[漫画]ブラックでサイケ。精神が病みそうな濃厚ダークファンタジー『世界鬼』1,2巻
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全部、私が殺る。
裏サンデーにて連載中の「世界鬼」の感想です。
1巻も読んでいましたが、この作品は2巻からキましたね!面白くなってきたー!
2巻まででプロローグなので、一気に感想を書こうと思います。
刺激的な作品が集められたWEBコミック誌「裏サンデー」ですが
この「世界鬼」は退廃的なムード漂う、サイケで濃ゆいダークバトルファンタジー。
設定として見れば異能バトル漫画とも捉えることができますが、その背景にある要素がブラックすぎて、全然ストレートな印象を受けませんね。
この澱み、歪み、負のエネルギーが充満している様子に打ちのめされる。
サイケな世界観はそのまま世界に引きずり込まれそうな気味の悪さ!
決して気持ちがいい作品ではありませんが、確かに心揺さぶられるパワーがあります。
気が滅入ります。どんどん落ち込みます。でもそれが突き詰められて、面白くなる。
作品紹介には裏サンデーの公式と、あといいNaverまとめがあったので貼っておこう。
公式→http://urasunday.com/sekaioni/
NAVER→裏サンデー「世界鬼」の主人公が歪みすぎて人気
主人公、東雲あずまは中学2年の女の子。両親を失い親戚に預けられていますが、そこでは日常的に虐待を受けていました。しかも叔父からは性的暴力さえも。
希望の見えない日々に精神を病み、いつしか彼女はおかしな症状に悩まされます。
「鏡の国のアリス症候群」。
実在する病気の「不思議の国のアリス症候群」に似たそれは、症状として鏡の中に強烈な幻覚を見る。
あずまはしかし鏡の中の幻覚(文鳥)と仲良くしゃべったりしており、むしろ居場所のない現実からかけ離れた鏡の幻想に、ひとつの居場所を見つけていたりしています。
鏡のように何かを映すものなら、水面にも幻覚は見える。
その幻覚はあまりに突拍子もなくそして不気味で、現実に忍び寄る異物感がよく現れています。
「鏡の国のアリス症候群」を患う人間は、鏡の向こうの幻覚に向き合っています。
あるものは居場所として。あるものは忌避すべきものとして。
そんな「鏡の国のアリス症候群」罹患者(以下「アリス」)たちが、鏡の向こうの異世界に集められ、命をかけて怪物「世界鬼」と戦うことになります。
それはアリスたちだけでなく、世界をも破滅させる戦い。
この戦いのルールはだんだんと明かされていくのですが、いわゆる異能バトル的要素に加え、意地が悪すぎるエグいシステムに衝撃を受ける。
1巻はまるごとプロローグ、2巻の中盤でついに第一章スタートという具合ですが
このプロローグのラストが凄まじい。どうせならここまでを1巻にした方がよかったのでは、と思うくらいここから作品のテンションが変わってくる。それでいて光が見えてくる。
底の無い絶望は、ある日突然に希望へ変わる。
ここからが「世界鬼」の本番!暗すぎるけど続きを追いたくなる求心力の強いストーリー展開に、まさに釘付けになる!
ドロドロの絶望感と、躁鬱の躁状態のような異様にハイテンション。
頭イカれてるというか実際そんな感じのキャラクターばかりな本作ですが
主人公の東雲あずまに関してはとにかく引き込まれまくる。
序盤の、なにも救いがない暗黒っぷり。ただただ踏みにじられる少女。
あずまちゃんの境遇は本当に辛すぎて、直視することも時に嫌になるくらい。
がっつりと虐待描写。だからこそ、この漫画の展開は映えるんだよな……。
救いのない現実は、しかし逆転する。アリス病をあえて利用する形で。
世界鬼にとどめをさしたアリスは現実で大切な人を失う。
日常的にアリスに密接する生命が奪われる。
当然うろたえる他のアリスたち。もう戦いなんてできない。でも戦わなくては自分が死ぬ。世界が死ぬ。逃げ場のない残酷なルールがアリスたちを追い詰める。
しかしそのルールを理解した途端ににあずまは覚醒する。
殺意を武器に能力に買え、チェシャ鬼を瞬殺してみせた彼女は
無事、あずまを日頃から虐待していた叔父一家の一員を死なせるのです。
この展開で、いよいよ「世界鬼」という物語は本当のスタートを切りました。
漫画で読んでると、ヤバいですよ、このシーンの衝撃は。
彼女には大切な人などもはやいない。会いたい母も今や行方知れず。
だから彼女には、身近にいる死なせたくない人なんていなくて、むしろこの残酷なルールを逆手にとって殺してやりたい人間ばかり。
これが絶望が希望に変わった瞬間。
残酷なルールも、彼女にとっては生きる希望になったのです。
見事、ずっと自分を虐待してきた男を見事に死に至らしめた時のあずまちゃんがコチラ。
やべえ、満面の笑み!
ムカつく人間を殺したあずまちゃんの、見たこともない最高のキラキラ笑顔!
きたきたきた!どうしようもなくダークだけど面白くなってきた!
正直言うと、プロローグの内容全部を1巻に収めてくれれば、もっとよかったのになぁと。1巻でも面白かったですが、プロローグのラストの展開で本当にウオオオオ!っとテンション上がるので。
この作品は1,2巻一気読み推薦ですね……!
主人公だけでなくいろいろクセモノ揃いな「世界鬼」。
濃い奴らばかりなので、彼らがどう物語を動かしていくのかがとても楽しみですわ。
特に注目したいのはアリス病の女子高生、黒江稔。
彼女はとにかくセックスがしたいニンフォマニア。セックス依存症です。
2巻の途中からその本性を表し、シリアスなバトルを尻目に1人サカっている異次元空間を作り出していました。シュール……。
そして3月25日更新分の裏サンデー掲載話で、彼女のことが語られるのですが……
「はじまったな!!」と言わざるを得ない。ダメだコイツ!
もう殺す気マンマンの覚醒待ったなし状態!!この最新話は、内容を全く知らない人でも見る価値ありそうな衝撃回なので、気になったらぜひ!ヤバいよ!セックスセックスだよ!オゲェ!→3/25更新分
あとなにげにお気に入り元自衛官のヤク中男が面白カッコいいんですよ。
ガンギマリのトリッパーなんですけど、時々ちゃんとカッコいいんです。時々。
頼れる大人でありながら間違いなく見習えないクズ野郎っぷり隣り合わせw
「私とセックスしませんか!?」
「シャブセックスはいいぞお」
なんだよこれはww
ドがつくシリアス漫画ですが、時折くだけたシーンが入るので不意をつかれて笑うw
そして気になるのが『鏡の向こうの怪物・世界鬼はどういう存在なのか』という疑問。
生物ではあるのですが、どういう意識で存在しているものなんだろうか。
もしかしてアリス病を極めすぎて、鏡の世界の住人となったアリス病患者の成れの果て、とかだろうか。などと妄想は膨らみます。鏡のむこうからの侵略者ですからね。
そして、親密な人間が代わりに死ぬ、この作品のキーとなるというルール。
これが今のところはあずまにとってプラスに働いていますが……
そのうち、きっと彼女が願っていなかった人を失う展開とか来るんじゃないかと、ヒヤヒヤ。
続きが気になる漫画なので、この先どうなるかの考察もはかどるというものです。
もとはWEB漫画で公開されていたらしいのですが、自分はそちら完全未読なもので。
というわけで「世界鬼」1,2巻の感想でした。
どんよりとした息苦しい作風と、救いのない舞台・設定。これは万人受けしねーよなーと思いつつ、でも多くの人に読んでもらいたい独特の鋭さ。
そしてさっきにも言いましたが、この作品の面白さは2巻から本領発揮です。ぜひ。
裏サンデーで2巻収録分の直後から読めるので、単行本派も嬉しいですし
普通にがっつり第一話から試し読みできる意味でもいいですな。
画力という面ではまだ発展途上な、もうちょい厚みがある絵が欲しいなと思う箇所はありますが、この作品ならではの気持ち悪さは存分に振るわれており、これはこれで全然アリ。
どう転ぶかわからない、続きが気になりまくるタイプの漫画なので、今後はちゃんとWEB連載でおっていこうかな。
独特のセンスが光るダークファンタジー。ハッピーエンドなんて見つかるのか?
『世界鬼』1,2巻 ・・・・・・・・・★★★☆
よむなら2巻まで一気読み推奨で。心にガツンと衝撃を与える、暗く重い漫画。
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