[漫画]君がいるならたとえ世界が終わる日も。『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』3巻
「あした地球がこなごなになっても」、見事という他ない。
・・・私たち、・・・ちゃんとした大人になれるかな?
デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション、略してデデデデ、さらに縮めてデ略のコミックス第3巻です。
終末はたまたとは滅亡とは慣れ親しんだ隣人である現代に生きる女子高生たちの
くそ平和な日常を綴った、浅野いにお先生のほんのりセカイ系の匂いを放つ最新連載作。
個人的にいま連載している漫画作品の中ではトップクラスに面白いです。
定期的に俺は浅野いにお先生のことを半分ネタにするように楽しみますけど、本気で好きなことはやはり変わりなく。
過去作で時に炸裂させていた自己嫌悪や破滅的思考、暴走する悪意といった殺伐した空気は
ほどよく女子高生たちのとぼけた世界観と交じり合い、不思議な味わいを楽しませてくれます。
素直に女の子カワイイ!世界がヤバい!みんなカワイイ!って楽しんでるんですが
現実と照らしあわせようものならめんどくさい話題になるのでそういうのはしません。
この3巻、感触としては「プロローグはここでお終い」である。
過去最大の事件(彼女らにとっての)と、そしていずれ訪れるアレ。
栗原キホ。
おんたんと門出とよく遊んでいた、仲良しグループの中のひとり。この3巻の表紙の娘。
グループの中ではおそらくいちばん『今風の女子高生』で、ちょっと太めの眉とあえてそれをアピールするように短めにカットされたボブヘアがかわいくて、告白されて舞い上がちゃって、出来た彼氏と一晩中SNSですきなアーティストの歌詞について議論をして寝不足で登校してくる。あれっ、こんなの普通に恋しちゃうぞ!
で、失恋してみんなと弾けるように遊んで慰めてもらって、泣いてしまう。
ちょっと浮かれやすくて素直で、まさに等身大の遊びたいざかりの女の子って感じだ。
おんたんと門出の親友と呼べる女の子だった。そして彼女たちの日常から欠けたピースのひとつになった。
叫んで泣いて、残された4人は確かめるように手を繋いだ。帰り道。
突き刺すようなおんたんの絶叫の見開きに、やられてしまった人、多いんじゃないかな。
こういうのを見るとおんたんはある程度意識的にピエロを演じる部分は間違いなくあるんだ。
栗原キホの死というのは、これまで主人公たちのすぐそばで起こっていた宇宙人との戦争という暴力的な世界は、けしてまやかしなんかじゃないと、そう読者に叩きつけてくる。
きっといつかはあるんじゃないかって、正直なところ身構えていた展開だ。
なのにぽっと、まるで他人事みたいにテレビニュースで読み上げられた犠牲者の中に栗原キホの名前ある・・・という演出が絶妙だ。最初、一瞬、事態がつかめなかった。
その死は軽いのか重いのかも分からない。
世の中にとってはなんてことない死だ。学校のほかのやつらだってケロッとして、スマホでゲームやりながら気楽に同級生の死を話題にする。描かれていない外側でいくらでも人間は犠牲になっていて、けれどそれでもくそみたいな日常に彼女たちはいたはずだった。
・・・本当に上手い。こんなにも不意を付かれてしまうなんて、とショックすると同時にワクワクしてくる。
第23話、卒業式で出席番号23番は読みあげられない。そしてそこにある空席。
喪失というものに対するだれかの悲しみの深さ大きさを描きながらも
死というのはもうそこら中にあって、みんな慣れてしまって、それすらも「くそ平和」の中に収まってしまっているのが静かな狂気を感じさせる。
そしておんたんと門出は第一志望の大学に落ちた。
げぇーっへっへっへっへ!!
・・・おう。
この作品に出てくる「大人」って、いろんな人種がいる。まぁそんなの当たり前なんだけれど。
今の子供達は、リアルタイムで世界が大きく変貌していくそのさなかに、思春期を迎えた。
迷い惑い戦う姿も逃げる姿も、それぞれの大人たちが信じる正義思想戦争を、間近で見つめた世代だ。
その中で、この3巻で俺が1番好きなシーンが一層、胸に響く。
ちゃんとした大人ってなんだろう。
そして胸の奥底にある少しだけの不安。
大人になるまで生きていけるだろうかと。
門出は卒業式を終えたあと担任教師に訪ねます。
「本当の本当は、この世界はどのくらいやばいんですか?」
「ただの偶然があいつらの気まぐれ」
そして当たり前だけど、このくそ平和な日々がそのまま続くことを根拠もなくすこし思っていて
18歳らしい、将来への不安やモラトリアム的な疑問も湧き上がる。
大人に、なれるのだろうか。
甘酸っぱくもあり、この作品の優しい顔した終末感を象徴するかのような、高校生活の最後を飾る名シーンですわ。
「だって僕たちは、僕たちなんだから」というおんたんのセリフも格好いい。
わけもなく不安で、わけもなく自信家で、悲しみはあれど日々はそれなりに満たされて、けれどどうしようもなく欠け落ちたものもあって。
この作品の破滅的な設定って、「青年期の感覚」をさらに色鮮やかに浮かび上がらせる装置としても働いてくれているなと感じます。そういうのが大好き。
ほか、3巻ラストのモノローグも意味深で、今後を読み解くカギになりそう。
ほか、宇宙人に関する事実もいろいろと見えてきました。
実は宇宙人自体はかなり弱いんですね。民間の被害者が出るのだって、撃墜された宇宙船の落下によるものも多い。
現代の自衛武装で、宇宙人との戦闘は圧倒しています。
でも戦争や武器供給、宇宙人討伐をビジネスにする人たちにとって
宇宙人には”脅威”であり続けてもらわないといけない。
だから「殺しすぎないよう注意しろ」「適当数を処理」といった言葉が出てくる。
SF映画みたいな危機的な状況なのに、人々は死を隣に据えながら実に呑気にたくましい。
そして宇宙人。
彼らにも知能はあって、片割れを射殺されれば崩れ落ち、呆然となにか言葉を発する。
この場面は物悲しくてたまらなかった。
宇宙人の扱う言語はまったく意味はわからないんだけど、なんか法則性があって実は解読できたりしないかな・・・
全体的に「世界の危機」と呼ばれるものが薄っぺらくて信じがたくて呑気なもので
でも「いや絶対この先なんかヤバいこと起きるでしょ・・・」って感じるわけで
そしてその予感が現実のものとなるのが、この第3巻ラスト。
プロローグはお終いだ。
おんたんのニートお兄ちゃん(顔だけイケメン)が人助けをするほっこりエピソードも収録。
お兄ちゃん大好き人間としては感謝の一話である。めっちゃ面白かった。
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』3巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
あまりに死に慣れすぎた結果、麻痺をし続けている世界。癒えること無い闇が巣食う。
俺はもっと女の子かわいいおんたん最高って呻きながらこの作品を楽しみたいのに。
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・・・私たち、・・・ちゃんとした大人になれるかな?
デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション、略してデデデデ、さらに縮めてデ略のコミックス第3巻です。
終末はたまたとは滅亡とは慣れ親しんだ隣人である現代に生きる女子高生たちの
くそ平和な日常を綴った、浅野いにお先生のほんのりセカイ系の匂いを放つ最新連載作。
個人的にいま連載している漫画作品の中ではトップクラスに面白いです。
定期的に俺は浅野いにお先生のことを半分ネタにするように楽しみますけど、本気で好きなことはやはり変わりなく。
過去作で時に炸裂させていた自己嫌悪や破滅的思考、暴走する悪意といった殺伐した空気は
ほどよく女子高生たちのとぼけた世界観と交じり合い、不思議な味わいを楽しませてくれます。
素直に女の子カワイイ!世界がヤバい!みんなカワイイ!って楽しんでるんですが
現実と照らしあわせようものならめんどくさい話題になるのでそういうのはしません。
この3巻、感触としては「プロローグはここでお終い」である。
過去最大の事件(彼女らにとっての)と、そしていずれ訪れるアレ。
栗原キホ。
おんたんと門出とよく遊んでいた、仲良しグループの中のひとり。この3巻の表紙の娘。
グループの中ではおそらくいちばん『今風の女子高生』で、ちょっと太めの眉とあえてそれをアピールするように短めにカットされたボブヘアがかわいくて、告白されて舞い上がちゃって、出来た彼氏と一晩中SNSですきなアーティストの歌詞について議論をして寝不足で登校してくる。あれっ、こんなの普通に恋しちゃうぞ!
で、失恋してみんなと弾けるように遊んで慰めてもらって、泣いてしまう。
ちょっと浮かれやすくて素直で、まさに等身大の遊びたいざかりの女の子って感じだ。
おんたんと門出の親友と呼べる女の子だった。そして彼女たちの日常から欠けたピースのひとつになった。
叫んで泣いて、残された4人は確かめるように手を繋いだ。帰り道。
突き刺すようなおんたんの絶叫の見開きに、やられてしまった人、多いんじゃないかな。
こういうのを見るとおんたんはある程度意識的にピエロを演じる部分は間違いなくあるんだ。
栗原キホの死というのは、これまで主人公たちのすぐそばで起こっていた宇宙人との戦争という暴力的な世界は、けしてまやかしなんかじゃないと、そう読者に叩きつけてくる。
きっといつかはあるんじゃないかって、正直なところ身構えていた展開だ。
なのにぽっと、まるで他人事みたいにテレビニュースで読み上げられた犠牲者の中に栗原キホの名前ある・・・という演出が絶妙だ。最初、一瞬、事態がつかめなかった。
その死は軽いのか重いのかも分からない。
世の中にとってはなんてことない死だ。学校のほかのやつらだってケロッとして、スマホでゲームやりながら気楽に同級生の死を話題にする。描かれていない外側でいくらでも人間は犠牲になっていて、けれどそれでもくそみたいな日常に彼女たちはいたはずだった。
・・・本当に上手い。こんなにも不意を付かれてしまうなんて、とショックすると同時にワクワクしてくる。
第23話、卒業式で出席番号23番は読みあげられない。そしてそこにある空席。
喪失というものに対するだれかの悲しみの深さ大きさを描きながらも
死というのはもうそこら中にあって、みんな慣れてしまって、それすらも「くそ平和」の中に収まってしまっているのが静かな狂気を感じさせる。
そしておんたんと門出は第一志望の大学に落ちた。
げぇーっへっへっへっへ!!
・・・おう。
この作品に出てくる「大人」って、いろんな人種がいる。まぁそんなの当たり前なんだけれど。
今の子供達は、リアルタイムで世界が大きく変貌していくそのさなかに、思春期を迎えた。
迷い惑い戦う姿も逃げる姿も、それぞれの大人たちが信じる正義思想戦争を、間近で見つめた世代だ。
その中で、この3巻で俺が1番好きなシーンが一層、胸に響く。
ちゃんとした大人ってなんだろう。
そして胸の奥底にある少しだけの不安。
大人になるまで生きていけるだろうかと。
門出は卒業式を終えたあと担任教師に訪ねます。
「本当の本当は、この世界はどのくらいやばいんですか?」
「ただの偶然があいつらの気まぐれ」
そして当たり前だけど、このくそ平和な日々がそのまま続くことを根拠もなくすこし思っていて
18歳らしい、将来への不安やモラトリアム的な疑問も湧き上がる。
大人に、なれるのだろうか。
甘酸っぱくもあり、この作品の優しい顔した終末感を象徴するかのような、高校生活の最後を飾る名シーンですわ。
「だって僕たちは、僕たちなんだから」というおんたんのセリフも格好いい。
わけもなく不安で、わけもなく自信家で、悲しみはあれど日々はそれなりに満たされて、けれどどうしようもなく欠け落ちたものもあって。
この作品の破滅的な設定って、「青年期の感覚」をさらに色鮮やかに浮かび上がらせる装置としても働いてくれているなと感じます。そういうのが大好き。
ほか、3巻ラストのモノローグも意味深で、今後を読み解くカギになりそう。
ほか、宇宙人に関する事実もいろいろと見えてきました。
実は宇宙人自体はかなり弱いんですね。民間の被害者が出るのだって、撃墜された宇宙船の落下によるものも多い。
現代の自衛武装で、宇宙人との戦闘は圧倒しています。
でも戦争や武器供給、宇宙人討伐をビジネスにする人たちにとって
宇宙人には”脅威”であり続けてもらわないといけない。
だから「殺しすぎないよう注意しろ」「適当数を処理」といった言葉が出てくる。
SF映画みたいな危機的な状況なのに、人々は死を隣に据えながら実に呑気にたくましい。
そして宇宙人。
彼らにも知能はあって、片割れを射殺されれば崩れ落ち、呆然となにか言葉を発する。
この場面は物悲しくてたまらなかった。
宇宙人の扱う言語はまったく意味はわからないんだけど、なんか法則性があって実は解読できたりしないかな・・・
全体的に「世界の危機」と呼ばれるものが薄っぺらくて信じがたくて呑気なもので
でも「いや絶対この先なんかヤバいこと起きるでしょ・・・」って感じるわけで
そしてその予感が現実のものとなるのが、この第3巻ラスト。
プロローグはお終いだ。
おんたんのニートお兄ちゃん(顔だけイケメン)が人助けをするほっこりエピソードも収録。
お兄ちゃん大好き人間としては感謝の一話である。めっちゃ面白かった。
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』3巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
あまりに死に慣れすぎた結果、麻痺をし続けている世界。癒えること無い闇が巣食う。
俺はもっと女の子かわいいおんたん最高って呻きながらこの作品を楽しみたいのに。
[漫画]どうやら世界がヤバイらしい、たぶん。『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』1巻
デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 1 (ビッグコミックススペシャル) (2014/09/30) 浅野 いにお 商品詳細を見る |
私にとっておんたんは 「絶対」なんです。
スピリッツで連載されている浅野いにお先生の最新作。
タイトルは「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」。めちゃくちゃ長いので略称として「デデデデ」とか「デ(略)」とかがあるみたいですね。
個人的には浅野いにお作品の中でも、かなり好きな作品になりそうな新作です。
宇宙から「侵略者」がやってきた。地球人との戦争が始まった。
・・・けれど、被害は出たけれどあっさりと地球は防衛に成功。
日常の中に非日常が混じったまま日々は続き、どこか狂ってしまった世界とどこかおかしくなってしまった人々と、ゆるやかに青春を謳歌する少女たちがいる。
掲げられたキャッチコピーは「デストピア青春日常譜」。
小学館のサイトではお前この野郎(ニッコリ)なステキ紹介文があるのでこれも張っておく。
夢見る女の子。ぶっ壊れてる女の子。
四次元ポシェット。トランジスタラジオ。
放課後の寄り道。大人げないお母さん。
戦争ゲーム。イケメンデブのお兄ちゃん。
たわいないおしゃべり。泡のような初恋。
空を覆う絶望。永遠の8月31日。
そして宣伝動画も公式で制作されていて、なかなかいい出来なのでこれも置く。
絶望感となんてことない平凡な日常がミックスされた雰囲気が絶妙な作品。
世界観のデザインの上手さという点でまず勝利してる。
女子高生のとぼけた日常風景が醸し出すゆるやかな空気が心地よくて、その背景にあるミステリーとかおぞましいものにフィルターをかけている。
でも隠しきれない不穏な要素は少女たちと読者を睨んできて、なんともいえない緊張感が内蔵をモヤモヤとさせてくれます。
この風景すごいですよね。まさに映画の世界。なのにここまで無感動でいられる、麻痺した感覚。まさにこの作品らしい場面。格好いい。
そして大切なこと。女の子の小憎たらしさと愛くるしさ。これですよ。
浅野いにお先生がこんなに素朴な美少女を描いてるぞ!という謎の感動が湧き上がる。いやこれまでも美少女はいましたけれど、ここまで素直な女の子たちなかなか居なかったからね・・・。
友達が大好きで大切で、学校の先生のほんのり片思いをして、彼氏持ちのクラスメイトを羨ましくなったり嫉妬したりして、ばかなことを言い合いながら一緒に帰って。
なんて「普通」な娘たちなんだよ!おんたんはちょっとぶっ飛んでるけど!
不思議だなぁ、こんなにおかしな世界に生きていても、少女たちは変わらないんだ。
物語は侵略者が来てから3年2ヶ月が経ってから始まります。
3年前、侵略者がきた時にはもちろん大変な騒ぎになっていたのです。
今じゃみんな平和ボケして、まるで警戒心がない。
侵略者はもはや脅威じゃない。多くの人がそう思い込んでいる。
本当になんとも思っていない人と、本当にデリケートになって精神を病む人の二極化が激しくて、それは現実に反映して考えるといろいろきな臭いから触れないけれど、示唆的だなとは思う。狙ってるのは間違いないだろうけれど。
心の底ではまるでビビっていないのに、偽善めいた報道や取り組みなんかしたりして。日常のゆがみが随所から感じられて、その魅せ方のひとつひとつ上手いよなぁ。
見透すような皮肉な視線がつねに張り巡らされているのを感じます。
侵略者が来たって日常は続いている。どこか壊れながら、確かに歪みながら。
むしろ「宇宙から侵略者が来た」という映画みたいなぶっ飛んだフィクションが現実になったのに、人類があんがい強くてしぶとくて、少年少女から夢を奪ってしまった感もある。
思春期の不安な感情が、世界がむちゃくちゃになってしまうことを望んで
けれどむちゃくちゃになったのは家族で、面倒が増えただけで・・・。
日常のすぐそばに破滅のトリガーがあるのかもしれないけれど
そんなことで一々歩くのをやめていたら、生活は成り立たないし。
「宇宙人がきたら、もっとすごいことになるって思ってたよ」なんて、思春期の不安な気持ちがそんな言葉まで吐かせてしまう。ああ、この怖いもの知らずな物言いも素敵だ。何も見えていないひどい言葉のようで、でもすごく人間らしい本当の言葉でもあって。
ときたま侵略者が降りてくるけれどこれがまた弱っちくて、まるで平和を脅かすようなもんじゃない。道行く男子学生が遊び感覚で石を投げたら墜落しちゃうようなショボい侵略者。はぁ、夢がないったらない。
兎角、生活感の細微な描写が見事な作品と言えます。
上のシーンのSNSなんか、今の自分が日常的に見るような感じだし
特にゾクゾクしたのが、侵略者がきた日の主人公・門出ちゃんの行動。
「世界がヤバい。滅亡の危機だ。」だからスマホで2chを見て、ニュース実況スレを眺める。
少女がその日常から観測できる範囲だけで見る世界滅亡。
面白いなぁ。これが狭い世界の、等身大のリアリティなのかもしれない。
本当に地球がヤバいってときに、そのヤバさの全体像なんかわかりっこない。
それと「異質なものがそこにある」という演出のために、こういう(↓)文字演出がされています。
これも面白いんですよね。SF風景と合わせて、非現実のロマンを感じます。どんな音なんだろう。
この音、空を覆うようなあの大きなUFOから出ている音なんでしょうけれど
それをもはや気に留める人がほとんどいない。大半の人がこの音に慣れてしまっているような。「またあの音?」って、確認はするけど別に怖がりもしないし我慢できないほどの耳障りとも思わない。
こういう所にも、日常に異物が溶けこんでも順応しているんだなと感じる。
さて、このデ(略)1巻の感想としては、これくらいです。
だってまだまだ話が動き出してないのが間違いないから。
いつまでこの雰囲気が続くのか、すぐにだって絶望へ落ちていける、危なっかしい綱渡りな世界。そんな気がします。
例えば同じ雑誌で連載していて作家さん同士も仲がいい「アイアムアヒーロー」なんかも思い出して、かなり身構えて読んでしまったこの第1巻です。
そして案の定、第1巻はなにかヤバイことが起きそうなキャラクターので幕を閉じる。
おいおい、こんな所で終わられたら辛抱たまらないぞ。でも大丈夫。発売中のコミックスピリッツで1巻の続きが掲載されてるんだなーーーこれが!!(謎宣伝)
個人的には浅野いにお作品は自分の中でも大好きなものとやや受け入れがたいものがあります。「ソラニン」と「うみべの女の子」が特に好きかなぁ。
「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」は、1巻のツカミの段階ではそれらと並ぶくらいのお気に入り作品となってくれそうな予感がします。
圧倒されそうになる強烈なSF風景が、日常に溶け込んでしまった妙な世界観。
これがあまりにもステキで格好良くて、何度でも読みたくなる!
あと第一話、タイトルコールの見開きの「スバーーーーン!!!!」感は本当に格好良かったね。やっぱり第一話でカッコ良く演出をきめてくれる作品は大好きです。
キャラクターもいいよなぁ。主人公以外で好きなのはニートのお兄ちゃん。
完全にロクデナシなのにどこか憎めない。なんかしらで大活躍してくれると大変喜ばしいですね、ぜったい良いキャラだw
少女たちの青春のすぐそばで、絶望はなおも息づく。
でも今はただ、不安な気持ちをくすぐるゆるい空気が愛おしい。
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』1巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
第一巻だけでは判断が難しい作品とは言え、心掴まれる世界観と先が続きになる強烈な魅力があります。イチオシしたい新作。
[漫画]生まれたての物語と、果てしない胸騒ぎ!『中学性日記』1巻
記事タイトルは似合いそうな曲から引用。
お前のブラ オレが選んでやる!!
・・・通常更新がだいぶ出来ていませんでした。
休んでる間も漫画は当然追っていて、更新したい本にもたくさん出会いましたが、とりあえずコレだけはやっておきたいのがシモダアサミさんの「中学性日記」!
タイトルどおりの内容で、ずばり思春期全開な中学生たちを描くもの。
思春期における興味や悩み、その爆心地は“性”にほかならない!
異性が気になる!自分が気になる!無駄に繊細になっちゃう!
一話完結のオムニバス形式で読みやすく、エピソードがどれもこれも・・・こう・・・もうね・・・微笑ましい!かわいすぎる!!
思春期らしいコンプレックスに苛まれる男の子とか女の子とか、もう大好きなのです。よってこの作品もバッチリどストライクなわけで、俄然テンションも上がる。
きっと誰もが通過したあの空間、あの季節、あの時間!意味もわからずずっとソワソワしてたあの日々!
懐かしく思うのと同時に、自意識の地獄にいたあの頃を思い出して悶絶したりして・・・読んでいて心揺さぶられまくる。そんな人は結構いるんじゃないかと思う。
第1巻は5つのエピソードを収録。それぞれの感想を書いていきます。
●「杉田くんとおっぱい」
胸。男からすると未知なものなのではあるけれど、それ故にガンガンに興味を惹かれる。みんな口にはしなくても思っていたはずだもの、あ、あの娘はけっこう大きいんだな、とか。
このエピソードはおっぱいそのものより女性下着好きな杉田くんと、周囲よりおおきく膨らんでしまった胸にコンプレックスを抱いている野口さんのお話。
恥ずかしくてブラを買いにいけない彼女のため、そして自分の知的好奇心のため、杉田くんはランジェリーショップへと向かう!!
本来女性の領域である話題にズカズカ押し入ってくる杉田くんの、いい意味で空気よめてない感じがかわいい。彼によって不安から救われる野口さんの心の動きも、さわやかで幼い恋心の発芽が見えて頬がゆるむ!赤面中学生女子、バンザイ!!
第1巻ではこの話が1番好きかなぁ。ラブコメ的展開もあるし、知らない世界に飛び込んでいくような、謎の高揚感があります。(知らない世界=ランジェリーショップ)
あと教室で女子が集まってかわいい下着の見せるシーンの羨ましさがスゴイですね。おかしいよこんなの!中学生男子には刺激が強すぎるよ!
この話は試し読みできますので、気になる人はぜひ。
思春期の繊細さと無神経さと愚かしさ可愛らしさ、全部詰まってる!大好き!
野口くんは成長してからモテそうだなぁ。そうでもないか?
●「森田くんのチン毛」
毛。そりゃあ思春期には当然付きまとってくるナイーブな話題ですね。
まだ下の毛が生えてこないことが悩みの森田くん。友人から教えてもらった「女子の下の毛を持ってると願いが叶う」なんて笑えるおまじないを信じて、好きな女子に「毛をくれ!」とアタックする底抜けのバカです。
必至なんだけどアホでしかない、こういうのも思春期らしさか!恋愛的にまるく収まらないのもいいオチでしたね。フラグへし折った・・・。
好きな女子の毛はどんな風なんだろうとか妄想してしまうのもゾッとするけれど、興味あるんだから仕方ないよね!
森田くんは毛が生えてなくて恥ずかしい派でしたが、自分は逆でしたね・・・、
俺は中1の修学旅行に毛がはずかしくて全剃りして行ったらみんな当然のように生えてて逆に恥ずかしい思いをした経験があります。後日濃いのが生えました。
●「花巻さんは普通」
毛。引き続き毛です。前回でヒロインだった(毛をくれと追いかけられた不憫な)花巻さんが主人公で、前回の舞台裏を交えながら進行していきます。
花巻さんは毛深い身体がコンプレックス。我が道を往く系女子の木野さんにアドバイスをもらい、少しずつ前を向けるようになった、かな?という具合。
身体にまつわる話だからこそなかなか相談しづらくて塞ぎこんでしまうのはやはりこの年頃だからこそあるし、大人になっても難しい時は難しかったりするだろうな。
だから花巻さんが大人になってからも、この時もらった木野さんの言葉は大切なままだろうと思わせてくれる。けっこういい友だちになると思うし、どこかで離れ離れになったって花巻さんは覚えているだろうなーなんて感じて微笑ましい。
●「前野くんの発芽」
生理。これも男はわからない世界だけに、主人公の前野くんも最初はさっぱり自分が感じているものが何なのかわからなかった。
前野くんはある朝から、女子のからだにまとわりつく不思議なにおいのオーラを感じるようになり、戸惑います。
このエピソードは生理にまつわる女子のコンプレックスを中心的に見たものですが
周囲や自身が急速に大人になっていくことに耐えられない男子(主人公の前野くん)の繊細さも現れているように思えます。
今までとは違うにおいを身にまとうようになった女子たち。含みのある笑みをこぼす男子たち。それらは第二次性徴の影響。周囲の変化に戸惑ってしまう。
けれど、好きな女子が女性になるその瞬間を見つけて、それはまるで花が咲くように感じてしまう。なんてこっ恥ずかしい!少年心の根っこにある妙なロマンチックさですよ!性の芽生えは恋の芽生え・・・ッ!
こうやって周りと気持ちを響かせ合いながら、でもズレたり間違えたりしながら進んでいくのが、思春期っていいねぇと思います。おっさん臭いこと言ってると思います。
吉川さんは最後に「女の子でよかった」と微笑んでくれる。それも読後感良し。
●「小鳥ちゃんのお肉」
体型。異性の目を気にしまくり、空回りしまくりな季節なわけで、男女ともに自分の体に大小のコンプレックスは抱きますよね。
小鳥ちゃんはぽっちゃりした女の子。友達からは体をプニプニと触られてしまうことは少し不満で、けれど好きな幼なじみの少年に触られることは、すこし嬉しい。
ストーリーは幼なじみものらしい可愛いもので、個人的にヒロインもお気に入りです。
思春期を迎えて、いままでとはちょっと違った感情に戸惑ったする幼なじみ2人とかね・・・王道も王道で最高だからね・・・!
コンプレックスでがんじがらめになって、自意識過剰なくらい怖がってしまう小鳥ちゃん。その様子は読者視点からはとてもかわいらしいけれど、本人は必死。
けどそんな悩みは、好きな人がくれた大切な言葉ひとつで、たちまち吹っ飛ぶんだ。
小鳥ちゃんが不安がっていることについて、それを晴らすために必要な一言をちゃんと投げかけてあげられる壮ちゃんはイケメンだなぁオイ!
ラストシーン、壮ちゃんが独占欲を見せる場面なんか最高にニヤニヤしちゃいますよね。恋愛的な独占欲とはちょっと違うかもだけれど、それで舞い上がっちゃう小鳥ちゃんのかわいいことかわいいこと・・・・・・!いい空気のまま2人は関係を築けていけそうだなと、おもわずニッコリしてしまう良短編。
そんな全5エピソードを収録している「中学性日記」。
巻末のオマケ漫画では現状じゃ100%女子と仲良くはできないタイプの男子が描かれていて、まるで冴えないこの残念感もまた青春らしい!
一冊通して、思春期の悶々とした感覚が凝縮されています。生々しさとファンタジーのいいバランスが取れていて、「身に覚えがある、かつてのあの感情」を作品と共有できているような、親近感が湧く仕上がり。ほのぼのとしたラブコメの雰囲気で読みやすいです。
男子には男子の、女子には女子の。俺には俺の、誰かには誰かの思春期がある。
「俺が思春期だったあのころ、女子や他の奴らはいったいどんな事を考えていただろう」
という未だに続く疑問を少しずつ溶かしてくれるような、よけい謎を深めてくれるような、思い出の風景の裏側をちょっとだけ覗けるような感覚もいい。そういうのが思春期漫画に必要なものですよ。
昔を思いだして叫びたくもなる。けれど同時にほんのり思い出が愛おしくなっちゃったりする。
きっとだれだって思春期ってものに弄ばれた時期があったのだ!
心とからだが一気に大人に近づくあの季節。おろかで可愛らしい思春期の小さな失敗たちは、それを目にする我々の胸に、なにか刺激的な感情を呼び覚ます。
あーあ。中学生ってかわいいね。もう絶対、戻りたくはないけれど。
この本、期間限定ではあるものの(発売後1ヶ月以内)、購入すると電子版も無料でゲットできる取り組みがされています。
今回感想を挙げるのが送れてしまったせいで期限が切れてしまいましたが、自分はバッチリ入手しておきました。月刊アクションはこういう取り組みをやってくれるそうで、なかなか重宝しそうです。
『中学性日記』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
俺こういうの絶対好きだろうなーと思いながら読み始めて、案の定だったパターン。
あまりの可愛らしさに悶絶しつつ、なんだかしんみりしてしまった・・・。
中学性日記(1) (アクションコミックス(月刊アクション)) (2014/02/10) シモダ アサミ 商品詳細を見る |
お前のブラ オレが選んでやる!!
・・・通常更新がだいぶ出来ていませんでした。
休んでる間も漫画は当然追っていて、更新したい本にもたくさん出会いましたが、とりあえずコレだけはやっておきたいのがシモダアサミさんの「中学性日記」!
タイトルどおりの内容で、ずばり思春期全開な中学生たちを描くもの。
思春期における興味や悩み、その爆心地は“性”にほかならない!
異性が気になる!自分が気になる!無駄に繊細になっちゃう!
一話完結のオムニバス形式で読みやすく、エピソードがどれもこれも・・・こう・・・もうね・・・微笑ましい!かわいすぎる!!
思春期らしいコンプレックスに苛まれる男の子とか女の子とか、もう大好きなのです。よってこの作品もバッチリどストライクなわけで、俄然テンションも上がる。
きっと誰もが通過したあの空間、あの季節、あの時間!意味もわからずずっとソワソワしてたあの日々!
懐かしく思うのと同時に、自意識の地獄にいたあの頃を思い出して悶絶したりして・・・読んでいて心揺さぶられまくる。そんな人は結構いるんじゃないかと思う。
第1巻は5つのエピソードを収録。それぞれの感想を書いていきます。
●「杉田くんとおっぱい」
胸。男からすると未知なものなのではあるけれど、それ故にガンガンに興味を惹かれる。みんな口にはしなくても思っていたはずだもの、あ、あの娘はけっこう大きいんだな、とか。
このエピソードはおっぱいそのものより女性下着好きな杉田くんと、周囲よりおおきく膨らんでしまった胸にコンプレックスを抱いている野口さんのお話。
恥ずかしくてブラを買いにいけない彼女のため、そして自分の知的好奇心のため、杉田くんはランジェリーショップへと向かう!!
本来女性の領域である話題にズカズカ押し入ってくる杉田くんの、いい意味で空気よめてない感じがかわいい。彼によって不安から救われる野口さんの心の動きも、さわやかで幼い恋心の発芽が見えて頬がゆるむ!赤面中学生女子、バンザイ!!
第1巻ではこの話が1番好きかなぁ。ラブコメ的展開もあるし、知らない世界に飛び込んでいくような、謎の高揚感があります。(知らない世界=ランジェリーショップ)
あと教室で女子が集まってかわいい下着の見せるシーンの羨ましさがスゴイですね。おかしいよこんなの!中学生男子には刺激が強すぎるよ!
この話は試し読みできますので、気になる人はぜひ。
思春期の繊細さと無神経さと愚かしさ可愛らしさ、全部詰まってる!大好き!
野口くんは成長してからモテそうだなぁ。そうでもないか?
●「森田くんのチン毛」
毛。そりゃあ思春期には当然付きまとってくるナイーブな話題ですね。
まだ下の毛が生えてこないことが悩みの森田くん。友人から教えてもらった「女子の下の毛を持ってると願いが叶う」なんて笑えるおまじないを信じて、好きな女子に「毛をくれ!」とアタックする底抜けのバカです。
必至なんだけどアホでしかない、こういうのも思春期らしさか!恋愛的にまるく収まらないのもいいオチでしたね。フラグへし折った・・・。
好きな女子の毛はどんな風なんだろうとか妄想してしまうのもゾッとするけれど、興味あるんだから仕方ないよね!
森田くんは毛が生えてなくて恥ずかしい派でしたが、自分は逆でしたね・・・、
俺は中1の修学旅行に毛がはずかしくて全剃りして行ったらみんな当然のように生えてて逆に恥ずかしい思いをした経験があります。後日濃いのが生えました。
●「花巻さんは普通」
毛。引き続き毛です。前回でヒロインだった(毛をくれと追いかけられた不憫な)花巻さんが主人公で、前回の舞台裏を交えながら進行していきます。
花巻さんは毛深い身体がコンプレックス。我が道を往く系女子の木野さんにアドバイスをもらい、少しずつ前を向けるようになった、かな?という具合。
身体にまつわる話だからこそなかなか相談しづらくて塞ぎこんでしまうのはやはりこの年頃だからこそあるし、大人になっても難しい時は難しかったりするだろうな。
だから花巻さんが大人になってからも、この時もらった木野さんの言葉は大切なままだろうと思わせてくれる。けっこういい友だちになると思うし、どこかで離れ離れになったって花巻さんは覚えているだろうなーなんて感じて微笑ましい。
●「前野くんの発芽」
生理。これも男はわからない世界だけに、主人公の前野くんも最初はさっぱり自分が感じているものが何なのかわからなかった。
前野くんはある朝から、女子のからだにまとわりつく不思議なにおいのオーラを感じるようになり、戸惑います。
このエピソードは生理にまつわる女子のコンプレックスを中心的に見たものですが
周囲や自身が急速に大人になっていくことに耐えられない男子(主人公の前野くん)の繊細さも現れているように思えます。
今までとは違うにおいを身にまとうようになった女子たち。含みのある笑みをこぼす男子たち。それらは第二次性徴の影響。周囲の変化に戸惑ってしまう。
けれど、好きな女子が女性になるその瞬間を見つけて、それはまるで花が咲くように感じてしまう。なんてこっ恥ずかしい!少年心の根っこにある妙なロマンチックさですよ!性の芽生えは恋の芽生え・・・ッ!
こうやって周りと気持ちを響かせ合いながら、でもズレたり間違えたりしながら進んでいくのが、思春期っていいねぇと思います。おっさん臭いこと言ってると思います。
吉川さんは最後に「女の子でよかった」と微笑んでくれる。それも読後感良し。
●「小鳥ちゃんのお肉」
体型。異性の目を気にしまくり、空回りしまくりな季節なわけで、男女ともに自分の体に大小のコンプレックスは抱きますよね。
小鳥ちゃんはぽっちゃりした女の子。友達からは体をプニプニと触られてしまうことは少し不満で、けれど好きな幼なじみの少年に触られることは、すこし嬉しい。
ストーリーは幼なじみものらしい可愛いもので、個人的にヒロインもお気に入りです。
思春期を迎えて、いままでとはちょっと違った感情に戸惑ったする幼なじみ2人とかね・・・王道も王道で最高だからね・・・!
コンプレックスでがんじがらめになって、自意識過剰なくらい怖がってしまう小鳥ちゃん。その様子は読者視点からはとてもかわいらしいけれど、本人は必死。
けどそんな悩みは、好きな人がくれた大切な言葉ひとつで、たちまち吹っ飛ぶんだ。
小鳥ちゃんが不安がっていることについて、それを晴らすために必要な一言をちゃんと投げかけてあげられる壮ちゃんはイケメンだなぁオイ!
ラストシーン、壮ちゃんが独占欲を見せる場面なんか最高にニヤニヤしちゃいますよね。恋愛的な独占欲とはちょっと違うかもだけれど、それで舞い上がっちゃう小鳥ちゃんのかわいいことかわいいこと・・・・・・!いい空気のまま2人は関係を築けていけそうだなと、おもわずニッコリしてしまう良短編。
そんな全5エピソードを収録している「中学性日記」。
巻末のオマケ漫画では現状じゃ100%女子と仲良くはできないタイプの男子が描かれていて、まるで冴えないこの残念感もまた青春らしい!
一冊通して、思春期の悶々とした感覚が凝縮されています。生々しさとファンタジーのいいバランスが取れていて、「身に覚えがある、かつてのあの感情」を作品と共有できているような、親近感が湧く仕上がり。ほのぼのとしたラブコメの雰囲気で読みやすいです。
男子には男子の、女子には女子の。俺には俺の、誰かには誰かの思春期がある。
「俺が思春期だったあのころ、女子や他の奴らはいったいどんな事を考えていただろう」
という未だに続く疑問を少しずつ溶かしてくれるような、よけい謎を深めてくれるような、思い出の風景の裏側をちょっとだけ覗けるような感覚もいい。そういうのが思春期漫画に必要なものですよ。
昔を思いだして叫びたくもなる。けれど同時にほんのり思い出が愛おしくなっちゃったりする。
きっとだれだって思春期ってものに弄ばれた時期があったのだ!
心とからだが一気に大人に近づくあの季節。おろかで可愛らしい思春期の小さな失敗たちは、それを目にする我々の胸に、なにか刺激的な感情を呼び覚ます。
あーあ。中学生ってかわいいね。もう絶対、戻りたくはないけれど。
この本、期間限定ではあるものの(発売後1ヶ月以内)、購入すると電子版も無料でゲットできる取り組みがされています。
今回感想を挙げるのが送れてしまったせいで期限が切れてしまいましたが、自分はバッチリ入手しておきました。月刊アクションはこういう取り組みをやってくれるそうで、なかなか重宝しそうです。
『中学性日記』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
俺こういうの絶対好きだろうなーと思いながら読み始めて、案の定だったパターン。
あまりの可愛らしさに悶絶しつつ、なんだかしんみりしてしまった・・・。
[漫画]剥き出しなシビア&爽やか青春劇『中卒労働者から始める高校生活』1巻
中卒労働者から始める高校生活(1) (ニチブンコミックス) (2013/05/29) 佐々木ミノル 商品詳細を見る |
この世界はクズばかりで 例に漏れず俺もクズ
佐々木ミノルさんの「中卒労働者から始める高校生活」1巻の感想。
おっ表紙かわいい!と完全なるジャケ買いで手を伸ばした本でしたが
偏見とコンプレックス、外の世界と内の世界の両方と闘うほろ苦い青春漫画で、なかなか好感触なお話でございました。
作品紹介には「ラブコメ」と銘打たれていますし実際その通りなのですが、ただ甘いラブコメというだけじゃない、理不尽な社会に立ち向かっていく力強さを備えている。不愉快になりそうな邪悪さを感じさせる一幕も。
1巻の段階ではラブコメ部分よりむしろそのシリアスな要素に心惹かれた。
ラブコメながらもザックリと心刺される作品です。
父親が犯罪者。家計も苦しい。
中卒で工場で働き始めた主人公ですが、「あいつは中卒だから」と笑う周囲を見返すために18歳から通信制の高校に通い出します。
いろんな人が通う通信制高校。ガラの悪いヤツから子連れ、老人まで。
けれどそんな人種のるつぼみたいな環境に身をおいたことで、主人公の世界が少しずつ広がっていく。
お嬢様である逢澤といがみ合いつつも、互いに気になる存在になっていく。
舞台が通信制高校ということで、その中身を詳しくは知らなかった自分は、まず舞台設定からして新鮮に楽しめた部分があります。読んでみてちょっと世界の見方が広がったような感じすら。
その上でストーリーがリアルなドラマティックさを持ってる。
主人公の苦悩だらけの青春は見ていて痛々しくて、なんとか幸せになっておくれよと願うしか無い。
先にも書きましたが、この作品なかなかにブラック。そしてツライ。
人の悪意がストレートに描かれています。暴力とか嘲笑とか。
読んでいてその不愉快さにグッと手に力がこもってしまったりもしました。
でもそういった「外の世界」との闘いが本作のひとつのテーマ。
どうやって立ち向かっていこう。どうやって自分を強くしていこう。
たとえば主人公は勤め先で大卒出の新人にバカにされ中卒を哀れまれる。
その悪意に、主人公は暴力で訴えるしか術を知らない。
もちろん大学出の新人は見るからにカス野郎でしたが、それに対する理性的な振る舞いができないというのも主人公の不器用さ。
ぶつけられる悪意をグッと飲み込むのが利口だ、とは言わないけれど、暴力で黙らせようと逆上してしまうことが余計に次なる悪意と偏見のタネになってしまう部分もあると思う。
だから求められるのは成長なのだ。そのための彼の変化は少しずつ発見できる。
成長には何が必要なのだろうか。
中卒ということからくる学力のどうのこうの、というよりはきっと自意識の問題です。
悪意が外の世界にある課題だとしたら
内の世界、つまり自分自身の問題も主人公に重くのしかかっている。
「自分が自分を笑ってるから、なんでも悪く聞こえる」
このセリフがズバッと言い当てていますね。
中卒というコンプレックスを抱えて卑屈になっている主人公側の問題。
よそからぶつけられる悪意と同じくらい、コンプレックスが自らを苛める。
コンプレックスに悩み苦しむ主人公の苦しみは、いろんな人が重なる部分があるのではないかなと思います。自分自身けっこうシンクロ。
クソだクズだと世界を呪っても、その根底には強烈な自己嫌悪が見える。
外と内の両方の世界と闘っていく上で、「世の中にはいろんな人がいるんだな」と高校で見聞を広めることはとてもエネルギーになってるなーと読んでて思いました。
けっこう、自分改革の一歩につながっているよな。
ううむ、自分改革とか言い出すと自己啓発本みたいでオウって感じだけど、でも自分のことをどう思っているのかって、結構大事なポイントですよね。気の持ちようです。心が弱ってたら生きづらいです。
なにより「変わりたい!!」とひたむきな思いで進む主人公は、とても応援したくなる男の子ですわ。
生きづらいこの世の中に、卑屈な自分自身に立ち向かう物語。
そんな社会派ドラマのような側面も見える作品ですが、ちゃんとラブコメもやっていて読みやすいです。
掲載誌の方向性からか、若干むりやり感を漂わせつつノルマをクリアするようにセクシーなカットが入れられていくのがなんともかんともw
卑屈な少年とワケありお嬢様。どうみても両方ツンデレなわけですがいかんせんまだストーリーがそこまで進んでおらず、あまりデレは拝めないのです。第4話で怒涛の展開を見せますが‥・!
このメインの2人のもどかしい関係や距離感の発展が、2人の成長につながっていくんだろうな。
どうも逢澤さんの方は性的なトラウマがありそうですね、現在進行形っぽいし。
そこらへんも、彼女が自分の殻をブチ破る展開に行くと気持ちよさそうだなと期待を寄せている部分です。2巻からはガッツリ恋愛モード入って話が動きそうですね。
あ、あと妹ちゃんがかわいいw
ブラコンのけがあるロリ巨乳というややあざとい設定ですが、そのあざとい可愛さに素直にいいものです。
あと第一話の「知ってるよぉ‥・」×2でヤラれましたよ。涙腺が。
そして愛すべきおバカさんである・・・!すごい癒されるよw
個人的に好きなエピソードは第3話。
仕事、育児、勉強に追われてお母さんが余裕を失っていく様子とかは、こういうのが現実にあるんだろうなぁと考えさせられる場面でした。
お母さんが最後に泣いちゃう場面好きだなぁ。ああ。泣いちゃうよなぁ。
オビにある「中卒(オレ)が、恋しちゃおかしいか」というフレーズが印象的。
この言葉に含まれている感情が、いつかまっすぐな前向きさを持ってくれるのが見たいよなぁ。これぞ応援したくなる作品です。感じ入る要素が多かった・・・。涙ぐんでしまう場面が結構ありました。これは続きを追って行きたい。
『中卒労働者から始める高校生活』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
じっくり読める作品でした。リアル身分差ラブコメでもある。
[漫画]和服少女とカヒーの香りと潮風と。『ちろり』3巻
ちろり 3 (ゲッサン少年サンデーコミックス) (2013/02/12) 小山 愛子 商品詳細を見る |
ありがとう。こんな日に一緒にいてくれて。
ゲッサンにて連載中の「ちろり」3巻が発売しました。感想を。
今回の表紙はカモメと戯れるちろりちゃん。画像だとわかりませんが、キャラクターのところだけ浮き上がっている凸凹な仕様。今回は2巻までよりさらにくっきりと浮かび上がっているように見えました。
あえて紙っぽい質感の表紙でもあります。本そのもののデザインが、「ちろり」の世界観にぴったりだと思います。そういうのもあってお気に入りの単行本でありシリーズです。
ヒーリング系コミックと言えるようなそういう雰囲気。
なんでもない日常の出来事を、ゆったりと、しかし情感豊かに描きあげていく。
うねる明治時代の賑やかさ。すぐに見れなくなってしまうような、風化していってしまうような、今その時にしかない一瞬一瞬。この作品に静かに浸っていると、たまにすごく寂しくロマンティックな気持ちになります。うわぁ・・・なに俺・・・。
そこは明治の港町。優しさと季節の風を感じる癒し漫画『ちろり』1巻
ゆるやかに過ぎさる明治の1ページ。『ちろり』2巻
それでは3巻の内容をさくっと。
やっぱり今回も大きな事故も事件もなく、ま~~~ったりと日々は過ぎていくのです。
でもその緩やかな時間の流れを、ほっとするコーヒーとともに味わいたい。そんな漫画。
あと和服がたまらん。
季節をとても大切にしているのもポイント。季節ごとの港町の雰囲気とか、気にしてみるとすごくしっかり作りこまれているなと思います。
3巻は春から初夏にかけてかな。雪はもう溶けて、ゆっくり夏に向けて温まっていく時期。花見をしたり、どしゃぶりにガッカリしたり、そんな何気ないシーンがなぜかくっきり頭に焼き付きますね。
とにかくこの雰囲気が好きです。優しくて懐かしくて。
1巻2巻まででこの作品について思うことは大体書いたので
毎回感想を書こうと思うと、結構どう書いたもんだか困ります。
でもやっぱり3巻を読んでばっちり癒してもらえた。やっぱり好きなのだ。
好きなエピソードは「桜東風(さくらごち)」。
春のつよい風に吹かれながら、ちろりとマダムがお花見にいくお話です。季節感が強くていい。桜の舞う様子も美しい。
そして花見に対しての2つの見方が描かれます。それはカップの中に桜の花びらが落ちて、それを笑顔で楽しむか、カップの中の紅茶ごと捨ててしまうか、あのシーンに強く現れていましたね。
西洋風=風情がない、というのではなく、和式と洋式の価値観がうまく混ざり会えていない。けれど共にある。調和しきてていないアンバランスな風景が面白い。
そういうのは明治時代らしい出来事かもなぁと思ったりもします。しかしまぁ、日本人だもの、風情をなくしちゃいけないよね。
まぁあのお嬢さんは西洋式を気取っているからああいうことをしてしまったというより、日本人らしい生き方への反発としてひねくれているだけでしょう。この作品は洋式を悪く描くものではない。
あと第20話「ひよこ」もいいな。病気になってしまったマダム。ちろりは彼女の看病をしつつ、寂しい想いを抱えているというエピソード。
楽しいこと、素敵なことはマダムと共有したいらしいちろりちゃんがいじらしくてすっごいかわいいお話だと思いますわ・・・。「いいことありませんように」ってお願いしているんだもの。ちろりがマダムをどれだけ好きかがわかる!
最後、空にかかる大きな虹の晴れやかさに、こちらもにっこりしてしまいます。
でもこういうのを見ると、マダムが何かの拍子でいなくなってしまったら彼女はどうなるんだろう・・・という、ちろりの危うさを見たような気もしますね。
そんな悲劇は起きないとは思いつつ。
マダムを心配していたちろりちゃんの不安がとけたときの表情。かわいい・・・。
あと巻末にはプロトタイプの「ちろり」読み切り版が特別収録。
今とはちょっとだけ設定も違いますが、雰囲気は全く同じ。
ちろりが、ちょっとだけ人の心を楽しく、安らかにしてくれる。
そんな「ちろり」3巻でした。
好きな漫画なんですが、なんとなく好きって感じなので、なかなか感想を言葉にしづらいです。風情があるねえ、ロマンティックだねえ、とか。
詳しくは書けないけれど、「ああ、いいなぁ、こういうの」みたいなふわっとした曖昧な感覚。そういうのは曖昧なままにしておいた方が、わりといいものかもしれない。
2巻の後半くらいから、絵も変わってきましたね。線の感じが。
連載当初はすごくしなやかなラインでしたけど、最近はわりと線太めでがっしりしてきた印象。色々感触を探っているんですかね。個人的には初期絵が好きですが、今の絵柄は明治時代が引きずる泥臭さをちょっと匂わせているタッチに思います。これはこれで。
あとナタリーさんでがっつり特集記事組まれてますね。こういうのは嬉しい。
→着物と珈琲にありったけの愛を (コミックナタリー)
ゲッサン本誌でも触れられたことありますが、小山愛子さんマジで普段着が和服なのかw
前半とか完全に小山さんによる和服萌え語り状態ですが、そこに「ちろり」のルーツがありますよね!「ちろり」好きとしてかなり楽しめたのでこちらもチェックしてみては。
爽やかで優雅で香り高くて、居心地がいい。
ちょとずつ胸に温かみが染み込んでいくような、粋な世界がそっと花開いているというか。この世界そのものだよな、「ちろり」ってタイトル。4巻も楽しみ。
『ちろり』3巻 ・・・・・・・・・★★★★
ささやかだからこそ、世界がまるごと愛おしくなるような漫画。和服好きの癒し。