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正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[漫画]男子高校生…魔法少女…?『妄想奇行―Adolescence Avatar』

妄想奇行―Adolescence Avatar (電撃コミックス)妄想奇行―Adolescence Avatar (電撃コミックス)
(2012/01/27)
森山 大輔

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   外道はまとめて爆砕しちゃうゾ☆

森山大輔先生が電撃大王GENESISで連載していたものがついに単行本化。
「妄想奇行―Adolescence Avatar」は全1巻に収まった読みやすい作品です。
森山大輔先生は「クロノクルセイド」「ワールドエンブリオ」等に、結構シリアス色の強いストーリー漫画をメインに執筆する作家ですが、本作は突き抜けて明るいコメディです。
過去の単行本でも1番、いろんな意味でぶっ飛んだ作品になっているんじゃないかなとw
メインテーマはずばり厨二病!
人によっては心がチクチクと刺激される内容でしょうw 厨二病で学校を守れ!



主人公・有理はオタクであることを隠していた男子高校生。
彼が住むこの街には不思議な力があるらしく、それが困った事態を引き起こします。
ある日有理がいつものように自作ラノベの執筆に勤しんでいたら、それが原因で3年生の雪見先輩と出会い、勘違いから彼の悶々とした妄想が学校中にバラまかれてしまいます。
バラまかれた妄想は街の力でなんと実体化!そして人々を襲いだすのです。
これは困ったぞ!こうなったら変身だ!わるい化け物たちをなんとかしなくちゃ!

妄想2

オリジナル魔法少女・ヒルデちゃんになって、敵をやっつけるんだ!
男子高校生魔法少女、誕生の瞬間です!
・・・いやいやいやウワアアアアアアアアア完全に羞恥プレイだよおおおおおお!なにが「ヒルダの歌声聞かせてあげる!外道はまとめて爆砕しちゃうゾ☆」だよつらい・・・・!
ぼくのかんがえた最強にかわいい魔法少女ヒルデちゃんということですか。ウオオオオオ

こんな風に物語は、恥ずかしさに我慢できなくなりそうな感じで幕を開けてしまいます。
有理くんは学校中にバラまかれた自らの妄想の化け物たちを、自作小説「ヴァルキリア無双ヒルデ☆ぶれいく」のヒロイン・ヒルデちゃんに変身して退治していかなければならないのです。
それって要するに自作自演のような・・・!色々とノリノリでやっちゃうのが更にイタイ。

妄想1

なんとバトル中に歌が流れだす!もちろん自作である。
ラノベ書き上げる前にアニメ化の妄想までしてたのかこいつはうおおおおヤメテエエエエエエ。中高時代に有理みたいなことした人にとっては、心に何かもにょもにょしたのがガンガンやって来る!

基本的にずーっとこんなふうに厨二病を逆手にとったネタが続きます。
有理とはまた違ったタイプの厨二病を患った女の子も登場し、集団となってみんなで恥部を晒しまくるというなんとも頭のイタい内容となっています。
もうね、設定だけムダに作りこんだ完成してない自作ラノベとか、テイルズの技名っぽく字面だけカッコよくて意味はさっぱり分からない必殺技とか、憧れの自分になりきって自己陶酔とかいちいち鋭い。こんな共感したくなかったよと思ってしまうシーンがあちこちにあります。
そんなネタが非常にテンポよく繰り出され、コメディとしてなかなかに面白い!
色々とツッコミつつ、時折なにか心痛めつつ楽しめてしまう作品なのです。



しかし時折空気が変わるシーンがあり、とくに後編は印象的でした。
厨二病をテーマにした作品だけに、基本的にリア充ではない学生たちが主人公です。
たまにバカにされたり、蔑まれたりもする彼らのフラストレーション。そんな心の傷跡が描かれていて、厨二病をネタにした「コメディ」だけでない一面を見せてくるのです。

妄想3

有理と同じく厨二病で変身もできてしまう女の子、華ちゃん。自分のお気に入りですが、彼女も現実に不満を感じているうちの1人です。
しかしそんな厨二病であることを楽しみつつ、ある意味コンプレックスでもある彼らに、ヒルデちゃんは勇気を与えてくれるのです。それが本作の最終話。
あの印象的な展開から、真正面から厨二病を肯定するのがこの作品なんだなと思います。
その力強い主張は読んでる自分も熱くしてくれましたよ。
現実で青春を謳歌することを拒否しているように見えた華ちゃんも、ラストでは自分から有理に腕をからめたりしてる。彼女の変化は著しかったです。華ちゃんかわいいなああああ!本気ではなくいたずらなだけだとしても、そうやってはしゃげることがどれだけ大きいことか。

単純にコメディとしても面白いのですが、厨二病の面白いところとちょっとズキンとくる部分を両面的に描き、それまるごと「素敵なものじゃないか」と後押しをする、そんな内容です。
あとがきを見るに、森山先生も過去の傷をほじくりかえしながら執筆していたようですが、こういう熱いメッセージを厨二病に投げかけてくれる作品を描くのは流石という感じですね。だってクロノのワンブリも厨2全開じゃないですか!そこが大好きなんですよもちろん。嬉しくなります。
絵の質も高く、ヒルデちゃんのバトルシーンにはいちいちほっこりしてました。
全1巻と読みやすく、ちゃんとまとまっていますので、手軽にお手にとって見てはどうでしょう。
開き直って厨二病を考え、見つめてみる面白さ。好きなものはとことん楽しもう!

『妄想奇行―Adolescence Avatar』 ・・・・・・・・・・・★★★☆
厨二病だっていいじゃない。魔法少女になってしまった男の子が送る、勇気と恥辱の物語。

[漫画]必ずお守りしますから! 『常住戦陣!!ムシブギョー』4巻

常住戦陣!!ムシブギョー 4 (少年サンデーコミックス)常住戦陣!!ムシブギョー 4 (少年サンデーコミックス)
(2012/01/18)
福田 宏

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   なんでこんな状態で、そんな顔できんのよ!?

少年サンデーで連載中の「常住戦陣!!ムシブギョー」4巻です。
表紙は江戸の夏の風物詩、巨大カブトムシの益荒大兜。迫力ありますねー!
内容として3巻から引き続いてる大兜編のクライマックス、そして仁兵衛とお春ちゃんが活躍する砂地獄編がメインとなっています。
今回も清々しいくらいにまっすぐな少年漫画。気持ちいい作品です。



常識外にデカすぎる大兜を相手に、蟲師奉行所はどう戦っていくのか。
少年漫画らしい超スケールで爽快なバトルが序盤から展開されてテンション上がります。
しかし個人的に更に胸熱くさせられたのは第28陣「本当の武士」。
武士を目指した少年が仁兵衛に弟子入りをする、たった1話のエピソード。
シンプルであり王道でもあるものなんですが、仁兵衛の人の良さが周囲の人間たちを勇気づけ変えていく、その一連の流れの見せ方が素晴らしい!
本当の「武士」とは、身分でなく心に宿る強い意思そのもの!
仁兵衛っていわゆるおばかキャラなんですけども、まったくストレスなく見れて、しかもカッコいいのは凄いですね。一本筋が通っていて人情深い。仁兵衛がいい子さが作品の雰囲気をより良く、そして面白いものにしてくれている気がしますね。
人と街を、そして少年の夢を守ったこのお話。一話で仁兵衛の魅力を凝縮してます。

さて、しかしこの4巻の約半分をしめるボリュームの砂地獄編も見所満載。
この作品は2人のヒロインがいて、『日常を彩るのがお春ちゃん、戦いを彩るのが火鉢』という認識。何話も使うバトルものになるとお春ちゃんの出番は少なくなりがちです。
どちらもかわいいヒロインなんですが、お春ちゃんが振りまく癒しオーラは好きなので、長期的に姿が見られなくなるとなんだか寂しくなってしまうのです。
しかしバトル編になってもお春ちゃんに出番があるときもある。
ようするに彼女がさらわれてピーチ姫状態になった時ですよ。今回そんな感じ。
しかしこのお話では、彼女は今まで通りに守られるだけではない。むしろ仁兵衛協力し敵に立ち向かっていく。まぁ基本的に守られてるんですが、そうと感じさせないような明るさと元気さがありおっと思わせられます。仁兵衛も彼女がいるからこそ更に気合がはいってる。
主人公がヒロインを助ける、王道の熱い流れもさることながら、そこからの展開がまた面白い。

ムシブギョー1

どんなに苦しい状況でも、この2人はキラキラした雰囲気を振りまきます。
命の危機が迫ってるのに緊張感が薄い。でもそれは、相手がいるからこそ一層気合がはいってるというか。お春ちゃんは仁兵衛といればきっと大丈夫だって心の底から信じてるし、仁兵衛は当たり前のように守りぬくつもりで、その意思を揺るがせもしない。
敵の女の子もこんな2人も見ててイライラしてましたねえw
追い詰めてるはずなのに、顔色買えず2人でイチャイチャしてるんですから、まぁ当然か。
仁兵衛もお春ちゃんも天然キャラなんですよね。なにこのペアかわいい。
というかこのお話の中では2人はまるで夫婦ですよ。なんという安定・安心感!

そしてこのエピソードでも彼の良い子っぷりが炸裂中。
敵だろうと何だろうと、人を疑わない。それで騙されても、彼は自分のすべきことをしていくだけで、それを解決してしまう。仁兵衛と敵対しても、憎しみ合うことにならならないんですね。それで敵がイラつく姿も面白いw 
あらゆることに無自覚なのがかわいいし、いいキャラしてるなぁと感じるポイントでしょうか。心が綺麗すぎて大丈夫かと思いつつ、それでなんとかなっちゃう仁兵衛が好きなのです。



お春ちゃんとイチャイチャできたのでふぅ今回もよかったねって読み終わろうとしたら火鉢ちゃんも本気だしてますよ。脱ぎっぷりで。完全にサービス要員ですよ、なんだこの構図!

ムシブギョー

ふむ。なるほど火鉢ちゃんはおしりをクローズアップですね!(笑顔で)
お春ちゃんが非常に女性的に豊満な体つきをしており、火鉢ちゃんもけしてナイチチではないんですが相手が悪い。しかしおしりならばどうだろうか!いいぞ!火鉢いいぞ!
火鉢ちゃんはバトル中もいちいちパンツ(みたいなフンドシ)をひらひらさせてくれる、ガード性能が低くて嬉しい女の子。しかしこういった部分でもサービスを欠かさないのです!
というか今更ですが、花火(爆弾)で戦う女の子が爆風を考慮することもなくスカートを身に付けてるのは一体どういうことでしょうかね。戦うたびにパンツ見えちゃうじゃないですかまったくもう!けしからん!でも今の適度なバランスいいと思います!たまに見える位で。
火鉢はラブコメ要因らしい部分は今のところないのですが、いずれそういった方向でも活躍してくれるとなおうれしい・・・かも。男勝りな性格ですが、かわいい部分もかなりある女の子。
なんでもかんでもラブコメにすれば○ってのはいけない考えかwだって好きなんだよー!

ストーリーとしては第35話から新章突入といった具合。
謎の多い少女、蟲奉行様がついに正体を表し、物語の本筋に絡んできました。
ここらへんからはもう完全に超連載版から分岐したものになってきましたね。
どう物語が進んでいくのか、とても楽しみです。
男はカッコよく、女はかわいく、そしてどちらも凛とした生き様。
素直に心を熱くさせてくれ、キャラクターたちを応援したくなる、本当にまっすぐで気持ちのいい作品だなと感じます。少年漫画らしいサービスも忘れないよ!
男の子はこういう漫画で興奮するもんです。いろんな人に読まれて欲しいなぁ。

『常住戦陣!!』ムシブギョー』4巻 ・・・・・・・・・★★★★
すでに安定した面白さを発揮しだしてます。新章が楽しみですね。

[漫画]「好きだから」の先にあるもの 『ロング&ビューチフルライフ』

ロング&ビューチフル ライフ (Cannna Comics)ロング&ビューチフル ライフ (Cannna Comics)
(2011/11/25)
山田 酉子

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   あれは 叶うかもしれない恋だったのか

大好きな山田酉子先生の一番新しい単行本「ロング&ビューチフルライフ」。
この作家さんには去年の冬に「女の子のすべて」で出会って以降すっかり惚れ込んでしまい、BL単行本だろうと買うようになってしまったわけですが、今回も相変わらずりんりんと心震わせてくれます。
本作も女性向けのBL作品。とは言ってもこれ男性でも読みやすいんじゃないかと。がっつり生々しい性描写は無いです。しかしシャープに心をえぐるような静かな牙を、あるいは穏やかな毒を秘めた作品。作品に影響されてポエミーになっててやや恥ずかし。
短篇集のコミックスで、3つの物語を収録。個別感想行きます。



●ロング&ビューチフルライフ
表題作は女装趣味を持っていた少年とその恋人、そして2人を見守る1人の少年のお話。
男だらけとは言え三角関係モノ!しかしドロドロとはしてはいませんね。・・・いやドロドロしてないのとは言え作中ではいがみ合っていたりしてるか。見せ方の問題で。
そんな中にとあるお爺さんとお婆さんのかつての恋が絡まります。タイトルのレトロな響きはこれにちなんだもので、内容もどこか懐かしい趣も感じられる恋愛物語となっている、と同時に、過去と現代を結ぶ1つの切ないお話を紡ぎ上げるものとなっています。

傲慢で、不安定で、ずるくて、不誠実で・・・。
そんな風に、むしろ恋の切なかったり辛い部分をフィーチャーした内容であるにも関わらず、描き方がとてもソフト。先にも言いましたが、状況とは裏腹に雰囲気は何故だか優しげ。
優しげにこういうことを描くからこそ残酷でもあるのですが、この飲み込みやすさは凄い。

ロング

色々と好きなシーンはあるのですが、興奮するのは終盤。上のシーンからの一連の流れ。
物語が一段落したあとにやってくるこの幸福感たっぷりなやりとりには、思わず頬も緩んでしまうというものです。
主人公は「オレはおまえなんか好きにならない。絶対に。」と言い放ちますが、・・・ああもう、この続きの言葉が!なんて行き当たりばったりなような、予定調和なような。ふわふわした部分を残しつつ、恋愛をとても楽しんでいる彼らの姿に、良い読後感をもらいました。
欲深さと卑怯な一面を、とびきりキュートに軽やかに描くラストシーンなのです。
非常にしなやかに感情の起伏を追っていく作品で、その締め方も印象に残りますね。
様々な感情がふんわりデコレートされてるような、切なくも陽気で心地いい物語。



●みずたま
いつも水玉な服を来たストーカー少年をめぐるお話。
ストーカーに悩まされるチリくんと、彼の幼なじみで理解者でもある遠目くん。2人はついにストーカー少年に接近しますが、当然ながらその少年はチリくんに恋心を持っていて・・・と。
メインの男性キャラは3人ですがこちらは三角関係ではないですね。恋愛と、それとは別の感情もろもろが複雑に絡み合ったちょっと奇妙な構図。面白いです。

こちらも飄々とした雰囲気の中ストーリーが進んでいくのですが、
しかしキャラクターの感情はガンガンこっちに押し寄せてきてズキズキ来ます。
特にチリくんと遠目くんは、モノローグを通じてささいなすれ違い感じられ、いちいちグッとくる。
遠目くんの前では本当にいい子なチリくんですが、独白では彼の本当の思いが明かされます。
「少なくともオレよりはイイ奴」「だから俺なんかにもいつまでも優しいの」などの自虐はドキッとしましたね。
しかし1番の驚きは「ちょっとくらい傷つけばいいよ 遠ちゃんなんて」と毒づいたこと。
チリと遠目の関係は不思議で、互いに好意を寄せて、それをきっと自覚していて、だからこそチリくんにはいたずら心というか、裏切ってやりたいちょっぴりの嗜虐心が芽生えもする。でもそれは多分「自分から解放されて欲しい」という思いの裏返しでもあるみたい。…それも自虐か。
キャラの機微を非常に丁寧につづられていくのが素晴らしいですね。
この作家さんの作品にはどれにも言えそうな気がしますが、この作品は特に「関係の移り変わり」に恋愛を重ねて重視しているので、より繊細さを感じたのかも知れません。

また、珍しく登場した女性キャラ・遠目くんの彼女さんがたまらんです。
可愛らしくもあり、成熟したエロさも香らせる女の子なのですが、
女性の立場から男同士の関係(恋愛含む)に見解を示し、作品全体をあるべき姿に導こうとしてくれる面白いポジション。
本当は切ない立ち位置にあるはずなのに、彼女は自分の想い人の気持ちに、とにかく力強い肯定と言葉を与えるのです。ちなみにこれを読んで自分は彼女付き男が男に揺らいじゃう系ストーリーもいいなぁ(彼女さんが切ないのですがそれも良い)とか実にどうでもいいことを思ったのですが、これは別に彼女さんがフラれるワケではないのでスッキリしています。遠目くんとのやり取りは甘さたっぷり。

ロング1

彼女さんはマジできる女の子。恋を知り尽くすはやはり女の子、かなぁ。
成就と失恋を描いた、清々しくもあり切なくもありなお話でした。



●熱帯雨林の夜/森林浴
2人の男の子が共通して登場するシリーズ。高校時代と、社会人になってから。
全2作も間違いなく切ないお話だったのですが、どこかで癒しのある内容でした。
しかしこの話は違いますね。心がヒリヒリするような行き場のない恋。
タイトルやモチーフにもなった「熱帯雨林」からイメージされる風景とは異なり、ここではかなりドライで淡々としたお話が繰り広げられるのです。

主人公のキャラクターがいいですね。彼が作品のいい雰囲気を作り出している。
彼は恋に熱狂することはない。
ただ静かに穏やかに自分の中の恋を見つめ、育み、愛する。あるいは逃げたりして。
臆病な自分を嫌いつつも、おっかなびっくりその恋に向きあおうとしている。

江上の肌の下の見えない水脈から
いずれ溢れ出る
その汗のたった一滴さえも
好きなのだ

この一説で鮮やかに締めくくられる「熱帯雨林の夜」はもう絶品!
このモノローグがとにかく心に響く。好きだからこそ、まっすぐ前を向くこともできないけれど、でも何もかもが好きなくらいに好きになってしまった。
ストーリーで言えばこの続きが欲しいはずの場面で、あっさりと終わってしまう。迫ってきた切なさを消化することも出来ずどこかへ放り投げられた気分になりましたよ。すごいセンス。全然すっきりしないのに、あまりにもスマートにキメられてしまうものだから、もう納得せざるを得ない。うまいことこの作品に乗せられちゃったなと感じた瞬間です。
ここから逃げ出したいのに手放せない恋心。行き場のない思いを抱える辛さ。
すごい息苦しさ。カラカラに喉が乾いてしまいそうです。
そして後編へと続くのですが、さて2人はどんなことになるのか。

このシリーズはとにかく全体を覆う雰囲気がめちゃくちゃに魅力的。
多彩な恋愛を描くこの短篇集において、この作品はかなりいい存在感を放っています。
生々しい描写もありますが、なによりもバカみたいにロマンティックなのだ。



そんな短篇集「ロング&ビューチフルライフ」。
なんでしょうね。この雰囲気の良さは。
ザクザクと人の心をえぐっといて、平然とすまし顔を続けてる、そんな作品。
ひだまりにいるような暖かさと、どうしようもない切なさを、オシャレな世界に閉じ込めてしまっています。でも当然オシャレなだけじゃない。
山田酉子先生がみせるサディスティックなストーリーは切れ味鋭く、切られたそこからどんどんと感情が溢れでてくる。
それが気持ちよくて、なんだか何度も読みなおしてしまう。
男同士の恋愛を描いた作品ですが、恋愛の面白さを魅せつけてくれる作品でしょう。
恋愛に大切な心理描写もまた巧みなんですよねぇ。唸らされまくりです。
モノローグなどで特に感じるんですが、言葉選びや文章のテンポ、そういった部分も素敵。
山田酉子先生が描く恋愛はもう何から何までツボですなー!
男性キャラも結構フェミニンな感じで、普通にかわいらしいんですよね。

BL単行本だと『クララはいつも傷だらけ』『かなしい人はどこにもいない』がすでに発売されていますが、中でも今回の『ロング&ビューチフルライフ』は現時点でのベストだと感じます。
このジャンルは詳しくないので分からないのですが、掲載誌の違いからか性描写も登場が少なくて、出てもかなりあっさりとしたものでエグみがない。
個人的にはまた女の子たちの性愛を描いて欲しいなあと思ってるんですが、しかしこれだけBLでも楽しませてもらっては、もう充分ごちそう様です・・・。
「好きだから」の先にある様々な答え。この作品は色々な恋愛を軽やかに描いています。

『ロング&ビューチフルライフ』 ・・・・・・・・・★★★★
鬱々しさと清々しさとばかばかしさの同居は実現されています。キュンキュンするな!

[漫画]声にできない想いを託して『雪にツバサ』2巻

雪にツバサ(2) (ヤンマガKCスペシャル)雪にツバサ(2) (ヤンマガKCスペシャル)
(2012/01/23)
高橋 しん

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   この街で あの夜あったすべてのことが 雪に埋もれて消えたように。

コミックス2ヶ月連続発売で2巻目。高橋しん先生の「雪にツバサ」です。
久しぶりの週刊連載ということで近年スローペースな高橋しん先生にしては珍しいスピードですね。好きな作家さんなので嬉しいですが、物語もちょこっとずつ動き出しました。
話すことができない少女と、気が弱いエスパー少年の、田舎町を舞台にした冒険?のお話。

喋れない少女とエスパー少年『雪にツバサ』1巻



雪先輩と一緒にやってきた温泉にて、予想外のハプニングが。
近隣の街から逃走してきた殺人犯とバッタリ出くわしてしまったのです。
襲われる雪先輩の声をテレパシーで直接脳で感じながら、彼は彼女を守るために恐ろしいほどの力を発揮。今まさに先輩を傷つけようとする男を、本気で殺してやろうとする。

本来ツバサの超能力は本当にちっぽけで、「せっかくのエスパー能力なのにショボい」ということも彼のコンプレックスの1つでした。
しかし雪先輩と関係した時にだけ彼の能力は増幅させられます。
そのことは1巻の時からわかっていましたが、今回で彼は初めて自分の力を恐れました。
その気になれば人を殺すことだってできると知ってしまった。
無事に先輩を守れたことよりも、人の命を脅かしたことが彼にとって大きな真実。この事が彼を混乱させ、一時的に雪先輩との心の距離をつくりだしてしまいもする。
少年が背負うにしてはあまりに大きな力。それに揺らいでしまうのも仕方無いか。

しかしこの事件でもう一つ気になったのは、明らかに雪先輩の様子がおかしくなったこと。
男に襲われたショックのせいか、彼女は錯乱したような状態になってしまうのですが
途端に「何か・・・・あったんかい」と平穏そうに言い放ち、記憶が飛んだことが伺えます。
そして「またユキといけないことするの?」「どうしてユキにこんなことするの?」など、明らかに不穏な発言も飛び出す。
彼女は町じゃヤリマンと呼ばれてしまっている(喋れないのでガラの悪い男達にいいようにされていた様子)のですが、やはり性的なことで相当なトラウマを抱えているんでしょうか・・・。
生々しく暗い過去をイメージさせつつ、全貌はまだ漠然としています。
後々明かされることになるでしょうが・・・・高橋しん先生は優しい絵柄でエグいことやってくるのでなんだか怖いですなあ。
記憶を一時的になくしてしまうようになってるのも、彼女が心に深い傷を負ったことがあるからこその心の逃避行動の一種とすれば・・・、なんだかヘビーな予感。
でもこういう「痛み」を確かに潜めた物語だからこそ、切ない雰囲気がより色濃くなり、自分はムホムホ喜んでしまうのです。降り注ぐ雪と白い息が揺らめくこの世界観は、見てるだけで胸がざわつく。



2巻は殺人犯関連の序盤が強烈なインパクトを与えますが、後半からは新展開。
今度は雪先輩の学校の舞台に『超能力探偵団』(雪先輩命名)の2人は活動します。
行方不明になったアルトサックスを超能力で探しだそうとしますが・・・
しかしそこでも色々一悶着ありそうな、重い事実が出てきそうな。

ツバサ1

さて、このエピソード中に何気なく出てきたこのセリフが印象的でした。
雪先輩は喋れない女の子。ですから、なるほど、彼女は楽器を使っての「音」でしか自分の口から何かを伝えることはできないのか。
この連載では1巻のオープニングや表紙イラスト等に、印象的な形で楽器が登場するのですが、雪先輩が喋れないのと楽器が繋がるということに発想がいってなかったのでハッとしました。
意識してみればなるほど、彼女が楽器を吹くときの表情はなかなか深い。

ツバサ2

言葉で伝えられないからこそ、音で何かを届けられるように。
その姿や表情はちょっと神聖なほど。感情を込めていることがわかるような。
そして演奏は、誰かと一緒の舞台に立つための武器のようなものでもある。
しかし彼女と同じ部活の面々はちょっと雪先輩と距離をおいているようなこともわかります。雪先輩がたくさん笑顔になれるような居心地いい世界になるためには、雪の理解者がもっと必要なんですけどねえ。なかなか難しい。せめて部活の女の子たちには友達になってほしいなぁと思いますが、さてどうなるやら。



そんな2巻でした。
気になるといえば他にもう一点、2巻でいう第2話で登場した「雪だるま」の女性。
ゲストキャラ的な感じでしたが、伏線のようなものも張られたので、じきにまた登場することでしょう。しかしツバサはなにげに美人なお姉さんと遭遇してはフラグ立ててますな。
まだまだ続刊が出ていきそうな感じですし、続きを楽しみにするとします。
淡い恋と、チクチク胸が痛むような切なさが共にある、雪の町の物語。
主人公の変化が今後の展開のカギを握りそうですね。

『雪にツバサ』2巻 ・・・・・・・・・★★★☆
話が動いた第2巻。相変わらず雰囲気の良さは抜群。女性キャラもかわいいです。

[漫画]新たなダメ少女、登場。『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』1巻

私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(1) (ガンガンコミックスONLINE)私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(1) (ガンガンコミックスONLINE)
(2012/01/21)
谷川 ニコ

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   せいぜいカス同士でベタな青春でも送ってくださいよ

タイトルながっ。「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」1巻です。
ガンガンオンインで読んでいたときから単行本化を待っていたわけですが来ましたね。
タイトルからして自分がモテない理由を「お前ら」にブン投げてる、この目付きの悪い女の子・黒木智子が主人公の本作。ボッチな女子高生のイタい毎日を描いたギャグ漫画となっています。
オビには「海外の2ちゃん的な掲示板で大人気!!」とありましたが、つまりそれって4・・・。人気あったんですか。というかそれ宣伝文句なのかw面白いですけどw



人と上手くコミュニケーションをとることができず、しゃべることができなかったりどもってしまったり。モテようと努力してみてもオーバーすぎて引かれてしまったり。
そんな女の子が主人公の黒木智子。高校生活のスタートを目前に控えています。
オープニングではインターネットで「喪女」と検索し、「私は違う」といきなりの豪語。
そう、彼女はなぜだか自信だけはたっぷりあるのです。心は強い。

wm2.jpg

自分のことも他人のことも勘違いしまくってる彼女ですが、根本的な部分では意味不明にポジティブ。もしかしてコイツ私のこと好きなんじゃ・・・?と妄想だけ暴走させる。
でも案の定友達はいない・・・。
ギャグとして様々な出来事が起こりますが、そのどれを通じても伝わってくるのは彼女の残念さばかり。でも完全にバカには出来ない、このうっすらとしたシンクロ感はなんだろう・・・
まぁいつもかわいそうな目にあってるのにまだ強くあれる彼女は、それはそれで凄いのだ。

この作品は基本的に主人公の智子の独白を中心として進行していくのですが
彼女がちょっと・・・歪んだ性格をしているため、彼女のもつ雰囲気がダイレクトに読んでいる自分のところにやってきます。そこが面白くもあり、人を選ぶかもしれない点でしょうか。
かなりインパクトがあるんですよ、黒木冴子というキャラクターは。
まず基本的にいつも口が悪いです。発想も歪んでますし、可愛げない下ネタもバンバン。
そして友達はいないのに、周りのリア充な学生たちをやたらと見下しています。
でもなんとかモテたいので色々ファッションを試してみたりしてる。矛盾してるような・・・。
で、なぜだかプライドは高い。これだけの現実をつきつけられてなお・・・。
学校では挙動不審、部屋にいればPCゲームをプレイしたり、マニアックなドラマCDを聴いてホコホコしていたり。乙女向けも腐向けもどっちも行けるらしい彼女ですが、第1話で披露された彼女のゲームプレイ中のツボすぎます。

wm3.jpg

眼つきわっる!
腐ったような目で無心に男の裸体をツツキまくる智子!
これじゃ全然ヘブン状態じゃないよ!いや、ヘブン状態は確かにゲームキャラですけど!
しかもこのあと「チッ」と悪態ついてゲームを放り投げる。楽しくプレイして欲しい・・・。
でもたまにゲームのシナリオがドツボにハマったり、ドラマCDにドキドキしてる時なんかは、すごくキラキラする。己の趣味に生き満喫する女の子というのは、これはこれで。

たしかにお世辞にもかわいくはない彼女ですが、時折なぜだかかわいく感じてしまう。
人と接することに不慣れで、一挙一動イタイタしいキャラクターなのですが
そんな彼女がふといつもの濁りきった表情を変えてくれる一瞬。惹かれます。

wm1.jpg

例えば乙女ゲーでメチャクチャ盛り上がってる瞬間だったり、このシーンみたいに現実でなにか始まりそうなイベントに出くわした時だったり。
そういう時の彼女はいつもの負のオーラもなく、なんだか純粋そうに見えるのです。
まぁ色々口でヒドいこと言ってても、やっぱり彼女は女の子なわけで。だいぶベクトルを間違えていますが青春の只中を生きている・・・はずなのです。
つまり浮かれちゃう女の子ってのはかわいいなあと!



とにもかくにも、主人公の女の子のキャラクターの強烈さが作品の魅力です。
彼女を気に入れば好きな作品になるでしょうけど、なかなかクセが強い気がするなぁw
上昇志向というか、自分を変えたいとい意思は持っているようなのだけれども、それがうまく結果を出せないのがいつものパターン。これからも頑張ってから回ってください智子。
お前がモテないのはどう考えてもお前が悪い。
根本的にバカだし、なのになぜか自信家だし、ゲロ吐くし、眼つきが悪いし、雰囲気がドロドロしてるし、下品だし、コミュ力低いし、不器用だし、・・・でもそこがかわいくもある。
モテない系少女の悶々とした欲求もそこかしても描かれている作品であり、ギャグとして笑うこともできれば、なんだかドキドキと楽しめてしまったりもするんですよね。
2巻は夏ごろに発売予定とのこと。甘くない、苦く酸っぱいだけの、でも時々ドキドキもする青春の日々。この残念な女の子は、見守っていたくなる何かがあります。

『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』 ・・・・・・・・・・★★★☆
残念なヒロインというのは流行りの1つみたいですが、これは残念すぎる・・・。でもかわいい。

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ブログを引っ越しました。 当ブログは更新を停止し、新ブログにて更新をしています。 https://sazanami233.hatenablog.com/

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漣

Author:漣
「さざなみ」と読みます。
漫画と邦ロックとゲーム。
好きなのは思春期とかラブコメとか終末。

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