[漫画]エンドロールは泣いても笑顔で。『君と僕。』12巻
君と僕。(12) (ガンガンコミックス) (2012/11/27) 堀田 きいち 商品詳細を見る |
何やってんだよもおおおおおおおおおおおお
「君と僕。」最新12巻が発売されました。
あまりにも素直で爽やかな青春模様で我々の心をかきむしるこのシリーズですが、今回はすっごいです。あとでそのことについてばかり書きますけど、破壊力ハンパない!
表紙は双子の弟の方、弟の浅羽祐希とバイト先のダンディーな店長。
店長さんとか久しぶりですねえ。この2人のエピソードも収録されています。
しかしこの巻の最注目は、あえてこの2人ではないと言い切ろう。
今回は一にも二にも、要くんと日紗子ちゃんのラブコメですよ!!
ウオオオン、なぜ表紙が要&日紗子じゃなかったのか!いや本編でこれだけ魅せてくれたしそれでいっかもう!
興奮しきりの「君と僕。」12巻感想ー!
ネタバレありなのでお気を付けて。
11巻感想→君も僕もかわっていく。『君と僕。』11巻
●ついに!ラブでコメっちゃう!
11巻の続き、「エンドロールで会いましょう」からスタート。
そしてこれがいきなり素晴らしい出来栄えなのだ。ホンット、つくづく、ニヤニヤしてしかたない。
12巻と結構な長期連載をやっている中で、まだこんな初々しいエピソードが来るっていうのが、この漫画らしいよなぁ。それだけ、じっくりと人と人の関係の変わりようを描いているのでしょう。
かすった―――ような気がした唇。それがなんとなく気になる要くん。
それが11巻のクライマックスで、煮えたぎらないながらも心の底に残された甘い感情の描写が印象的でした。
しかしてそれを上回る超展開が。
(同書10ページ)
うおおオオおおおおいい!!!
ついに!ついにか!!ひぎゃあ!とおかしすぎるテンションになること必死。
待ってましたよ、この2人がラブでコメっちゃうあれこれを!
そこから結局コメディっぽくお流れになってしまうも、1度こんな雰囲気になってしまったら、お互いにそわそわして仕方ないわけで・・・!
相手のことを意識しちゃってしかたない2人のかわいらしさはもう爆発寸前。
(同書28ページ)
ホントに何やってんだよお前ら!かわいすぎる・・・ッ!
どっちがキスを誘ったか、どっちがキスしたがったのか、とかでモメちゃうコレですよコレ、ぶひょひょ(ひどい笑顔)
幼馴染として、色恋を気にせずに付き合えてきた期間が長いほどに、
恋愛対象としての幼馴染にとまどっちゃうんだねえ、うはああもどかしいww
でもずっと片思いしてきた日紗子にとっちゃ、まさに念願かなってのデードだよね!
日紗子ちゃんは素朴で、なんというか普通というか自然な女の子です。
特殊な属性とかないしね。しかし、報われない想いを抱きつづけるってところがミソだった。
彼女が要くんを見つめるその切ない表情に、何度も何度も、胸を締め付けられてきました。
それをいくつも積み重ねての、今回の大接近ですよ。
これはもう、興奮するなというのがムリな話。きたぞ・・・報われない片思いをし続けた幼馴染が、幸せになるエンディングが・・・見えてきたぞ・・・!!!!
焦らしに焦らしてやってきた2人の微笑ましすぎるイチャコラは、凄まじいインパクトとラブコメ的興奮を伴って我々に襲いかかるのだッ・・・!
●1つの終わり。
「エンドロールで会いましょう」と銘打たれたこのエピソード。
明るいばかりではありません。メインはむしろ、今だ癒えない傷をうずかせるような切なさが込められた「エンドロール」にある。
要くんの恋の物語は、ここで1つの完結を迎えます。
大切な時間を締めくくる「エンドロール」。それは、憧れの人の結婚式。
日紗子の姉・静奈さんは、夫になるその人と、今日から一緒に歩いていく。
華やかなその人の姿を、まぶしく見つめる者は多くいるけれど
こんな気持ちで涙を浮かべる人は、彼ら以外にいないのだ。
(同書50ページ)
しんみり・・・。
昔を懐かしむノスタルジーと、お嫁さんになる憧れの人をやさしく見送る、その切なさ。
でも1つの終わりは、1つの始まりでもあるに違いない。
一度泣いてすっきりして、また前を向いたら、なんかずっと昔から近くにいた人のこと、もっと大切に感じられたりしないかな。ねえ。
強烈な切なさがあります。でもそれと一緒に、目映いばかりに微笑ましい、動き出したばかりの恋もある。・・・あるよねこれ。
動き出したばかりっていっても、片方のそれは、いったい何年温めたものだろう。
ささやかながら自分も幼馴染属性もちでありまして、同じ趣味のほかのひとも、この展開は拳握りしめておもっきしガッツポーズをキメるべし。
まだまだニヤニヤさせてください。そう願わなくても勝手にニヤニヤさせてくれるであろう2人に違いないけど!次の要&日紗子回はまだかー!!
ほかの話についても触れたいと思います。
56話は3年生になったメインメインバーたちと、入学したての1年生の交流。
そうかぁ、そういえばこいつら、3年生だったよな。もう高校生活終わりが近いんだよな。でもその伸びやかな青春の生き方を見て、1年生が「こんな風に楽しい3年間が過ごせたらいいな」と口にするのは素敵だなぁ。先輩から後輩へ、ことばでなく在り方で「楽しめ!」って伝わるんだ。
でもここまで3年生としての彼らの姿を強調するということは、彼ら3年生はもうすぐいなくなるんだ、ってのを逆に意識させられて、そこもまた切なくさせられます。
ここまできたら卒業まで見せてくださいよ。よろしくおねがいします。
あと番外編の「夏のにおいをきく」も好き。
東先生が学校に赴任してきたばかりのころのエピソード。その当時、東先生を好きだった女の子の目線から語られる、じつにもどかしいお話です。
「私みたいな印象に残らない生徒、先生はいつか忘れちゃうのかな」
なんてさびしげな言葉を残す女の子だけど、結局その答えは作中にはありません。
ないですが、しかし最後の東先生の表情は、昔の生徒を思い出しているかのような感じで、すごく心が甘酸っぱくなるのです。
夏のにおいは、だれかに想いを馳せるにおいだ。
この作品は、キャラクターが昔を懐かしむ描写が印象的に用いられるなとふと思いましたが
その姿はこの漫画を読んでノスタルジックな気持ちになる読者にも重なるのかな、と。
そんな「君と僕。」12巻。
11巻からけっこうまたされましたが、いやー読めてよかった。
最高にニヤニヤできる「エンドロールで会いましょう」が抜群に大好き。
甘酸っぱさで心がぎゅうぎゅう詰め。幸せいっぱいの満腹感。
もちろん、ほかのエピソードもいちいち心を柔らかくしてくれる優しさと感傷に溢れていて、たまに泣きたくなってしまう・・・。いつも通りの「君と僕。」ワールド。とびきり青々しくて恥ずかしくてキラキラしてる。
恥ずかしげもなく青春を謳歌する連中の愛おしいことよ・・・!
13巻は来年夏ごろ発売予定とのこと。高校3年の夏にきましたが、相変わらずまったりやってるやつらです。でもそろそろ忙しくなってくるんじゃない?どうなんでしょうね、次も期待!
『君と僕。』12巻 ・・・・・・・・・・・★★★★☆
とびきり甘くて、ほろ苦い。大興奮としんみりの波状攻撃で大満足です。
[漫画]行くあてもなく僕らは放課後をさまよう。『ローファイ・アフタースクール』
ローファイ・アフタースクール―五十嵐藍短編集 (BLADE COMICS) (2012/05/10) 五十嵐 藍 商品詳細を見る |
何もない人は放課後何をしてればいいんだろうね
「ワールドゲイズ クリップス」の感想を書いたのにこちらをスルーしていたことに気づき、いまさらながらに感想。
今年の春に発売された「ローファイ・アフタースクール」という本です。
ブレイドコミックスですが、同人誌やら他社での読み切りを集めた一冊。とても短い作品もあったり、結構実験的なことやっていたり。
表紙のちょっとダウナーな雰囲気が好きそうだったら、中身も問題なく楽しめそう。女の子キャラの飄々とした様子も楽しく、かわいいです。
短篇集なので気に入った作品について、さくっと感想書いていきます。
●神様ごっこ
高いところに登って町を見下ろして、なんでも知ったふりして神様気分。
ボーイミーツガールのときめきも味わえる佳作です。
舞台は90年代末らしく、ノストラダムスのてきとー大予言、「世界はもうすぐ終わる」に心動かされる男の子と女の子が登場。
でも世界の終焉は絶望ではなく、むしろ楽しみなものとして描かれる。ヒロインは「何が起こるんだろう」とか、遠い目をしながらいうわけです。終わりがもうすぐだからこそ、今楽しまなきゃもったいないよね、なんておかしな前向きさも発揮したり。
しかし主人公は、ただ楽になりたいの一心で滅亡を望む。
静かな世界観に漂うのは、投げやりで不安定な思春期のマイナスなエネルギー。
この作品のキャラクターは無力感に支配されてて、なんだかぐったりしてる。
なんだか憂いが感じられるその雰囲気が結構好き。
「何もない人は放課後何をしてればいいんだろうね」 印象的なセリフの1つ。
ストーリーのラストを見ても、主人公もヒロインも、世界も、きっとなに1つ変わっていない。出口の見えない物語は、最初読んだとき、なんだこれと思ったのも事実です。
でもこのオチだからこそ、実はけっこうこの作品が好き。
気まぐれに生きて、気まぐれに恋をして。
全部燃やして気持ちの整理をつけても、けっきょく彼女を見つけたら表情を和らげてしまう主人公ですよ。なんだよ、ずいぶん懐いちゃったじゃないか。
キャラクターの心も物語もあやふやだけど、不思議と暖かな感触を心に残してくれる作品でした。
●ekstasis
5ページの短編。しっかしこれがすごいインパクト!
女の子のながい黒髪に舌を這わす少年。お前は何をしているんだ。
短編だけに特別なストーリーはありませんが、短いページに込められた変態的な興奮や熱気や・・・とにかく異様にドキドキさせられてしまう短編でした。
最後にヒロインが気づいてるってオチだったけど、逆に気づいていなかったらそれはそれでドキドキするじゃないの・・・とか考えた。「なんか私の髪が匂う」・・・とか。
●アフタースクールショウ
単行本ラストを飾った、これまたとてもみじかな作品。4ページだけ。
でもこの4ページにすごく心安らぐんだ…。
「山田おまえさぁ 俺のこと好きなんでしょ」「まーねー」
いきなり出だしの会話がこれ。なんでこんな色気なく話してんだw
しかし最後まで、なんて居心地のいい男女だろうとしみじみ。女の子の片思いだけど、男の子が彼女を近づけも遠ざけもしない絶妙のポジショニング。
それって結構ヒドいことだよなぁと思いつつ、2人ともやたら楽しそうなので微笑ましい。淡々と会話のキャッチボールしつつたまに暴走するのもテンポよくて気持ちいい。
暗い作品おおめの作品集のラストにあるからこそ、この軽さがいきるな。
どいつもこいつも覇気がない単行本だよ!!(雑なまとめ
じめじめのドロドロ。だらだらしては悩んで、自分がイヤになって、世界を嫌って、全部消してしまいたくなる。いやぁー暗いなぁ。でもこの塞ぎ込んだダークな感情は、確かに身に覚えがある気がする。たしかに思春期の負のエネルギーが渦を巻いている作品。
けれど暗いだけではなくて、結構どれもこれも、他者と接することできちんと感情を動かすもの。後ろ向きでも、暗いばかりでも、冷たい作品ではないんですね。
孤独な作品もありますけど、不思議と空気は澄んできれいだったりして。
キャラクターたちは歪んでいながらも、実はピュアだったりするのが理由でもあるかな。
ストーリーを楽しむタイプの漫画ではないと思います。でもこういう雰囲気の漫画、きっと好きな人は多いんじゃないかなとも思います。自分はそう。
「なんで自分には何もないんだろう…?」なんて不安に怯えるキャラが結構いる。
10代の閉塞感は存在感をはなっていますが、それだけじゃない魅力がある作品たち。暗い顔したってやっぱり彼らは青春してて、伸びやかに生きてる様はそれはそれで心に気持ちのいいものなのです。当の本人は必死に戦っていて、そんなことわからないだろうけれど。
「ワールドゲイズ クリップス」と似た雰囲気なので、合わせて読みたい一冊。
『ローファイ・アフタースクール』 ・・・・・・・・・★★★☆
こちらもちょっとダークで、でも不思議にキラキラしてたりする思春期の漫画。
[漫画]世界も私たちも曖昧なまま。『ワールドゲイズ クリップス』1巻
ワールドゲイズ クリップス (1) (カドカワコミックス・エース) (2012/11/01) 五十嵐 藍 商品詳細を見る |
じゃね 元気でね
五十嵐藍さんの新作作品集「ワールドゲイズ クリップス」1巻の感想。
1巻となっていますが長編シリーズではなく、この1巻にも3つの作品が収録されています。
同じヤングエースで連載された「鬼灯さん家のアネキ」は、基本的には姉弟のエロ&ラブコメでしたが、ときどた乾いたような、うら寂しい雰囲気になるシーンがあったように思います。
というか後半は結構そういうシーンが目立っていたような気もしますね。
本作「ワールドゲイズ クリップス」はあの感覚をさらに鋭くしたような味わい。
どの作品もうまく未来が見えない少年と少女の、ぼんやりとした想いを切り取っています。
前に出た作品集「ローファイ・アフタースクール」と似た雰囲気。
五十嵐さんは「アネキ」で知ったのですが、この作家さんの真骨頂はこの作風っぽいなぁ。
●放課後ロスト
最初の作品。2人の女の子が出会い、なんとなく気があって、なんとなく家出をする。
常にその「なんとなく」のぼや~っとした曖昧な気だるさが蔓延している世界。
なんとなく居心地が悪い瞬間。なんとなく居心地が良い瞬間。
ふらふら舞うように少女は出会って近づいてまた離れていったりする。
自然に、いつのまにか仲よくなっていっている感じとか、いつも表情を変えない主人公が、家出したとき(第3話のあたり)はちょっと表情豊かになってたりだとか、
些細なところまでキャラクターが動いている様子がいいですな。
よく見ると第3話だけ、主人公の娘の目がおおきく開かれている気がするw
とくに大きな理由もなく、気が向いたから家出して、気が向いたらまた帰る。
そんなフリーダムでてきとーな家出だけど、確かな意味はあったように見える。
やっぱり「なんとなく」だけど・・・少しだけ、寂しくなくなったよ、なんて。
個人的にはラストシーンが印象的です。アメをほおばるところ。
最後に口にふくんだアメは、その身体の一部になる。溶け出した甘味は記憶に焼き付く。
そうしてあの旅が、ちょっとだけ大切なものだったように思える。
掴みどころのないけれど、心のひだをくすぐられる感覚。
時間を持て余したようなのびのびとした時間の中に、うっすらとした絶望と希望。
不思議と青春の匂いも色濃い。
●ウォーキング ウィズ ア フレンド
これもなんだかすーっと、飄々とした雰囲気の漫画。
この単行本の中では短いもので、かなりあっさりとした内容。
それでも、卒業を控えた学生の皮肉めいた寂しさ。「何かすれば変な空虚さが埋まるかなって、悪あがき」とか言ってしまう達観したドライさ。その虚無感と、でも最終的にはなんだか心が満たされた気になるラストへの流れは、なかなかに鮮やか。気持ちよく心が空をすべっていく感じ。
●緑雨
これはちょっぴりの狂気が顔をのぞかせる作品。
これまでは心おだやかな作品が並んでいたぶん、ダークな感触にドキドキします。
というかずーっと雨が降っていてじめっとして湿度高め。そして冷たい闇が広がる。
「濡れた黒」のイメージが強烈でした。
例えばヒロインのつやつやの黒髪。夜に降るさめざめとした雨も、雰囲気を盛り上げる。
なによりこの雰囲気が素敵すぎる。心をかきむしられるような、じわじわ責め立てられるような、でも落ち着くような。
行くあてもない思春期の少年少女のモヤモヤも閉じこまれれていて、すごくいい雰囲気。
それでも最後は清々しい快晴。
思い出を飼い続けた主人公。妄想から開放されたことは痛みを伴うけれど、でも笑顔で迎え入れるべきことなんだろう。
途中ヒヤヒヤしたけれど、告白してきた女の子が幸せそうでよかっですわ。
主人公の闇にドキドキするとともに、雰囲気も魅力たっぷり。ほんのりダークな作品。
●blue imaginary birds
さくっと終わる短編。元カレとよりをもどすために青い鳥を追いかける女の子の話。
一つ前の作品が結構重かったためか、最後は作品集で1番お気楽ムード。
青い鳥を追いかける本人は切実なんだけど、結構追いかけることを楽しんでるし。
「なんだ、これは本物の青い鳥じゃなかった」のセリフがいいなぁ。幸せを手にしても救われなかった時、青い鳥を「ニセモノ」にしてしまう。世界のどこかには幸せの青い鳥がいるって信じ続ける。
というわけでそんな作品集。
いろんなタイプの作品が納められていますが、一言で言えばどれも地味です。
大事件が起こるわけではなく、ただ静かに心の動きを追っていく。
心の動きといってもこれまたドラマティックなものは少なくて、言葉にならない漠然とした不安や虚無感やらがちょっと前向きなものに変わるというだけ。
でもその微妙な心境の変化を、大切に大切にしてくれるからこそ、染みる漫画。
この感覚は言葉にしづらいけど・・・間違いなく、好きなタイプの漫画なんだ。
きっと多くの人が味わったことがあるであろう、この乾き。
思春期のころの、あの甘くも毒々しいもどかしさが詰まった作品集でした。
『ワールドゲイズ クリップス』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
たゆたうあいまいな気持ち。爽やかな読み心地の中に、結構な毒が混じっていたり。
[漫画]コミティア102行ってきました&本の感想をいくつか
もう一週間ほど経ってしまいましたが・・・
コミティア102に行ってまいりました。コミティア100以来の半年ぶり。
夏コミと冬コミのあいだで金銭的にはきびしい時期だったのですが、なんとかかんとか。
やっぱりコミティア楽しいな・・・ほんと・・・!!
一ヶ月後に冬コミもあるし抑え目に、抑え目にと意識して会場をまわりましたが
やっぱり予算ギリギリまで買いこんでしまうという。
買った本も全部読み終えたので、特に気に入ったものの感想を書いていきます。
「プレハブ組」さんの新刊、「まばゆく夜空」。
小説っぽい表紙デザインは仕様で、内容とのリンクの仕方にニヤリとさせられます。
幼馴染の女の子から突然、「私ね、宇宙人なんだって言ったら、信じてくれる・・・?」と告げられた主人公。いきなりのファンタジー発言に主人公は戸惑い、ギクシャクしてしまう2人。
このクライマックスが個人的にすごく好きで。一気にスケールが膨らみ上がって、清々しいのか甘酸っぱいのか、とにかくあとを引く読後感なのです。
眩しくもキュッと胸が切なくなる物語が味わい深く、同人誌ならではの本の作り、ってのを楽しめました。今回初めて買ったサークルさんでしたが、これは他の本も読んでみたくなる。
「onion」さんの「冬のオルガン」という本。
静かで穏やかで淡々とした、日常の1ページを切り取っていく内容の1ページ読み切り集。
素朴な感じの女の子がかわいいなぁ、という風に手にとった本でしたが
淡々としたなかに妙な間があって、そこに暖かかったり寂しげだったり、いろんな感情が込められているのが感じられます。なんというか、なんども読み返したくなるのだ。
「間」が鮮やかに描かれている本。言葉にならないし、あえてしない少女たちの些細で大切な気持ちが、心の琴線に触れた一冊です。あと単純に女の子がぽてっとしてかわいい。
「きらず」さんの「あいしちゃったらこわしたい。」はヤンデレヒロインが美味な一冊。
いやーいいないいなーこれはいい。歪んだ愛がストレートな愛で上書きされる、王道ながらとても気持ちがいいお話でした。
かわいらしいだけじゃなく、狂いそうな精神状況のヒロインも迫力あります。普段とのギャップでこちらもゾクゾク。2つの面ひっくるめて絶妙にキュートです。
ちょいと丸く収まりすぎな気もしますが、これくらいじゃなきゃな!小っ恥ずかしい!
いっしょに買った既刊も感想書こう。「俺のぱんつが狙われていた」という本。
前後編をセットにした本らしく、結構厚くて読み応えアリ。
主人公の男の子のパンツを執拗に狙うアグレッシブ痴女なヒロインが楽しいw
「脱ぎたてほやほやのぱんつくんかくんか欲しいよおおおおおお」とか言いながら股間に顔すりよせてくるヒロインというのは、絵面としてもかなりきわどくて面白かったw
良いこと言っているはずなのに「でもこれってパンツについての会話だよな・・・?」と認識を改めるととたんシュールに感じられるという・・・。でも確かに熱いメッセージがある!
このサークルさんはこういうちょっとおかしな女の子とのラブストーリーがいいですね。
「ミルメークオレンジ」さんの新刊、「君ってどんなにおいなの?」。
変態臭ただよう表紙からして内容もお察し。ナイス変態ラブコメ。
あとがき読んだら「少女漫画のつもりでネームした」とか書かれてて、水あさとさんのセンスはさすがやでぇ・・・と冷や汗出てくる。
においが気になって気になってしかたない男の子に迫られて困っちゃう女の子が主人公。
男の子の行動はエスカレートして、なりゆきで同じベッドで寝ることにまでなってしまう。
赤面する女の子を味わいつくすという水あさと作品本来の魅力は今回もバッチリ。
たしかに少女漫画チックといえばそうなのかも・・・?なシーンは皆無とは言わないけど、でもやっぱり男の子に匂いを嗅がれるヒロインってスタート地点を間違えすぎだろうと!最高!
「咲桜」さんの新刊「思春記録」。姉弟の絆をえがいたほのぼの漫画。
今回のコミティアでゲットした本ではナンバー1にニヤニヤゴロゴロした一冊!
なんにせよこのおねえちゃんがかわいすぎる。かわいすぎる!かわいすぎる!!(大事なので
葵さんにオススメしてもらったサークルさんなのですが、大当たりでしたね・・・!
どんな女の子なんだろうなー、とぼやけたイメージから始まり、ラストに向けてどんどんその正体が見えてくる流れ。もうただただ弟さんのこと好きなんじゃないですかー!
そのことが分かっていなかった弟さんにしろ、うまく好きなんだよって伝えられないお姉ちゃんにしろ、まじでニヤニヤがとまらん2人ですよ・・・頭とろける・・・。
自然なかたちでとても近くにいる、普通のお姉ちゃんって感じがして、すごくツボです。
やさしい雰囲気に癒されつつ、存分にお姉ちゃん愛がはじけた作品。
「栗家」さんの「Snow White Rain」という春日さんとすきまさんの合同ラブコメ本。
2つの短編が描かれているのですが、どちらも良質なニヤニヤ漫画でありました。
すまきさんの漫画は無口な女の子とへらへらとちょっと軽い男の子。
最後の、言葉にならない本当の言葉を、見事に拾い上げた男の子の笑顔が眩しく、その直後の無口ヒロインの赤面も合わせてやっほーい。緩やかな雰囲気から一気に瞬間最大風速出しちゃうようなスピード感は短編ならでは、満足のいく読後感。
春日さんの漫画は素直になれないツンツン少女とへらへらとちょっと軽い男の子。
相合傘をめぐっての、微笑ましい日常の一幕。ポップな絵柄とマッチする、ちいさく可愛らしいショートエピソードですな。「私もきっと、バカなのでしょう」にテンションあがってしまう!
あと、へらへらとちょっと軽い男の子同士が顔合わせ「バカっぱい」と思い合うオマケ漫画は笑いました。相手の男の子のキャラがちょっと似ているのは意図的だったのだろうかw
[漫画]♀→♂の性転換SFラブストーリー『少女恋愛変異』1巻
少女恋愛変異 1 (少年サンデーコミックス) (2012/11/16) 大月 悠祐子 商品詳細を見る |
ありすの指……太くてゴツゴツしてる。
大月悠祐子さんの新作「少女恋愛変異」1巻が出ました。
WEB雑誌、クラブサンデーにて配信されている作品です。
近年の大月先生は、「妄想少年観測少女」やら楽園で新たにはじまった「彼女達の最終定理」やら、過激な作品が多い印象。まぁ妄想少年~から読み出したんですけどね俺!
今回の「少女恋愛変異」も大月先生らしさは発揮されています。でも少年漫画としての魅力もあって、なかなかに新鮮。そしてやっぱり、ニヤニヤできる!
クラブサンデーの公式から第1話と最新2話が読めます。気になったらチェックしてみては。
舞台は女だらけになった日本。人間はみな女として生まれてくる。
女が成長すると、ごく低い確立でのみ、男に性転換する。
男は1人の女を選んで、結ばれた2人は「EDEN」というこの世の楽園に行ける・・・らしい。
そんな世界の中、2人の仲良し少女が主人公です。
おっとり大人しい子、ありす。男勝りなボーイッシュな子、桃香。
桃香は自分が男になって、ありすとEDENに行くことを目指す。
しかしそんな桃香に魔の手が迫る。その時ありすは・・・!といったストーリー。
最初は百合ん百合んしていますが、予想通りに片方が変異してしまうので、この光景はほぼ1話限りのものに・・・。でも2話以降も十分にニヤニヤさせてくれますよ。
女しか生まれてこない。女が男に変異する。これだけで興味をそそられるストーリー。
しかもこれがまた主人公の少年は普通にカッコいい活躍をしてくれる。
ヒネった設定ですが、少年漫画らしい勢いの良さもあるのです。
完全にイケメン化。守られていたはずが、守るために「俺のパートナーになれ」とかドヤ顔で言えちゃう男の子になってしまったでござるの巻。
あー少年漫画らしいというか、それは2人の主人公の視点を切り替えれば少女漫画らしいということにもなるのかな。桃香からすれば守られて言い寄られてびっくり。攻守逆転はステキシチュだよ!
ボーイッシュな子が稀に見せる女らしい一面にトキメくってのは、至って自然なことさ!
しかしありすちゃんは・・・いやありす君の変化ぶりはすごい。
元は女の子だったのに、その頃の名残はこれっぽっちも残していないのが清々しく楽しくもあり、寂しくもあり・・・。あの気の弱い女の子がよくもこんな豪快な少年に変異するもんだ・・・。
作中登場した、あのいけすかない男を見ても、ありすの倫理観は歪んでいなくて安心する。というか変異した男が最初からあんなゲスくなることもないだろう。
男というだけでチヤホヤされて、女を好きなように選べて、傲慢な態度も許されて、どんどんとあんな感じのクソ男が出来上がっていくのだろう。
じゃあここから、特徴的なこの舞台について書いてみようかな。
まず「EDEN」って何よって話ですよ。
この世のどこかにある楽園。それを目指すために、女たちは男を求める。
でも女たちも「EDENに行きたい!」というだけで男に群がっているわけでもなさそう。
この世界は「恋」を知らない。大多数は夢のように思い描くものだ。
この作品で描かれる世界は、盲目的に男女の愛に飢えている。
国民総恋する乙女。これはこれですげえ世の中だ。
それで女を好き勝手に使う男が許容されてるあたり、本当に盲目的になってしまっていて、その痛ましさは結構胸を刺激してくるものでもある。
「幸せになりたい」というなんとなくな気持ちが、EDENを求めさせているんだろう。
EDENに行きたいから恋に憧れるのか。それとも純粋に恋に恋しているのか。
どちらが、というわけでもなくこの2つが織り交ざって少女たちを悶々とさせているようだ。
こんな世の中なら、やはり男があんな人間になってしまうのもムリない。それだけじゃなく、男という存在がとてもイヤなものに思えて、個人的には結構どぎついこと描くなーと思った。
けっこう気味の悪い、怖い世の中だなーと感じるのは、きっと作者の意図通りなのだろう。男の人となりはまったく見られないかなねぇ。贅沢にみえて、その実息苦しいもののように見える。
しかし結ばれた2人のみが行ける「EDEN」って、そもそもどんなモノなのか。
漠然としすぎて、なにか仕掛けや裏がありますよねえ。実際はどんなのやら・・・。
思う存分に人間として原始的に愛し合える場・・・とかならいいんだけど
「EDEN」という幻想を抱かせる教育をさせて、結ばれた男女のカップルは子作りさせまくる機関にさせられる・・・とか怖いねえ。狂気。
だって女しか生まれてこない、試験管から子を成す社会って、不健康すぎる。
だからこそ、そうじゃない方法で子を作る方法がロマン化するのもムリはないのかなぁ。
「EDEN」の正体もきっとこの先、物語の核心として描かれるのでは。
単に変化球チックな恋愛漫画だけじゃない、SFとしてもゾクゾクさせてくれそう。楽しみですよこれは・・・!
あとは桃香の今度が気になるところ。
男になってありすを幸せにする、ってことに意識を向けて成長してきた女の子なので
「男になったありすに選んでもらってEDENに行く」というシナリオにすぐに気持ちを移せていない様子。というか桃香が好きだったのは、女だったありすだったっぽいな。
ありすの記憶喪失もあるし、男女になったところで素直にくっつかない2人だ。
この2人が作品のメインキャラなので、どういう関係性を紡いでいくか、注目したいです。
本編も面白いのですが、個人的に単行本オマケの4コマ漫画がとても面白かった!
巻末だけでもかなりあるのに、カバー折り返し、カバーを外した本体表紙にと、たくさんオマケ漫画があってそれだけでも大満足。内容もすごくいいんだこれが。
女から男に変異。女だったころの記憶は失ったありす君。
性転換したがゆえの悩みやら楽しみやらいろいろ描かれてますw
かなりあけすけにエロい4コマもあり、笑顔がとまらんな!
本編が拾いきれなかったピースを細かに拾っている感じで、さらに作品愛も深まる内容。
まだまだウラがありそうなSF設定が面白く、性転換してからのラブコメ模様も素敵。
そして前も大月作品の感想でかいたけれど、自分はこの作家さんの、時々えげつないくらいに鋭く人間を追い込んでくる漫画が大好きで。少年漫画というフィールドでどうこの面白い設定で物語を仕上げていくのか、とても楽しみです。
1つ惜しいのは、女だったころの記憶をなくしてしまうので、男の身体を手に入れたときの興奮やら感動やらが本人にないことだよ!TSモノとしてはそこで慌てる姿も見たかった・・・!
『少女恋愛変異』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
オマケも充実。大月先生の新シリーズはドキドキの性転換SFラブストーリーです。
あとボーイッシュな子に女としての一面を出させるのって、いいね。ハイ。