[漫画]気持ち以外は、君のもの。『クズの本懐』1巻
クズの本懐(1) (ビッグガンガンコミックス) (2013/02/19) 横槍 メンゴ 商品詳細を見る |
一人が寂しいなら 寄り添ったっていいじゃないか
遂げてみせるよ クズの本懐
横槍メンゴさん「クズの本懐」第1巻が出ています。
前回更新した「君は淫らな僕の女王」の作画を担当した横槍メンゴさんのオリジナル連載。
「君は淫らな」と、その原作者の岡本倫さんの「極黒のブリュンヒルデ」と3冊同時発売。3冊合同発売記念に「極黒の君は淫らなクズフェア」が開催してます。タイトル混ぜただけでインパクト抜群なことになってますね・・・!
「君は淫らな僕の女王」は暴走しまくりのド変態漫画でしたが、明るい雰囲気のライトエロコメディと言った感じでもありました。
一方でオリジナルの本作「クズの本懐」は、それとは違ったムード。
色っぽくて歪んでいて、じんわりとブラック。
こういうの好きだなぁ・・・雰囲気で魅せるエロだ。
直接的なエロい描写もありますが、しっとりとした感触がまずあって良い。
お似合いのカップルとして周囲から認められている、花火と麦。性格ルックス互いにハイレベル。それでいて関係に清潔感がある。まさに男女交際の理想像。
・・・というのは、花火と麦が、周囲にそう装っているだけの話。
本当に彼らはそんなんじゃない。カップルの理想だなんてとんでもない。
2人が抱える秘密は、きっと2人だけのあやふやな闇。
どん底みたいに暗いというものではありません。
でもハッキリと暗いというわけでもない。それが作品のポイントでもある。
この関係は幸せなのか、不幸なのか。正しいのか間違っているのか。
当人たちの気持ちにすら白黒つかない、不安定さがあります。
彼らの秘密。それは、本当に好きな人の身代わりとして、交際しているということ。お互いがお互いに、別の人を思いながらキスを交わして抱き合って。
高校生ながら結構ドロドロな恋をしていますよ・・・。
しかも花火と麦のそれぞれの想い人たちも、また好き合っているであろう現実。
花火と麦をつなげたのは、最初は単なる悪ふざけでした。
でも次第にその甘い時間を求めてしまう。触れ合ってしまう。
大好きな人じゃなくたって、誰かに触れられたら、暖かいんだ。冷えた心は安らぐんだ。
印象的だったのはこのモノローグ。
「人の身体はあたたかい やわらかいし 心なんかよりずっと確実に そこに在る 私を満たす」
イビツで間違った関係かもしれない。でもとにかく切実さが心に滲む。器用なようでぜんぜん不器用な2人です。もどかしさとも似ているけどまた少し違うのだ、彼らを見守っていたくなる気持ちは。
キスをしているその時にだって、別の人を想うことは出来る。
それでお互いが慰め会えるなら、それはそれで、虚無な愛なんかじゃない。
「気持ち以外は 君のもの」っていう言葉にゾクゾクするなぁ。
逆にいえば、気持ちだけは捧げてあげない。本当に好きな人のためだけの「好き」。
気持ちだけは違うんだ、というのがこの2人の関係の、最後の一線なんでしょうね。
だからこそこのラインが揺らいだときどうなるかが、すごく楽しみです。
それでまた、主人公2人だってあんまり報われてない不幸キャラなのに
花火や麦を好きという、また別のサブキャラクターまでぞろぞろ出てくるのです。
報われることのない片思いキャラ多すぎです・・・イイネ!(ニカッ
中二病こじらせた痛いコも生粋の百合っ娘も、なんだかんだでキャラが豊か。
1巻の中ではあまりストーリーは進みませんでしたが
2巻からは各キャラも動き出して、ストーリーも進んでいくのかな。
全体的にポエミーな雰囲気で、(なんとなくART-SCHOOLとかの世界観っぽい)ストーリーに動きが乏しく、そこが寂しかったかも。
ムードの良さは抜群に個人的趣味にハマってくれたので、これからの展開に期待!
巻末には本編とは無関係?の読み切り「にゃんにゃんプレリュード」も収録。
人懐っこい猫耳美少女視点から、なんとなく冷えてしまった交際を寂しく見つめるおはなし。ぜんぜん違うおはなしなのに雰囲気は本編と近くて、合わせて楽しめます。忘れちゃうのは悲しいことだな。
そんなこんな。各キャラクターの気持ちをゆっくり切なく堪能しながら、なんとも甘酸っぱいような苦々しいような不思議な味わいを楽しめました一冊でした。
「恋は結ばれなくちゃ意味がないのに!!」というくらいなのに行動には移せないチキン女子花火ちゃんですが、やっぱいっちょコテンパンにフラれて欲しいですな。そっからそっから。
『クズの本懐』1巻 ・・・・・・・・・・★★★☆
ほんのりインモラルな香りにゾクゾク。クズだから、クズらしく、堕ちていたい。
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