[告知]『ブレイクブレイド』中吊り広告について(3月)
【特報】「ブレイクブレイド」の中吊り広告、3月も掲出するのです~☆ 3月13日(水)~3月17日(日)の期間なので、明日から! 路線はJR中央快速線、中央総武線各駅停車、京葉線、青梅線、五日市線、武蔵野線☆ 赤色が目印なのです~☆ bit.ly/WGo9eF
— COMIC メテオさん (@comicmeteor) 2013年3月12日
TLに流れてくるメテオちゃんの告知にわりと結構癒されてます漣です。
どうやら漫画「ブレイクブレイド」の新しい中吊り広告が貼られるようです。
3月13日(水)~3月17日(日)の間、
路線はJR中央快速線、中央総武線各駅停車、京葉線、青梅線、五日市線、武蔵野線
とのことです。
この電車中吊り広告に、当ブログの記事の一部が引用されています。
詳しくは上postのURL部分をクリックしてみてくださいな。
広告に引用の件、先月にもありましたが、2度目がありましたね・・・びっくりだわ・・・。
好き勝手書いてたものが広告に使ってもらえるってのは不思議ですがとても嬉しいです。
前回→『ブレイクブレイド』中吊り広告について
広告はこんな感じです。前回はブルーが印象的でしたが、今回は赤く!
前にも書きましたが、大好きな作品に少しでもこうして関われるのは心底幸せです。
電車で見かけた際は目を通してみてくださいー。
WEBでの連載もいよいよ戦闘の気配がしてきましたよね。「ゼス・・・俺はお前を殴る・・・!」のセリフでぞくぞくテンション上がってきましたよ!いよいよ4人のドラマに動きが出てくるか・・・!
[漫画]青の時間は汚れあって消えていく。『うみべの女の子』2巻
うみべの女の子 2 (F×コミックス) (2013/02/21) 浅野いにお 商品詳細を見る |
…ずっと好きでいてくれるって 約束してくれる?
浅野いにおさんの「うみべの女の子」2巻の感想。完結巻となります。
体温が伝わるほど生々しい。息が詰まるほど愚か。切ないほど愛おしい。
思春期に苛まれる少年少女とか大ッ好物な自分に恐ろしいほどピッタシ寄り添ってくれた作品。
エロい描写もかなりありますが、それよりもこの濃厚な思春期スメルにビンビン。
思春期の繊細さのカタマリみたいなこの作品は、本当に自分に突き刺さる。
ついつい読みながら息を潜めたし耳をすませたし、心を開いていろんな傷と想いを受け取れるようにしながら、慎重に読みました。いや読書中に耳をすませたら集中できませんけど、それはほら、作品の世界ってものに耳をすませるんだよ・・・。
まぁそんな意識途中からすっ飛んで完全に作品の世界に溺れていましたが!意識して受け取ろうと思わずとも、この作品は脳みそにガツンとダイレクトに衝撃を与えるパワフルさがありました。
甘酸っぱくて苦々しくてたまんねーな!ハァーもう!うっかり泣いちゃったよ!
以下ネタバレしてる箇所もあるので注意。
前巻→苦しいほど愛おしい思春期 『うみべの女の子』1巻
海辺のなにもない町が舞台。
内向的な中学生男子・磯部と、何度も彼とセックスをしている同級生の小梅。
2人は付き合ってはいません。性への興味と、それとなんとなくの慰め合いで肌を重ねてきた。暖かいものに触れて、癒されたかったのかもしれない。
けれど「うみべの女の子」を写したデジカメデータからひと波乱。
何度も何度も、それこそ無理やりに身体をたぐりよせても、心は離れていくばかり。1巻はその離れていく心がじっくり描かれてクライマックスへと向かっていきました。バラバラに空中分解して落ちていくみたいに。
淡い恋心。傷つけられた者の闇。不器用なふれあいしてできない。まさに思春期のドロドロがここには渦巻いており、俺のテンションはダダ上がりである。
致命的に仲違いをした。でも、責められることを分かってもどちらかが踏み出せば、またなし崩し的にぬくもりを求める。いい加減なもんだ、子供って。難しいことを気にしても、自分の都合がいい方に流されがちで。冷たくなった心を温めようと2人して
セックスという大人の道具を、大人になりきれていない子供たちが使う。
その危うげなアンバランスさがとことんツボだ・・・!
「してもしても何か足りない気がするのは、なんでだと思う?」
その言葉を磯部はごまかしてまたヤりはじめるのですが。磯部は答えなんてわかってないんだろうな。その疑問をきっと彼も抱いていたと思う。
何が足りなかったのか。それはいろんな解釈があるはず。
日々を生きる余裕や、きちんとした恋人同士の証や、信じることができる心の強さや、今まで決して交わさなかったキスや、いろいろだ。
何か足りないんじゃない。こんな実りのない日々は、完成を求めちゃいけない。幸福を目指しちゃいけない。でも彼らは足掻きたかったのだろう。
細かく好きなシーンを挙げてもキリがないので、とびきり好きなシーンについて書こう。第19話。全20話で完結し、最終話はエピローグとなっているので、実際ここで全ての決着がする大切な話数。
ここにたどり着くための物語だったのだな、と確信できる。凄まじい切なさに心が暴れだしそうな自分と、静かに事実を受け止める冷静な自分を感じて、ほかにもいろんな感想が混ざりに混ざって、別世界にトリップしたみたいな感覚。
ここで小梅を拒絶したことが、磯部が初めて見せた」大人」だったと思う。
彼は大人と子供のはざまで揺らぎっぱなしだった彼らが、尊い結末を見出す。
大人になっていく。罪も償う。きっと好きな人に大切なキスをする。
いろんなことをした。けれどラストで、「何もしない」ことで成長が示されている。一歩が踏み出されたことがわかる。
そうして確かに『ちょっとだけ』大人になった姿を描いて、この作品は終わるのだ。
それを受け入れられず大号泣する小梅には心底胸が締め付けられる思いだ。だけれど最終話で彼女が見せる仕草のひとつひとつに、やはり彼女も大人になっているんだなと、と思ってじんわりと染み入るものがあった。
最初は磯部が言い迫っていたのにね。キスをせがんだのは磯部だったのにね。それを拒んだのは小梅だったのにね。
静かに心は流れ変わって、昔あった形をなくす。
こんなすれ違いの1つにすらどうしようもなく切なくなって、思春期のフラフラした曖昧な心模様を思い描いてやっぱり泣きたくなる。
クライマックスで何が起こったのかは、そのものズバリを書こうとは思いませんが、こういう書きぶりだと察してしまうだろうから隠す意味はあまり無いかもしれないな。でもまぁ一応セオリーとして伏せておこう。
タイトル「うみべの女の子」は、磯部が大切に持っていたデジカメに写真データに写っていた女の子を示していました。他の含みもあるだろうけど。
それで最終話で「おっ」と思ったのは、データを収めたCDカードをめぐるループ構造。
磯部が恋した「うみべの女の子」は、海辺でひろったSDカードに入っていた写真データでした。それは1巻の頭の法とか、あと1巻110Pにも言及がありますね。映っているのが誰なのか、落としたのは誰なのかわからないまま、磯辺は「うみべの女の子」に焦がれていきます。
そして2巻クライマックス。再び、一枚のSDカードが海辺でなくなる。
小梅もまた、ここでSDカードを落としてしまうのです。
誰かに拾われるかもしれない。それでまた別のなにかが、知らないどこかで起こるかもしれない。この海辺を通じて、小さなきっかけが散らばっていく。
小ネタのようなものですが、このループ構造が、思春期の世代交代リレーを象徴しているように感じる。とてもお気に入りなのですよこの演出!。繰り返すものだ。愚かな過ちも、はかない恋物語も、なんにもない日々も。
次拾うのが思春期の男女なのかは、神のみぞ知る。でもこの余韻が素晴らしい!
「うみべの女の子」2巻の感想でした。
個人的に浅野さんといえば個人的に「ソラニン」が大傑作と思っております。
まぁ読みやすいライトな作品でしたからね。この作家さんはディープになるほど、おもしろい!!!と断言できなくなっていくのが・・・いや基本好きなんですけどね。
しかし今回の「うみべの女の子」は、それに並ぶくらい好きかもしれない。
この淡く涼やかで、しかし尖りまくった青春!
あの頃のどうしようもないと脆さと閉塞感!
苦しみが押し詰められただけみたいな堕落と衝動!
あまりにも臨場感たっぷりに思春期のサマが描かれているのです。
浅野いにおさんといえば、とても写実的な風景を漫画に取り込む作家さんですが、
今回のような青春劇では、それが凄まじい効果を見せていたと思います。
なんでもないような風景が物憂げに語りかけてくるかのようで、作品に説得力が出ていたような感じ。モノクロなのにチカチカ眩しいくらい鮮やかな色彩が浮かぶ。美しいです。
そらーね、ハッピーエンドはあんまり期待しちゃいませんでしたよ。
でもハッピーエンドじゃないならバッドエンドだ、ってワケでは当然ない。
この甘酸っぱい余韻は、間違いなく読めてよかった満足感によるものだ!
すごい熱量で紡がれた、もろい物語でした。だからこそこんなに愛おしい。
あの頃僕らはきっと傷つくことに敏感だった。でも他の誰かを傷つけてばかりだった。
かもしれない。なんてことをぼんやり思ったりなど。
そうそう、作者による「うみべの女の子」語りが読めるインタビュー記事もありますよ。
結構前に公開されていたものなんですが自分は気づいてませんでした・・・
せっかく記事書いたので、貼っておこうかなと。
→『うみべの女の子』発売記念! 浅野いにお インタビュー
磯部が小梅を好きになって、それからどんどん心離れていく過程の話とか
モノローグを排除することへの挑戦とか、この作品が好きなら読んでおきたい内容。
こういう作品は、もう自分で自分が無茶苦茶大好きだってことはわかるので
「どういうところが好きか」「この作品で何を感じたか」
を、自分のために言葉にしていく作業でしたよこの記事。
噛み砕いて咀嚼して、この作品に込められた膨大な感情たちを何度も楽しみたい。
彼女はうみべの女の子。
今日はきっと笑っている。今日も笑っている。今日こそ、笑っている。
『うみべの女の子』2巻 ・・・・・・・・・・★★★★☆
いにおさんの漫画のこういうのは大好き。むず痒い。エロくて残酷で愚かしい、僕ら。
合わせて聞きたい名曲。「うみべの女の子」では重要な一曲でした。
[漫画]今日もうまくいかなかった。今日も空が灰色だった。『空が灰色だから』5巻
空が灰色だから5(完結)(少年チャンピオン・コミックス) (2013/03/08) 阿部共実 商品詳細を見る |
どうか 許さないでくれ
「空が灰色だから」5巻が出ました。これにて完結となります。
最後の最後までこの作品らしさが貫かれましたね。「らしい」一冊でした。
最終巻だからと特別なこともせず、灰色な1話完結オムニバス。
ザクザク心を切り刻んでくるような悲しいお話から、心をほっこりさせてくれる暖かなコメディ。テンションの振り幅激しいのが魅力です。
心ざわめく空の色。レッツ・ガガスバンダス。『空が灰色だから』1巻
傷ついたらハマる、思春期の光と闇。『空が灰色だから』2巻
きっと絶対、世界は悪に満ちている『空が灰色だから』3巻
あなたもきっと心ざわめく。『空が灰色だから』4巻
いつも通り、特に気に入ったお話を個別感想していきます。
●53話「私を許して」
陰か陽かだったら陽のお話。というかストレートに感動できるタイプのお話。
生真面目すぎていろんなことが許せない女の子が、その性格ゆえに友人たちに離れられていく。
友達同士の仲だからこそ冗談みたいにも通じる「もう友達じゃない」「もう絶交」なんて言葉は、使われるシチュエーションや相手の心ひとつで、その重大さは変動してしまう。
一度口にしてしまったからには撤回なんてできない主人公の、頭でっかちさは可愛くもあるんだけど世界は随分と冷ややか。自分が思ったより世界は自分を置き去りにしていく。
そうして心をドキドキさせながら読みすすめた先に待つ「許容」に、すっかりヤラれた。
「空が灰色だから」は短いページの中でのテンションのコントロールがすごく上手いよなぁ。うまいこと上げて下げられまた上げられ、楽しいと同時にヘビーで心が疲れる・・・。過去にも書いていますが、この作品は単行本で一気読みするとヘトヘトになるんですよ!
「許す」という行為については、この巻の中だと最終話でも描かれていて
2つのエピソードを比べてみても、なかなか心に突き刺さるものがあります。
●54話「負けず嫌い」
ラブコメチックなほっこり話。女の子と男の子、それぞれの意味不明な暴走が楽しいw
「洗剤が混入した手作り弁当を必死に食べる」という危険なことに情熱を燃やす漫画なのですが、バカバカしいのに最後は達成感かなにかでイイハナシダナー風にまとまる。
口汚く激しい会話劇の裏側でむずがゆい恋心がこっそり存在感を現しており、クライマックスでは思わずニヤニヤしてしまう!
●57話「マルラマルシーマルー」
ビクッ こえーよ!!
クレイジーなお話は「空が灰色だから」のこれまでに何度かありましたがこの作品は途中で様子がおかしくなる。コメディの域を超えた恐怖感で持ち上げて、最終的にコメディっぽく戻って終わる、けっこう変則的構成。「おわっ来たかまたこのテのヤツが!」と身構えると裏をかかれてしまったw
この作品も緩急というか、雰囲気がガラッと変わる瞬間がおもしろい。窓から投身しようとするあたりで、あれ、これってもしかしてギャグなのか?と思い直す。
この作品の狂気を知っている人だからこそひっかかるフェイクっぽい。
そして何はともあれ、おかんの圧倒的癒しパワー!
いや、言い間違えを指摘されると恥ずかしいですよね。このブログも誤字脱字だらけですが・・・(なおせ
●58話「私のルール」
潔癖症の少女の失敗。悶々とひとりで思い悩んでいく序盤の流れはこの作品らしい。しかしそこからの後半の流れでゾクゾクしました。あ、そう裏切ってくるのか・・・みたいな。
「でも 手をつないでくれたっていいんじゃないかなとは思うよ」
「大丈夫なの私 好きな人になら汚されたっていい」
「黒木くんのならその移された黴菌だって幸せに感じられるから」
潔癖。だけど恋する少女。例えどんなに汚くても、きっと許せるはず。
彼女なりの理論に基づく歩み寄りは、きっと彼には伝わらない。彼女の頑張りも抱く愛おしさも理解はされない。
最後のチェックボックスにチェックが打たれるシーンが残酷でこちらもダウン・・・。
きっとこの断絶を、彼女は取り戻せないんだろう。チェックを入れてしまったのだから。自分の意識のために自分が泣く。自分のコントロールってどうやるんだ。無意識だったからこそ事実が辛いよなぁ・・・。
●最終話「歩み」
あぁぁぁぁぁ。最後まで・・・最後まで「空が灰色だから」だった・・・。
なんでことない、きっと現実でも有り得るすれ違い。
しかしここまでシリアスでシンプルにエグいなんて。
「友達になってくれてありがとう」でこちらの心をへし折られるし、続くクライマックスのモノローグの暗いこと辛いこと・・・。
誰かこんな情けない私を どうか許さないでくれ
これからの未来に一切の喜びや幸せを与えず
こんな卑怯者で弱い私に一生罰を与えてくれ
身も心も切り裂かれそうな切なさ。嫌な動悸が加速する。
後悔と申し訳ない思いで爆発しそうで、この切実な「許さないでおれ」の願いにすっかり打ちひしがれる。大切な人を傷つけた。そのことに途方もなく傷つく主人公。もうひと握りの素直さがあれば、きっと世界はかわったのに。傷つく彼らの涙を見てると、本当につらい。
第53話「私を許して」は、いつも相手に許容してもらっていたのは自分じゃないか、と認識してラストを迎えます。一方で最終話では、自分が自分を許さない。
それは相手が自分を許してしまったから。暴言を吐くことなく感謝をし、殴りかかることなく静かに席についた。そうしてまた1人になって、ボロボロ泣いた。それでも自分を許してしまったから。
「許さないでくれ」と願う最終話は、大切な人との断絶、そして世界中すべての幸福との断絶を願って終わるのだ。取り返しがつかない。取り返しができちゃいけないんだ。だって許されてはならないのだから。
後でまた書こうと思うけれど、様々な「孤独」を描いてきたこの作品らしいラストだったと思います。けれどやはり、心に生々しい傷を残していきやがった。
この作品を通して思ったことは、孤独の描き方の巧さというかバリエーションの豊富さというか、視点の持ち方というか。ともかく孤独にまつわる描写の1つ1つだ。
マイノリティやらもとのコミュニティからはじかれた人物がたくさんいた。
作品紹介でも「うまくいかない日々を描く」というフレーズが使われています。
自意識の空回り。会話の不成立。得られない理解。普通と異常の狭間のゆらぎ。そこから連鎖されるとことん救われない現実と、上手くいかないけれど愛おしい時間。
自分に印象的なのはキャラクターたちが孤独の中で、それぞれ物思いにふけっている様子でした。
孤独ってのは憐れかもしれない、コミカルかもしれない、癒しや救いかもしれない、絶望かもしれない。いろんな含みを持たせて、色々な「1人の人間」を切り取った作品でもあったように思いますね。
孤独を発展させる話もあれば、孤独のまま完結する話もある。孤独の痛みはときに癒しにもなる。誰にも干渉されないのは楽ちんだ。
人とのコミュニケーションって難しいね。うまくいかないね。悲しいね。でもたまに楽しいね。
そんな黒白はっきりしない様がまさに灰色。人間の心模様は、大半いつだって灰色なんじゃないか。少なくともこの漫画を好んで読む人なんかは、きっと。
「空が灰色だから」を読むとき、とくに心を敏感にして臨んでいました。癒されたりヘコまされたり死にたくさせられながら、自分の喜怒哀楽を楽しめる作品でもあったから。
インパクトの強かったエピソードの鋭利な読み心地はそうそう忘れられるものでない。
芳醇な絶望の香りがまたじんわりと心に染み付いてる。
本当に思春期独特の息ぐるしくなる感覚が、むせ返るほど詰まっていて
自分をまるっと重ねることはできなくても、この漫画の中で繰り広げられたドロドロと蠢く得体の知れない感情の暴走にあてられて、吐き気がする。
強烈な漫画体験を与えてくれて、すごくありがたい漫画です。
しかし一方でもう二度と読み返したくないようなエピソードと、その悪意と毒気も内包されていて、自分の中ではショッキングな作品でしたよ。
まぁそういうショッキングなエピソードも、結局読み返してしまうんですけど。読み返しては、分かりきっていたのに再び打ちのめされるスパイラル。
最後まで「空が灰色だから」エッセンス全開で嬉しかったです。
これで終わりというのは寂しいですね。もっと読み続けていたかった。こんなに『濃い』漫画をオムニバスで、週刊で連載していたこれまでが異常だったとも思いますが。恐れ入りますわ。
最後まで勢いの衰えないままに終わったと自分は思いますし、終わるタイミングはこれでよかったのかもなとも感じます。全5巻。なかなかいい尺でまとまりました。
阿部共実先生の新しい作品が読めるのを楽しみにしつつ
自分の中でまだまだ熱の冷めない「空が灰色だから」を何度も読み返して味わいたい。
『空が灰色だから』5巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
ありがとうございました。最後まできっちり灰色。大切な作品になりました。
[漫画]いつから好きになったかなんて知らないけれど。『恋愛ディストーション』7巻
恋愛ディストーション 7 (サンデーGXコミックス) (2013/02/19) 犬上 すくね 商品詳細を見る |
このひとの手を放したくないと思う
「恋愛ディストーション」7巻の感想です。
新装版(GX版)から入った新参者の自分ですが、多くの人が再開を待っていただけあり素敵な作品だわなーとホクホク読んでおります。
で7巻。簡単にまとめていえば「山野辺ぶっ飛べ」編である。大躍進。
6巻のあの引きを読んだからには、まだかまだかと新刊の発売を待たざるを得なかった悲しい単行本派。果たして届けられた最新刊は、これまた期待どおりのアレやコレやでたっぷり自分をニヤニヤさせてくれる一冊となっていました。拳を握りしめて山野辺への荒ぶる思い。
表紙もめっちゃかわいいですね。秋子のてのひらの上の山野辺。
それぞれ違った表情を浮かべる2人のポジションも含め、はーたまらん!
前巻→愛しい人のためにできること。『恋愛ディストーション』6巻
YA!MA!NO!BE!
前回いきなりキスされちゃってびっくりの山野辺くん。自分の意識よりずっとはやく自分のそばに近づいていた秋子の存在は、とにもかくにも彼を揺さぶりまくる。
生まれてこのかたより悶々と童貞力(ぢから)を熟成させてきた非モテ大学生の想像なんかすっかり飛び越えちゃう、秋子ちゃんのなんと軽やかで魅惑的なことよ。
カラッと明るい秋子にも、男を誘うために思惑を秘めていたりな。下心丸出しだけどめちゃくちゃ緊張しながらも秋子の部屋にやってきちゃう山野辺もな。互い「健全なやましさ」とも言えるような、肌を重ねることへの期待と思惑があるってのがムズがゆい!いや山野辺は作戦もゴムもなにもなく丸腰でやってきましたけど。なーにやってんだ山野辺!
まぁともかく、こういう下心ありきの様子ってのは、付き合い始める直前と直後の恋愛のかわいさだよな。
「恋愛ディストーション」は恋人同士の当然の営みとしてセックスは描かれていす。そこに向かうのは自然なことなのですが、この作品では久々のこの初々しさたっぷりの初夜に感動すらする勢い。ほかのカップルは癒しとしての性が描かれているように思いますが、秋子と山野辺のはまだ癒しなんて言えない、精一杯の初期衝動で突き進んでいく。
いつから好きになったかなんて知らないけれど、いろんな過程をすっ飛ばしてこの日になったけれど、気持ちが本物だったらなんだっていいや。
山野辺ぇぇ!!!
中学生のときは中学生カップルの漫画読んで死にたくなったし、高校のときも(中略)死にたくなったので、必然的にいま大学生カップルの漫画読むと果てる。でも普段はここまでならないはずなんだけど、なんでだろう。秋子ちゃんって存在が妙にリアルなんだけど超絶羨ましいラインを来ているからか。
自己投影しまくりで作品を楽しみたいわけではありません。ありませんが、やはり現実の自分とシチュエーションが近いほど、読んでいて気持ちのシンクロ率は高まるもので。普段は恋愛漫画を読んでも「いいねえいいねえ。幸せにおなりよ・・・」と常時賢者モード発動しているような俺でも、こういう漫画を読むと頭がバチバチくるぜ・・・つまり山野辺爆発しろ。
山野辺てめぇぇぇぇぇ!!!!!
いやしかし、秋子が山野辺を誘うシーンすげえいいな~~~とホコホコと思いましたわ。さっぱり系女子にも、やっぱりこう言うナマっぽい湿っぽい感情はある。
秋子に関しては過去に兄への秘めた想いも描かれていて、女性として憂いある一面を見せていました。今回はそれとはまた違う風に、彼女の「女」がさらけ出されているように感じてテンション上がる上がる!
やっぱりねえ、女の子はみんな魔性を秘めているわ。特に秋子はあまり計算をしない本能的な人物。だからこそ「女」を見せる時にしてもわりとストレートなんだよな。わりと性欲に忠実だし。あー健康的にエロい。そしていい娘だわ・・・。
秋子の山野辺のエピソードにもうひと波乱含んで7巻は終わります。これまた面倒くさい悩みを抱え込みやがりましたからね、山野辺が。しかしあとがきにもあるとおり、こういうエピソードをやるカップルにはこの2人がお似合いだw
あー秋子と山野辺のことばっかり書いてますね。
仕方ないとは言え、ほかのエピソードも素敵なものがいっぱいなので触れる。
第49話「夏の日のオーガズム」はだいぶ色っぽいイチャつき回でした。大前田と棗の2人は些細なズレから、仲直りの流れがいつも通りすぎて和んでしまうくらい。
このエピソードは棗の性癖(と言ってしまうと下品だけど似たようなもんだ)に体臭があるってんで色々ニヤニヤできる。いい匂いだと感じるなら、それはいい恋ってこった(決め台詞風でいま適当に考えた)。
そして浴衣エロとは浪曼の塊である!個人的に浴衣で野外より浴衣で部屋で致すほうがグッとくるのでな。うわぁどうでもよすぎる。
あと第51話「GIRI GIRI NIGHT」。漫画家の小向井と美容師の知子のエピソード。この2人は進んでるんだか進んでないだか、じれったくてたまりませんな。しかしこの2人のカップルの成立には、知子がまほ先生への想いに決着をつける必要があり、そのシンプルなワンステップには大きな切なさが伴います。期待しつつ、ちょっと怖かったりもするんだよな。
しかし7巻表紙を見ていると「ちゃぶ台の向こうに誰がいるのか?」ってあたりで色々妄想が膨らむ!51話を読んだらなんとなく想像ができますが!
小向井は表情に出さないところで本能を押さえつけ頑張ってました。そろそろ救われてもいいと思いますが、彼自身なんだかんだで今のふわっとしたアンバランスな駆け引きを楽しんでいる節もあり、まぁしばらくこのままでもいいかもな感。
そんな「恋愛ディストーション」7巻でした。山野辺がんばった!
秋子ちゃんとのういういdaysを味わうもすぐにモメごとが起きてしまいましたが・・・どうなるかが今から楽しみです。8巻はまた半年くらい後かな。
しかしまー、久しぶりに漫画を読んでいてキャラクターへの可愛さが転じて嫉妬にまで行きましたわ。秋子ちゃんかわいすぎな・・・・・・。
山野辺爆発しろとのたまっていたら知り合いから諭されて、よく考えたらそうだよなぁ、とゆっくり怒りを収めた次第。
いろんなキャラクターを描いていく恋愛オムニバス形式ですが、7巻も続くとキャラへの愛着も積み重なって、一層味わい深い。その中でまだこれだけ瑞々しい恋愛のときめきで楽しませてくれるから好きですなー。
絵も清涼感あって好きですね。それで結構生々しく男女を描いているからおもしろい。
またゆったり読み返しつつ、8巻待ちます。
『恋愛ディストーション』7巻 ・・・・・・・・・★★★★
前巻がわりとヘビーでしたが、今回は素直なラブストーリー中心でニヤニヤほっこり。
[漫画]間違えても、精一杯の恋でした。『屋上姫』4巻
屋上姫 4 (フレックスコミックス) (2013/02/12) TOBI 商品詳細を見る |
許せない
TOBIさんの「屋上姫」完結巻の感想です。
4巻ですっきり終わりました。表紙の先輩の表情もグッときます。
そうそう。この漫画は、泣き顔が似合う。
ストーリーを追うだけならもっと短い巻数でまとめられたかもしれない。わりとシンプルなお話でした。しかしキャラクターの細かな表情や気持ちの変化を、すごく丁寧に描いてくれた作品です。
イメージとしては気持ちのいい青空が似合う作品なのに、キャラクターの気持ちはぜんぜん抜けが良くなくて、いろいろ引きずってモヤモヤして・・・。コマとして切り抜かれる一瞬一瞬に胸が締め付けられそうになります。
そうしてじっくりと雰囲気作りをしてきた「屋上姫」。4巻完結はこの作品として必然だったと言えます。進みが遅いなぁと途中やきもきしていましたが、完結した今ならそう言える!
ということで完結巻の感想。発売から結構立ちましたし、わりとネタバレ遠慮せずに。
嘘吐き少女の苦悩。揺らぐ三角関係は? 『屋上姫』1巻
罪悪感と、淡い恋。 『屋上姫』2巻
嘘と罪に恋に縛られた姫。『屋上姫』3巻
学校中から知られる孤高の美少女、屋上姫こと霞上澄花。彼女を交際をしていた主人公黛。していたと過去形なのは、一方的に別れを告げられてしまったから。
お付き合いが始まってから2巻3巻と、イベントを重ねてきました。
けれど順調にはいかない。澄花先輩は1人で思い悩んで、恋人の黛に相談はしない。ささいな違和感に2人には苦しみ出す。気持ちがゆがみ出す。関係がきしみ出す。そして一方的に告げられる別れである・・・!
別れを告げられたもののぜんっぜん納得できていない黛。
一方で彼のことを密かに想い続けているもう1人のヒロイン、結子が活躍。不憫キャラとして確固たる地位を築き上げている彼女が物語を動かし始める!
こっからは2人のヒロインごとに書きたいことをまとめて、「屋上姫」という作品を考えてみようかなと。
●伊集院結子
完結巻ということで、メインキャラそれぞれの気持ちの行き先が描かれて、スッキリとしました。クライマックスに向けてふつふつとテンションが上がっていく。結子関連のシーンはビリビリと心にきましたね。純朴そうな幼馴染ヒロインが、ドス黒い感情むき出しの修羅場です。
結子に関しては、3巻までとぜんぜん違う感想を抱きました。4巻すごい。
正直いえば結子関連をもうちょい突き詰めて見てみたかったかなと思いましたが、おもいっきり失恋しちゃった彼女の死体にムチ打つ感じになっちゃうか・・・。安易に信忠とくっついてEND、とかじゃなくてよかったなと思いました。別に結子は黛への想いを引きずり続けて欲しいとかでも、信忠が嫌いなわけでもなく。正直なところ『今はまだ』彼女は幸せになるべきじゃなかったと思うから。その理由は後で。
不憫なヒロインではあるけれども、かわいそうなだけの娘じゃ絶対なかった。
例えば「まだ先輩の事が好きなの?先輩はマユくんのこと、なんとも思ってないのに」と負け惜しみみたいな煽りをしちゃったし。うわぁー迷走しちゃってるよこの娘ーって思わず悶えたワンシーン。でもそう言いたくもなりますわな。じたばたしてる駄々っ子みたいなですが、すんなり現実を受け入れられることもできない彼女の必死の抵抗だ。そしてコレ。
「許せない」
「霞上先輩・・・あなたは何様なんですか。『屋上姫』なんて呼ばれているけど、最低ですね。」
4巻のハイライトの1つに、結子が気持ちをブチまけたこのシーンがあります。
もう大興奮ですよね。オイオイ、純朴少女がここまで言ってくれたよ!
このね、土壇場で精一杯にあがいている感じがたまらなく愛おしい!
でもこの後、黛から「俺の気持ちを盾にして、霞上先輩を責めるのは許さない」とか言われちゃって可哀想さ二倍マシである・・・。いかんかった・・・黛はとにかく霞上先輩だけを守ろうとしてて、傷ついた末の結子の迷走をやさしく正す余裕もなかった・・・コイツは致命傷だ・・・。
黛の言ってることは正論だけどさ。正論とは正反対のことで霞上先輩から苦しめられてきた彼がまだこういうことを言えるというのは一瞬イラッときた。
正しさをかなぐり捨てて本音をぶちまけた結子の覚悟を、彼は正しさを盾に払いのけたんだ。
正しさとはときに非情になる・・・。でもそんな彼だから霞上先輩も振り向いてくれたんだよなぁと複雑な心境でもあります。
黛はまっすぐすぎたな・・・。この作品の主人公なのは彼だけども、「屋上姫」という作品のエッセンスをより多く蓄えた人物はもしかしたら結子だった。歪んで、心を黒く染めていった。不憫というだけじゃなくて、そういう人間としての醜さや、感情あふれる切実な過ちが、非常にドロくさくてめちゃくちゃいいヒロインでした。
「行動をおこした者が勝つ!待ちは甘え!」
なんてクソマッチョな恋愛観を押し付ける漫画ではありませんが、少なくとも彼女の最初の失敗は、踏み込まなかったことに他ならない。臆病な娘だったからな・・・そこが可愛いんだけども・・・。
4巻のこのシーンとかめちゃくちゃ可愛かったじゃないですか。「見てくれる」それだけで舞い上がっちゃう。笑顔すら儚げである。
そして話がもどるけれど、たしかに黛への片思いの決着は残念だった。その先の余韻が好きなのだ。彼女は『まだ』幸せになるべきじゃなかった。だからこの報われないENDは、じつはとっても満足しているのです。
1人で立ち上がって歩き出して、また恋をするまで、さしのべられた誰かの手をとってはいけなかったんだと思う。結子みたいな娘は、傷を癒すための恋はしちゃあいけねえよ!強くあれよ!
だから信忠が失恋で弱ってる結子をものにしなくてよかったなと。最後まで紳士ないいヤツだったよ信忠。5年後くらいに付き合いだした大学生の信忠と結子を「ようやっとかよお前らw」みたいな苦笑混じりで見てみたい欲望はありますね!
・・・なんか3巻までの感想とけっこう違うことを書いていますが、なぜか最終巻を読んだらこんなことになりました。不思議。
あーラストの飄々とした様子に結子の心境を想像するだけでごはん食べられる。
●霞上澄花
澄花は、やっぱり根はいい娘だったんだよな、というなんともありきたりな結論。いやこれまでやっていたことは救いようのなく酷なことなんですけれど。
彼女の思い描いた男女の恋愛観は、現実離れしていたとも言えるくらい、ピュアだったんだなと思います。
大好きな人とは結ばれなきゃおかしい。だからこそ兄を想い続けた。
でも、大好きでもない人と恋人になってしまってから、彼女はおかしくなっていった。自分がやっている恋と自分のしたい恋との致命的なズレにとことんまで苦しめられていったのは、彼女の誠実さのせいだ。彼女が抱き続けた葛藤は、すなわち彼女の正しさの証なわけで。それはラストに至る切ない過程の中で、ある種の救いとして存在していたよなーと振り返りながら噛み締めた。
心底から腐っていたなら、黛を振り回してもなんの痛みもなかっただろうから。
澄花先輩の苦しみは、そのまま彼女の純粋の裏付けだった、と。
まぁ心でなんと思っていようと、彼女のしたことのひどさは揺るぎないんだけど。
しかし物語のラストは、全てから解き放たれるような爽快な展開。
まるでパラノイアみたいに兄のことばかり考えていた澄花。彼女の気持ちの解決方は、なんだかとってもシンプルで、だからこそこれまでのモヤモヤを一気に吹き飛ばして視界もスッキリした。気持ちがいい!
そういえばそうだったよな。黛は、「忘れちゃいけない」と言う少年として澄花の前に現れたんだった。兄からの花束を、一度は捨てた花束を、綺麗に束ねてもう一度手渡した。そして最後にもう一度、同じことを、今度は偶然じゃなく伝えたのだ。この展開はなるほどと素晴らしく納得。いい流れでしたね。
そして一番最後の見開きページは必殺の破壊力!
屋上にとらわれた姫。兄への偏執にとらわれた姫。窮屈な家庭事情や、歪んでいるような歪んでいないような曖昧で純粋すぎる恋愛観など。常に何かに縛られ続けた澄花先輩は、やはり「囚われのお姫様」だった。
ひらけた屋上でひとりきりにいる彼女、というこの作品の原点となるイメージには、ひとり苦しみを抱えているという意味合いが感じられます。
けれどこの最後の見開きには、2人で屋上にいて、街の遠くまで見渡せて、新しい恋に踏み出して、何もかもから解放された彼女のイマが描かれているように感じました。新しい世界は前までより広々として、きっと暖かだ。
きっと多くの人がそうだろうけれど、ようやく澄花先輩を心から「かわいい」と思えたよね・・・最後の最後で!!
しかしまぁ、澄花のお兄さん、スゴいですね。TOBI作品らしからぬダークさを感じ取りましたよ。キスまでしてたんかい・・・!!お前・・・お前・・・!!
と、結子と澄花先輩という2大ヒロインに集中して最終巻の感想を終えたいと思います。
「屋上姫」はTOBI先生の新境地でした。青春の苦々しさが打ち込められている。
清らかで在ろうとしても、みんな心をドロドロに汚していく。
人間の醜さを真正面から見つめるこの作品の一面が、屋上の上に広がる青空の清々しさとのギャップでこれまた楽しかったです。
迷って引きずって傷つけてそれで自分も傷ついて。醜い。愛おしい。
ガチでドロドロの修羅場漫画とは言えないかもしれない。別に修羅場ありきの漫画ではありませんしね。どこかズレてしまった青春模様も楽しみたいなら、オススメしたい作品です。こういう大好きですわー。
でも正直なところ、4巻もある中でフックは少なく、やや間延びしてしまった感あります。もっといろんなイベントを盛り込んでも良かったかも。
まとまりも良くてすごく丁寧に綴られた物語だと思うのですが、そこは事実。
TOBIさんの作画は美しくて絶好調でしたね。次回作も楽しみにしています。また「眼鏡なカノジョ」みたいな基本アマアマなヤツも読みたいなあ・・・。
『屋上姫』4巻 ・・・・・・・・・・・★★★★
満足いく最終巻。広がりは少なかったですがきっちりまとまった良作。