[漫画]報われない、でも抜け出せない。『過ち、はじめまして。』1巻
過ち、はじめまして。 1 (バンブーコミックス COLORFUL SELECT) (2012/10/27) 色白 好 商品詳細を見る |
こんなはずじゃなかった・・・辛くなる一方だ・・・
表紙でガシッと心つかまれました。「過ち、はじめまして。」の1巻。
怪しい室内。怪しい表情。誘われるようにスカートの奥を覗き込んでしまいますよ!いかにも清楚な白い服とは裏腹に、なんとも淫靡なムードです。
加えて押見修造先生がオビにコメントを寄せています。このコメントも自分を惹きつけるもので、「痛い、でも最高に気持ちいい。」とか。絵のタッチも押見先生と少し似ている気がする。なんらかの繋がりがある作家さんなのかな。
これは竹書房のナマイキッ!掲載作なので、いわゆる非18禁のエロ漫画です。
普段ほとんど取り上げてないジャンルですが、シナリオ面で十分にゾクゾクさせてもらえたので感想を書きたいなと。
大学でも全然目立たない主人公、吉田。彼がいつも目で追うのは、学校で評判の美貌を持つ朝雛清代美。
日常の不満を妄想で発散するのが日課らしい吉田が、ある日とんでもないシーンを目撃してしまいます。清純さがトレードマークのような朝雛が、夜の大学で、教授と・・・。
教授は妻子持ち。まちがいなくこれは不倫というヤツだ。
動揺を隠しきれない吉田は、なんと本人に「実は見ていたんだ」と告げてしまう!
そこからはもう転がるようにグズグズでダメダメな2人の関係がスタート。
うっひょーこの恋模様、不毛すぎる!読んでてチクチク胸が痛む!・・・たのしい!
不倫と知りつつ先生への想いを募らせる朝雛。
先生も先生で、なに生徒に手を出しちゃってんだよ!しかも絶対に朝雛を苦しめるのわかってるだろ!酷なことしよる。
そんな朝雛が吉田に投げかけたあのセリフ。
「吉田くんは、私と同じ目に遭うの―――」これは象徴的です。
最初は意味がわからなかったけれど、つまり先のない片思いを続けてろっていうこと。自分の恋を思っての自虐でもあり、吉田に対しての残酷な仕打ちでもあり。
朝雛と吉田の関係は、とっても近い。でもそれは何も生み出さない、くだらない惰性の関係でしかない。泥沼の中でもがくこともせず、ただ偶然つながれたことに甘えてぐだぐだ時間を過ごしてるだけで。自分を騙し騙しの日々。
どんっどん気持ち悪い恋愛模様に落ちて戻ってこれない感じ、堪らないんす!
吉田は朝雛に夢中になってばかりで、そりゃあずっと見ていた相手と色々ヤレちゃってご満悦だろう。けれどずっと心は冷めっぱなし。
朝雛が本当は自分なんかを好きではないということを感じる、その瞬間には強く強く心は冷え込む。
少しくらいは好かれているかもしれない。本当に嫌いでたまらない相手と、こんな付き合いを続けていくのもバカだろう。
けれど朝雛が1番好きなのはあの先生なのだ。あいつには敵わないんだ。
そのことを意識するたび、吉田の心はまた崩壊に一歩近づく。
そして負った傷を忘れるために、見ないフリをするために、がむしゃら朝雛を貪る。
この気持ち悪い独占欲!結構キツい心理描写もされる作品なのです。
そんな不毛な恋しかできてない、ジメジメとした空気が蔓延する物語です。
でも吉田のバイト先の同僚、井上さんが出てきてくれるときだけは
気持ちのい~い、キレイな風が吹き込んでくれるのを感じます。
メインがねじれ捻くれちゃってるので、ストレートなヒロインが際立つ。
というか素直に可愛いしな・・・。どんどん主人公を好きになっちゃっていく感じとか。
でもアカン・・・これはガッツリ主人公に本気になっちゃうも、最終的にフラれちゃうタイプのポジションの女の子や・・・。
朝雛さんはかわいいしかわいそうだけれど、自分としてはまずクソ女であることが念頭にあるため上手いこと萌えられなかったりする。
その点、井上さんはいいな!まっさらな感じだ!めんどくさくない!
この扱いとかひどかったwそしてこれがまさか言い寄られるフラグになるとは・・・この主人公、冴えない面してけっこうなフラグ建築士ですよ。
ここですんなり不毛な恋をやめて井上さんに転がれたら楽なんだろうけど、どうせこの主人公のことだ、そうはできないんだろうな。
でも朝雛⇔吉田の関係に食い込んでくる第三者の登場は、きっと作品の空気を変えていく。
まぁ恐らく「井上さんもようこそ、このくそったれな泥沼へ!」展開だろうけれど。・・・みんなちゃんと幸せになれる未来なんて無さそう・・・。
それでも俺は井上さんがエロかわいい展開を楽しみにする!
・・・いやそこだけじゃなく、ストーリー全体がどう動いていくか予想できないので、普通に続きに期待しています。さらに盛り上がっていきそうな感じはすごくする。
しかしまーエロ漫画なのでやはりエロシーンが多い。
喜ばしいことですが、ストーリーは1冊の中でもっと動いて欲しかったな。はやく進んでくれー!ともどかしくさせられる面白さ。
吉田、朝雛のメイン2人がクセのあるキャラクターなぶん、一筋縄な物語にはならないはず。
2巻はしばらく先だそうですが、楽しみに待ちたいと思います。
ダークで生臭い、報われない恋の行方は。
吉田には先生をぶん殴っていただきたいんだけど、吉田がそんなこと出来るだろうか。1巻後半からは変わりつつある彼だけど、うーん。
『過ち、はじめまして。』1巻 ・・・・・・・・・・★★★☆
エロティックな雰囲気に誘われたらハート持っていかれるインモラルラブストーリー。
[漫画]恋は味わいの坩堝。『楽園 Le Paradis』 第10号
楽園 Le Paradis 第10号 (2012/10/31) 中村 明日美子、シギサワ カヤ 他 商品詳細を見る |
うん またね 今日も会えるね
恋愛アンソロジー「楽園」Vol.10が発売されました。アンソロジーですがもう雑誌ですね。しばらく感想をかけていませんでしたが、せっかく記念すべき第10号目です。スルーするのはもったいない!ってことで久しぶりの楽園記事です。
しかし1号が出てからもう3年が経ったのか・・・。地元の書店で表紙をみてビビッと来て、そのままレジに持っていったものです。あの表紙カッコ良かったんだ。
表紙といえば今回の表紙も素晴らしい。上下が白と黒でパキッと分かれていて強いコントラスト。純白のはずのドレスも、影に染まっている。そしてそれを身にまとう女の怪しい雰囲気。自分の中でストーリーが出来上がっていきます・・・いいなぁ。
では内容の感想へ。
特に気に入った作品ごとに個別で書いていきます。楽園作品語りはほかにも「楽園に花束を」という同人誌がありましてね・・・(ちらっとブログ右上に視線を向ける)
「ゼッタイドンカン」を終えて、今回からの新シリーズ。そして1話の段階では、楽園掲載のこれまでの2作よりもっと好きになれそうな予感がヒシヒシと。こうかん法則/宇仁田ゆみ
もともとカップルだった2組の男女。しかしいつの間にやら気持ちは動いて、結果的にパートナーを取り替えてしまうというお話。
人間の心なんてあやふやなものだ。だって心が移ってしまったのだから。倫理だ道徳だという話は別として、そういう理不尽に周囲を傷つける性質を、どうしても恋愛も持ってしまうものなのかもしれない。いや俺は知らないけど、たぶんそんな感じ。(台無し)
彼女に振られたショックを引きずる主人公。だけど次第に気持ちが変わる。あてつけのように付き合ったら新しい彼女も同じ。仕返しのためにはじまった偽物の恋が本物になっていく様子が、軽やかにステップを踏むように展開されていく。心地いい空気が満たされているなぁ。
これは慰めではなくて、前向きで本気の恋なんだ。
そして相手が変われば違った世界も見えてきて、新鮮な喜びが身体に流れ込んでくる感じ。ううん、これは次以降も期待したいです。もしかして今後はもう片方のカップルの話も混じったり、ちょっと修羅場ったりするんだろうか!とまぁ色々と妄想が膨らむ設定の新シリーズ!
別作品ですが同じ仙石先生の作品なので一緒に。真昼の果て・夜毎の指先/仙谷寛子
「真昼の果」が軽いBL、「夜毎の指先」が姉弟の近親モノ。
なんかどちらも後ろ暗いというか、仙石先生おなじみの空気のまとった作品ですよ。
でまぁこれが全然話は進まないったら。それがいいんです。どうしようどうしようって堂々巡りの苦悩に支配されているのが好きなんだ・・・!
ノーマルな恋ではない、世間からはきっとよくは見られない。むしろ認められないはずの想い。いつまでたっても正解にたどり着けない。
今回の「真昼の果て」に登場するかわいそうな片思い少女のセリフが良かったな。
「そうよ、私は女だから、今はそうじゃなくても付き合ううちにいつか、好きになってくれるんじゃないかって期待したのよ」という。「女だから」という当然の、しかし卑怯にも感じられる言い分。
けれどその期待は報われることは無さそうなのが・・・。「真昼」は男キャラが女々しくてじれったい分、相対的にこの女の子の男前度が上がっている気がする。彼女も本当は弱いと思うんだけど、メイン2人がナイーヴでな・・・!
「夜毎の指先」はラストにテンション上がるも、やっぱりため息つきたくなる内容・・・。
もたもた、行ったり来たり、でも欲しがりな心はうずくまま。
うひょおおォォォォ!ラブコメ的に興奮の絶頂に導いてくれる「マイディア」ですが今回が最終回。マイディア/かずまこを
前回がかなり暗い内容だったのでどうなるかと思いましたがうまいこと落ちつきました。というか穏やかながらにすばらしい盛り上がりをしており、満面の笑みで読み終えることができましたねぇ・・・!!
恋人2人の想いがただしく真正面からぶつかって溶けてわぁいニヤニヤする!
なんでも抱え込んで1人で解決させようとさせて、限界を向けた成田。様々なトラブルがしずかに解消されていく様子はふっと緊張がほぐれていく感じでほんわか。そのまま恋人との仲直りとイチャコラが始まってダブルほんわか。やさしくしかしギュッと固くつながる2人の距離感に怒涛のごとくテンションが急上昇し最悪の場合死に至る(もう懐かしいネタ)
いやぁ、最終回らしいいい盛り上がりを楽しめて満足満足。
初々しい2人をニヤニヤ眺める漫画ですが、今回のクライマックスは夫婦のような安定感だな。
しかしなるほど、やはり成田先輩はヒロインだったのか。楽園の裏表紙とか紹介イラストでも、睦子ちゃんを差しおいていっつも成田先輩のピンだったし、納得だ、うん。
単行本化の際には描き下ろし漫画にも注目したい。前身作「マイディア」で単行本に書き下ろされたオマケ漫画の圧倒的破壊力を思い出せッ・・・!
次もかずまこを先生は楽園に執筆されるようで、○○ティアシリーズの続編が来たりするのだろうか。読みたいなぁ。でも新作も読みたいしな、WEB楽園でやってる方も楽しみだし、どうしよう。
エロ漫画じゃねーか!(パァン彼女達の最終定理/大月悠祐子
と叫ばざるをえない、ド直球エロスを投げ込んできているシリーズ。
前回はまだどうなるか分からない部分もありましたが、なんですか今回は!ヒドい!遠慮なしだよ!本気でエロすぎる。
完結した思春期男女の恋愛オムニバス作品「妄想少年観測少女」にも、寸止めエロやら「あーこりゃこの後ヤッたな」と想像するに難くないセクシーな描写やらはいくつもありました。
そこはほら、一般誌だし、見せない美学というのがあるじゃないですか。と自分を納得させていましたがごめんなさい正直見たかったですエロいシーンが!興奮に上気する表情が!溢れ滴るいろんな体液が!精神も肉体も極限のとこにいく高揚が!見たかったんだ!
・・・それが全部この「彼女達の最終定理」でやってます。ビックリの白モヤの多さだよ!
大月さんの描く「表情」はとても素敵だな・・・改めて思いました。
主人公の少年の虜になっていく2人の女。女教師と女生徒。
それぞれに魅力がある女性キャラクターなのですが、その表情が素晴らしいんです。
扇情的で、普段は見られない獣じみたムードがあって、けれどどこか気品がある。
この扉絵好きだなぁ。
女たちに触れている腕は本編では少年のものだけれど、この黒い腕は少年にも触れている。
この黒い腕は欲望そのものなのかもな。男も女もみんな絡みとられている。
ストーリーとしての動きはそんなになかったですが、両ヒロインとの性的接触が増したことで、さらに関係の泥沼化が進んだ様子。いずれ両ヒロインがかちあうことになりそう。
何してんですか木尾先生。Spotted Flower/木尾士目
いやそれはこの作品において今に始まったことではないツッコミではありますが、改めて
何してんですか木尾先生!
どこぞの現代視覚文化研究会のメンバーっぽいキャラが登場する本作。
今回の新キャラはコミフェス好きでどうやらコスプレ趣味もある巨乳さん(二児の母)だぁー!
ってオイ!!
いかん、クラクラする。すごいものを読んだ気がするぞ。でもすごく楽しい・・・ナ!
奥さん同士で育児の話からはじまり、夫婦生活の話題にうつり・・・。
女同士の、かなり赤裸々な本音が読めるエピソードでした。まさに赤裸々。
ゲストの「女が本気で誘惑して落ちない男なんていないですよね…?」と言ったトロンと怪しい目つきにブルブルしてしまうなー・・・そして言われて恥じらう奥さん。
こういう面では大野さんが何枚かうわてなんだなー・・・あ違う大野さん違う。
で不満を言ってるはずが最後にはノロケになってるあたり、流石はこの夫婦はお熱いことで。
色々と物語の裏側を探りたくなる作品ですけど、それはちょいと野暮というもの。
いいんですよアフタヌーンであれだけ見せつけられたら、気持ちもサッパリしました。
だから今度からは割り切って、自然な気持ちでこの作品を読めるかな。
・・・と思ったら今回の新キャラ登場で「もう!!!」ってなったという。
木尾士目先生には心ゆさぶられっぱなしです。
エロ漫画じゃねーか!(二度目ユエラオ/黒咲練導
きましたねー。黒咲先生らしい、ネチッこくハードでマニアックなエロスが炸裂。
おとなしい女子高生を、言葉責めに緊縛、揉んで踏みつけ舐めてのやりたい放題。
散々アレコレやっておいて、最後のページだけで「イイハナシダナー」感をかもすのも面白い。
ちょっとだらしない女体のもっちり感が溢れて出ていて、ストレートなリビドーが込められていますねえ。骨ばったスリムな女性も描かれますが、どちらも少しクセがありつつもそれが魅力的。
暴力的なまでに性衝動があり、しかし清らかに結びつく少女同士の恋があり・・・
淫靡なムードたっぷりに魅せてくれる作品でした。美味。
水谷フーカ「14歳の恋」中村明日美子「日曜日」シリーズ、竹宮ジン「想いの欠片」などなど、続き物の作品もますますおいしくなってきました。ニヤニヤするよね、相変わらず。
シギサワカヤ「お前は俺を殺す気か」はなかなか先が読めずに混沌としています。
ほかにも語りたい作品だらけなんですけど、追いつかなくなってしまいそうなのでこの辺で。
10号目ともなると一冊の本としての安定感・安心感というのも研ぎ澄まされてきてるなぁ。
甘味も、苦味も、酸味も、毒さえ一緒に味わえる極上スイーツ。
いろんなタイプの作品が一堂に会して、一口に恋愛をテーマにしていると言っても、その内容や方向性はさまざま。まったり読み込みたい本になっています。ゆとりを持って読みたいな。
ここにきてなにげに作家の入れ替わりも起きていて、まだまだ変化していく雑誌。
また4ヵ月後としばらく待つのが歯がゆいですが、スローペースだからこそ味わい深い面も間違いなくある。次からの新しい作家さんも楽しみだし、買い続けたいですね。
[漫画]神様と人間のアツアツ夫婦『お嫁さんは神様です。』1巻
お嫁さんは神様です1 (マッグガーデンコミックスビーツシリーズ) (2012/11/14) 瀬川藤子 商品詳細を見る |
ともあれ今日も幸せです。
「お嫁さんは神様です。」1巻が発売されました。感想を書こう。
作者の瀬川藤子さんは「VIVO!」の連載もありましたが、こちらは受賞&デビュー作なんですね。受賞作を連載化したものがこの単行本。
清四郎とサクヤ、町でも評判の仲良し夫婦。しかし妻のサクヤにはとある秘密があります。まったりとした夫婦愛漫画。と同時に、ちょっとしたファンタジー要素が溶け込んでいて楽しい。
連載自分は「VIVO!」は未読なのですが、そちらも読みたくなったな。
まったりと心あたたまる、たまにちょっとトラブルが起きる。ちょっと賑やかな日常。
神様の人間の夫婦の日常って、どんなものだろう?
「結婚っていいもんです。」なんてあったかい帯文がまず象徴的ですね。
本当に心がポカポカしてくる、いい夫婦漫画ですよ。
これがただ恋人というだけなら色々不安になってしまう瞬間もちらほらこの1巻にも出てくるんですけど、「夫婦」という関係がすごく安心感をくれる。
お互いに想い合っているぬくもりが、ときどき言葉で、普段は何気ない空気の中に表れている。雰囲気のよさというのをしみじみと感じる作品でした。
まったりとした夫婦。けれど時々、強い愛情が溢れ出す。本当に大切なんだなぁと。
夫・清四郎さんも、普段から奥さんを大切にしているんだけど、サクヤがいつも全力でスキスキやってるから相対的におとなしく感じるw
でもいざとなれば照れることなく仕事をやってのける男。彼がいい仕事をするたびにサクヤさんが感動で目を潤ませる流れはもうかわいすぎるw
妻のサクヤさんはずーっと夫のこと好き好き言って行動しているので、好意がわかりやすいのも見てて楽しいです。
ストーリーは結婚してから始まります。しかし途中時々に挟まれる回想シーンがいちいちノスタルジックでいい味を出している・・・!なんてことのないように結婚前の話をしだりたりな。
思い出をいくつも積み重ねて、夫婦となった今がある。そのことをさりげなく示してくるあたり、またしてもニヤリとさせられるじゃないですか。
「お嫁さんは神様です」というこのタイトル。「お客様は神様」みたいな例えではなく、本当に本当の神様だったりします。お嫁さん、サクヤは「コノハナノヤクヤヒメ」という神様。
彼女だけでなくほかにも日本の神話に登場する神様たちが続々と。
神様はたまーに下界へ転生するようです。人間として生を受けた神様は、人間として生活をしていく。けれど神様時代の記憶は引継いでいる。神話のころの人間関係(神様関係?)をそのままいろんなトラブルが起きたりします。
とは言え神話の知識は必要ない。あくまでもメインは主人公夫婦。このかわいい夫婦を眺めてニヤニヤしていればそれでいいのです。神話は小ネタとして。作中で説明もはいるので置いてきぼりを食らうこともなかったです。そういう前世からの縁でいざこざが起こるのも面白い。
気に入ったのは第4話だなぁ。
清四郎の三つ子のお姉さんが活躍するお話。この最後のサクヤさんの満面の笑顔が素敵すぎる。「私たちにとってサクヤちゃんは救いの女神なのよ」というお姉ちゃんの言葉もね。
清四郎とサクヤが一緒になり、夫婦となった。そのことの深い意味が感じられます。
でまぁ、当事者の清四郎が「俺にはよくわからないけど」とこぼしてしまうこのちょっとした情けなさも可愛らしいポイント。男の知らないところで女たちが繋がってて、清四郎はちょっと蚊帳の外。それがいいんだ。
あとサクヤさんの姉のイワナガヒメさんもお気に入りだなぁ。
醜さが原因で男に捨てられた神様らしいのですが・・・いやいや、醜いどころか美しい。
ちょくちょく暗い一面が出ちゃう女の人なんですが、意中の相手に声をかけてもらえばすぐポワワとなってしまったり。恋に不得手なおっとりおねえちゃん。いやぁかわいいな!
神様時代のサクヤの夫、ニニギノミコトは現世では中学生の男の子。
こ憎たらしいやつなんだけど、子供ながらの可愛らしさも併せ持っています。
物語が進めば、もっと神様キャラが増えたりするのかな。
でも今くらいのキャラバランスがとても居心地よかったりもします。
みんな可愛らしいなぁ本当に。そしてぶっちぎりで可愛いのは、主人公夫婦です。
リラックスして楽しめる、爽やかでアマアマな夫婦愛漫画。ほっこりほっこり。
結婚前の2人とか、結婚式での2人とかも見てみたいなー。
『お嫁さんは神様です。』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
とってもかわいいお嫁さん。夫婦も周囲の人間たちもとても暖かい、甘々な作品です。
[漫画]戦争の傷痕と、喪失を癒すそれぞれの旅。『ブレイク ブレイド』11巻
ブレイク ブレイド11 (メテオCOMICS) (2012/11/12) 吉永 裕ノ介 商品詳細を見る |
貴方は卑怯だ
「ブレイクブレイド」11巻が出ました!10巻は去年の8月・・・1年以上ぶりです。
実はけっこう長い間、連載がとまってしまってかなりハラハラさせられた時期があります。
フレックスコミックスってそこらへん結構ビビらされるんですよね・・・と思ったらこのブレイクブレイド、フレックスコミックスから抜け出して「コミックメテオ」というWEB雑誌に移籍。というかそのあとからフレックスコミックス自体がコミックメテオに合体したり。なんか複雑です。大人の事情はいいのです。面白い漫画が読めれば!
この11巻もメテオコミックスから発売されました。背表紙やタイトルロゴも一新されましたね。まぁ背表紙は1巻だけデザイン違ってたり、もともと統一感あんまりないからいいや!
さてテンション上がっていますが内容の話に。感想書きます。
前巻→ついに終戦。憎しみの果てに何が残るか 『ブレイクブレイド』10巻
長らく続いた戦いに終止符が打たれました。
激アツだった10巻からしばらくまたされましたが、別の視点から見れば、この長い空白期間はいい区切りとなったのかもしれませんね。
11巻の内容はずばり戦後処理。激闘の果てにある、現実的な事柄が描かれていきます。
一息付くかと思われましたが、しかしここから新たな戦争の動きが見えたり・・・!
●戦争をめぐる人間ドラマと、傷を癒す旅と
11巻は、自分がブレイクブレイドで好きなポイントがしっかり現れていました。
それぞれの戦士たちの人間ドラマがそれ。
戦争を終えた今、一時的に安らな空気が流れる。けれど戦争で傷つけられた心はそのまま。脳裏に焼き付いた凄惨な光景。戦士たちの苦悩は、戦いを終えてもなお続く。
戦争に身を置く人間たちのそれぞれのドラマは熱く重厚で、切ないものが多いです。
みんなボロボロになっていく。そうだ、だって戦争だ。
イオ大佐が・・・。あの勇ましい男が・・・。
主人公サイドの敵国の人間でありながら、筋の通った信念と行動力、そして実力を兼ね揃えた、格好いい男でした。愚直に将軍を慕っている、まさに軍人。
そんな責任感ある男が、自ら軍を抜ける選択をする。
ボルキュス将軍の死より彼を動かしたのは、部下の死だったことが伺えます。ニケのことを脳裏に描きながら、彼は軍人であることを捨てた。
ニケは死の間際までイオのことを想っていて、想いながら死んでいます。
切ない・・・。上司と部下だけでない、男と女だけでもない、人と人のドラマだな。
あと11巻限定版の小冊子、ニケのキャラプロフィールを読むと、さらに泣ける・・・。
「ずっと気づかないフリをしていただけだよ」というイオ大佐の言葉にしびれる。
戦争に傷つき背を向けた、かつての英雄の言葉。自分を騙してなんとか歩いてきたけれど、ここでもう、限界なのかもしれない。もう1度彼が戦場に立つことはあるのかな。あったらもう、大興奮間違いないんだけど。
ああ、そうだ。この作品の好きな理由をもういっこ再発見した。人物の死をながく引きずことだった。
その死を辛く思う人が必ずいる。立ち直れないくらいに心くじける人がいる。そこを描いてくれる。死が無意味にならない。
湿っぽくて女々しいことかもしれないけど、そこがとても人間くさく感じるんですよね。人間くさいからこそ物語にのめり込める。ロボット漫画ではありますが、自分はそこが気に入っている。
「戦争」を通じて描かれる、傷ついていく人間たちの心のドラマが好きだ。
イオ大佐だけではない。戦争をした両国家で、人々の苦しみが描かれます。
ブレイクブレイドは戦争の合間に、こうして人々の喪失の苦しみを挟み込んできています。11巻ではそれをこれまで以上に大切に描かれている気がしました。
戦争の緊張から開放された、ひと時の安息。けれど傷がうずく。うづき続ける。
そしてついに病んでいく。ライガットは・・・ふだんはあんな明るいのに、ダークサイドに落ち込んでからのギャップがすごくて、恐ろしいですね。主人公でここまで不安定になってしまうとは・・・!
戦争を語ればジルグ、酒が入るとジルグ、夢を見るとジルグ。
ライガットにとってシルグがどれだけ大きい存在か改めて感じます。
「俺がいなければ、ジルグは今頃まだ生きていたんだ」「俺さえいなければ」
後悔が染み付いて取れないライガット。ある意味、呪縛だな。
この作品、意外なくらいにあっさりとキャラを殺します。
けれどその後が長い。喪失の傷を癒す旅をみんなが辿っていく。
そう簡単に癒せるはずがない。けれどそれぞれが、その傷を向き合って決断をする。
ある者は歩みを止め、ある者は混乱し復讐者になり、ある者はそれでも正しく歩む。
ブレイクブレイドはその人間描写がしっかりとされていて素敵ですわ、本当に。
ゴゥレム同士のド迫力のバトルも楽しい。しかしこの叙情的な人間ドラマにも強く心惹かれます。
●シギュンの決断
11巻の最大の見どころと言えるのは、シギュンの決断と動きではないでしょうか。
シギュンさんはメインヒロインでありながら、人妻なんですよ!
でも夫のホズルとシギュンの夫婦仲は謎であり、結婚指輪は外してるし。
「結局この2人はなんなの?シギュンとライガットの関係はどうなるの?」
とストーリーの初期から読者をヤキモキさせた部分が、ついに動く!
イメチェンしたシギュン様。ツインテールになりました。
最初は違和感ありました、が・・・ッ、これは・・・かわいい・・・ぞ!!
髪型を変えたのは、彼女の心境を現れでしょうね。
念願かなってライガットとの2人きりの生活が始まるぞ!と表情には現れていませんがワクワクしちゃってる様子が見えてしまっているシギュン様を眺め、ほっこりするのが俺の仕事。
しかしこのシーンにはヒヤリとさせられた・・・。ああーついにか!うわーッ・・・と。
ホズルの内面の描写ってほとんどされていません。更に彼がシギュンをどう思っているかなんて、ほとんど見えてこなかった。この一連のシーンは、ホズルの本心を覗ける貴重な場面。
夫として、男としての感情があったんだろう。けれど昔からシギュンの眼がどこを向いているのかも知っていたのだろう。シギュンとホズルのあいだに夫婦生活はあったのか・・・というひどい膜論争は置いといても、ここはホズルという男の複雑な思いが溢れ出ているシーンでもあります。
やはりもっとホズルについての描写がほしい・・・!これから物語が佳境へ進みにあたり、描写が深まっていくとは思いますが、どんなものが描かれるのやら・・・。
そもそもホズルとシギュンが結婚に至った流れを、漫画で読みたいなぁ。
ほか、次の展開で重要になりそうなシーンはかなりありました。
ついにまたゼスとライガットの一騎打ちが見られそう。予告でモロにそのシーンありました。
あとアテネスの新型ゴゥレムが登場し、それを操縦する少女もお目見えしたり・・・。
ああーいいねいいね!次のバトルに向けて、各方面で盛り上げている感じ!
純粋にロボットアクションもカッコいいこの作品。11巻はそういう描写はほとんどなかったので、12巻は期待したいなぁ。11巻は本当に「軍人」を掘り下げた内容だったと思います。
ブレイク ブレイド 11 限定版 (メテオCOMICS) (2012/11/09) 吉永 裕ノ介 商品詳細を見る |
途中ニケの話題のときにも書きましたが、11巻の限定版はキャラクター設定資料付き。
この設定資料集がまた面白いんです。各キャラの年齢やバックボーンはもちろん、好きな異性のタイプとかまで書いてあるwサブキャラまで結構細かく拾って取り上げられているので、みる価値十分にアリ!
しかもバックボーンの欄では、本編では描かれていない秘められたエピソードも公開。
そのせいでニケの死がここに来て一気に心に重くのしかかってきたわけですが・・・
深い人間ドラマも見どころな本作。キャラクターをより知ることができるこの設定資料集は、持っていて損はないはず。描き下ろし漫画もあります。
・・・ところで資料集を読んで、改めてクレオの12歳設定は凄まじいと思う・・・なんだあの身体・・・。
そんなこんなの「ブレイクブレイド」11巻。
戦争が終わったからこそ見えてくる戦争の恐ろしさ。人は歪んでいく。挫けていく。
喪失の傷を癒す旅はひたすらに続く。今はただ、戦いから遠ざかろう。
とは言ってもすぐに戦いが始まりそうな予感がビンビン。どうなるのかな。
静かに去る者がいる。戦い続ける者がいる。この作品の大きなテーマは、「運命に抗おう」。ライガットたちはどのように抗っていくのだろうか。相変わらず続きが見逃せない漫画。
『ブレイクブレイド』11巻 ・・・・・・・・・★★★★
戦争が残したさまざまな傷痕をじっくりと確認していくお話。しんみりとしつつ、次の大きな戦いへの盛り上がりも気持ちいい。主役4人それぞれの動きも気になりまくり・・・!
[漫画]いけないコト、たくさんしようよ。『禁忌アンソロジー feroce』
禁忌アンソロジー feroce (マジキューコミックス) (2012/10/25) 不明 商品詳細を見る |
禁じられるからこそ、狂おしい
いけないこーとーかーい?傷ついーてーもー・・・以下略。
エンタブレインのアンソロジーシリーズ、今回のテーマは「禁忌」です。
このシリーズ、amaroから始まり、前回は百合アンソロジーdolceが発売されましたね。
→女の子の世界はやわく可愛く切なく危うい。『百合アンソロジー dolce』
今回は禁忌がテーマといことで、危ない関係のいくつもいくつも楽しめる一冊。
兄と妹、姉と弟、教師と生徒、同性同士、ほかにも色々。
ドキドキする背徳的なシチュエーションの恋愛モノが好きな方にはおすすめしたいですね。
あとテーマがテーマなので、雰囲気も描写そのものも、結構エロいよ!
参加してる作家さん一覧を眺めても・・・うん、これは成年漫画のゾーンだ。そっち方面で活躍してる作家さんも大勢いらっしゃいます。
試し読みページも用意されているのでこちらもチェックしてみては。
「禁忌的な恋」テーマだと暗いものが多いというイメージになりそうですが
1冊の中でいろんな方向性の作品が集められていて、うまくバランス取られています。
がっつりシリアスもあればコメディ全開もあり、エロもあり。
表紙と裏表紙からして素敵です。
表紙は、教師と生徒がこっそり隠れて・・・なワンシーンかな。ノリノリな生徒さん可愛い。
そして裏表紙はきんくさんによるエ年の差モノか。わぁい!きっと事後!くそっエロすぎる!
きんくさんのイラストの破壊力はやはりすごいな。少女の細く白い指が、色黒くて大きな男の指と絡まっている。それだけでなんかもう!いけないことしちゃってる感MAXですよ!きんくさんのイラストはもともと好きだけど、これ大好きです。
では特に気に入った作品の個別感想ー。
しょっぱなから心打ち抜かれた・・・!大塚先生による姉弟モノ。ディプラデニア/大塚小虎
ページ数はそう多くないのでうねりのあるストーリーはありませんが
自分の本当の気持ちに気づいて、超接近して、触れ合って・・・な、ストレートなストーリーラインをそのまま突っ走って、とても気持ちがいい!そして、要のおねえちゃんが超かわいい・・・!
ほげェー!くっそかわいいぞー!
姉弟で恋をするという後ろめたさは間違いなく存在し、そこも描かれています。でもその後ろめたさから逃げず、立ち向かっていく力強さがある。
読後感もよく、キャラの魅力にも溢れた、王道だからこその美味しさでした。
このままエロ漫画突入オナシャス!と土下座も辞さない。
で、タイトルを花の名前にするってことは・・・きっと花言葉とかに仕掛けがあるんだろうな。と思って調べたら、ディプラデニアの花言葉は「情熱」「危険な恋」ですって。いいね。
Hisasiさん一般向けでも自重してねえな。ド直球でエロいじゃないですかー!甘いとき/Hisasi
というかここまで性行為の存在を明らかにしたお話はほかになかったので、1番過激。
これだよこれ。(満面の笑み
もう普通にエロ漫画じゃないですか!大好きです!
しかし明るくお気楽なものではなく、しっかりと「禁忌」のテーマを取り込んだ仕掛けもあります。最後のページでは興奮のあまり本を投げだしそうにw
エロいだけではなく、しっかりとほの暗い雰囲気で魅せてくれる作品。お気に入り。
ヒロインの屈託のない笑顔や迷いのない接触がさらにやらしいですわ・・・!軽々と、飄々と、いけないことを楽しんでいる。すげぇ・・・。
こういうゾクゾクが体験できるのが「禁忌」を味わう醍醐味だとも思います。
このアンソロジーシリーズではもう「お馴染みの」の枕詞を当てることができそうな水瀬るるう先生。今回も、たっぷりニヤニヤできる作品でした。やさしい毒/水瀬るるう
女好きの美少年が、人妻の女教師にイタズラをするというお話です。
もうねえ、この男の子のキレイで黒い笑顔がステキですよ。
年相応にゲスいゲスい。性欲の塊。それでいい。こんな生徒にまんまと手のひらで転がされて遊ばれてしまっている純朴な先生がとの組み合わせが・・・たまらんのです!
髪さわるついでに耳にまで触れて「楽し~~」「触らせる先生が悪いよね」とか言ってる。
で、結局まんざらじゃない先生も先生だ。態度としては先生と生徒の関係をつきつけるけれど、心の底では、生徒から言い寄られてうれしはずかしな感じ。女として見られてソワソワしてる。
押せばなんとかなっちゃいそうなフラフラの人妻って、エロいわな・・・。
ギャグ系の作品で1番面白かったな、これw愛さえあれば大丈夫?/竜太
禁忌といえば禁忌だけど、この作品のテーマは動物愛。主人公は犬を溺愛する少年です。
せっかくかわいいヒロインも出ているのにそっちには微塵も興味を向けず、「お腹の毛がチクチクするよ!!(恍惚」とか言いながら犬を抱いてスーハースハーしている、男らしさとはなんたるかを教えてくれる変態である。この犬のためなら飼い主である女(いちおうヒロイン?)との偽装結婚だってしてやるとのたまう。なんという気合。
短い話ですがテンション吹っ切れたバカ話でとても面白かったです。
ちなみにかにゃぴいさんによる「いぬこい」も同じく犬を溺愛する主人公が描かれており、「その属性かぶっちゃうのかよ」と笑ってしまいましたw(アオハルで単眼ヒロインが複数作品にわたり出てきたときと同じ感想)
シリアス路線のお話では、この本で1番好きかな。泪は弧を描いて/渡まかな
ストーリーにも広がりがあって、エンディングも美しくて、切なくて。
輪廻転生、前世の因縁を現代にひきずった双子の男女のお話。
前世で駆け落ちし、心中した男と女。その記憶をいまも残している2人です。双子として生まれた今も恋は続く。けれど、超えては行けない。
禁忌というのに相応しいヘビーな題材と、それを魅力的に描いた力作!
離れがたい関係に生まれた甘い喜びと、けれど決してこれ以上は結ばれない悲恋。
「禁じられるからこそ、狂おしい」というのはこの本の中で1番印象に残った言葉。
ほかにも色々面白かった作品はあるんですが、個別感想書くのはここまでで。
禁忌と言っても暗いだけではなく、コメディ調の作品の存在もあって明るい雰囲気はあります。
でもやはり「いけないことをしているんだ」という感覚が1番の醍醐味。
背徳感がにじり寄ってくるようなゾクゾク感を味あわせてくれる作品が多い、禁忌アンソロジーとしての旨味を満喫できました。面白かった。
コメディにしても「禁忌的なはずなのに悪気ゼロ!」ってところでもう一段階笑えたりします。
個人的にはもーっとシリアスに、罪悪感で押しつぶされそうで苦しいばかりの恋をする話も見てみたかったけれど。でもいろんなシチュエーションからドキドキさせてもらえたという事で、満足度は高いですよ。
次のアンソロジーのテーマがどうなるかはまだわかりませんが、ここまでいいクオリティをキープしているので、次も期待したいところ。