[漫画]さぁ、私達の恋を始めましょう。『名前はまだ無い』
名前はまだない (百合姫コミックス) (2013/04/18) かずま こを 商品詳細を見る |
それじゃあ 恋しようか
かずまこを先生の百合姫コミックス3冊め、「名前はまだない」の感想。
女の子の女の子の眩しく愛おしい一瞬をきりとった、爽やかなガールズラブ作品です。
どこか切なげな感触はあっても、基本ハッピーに胸暖まるストーリーが集まっています。はぁ。もう、何も言えない。ため息しかでてきませんよ、この可愛らしさ。この余韻。
ピュアで軽やかで、ギュッとこちらの心を掴んできますよ!
楽園でやってる「ディアティア」シリーズを好きになって、かずまこをさんの百合漫画を読むようになりましたが…いやぁこれはいいものだ。
もちろん百合姫コミックスなので、女性同士の恋愛ばかりの一冊です。
表紙も素晴らしいのです。作りのしっかりとしたオビと、表紙本体、として単行本最初のカラー口絵の3コンボがバッチリ決まる!
全3話からなる表題作「名前はまだない」のほか、一話完結の短編4つ、前の作品の番外編1つを収録。せっかくなので個別に感想書いていきます。どれも良かった!
15ページもない短編が大半ですが、短いページだからこそ一気に沸騰するようなスピード感もある。けれど空気感の演出も絶妙で、あとひく余韻にも舌鼓。
●3秒ルール
トップバッターにしていきなり凄まじくときめかせてくれる短編。
持ち時間は3秒。言葉に詰まったほうが負け。
そんなルールをこっそり心に秘めてはじまる、2人の恥ずかしい恋のお話。
「だったら私を付き合いませんか」
の唐突な一言を投げかけて、さて負けてしまうのはどちらかな。
たった11ページの短編。しかし3カウントで会話が進行していく演出と、最後に待ち受けるお見事としか言い様がない赤面に悶絶!!
告白をした後の、ふわふわと不安定で甘酸っぱい空間がたまりませんな。
「それじゃあ恋しようか」の決め台詞で華麗に〆るのもよかった。
●uracoi
いつもしかめっ面。そのせいか「殿」なんてアダ名をついた女の子・遠野さん。
そんな彼女に決死の覚悟の告白をされた主人公の、これまたニヤニヤできる短編。というかこの漫画全部まるごとニヤニヤ漫画ばっかりですからね…。
告白の返事をもらえず不安でそわそわして、悲しげな表情まで見せちゃう。告白されてどう応えればいいのかわからない。2人揃って不器用な感じで、おっかなびっくり近づいていく感じがイイ。
遠野さんのしかめっ面が徐々に崩れていくを見て、布団で転げまわった。照れた表情がかわいすぎる……!!
●恋はお静かに
頭をぶつけたら、密かに好きなあの娘の心の声みたいな幻聴が聞こえるようなる。
実は両思いでした…みたいな都合のいい、妄想全開な幻聴。でもそれは実は!みたいなアレでコレでニヤニヤでございます。
「恋はお静かに」なんてきっとムリな話。心の鼓動が鳴り止まない。
けれど今はまだ秘密にしていたい。好きだってことも、赤くなった顔の意味も、ドキドキを抑えようと必死になってるのも、あの娘にだけには秘密に。
2人が慌てぶりがまーーーかわいいんだ。急激に近づいていく過程!最後には耳まで真っ赤にしちゃう!クライマックスの逆転で変な声出たわ!!大のお気に入り!
心がバレてしまったら困る。「今日だけは、あの娘のことを考えずに過ごさなきゃ!」なんて誓うわけですが、そんなの無理でしょわかってます!
●消し去る恋と願い事
そういえばあったなぁ。消しゴムに願い事を書いて使いきろうっておまじない。
一回なんか書いて、でも途中でその消しゴムなくした記憶しかない…。
まぁそれはともかく、この短編は消しゴムのおまじないで展開する、本作では唯一のややビターテイストな作品。切ない…。
今にも離れ離れになってしまいそうな、その間際の勇気は、幸せな未来をつかめただろうか。彼女たちの未来に幸福を想像して、自分だけちょっと救われた気分になったりしました。ハッキリとした結論を見せないのが、味わい深かったです。おまじないの効果、出るといいよな。
●名前はまだない
表題作。タイトルがお洒落だし、意味深くてカッコいいです。
私はあなたから名前を呼ばれない。名前はまだない。
ちょっと小悪魔っぽい女の子が、1人でいるのが静かな女の子にアタックを仕掛けていくお話。戦略的に、気まぐれみたいに、簡単にキスをする。このちょっと奔放な感じがいいなー!
いきなりキスして相手を観察してるシーンとか「こ、この女!」感ヤバい。
でもこういうのが、なんだろうか、女の子の深い部分を覗けたような気持ちになれて、ある種の感動があったりする。
他の短編よりもぐっとじっくり関係を深めていく様子が印象的。
これこそ個人的には余韻が素晴らしいなと思った作品。「このわくわくと切ない気持ち」に名前をつけないんですよね。貴女と私の関係にも、きっとまだ名前はまだない。友達以上恋人未満のそれに、きちんとした言葉なんてない。
間違いなく恋し合った2人。両思いをほぼ確信したような2人。
でも、まだ結論は出さない。今の関係の浮遊感を楽しみませんか、と無言で通じ合えているようなムードに、俺の心は鷲掴みです。恋は過程も楽しむのだ!
そして最初に描かれたものの時系列的にエピローグに位置づけられたエピソード「recalculation」も綺麗で気持ちを落ち着けてくれます。忘れてならない巻末描きおろし漫画も、破壊力たかいよ!!
2人とも、結構なクセモノなんだけど、結局似たもの同士なんだろうなと思う。
●匿名プロローグ
作者初コミックス「純水アドレッセンス」のキャラクターの番外編。なつかしい2人に再会できました。やっぱこの先生すげえいいキャラだなー!ちゃんと大人っぽくてでも子供っぽくて!うーわー!
そんな作品がズラーリな「名前はまだない」でした。
糖分多め、だけどそこにちょっぴりのスパイスも効かせてあります。
涼やかな風が感じられるような、全体的に爽やかな空気がたまりませんね。
青春モノとしての百合漫画、という色が強い気がしますね。淡くて気持ちがいいです。ディープな百合ではなく、優しい百合漫画でした。
この作家さんの漫画はどうにもツボらしいので、飼い続けていきたい所です。
『名前はまだない』 ・・・・・・・・・★★★★
爽やか優しいほんわか百合作品集。ときめかされますわ。
Comment
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
コメント返信
コメントありがとうございました。修正しました。ご丁寧にありがとうございました…!もっとよくチェックしておきます。
返信ありがとうございます
失礼な初コメントに返信までいただきありがとうございました。
たまたま辿り着いた漣様のブログでしたが、感想が具体的でわかりやすく、自分の好みとも近いようなのでとても参考になります。
私は既婚百合好き男子のため、少ないこずかいを有効活用するためにも(百合本は高いです…)これからは漣様のブログを参考にマンガの購入を検討したいと思います(笑)
今後とも更新楽しみにしています。
たまたま辿り着いた漣様のブログでしたが、感想が具体的でわかりやすく、自分の好みとも近いようなのでとても参考になります。
私は既婚百合好き男子のため、少ないこずかいを有効活用するためにも(百合本は高いです…)これからは漣様のブログを参考にマンガの購入を検討したいと思います(笑)
今後とも更新楽しみにしています。
コメントの投稿
Track Back
TB URL