夢さえつきぬけて、君を探している。/映画 『君の名は。』感想
新海誠監督の最新作「君の名は。」の感想記事です。
見終わったあと、しばらく立ち上がれず、エンディング曲の残響が耳から離れないままでした。
間違いなく、傑作だと思う。いやもう、毎回言ってるけど、今回も傑作。
過去最大規模で全国公開された本作はこれまでのキャリアの総括のような内容。
過去作の様々な要素が結集された、これまでのファンもここからのファンも満足のいくであろうエンタメ作品として仕上がっていました。
後述しますが過去作を観ている人にこそ観てほしい作品。
今作に挑戦的なエッセンスがいくつも含まれていることは公開前から
この素晴らしい予告ムービーからして、読み取ることができましたが、
それにしたって、ここまで真っ直ぐに大衆の方を向いた、それでいて新海監督らしさがあふれる映画に仕上がっていようとは。
新機軸のコメディ要素も、切り裂かれそうなセンチメンタルも、惑わされそうな透明な空も、こんなに幸せな映画があるのか、(大げさにいうと)自分のための作品だと感じられる映画があるのかと思ってしまうような。
ざっくりと感想かいていきます。ネタバレを含みます。ご注意ください。
過去作の感想記事
・『秒速5センチメートル』感想。
・最高級の、雨ふる楽園の物語。『言の葉の庭』感想
秒速の記事とか15歳のときにかいたやつだしもう読み返せないけど。
楽曲との融合性
まず音楽のことを書きたい。本作においては本当に大切な要素。
過去作「秒速5センチメートル」に代表される、音楽と映像の融合は新海監督作品の持ち味。
今作ではRADWIMPSとコラボをしており、ボーカル曲から劇伴まで彼らが手がけています。
RAD・・・RADはなぁ・・・これまでもう・・・イヤホンで野田洋次郎の声をとろけるまで耳に詰め込んだ高校生活を送ってたやつらからしたらなぁ・・・新海誠×RADWIMPSなんて、MAD動画みたいな夢タッグが現実になったことだけでもう絶頂モノなんですよ。
しかもボーカル曲が4つも映画で流れる。しかもしかも、全部超クオリティ。
タイトルトラック的ポジションの「前前前世」。ガンッと自転車を蹴りだすような疾走感と、甘酸っぱく宇宙を感じさせる歌詞・・・完全に新たなる代表曲の誕生だよ・・・。
アニメとリンクする、しかし独立した楽曲としても聞ける歌詞も素晴らしい。
壮大な世界観で、内容はあくまでも「君」と「僕」だけの物語。やや閉塞的で依存的で、しかし切実なそのRADWIMPSの歌詞の有り様は、考えてみれば新海誠監督の描く宇宙と密接に寄り添えるものだった。
前前前世だけではない。映画のオープニングを飾る「夢灯籠」もやばい。
夢から覚めたばかりのような、いや、夢に落ちていく時のような、夢と現実の境界が曖昧になるような浮遊感と迫力のある一曲。
「ああ このまま僕たちの声が 世界の端っこまで消えることなく 届いたりしたらいいのにな」
と歌い上げるボーカルとたゆたうようなクリーンなギターで幕が上がる。それは幻想的な映像と完全にシンクロし、スクリーンに吸い込まれそうな最高なオープニングを演出する。
「スパークル」は非常に重要なシーンでかかる、本作の核となるような楽曲。
ボーカルの息遣いまでわかるような劇場の音響で、その最初に一節が歌いだされた時。
泣くつもりなかったのに思わず敗北した。負けだよ。完全敗北。俺は、野田洋次郎に、新海誠に命のすべて握られた。俺は生まれ変わった俺になったんだよ。
エンディング曲「なんでもないや」は多くは語らない。
ぜひ、スタッフロールで呆然としながら聞いてほしい。
ただオープニング「夢灯籠」で歌われた「君の名を 今追いかけるよ」というフレーズがある。それと対応するかのようにエンディング曲「なんでもないや」では、「君の心が 君を追い越したんだよ」というフレーズが歌われる。こういった美しいリンクが、個々の曲を聞いていても映画の世界に再度連れて行ってくれる。
様々な感情が胸の中であふれつつも、「なんでもないや」ってちょっと誤魔化しながら
あんなにも大変だった出来事が、時が経ちいつしか記憶はおぼろげに、日常の中のちょっとした空想劇のひとつとして片付けられる。わけもわからない感情を押し殺し「君」に語りかける。空想劇の中でつながった、たしかな愛おしさを抱きながら。
そのぶっ飛んだ歌詞でたびたびネタにされる事もあるRAD。
けれど思い出した。そして確信する。孤独な、そして誰かを強烈に欲求する寂しい心に、RADWIMPSは救いをくれる。そういう音楽をやっていてくれてたんだ。
観終えたあとようやく席を立ったあと、そのまま物販でこれらの楽曲が収められたミニアルバム「君の名は。」を購入。サントラも兼ねている本作。映画を見た方なら、きっと欲しくなるはず。
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コミカルなキャラクター
本作のコメディタッチな序盤の流れなんかは、過去の監督作品になかった新機軸の要素。
しかしこれが本作を立派な「エンタメ作品」たらしめる大切な要素だった。
流れとしては劇場作品もだがCMアニメ「クロスロード」を汲んでいるように思う。
いやー久しぶりに見るとクロスロードも最高だな。
「君の名は。」これまで新海作品よりオープニングから中盤のつかみがよく、モノローグですべてを語ろうともしない。些細なやりとりであってもメインとなるキャラクター同士の関係性なそこに流れる気持ちが汲み取れる。
ポエムではなく、キャラクターのセリフに、視線に、強度がある。
主人公。
瀧は東京に通う男子高校生。三葉は田舎(岐阜!!!!!!)の女子高生。
ある時から互いの心が入れ替わり、まったく別の世界を体験していくことになる。戸惑いながらも時に楽しみ、入れ替わってしまった互いの人生に興味を持ち、そして通じ合う部分も出てくる・・・
という非常に!非常にベタな男女入れ替わりネタを新海誠監督が持ってくるとは!!という驚きはありますがこれが面白い。ベタなのはみんなやっぱり好きだからなんじゃないか。
三葉が素直に東京生活を楽しみまくっていることに対し、
瀧は田舎の風習や古来からの言い伝えに非常におおくのことを学び、己に響かせていく。
ストーリー中盤からは取り憑かれたように三葉の地元である糸守町のスケッチをしていくことになる。その姿はちょっと前作「言の葉の庭」と重なる部分も感じる。
キャラデザの田中将賀さんも言及していましたが、瀧くんはかつてないほどに強い少年だったと思います。
互いの人生をのっとって痛快な行動を起こしていくので観る側としては楽しみ
その周囲の人物にとっては突如豹変する彼らの姿を異様に感じられていて良い。
個人的に好きなのは四葉とテッシー。
テッシーが父親に怒鳴られたあと、「ホントかなわんなぁ・・・」と言いながら宮水神社のほうを眺めるシーンは最高の田舎エモって感じでよかったですね。
声優の、とくに主役ふたりの演技も素晴らしい。
少年の声で少女がしゃべる、そしてその逆もしかり。そんなややこしいことをやってのける。ギャグはもちろんシリアスパートも、常にスレスレのバランス感覚で演技がされる。
ともすれば全編ギャグみたいになってしまいそうだもんな、この設定。
それをここまで磨き上げられた急転直下の長編アニメとして成立させているのは
映像や音楽、シナリオの良さだけではない。それに命を吹き込む、声の仕事があってこそ。
ところで自分は岐阜出身岐阜在住で。
この映画には岐阜県飛騨地方が大々的に登場して、方言も聞き馴染みあるもので、そういう意味でもとても楽しかった・・・!
微妙に見覚えのあるJR岐阜駅のホームや、あのしょぼい線路風景や・・・。
地上初の美濃太田アニメなんじゃない?あっのうりんあった。
滑り落ちていく壮大なストーリー
コミカルなキャラクターたちによる序盤から一転、後半はまさに新海誠ワールド全開。
内省的なモノローグ。希求する孤独な心。埋まることない空白。越えがたい距離。突如の喪失。
自分の世界に没頭し、そしてはるか彼方の君に向けて言葉を紡ぐ。
おそらく男女入れ替わりボーイミーツガールという前知識の上で見た人が多いだろうから、途中からの彗星落下という大災害、生命の危機、時空の歪みといった、ハリウッドSF映画みたいな要素も出てくるとは予想できていなかったはず。
序盤の賑やかさ。中盤の鼓動が早まる感じ。クライマックスの静寂。このメリハリついた緩急が、エンタメ作品としても成功させつつ、新海誠ワールドを存分に味わえる贅沢な構成となっている。
しかもタイムスリップもの大事な要素として、いかに伏線をまくか、そして回収するか。
ここに至っても本作はとても楽しませてくれる。
特に結びを象徴する組紐が、そもそも物語が始まる前から瀧の手にあり、
それが最後に三葉に渡るあたりはゾクゾクされられましたね・・・。
神社のご神体そばの幽世で、口噛酒を口にすることで再会を果たす場面は
「こまけぇこたぁいいんだよ」の精神がにじみ出て、しかもその後の圧倒的に美しく儚いシーンでその感慨も吹き飛ばされる、特に好きなシーン。
パンフレットで新海誠監督のインタビューが掲載されており、それによると
本作は意図的にストーリー色を強めて、観る人にクリエイターとしての意図を確実に伝えられるよう長い時間をかけて調整をした、という。
それだけの苦労のとおり、本作はこれまでになかった緻密さとスケールで展開されていく。
4次元的な大きな物語と、世界のすみっこのちいさなボーイミーツガールとしての側面が共存する。
金曜ロードショーで流れても全然OKなだけの一般的強度を持った作品を作成したことは、なんか嬉しいやら寂しいやらなんだけれど、この作品を観るとやっぱり俺はこの監督が大好きだと思う。
過去作との関係性
ユキちゃん先生ー!!!!!!!!!!!
ハァ・・・ハァ・・・こんなところで会えるだなんて・・・。
「言の葉の庭」のヒロインである雪乃先生が、糸守で教鞭をとっていました。
こんなにストレートに過去作品とキャラが登場するとは思ってなかった。
今作も万葉集がキーとなってくるため納得の人選ではありますが。
時間軸がどうなっているのか。
言の葉の庭の物語の前なのか後なのかはわかりませんがそれでも
あの美しい声を聞けたことがしびれるほどに嬉しいですね。
そういえば言の葉の庭とリンクしている部分で、新宿御苑も出てましたね。
多くの人が言及するように、これまでの監督作品のボーイミーツガール(?)には、
「距離」というものが非常に重要な要素としてフィーチャーされていた。
「ほしのこえ」は地球と宇宙に2人は引き裂かれた。流れる時間の流れの違いもあった。
「雲のむこう、約束の場所」では消えゆく記憶に翻弄された。夢の中で君の孤独の音がした。
「秒速5センチメートル」は物理的な距離より心の距離。願うこと、ただそれだけの尊さ。
「星を追う子ども」はそもそも別の世界から少年はやってきた。サブテーマは死者との再会。
「言の葉の庭」は子供と大人の、歳の差の距離。そして自分の世界への没頭。
「クロスロード」は、都会と田舎から巡りあう、出会う前までのボーイミーツガール。
そして結論からいうと過去作のこれら要素を「君の名は。」は全部やってのけた。
全部も全部。欲張りにも特盛り状態である。過去作のセルフオマージュを盛り込み、それだけでなくこれまでの世界から一歩抜け出ていく。
だからこそこれまでの新海ファンはもうお腹いっぱいなのだ。
冒頭にも書きましたがこれまでの総決算的なものに仕上がっているのです。
そして「秒速5センチメートル」という、おそらく新海誠作品で1番話題性のあった映画を見た人は、この映画のラストシーンで成仏できるかもしれない。
監督は「秒速」をバッドエンドの物語として解釈されたくはないようだけれど
「じゃあこれでどうだ」と言わんばかりにもう一度、あのシーンを再演した。
もちろん作品が違うし過程も違う。それは当然わかっている。
けれど、秒速の物語でチリヂリになった僕ら全部の無念を、
この映画は晴らそうとしてくれているのかもしれない。
雪がふる都会の夜景が映されたときにハッとしたけれど、すれ違う男女で確信する。
秒速が公開されて9年半。長い時を経て、かすかに魂が癒やされた。
「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか」
・・・君には会えないけれどだいたい10年で僕は救われたよ・・・
ちょっとくらいは。
キービジュアルの構図をこう使うか、という部分もにやりとさせられる。
ともかく過去作を見ている人にも強烈におすすめしたい一作なのです。
夢の先のリアル
夢って目覚めるとゆっくりと消えていく。今作のモチーフのひとつ。
「あれ、なにを見ていたんだっけ」とおぼろげになり、大切なものが手のひらからこぼれ落ちるように、自分から世界から、なにかが消えていく。
雲の向こうでも描かれた夢のモチーフを再度使用し長編とした本作。
序盤のコミカルな展開から終盤、「夢となって消えたあと世界」の中で
その真価を発揮していました。
これはもうロジックの話でもテクニックの話でもなく、ロマンの話です。
なにがあったかは覚えてない。何かがあったことさえ、忘れている。
けれどどうしようもなく、途方も無く強く、魂が求めてしまう存在。
理由もなく、いつもだれかを探している。
いつもなにかをだれかを探しながら生きている。
それは恋物語だけではなく思春期の、いやもしかしたら誰しもが抱えている、ある種の潜在意識なのではないかなと思う。
なんとなく、欠けている感覚。例えばもっといい生き方を探す事。もっと自分にあった居場所はないかと、自分にはなにができるのかと、探し求めている。
瀧と三葉の場合には、それは互いの事だった。
口噛み酒は自分の半身なのだ。口にしたことで、魂は結ばれた。
手繰り寄せられた運命。渡された組紐。これは、時をも超える赤い糸の物語だった。
もはや互いに何があったのか、思い出せないに違いない。
けれどもはや本能か、神様の仕組んだ必然か、直感で互いを見つける。
併走する電車で目があった一目惚れのような一瞬、
消えたはずの思い出から、消えたはずの想いだけが、溢れ出る。
誰かを強く求めていた。そんな感覚だけに突き動かされた、8年後の東京で
新海誠映画、過去最高のハッピーエンドが待ち受けていた。
運命というものは、もしかしたら記憶から消えたもうひとつの物語で作られた、
もうひとつの人生の残滓がただよっているようなものなのかもしれない。
そんな空想をしてしまう、幸せな映画。
挿入歌、「スパークル」の歌詞が、映画のすべてを包むような素晴らしい内容なので、一部引用する。
運命だとか未来とかって 言葉がどれだけ手を伸ばそうとも届かない場所で 僕ら恋をする。
昨日見てきたばかりのテンションでざーっと書いてみました。
非常に贅沢なアニメーション映画でした。
新海監督のこだわりと挑戦を濃密に感じられる107分間。
いまさら背景の美しさをあえて言うのも馬鹿らしいけれど、でも言わざるを得ない。劇場のスクリーンで夜空いっぱいの彗星が流れていく、あの美しさを見たら。
きらめく木漏れ日の光。都会の喧騒と静寂の対比。
日常のなにげない風景を、現実以上の輝きでみせること。この魔法にかかったら劇場から出てきたその時からもう頭からあの輝きが離れない。
それでいて、これまで以上に音楽との融合性を高めている。RADWIMPS最高でしょ、みんな。
そしてガラス細工のような、繊細な言葉選び。情緒あふれるモノローグもまた心射抜かれる。
音楽と映像の両面から、そしてシナリオのあまいロマンチシズムから
全身で幸せを感じられるアニメ映画でした。
心のやわらかい10代には純粋な衝撃を、カサついた人生ベテラン選手たちにも、心にうるおいを与えてくれること間違いない。
めぐる運命の美しさを、世界にかがやきが灯る一瞬を、見に行こう。
俺は映画を見る前に小説版を読みました。内容は映画そのものです。
ただ互いが互いを補完しあう関係となっているので、小説版もオススメ。
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[アニメ]隠された聖なるエンディング-『言の葉の庭』イメージソングMVについて
●最高級の、雨ふる楽園の物語。『言の葉の庭』感想
この記事の追記のような形の更新となります。
先日、秦基博「言ノ葉」のMVアニメーション、ディレクターズカットBDが到着しました。
これは「言ノ葉」シングルCD購入者が抽選でゲットできるもので
自分ももちろん応募していたわけですが、運良くあたりました。
528名っていうのは倍率的にはどうだったんだろうか…。
映画のエンディング曲である「Rain」とは別に、「言の葉の庭」の世界を歌ったオリジナルのイメージソングが「言ノ葉」です。
曲調や歌詞の内容から、作品風景があざやかに脳裏に蘇りますな…。
曲に関してはこちらのライナーノーツも読むと楽しいです。
MVはアニメ本編のカットをつなぎあわせ、新規カットも多数盛り込んだ内容となっており、ファンは必見の出来栄え。
ショートバーションがつい最近Youtubeで公開されたので、まだ見ていない方はぜひぜひ。
→秦 基博「言ノ葉」の “新海誠ディレクターズ・カット版” MVがついに公開!
開始すぐに新規カットですね。
雪野さんが足の爪を着る(&メガネ装着!!)シーンには、この作品らしいフェチを感じる…!
さて、こっからが本題なのですが!
このMVには、「映画本編を見た人ならきっと見たかったであろう場面」が新規に追加されているのですよ!
これに俺は大興奮したのでこうして記事をかいているわけです。
このMVフルサイズ版は『8月28日(水)よりi-Tunes ほかにて取り扱いがスタートする』とのこと。
ネタバレになるので以下収納します ↓
この記事の追記のような形の更新となります。
先日、秦基博「言ノ葉」のMVアニメーション、ディレクターズカットBDが到着しました。
これは「言ノ葉」シングルCD購入者が抽選でゲットできるもので
自分ももちろん応募していたわけですが、運良くあたりました。
528名っていうのは倍率的にはどうだったんだろうか…。
映画のエンディング曲である「Rain」とは別に、「言の葉の庭」の世界を歌ったオリジナルのイメージソングが「言ノ葉」です。
曲調や歌詞の内容から、作品風景があざやかに脳裏に蘇りますな…。
曲に関してはこちらのライナーノーツも読むと楽しいです。
MVはアニメ本編のカットをつなぎあわせ、新規カットも多数盛り込んだ内容となっており、ファンは必見の出来栄え。
ショートバーションがつい最近Youtubeで公開されたので、まだ見ていない方はぜひぜひ。
→秦 基博「言ノ葉」の “新海誠ディレクターズ・カット版” MVがついに公開!
開始すぐに新規カットですね。
雪野さんが足の爪を着る(&メガネ装着!!)シーンには、この作品らしいフェチを感じる…!
さて、こっからが本題なのですが!
このMVには、「映画本編を見た人ならきっと見たかったであろう場面」が新規に追加されているのですよ!
これに俺は大興奮したのでこうして記事をかいているわけです。
このMVフルサイズ版は『8月28日(水)よりi-Tunes ほかにて取り扱いがスタートする』とのこと。
ネタバレになるので以下収納します ↓
[アニメ]最高級の、雨ふる楽園の物語。『言の葉の庭』感想
<追記>
映画本編を見て本記事に来た方はぜひこちらもチェックしてみてほしい。
→隠された聖なるエンディング-『言の葉の庭』イメージソングMVについて
まるで世界の秘密そのものみたいに、彼女は見える
雨上がりより雨が降るのを待つ男女。心を寄り添わせていく2人のドラマ。
新海誠監督の最新作「言の葉の庭」は、癒しと葛藤とフェティシズムと青い感動が詰まった、個人的に傑作と呼びたい仕上がりとなっていました。
公開初日に映画館に行き、劇場でブルーレイを購入し、それから今まで毎日ペースで見ています。そしてそのたびこの風情に心洗われる。(劇場ではもうBD,DVDが販売されているのです)
そしてこれは強調しておきたい。コイツは素晴らしい年上のお姉さん萌えをくれる作品だぞ、と。
ヒロイン雪野さんの戦闘力の高さ・・・これは過去の新海作品でもぶっちぎりのものを感じる!演じる花澤香菜さんの演技もお見事!
なんですかこの「守ってあげたい」欲を掻き立てるお姉さんは!!
切ない現代劇ということで前々作「秒速5センチメートル」を思い出す人も多いとおもいます。しかし「言の葉の庭」逃れられないこの新海監督らしさと、秒速とは違ったエモーショナルな展開に心揺さぶられます作品になっているのです。
秒速が好きにしろ嫌いにしろ、なにか引っかかりをのこしたのであればぜひこの「言の葉の庭」も見ていただきたい‥・!
『デジタル時代の映像文学』に相応しい感動作ですよ!
“愛”よりも昔、“孤悲(こい)”のものがたり
これが本作のキャッチフレーズですが、見事ですねぇ。内容ピッタリだし、このフレーズの余韻が本編の美しさを増幅してすらいる。
古典がひとつのパーツとなる本作。“孤悲”とは昔「恋」をそう記述していたことに由来する表記らしいです。
恋=独り、悲しい。
なんかこう、うわぁ新海作品っぽい、と一発で感じさせる叙情パワー溢れるフレーズですね。
監督の作品に何度も打ちのめされてきた自分としてこれはジャストミートに心の深い部分に突き刺さる名コピー・・・!
作品を読み解くに監督のコメントは重要で、例えば制作発表時のコメントには
「愛に至る以前の、孤独に誰かを希求するしかない感情の物語」
「誰かとの愛もきずなも約束もなく、そのはるか手前で立ちすくんでいる個人を描きたい」
と述べており、見終えた後に改めて考えなおしても、なるほどと納得する。
●なんといってもこの絵の美しさは最高級品。
開始すぐ、一番最初のカットに目も心も奪われてしまいました。
雨打つ水面に光が散らばる、しずかな緑の風景。
新海映画の大きな特徴であった、圧倒的に美しい背景や光の演出は、さらに磨きをかけています。自分はアニメは漫画などで雨が降るシーンが大好きなのですが、そういう面でも大満足。ここまでひたすらに雨の雰囲気を捉え描き、ストーリーにまで雨をねりこんだような作品は初めてな気がする。最高・・・ッ!
あまりにも膨大な感情の情報量が自然に宿っているように感じる。
雨だけじゃない。
自然の生命力が、男女のドラマを神秘的に、ドラマティックに盛り上げていますね。
アニメーションの美しさを、これこれこーいう技術でどーのこうの、っていう専門的な話はできません。でも本当にただただ美しい。
静かな透明感は始まってからずっと終わるまで観るものの心を支配する。
コンパクトな作品なのでサクッと見られる。そして上質な恋物語を味わえた満足感と、心がどこかスッキリとみずみずしくなった感覚を与えてくれます。
単純な絵の美しさひとつとっても突き抜けた魅力があり、お気に入りの画集や絵本を何度も手にとって開いてしまうように、気づけば見たくなっている。そしてBDを再生している‥・。
美しい風景を紡ぐ新海監督の最新作は、紛れもなく過去最高の到達点。
綺麗なアニメが見たいならもうこれでキマリくらいの勢いで推したい。
話もツボだし絵も素晴らしいし、俺にとってもはや楽園のような作品。
いろんなパターンと天気の雨を書き分けている。
はじける水滴。霧のようにただよう水蒸気。水面に広がる波紋。
そんな風景のリアリティは、リアルだけれど「アニメならでは」となぜか思えてしまう。
それでいて明らかに作中の雨はキャラクターの想いが乗せられているんですよね。
優しく、時に激しく降り注ぐ雨は、物言わず何かを伝えてくるのです。
そんなわけで深読みもはかどってしまうんだよなぁ。
●キャラクター
主人公・孝雄は靴職人をめざす15歳の男の子。
大人びた静かな少年で、雨の日に雪野さんに会い続けてどんどん彼女に惹かれていく。15歳らしからぬ成熟を感じさせますが、ラストシーンで自分の気持ちを爆発させる場面はすごく切なく、同時に嬉しくも思ったりもした。
ヒロインの雪野さんはとってもかわいい。少年が憧れる。深みにハマる。吸い込まれる。それが当たり前のような、チャーミングでミステリアスな女の人。
そのことを前提とした上で、「でも結構、雪野さんってヒドいよね?」というツッコミをしながら、ストーリーについて書いてみる次の項目へ移りますw
というか、BDのコメンタリーを聞いてたら新海監督自身「雪野さんはヒドい女」と連呼しており(愛情あってのものであるのは分かるし、コメンタリー終盤でフォローを入れていましたがw)、あ、やっぱりそう思うよねと思った。
心の弱った、大人のズルさも見せる、女性です。もう27歳です。
だからこそ少年は恋をしたんだろう。
だからこそ最後にちゃんと泣いたのだろう。
●ストーリー、というか気になったシーンを順番に上げていく
ここからはネタバレあり。長くなったので○で区切っています。
○出会いの短歌
『雷神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ 』
孝雄と初めてあった雨の日、雪野さんはそう言って立ち去ります。
ミステリアスだけどここは結構恥ずかしくもあって、大人のイタズラ感がとてもかわいらしいシーンでもある。
この短歌を言う前、空の遠いところでチカチカっと稲妻が走る。
こういう天気のこういう場面でスッと万葉集の恋歌を放てる、彼女の知性がかいま見える場面でもありますね。
○ベールに包まれた存在からの変化
本編序盤が終わったくらいに「雨が降ったら、また会えるかもね」といったあやふやな約束を取り付けた後、ドラマティックなピアノをBGMに2人が近づいて交流を深めていくのが描かれます。
分かりやすいのが東屋での2人の距離感ですね。どんどん近くなっている。
でも間違えちゃいけないのは、距離が近くなっているのは孝雄が近づいていっているからです。雪野さんの座り位置は変わらない。
彼女は自分のことは教えないし、自分から近づこうともしない。でも「雨の朝はここにいるよ」と少年を惑わせる約束をしちゃう。
あ、やっぱり雪野さん、けっこうダメな女性だと思うw
大人の女性のミステリアスな魅力というのは、時に少年を突き放す残酷さを秘めている場合が多い。むしろだからこそ、少年はその神秘を知りたくて触れてみたくて、欲を持ってしまうのだけれど。
序章が終わったくらいから、謎を秘めただけじゃない雪野さんの魅力がどんどん見えてくる。
チョコをどっさりカバンから取り出した時の、少しはしゃいだ様子も
東屋にやってきた孝雄に手を振って笑顔で挨拶する様子も
料理は上手じゃなくて、それを知られた時のむくれ顔も、
ああ・・・なんてかわいいお姉さんなんだ・・・とジワジワと心にも波紋が広がる。
そういう雪野さんの素の部分が見えてくることで、孝雄が彼女に近づいていっているのだなという実感が湧く。
そして電車に乗ろうとしても乗れなかった雪野さん。ここで「サボっているのではなく、何か別の理由が?」と思わせて、その後彼女の疲弊した心がどんどん見えてくる。
余談ですが駅のホームで電車を待っていた雪野さんの横顔が、やや幼い顔立ちに見えて、その時の彼女の胸の内を想像しても、非常にここは好きなシーンです。
ミステリアス。かわいい。大人の色気もある。そしてそれだけじゃなく、何かに傷つき疲れてここにいる。そのことが少年の「はやく大人になってこの人を守りたい」という気持ちにつながっていく感じがする。だから主人公は焦っていくんだ。
これは監督自身が言っていたことですが、親しくなっていく中で「パーソナルスペースとしての傘」が2人の距離感を示しています。
中盤まで、いろんなシーンで雪野さんは傘をさします。これは外界との遮断。孝雄と話している時にも傘をさして、孝雄はさしていない。明らかな距離感。
だからこそ終盤から傘をさすことなく雨に打たれる雪野さんは、その心をどんどん暴かれていく。
○極上の濡れ場!
雪野先生のズルさを感じさせるシーンは結構あって、その代表的な場面であり、作品中でも最大級のインパクトがあるのが、「雪野さんの足を測る」場面だと思います。
孝雄が「靴を作ってるんです。女性の靴です」といった段階でピンときたような表情を見せる。女のカン抜きでもあのシチュじゃあ好意まるわかりだと思うがそこは男子高校生クオリティ。彼のかわいらしい攻めの姿勢が見える。
というか彼の気持ちをほぼ察した上で採寸をOKしたのだろうから、雪野さんは本当に、本当によ…少年の心を弄ぶとは言わんが、無遠慮に刺激しやがってよ…!!
でもそんな所もいいんだ。惑わされたいのだ。「(今作ってるのは)女性の靴です」と言われた後の雪野さんの表情の変化!!ヤバイですよ!!かわいすぎますよ!!
その後だ。渾身の気合がこもった、この映画1番(!?)の見せ場が来る。
つまり濡れ場。ベッドシーンみたいなものですよこれは。接触です。
このシーンのこだわりはこのインタビューページでもたっぷり語られているのでぜひファンは読んでおきたい所。
→『言の葉の庭』新海誠監督インタビュー「これまでの作品と違うのは主人公が“他人を知ろう”としている事」
このシーンの官能たちのぼる緊張感は、すごい。
エロティックでフェチズムを感じる。潔で、けして性的な意味合いを含まない接触。
だけど誰かの足を触る機会なんて普通そうはない。それも男子高校生が、憧れのお姉さんの、神秘的なその身体に触れるなんて。その体温を、この肌で知れるなんて。
どう考えたって興奮しますよ!
キスシーンだって無いこの映画における男女の交わりは、まさにこの採寸シーンが果たしている。響く雨音。吹き付けるちょっと冷えた風。なにも喋らない2人。静寂がさらに胸をドキドキさせてくれます。
この濡れ場、「あなたのための靴をきっと作ります」という宣言に近いものであるので、それを受け入れた時点で雪野さんにはちょっとした責任が生じると思うんですよ。少年をその気にさせちゃった責任みたいなのが。それであの告白シーンでは彼の思いを突っぱねる。やっぱりヒドいや・・・。
○「今まで生きてきて、いまが一番、幸せかもしれない」
終盤、そんな2人のモノローグが重なる場面。この時一番、視聴者も幸せ。
その直後に孝雄が踏みだして、彼の気持ちを雪野さんは受け取らない。
「今が一番幸せなのかもしれない」
これを孝雄が言うのは十分理解ができる。でも雪野さんの場合じゃ事情が違うじゃないかと。実際この直後に孝雄から告白を受けてそれを断る。
雪野さんにとっての「しあわせ」とは、「自分に憧れてくれて波長もあう年下の子に優しくしてもらえる」ことなのか?と思うと、どんどんと雪野さんの、大人の女性としてのズルさとか狡猾さとかが見えてくる。
でもそんな彼女が嫌いなんじゃなくて、そういう汚い方法で救いを求めてしまうほど彼女は弱っていたんだなという風に思える。愛おしいじゃないですか。いくらでも利用されますよ男の子は。夢を見せて下さいよ男の子に。
孝雄を受け入れない選択は、彼女の立場にたって考えてみればそりゃ当然なもの。
なにせ12も年下の、高校生の男の子です。好きですと言われて嬉しいです私もです、なんてスッと言えてしまう大人は、それこそとんでもない大人だ。
ここは大人として少年を突き放さなくちゃ駄目だったシーンなんですよね。
だから雪野さんは間違っちゃいない。正解したのです。間違えていたのは、なにか期待をしすぎてしまった俺だよ・・・。
ここまでガッツリ孝雄に感情移入していたので「そりゃないぜ雪野さーーーん」とほぼ心の中で泣いていた。
「1人で歩く練習をしていたの。靴がなくても」
これは致命的な一言で、靴職人を目指して彼女のための靴を作っていた孝雄を、これほど裏切るセリフもなかなか無い。
○クライマックス、救われていた雪野さん
駆け出す雪野さんと一緒にハッとさせるようなBGMがタイミングよく入ってきて、こっからがクライマックスだ!と誰もがわかる流れ。
はちきれんばかりの激情が心の底から溢れ出てくる名シーンです。
ここで注目したいのは雪野さんが裸足で走ったこと。
靴を履かず裸足で駆け出して、転んで、なんとか主人公の元へ辿り着く。→そして主人公に抱きつく。という流れは、
裸足じゃ歩けない。進めない。だから靴(主人公)を求めた。
という解釈で見たんだけど、都合よく考えすぎかなぁ・・・w
主人公に抱きついてからのセリフがこれ。
「あの場所で わたし あなたに 救われてたの」
と号泣しながらしゃくりあげながら振り絞って言う。
「好き」じゃなく「救われていた」。
これがつまりこの46分の映画の中で深められた絆なのだ。恋愛感情ではなくても、あなたは大切だった。あなたのおかげで救われた。
恋報われずとも、愛しい女性にここまで言ってもらえる。
孝雄にとってけして寂しい結果じゃない。良かったよ・・・。
「主人公が作った靴を履いた雪野さんが見たかったよ!」と強く思います。
あの靴はタカオの恋心の象徴でもあり、雪野さんが再び歩き出すための道具でもある。
なら靴を渡すシーンこそが、この作品のクライマックスになったのでは…?
まだ見ぬその感動のラストシーンは、見終えた人それぞれの想像に託されている。一度強く心結びついた2人なのだから、もう俺はばっちりハッピーエンドが見えていますよ!
○手紙に描かれた靴のイラストの意味
最後。雪野さんから孝雄に向けた手紙が描かれます。
最後の「またお便りをします」の後ろに、可愛らしい靴のイラストが描いてあることが、とても意味深に感じました。
靴なんかなくても歩こうとしていた雪野さん。
しかし孝雄への手紙で、次の手紙を書く約束をしながら、靴のイラストを加えている。これはもちろん孝雄が靴職人を目指していることを意識してのものでしょうが、「気まぐれに書いただけだよ」とするだけじゃあ味気ないじゃないですか。ここは雪野さんの心の中を想像して楽しんでおくべき小ネタなのです。
個人的には遠回しな「あの時話してくれた女性の靴の話、まだ覚えてるんだよ?」というアピールなのでは説を押す。
前向きなエンディングであることを信じて、きっと孝雄はこのあと雪野さんに会いに行ったことを信じて。
ちなみにこの靴のイラスト、BD特典の動画コンテの段階では描かれていませんでした。後から追加された要素なのでしょう。なにげに特別なものである気がする。
○完成した靴のデザインから深読み
孝雄が完成させた靴は、靴紐に葉っぱをモチーフにした部品がついていました。
これはあの緑に囲まれた東屋でのひとときをイメージしてあしらったワンポイントでしょう。
靴に宿るのは、2人で過ごした時間の思い出。
靴とは歩く人を助けるためのもの。雪野さんに捧げる靴に、思い出を象徴するワンポイントが付けられて、いつか届けられるというラストです。
つまりあの頃の2人の時間が、雪野さんを前に歩ませることを示しているのかな、と。孝雄自身の「自分と過ごした時間を忘れてほしくない」という願いも込められていそうですが。
なんにせよ「靴に宿る思い出」というあの靴デザインはとても趣深いものです。
○個人的な未来予想図
2人が恋人になってほしい、という明確な希望があるわけではありません。
ただ、2人の関係がここで終わってしまってはいけない。終わってほしくない。そういう気持ちが自分には強い。結ばれるかはともかく、再会をしてほしい。雪野さんに、孝雄の作った靴を履いてほしい。
「手紙で交流続けてるじゃん?」と思いますが「秒速5センチメートル」ファンとしては、手紙の交流なんていつ途切れるかわかったもんじゃないと胸に刻んであるのです。
「孝雄は会いにいこう」と言っていますが、本当にちゃんと会いにいってくれよ、絶対にだぞ!
まだ時期じゃない、あの人に相応しくない、とか言ってる場合じゃないぞ。
上級生の教室に乗り込んだ時のあの衝動でもって四国へ飛ぶんだよ!!
そしてちゃんと靴を渡すのだ。あなたのために作った靴です、と言って渡す。それがこの作品の本当のラストシーン。その後2人の関係がどうなるかは分からないしそこは拘らない。できれば幸せになってほしいですけどね。
「心が弱っていた時期の思い出」なのではなく。「青春時代の無謀な恋」なのではなく。2人にとって「靴」にまつわる感情を精算してほしいと思う。
そして描かれていない未来は、わりと前向きな演出でもって予感を与えてくれています。だから俺は、この作品は後味のいい作品として認識していますよ。
スタッフロール後、四国で教師をする雪野さんは、授業中にひと窓のむこうに視線を向ける。そこには雲から光がさしている。
まさに万葉集についての授業をしている最中だったので、万葉集から孝雄とのやりとりを思い出したんじゃないかな。
窓の外に目を向ける雪野さんは、「何かが遠くからくる予感」があったのではないかと、できれば2人に再会してほしいハッピーエンド論者の俺は主張したいよ!
遠くから来る誰かは、きっと一回り大人になって、
照れくさそうに自作の靴をプレゼントしにくるんだよ…。ね…。
12という歳の差をリアルに考えればなかなかむずかしい2人だとは思いますが、物語としてはそこを乗り越えて関係をスタートさせる2人を想像してニヤニヤするのである。
“愛”よりも昔、“孤悲”のものがたり
“孤悲”はいつか愛に変わるのだろうか。愛になる前に霧散してしまい、立ちすくんでしまうだろうか。究極的にはもうどちらでもいい。「どうか幸せになってほしい」と祈ることが、きっとこの作品の中のゴールなんですよね。
孝雄が雪野さんにそう思うように。雪野さんが孝雄にそう思うように。物語の受け手である自分も2人の幸せを祈るのだ。
幸せとは、別に誰かと恋人になることだけでは決してないはず。
でもラブストーリーとしては、恋人になって幸せになることを是として欲しいな。
新海監督曰く、「はじめてのラブストーリー」とのことですしね。
○便箋にプリントされていた英語
小ネタ中の小ネタですが・・・
雪野さんからの便箋の一番下にプリントされていた英文がコレです。
・・・ up and Fell in love.I asked my sweerheart ・・・
調べてみたところ、恐らくこれはジェイ・リビングストンとレイ・エバンズによる楽曲「ケセラセラ(Whatever Will Be, Will Be)」のワンフレーズ
When I grew up and fell in love
I asked my sweetheart
What lies ahead
ここの一部分だったのではないでしょうか。ケセラセラ自体はわりと有名な曲で聞いたことがありましたが、歌詞を読んだのは今回の更新のためが初めてでした。なかなか、面白いかもしれない。
便箋にプリントされていたものまで考察するのもアレですがまぁね、楽しいからいいよね!
長々と書きましたが、つまりは「ハッピーエンドを十分に信じられる結末」出会ったということです。余韻たっぷりですごく好き。2人のいろんな未来を想像して楽しめる。それこそハッピーエンドも、ビターなものも。
新海監督作品では珍しいくらい女性にも好かれそうなスイーツ映画の雰囲気を醸し出しています。女性にも好かれそうってのは完全に印象だけで言っていますが。
ネットの一部では、舞台挨拶にて新海監督が2人のその後について言及したという情報も見かけました。
その内容はこれからダ・ヴィンチで連載され、1冊にまとまるであろう小説版でも語られるのでしょうが、正直ちょっとこわいなぁ…。
秒速5センチメートルの小説版と同じく、新海監督が書く小説とのことですが、秒速の小説はいい意味でボカされていた部分を明確に描写されていて決着したんですよね。
あまりにも細部が見えすぎるということは、新海監督作品においてはけっこう恐ろしい所がある。
でもいざ小説が連載されだしたらダ・ヴィンチ買う気まんまんです。
主題歌は秦基博さんの「Rain」。大江千里さんのカバー曲です。
これは歌詞から曲調から雰囲気から、作品の一部になっていましたね。
新海監督が「Rain」を好きで、きっとそこからふくらませた作品だから、合って当然と言えるかもしれせん。しかし改めて、儚さと強さと体温のぬくもりを感じさせる秦さんの歌声は、本当にピッタリだった。
スタッフインタビューで新海監督の言葉にとても胸に染み入るものがありました。
『孤独であることを、乗り越えるべきものとして描くようなアニメーションじゃないものを作りたいとずっと思っている』という言葉が印象的でしたね。
これはすべての新海作品に通ずつテーマだと思います。孤独は打ち消すものでも否定されるものでもない、誰も逃げることができない真理なのだと。だからどうそれを向きあうかで、人のドラマは生まれるんだな。
で、これもコメンタリーで監督がで触れられていたことだけれど、雪野さんの胸の描き方の話。
たしかにこれまでの新海作品にはないような注目ができていると見ている途中から自覚できました。
雪野さん、おっぱいが目立つ。というか女性として成熟したエロスを感じます。
他の女性キャラはほとんどおらず、セクシャルな匂いを感じさせる要素も他にない。
だからこそか、雪野さんの、けして飛び抜けたものではない、普通の身体付きに、男子の邪な目線は突き刺さる。普通とは言ったけれど、足はスッと美しいし、たぶんバストサイズは平均よりちょい大きいくらいじゃねーのかなと思うけれど、設定上素晴らしいプロポーションの持ち主というわけではないんだ。
心を弱らせた、秘密めいたお姉さん。まぁ、健康的な男子なら、ね。惹かれるよ。
ブックレットに載っていた大野真さんの映画評、素晴らしかったです。
これが読めただけでもブックレットを買う価値があったと思えますし
その以外の部分でも作品をふかく知れる情報が詰まっていました。
劇場限定スリーブは、キラキラッと光のように雨が舞っているように見える仕様。
画像だと見えづらいかな。上の方がひかっています。これはいいな。
雨音がずっと鳴っていて、身体に染み付いてしまうんじゃないかというくらい、心地よく鼓膜を震わせてくれた。いまの梅雨の季節にぴったりの、素晴らしく美しいアニメーションでした。
問答無用に胸打たれる人がきっと結構いる。自分のように。
不安定で愛おしくて切なくて寂しくて、救いがあって綺麗で・・・
そして年上のお姉さんへの愛がとまらない作品です。(結論はそこ
あー、この世界に沈みつづけていたい。なんて綺麗なんだ。
月刊アフタヌーンでは漫画版も連載されていますし、小説版も監督自身が執筆すると発表されています。これからの展開にも期待したいですね。がっつりハマってる。
ところで劇場だと「言の葉の庭」上映前に「誰かのまなざし」という短編アニメを見ることができましたが、こっちに涙ボロボロ出ました。こちらも素晴らしい作品です。いずれパッケージ化されないかなぁ。
映画本編を見て本記事に来た方はぜひこちらもチェックしてみてほしい。
→隠された聖なるエンディング-『言の葉の庭』イメージソングMVについて
まるで世界の秘密そのものみたいに、彼女は見える
雨上がりより雨が降るのを待つ男女。心を寄り添わせていく2人のドラマ。
新海誠監督の最新作「言の葉の庭」は、癒しと葛藤とフェティシズムと青い感動が詰まった、個人的に傑作と呼びたい仕上がりとなっていました。
公開初日に映画館に行き、劇場でブルーレイを購入し、それから今まで毎日ペースで見ています。そしてそのたびこの風情に心洗われる。(劇場ではもうBD,DVDが販売されているのです)
劇場アニメーション『言の葉の庭』 Blu-ray 【サウンドトラックCD付】 (2013/06/21) 入野自由、花澤香菜 他 商品詳細を見る |
そしてこれは強調しておきたい。コイツは素晴らしい年上のお姉さん萌えをくれる作品だぞ、と。
ヒロイン雪野さんの戦闘力の高さ・・・これは過去の新海作品でもぶっちぎりのものを感じる!演じる花澤香菜さんの演技もお見事!
なんですかこの「守ってあげたい」欲を掻き立てるお姉さんは!!
切ない現代劇ということで前々作「秒速5センチメートル」を思い出す人も多いとおもいます。しかし「言の葉の庭」逃れられないこの新海監督らしさと、秒速とは違ったエモーショナルな展開に心揺さぶられます作品になっているのです。
秒速が好きにしろ嫌いにしろ、なにか引っかかりをのこしたのであればぜひこの「言の葉の庭」も見ていただきたい‥・!
『デジタル時代の映像文学』に相応しい感動作ですよ!
“愛”よりも昔、“孤悲(こい)”のものがたり
これが本作のキャッチフレーズですが、見事ですねぇ。内容ピッタリだし、このフレーズの余韻が本編の美しさを増幅してすらいる。
古典がひとつのパーツとなる本作。“孤悲”とは昔「恋」をそう記述していたことに由来する表記らしいです。
恋=独り、悲しい。
なんかこう、うわぁ新海作品っぽい、と一発で感じさせる叙情パワー溢れるフレーズですね。
監督の作品に何度も打ちのめされてきた自分としてこれはジャストミートに心の深い部分に突き刺さる名コピー・・・!
作品を読み解くに監督のコメントは重要で、例えば制作発表時のコメントには
「愛に至る以前の、孤独に誰かを希求するしかない感情の物語」
「誰かとの愛もきずなも約束もなく、そのはるか手前で立ちすくんでいる個人を描きたい」
と述べており、見終えた後に改めて考えなおしても、なるほどと納得する。
●なんといってもこの絵の美しさは最高級品。
開始すぐ、一番最初のカットに目も心も奪われてしまいました。
雨打つ水面に光が散らばる、しずかな緑の風景。
新海映画の大きな特徴であった、圧倒的に美しい背景や光の演出は、さらに磨きをかけています。自分はアニメは漫画などで雨が降るシーンが大好きなのですが、そういう面でも大満足。ここまでひたすらに雨の雰囲気を捉え描き、ストーリーにまで雨をねりこんだような作品は初めてな気がする。最高・・・ッ!
あまりにも膨大な感情の情報量が自然に宿っているように感じる。
雨だけじゃない。
自然の生命力が、男女のドラマを神秘的に、ドラマティックに盛り上げていますね。
アニメーションの美しさを、これこれこーいう技術でどーのこうの、っていう専門的な話はできません。でも本当にただただ美しい。
静かな透明感は始まってからずっと終わるまで観るものの心を支配する。
コンパクトな作品なのでサクッと見られる。そして上質な恋物語を味わえた満足感と、心がどこかスッキリとみずみずしくなった感覚を与えてくれます。
単純な絵の美しさひとつとっても突き抜けた魅力があり、お気に入りの画集や絵本を何度も手にとって開いてしまうように、気づけば見たくなっている。そしてBDを再生している‥・。
美しい風景を紡ぐ新海監督の最新作は、紛れもなく過去最高の到達点。
綺麗なアニメが見たいならもうこれでキマリくらいの勢いで推したい。
話もツボだし絵も素晴らしいし、俺にとってもはや楽園のような作品。
いろんなパターンと天気の雨を書き分けている。
はじける水滴。霧のようにただよう水蒸気。水面に広がる波紋。
そんな風景のリアリティは、リアルだけれど「アニメならでは」となぜか思えてしまう。
それでいて明らかに作中の雨はキャラクターの想いが乗せられているんですよね。
優しく、時に激しく降り注ぐ雨は、物言わず何かを伝えてくるのです。
そんなわけで深読みもはかどってしまうんだよなぁ。
●キャラクター
主人公・孝雄は靴職人をめざす15歳の男の子。
大人びた静かな少年で、雨の日に雪野さんに会い続けてどんどん彼女に惹かれていく。15歳らしからぬ成熟を感じさせますが、ラストシーンで自分の気持ちを爆発させる場面はすごく切なく、同時に嬉しくも思ったりもした。
ヒロインの雪野さんはとってもかわいい。少年が憧れる。深みにハマる。吸い込まれる。それが当たり前のような、チャーミングでミステリアスな女の人。
そのことを前提とした上で、「でも結構、雪野さんってヒドいよね?」というツッコミをしながら、ストーリーについて書いてみる次の項目へ移りますw
というか、BDのコメンタリーを聞いてたら新海監督自身「雪野さんはヒドい女」と連呼しており(愛情あってのものであるのは分かるし、コメンタリー終盤でフォローを入れていましたがw)、あ、やっぱりそう思うよねと思った。
心の弱った、大人のズルさも見せる、女性です。もう27歳です。
だからこそ少年は恋をしたんだろう。
だからこそ最後にちゃんと泣いたのだろう。
●ストーリー、というか気になったシーンを順番に上げていく
ここからはネタバレあり。長くなったので○で区切っています。
○出会いの短歌
『雷神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ 』
孝雄と初めてあった雨の日、雪野さんはそう言って立ち去ります。
ミステリアスだけどここは結構恥ずかしくもあって、大人のイタズラ感がとてもかわいらしいシーンでもある。
この短歌を言う前、空の遠いところでチカチカっと稲妻が走る。
こういう天気のこういう場面でスッと万葉集の恋歌を放てる、彼女の知性がかいま見える場面でもありますね。
○ベールに包まれた存在からの変化
本編序盤が終わったくらいに「雨が降ったら、また会えるかもね」といったあやふやな約束を取り付けた後、ドラマティックなピアノをBGMに2人が近づいて交流を深めていくのが描かれます。
分かりやすいのが東屋での2人の距離感ですね。どんどん近くなっている。
でも間違えちゃいけないのは、距離が近くなっているのは孝雄が近づいていっているからです。雪野さんの座り位置は変わらない。
彼女は自分のことは教えないし、自分から近づこうともしない。でも「雨の朝はここにいるよ」と少年を惑わせる約束をしちゃう。
あ、やっぱり雪野さん、けっこうダメな女性だと思うw
大人の女性のミステリアスな魅力というのは、時に少年を突き放す残酷さを秘めている場合が多い。むしろだからこそ、少年はその神秘を知りたくて触れてみたくて、欲を持ってしまうのだけれど。
序章が終わったくらいから、謎を秘めただけじゃない雪野さんの魅力がどんどん見えてくる。
チョコをどっさりカバンから取り出した時の、少しはしゃいだ様子も
東屋にやってきた孝雄に手を振って笑顔で挨拶する様子も
料理は上手じゃなくて、それを知られた時のむくれ顔も、
ああ・・・なんてかわいいお姉さんなんだ・・・とジワジワと心にも波紋が広がる。
そういう雪野さんの素の部分が見えてくることで、孝雄が彼女に近づいていっているのだなという実感が湧く。
そして電車に乗ろうとしても乗れなかった雪野さん。ここで「サボっているのではなく、何か別の理由が?」と思わせて、その後彼女の疲弊した心がどんどん見えてくる。
余談ですが駅のホームで電車を待っていた雪野さんの横顔が、やや幼い顔立ちに見えて、その時の彼女の胸の内を想像しても、非常にここは好きなシーンです。
ミステリアス。かわいい。大人の色気もある。そしてそれだけじゃなく、何かに傷つき疲れてここにいる。そのことが少年の「はやく大人になってこの人を守りたい」という気持ちにつながっていく感じがする。だから主人公は焦っていくんだ。
これは監督自身が言っていたことですが、親しくなっていく中で「パーソナルスペースとしての傘」が2人の距離感を示しています。
中盤まで、いろんなシーンで雪野さんは傘をさします。これは外界との遮断。孝雄と話している時にも傘をさして、孝雄はさしていない。明らかな距離感。
だからこそ終盤から傘をさすことなく雨に打たれる雪野さんは、その心をどんどん暴かれていく。
○極上の濡れ場!
雪野先生のズルさを感じさせるシーンは結構あって、その代表的な場面であり、作品中でも最大級のインパクトがあるのが、「雪野さんの足を測る」場面だと思います。
孝雄が「靴を作ってるんです。女性の靴です」といった段階でピンときたような表情を見せる。女のカン抜きでもあのシチュじゃあ好意まるわかりだと思うがそこは男子高校生クオリティ。彼のかわいらしい攻めの姿勢が見える。
というか彼の気持ちをほぼ察した上で採寸をOKしたのだろうから、雪野さんは本当に、本当によ…少年の心を弄ぶとは言わんが、無遠慮に刺激しやがってよ…!!
でもそんな所もいいんだ。惑わされたいのだ。「(今作ってるのは)女性の靴です」と言われた後の雪野さんの表情の変化!!ヤバイですよ!!かわいすぎますよ!!
その後だ。渾身の気合がこもった、この映画1番(!?)の見せ場が来る。
つまり濡れ場。ベッドシーンみたいなものですよこれは。接触です。
このシーンのこだわりはこのインタビューページでもたっぷり語られているのでぜひファンは読んでおきたい所。
→『言の葉の庭』新海誠監督インタビュー「これまでの作品と違うのは主人公が“他人を知ろう”としている事」
このシーンの官能たちのぼる緊張感は、すごい。
エロティックでフェチズムを感じる。潔で、けして性的な意味合いを含まない接触。
だけど誰かの足を触る機会なんて普通そうはない。それも男子高校生が、憧れのお姉さんの、神秘的なその身体に触れるなんて。その体温を、この肌で知れるなんて。
どう考えたって興奮しますよ!
キスシーンだって無いこの映画における男女の交わりは、まさにこの採寸シーンが果たしている。響く雨音。吹き付けるちょっと冷えた風。なにも喋らない2人。静寂がさらに胸をドキドキさせてくれます。
この濡れ場、「あなたのための靴をきっと作ります」という宣言に近いものであるので、それを受け入れた時点で雪野さんにはちょっとした責任が生じると思うんですよ。少年をその気にさせちゃった責任みたいなのが。それであの告白シーンでは彼の思いを突っぱねる。やっぱりヒドいや・・・。
○「今まで生きてきて、いまが一番、幸せかもしれない」
終盤、そんな2人のモノローグが重なる場面。この時一番、視聴者も幸せ。
その直後に孝雄が踏みだして、彼の気持ちを雪野さんは受け取らない。
「今が一番幸せなのかもしれない」
これを孝雄が言うのは十分理解ができる。でも雪野さんの場合じゃ事情が違うじゃないかと。実際この直後に孝雄から告白を受けてそれを断る。
雪野さんにとっての「しあわせ」とは、「自分に憧れてくれて波長もあう年下の子に優しくしてもらえる」ことなのか?と思うと、どんどんと雪野さんの、大人の女性としてのズルさとか狡猾さとかが見えてくる。
でもそんな彼女が嫌いなんじゃなくて、そういう汚い方法で救いを求めてしまうほど彼女は弱っていたんだなという風に思える。愛おしいじゃないですか。いくらでも利用されますよ男の子は。夢を見せて下さいよ男の子に。
孝雄を受け入れない選択は、彼女の立場にたって考えてみればそりゃ当然なもの。
なにせ12も年下の、高校生の男の子です。好きですと言われて嬉しいです私もです、なんてスッと言えてしまう大人は、それこそとんでもない大人だ。
ここは大人として少年を突き放さなくちゃ駄目だったシーンなんですよね。
だから雪野さんは間違っちゃいない。正解したのです。間違えていたのは、なにか期待をしすぎてしまった俺だよ・・・。
ここまでガッツリ孝雄に感情移入していたので「そりゃないぜ雪野さーーーん」とほぼ心の中で泣いていた。
「1人で歩く練習をしていたの。靴がなくても」
これは致命的な一言で、靴職人を目指して彼女のための靴を作っていた孝雄を、これほど裏切るセリフもなかなか無い。
○クライマックス、救われていた雪野さん
駆け出す雪野さんと一緒にハッとさせるようなBGMがタイミングよく入ってきて、こっからがクライマックスだ!と誰もがわかる流れ。
はちきれんばかりの激情が心の底から溢れ出てくる名シーンです。
ここで注目したいのは雪野さんが裸足で走ったこと。
靴を履かず裸足で駆け出して、転んで、なんとか主人公の元へ辿り着く。→そして主人公に抱きつく。という流れは、
裸足じゃ歩けない。進めない。だから靴(主人公)を求めた。
という解釈で見たんだけど、都合よく考えすぎかなぁ・・・w
主人公に抱きついてからのセリフがこれ。
「あの場所で わたし あなたに 救われてたの」
と号泣しながらしゃくりあげながら振り絞って言う。
「好き」じゃなく「救われていた」。
これがつまりこの46分の映画の中で深められた絆なのだ。恋愛感情ではなくても、あなたは大切だった。あなたのおかげで救われた。
恋報われずとも、愛しい女性にここまで言ってもらえる。
孝雄にとってけして寂しい結果じゃない。良かったよ・・・。
「主人公が作った靴を履いた雪野さんが見たかったよ!」と強く思います。
あの靴はタカオの恋心の象徴でもあり、雪野さんが再び歩き出すための道具でもある。
なら靴を渡すシーンこそが、この作品のクライマックスになったのでは…?
まだ見ぬその感動のラストシーンは、見終えた人それぞれの想像に託されている。一度強く心結びついた2人なのだから、もう俺はばっちりハッピーエンドが見えていますよ!
○手紙に描かれた靴のイラストの意味
最後。雪野さんから孝雄に向けた手紙が描かれます。
最後の「またお便りをします」の後ろに、可愛らしい靴のイラストが描いてあることが、とても意味深に感じました。
靴なんかなくても歩こうとしていた雪野さん。
しかし孝雄への手紙で、次の手紙を書く約束をしながら、靴のイラストを加えている。これはもちろん孝雄が靴職人を目指していることを意識してのものでしょうが、「気まぐれに書いただけだよ」とするだけじゃあ味気ないじゃないですか。ここは雪野さんの心の中を想像して楽しんでおくべき小ネタなのです。
個人的には遠回しな「あの時話してくれた女性の靴の話、まだ覚えてるんだよ?」というアピールなのでは説を押す。
前向きなエンディングであることを信じて、きっと孝雄はこのあと雪野さんに会いに行ったことを信じて。
ちなみにこの靴のイラスト、BD特典の動画コンテの段階では描かれていませんでした。後から追加された要素なのでしょう。なにげに特別なものである気がする。
○完成した靴のデザインから深読み
孝雄が完成させた靴は、靴紐に葉っぱをモチーフにした部品がついていました。
これはあの緑に囲まれた東屋でのひとときをイメージしてあしらったワンポイントでしょう。
靴に宿るのは、2人で過ごした時間の思い出。
靴とは歩く人を助けるためのもの。雪野さんに捧げる靴に、思い出を象徴するワンポイントが付けられて、いつか届けられるというラストです。
つまりあの頃の2人の時間が、雪野さんを前に歩ませることを示しているのかな、と。孝雄自身の「自分と過ごした時間を忘れてほしくない」という願いも込められていそうですが。
なんにせよ「靴に宿る思い出」というあの靴デザインはとても趣深いものです。
○個人的な未来予想図
2人が恋人になってほしい、という明確な希望があるわけではありません。
ただ、2人の関係がここで終わってしまってはいけない。終わってほしくない。そういう気持ちが自分には強い。結ばれるかはともかく、再会をしてほしい。雪野さんに、孝雄の作った靴を履いてほしい。
「手紙で交流続けてるじゃん?」と思いますが「秒速5センチメートル」ファンとしては、手紙の交流なんていつ途切れるかわかったもんじゃないと胸に刻んであるのです。
「孝雄は会いにいこう」と言っていますが、本当にちゃんと会いにいってくれよ、絶対にだぞ!
まだ時期じゃない、あの人に相応しくない、とか言ってる場合じゃないぞ。
上級生の教室に乗り込んだ時のあの衝動でもって四国へ飛ぶんだよ!!
そしてちゃんと靴を渡すのだ。あなたのために作った靴です、と言って渡す。それがこの作品の本当のラストシーン。その後2人の関係がどうなるかは分からないしそこは拘らない。できれば幸せになってほしいですけどね。
「心が弱っていた時期の思い出」なのではなく。「青春時代の無謀な恋」なのではなく。2人にとって「靴」にまつわる感情を精算してほしいと思う。
そして描かれていない未来は、わりと前向きな演出でもって予感を与えてくれています。だから俺は、この作品は後味のいい作品として認識していますよ。
スタッフロール後、四国で教師をする雪野さんは、授業中にひと窓のむこうに視線を向ける。そこには雲から光がさしている。
まさに万葉集についての授業をしている最中だったので、万葉集から孝雄とのやりとりを思い出したんじゃないかな。
窓の外に目を向ける雪野さんは、「何かが遠くからくる予感」があったのではないかと、できれば2人に再会してほしいハッピーエンド論者の俺は主張したいよ!
遠くから来る誰かは、きっと一回り大人になって、
照れくさそうに自作の靴をプレゼントしにくるんだよ…。ね…。
12という歳の差をリアルに考えればなかなかむずかしい2人だとは思いますが、物語としてはそこを乗り越えて関係をスタートさせる2人を想像してニヤニヤするのである。
ひとりで遠くまで歩けるようになったその先に、雪野さんに会いにいく誓いをしている。“独悲”を抜けたあとに、きっと2人はまた近くなる。「歩く練習をしていたのは、きっと俺も同じだと、今は思う。いつかもっと、もっと遠くまで歩けるようになったら、会いに行こう」
“愛”よりも昔、“孤悲”のものがたり
“孤悲”はいつか愛に変わるのだろうか。愛になる前に霧散してしまい、立ちすくんでしまうだろうか。究極的にはもうどちらでもいい。「どうか幸せになってほしい」と祈ることが、きっとこの作品の中のゴールなんですよね。
孝雄が雪野さんにそう思うように。雪野さんが孝雄にそう思うように。物語の受け手である自分も2人の幸せを祈るのだ。
幸せとは、別に誰かと恋人になることだけでは決してないはず。
でもラブストーリーとしては、恋人になって幸せになることを是として欲しいな。
新海監督曰く、「はじめてのラブストーリー」とのことですしね。
○便箋にプリントされていた英語
小ネタ中の小ネタですが・・・
雪野さんからの便箋の一番下にプリントされていた英文がコレです。
・・・ up and Fell in love.I asked my sweerheart ・・・
調べてみたところ、恐らくこれはジェイ・リビングストンとレイ・エバンズによる楽曲「ケセラセラ(Whatever Will Be, Will Be)」のワンフレーズ
When I grew up and fell in love
I asked my sweetheart
What lies ahead
ここの一部分だったのではないでしょうか。ケセラセラ自体はわりと有名な曲で聞いたことがありましたが、歌詞を読んだのは今回の更新のためが初めてでした。なかなか、面白いかもしれない。
便箋にプリントされていたものまで考察するのもアレですがまぁね、楽しいからいいよね!
長々と書きましたが、つまりは「ハッピーエンドを十分に信じられる結末」出会ったということです。余韻たっぷりですごく好き。2人のいろんな未来を想像して楽しめる。それこそハッピーエンドも、ビターなものも。
新海監督作品では珍しいくらい女性にも好かれそうなスイーツ映画の雰囲気を醸し出しています。女性にも好かれそうってのは完全に印象だけで言っていますが。
ネットの一部では、舞台挨拶にて新海監督が2人のその後について言及したという情報も見かけました。
その内容はこれからダ・ヴィンチで連載され、1冊にまとまるであろう小説版でも語られるのでしょうが、正直ちょっとこわいなぁ…。
秒速5センチメートルの小説版と同じく、新海監督が書く小説とのことですが、秒速の小説はいい意味でボカされていた部分を明確に描写されていて決着したんですよね。
あまりにも細部が見えすぎるということは、新海監督作品においてはけっこう恐ろしい所がある。
でもいざ小説が連載されだしたらダ・ヴィンチ買う気まんまんです。
主題歌は秦基博さんの「Rain」。大江千里さんのカバー曲です。
これは歌詞から曲調から雰囲気から、作品の一部になっていましたね。
新海監督が「Rain」を好きで、きっとそこからふくらませた作品だから、合って当然と言えるかもしれせん。しかし改めて、儚さと強さと体温のぬくもりを感じさせる秦さんの歌声は、本当にピッタリだった。
スタッフインタビューで新海監督の言葉にとても胸に染み入るものがありました。
『孤独であることを、乗り越えるべきものとして描くようなアニメーションじゃないものを作りたいとずっと思っている』という言葉が印象的でしたね。
これはすべての新海作品に通ずつテーマだと思います。孤独は打ち消すものでも否定されるものでもない、誰も逃げることができない真理なのだと。だからどうそれを向きあうかで、人のドラマは生まれるんだな。
で、これもコメンタリーで監督がで触れられていたことだけれど、雪野さんの胸の描き方の話。
たしかにこれまでの新海作品にはないような注目ができていると見ている途中から自覚できました。
雪野さん、おっぱいが目立つ。というか女性として成熟したエロスを感じます。
他の女性キャラはほとんどおらず、セクシャルな匂いを感じさせる要素も他にない。
だからこそか、雪野さんの、けして飛び抜けたものではない、普通の身体付きに、男子の邪な目線は突き刺さる。普通とは言ったけれど、足はスッと美しいし、たぶんバストサイズは平均よりちょい大きいくらいじゃねーのかなと思うけれど、設定上素晴らしいプロポーションの持ち主というわけではないんだ。
心を弱らせた、秘密めいたお姉さん。まぁ、健康的な男子なら、ね。惹かれるよ。
ブックレットに載っていた大野真さんの映画評、素晴らしかったです。
これが読めただけでもブックレットを買う価値があったと思えますし
その以外の部分でも作品をふかく知れる情報が詰まっていました。
劇場限定スリーブは、キラキラッと光のように雨が舞っているように見える仕様。
画像だと見えづらいかな。上の方がひかっています。これはいいな。
雨音がずっと鳴っていて、身体に染み付いてしまうんじゃないかというくらい、心地よく鼓膜を震わせてくれた。いまの梅雨の季節にぴったりの、素晴らしく美しいアニメーションでした。
問答無用に胸打たれる人がきっと結構いる。自分のように。
不安定で愛おしくて切なくて寂しくて、救いがあって綺麗で・・・
そして年上のお姉さんへの愛がとまらない作品です。(結論はそこ
あー、この世界に沈みつづけていたい。なんて綺麗なんだ。
月刊アフタヌーンでは漫画版も連載されていますし、小説版も監督自身が執筆すると発表されています。これからの展開にも期待したいですね。がっつりハマってる。
ところで劇場だと「言の葉の庭」上映前に「誰かのまなざし」という短編アニメを見ることができましたが、こっちに涙ボロボロ出ました。こちらも素晴らしい作品です。いずれパッケージ化されないかなぁ。
[アニメ]しっかり生きて。『おおかみこどもの雨と雪』感想。
手元に資料がないものの感想は、記憶が鮮明なうち書かないとなーと。
さて毎月1日は映画の日で1000円で一本見れてしまうってことで、8月1日に細田守監督の最新作「おおかみこどもの雨と雪」を見てきました。感想書いていこうかなと。
「サマーウォーズ」「時をかける少女」といった過去作とは毛色が違った一作でした。
ネタバレあり。
すごく家族を描いた作品だよなぁと。
それは見たまんまなんですが、家族や親子関係といったテーマが力強く提示されていました。
そういえばMAGネットの番組内インタビューでも「母親という存在に注目した物語」について語っていましたが、まさにそういうものに仕上がってたと。
狼男だとか人間と狼のハーフだとかいかにもなファンタジーな存在も登場するのですが、主人公はあくまでも人間の女性。人と狼のハーフの子供2人を育てる母親の姿が描かれます。
子育てに翻弄される母親。痛ましいほどの現実も突きつけられて、この先どう生活するんだろうかとヒヤヒヤさせられた序盤。庭の農園がうまくいかなかった時の絶望感はなかなかのもの。
子育てって本当に大変なんだなぁという思いでいっぱいに。母ちゃん奮闘記です。
そのためか、作中何度もある、主人公が我が子を抱きしめるシーンがとても印象に残る。愛おしそうに子を見つめる暖かな視線。そのたびに涙腺がブルブルっと来てしまう。
しばらく経てばどんどんと季節が巡っていき、今度は子の成長を見守るのがメインに。
成長していく姉の雪と弟の雨。幼稚園に入り、やがては小学校に入学。
人間と狼、半分ずつの血が通っている体。なんのハプニングもなしに、またなんの悩みもなしに普通の小学生でいられる、なんてこともなく。後半は「おおかみこども」としての心の変化や機微を重点をおいて描かれていきました。
人でもある。狼でもある。じゃあ、どんな未来に進もうか。おおかみこどもの2人に選択が大きなポイント。狼であることを面白がっていた雪が人間社会へ溶け込み、狼であることを恐れた雨が野生の世界に見出されていくという、2人の々の選択が面白い。
選択を迫られ、心が離れ、バラバラになりそうな家族。
そんな中でこそ輝いたのが母親の、花の深い愛情でした。
最後の最後までこの映画は母親を描いたものだったと、クライマックスで感じましたね。
「しっかり生きて。」と花がいう。シンプルで、重みがある、やさしい言葉でした。
花という名前は、花のようにいつもに笑顔でいてほしいからという意味が込められていたそうだけれど、それが随所に現れていて面白い。
なんでもできる頼りがいがある人では全然ないし、ハラハラさせられてばかりなんだけど、だからこそか母親の等身大かつ全力の愛情が際立っていたと思います。あの少女が、しゃんと母親になっていった。1人の女性の成長にも爽やかな感動があるのです。
結末としての意外なほどさっぱりとした家族関係もいい。
選択をしたのはおおかみこどもだけではないか。それを見守る親にも選択はあった。
この選択ができるというのは、大きな信頼の証でもあるよな。
本編最後の和らいだ雰囲気の中に、甘酸っぱさと十分な満足感がありました。
ほか静かに胸打たれたのが雪が少年に正体を明かすシーン。
はためくカーテンで姿が見え隠れすることでさらに緊張感がましており見てて息がとまりそうに。単純に映像としても美しいし、「おおかみこどもが人間社会に受け入れられるか」という大きな意味も持つ。社会全体に受け入れられるのはムリでも、受け止めてくれるだれか1人を見つけるための。
雪のもう1つの重要な選択でしたね。おおかみこどもの人としての未来は、もっと見たくなるよなあ。本編は中学に上がった段階で終わってしまうけれど、この先どんなドラマがあるのかって気になってしまう。きっとこの先は描かれることはないだろうけれどなあ・・・!
映像について。いやぁ美しい。おおかみこどもたちがはしゃぎ回る動きはとても楽しいし、自然がたくさん出てくる作品だけあって背景も美しい。すごく奥行きがありそうな。
それにまず開幕最初のカット、風に揺れる花からして「うおっすげえ」と。
音楽もよかったですねえ。中でもエンディング曲でもある「おかあさんの唄」は名曲。
じゃあまとめ的なものでも。
サマーウォーズのような高揚感あるジュブナイルでも、時かけのようなセンチメンタルな青春ものでもなく、細田守監督作品としてはかなり新鮮な作品でした。
あのデジデジしたエフェクト世界も今回出ませんでしたしね。
親子のあいだに流れる不思議な居心地のよさもなんとも魅力的。というかそこメイン。
上で何度も書きましたが、花という女性がとてもいいキャラですよ。最初は自分と同じくらいの年の少女だったんですが、本編ラストで佇む彼女に「あっ、母ちゃんだ」と思いましたよ。老けたとかじゃなく、面白いことですが母親の空気をかもしてました。
現実に溶け込んだファンタジーのバランスもいいですね。おおかみこどもたちにも、彼らを育てる親にも、普通のではありえない苦労がある。でもきっとよくある苦労もある。「あるある」と「そういうこともあるのか」を行ったり来たりの子育て奮闘記。(いや俺はあるあるじゃないけど多分一般的に)
子供らがメインキャラということもあり、おそらくは子供が見ても楽しめるような作品を狙っている感ありますね。実際楽しめると思います。映画館で近くで見ていたよそのお子さんも結構楽しんでいた様子でしたし。
ただこの作品、なにより母親を描いた作品でもあるので、子供たちからすると純粋に楽しめるものなっているのかな・・・ということは感じましたw
親側のリアルな気苦労とかが丸見えですからね。まぁそういう大変さを伝えることは尊いことでしょうけど、だとしても子供の中でもちょっと年齢上目の、小学校高学年くらいからが良さそうな気がする。ほかブログさんでも書かれていましたが、トトロ的ポジションには向かないw
とはいえすごく雰囲気のいい作品でした。何度も涙ぐんだ。
どうでもいいけど個人的にはあのおてんば狼の雪ちゃんが成長したら普通の人間の思春期の女の子になっていろいろ高ぶる捗る興奮する。ずいぶん色っぽくなっちまったなぁ。
キャラの表情なども味わい深いもので、何度も見返して楽しみたい欲が膨らみます。何度も見返して、十分にこの作品を自分に取り込んでみたい。この暖かさをいつでも自分から取り出せたらいい。家族モノっていいよな。
「しっかり生きて」が今も頭に焼きついてます。
さて毎月1日は映画の日で1000円で一本見れてしまうってことで、8月1日に細田守監督の最新作「おおかみこどもの雨と雪」を見てきました。感想書いていこうかなと。
「サマーウォーズ」「時をかける少女」といった過去作とは毛色が違った一作でした。
ネタバレあり。
すごく家族を描いた作品だよなぁと。
それは見たまんまなんですが、家族や親子関係といったテーマが力強く提示されていました。
そういえばMAGネットの番組内インタビューでも「母親という存在に注目した物語」について語っていましたが、まさにそういうものに仕上がってたと。
狼男だとか人間と狼のハーフだとかいかにもなファンタジーな存在も登場するのですが、主人公はあくまでも人間の女性。人と狼のハーフの子供2人を育てる母親の姿が描かれます。
子育てに翻弄される母親。痛ましいほどの現実も突きつけられて、この先どう生活するんだろうかとヒヤヒヤさせられた序盤。庭の農園がうまくいかなかった時の絶望感はなかなかのもの。
子育てって本当に大変なんだなぁという思いでいっぱいに。母ちゃん奮闘記です。
そのためか、作中何度もある、主人公が我が子を抱きしめるシーンがとても印象に残る。愛おしそうに子を見つめる暖かな視線。そのたびに涙腺がブルブルっと来てしまう。
しばらく経てばどんどんと季節が巡っていき、今度は子の成長を見守るのがメインに。
成長していく姉の雪と弟の雨。幼稚園に入り、やがては小学校に入学。
人間と狼、半分ずつの血が通っている体。なんのハプニングもなしに、またなんの悩みもなしに普通の小学生でいられる、なんてこともなく。後半は「おおかみこども」としての心の変化や機微を重点をおいて描かれていきました。
人でもある。狼でもある。じゃあ、どんな未来に進もうか。おおかみこどもの2人に選択が大きなポイント。狼であることを面白がっていた雪が人間社会へ溶け込み、狼であることを恐れた雨が野生の世界に見出されていくという、2人の々の選択が面白い。
選択を迫られ、心が離れ、バラバラになりそうな家族。
そんな中でこそ輝いたのが母親の、花の深い愛情でした。
最後の最後までこの映画は母親を描いたものだったと、クライマックスで感じましたね。
「しっかり生きて。」と花がいう。シンプルで、重みがある、やさしい言葉でした。
花という名前は、花のようにいつもに笑顔でいてほしいからという意味が込められていたそうだけれど、それが随所に現れていて面白い。
なんでもできる頼りがいがある人では全然ないし、ハラハラさせられてばかりなんだけど、だからこそか母親の等身大かつ全力の愛情が際立っていたと思います。あの少女が、しゃんと母親になっていった。1人の女性の成長にも爽やかな感動があるのです。
結末としての意外なほどさっぱりとした家族関係もいい。
選択をしたのはおおかみこどもだけではないか。それを見守る親にも選択はあった。
この選択ができるというのは、大きな信頼の証でもあるよな。
本編最後の和らいだ雰囲気の中に、甘酸っぱさと十分な満足感がありました。
ほか静かに胸打たれたのが雪が少年に正体を明かすシーン。
はためくカーテンで姿が見え隠れすることでさらに緊張感がましており見てて息がとまりそうに。単純に映像としても美しいし、「おおかみこどもが人間社会に受け入れられるか」という大きな意味も持つ。社会全体に受け入れられるのはムリでも、受け止めてくれるだれか1人を見つけるための。
雪のもう1つの重要な選択でしたね。おおかみこどもの人としての未来は、もっと見たくなるよなあ。本編は中学に上がった段階で終わってしまうけれど、この先どんなドラマがあるのかって気になってしまう。きっとこの先は描かれることはないだろうけれどなあ・・・!
映像について。いやぁ美しい。おおかみこどもたちがはしゃぎ回る動きはとても楽しいし、自然がたくさん出てくる作品だけあって背景も美しい。すごく奥行きがありそうな。
それにまず開幕最初のカット、風に揺れる花からして「うおっすげえ」と。
音楽もよかったですねえ。中でもエンディング曲でもある「おかあさんの唄」は名曲。
じゃあまとめ的なものでも。
サマーウォーズのような高揚感あるジュブナイルでも、時かけのようなセンチメンタルな青春ものでもなく、細田守監督作品としてはかなり新鮮な作品でした。
あのデジデジしたエフェクト世界も今回出ませんでしたしね。
親子のあいだに流れる不思議な居心地のよさもなんとも魅力的。というかそこメイン。
上で何度も書きましたが、花という女性がとてもいいキャラですよ。最初は自分と同じくらいの年の少女だったんですが、本編ラストで佇む彼女に「あっ、母ちゃんだ」と思いましたよ。老けたとかじゃなく、面白いことですが母親の空気をかもしてました。
現実に溶け込んだファンタジーのバランスもいいですね。おおかみこどもたちにも、彼らを育てる親にも、普通のではありえない苦労がある。でもきっとよくある苦労もある。「あるある」と「そういうこともあるのか」を行ったり来たりの子育て奮闘記。(いや俺はあるあるじゃないけど多分一般的に)
子供らがメインキャラということもあり、おそらくは子供が見ても楽しめるような作品を狙っている感ありますね。実際楽しめると思います。映画館で近くで見ていたよそのお子さんも結構楽しんでいた様子でしたし。
ただこの作品、なにより母親を描いた作品でもあるので、子供たちからすると純粋に楽しめるものなっているのかな・・・ということは感じましたw
親側のリアルな気苦労とかが丸見えですからね。まぁそういう大変さを伝えることは尊いことでしょうけど、だとしても子供の中でもちょっと年齢上目の、小学校高学年くらいからが良さそうな気がする。ほかブログさんでも書かれていましたが、トトロ的ポジションには向かないw
とはいえすごく雰囲気のいい作品でした。何度も涙ぐんだ。
どうでもいいけど個人的にはあのおてんば狼の雪ちゃんが成長したら普通の人間の思春期の女の子になっていろいろ高ぶる捗る興奮する。ずいぶん色っぽくなっちまったなぁ。
キャラの表情なども味わい深いもので、何度も見返して楽しみたい欲が膨らみます。何度も見返して、十分にこの作品を自分に取り込んでみたい。この暖かさをいつでも自分から取り出せたらいい。家族モノっていいよな。
「しっかり生きて」が今も頭に焼きついてます。
[日記]超平和バスターズ秘密基地in名古屋!「あの花」ショップへ行ってきた。
“超平和バスターズの秘密基地「あの花」SHOP in 名古屋パルコ”の開催が決定!
やったー!「あの花」の秘密基地が名古屋に来たよー!!
今年放送されたアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」は自分に深い傷を残して行きました。いまだにEDの「secret base」はおいそれとはウォークマンで再生できません。泣けてくる・・・。
そんな大好きなアニメに登場した秘密基地ですが、いよいよ名古屋に来てくれました。
もともと、主に関東の方で場所を移しながら結構ながいこと展示されていたブースで、ネットで記事を読んだりあの花ラジオ聴いてるときにもその話題が出るたびに東海在住の自分はぐぬぬって感じでした。それが!ようやく!名古屋に!
(クリック拡大。以下の画像もすべて)
ということで行って来ました、あの花ショップin名古屋パルコ!
迎えてくれたのは同じノイタミナ枠の現放送作品のポスター。
どっちも結構面白いですよね。ギルクラかなり好きですよ。
まぁそれはともかく、散策していきました。店内は撮影OKとのことでした。
あらかわいい。
ペーパークラフトめんまは物販でも売られていましたが、これはかなり大きいバージョン。
思わずなでなでしたくなる頭の形をしてやがる。ハコ的な。くりっとした目もかわゆし。
お次はイラスト展示コーナー。アニメ雑誌等に掲載されたであろう版権イラストがズラリ。
ゆきあつの圧倒的存在感に目を奪われる。じんたんの視線が胸に刺さるな。
まぁこれはこれですごく美しい姿でしょう。いびつでも、愛が溢れてる!
そしてスタッフが寄せたメッセージやイラスト、実際に使われたコンテなども展示。
アニメ制作の裏側が垣間見える、ファンとしてはほっこり嬉しいアイテム。
また置かれてるシーンも絶妙で、「ここか・・・!」と思わず身震いしました。
そしてブースの奥に構える「秘密基地」へ接近。あの花ショップの目玉ですよ!
わーお。素晴らしい。あのアニメの舞台がここに・・・。
ちなみに置かれてるイスやクッションには実際に座って記念撮影することもできました。
中に入ってみると・・・
!?
子供たちに潤いと興奮を与える少年時代の熱きスパイス、エロ漫画である。
ちなみにその中身は・・・、読んでみてのお楽しみで!
他にもこの秘密基地再現ブース、探してみればいろいろ発見があるかと。ニヤニヤします。
それとこの秘密基地のそばに設置された、めんまのスタンドですが、ボタン押すとしゃべりますので、周りに人がいても照れずに押すべし。かわいかった。
カヤノクゥゥゥーーーンッ(あの花ラジオネタ)
はい、めんまを演じた茅野愛衣さんのサインも書かれています。
茅野さん今年ブレイクした声優さんの中でも、かなり活躍してらっしゃると思います。
なにげにいろんな声の役やってますよね。めんま系のほかだと、神様ドォルズではお姉さん系、ベン・トーでは理不尽なドSキャラなど。あの花関係なくなって来ましたね話が。やめやめ。
これらの展示のほかにも、「あの花」関連のグッズが様々置かれています。あの花の他にもノイタミナ作品のグッズも一部ありました。なかなか魅力的なラインナップ。
自分はマウスパッド買いました。手元にいつでもめんまがいる・・・歓び!
Tシャツ種類がなにげに豊富でした。何か買えばよかったかもしれない・・・。
というわけで以上、「あの花」ショップ報告でした。
好きなアニメのこういう場にいけるというのはかなり楽しいものだなと感じましたね。
店内BGMは「青い栞」「secret base」がガンガンリピート。作品の世界に浸れるブースです。
今のところいつ展示が終了するのかの情報はない?ようですが、せっかくの機会ですので東海のあの花ファンはぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
秘密基地に刻まれた文字。
見つけた瞬間に、ぶわっと込み上げてくるものがありました。感動です。
ファンは間違いなく楽しめる空間になっていると思います。あの花いい作品だなあ。
やったー!「あの花」の秘密基地が名古屋に来たよー!!
今年放送されたアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」は自分に深い傷を残して行きました。いまだにEDの「secret base」はおいそれとはウォークマンで再生できません。泣けてくる・・・。
そんな大好きなアニメに登場した秘密基地ですが、いよいよ名古屋に来てくれました。
もともと、主に関東の方で場所を移しながら結構ながいこと展示されていたブースで、ネットで記事を読んだりあの花ラジオ聴いてるときにもその話題が出るたびに東海在住の自分はぐぬぬって感じでした。それが!ようやく!名古屋に!
(クリック拡大。以下の画像もすべて)
ということで行って来ました、あの花ショップin名古屋パルコ!
迎えてくれたのは同じノイタミナ枠の現放送作品のポスター。
どっちも結構面白いですよね。ギルクラかなり好きですよ。
まぁそれはともかく、散策していきました。店内は撮影OKとのことでした。
あらかわいい。
ペーパークラフトめんまは物販でも売られていましたが、これはかなり大きいバージョン。
思わずなでなでしたくなる頭の形をしてやがる。ハコ的な。くりっとした目もかわゆし。
お次はイラスト展示コーナー。アニメ雑誌等に掲載されたであろう版権イラストがズラリ。
ゆきあつの圧倒的存在感に目を奪われる。じんたんの視線が胸に刺さるな。
まぁこれはこれですごく美しい姿でしょう。いびつでも、愛が溢れてる!
そしてスタッフが寄せたメッセージやイラスト、実際に使われたコンテなども展示。
アニメ制作の裏側が垣間見える、ファンとしてはほっこり嬉しいアイテム。
また置かれてるシーンも絶妙で、「ここか・・・!」と思わず身震いしました。
そしてブースの奥に構える「秘密基地」へ接近。あの花ショップの目玉ですよ!
わーお。素晴らしい。あのアニメの舞台がここに・・・。
ちなみに置かれてるイスやクッションには実際に座って記念撮影することもできました。
中に入ってみると・・・
!?
子供たちに潤いと興奮を与える少年時代の熱きスパイス、エロ漫画である。
ちなみにその中身は・・・、読んでみてのお楽しみで!
他にもこの秘密基地再現ブース、探してみればいろいろ発見があるかと。ニヤニヤします。
それとこの秘密基地のそばに設置された、めんまのスタンドですが、ボタン押すとしゃべりますので、周りに人がいても照れずに押すべし。かわいかった。
カヤノクゥゥゥーーーンッ(あの花ラジオネタ)
はい、めんまを演じた茅野愛衣さんのサインも書かれています。
茅野さん今年ブレイクした声優さんの中でも、かなり活躍してらっしゃると思います。
なにげにいろんな声の役やってますよね。めんま系のほかだと、神様ドォルズではお姉さん系、ベン・トーでは理不尽なドSキャラなど。あの花関係なくなって来ましたね話が。やめやめ。
これらの展示のほかにも、「あの花」関連のグッズが様々置かれています。あの花の他にもノイタミナ作品のグッズも一部ありました。なかなか魅力的なラインナップ。
自分はマウスパッド買いました。手元にいつでもめんまがいる・・・歓び!
Tシャツ種類がなにげに豊富でした。何か買えばよかったかもしれない・・・。
というわけで以上、「あの花」ショップ報告でした。
好きなアニメのこういう場にいけるというのはかなり楽しいものだなと感じましたね。
店内BGMは「青い栞」「secret base」がガンガンリピート。作品の世界に浸れるブースです。
今のところいつ展示が終了するのかの情報はない?ようですが、せっかくの機会ですので東海のあの花ファンはぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
秘密基地に刻まれた文字。
見つけた瞬間に、ぶわっと込み上げてくるものがありました。感動です。
ファンは間違いなく楽しめる空間になっていると思います。あの花いい作品だなあ。
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 6 【完全生産限定版】 [Blu-ray] (2011/11/23) 入野自由、茅野愛衣 他 商品詳細を見る |