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マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[漫画]♀→♂の性転換SFラブストーリー『少女恋愛変異』1巻

少女恋愛変異 1 (少年サンデーコミックス)少女恋愛変異 1 (少年サンデーコミックス)
(2012/11/16)
大月 悠祐子

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   ありすの指……太くてゴツゴツしてる。

大月悠祐子さんの新作「少女恋愛変異」1巻が出ました。
WEB雑誌、クラブサンデーにて配信されている作品です。
近年の大月先生は、「妄想少年観測少女」やら楽園で新たにはじまった「彼女達の最終定理」やら、過激な作品が多い印象。まぁ妄想少年~から読み出したんですけどね俺!
今回の「少女恋愛変異」も大月先生らしさは発揮されています。でも少年漫画としての魅力もあって、なかなかに新鮮。そしてやっぱり、ニヤニヤできる!
クラブサンデーの公式から第1話と最新2話が読めます。気になったらチェックしてみては。



舞台は女だらけになった日本。人間はみな女として生まれてくる。
女が成長すると、ごく低い確立でのみ、男に性転換する。
男は1人の女を選んで、結ばれた2人は「EDEN」というこの世の楽園に行ける・・・らしい。

そんな世界の中、2人の仲良し少女が主人公です。
おっとり大人しい子、ありす。男勝りなボーイッシュな子、桃香。
桃香は自分が男になって、ありすとEDENに行くことを目指す。
しかしそんな桃香に魔の手が迫る。その時ありすは・・・!といったストーリー。

少女恋愛2

最初は百合ん百合んしていますが、予想通りに片方が変異してしまうので、この光景はほぼ1話限りのものに・・・。でも2話以降も十分にニヤニヤさせてくれますよ。

女しか生まれてこない。女が男に変異する。これだけで興味をそそられるストーリー。
しかもこれがまた主人公の少年は普通にカッコいい活躍をしてくれる。
ヒネった設定ですが、少年漫画らしい勢いの良さもあるのです。

少女恋愛3

完全にイケメン化。守られていたはずが、守るために「俺のパートナーになれ」とかドヤ顔で言えちゃう男の子になってしまったでござるの巻。
あー少年漫画らしいというか、それは2人の主人公の視点を切り替えれば少女漫画らしいということにもなるのかな。桃香からすれば守られて言い寄られてびっくり。攻守逆転はステキシチュだよ!
ボーイッシュな子が稀に見せる女らしい一面にトキメくってのは、至って自然なことさ!



しかしありすちゃんは・・・いやありす君の変化ぶりはすごい。
元は女の子だったのに、その頃の名残はこれっぽっちも残していないのが清々しく楽しくもあり、寂しくもあり・・・。あの気の弱い女の子がよくもこんな豪快な少年に変異するもんだ・・・。
作中登場した、あのいけすかない男を見ても、ありすの倫理観は歪んでいなくて安心する。というか変異した男が最初からあんなゲスくなることもないだろう。
男というだけでチヤホヤされて、女を好きなように選べて、傲慢な態度も許されて、どんどんとあんな感じのクソ男が出来上がっていくのだろう。

じゃあここから、特徴的なこの舞台について書いてみようかな。
まず「EDEN」って何よって話ですよ。
この世のどこかにある楽園。それを目指すために、女たちは男を求める。
でも女たちも「EDENに行きたい!」というだけで男に群がっているわけでもなさそう。
この世界は「恋」を知らない。大多数は夢のように思い描くものだ。
この作品で描かれる世界は、盲目的に男女の愛に飢えている。
国民総恋する乙女。これはこれですげえ世の中だ。
それで女を好き勝手に使う男が許容されてるあたり、本当に盲目的になってしまっていて、その痛ましさは結構胸を刺激してくるものでもある。
「幸せになりたい」というなんとなくな気持ちが、EDENを求めさせているんだろう。

EDENに行きたいから恋に憧れるのか。それとも純粋に恋に恋しているのか。
どちらが、というわけでもなくこの2つが織り交ざって少女たちを悶々とさせているようだ。
こんな世の中なら、やはり男があんな人間になってしまうのもムリない。それだけじゃなく、男という存在がとてもイヤなものに思えて、個人的には結構どぎついこと描くなーと思った。
けっこう気味の悪い、怖い世の中だなーと感じるのは、きっと作者の意図通りなのだろう。男の人となりはまったく見られないかなねぇ。贅沢にみえて、その実息苦しいもののように見える。

しかし結ばれた2人のみが行ける「EDEN」って、そもそもどんなモノなのか。
漠然としすぎて、なにか仕掛けや裏がありますよねえ。実際はどんなのやら・・・。
思う存分に人間として原始的に愛し合える場・・・とかならいいんだけど
「EDEN」という幻想を抱かせる教育をさせて、結ばれた男女のカップルは子作りさせまくる機関にさせられる・・・とか怖いねえ。狂気。
だって女しか生まれてこない、試験管から子を成す社会って、不健康すぎる。
だからこそ、そうじゃない方法で子を作る方法がロマン化するのもムリはないのかなぁ。
「EDEN」の正体もきっとこの先、物語の核心として描かれるのでは。
単に変化球チックな恋愛漫画だけじゃない、SFとしてもゾクゾクさせてくれそう。楽しみですよこれは・・・!



あとは桃香の今度が気になるところ。
男になってありすを幸せにする、ってことに意識を向けて成長してきた女の子なので
「男になったありすに選んでもらってEDENに行く」というシナリオにすぐに気持ちを移せていない様子。というか桃香が好きだったのは、女だったありすだったっぽいな。
ありすの記憶喪失もあるし、男女になったところで素直にくっつかない2人だ。
この2人が作品のメインキャラなので、どういう関係性を紡いでいくか、注目したいです。

本編も面白いのですが、個人的に単行本オマケの4コマ漫画がとても面白かった!
巻末だけでもかなりあるのに、カバー折り返し、カバーを外した本体表紙にと、たくさんオマケ漫画があってそれだけでも大満足。内容もすごくいいんだこれが。

少女恋愛1

女から男に変異。女だったころの記憶は失ったありす君。
性転換したがゆえの悩みやら楽しみやらいろいろ描かれてますw
かなりあけすけにエロい4コマもあり、笑顔がとまらんな!
本編が拾いきれなかったピースを細かに拾っている感じで、さらに作品愛も深まる内容。

まだまだウラがありそうなSF設定が面白く、性転換してからのラブコメ模様も素敵。
そして前も大月作品の感想でかいたけれど、自分はこの作家さんの、時々えげつないくらいに鋭く人間を追い込んでくる漫画が大好きで。少年漫画というフィールドでどうこの面白い設定で物語を仕上げていくのか、とても楽しみです。
1つ惜しいのは、女だったころの記憶をなくしてしまうので、男の身体を手に入れたときの興奮やら感動やらが本人にないことだよ!TSモノとしてはそこで慌てる姿も見たかった・・・!

『少女恋愛変異』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
オマケも充実。大月先生の新シリーズはドキドキの性転換SFラブストーリーです。
あとボーイッシュな子に女としての一面を出させるのって、いいね。ハイ。

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「さざなみ」と読みます。
漫画と邦ロックとゲーム。
好きなのは思春期とかラブコメとか終末。

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