[CD]雪ノ下雪乃の内面を描く、アニメ俺ガイルOP『ユキトキ』
珍しくCDの感想なんぞ。
TVアニメ「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」オープニングテーマ曲「ユキトキ」。
やなぎなぎ5thシングルとして4月17日に発売しました。
まさに春にぴったりの、非常に爽やかなポップチューン!
問答無用に心掴まれる美メロに打ちのめされ、歌詞を読んでまた悶絶!!
原作ファン的にはこれはチェックせねばと買って参りましたよ。
曲単体でもお気に入りなのですが、俺ガイルという作品に添えられた内容だということを加味すると曲の奥深さが増し、より一層美味しく。
買ったら大きいポスターもらえました。麗しや。
作曲はROUND TABLEの北川勝利。歌うのは化物語「君の知らない物語」の時、スーパーセルでゲストボーカルやってたやなぎなぎさん。近年は個人名義でアニメソングをリリースしてますね。個人的にはmanyoさんとコラボしたアルバム「Tachyon」の音世界がめちゃくちゃ心地よかったですわ。
さて「ユキトキ」です。
曲は軽やかなバンドサウンドにピアノ・ストリングスが絡み合う、お洒落なポップス。どこか憂いを湛えた淡い色彩がパッと花開く、開放感に満ちた一曲です。
歌い出しから完璧ですよね。この美メロ!サビ入り構成は大正解!
歌い出しに掴んで、一気に駆け出す演奏!しかし一旦ブレイクを挟んで、穏やかにAメロへ。そして胸に暖かさがこみ上げてくるかのような、爽快なサビへと向かう。
曲展開がとても気持ちがいいんですよね。メロディがとても甘酸っぱく、そして美しさも感じる。高揚感と開放感もあって、これぞ春歌。
歌詞に出てくる「アザレア」だって、春に咲くあざやかな花ですから。
全体的にリズムの緩急が絶妙に心地いい「ユキトキ」の曲構成は、もしかすると雪ノ下の気持ちともシンクロしている部分があるのかもしれない。
そう、歌詞を見ていれば一発で分かる。
この「ユキトキ」はカンッペキに雪ノ下雪乃の心の内を歌った内容となっているのです。
原作小説などは主人公・八幡の一人称視点となっており、他ヒロインの胸の内は想像するしかない。
しかし「ユキトキ」は、原作者による作詞ではないけれど、この作品を読み解くに欠かせないパーツに成り得る。というか雪ノ下ファンでこの歌詞眺めてニヤニヤできないヤツいるのかよ!ひゃほーっ!!
これね、フルで聞くと歌詞の良さをさらに噛み締めることができますよ。
原作ファンも「ユキトキ」はフルで聞いておかなくちゃ!
1人であることになんの疑問も持たなかった主人公(少女)が
少しずつその世界を広げ、「誰か」と共にいる喜びを知るまでのストーリー。
そこにある深い愛情。恋愛を歌った内容ではありませんが、誰かをつながり会える感動を噛み締められる。原作と重ねると、万感の想いというのだろうか、このアツい震えは…。
物語の即した歌詞内容ではなく、あくまでも「雪ノ下雪乃」というキャラクターの心理と成長・変化のイメージ化に挑んだ内容となっていると思います。
歌詞を見ていきます。
まずイメージとして膨らむのは、雪ノ下が1人でいる奉仕部の部室。
「気づけば俯瞰で眺めてる箱」とは、1人に慣れすぎてしまった雪ノ下が自らを客観的に見ている様子かな。しかしそれで「心は白色不透明」。
今ある状況に不満はないけれど、でも気持ちよさはないような、漠然とした寂しさを感じ取れる箇所でもあります。白く不透明→雪、とイメージを繋げられますね。雪に感情が埋まり、喜怒哀楽を曖昧にしてしまっている様子も浮かびます。
その雪を溶かす春を訪れを歌ったのが「ユキトキ」という曲。
冬と春。雪とアザレア(春に咲く花)。
2つの季節の共存、あるいは移り変わりはジャケット写真でも印象的に用いられています。
2番Aメロにも、雪ノ下の1人の時間を思わせるフレーズがあります。
「難しい数式 誰にも頼らず 解いて明かしてきた」
「当たり前だと思っていたから 何も疑わなかったけど」
1人でもなんでもできる能力が、彼女にはあるんですよね。
しかし彼女は、この部屋を出たがります。
「アザレアを咲かせて 暖かい庭まで 連れ出して 連れ出して なんて ね」
春が欲しい。1人のこの部屋から飛び出したい。
「だからそう ひとつずつ ゆっくりと手をつないでいくの(2番サビ)」
誰かと一緒に、暖かな春へ。
雪ノ下にしては「手をつなぐ」とはまた大胆な…!とは思いますが、きっと彼女が望むのはそこなんでしょう。
作詞をしたやなぎなぎさん本人も書いていたように、タイトルが「雪解け」ではなく「ユキトキ」であるのは、自らの意志がそこにあるから。
ちゃんと自分から歩み出すことを主題としたことに、この曲の意味がありますね。
「ひとりで守ってた小さなあの部屋は」
「少しだけ空いている場所があって」
「ずっと知らなかったんだ」
この箇所も好きで。「少しだけ」空いているってのがいいんだ。
何人も入れますよーみたいな規模じゃない。小さなあの部屋はずっと彼女が守ってきた空間。そこに他者を迎えることができる余裕が、ほんのすこしだけあるということ。ここに、まだ全てが変わり切れていないけれど、それでも踏み出した雪ノ下の成長途中な部分が垣間見えて好き。
雪ノ下はその性格的に、多くの人間と親交を深められる人間ではないか。成長途中というのは正しくないかもしれない。それでも、彼女の変化をハッキリ示した箇所です。
ここに前後する間奏では意外なくらい強めにエレキギターのソロが入ってきて、しかも大サビ直前には「ジャジャジャッジャ!」と、派手にかき鳴らすプレイ。カッコいい!
ここでハッとさせられますね。雪ノ下の意識が、視界が、世界が開ける。
春の風が「部屋」に吹き込んで、ふと見た庭先には鮮やかなアザレアの花。そんな風景が浮かびます。きっとその部屋は、ひとりぼっちではないんだろうな。
「胸に貼り付いたガラス 溶けて流れる」
のフレーズも美しい。透明なガラスは、見ただけではその存在がわからない。でも確かに隔たりがあるわけだ。なんの違和感もなく1人の世界で生きてきた彼女のこれまでと、誰かとともに歩み出す彼女のこれから。過去と未来を隔てたガラスは熔けて流れる。だから、前に進める。「ガラス」という表現がお見事だなぁ。
ちなみにアザレアの花言葉。
「あなたに愛される幸せ」
「愛の楽しみ、恋の喜び」
とまぁ清々しいくらい、ラブの匂いがしてきますが!
歌詞は恋愛だけではなく、人間的な成長と明快な視界への爽やかな感動が込められていて、単純な「恋の歌」になっていなかったのが個人的に嬉しい所。
だってね、雪ノ下は恋するとかよりもっと前に、ちゃんと他の人と付き合っていくことで、心を育てていかなきゃならないんだ。春の日差しを浴びて、暖かく柔らかく、やがてそこに花が咲くように。
雪ノ下目線で見るなら、むしろ八幡より由比ヶ浜の方が彼女を新しい世界に引っ張っていってくれているのでは……と、いろいろ解釈はあるかなw
雪ノ下目線で見た「俺ガイル」の世界の断片を楽しめるという意味でも
「ユキトキ」は非常に有意義で、なにより素晴らしい一曲だと思うのです。
やなぎなぎさんの、美しくも凛とした歌声もマッチしていて素敵です。
そういえばアザレアって、川崎市の市花らしいんですが
あれ………川崎…さん…!?
「ユキトキ」関連のインタビュー記事や、やなぎなぎさん本人の言及もあったのでまとめ。
やなぎなぎオフィシャルブログ 「ユキトキ発売日前日」
ナタリー 「俺ガイル」雪乃と寄り添って生まれた雪解けの歌
アニメイトTV 「周りを頼れない雪乃さんを救ってあげたい」
表題曲だけじゃなくカップリング曲もいい仕上がり。
「音のない夢」はタイトルどおりの幻想的で不思議な浮遊感が楽しい。
「Surrealisme」は奇妙なメロディラインを持った複雑な一曲。歌詞の世界観も面白いし、なによりリズムが独特でクセになる。韻の踏み方もすごいことになってますね。
TVアニメ「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」オープニングテーマ曲「ユキトキ」。
やなぎなぎ5thシングルとして4月17日に発売しました。
まさに春にぴったりの、非常に爽やかなポップチューン!
問答無用に心掴まれる美メロに打ちのめされ、歌詞を読んでまた悶絶!!
原作ファン的にはこれはチェックせねばと買って参りましたよ。
曲単体でもお気に入りなのですが、俺ガイルという作品に添えられた内容だということを加味すると曲の奥深さが増し、より一層美味しく。
買ったら大きいポスターもらえました。麗しや。
作曲はROUND TABLEの北川勝利。歌うのは化物語「君の知らない物語」の時、スーパーセルでゲストボーカルやってたやなぎなぎさん。近年は個人名義でアニメソングをリリースしてますね。個人的にはmanyoさんとコラボしたアルバム「Tachyon」の音世界がめちゃくちゃ心地よかったですわ。
さて「ユキトキ」です。
曲は軽やかなバンドサウンドにピアノ・ストリングスが絡み合う、お洒落なポップス。どこか憂いを湛えた淡い色彩がパッと花開く、開放感に満ちた一曲です。
歌い出しから完璧ですよね。この美メロ!サビ入り構成は大正解!
歌い出しに掴んで、一気に駆け出す演奏!しかし一旦ブレイクを挟んで、穏やかにAメロへ。そして胸に暖かさがこみ上げてくるかのような、爽快なサビへと向かう。
曲展開がとても気持ちがいいんですよね。メロディがとても甘酸っぱく、そして美しさも感じる。高揚感と開放感もあって、これぞ春歌。
歌詞に出てくる「アザレア」だって、春に咲くあざやかな花ですから。
全体的にリズムの緩急が絶妙に心地いい「ユキトキ」の曲構成は、もしかすると雪ノ下の気持ちともシンクロしている部分があるのかもしれない。
そう、歌詞を見ていれば一発で分かる。
この「ユキトキ」はカンッペキに雪ノ下雪乃の心の内を歌った内容となっているのです。
原作小説などは主人公・八幡の一人称視点となっており、他ヒロインの胸の内は想像するしかない。
しかし「ユキトキ」は、原作者による作詞ではないけれど、この作品を読み解くに欠かせないパーツに成り得る。というか雪ノ下ファンでこの歌詞眺めてニヤニヤできないヤツいるのかよ!ひゃほーっ!!
これね、フルで聞くと歌詞の良さをさらに噛み締めることができますよ。
原作ファンも「ユキトキ」はフルで聞いておかなくちゃ!
1人であることになんの疑問も持たなかった主人公(少女)が
少しずつその世界を広げ、「誰か」と共にいる喜びを知るまでのストーリー。
そこにある深い愛情。恋愛を歌った内容ではありませんが、誰かをつながり会える感動を噛み締められる。原作と重ねると、万感の想いというのだろうか、このアツい震えは…。
物語の即した歌詞内容ではなく、あくまでも「雪ノ下雪乃」というキャラクターの心理と成長・変化のイメージ化に挑んだ内容となっていると思います。
歌詞を見ていきます。
まずイメージとして膨らむのは、雪ノ下が1人でいる奉仕部の部室。
「気づけば俯瞰で眺めてる箱」とは、1人に慣れすぎてしまった雪ノ下が自らを客観的に見ている様子かな。しかしそれで「心は白色不透明」。
今ある状況に不満はないけれど、でも気持ちよさはないような、漠然とした寂しさを感じ取れる箇所でもあります。白く不透明→雪、とイメージを繋げられますね。雪に感情が埋まり、喜怒哀楽を曖昧にしてしまっている様子も浮かびます。
その雪を溶かす春を訪れを歌ったのが「ユキトキ」という曲。
冬と春。雪とアザレア(春に咲く花)。
2つの季節の共存、あるいは移り変わりはジャケット写真でも印象的に用いられています。
2番Aメロにも、雪ノ下の1人の時間を思わせるフレーズがあります。
「難しい数式 誰にも頼らず 解いて明かしてきた」
「当たり前だと思っていたから 何も疑わなかったけど」
1人でもなんでもできる能力が、彼女にはあるんですよね。
しかし彼女は、この部屋を出たがります。
「アザレアを咲かせて 暖かい庭まで 連れ出して 連れ出して なんて ね」
春が欲しい。1人のこの部屋から飛び出したい。
「だからそう ひとつずつ ゆっくりと手をつないでいくの(2番サビ)」
誰かと一緒に、暖かな春へ。
雪ノ下にしては「手をつなぐ」とはまた大胆な…!とは思いますが、きっと彼女が望むのはそこなんでしょう。
作詞をしたやなぎなぎさん本人も書いていたように、タイトルが「雪解け」ではなく「ユキトキ」であるのは、自らの意志がそこにあるから。
ちゃんと自分から歩み出すことを主題としたことに、この曲の意味がありますね。
「ひとりで守ってた小さなあの部屋は」
「少しだけ空いている場所があって」
「ずっと知らなかったんだ」
この箇所も好きで。「少しだけ」空いているってのがいいんだ。
何人も入れますよーみたいな規模じゃない。小さなあの部屋はずっと彼女が守ってきた空間。そこに他者を迎えることができる余裕が、ほんのすこしだけあるということ。ここに、まだ全てが変わり切れていないけれど、それでも踏み出した雪ノ下の成長途中な部分が垣間見えて好き。
雪ノ下はその性格的に、多くの人間と親交を深められる人間ではないか。成長途中というのは正しくないかもしれない。それでも、彼女の変化をハッキリ示した箇所です。
ここに前後する間奏では意外なくらい強めにエレキギターのソロが入ってきて、しかも大サビ直前には「ジャジャジャッジャ!」と、派手にかき鳴らすプレイ。カッコいい!
ここでハッとさせられますね。雪ノ下の意識が、視界が、世界が開ける。
春の風が「部屋」に吹き込んで、ふと見た庭先には鮮やかなアザレアの花。そんな風景が浮かびます。きっとその部屋は、ひとりぼっちではないんだろうな。
「胸に貼り付いたガラス 溶けて流れる」
のフレーズも美しい。透明なガラスは、見ただけではその存在がわからない。でも確かに隔たりがあるわけだ。なんの違和感もなく1人の世界で生きてきた彼女のこれまでと、誰かとともに歩み出す彼女のこれから。過去と未来を隔てたガラスは熔けて流れる。だから、前に進める。「ガラス」という表現がお見事だなぁ。
ちなみにアザレアの花言葉。
「あなたに愛される幸せ」
「愛の楽しみ、恋の喜び」
とまぁ清々しいくらい、ラブの匂いがしてきますが!
歌詞は恋愛だけではなく、人間的な成長と明快な視界への爽やかな感動が込められていて、単純な「恋の歌」になっていなかったのが個人的に嬉しい所。
だってね、雪ノ下は恋するとかよりもっと前に、ちゃんと他の人と付き合っていくことで、心を育てていかなきゃならないんだ。春の日差しを浴びて、暖かく柔らかく、やがてそこに花が咲くように。
雪ノ下目線で見るなら、むしろ八幡より由比ヶ浜の方が彼女を新しい世界に引っ張っていってくれているのでは……と、いろいろ解釈はあるかなw
雪ノ下目線で見た「俺ガイル」の世界の断片を楽しめるという意味でも
「ユキトキ」は非常に有意義で、なにより素晴らしい一曲だと思うのです。
やなぎなぎさんの、美しくも凛とした歌声もマッチしていて素敵です。
そういえばアザレアって、川崎市の市花らしいんですが
あれ………川崎…さん…!?
ユキトキ TVアニメ「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」オープニングテーマ (2013/04/17) やなぎなぎ 商品詳細を見る |
「ユキトキ」関連のインタビュー記事や、やなぎなぎさん本人の言及もあったのでまとめ。
やなぎなぎオフィシャルブログ 「ユキトキ発売日前日」
ナタリー 「俺ガイル」雪乃と寄り添って生まれた雪解けの歌
アニメイトTV 「周りを頼れない雪乃さんを救ってあげたい」
表題曲だけじゃなくカップリング曲もいい仕上がり。
「音のない夢」はタイトルどおりの幻想的で不思議な浮遊感が楽しい。
「Surrealisme」は奇妙なメロディラインを持った複雑な一曲。歌詞の世界観も面白いし、なによりリズムが独特でクセになる。韻の踏み方もすごいことになってますね。
Comment
感想を読ましていただきました
いろりろ参考になりました。ありがとう。
ユキトキの歌詞がよくわからなくて後半をネットで聞いて、はっと気が付きました。ヒキガヤ視点ではなく、ユキノの視点で歌われてることに。
物語が進むににつれて、ただのヘタレ引きこもりに見えてたヒキガヤは、実は鋭い洞察力を持ちやさしくタフな男であることがわかってくる。ユイは本能で見抜き、理性でユキノは理解し始める。三人の微妙な距離感が危うげで、時にここちよく、ほほえましい。
ヒキガヤに劣らず、孤独な世界を生きてきたユキノの春は近いのだろうか、今後がすごく楽しみです。そろそろ終わるの残念。
物語が進むににつれて、ただのヘタレ引きこもりに見えてたヒキガヤは、実は鋭い洞察力を持ちやさしくタフな男であることがわかってくる。ユイは本能で見抜き、理性でユキノは理解し始める。三人の微妙な距離感が危うげで、時にここちよく、ほほえましい。
ヒキガヤに劣らず、孤独な世界を生きてきたユキノの春は近いのだろうか、今後がすごく楽しみです。そろそろ終わるの残念。
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[長文][やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。]「アザレア」の花言葉からみた『俺ガイル』のOP映像
今期新作のダークホースどころか五指に入るほど気に入っている、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』。OPとEDいずれも映像、楽曲ともにエレガントな表現がすばらしくて、
読んでいて共感出来るところがとてもたくさんあり、読んでいて気持ちが良かったです。
元々、ユキトキの歌詞の意味に疑問があったので、検索した結果ここにたどり着いたのですが自分が想像してたのよりも深い意味があり、とても参考になりました。
素晴らしい感想をありがとうございました。