[漫画]祝福を鳴らすのさ。『ハレルヤオーバードライブ!』9巻
ハレルヤオーバードライブ! 9 (ゲッサン少年サンデーコミックス) (2013/05/10) 高田 康太郎 商品詳細を見る |
ハレルヤ!!君に祝福を!!
恋と音楽は青春を彩るというものです。
キラキラ青春バンドストーリー「ハレルヤオーバードライブ!」第9巻感想。
絵も演出もどんどん進化してきていますね!
心地良い疾走感。音楽に触れること・生み出すことの幸福感に満ちた青春漫画ですわ。この作品のライブ回は本当に毎回カッコいいのです。演出とかコマ割りをうっとり眩しく見つめるのが大好き。けど今回はライブじゃなくても魅せられた。
さて9巻は、小雨たちが突破口を見出すまでのお話です。
バンドにおける必殺技…キラーチューンを作ることが今回のメイン。
前巻のラヴェンダーとの勝負の結果。そしてそこからの再出発。グングンと物語にうねりが感じられるようになってますね。本当にこの作品は前に進んでいっていると思う。
前巻 高まる僕の鼓動と、高まる君の鼓動が、『ハレルヤオーバードライブ!』8巻
「希望」は手が届かなくなった。手応えを掴めても結果がつかめなきゃ意味はない勝負だった…。
というわけで当然ふさぎこんじゃうティアドライブのメンバー。
そう、「希望」の曲は取り戻せなかった。
けれどそれで1番にショックを受けているはずのハルさんが笑顔を絶やさないのは、無理をしているだけじゃない。
あのライブを見て、確かにハルさんに想いが届いた。
そして、新しい「希望」を彼女は見つけられたのだ。
それがティアドライブ。後輩が見せたステージの上の予測不能の化学反応。まばゆいエネルギー。その熱量を確かに受け取ったから、きっとハルさんはこんなに嬉しそうなんだ。
希望を失ったらなら、新しい希望を見つけよう。作ってしまおう。
道を切り開く希望の音楽を奏でよう。
誰かを救う音楽。救うというのは大げさかもしれないけれど、心を支える優しくて強いメッセージを曲にしたいっていう思いは、多分この場面から形になったんだと思う。
「祝福」は9巻のテーマでもあるのでは。
ってなわけで新曲作りに力を注いでいくティアドライブ。
今回の表紙になっている九森弟と若葉ちゃんは、デートっぽいイベントをこなして絆を深めつつ、新曲のアイデア出しを進める。
普通に買い物してるだけじゃうまく会話が続かなかった2人。けれどスタジオに入って楽器を手にしてからはスムーズにコミュニケーションがとれているのがいいですねえ。
おしゃべり好きというわけではないこの2人にとっては、音楽こそ代えがたい交流ツールなんだな。自然にゆっくりと距離を縮めている2人には胸がホッコリしますよ!
無理やりに振り絞った不器用な言葉を投げかけ合うより
曲を通じて音を重ねたり主張しあったり、思いがけない返しを楽しんだり
音楽という変幻自在のコミュニケーションで、2人は本当に楽しそうです。
ウニ子こと若葉ちゃんは、本当に謙虚というか後方支援キャラだなぁ。
でも第45話「Brother Sun Sister Moon」の彼女は頑張っていた。
「冬夜くんが何か決めて一歩進む時は…私が背中押したげるって……」
なんてさ。あなたが頑張るときは私が支えてあげるからって言ってるようなもんですよ。取りようによってはすごいいい告白じゃないですか。でもこの2人はまだラブコメ展開には行きそうになくて、それは今後のお楽しみだろうか。
いつもがあんなにオドオドしているのに、いざ演奏してみれば
ギターのプレイスタイルは結構ハデっていうのが面白いよな。
あと私服の若葉、クセ毛を隠すために大きめな帽子がとても可愛い…!
この娘はオシャレ帽子がなかなか様になる気がする。
若葉ちゃんもいい。ハル先輩もかわいい。だが俺は麗ちゃん派だッ!
相変わらず麗はかわいいなぁーあ。小雨との絆もさらに深まってきてると思う。何気ない日常のワンシーンだけど、こんなふうにいきなり乗っかってマッサージする娘だったんだねぇってとても微笑ましたかったです。
7,8巻がすばらしき麗巻だった反動で、今回はやや影薄かったですけどね…。
ハル先輩に尋ねられて、「好きな人は…います!!」と小雨がこたえた時、盛大に「かっはー!」て吹き出してる麗がかわいかったですよね。ね。
しかしもう、今回でハル先輩は自分の恋心をほとんど自覚してしまったし、小雨-ハルの両思いラインが完成したようなものです。麗ちゃん…(´・ω・`)
しかしラブコメ的な盛り上がりと裏腹に、寂しい現実がつきつけられたりする。
夏休みも終わった。季節は進む。夏は秋になる。
もうすぐ、3年生は引退する。
分かっていたけれどここまでハッキリ言われてしまうと…ああ…淋しい…!
引退を見据えて感慨深さとより一層の情熱を燃やす三年生たち。頼もしくもカッコいいです。やはりいい先輩たちだったんだなと、改めて感じます。
次世代を担う後輩たちの成長を優しく見守りつつ、でもまだまだ鍛えなくちゃならん、という姿勢はカッコいいものです。
引退するのヤだなー。もっとメタりかの演奏いっぱい見たいし。あーでも。3年生の引退時にさみしんぼなタンポポちゃんがきっと泣いちゃうのシーンは早く見たいな!(ひどい
ある種のタイムリミットのようなものが見えて、物語に緊張感がましたのは当然のこと。もうすぐ終わってしまうこの輝かしい一時を大切にしようという、学生の部活ならではの感慨が生まれてとても甘酸っぱいのです。
9巻のキモはその最後のエピソードですよ。
思ったようにメロディを紡げない。新しい希望を作れない。前進ができない現状にいらだちを隠さない小雨は、アドバイスで楽器を持たずインスピレーションに身を任せろ(意訳)作戦に打って出る。
そこからの勢いは本当に素晴らしく、シリーズ通しても傑作と言える回だと思います。
ネームの妙というか、本当にリズムが聞こえてくるような高揚感に包まれていて凄く好きな流れでした。
まるで押し流されるように、けれどそれを味わう余裕を残しつつ、音楽の魔法に浸れる。最後のページの演出まで最高にカッコいい!!
小雨は感性のメロディメイカーなんだろう。
楽器をいじりながらよりスラスラと望んだ旋律が、それこそ小雨自信が追い切れないくらいに次から次へと沸き上がってくる。
小雨が思ったままに歌っていくメロディラインを拾い集め記憶し繰り返し、即興で演奏やコーラスを付け足していく。
それぞれが必死に、けれど喜びと充実感を覚えながら曲をかたちにしていく。緩やかに勢いがどんどん増していくこの感覚は凄いな。読んでいてとても幸せでしたよ。
考えてみれば金属理化学研究部の全員がいっしょに1つの曲を奏でたシーンを初めて見た。周囲を巻き込んで傍聴していく。小雨の「音楽の魔法」はこういう所もあるよな。
新たな希望は、まさに祝福。大切な人のための祝福。
その人の幸せな場面に寄り添う、心の中で自然と流れる。
演奏を終えたあと、メンバーが自然と笑みを浮かべながら言ったこのセリフが、まさにこの曲がどういうものかを表したものでもあると思います。
音楽を愛するすべての人に『ハレルヤ』と。祝福を鳴らすのさ。
そんな「ハレルヤオーバードライブ!」9巻でした。
ストーリー的には一休みの巻かなとおもいきや、どんどん物語は動くし演出は冴えるし人間関係の深まりも楽しいし、テンションあがりまくる一冊でしたよ!
とくに上で書いたコミックス最終話。この一話はそのまま一曲として考えられるような、気持ち良いリズムを感じる素晴らしい出来。
リターンマッチは次の10巻で描かれるのでしょう。一冊に収まるかは謎ですが、ここが大きな盛り上がりどころになることは間違いなし!
色んな要素が次の文化祭ライブに集められて、流れが見えますね。部活としての区切りとか、負けられない勝負とか、バンドとしての成長とか晴れ舞台とか。本当にワクワクしてきたなー!
恋愛と音楽の青春バンドストーリー。落ち着かずにどんどん熱くなってます。
『ハレルヤオーバードライブ!』9巻 ・・・・・・・・・・・★★★★
音楽の魔法は、そして祝福は、きっと彼らの道を照らすのだ。
今回の口絵(44話見開き扉絵)もカッコいいな。正面と背中合わせのループ構造。
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すごいな