[漫画]男子高校生…魔法少女…?『妄想奇行―Adolescence Avatar』
妄想奇行―Adolescence Avatar (電撃コミックス) (2012/01/27) 森山 大輔 商品詳細を見る |
外道はまとめて爆砕しちゃうゾ☆
森山大輔先生が電撃大王GENESISで連載していたものがついに単行本化。
「妄想奇行―Adolescence Avatar」は全1巻に収まった読みやすい作品です。
森山大輔先生は「クロノクルセイド」「ワールドエンブリオ」等に、結構シリアス色の強いストーリー漫画をメインに執筆する作家ですが、本作は突き抜けて明るいコメディです。
過去の単行本でも1番、いろんな意味でぶっ飛んだ作品になっているんじゃないかなとw
メインテーマはずばり厨二病!
人によっては心がチクチクと刺激される内容でしょうw 厨二病で学校を守れ!
主人公・有理はオタクであることを隠していた男子高校生。
彼が住むこの街には不思議な力があるらしく、それが困った事態を引き起こします。
ある日有理がいつものように自作ラノベの執筆に勤しんでいたら、それが原因で3年生の雪見先輩と出会い、勘違いから彼の悶々とした妄想が学校中にバラまかれてしまいます。
バラまかれた妄想は街の力でなんと実体化!そして人々を襲いだすのです。
これは困ったぞ!こうなったら変身だ!わるい化け物たちをなんとかしなくちゃ!
オリジナル魔法少女・ヒルデちゃんになって、敵をやっつけるんだ!
男子高校生魔法少女、誕生の瞬間です!
・・・いやいやいやウワアアアアアアアアア完全に羞恥プレイだよおおおおおお!なにが「ヒルダの歌声聞かせてあげる!外道はまとめて爆砕しちゃうゾ☆」だよつらい・・・・!
ぼくのかんがえた最強にかわいい魔法少女ヒルデちゃんということですか。ウオオオオオ
こんな風に物語は、恥ずかしさに我慢できなくなりそうな感じで幕を開けてしまいます。
有理くんは学校中にバラまかれた自らの妄想の化け物たちを、自作小説「ヴァルキリア無双ヒルデ☆ぶれいく」のヒロイン・ヒルデちゃんに変身して退治していかなければならないのです。
それって要するに自作自演のような・・・!色々とノリノリでやっちゃうのが更にイタイ。
なんとバトル中に歌が流れだす!もちろん自作である。
ラノベ書き上げる前にアニメ化の妄想までしてたのかこいつはうおおおおヤメテエエエエエエ。中高時代に有理みたいなことした人にとっては、心に何かもにょもにょしたのがガンガンやって来る!
基本的にずーっとこんなふうに厨二病を逆手にとったネタが続きます。
有理とはまた違ったタイプの厨二病を患った女の子も登場し、集団となってみんなで恥部を晒しまくるというなんとも頭のイタい内容となっています。
もうね、設定だけムダに作りこんだ完成してない自作ラノベとか、テイルズの技名っぽく字面だけカッコよくて意味はさっぱり分からない必殺技とか、憧れの自分になりきって自己陶酔とかいちいち鋭い。こんな共感したくなかったよと思ってしまうシーンがあちこちにあります。
そんなネタが非常にテンポよく繰り出され、コメディとしてなかなかに面白い!
色々とツッコミつつ、時折なにか心痛めつつ楽しめてしまう作品なのです。
しかし時折空気が変わるシーンがあり、とくに後編は印象的でした。
厨二病をテーマにした作品だけに、基本的にリア充ではない学生たちが主人公です。
たまにバカにされたり、蔑まれたりもする彼らのフラストレーション。そんな心の傷跡が描かれていて、厨二病をネタにした「コメディ」だけでない一面を見せてくるのです。
有理と同じく厨二病で変身もできてしまう女の子、華ちゃん。自分のお気に入りですが、彼女も現実に不満を感じているうちの1人です。
しかしそんな厨二病であることを楽しみつつ、ある意味コンプレックスでもある彼らに、ヒルデちゃんは勇気を与えてくれるのです。それが本作の最終話。
あの印象的な展開から、真正面から厨二病を肯定するのがこの作品なんだなと思います。
その力強い主張は読んでる自分も熱くしてくれましたよ。
現実で青春を謳歌することを拒否しているように見えた華ちゃんも、ラストでは自分から有理に腕をからめたりしてる。彼女の変化は著しかったです。華ちゃんかわいいなああああ!本気ではなくいたずらなだけだとしても、そうやってはしゃげることがどれだけ大きいことか。
単純にコメディとしても面白いのですが、厨二病の面白いところとちょっとズキンとくる部分を両面的に描き、それまるごと「素敵なものじゃないか」と後押しをする、そんな内容です。
あとがきを見るに、森山先生も過去の傷をほじくりかえしながら執筆していたようですが、こういう熱いメッセージを厨二病に投げかけてくれる作品を描くのは流石という感じですね。だってクロノのワンブリも厨2全開じゃないですか!そこが大好きなんですよもちろん。嬉しくなります。
絵の質も高く、ヒルデちゃんのバトルシーンにはいちいちほっこりしてました。
全1巻と読みやすく、ちゃんとまとまっていますので、手軽にお手にとって見てはどうでしょう。
開き直って厨二病を考え、見つめてみる面白さ。好きなものはとことん楽しもう!
『妄想奇行―Adolescence Avatar』 ・・・・・・・・・・・★★★☆
厨二病だっていいじゃない。魔法少女になってしまった男の子が送る、勇気と恥辱の物語。
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