 君と僕。 13 堀田 きいち
07/27 芳文社 総合タワーリシチ 3(完) あらた 伊里
07/30 少年画報社 スピリットサークル 2 水上 悟志
07/31 白泉社 しあわせになりたい 売野機子作品集3 売野 機子

「R-中学生」は完結巻。「過ち、はじめまして。」も完結かー…。
お久しぶりな「夏の前日」。3巻で話がグッと動き出したので、どうなるか。
ノーチェックだったけど角川で山田酉子さんの単行本が出るらしい。買うしか無い。
市川春子さんの新作「宝石の国」の1巻はようやくという感じですね。
「こえでおしごと!」の最終巻の限定版はPCゲーム付きなんだとかw
そして高いポエム力で俺を魅了してくれる売野機子先生の新刊も超楽しみ。

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ブログを引っ越しました。 当ブログは更新を停止し、新ブログにて更新をしています。 https://sazanami233.hatenablog.com/

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「さざなみ」と読みます。
漫画と邦ロックとゲーム。
好きなのは思春期とかラブコメとか終末。

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