[漫画]剥き出しなシビア&爽やか青春劇『中卒労働者から始める高校生活』1巻
中卒労働者から始める高校生活(1) (ニチブンコミックス) (2013/05/29) 佐々木ミノル 商品詳細を見る |
この世界はクズばかりで 例に漏れず俺もクズ
佐々木ミノルさんの「中卒労働者から始める高校生活」1巻の感想。
おっ表紙かわいい!と完全なるジャケ買いで手を伸ばした本でしたが
偏見とコンプレックス、外の世界と内の世界の両方と闘うほろ苦い青春漫画で、なかなか好感触なお話でございました。
作品紹介には「ラブコメ」と銘打たれていますし実際その通りなのですが、ただ甘いラブコメというだけじゃない、理不尽な社会に立ち向かっていく力強さを備えている。不愉快になりそうな邪悪さを感じさせる一幕も。
1巻の段階ではラブコメ部分よりむしろそのシリアスな要素に心惹かれた。
ラブコメながらもザックリと心刺される作品です。
父親が犯罪者。家計も苦しい。
中卒で工場で働き始めた主人公ですが、「あいつは中卒だから」と笑う周囲を見返すために18歳から通信制の高校に通い出します。
いろんな人が通う通信制高校。ガラの悪いヤツから子連れ、老人まで。
けれどそんな人種のるつぼみたいな環境に身をおいたことで、主人公の世界が少しずつ広がっていく。
お嬢様である逢澤といがみ合いつつも、互いに気になる存在になっていく。
舞台が通信制高校ということで、その中身を詳しくは知らなかった自分は、まず舞台設定からして新鮮に楽しめた部分があります。読んでみてちょっと世界の見方が広がったような感じすら。
その上でストーリーがリアルなドラマティックさを持ってる。
主人公の苦悩だらけの青春は見ていて痛々しくて、なんとか幸せになっておくれよと願うしか無い。
先にも書きましたが、この作品なかなかにブラック。そしてツライ。
人の悪意がストレートに描かれています。暴力とか嘲笑とか。
読んでいてその不愉快さにグッと手に力がこもってしまったりもしました。
でもそういった「外の世界」との闘いが本作のひとつのテーマ。
どうやって立ち向かっていこう。どうやって自分を強くしていこう。
たとえば主人公は勤め先で大卒出の新人にバカにされ中卒を哀れまれる。
その悪意に、主人公は暴力で訴えるしか術を知らない。
もちろん大学出の新人は見るからにカス野郎でしたが、それに対する理性的な振る舞いができないというのも主人公の不器用さ。
ぶつけられる悪意をグッと飲み込むのが利口だ、とは言わないけれど、暴力で黙らせようと逆上してしまうことが余計に次なる悪意と偏見のタネになってしまう部分もあると思う。
だから求められるのは成長なのだ。そのための彼の変化は少しずつ発見できる。
成長には何が必要なのだろうか。
中卒ということからくる学力のどうのこうの、というよりはきっと自意識の問題です。
悪意が外の世界にある課題だとしたら
内の世界、つまり自分自身の問題も主人公に重くのしかかっている。
「自分が自分を笑ってるから、なんでも悪く聞こえる」
このセリフがズバッと言い当てていますね。
中卒というコンプレックスを抱えて卑屈になっている主人公側の問題。
よそからぶつけられる悪意と同じくらい、コンプレックスが自らを苛める。
コンプレックスに悩み苦しむ主人公の苦しみは、いろんな人が重なる部分があるのではないかなと思います。自分自身けっこうシンクロ。
クソだクズだと世界を呪っても、その根底には強烈な自己嫌悪が見える。
外と内の両方の世界と闘っていく上で、「世の中にはいろんな人がいるんだな」と高校で見聞を広めることはとてもエネルギーになってるなーと読んでて思いました。
けっこう、自分改革の一歩につながっているよな。
ううむ、自分改革とか言い出すと自己啓発本みたいでオウって感じだけど、でも自分のことをどう思っているのかって、結構大事なポイントですよね。気の持ちようです。心が弱ってたら生きづらいです。
なにより「変わりたい!!」とひたむきな思いで進む主人公は、とても応援したくなる男の子ですわ。
生きづらいこの世の中に、卑屈な自分自身に立ち向かう物語。
そんな社会派ドラマのような側面も見える作品ですが、ちゃんとラブコメもやっていて読みやすいです。
掲載誌の方向性からか、若干むりやり感を漂わせつつノルマをクリアするようにセクシーなカットが入れられていくのがなんともかんともw
卑屈な少年とワケありお嬢様。どうみても両方ツンデレなわけですがいかんせんまだストーリーがそこまで進んでおらず、あまりデレは拝めないのです。第4話で怒涛の展開を見せますが‥・!
このメインの2人のもどかしい関係や距離感の発展が、2人の成長につながっていくんだろうな。
どうも逢澤さんの方は性的なトラウマがありそうですね、現在進行形っぽいし。
そこらへんも、彼女が自分の殻をブチ破る展開に行くと気持ちよさそうだなと期待を寄せている部分です。2巻からはガッツリ恋愛モード入って話が動きそうですね。
あ、あと妹ちゃんがかわいいw
ブラコンのけがあるロリ巨乳というややあざとい設定ですが、そのあざとい可愛さに素直にいいものです。
あと第一話の「知ってるよぉ‥・」×2でヤラれましたよ。涙腺が。
そして愛すべきおバカさんである・・・!すごい癒されるよw
個人的に好きなエピソードは第3話。
仕事、育児、勉強に追われてお母さんが余裕を失っていく様子とかは、こういうのが現実にあるんだろうなぁと考えさせられる場面でした。
お母さんが最後に泣いちゃう場面好きだなぁ。ああ。泣いちゃうよなぁ。
オビにある「中卒(オレ)が、恋しちゃおかしいか」というフレーズが印象的。
この言葉に含まれている感情が、いつかまっすぐな前向きさを持ってくれるのが見たいよなぁ。これぞ応援したくなる作品です。感じ入る要素が多かった・・・。涙ぐんでしまう場面が結構ありました。これは続きを追って行きたい。
『中卒労働者から始める高校生活』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
じっくり読める作品でした。リアル身分差ラブコメでもある。
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