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正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[本]夢見た世界で、永遠の太陽は輝く。 『きみのカケラ』9巻

きみのカケラ 完結記念!イラスト集同梱限定版!! 9 (小学館プラス・アンコミックスシリーズ)きみのカケラ 完結記念!イラスト集同梱限定版!! 9 (小学館プラス・アンコミックスシリーズ)
(2010/07/16)
高橋 しん

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   太陽は ずっとずっと ここにあったんだよって。

最終巻。
8年もの長きにわたり、特殊な形で続いてきた「きみのカケラ」もついに終了。
まずはこの作品を完結させてくれた高橋しん先生に、感謝です。
自分の中でもとても大切な物語になりました。
最終巻なので、まぁ色々語りたいところはあるんですけども
目いっぱい書きたいこと書いて、未読の方がこれから味わうであろうこの衝撃と感動を薄めてしまうのは駄目だと思うので、今回はさっくりと。
・・・すいません、時間がないことの言い訳でもあります。

さて、最後の冒険が始まりました。
線路の先にあったのは、失われた科学の灯が燈る、無人の街。
20100826234833.jpg
いったんはシロと別れて、子供達と街を探検するイコロちゃん。
その中で例のウサギっぽい生き物を発見、その後追っていく子供達は
いくつも積み重なった『バケモノ』たちの残骸と、太陽を発見します。
そしてその場に、死んだと思われていたあの人たちもやって来たり。
最終章というわけで、派手なバトルを繰り広げる華のある展開が続き
非常に満足のいく内容となっていました。おなかいっぱい。

20100827014204.jpg
戦うイコロちゃんは勇敢でカッコいいのです。(そしてもちろんかわいい)

印象的だったのは、イコロが「太陽なんていらない」と言ったこと。
争いや命と引き換えの希望など必要ないと、言い切ったことです。
ここの流れはこれまでの物語を考えると、まさに万感の思いが胸に沸き起こります。
本当の勇気が試される選択。
子供達は一緒に歩む世界を望み、それを叶えていくのです。

本当はもっともっとたくさんの素敵な場面を紹介したいのですが
この作品で言う「美味しいシーン」は、未読者にはなんのこっちゃ状態ですし
何より、なんというか簡単に見せてしまうのがもったいない。
やはりここは、ぜひとも自分の目で見てください、とだけ!
そして今回の表紙イラストもいい。
よく見ると、ここは壁の中だとわかります。
幸せにしてくれるものを探すのではなく、自分たちから幸せになろうとするその意思。
この作品らしいと言えば、らしいよなぁ。
しかし大佐の、妹に対するモノローグは・・・・・・思わずぶわっとこぼれました・・・。

いよいよラスト。
絶望だらけの世界の行く末は。
ヒトガタであるイコロとシロの未来は。
笑えるのか。
涙を流せるのか。
幸せになれるのか。

20100826234810.jpg

ありがとう、さようなら。
永遠に続く、子供達のおとぎ話。
決して手を離さない少年と少女の―――2つのカケラの物語。


ちなみに限定版に同梱されているイラスト集には、各巻表紙イラストや
単行本収録時にモノクロになったカラー原稿、単行本未収録イラストなどが収録。
単行本的ではない、イラストとして表紙を改めて見るのもなかなか面白いですよ。
高橋しん先生のカラーは本当に幻想的で美しいです。
そして実は最終兵器彼女の画集を未だに手に入れられてなかったり。再販して欲しい・・・・。



んでここからはちょっと話が変わりまして、考察のようなことを。
多分みんな思ってるんじゃないかと思いますが、この「きみのカケラ」は、同じく高橋しん先生の「最終兵器彼女」と繋がっている作品なんじゃないかなとか考えます。
イコロの本名は「カムイ・ポロ・チセ・イコロ」
この4つの単語は高橋先生の出身地である北海道に伝わる、アイヌ語です。
カムイ→神、ポロ→大きい、チセ→家、イコロ→宝。
この内「チセ」は最終兵器彼女のヒロインの名前でもあり、意味は作中でも言及されています。
それに合わせて少し話しが逸れますが、最終兵器彼女外伝集-世界の果てには君と二人で-収録の「スター★チャイルド」のラストには、こんなセリフが。

20100827014216.jpg

この「スター★チャイルド」は作者自身が「最終兵器彼女の後の世界をテーマにした」と述べるように、サイカノ本編との関連性の強い短編で、ここで「チセ」の名は、これから先の世界に受け継がれていく・・・みたいなことを示唆しています。
はじまりの人間の名・・・それが神話のように、受け継がれていくこともあるでしょう。
さて「きみのカケラ」を見てみると、ありますね「チセ」。
それも、世界から守られた特別な存在である王族に「チセ」の名がある。
これは「最終兵器彼女」→「スター★チャイルド」→の流れにこの作品もある、という仮定にちょっとだけ信憑性を与えてくれるやも知れません。
(サイカノファンとしてはやや複雑に思う点もありますが、しかし未来はあるべきか)

そしてこの仮定を頭の隅っこにおいて物語を読むと、
作中では明かされなかった様々な謎に対する答えも見つけられます。
毒まみれだった壁の外の世界は、「最終兵器彼女」での戦争で汚染されきった大気か、または戦争という大罪に対する罰か。
失われた科学はそのまんま。一度壊れた世界なので、モノは残っても科学力は無し。
「太陽」は、例えば戦争中に作られた何か特別な気象兵器とか・・・?
・・・まぁこんな感じで、若干こじつけっぽく脳内補完できる、は・・・ず?(弱気
やっぱり、そういう可能性もあるかも知れませんねーくらいでとどめておきますか。
読解力のなさが露呈してきましたね、はっは。



ではまとめのようなものを。
正直に言うと、読みにくい作品です。難解ですし、少しテンポ悪いと思った時期もあります。
しかしそれだけの理由でこの作品を最後まで読まずにいるのはもったいない。
ラストで得られる、このなんとも形容しがたい感動と興奮・・・!
自分は連載時サンデーを呼んでいなかったので、連載版がどのような結末だったかは残念ながら知らないのですが、単行本は一冊まるごとだったり半分だったりが書きおろしである単行本の状況を見るに、だいぶ印象が変わっているのではないかと思います。
改めて、この作品を完結させてくれた高橋しん先生に、感謝。
多くの人に届いて欲しい、少年と少女のファンタジー。
愉快で切なくて美しい、素敵な作品でした。

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『きみのカケラ』9巻 ・・・・・・・・・★★★★
最終巻。ここに至ってこその作品。彼らは太陽になりました。
先月くらいにサンデーに掲載された双子作品「スピカ」も、これまた良い漫画でした。

[本]笑顔が素敵なヒロインズ。あなたに恋したあの季節。 『夏のかけら』

記事のタイトル、ムダに韻を踏んでる感じが我ながら恥ずかしいですね・・・埋まりたい。
夏のかけら 夏のかけら

   思い出すのは あの日の空

天乃忍さんの短編集「夏のかけら」。
時期を合わせてみたかったのですが、少しズレたかな・・・まぁいいや。
連載作「片恋トライアングル」が大好きな自分ですが、そもそも偶然に手にしたLaLa増刊で「恋のかけら」を読んで天乃さんを知ったことがきっかけだったわけで・・・!そういう意味で自分にはたまらない1冊なのです。
この短編集は天乃さんが過去に執筆した読みきりを5作収録。
どれもこれもが素晴らしく胸がキュンとなる作品ですので、さくっと全部に触れてみます。

夏のかけら

表題作にして、ある意味、卑怯。
夏休み×田舎で強力に郷愁感を誘いつつ、加えて病弱モノ要素を混ぜ込んで
さぁ来い!そして泣け!とやる気マンマンの臨戦態勢。
それだけならどこか引いて読んでしまうのですが、天乃さんの可愛らしい絵も安定しており
文句なしに魅力的かつムダのないストーリー展開にも唸らされる秀作なのです。
意地悪なくらい切ない、王道の恋愛漫画となっています。

ストーリーは分かりやすいです。
夏休み、祖父を見舞いもかねてとある田舎町にやってきた美雪。
祖父の入院先で偶然知り合った少年・円と仲良くなっていくが
彼は重い病を患っており、もはや長い人生を望むことは不可能とも言われてた、
恋心が深まるたび、どうしようもない現実が美雪を苛める・・・。

いわゆる「お約束」をしっかり踏まえた設定をしています。
出会ってからすこしずつ関係を深めていく2人の様子はとても微笑ましい。
けれど美雪の中の円がどんどんと大きくなってき、彼女がそれを意識するたびに
ずっと一緒には居られないんだ、という事実が恋にブレーキをかけようとする。
けれど止められるわけもがなくて、どんどん膨れ上がる感情に戸惑う美雪の姿がかわいくもあるし、キュッと痛みを感じるくらい、切ない。
飄々としている円も円で、ふと弱い部分がムキ出しになってしまってもすぐそれを取り繕ってしまうのも、なんだか痛い。
もっと甘えてしまえばいいのにと思うけれど、多分彼はそうできないんだろうなぁ。
何かを遺してしまえば、自分が居なくなったあと、大事な人が苦しんでしまうだろうから。
そういう2人だからこそ、この物語はとても愛しいものなのです・・・!
そして物語は佳境へ。
叶わない恋だと薄々分かってるのにそれでもお互い僅かな一歩を踏み出した瞬間、つまりはあの風に吹かれたカーテンで隠れたキスシーンは、それはもう飛び上がるほど胸がときめいてニヤニヤしましたが、それを上回るほどのセンチメンタルがLOVEずっきゅん。なんと美しい、儚いキスでしょうか・・・・・・2人とも、これで何かを悟ってしまったんじゃないかなぁ・・・終わりだって。
そして予想通り、ラストシーンでは俺は泣きましたとさ。ちゃんちゃん(´;ω;`)

20100825013611.jpg

何も残さないように、未練も後悔もないように生きようとした円。
けれど美雪と出会って、ほんの少しの夢を見てしまった。
一緒に居たい人が、出来てしまった。

大事な大事な、あの夏の、一瞬の思い出。
夏のかけら。

予想以上に長くなってしまいましたが、もう大好きなお話です、これ。
一度読んだらもうこの単行本の表紙を見るだけで胸がいっぱいになります。
こんな綺麗な光景、そう見れるものじゃありません。

雪のかけら

季節は変わって今度は冬。
これは次の「恋のかけら」とリンクした構成をしており、合わせて読むとより楽しめます。
1つの恋が実れば、それによって人知れず散る恋もまた存在する。
そしてこちらは失恋サイド・・・、といってもあまり重苦しい感じではないのが救いか・・・?
遠野くんはもちろん本気で紺野さんのことを好きだけど、
最初から諦観してるというか、常に切なさを匂わせてくる男の子。
紺野さんには好きな人がいて、それは自分じゃないと分かっていて、でも好きなんです。
主人公の菊池はそんな彼を見守る友人という立ち居地。

失恋ありきのストーリー展開なので、結構辛いです。
作中でたっぷり遠野君の恋してる様子を見せつけておいて、ですから。
けれども、遠野君はカッコいいんだよなぁ。
好きな女の子のために、彼女の恋が実るように行動する。
そりゃ悔しいだろうし、悲しいだろう・・・・・・けれど好きな人には、笑っていて欲しいんだ。
そして彼女のために、彼は自ら失恋したのです。まじ心までイケメン野郎。
そんな彼の姿を見て泣いてしまう菊池さんも、また切ないうえにかわいいのです世・・・。
ジレンマだな・・・幸せになって欲しいけれど、それを叶えられるのは、自分ではない。
そういうモジモジしてきそうな関係が、この作品の魅力です。
タイトルにある「雪」も結構重要な要素として描かれており、季節感も良い感じ。
降り積もるだけで何も残らず、いつしか解けていく・・・・・・上手い表現だなぁと。

20100825013625.jpg

そしてコレである。
天乃先生の描く女の子の笑顔は至高です!

恋のかけら

「雪のかけら」のアナザーサイド。今野さん主役。
3作目にしてようやく最初から最後までほんわかできる恋愛漫画です・・・ふぅ。
しかしこの裏側(雪のかけら)を思うと、これもなんだか切なくなってきてしまう。
まぁ現実にも、感知できない別の物語はどこにだってあるだろうし、そういうものか。

さて、ころころぽてぽての紺野さんがとてもかわいいわけですが
自分はなにより彼女の笑顔がたまらないのです!
本当にやわらかい、ふわっとした笑顔。
終盤の涙を浮かべながらのそれの破壊力はかなりのもので、陥落は当然と言えます(キリッ

20100825013629.jpg (クリック拡大)

雪を桜の花びらに見立てるのが面白いなぁと。
相手の近藤先輩はもう3年で、次の春で卒業です。そして春と言えば桜。
つまり、紺野さんを追いかけて自分の想いを伝えた近藤先輩は
ある意味ではこの瞬間に自分の殻を破った、過去の自分を卒業した、みたいな読み方も。
ちょっと無理矢理な感じはしますが、自分はこれでまたしてもニヤリ。

春待ち草子

冬に続いては春。
作家である父の生み出した童話の世界に入ってしまった主人公・日向。
彼女のミスで散らばってしまった、父の遺作を集めにいくお話です。
不思議な童話世界を歩いて回る様子は、ちょっとワクワクしてきますね。
それを通して様々な記憶・感情を取り戻していくのもナイス。
作中ほとんど笑わなかった日向ですが、最後はにっこり微笑んでくれました
素直にほっと一息つけて笑顔になれる短編になっているんじゃないかなと。
恋愛漫画だけでなく、こういう作品もあるのが良いですね。

秋色 君色

ここで秋登場、四季コンプリート
恋愛に憧れる主人公・かのこが偶然電車内で出会ったのは、無愛想な少年。
積極的に仕掛けていく彼女ですが、その少年・伊原は体がかなり悪いとのこと。
無愛想で捻くれものの彼は、かのこをこれっぽっちも相手にしません。
しかし何度も2人の時間を重ねるにつれ、そんな彼らにも互いに少しずつ・・・?

この短編集の中では一番古い作品ですが、それほど違和感はありません。
というか、主人公が前のめりでアホな生き方してるのがいいなとw
「そんなワケでちょっくら告白してくるわ!」と惚れたその翌日に言っちゃうかのこ。
でも伊原との時間の中で、彼女に明らかな変化が生まれるのです
キャーキャー騒ぐだけではなく、相手を想ってちょっと感傷的になったりとか。
恋に恋していた彼女が、本当の恋に落ちていくのがグッときますね・・・!!

そしてこの作品でも、笑顔というのが大事に描かれています。
最初はかのこのことを歯牙にもかけない伊原でしたが、

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彼女の笑顔に目を引かれて、彼は初めてかのこと向き合います。
自分という人間に何度も傷つけられただろうに。遠ざけようとしたのに。
それでもいつものように笑いかけてくれた彼女。イイヨイイヨー。
ラストもとても綺麗で、うまくまとまっているなぁと。
舞い散るイチョウの葉も、なかなか味があって素敵です!



以上、そんな感じの一冊。
とても季節感を大切にしている短編集です。
それぞれの季節に合わせた雰囲気が出ているなぁと。特に「夏のかけら」の空は・・・。
そして何より、恋してる女の子男の子の表情が、とくに笑顔が、素晴らしい。
笑顔を持ってくるタイミングも、またよく出来てるというか・・・!
人の表情というのは、とても魅力的なものなんだと再確認です。
切ない恋愛が読みたい方にオススメできると思いますし
とても可愛らしい絵なので、男性もスルリと読める作者さんだと思います。
来て欲しい展開にスコーンとハマる、色々気持ちいい作品集でした!

『夏のかけら』 ・・・・・・・・・★★★★
天乃忍さんの魅力が詰まった一冊。いやはやこの笑顔はたまりませんな。

[本]立ち止まる少女。怖れと希望は線路の先に 『きみのカケラ』8巻

最近この1行目に一言日記みたいなこと書いてますが、正直どうでもいいですよね。
きみのカケラ 8 (少年サンデーコミックス)きみのカケラ 8 (少年サンデーコミックス)
(2010/01/18)
高橋 しん

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   もー出発か? イコロ

7巻から続きまして8巻の感想も行きましょう。
過酷な環境の中、必死に生きる子供達を描くこの作品。
7巻で作品的に大きな転機を向かえ、残すは8,9巻の最終章のみといった感じに!
最後まできっちり読み進めていきたいです。

外の世界から帰ってきたイコロとシロは、鉄道の街ルトムに滞在中。
「太陽」を探す旅への資金集めのためにせっせと働きますが、一向にお金は溜まらず・・・。
滅び行く国で、イコロとシロは互いの冷たい体を温め合いながら生きていた。

そんな導入な8巻。
まず資金集めをするイコロですが、心のどこかに諦めに似た感情があります。
旅への強い情熱が薄れてきているようなところも見受けられました。
それにはやはり、7巻ラストの展開が効いているんだろうなと。
これまで目指していた、一つの結末としてみていた「壁の外」。
その期待が裏切られたのには、気丈なイコロも少なからずダメージを受けているはず。
「太陽って・・・ホントに・・・あるんだべか・・・」
希望の存在すらも疑い始めてしまっているイコロ。
疑念を抱いたまま、彼女は少しずつ変わり、壊れていく・・・?
さらに加えて、イコロが変わった明確な理由もありますが、それは後述。


続けて「太陽」のお話。
「太陽」とは、子供達が目指し欲している希望を表した存在です。
過酷な現実に生きているからこそ、子供達にとって「太陽」とは、まるで全能の神。
20100822010736.jpg
それさえあれば、全てが変わる。幸せになれる。そういう希望を詰め込んでいます。
あまりにも都合がいい。
けれどそう信じることで救われている子供達。
未来を信じるために、不確定不透明なそれに頼るしかないのですね。宗教みたいなものか。
しかし、これまではその全貌が見えない、象徴のようなものとして描かれていましたが
具体的な「太陽」の情報が出てくるのは、この8巻が初めてなような。
「太陽」は現実に空に見える太陽ではなく、別のものなんじゃないかと思ってましたが
実際に空に浮かんでいる「太陽」のことか、あるいは別の光り輝く物体であるらしい。
本当に旅で向かう先にそれはあるのか・・・・・・9巻がとても楽しみ。


そして8巻で顕著だったのは、イコロの二面性の強調。
これまでもそのような描写はありましたが、こんなに露骨なのは何か意図があるよなぁ。
大好きなシロに対しても、場合によってはこの対応。
20100822010728.jpg
そしてこの直後、イコロは泣き崩れてしまいます。
こんな自分は、自分じゃない。
ふとした瞬間に現れる王族としての人間性。拒絶したい、本能。本性。
希望だけではなく、自分自身すら信じられない・・・イコロはどうなってしまうのか。
しかし同時に、彼女に王としての資格があることに間違いはない。
それが物語にどう影響していくかも注目していきたいですね。


それと気になるのは、壁の住人が明かした、世界の秘密。
壁の内で滅び行くこの国は、実は「守られていた」ということが発覚。
希望なんて無いのだと、「太陽」は美しい救いでもなんでもないと、明かされる。
それでも諦めないイコロは、住人により国の歴史を脳にインプットされます。
この内容によりイコロの中に「王の人格」が誕生したのだと思います。
残酷で、そして未来を諦めがちなイコロになってしまった。
けれど彼女の隣にはシロがいる。無邪気な、子供のような、暖かな彼が。
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1人じゃないから、大切な人がいるから、生きる。生きてやる
この時間を、この言葉を、このぬくもりを、忘れてやるものか。
悩みながら、苦しみながら、イコロは生きることを諦めません。


この漫画の子供達は、生死の問題にどこか達観している感もある。
それは子供ゆえにソレを上手く理解できていないこともあるだろうけれど
それだけじゃなくて、もっと遠くを見つめているような部分も見受けられる。
肉体の死ではなく、魂の死・記憶の死までを見据えてる。
それは常に終末を意識しているからこそ、なのかなぁ。
考えてみると、この作品は本当に重たいテーマを掲げている。
んでもってそれを子供達に託してしまっている。
見方を変えてみれば凄く残酷な漫画だなぁとも感じるけれど
同時に、子供達ならなんとかしてくれるんだっていう妙な期待もある。
大人たちみんなが未来を諦めている中で、彼らは今、国で一番の光になっている。
がむしゃらに生きる。
子供達は等しくそうする権利を持っているんだ。


まとめるとこの8巻、(まだ読んでませんが)最終9巻のラストスパート前の小休止。
まるまる一冊タメに使った感じもしますね。
可愛らしい絵柄で描かれる子供達の世界は、心を穏やかにしてくれますし
しかしひどく陰鬱な気分をもたらしてくる瞬間があります。
そこもまた魅力的だったりするのですが・・・。
なんにせよ、あと1巻。どういう結末になるか楽しみです。読むぞー。

20100822010740.jpg

さぁ、最後の冒険だ。
「太陽」を探しに、未来を探しに、みんなで一緒に。

『きみのカケラ』8巻 ・・・・・・・・・★★★☆
「タメ」の巻。子供達に待つのはどのような結末なのか。Cagayake!Boys&Girls(唐突

[本]あすかちゃんの無自覚エロス記録集 『今日のあすかショー』1巻

今日のあすかショー 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)今日のあすかショー 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
(2010/08/12)
モリ タイシ

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   よかったらふいてもらえませんか・・・?

「いでじゅう!」「RANGEMAN」をサンデーにて連載したモリタイシさんの新作。
現在はゲッサンの「まねこい」と月スピの「今日のあすかショー」を同時連載中です。
あすかショーは毎月のページ数が少ないので単行本化にかなり時間がかかりましたが
待ってましたの第一巻がようやく発売されたので感想でもー。

この作品はタイトルどおり、主人公のあすかちゃんの日常をひたすら覗く漫画です。
男にとって女の子とは神秘そのもの。
「よく分からない」「予測不可能」・・・・・・・・可能性だらけのおもちゃ箱のような存在なのです。
この漫画はそんな女の子の魅力をたっぷり味わえる作品。
独特の思考回路と行動で男達を困惑させ続ける天然少女!
それがあすかちゃんなのですよ。
表紙の彼女スカートにはやや違和感がありますが、後ろを見れば一発解決。
20100816183634.jpg
スカート乗っちゃってますよあすかちゃんww
しかも「KEEP OUT」の向こうにおしりがあるのも芸が細かい・・・立ち入り禁止!
まぁようするに、こういう女の子なのです。
本編もぱんつぱんつで、ぱんつ漫画ファンにもオススメできるのでは!


あすかちゃんは勉強はできるようですが、不可思議な自分ルールを持っているようで
そこがまたとても可愛らしく、また面白いのです。
パンツを見られてもほとんど恥ずかしがらず、「喜んでもらえてもらえて嬉しいです」。
告白されたと思ったらその相手にちょっと説教して再告白させて挙句フったり。
エッチないたずらを仕掛けるおじさんを上手くかわし、逆に得しちゃったり・・・。
秀逸だったのが水着のお話。
どうすれば海やプール以外で水着を違和感なく着こなせるかを考察するのですが
20100816183615.jpg(考察してるあすかちゃん)
女の子が無防備にダラけてる姿っていいなぁ。
違った・・・考察の結果、一つの結論に達したあすかちゃん。
水着は「水辺で着る」という明確な仕様用途がある・・・
つまりそこが水辺であれば水着姿でいることの説得力が生まれる!
水着は海やプールに限られたファッションではない!説得力があればいいのだ!
例えば雨の時・・・は、傘で十分対応できるから、水着姿だと不信がられてしまう。
では傘でも対応できないシチュエーションならば・・・、・・・「そうだ!」
20100819180627.jpg

「台風!!これは説得力あるわ―――!!!」

あ り ま せ ん 。


この漫画は視点によって微妙に作風が変わるのも面白いですね。
大きく分けると、あすかちゃんの視点・第三者からの視点という2つのパターンがあります。
前者は先の水着話のように、彼女が独自に思考を重ねておかしな行動を起こしていくお話。
これも十分に面白いのですが、この作品の真髄は後者にあるように思います。
彼女にふりまわされてしまう(かわいそうなor幸せな)他者の視点で、あすかちゃんを観察する視点・・・こちらだとさらに彼女の唐突な行動の面白みが増しますし、よりリアルにこの作品を楽しめてる気がします。個人的な考えですし、どちらが良いとも言い難いですが。
もちろん彼女はとても特徴的な美少女なんですが
あくまでも普遍的な日常に彼女がまぎれているからこその、ドキドキ感。
ふらりと遊びに出かけた先で、なんだか不思議な女の子を見かけた―――
これくらい距離感が良い。名前は知らないし、きっともう2度と出会えない。
だけどなんだかずっと頭からあの女の子のことが離れない・・・みたいな。
この絶妙な「遠さ」が、この漫画にあるロマンなのでは。
主人公ではない、外部の人間に自分を重ねてこそ物語の魅力。
なんにせよ、あすかちゃんというキャラクターはとことん輝いて見えます。
そうだよな、こんな娘いたら困っちゃうよな。
心がホッコリしますね、この素敵な感覚・・・!ああ、女の子って、いいなぁ。

女の子は神秘です。
ワケが分からない存在です。
だからこそどこまでも心惹かれてしまうのです。
美少女に惑わされたい、なんて欲求を密かにお持ちのあなた。
「今日のあすかショー」がそれを叶えてくれる作品になるかもしれません。

20100816183630.jpg

日常に潜むちょっぴりのエロスとときめきとセンチメンタル。
何度読んでも味わい深い、素敵な1冊です。

『今日のあすかショー』1巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
リラックスして楽しめるエロチック日常系漫画。
得体の知れない、手の届かない、とても可愛い女の子。ある意味ロマンです。

[本]決着、決着。人間とホムンクルスの生き様に痺れる! 『鋼の錬金術師』26巻

コミケ乙でした。仮免受かりました。路上でひょろひょろ走ってます。
今回ネタバレ凄いので未読の方注意ー。
鋼の錬金術師 26 (ガンガン コミックス)鋼の錬金術師 26 (ガンガン コミックス)
(2010/08/12)
荒川 弘

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   やりごたえのある 良い人生であったよ

集められた5人の人柱を礎に、ついに本格発動された国土練成陣。
それはアメストリス全国民の生命を賢者の石のエネルギーにさせ、神を手にするための儀式。
20100816194007.jpg
そして全アメストリス国民の息が途絶えた。
そこに立っていられたのは僅かな人間達と、錬金術師。
真を姿を取り戻し、身に神を宿した「 フラスコの中の小人」。
さぁ、始まるぞ、終わりが。

はてさて、もうラストバトルも大詰めも大詰め!
アニメが終わっても原作はまだ終わってない鋼の錬金術師、第26巻です。
なんてったってこの巻はオッサンですよ。そう、ホーエンハイムとブラッドレイ!
まずホーエンハイムがカッコよすぎるのです。
賢者の石そのものである彼は、そのエネルギーを使って術を仕えない錬金術師たちを必死にまもるホーエンハイム。エドの表情もいいですねー。立ちふさがり自分たちを守ってくれている、強い父の背中を見上げています。

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ホーエンハイム。
孤独のまま彷徨い、家庭を成し、けれど幸せを背に再び孤独に歩みだした。
一度は途切れてしまった、家族の絆。
全ては自分の罪を償いをするため。そのための人生だった。だからこの戦場にいた。
けれど挫けそうになった、その瞬間ですよ!

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彼を背中を押したのはエドとアル。息子たちです。
「ボンクラ親父だけど・・・いいとこ見せたくなっちまうなぁ!!」
笑顔でそう叫ぶホーエンハイムにこっちも笑顔になってしまうというもの!
闘いの中で進化する人間関係って素敵ですなー。



さてお次はブラッドレイ。憤怒のラース、ホムンクルスです。
彼の生き様もまた、ホムンクルスという存在を語る上で欠かせないものなのでは。
もともと彼は人間であり、色々とイレギュラーな要素を持ち合わせているのですが
彼の思考、行動、信念は強烈に印象に残るのです。
そしてこの巻ではついに彼の退場シーンが描かれてしまうのです。
スカーとの熱戦の末、「運悪く」敗北を喫したブラッドレイ。
ブラッドレイはこれまでにも、予想外の出来事を楽しんでいる節が見受けられました。
そんな彼だけに、このような決着は彼にとっては納得できる、最高に楽しめた闘いだったのではないかなぁと思えたりします。だって、凄く良い表情してんだ、このオッサン。不測の出来事による偶然の結末を、素直に受け入れてる。
そしてやりごたえのある人生だったと零して、ゆっくり目を閉じる・・・。

「憤怒」を司るホムンクルスは、相反して安らかに、そして誇らしげに倒れ伏した。
戦い抜いた、1人の戦士としての死。
その表情に宿るのは、心からの満足感。
ああ、なんだよ、これじゃまるで、人間みたいじゃないか。

20100816183653.jpg
さらば、ブラッドレイ。
ちょっと画像チョイスが間違った気もします。

ランファンに語った言葉の意味、そしてランファンに伝えた意味については
また誰かが書いてくれると思います(チラッ



さてホムンクルス&家族つながりでセリム・ブラッドレイも。傲慢のプライドです。
彼もまた痺れる最後を迎えております。
彼は非常に従順に「お父様」に付き従うホムンクルスとして活躍をしていましたが
この巻ではじんわりと彼のアイデンティティが崩壊していきます。
決定的だったのはエドが放ったこの言葉。
「おまえがオレ達にこんなボロボロにされてんのに お前に一瞥もくれてないんだぞ!」
これに明らかに動揺するセリムには、ホムンクルスの深い部分を覗けた気になりますね。
心のどこかでは見返りを、愛情ややさしさを求めてしまっている。
そして一番は、決定打となる一撃の直前のこのシーン。

20100816183701.jpg (クリック拡大)

まさかの再登場を果たしたキンブリーの影響で出来た一瞬の隙。
そこに飛び飛んできたエドを目の当たりにして、思わず死を悟ってしまったのか。
彼が最後に思い浮かべたのは、ホムンクルスの兄弟達でも、お父様でもない。
人間としてのセリムの居場所であった、家族のこと。
そこにブラッドレイ本人も含まれていることが、またなんというか・・・!
彼らは紛れも無く家族であり、彼は家族を愛していた、と。
それを読み取ることができる、切ないワンシーンでしたね。
もちろん小さくなったセリムが小さくつぶやいた2文字にも、胸が熱いのです。


そんな鋼の錬金術師26巻でした。
最終第27巻は11月発売。
もはや何も言いません。黙って最後まで付いていくだけです。
1期アニメから原作入りして、もう7年ほど・・・・・・大好きな作品が終わるのは悲しいことですが
やはり愛するからこそ、行き着く果てを最大限味わいたいというか。
アニメも好評なまま終わりましたが、原作はどうなるでしょうね。
楽しみすぎる最終巻まで、ドキドキが鳴り止みそうにありません。

『鋼の錬金術師』26巻 ・・・・・・・・・★★★★
いよいよ次でラスト。こんな面白い漫画終わっちゃっていいのかよ。いいんだよ。
全て紡ぎ終わる瞬間まで、この作品は気が抜けません。

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漣

Author:漣
「さざなみ」と読みます。
漫画と邦ロックとゲーム。
好きなのは思春期とかラブコメとか終末。

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