[漫画]淡い日に僕らは揺れた。『BUTTER!!!』6巻
BUTTER!!!(6)<完> (BUTTER!!! (6)) (2013/05/23) ヤマシタ トモコ 商品詳細を見る |
あ 手 が 熱い っていうか 痺れて 痛い
最高に愛おしくてキラッキラの漫画だったなと思う。
社交ダンスに情熱を燃やす高校生たちの青春を描いた、ヤマシタトコモ先生の長編シリーズ「BUTTER!!!」がついに完結しました。
てっきりまだまだ続いていくように思っていて、完結とアナウンスされた時にはビックリしました。けれどこうして単行本で読んでみると、たしかにここ以外あるのかってくらい綺麗なタイミングだった。
もっと読みたかったなというのが本音ではある。
でもだらだら続けるよりも潔さを見せてくれましたね。
この作品のどういう所に萌えていたのかってのは、これまでの「BUTTER!!!」感想記事で何度も何度も書いてきました。でも最終巻もやっぱり書いちゃう。だってかわいいんだもの。
彼らは本当にただの高校生だった。
期待しすぎたり、やる気がでなかったり、すぐにヘコんだり心折れたり、素直になれなかったり傷つけてしまったり。
なんでもっと上手くできないかな。なんて生意気なことを思う時もあったけれど、そういう生意気な目線で彼らを見つめることができたことも面白みだった。
この作品って「お似合いの2人」ってのが少なかったように思う。個人的には。最初から波長が合うような、最初から決まっていたようなパートナー関係ではなかった感じ。
でもそんな危なっかしさが本当にかわいらしかった。アンバランスなのに響きあえるというか。
つまり「危うさ」が本作の萌えの根源にある!
ヨネコちゃんと早川くんはピッタリだと思うがw
等身大の情熱と挫折が織り込まれた物語。
チグハグで、アンバランスで、コントロールがとれていない。
心も人との関係も、学生というまだまだ未熟な時代の色がくっきりと作品に映り込んでいて、まさに「青春物語」でした。
悩んでくじけて立ち上がって戦って笑いあう。いろんな経験が人を成長させる。経験がダンスをきっと美しくする。作中でのラストダンスは、まさに彼らの集大成とも言える満足度の高さで、魅せつけてくれました。
これまでの感想記事。
回って溶けて1つになって『BUTTER!!!』1巻
ざわめく心。ダンスで味わう青春の苦味と感動!『BUTTER!!!』2巻
苦しくても逃げたくても、立ち向かわなきゃ。『BUTTER!!!』3巻
全力でケンカして、全力で踊ろう。青春してるんだろ!『BUTTER!!!』4巻
きみに失望されるのだけは、いやだから『BUTTER!!!』5巻
好きなシーンについて書いていこうかな。
といっても好きなシーンっていっぱい、いっぱいあるのです。
端場くんは、6巻でちゃんと動ける少年になったんだなと特に実感。
最初のころと読み比べるとえらい違いである。気持ちがいい。
端場くんが自分の意見で他の部活メンバーを盛り上げる場面とか
もうすっかり掛井くんと小突きあえる仲になってたりとか。
カッコよく踊りたいって欲を抑えきれなくなっている。
今回なんて我を忘れて暴走して教室乗り込んだりしちゃうしな。
その暴走は、どれだけこの部活のことを大切に思ってるかの裏付けでもあって、ああなんて格好いい成長をしたんだ端場くん!と感動を禁じ得ない。
でも本人はまだまだ「変わりたい」「成長したい」ってもがいている。
コミュ症だった少年が外の世界と自意識と戦っていくその姿。
華なんてこれぽちもない男の子だけど、日陰者としての卑屈さを持ちつつ輝きだした端場君。
いわれのない悪意を向けられ、滅茶苦茶にヘコむ夏ちゃんも印象深い。
このタイプの「悪意」を達観して受け止めることができるような太いメンタルの高校生は滅多にいないだろうけれど、特に夏は身がすくむほど「悪意」におびえてしまう。打たれ弱いんだよなぁ。それを責めるわけではないし、むしろそこが彼女の人間性の可愛い所でもあると思う。
注目を浴びたくない。笑われたくない。傷つけられたくない。こわい。
動画サイトに晒して貶す、悪質ないたずら関連の話は、全くもってスッキリしなかった。同じアフタの「ハックス」を少し思い出したりしたけれど、こういうのは単純な怒りとはまた違うやるせなさみたいなのも混じって、うまく気持ちの整理がつかない。
でもここで救ってくれるのは、先生たちの対応。
「怒ってくれる大人」というのは、子供にとっては大切なことなんだと思う。それでもその心に言葉を届けられない時も当然あるわけで、やるせなさを噛み締めることもある。
これまでを思い出しても、この作品の大人は本当にいい味出していましたね。
責任しょって子供たちを見つめている。伝えてあげたい大切なことを、ひとりひとりが胸にきちんと持っている。その上で教える。導く。
迷える子どもたちが主人公だったこともあり、この作品ではとくに大人という存在への描写に密かな力強さと決意が込められていたように思います。
なんとかこの子たちを幸せにしてあげたい。がんばっている、がんばろうとしている子には相応に達成感を味わってほしい。そんな願いのようなものが。
きっとヤマシタトモコ先生の感情が透けて見えている部分なんじゃないかな。
ダンサーの宇塚さんと理佐さんの「ダンサーとして楽しむ哲学」「カッコつける面白さ」を見せるける姿勢もかっこいい!
「仕事だってねぇ 好きなコト仕事にしてても 楽しいのなんて一瞬だけだよ」
「でもな―――悔しいけど楽しいのなんか一瞬で十分なんだよ」
「―――必死でカッコつけてるとこういうコト言えるわよぉ 言いたくなんない? きみも同類でしょ?」
「カッコつける」って、ちょっとネガティブなイメージになることも多い。
気取ってるだとか、張り切っちゃってプププとか、嘲笑の的になる。
むしろ1巻の頃の端場くんなんて「必死かよ 受ける」とか言っちゃったり、いかにも努力してカッコつける人を小馬鹿にする人でした。それがここまで変わったんだもんなぁ…!
ダンサーなんてカッコつけて目立ってこそなもの。最終巻でダンスを楽しむひとの凛とした生き様に、端場くんたちも自分も魅入ってしまう。羨ましいと思う。焦がれる。
こうして堂々とカッコつけていて、そのことの価値を自分でわかっている大人たちは、本当に格好いいな…!
この6巻には小冊子付きの限定版もあって、自分はそちらを購入しました。
主人公ポジションである夏に対してすら
「この子は本当にどうしようもない性格なので、痛い目をみせてあげたい」
「夏をちゃんとどん底につき落としてあげたいですね」
といった辛辣な、しかし愛情に満ちたコメントをみつことができます。歪んだ愛情だとも思うがw
夏はたくさんに試練が与えられてきた。彼女本来の魅力的な笑顔より、くよくよ悩んだりちょっと涙ぐんだ夏の方がしょうじき印象深い。
でもそれは、作者自信がどれだけ「この子をどう成長させていってあげようか」と考え描いてきた足跡でもある。それだけ愛を受けたキャラクターなんだな。
この限定版の小冊子、本編では見られないいろんなモノが見られて満足度高かったです。柘さんの体つきに関するメモ書きがマニアックで面白かったw
単行本描きおろし漫画も面白かったなー!
お兄ちゃん、聞こえるように大きく「ちっ」て言うの、妹ソックリだなーーとか
過去さんざん照れ隠しで罵詈雑言浴びせてきた女の子に告白した男の子の運命とか。
こういう断片を見せられると、まだまだこの作品を読んでいたかった、という思いが一層強まるのですが!贅沢なオマケ漫画ですよ。
そしてなんといっても、クライマックスの高揚感は爽快。
作品を締めくくるのは、新入生を前にする新歓のダンスです。
その最中のみんなの充実したキラキラの表情を見てるだけで、心の底がググッと持ち上がるような感覚がする。
特に端場くんの熱っぽいこんな切ない表情をみたらねぇ。
君に触れて体がしびれる。熱い。痛い。胸が落ち着かない。
何のためにカッコつけようとしてたかって。誰のために落ち込んだり起こったりしたのかって。きっとまだ言葉に出来ない。でも心が叫びたがってる。鼓動が証明する。きっと始まっている。
全力で走れ!全力で走れ!36度5分の体温!!
まさしく道を切り開くための時間だった。そのための努力だった。
次へすすむために4人の思いを結集させたステージで物語を締めるというのは美しい構成だったなと思います。
まっすぐにちゃんと頑張っている、もしくは頑張ろうともがく若者たち。
「本気」を出すことを面白さと苦しみを照らしだす、痛みを伴う眩しい成長物語でした。
連載当初から雑誌で読んでいましたが、心の襞をくすぐるとか優しさはなくて、容赦なくガツンガツン脳みそを叩きつけてくる熱いメッセージがあった。大好きな作品でした。
最初から俺は端場くんを溺愛していましたが、彼の心の動きをしっかり負ってくれたという面でも素晴らしかった!
踊り終えたあと、夏に褒められて「全然うれしくねーよ…」とつぶやいた端場くん。
うっすらとその目に溜まる涙を見て、やはり彼は滅茶苦茶可愛かったなと。
その胸にこみ上げる想いを想像して、俺まで泣きそうになる。
「BUTTER!!!」これにて完結です。
とびきり愛おしい青春の物語として、きっとこれから長く俺の本棚においてあります。
『BUTTER!!!』6巻(完) ・・・・・・・・・・・★★★★☆
青春の喜怒哀楽がギュッと詰まった少年少女の物語。最終巻のBGM(あとがき記載)まで素晴らしい内容でした。彼らの未来を想像して、またモダモダする…!
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