[漫画]愛しい人のためにできること。『恋愛ディストーション』6巻
恋愛ディストーション 6 (サンデーGXコミックス) (2012/07/19) 犬上 すくね 商品詳細を見る |
あなたに似た、真面目で優しい子になるといいな。
「恋愛ディストーション」6巻。6巻・・・6巻!続きが読める第6巻!
去年に小学館から出た新装版ではじめて触れた作品ですが、それでも「やっと読める」という感慨が沸く。旧版から待っていた人の喜びはどれほどのものか・・・!
複数の男女の恋模様を描き出していくシリーズ。5巻は江戸川くんとまほ先生の間柄を引き裂きかねない出来事が起きました。6巻でもたっぷりとそのエピソードが綴られており、波乱のシリーズがひと段落。つらつらと感想書いていきます。
6巻は開幕からシリアス全開。なほとまほ、双子の女性をめぐるお話。
まほからすれば、届いていたとも知らなかった手紙の行方にまずびっくりですし、それをなほが読んだことにも衝撃。そこから回想を交えて、この双子の心の深部を見つめていく流れ。
双子の女が、同じ男を好きになった。
そんなシチュだけでも泥沼修羅場な様相をイメージしてしまうわけですが、むしろまほとなほは、もっと前に修羅場になっているべきだったのかもしれない。気持ちの整理をつけられず逃げていたことが今につながっている。
過去の恋を明かす。それもまだ完全に終えていない、くすぶったままの想いを。
さらにそれは自身の醜さをさらけ出す行いでもある。
粛々と恋人である江戸川くんに昔話をするまほ先生のシーン、その静かでありながらも緊張が忍び寄ってくる感覚にゾクゾクしました。沈みきったようなまほ先生の表情もなぁ。
ありのままを言い訳せずに提示して・・・というか、あの1夜の真実を話さなかったまほ先生の心中を想像するに、やはりすごい葛藤を抱えた人だと思う。
大好きな今の恋人に愛想つかれるかもしれないという恐怖を承知している。その上では自分にとってはいいものであるはずの情報を隠す。まほ先生にとっては結果はどうあれ、あの夜に自分がしてしまった行動そのものにとてつもない罪悪感を抱いている。そしてあの夜の真実は、なほや江戸川くんを安心させるものではあったけれど、まほ先生の罪の意識を軽くさせるものではないんだな。
許してもらうのために都合のいい真実を伝えない。罪を受け止めるだけ。
打算的な考えをしない、被虐的とも言えそうな真摯さもすごい。でもそれって傷つくためのある種の暴走だとも感じられて痛々しい。
・・・もし政広があのまま間違えたままだったら・・・と想像をしてみたら、ヤバい。それはそれでゾクゾクするが目も当てられない惨状。いやほんと、よくやったよ政広さん。
あの夜の、あの恋のなにもかもが、重い鎖になってまほ先生を縛り付けている。
双子の女性の不和や、やましい感情や、後悔や懺悔や・・・
そんなヘヴィなものををじっくり描いていっての、やさしいクライマックスがたまらないのです。
スカッと爽快な解決なんてできないですよ。そう割り切れるものではない。
でも、みんながちょっとずつ傷ついてでも、ちゃんと歩き出せるように。
いやー江戸川くん、好感度がグンと上がりましたね!今までも好きだったけど、一段と。
この一連のエピソード、〆を飾ったのが彼の「こんなふうにして俺は二十歳から21歳になった。」というモノローグ。これがまたとても鮮やかなのだ。あっさりと、しかし人生の節目としての感慨深さをこめたモノローグ。とても気持ちがいいエンディング!
江戸川くんとまほ先生サイドが落ち着いたら、大前田くんの方へ。
こっちはねえ。もう、お前ら何度ささいなことでスレ違うんだ!
それというのも棗がかなりのネガティブ思考&すなおになれない暴走娘なことと、大前田がふだん犬っころなくせにご主人様がちゃんとかまってくれないっていじけるもんだから。
今回なんて携帯買ったけど、どう連絡しあえばいいのかわからない!という、お前ら微笑ましすぎだろうと思うしかないきっかけ。
まぁささいなことだというのは、こう客観的に漫画で読んでる身だからこそな言い分なわけで、彼らとすれば一大事なんですよね。
いつでもつながれるという安心は、逆に不安を掻き立てる場合だってある。
それは棗が携帯を手にしたことで、大前田との新しい距離感に戸惑っているだけで、じきになれていけばちゃんと掴んでいけるはず。
この2人の恋模様はいつまでたっても初々しさが感じられるんですね。
初々しいといえば山野辺くんサイドもとてもニヤつくのです!
長らく独り身のままさまよっていた山野辺くんにもついに春が来ている。始まったばかりのういういdaysを満喫中ですよ!
お相手の里中さんですが・・・・・・いや、ほんとかわいいな。
お姫様みたいな女の子ではなく、むしろ結構力強く生きてそうな感じなんですが、山野辺にちょっかい出して遊んで、でもあわよくばもっと近づきたいって空気にこっちもそわそわ。
恋ディスヒロイン、いろんな女の子がいますが、中でも特にお気に入りかもしれない。里中さんの軽やかな立ち住まいと、山野辺のムキになりがちな性格が、見ていて実に面白いw
この2人を結ぶのは身長というキーワードかな。
山野辺はいぜんに低身長フェチを開眼させており、身長ひくい女の子を彼女にしたいなぁウホホと練り歩いていた変態でした(捏造)が、里中はすらっとモデル体型、身長も同じくらい。
フェチと実際の好みは違うのか・・・「いや、俺、ちっちゃい女の子が好きだし」と自分に言い訳しながらうまいこと転がり落ちていく山野辺の明日はどっちだ。
徐々に詰まる距離。これから先はもう、悶絶するしかない。
里中さん回もっと来い!来い!山野辺との友人同士みたいな気兼ねないやり取りもっとみたい!といいつつラブコメ見たい!
たらたら書いてきましたが「恋愛ディストーション」6巻でした。
シリアスにラブコメに、いつもとはちがうようでいつもどおりのような内容。
まほ先生関連はかなり心苦しいエピソードでしたが、きちんとこの作品らしい、切なくも暖かなところに着地をしてくれてよかったです。
いろんなカップルの恋模様を見つめていくシリーズですが、恋愛だけにとどまらず人間関係の中で大切なものが描き出されているように思います。
この作品の好きなポイントに、ざっくりしていますが雰囲気のよさがありますね。一貫して肌触りいい感じの、なんだかうまく表現できませんが、深いところにまであったかいエネルギーを与えてくれるような。しなやかな作品だと思います。
サンデーGXで順調に連載がされているようなので、7巻も出ることでしょう。
新装版からでも読み出してよかったなぁ。続きを楽しみにしています。
『恋愛ディストーション』6巻 ・・・・・・・・・★★★★
まほ先生編はいい決着が見れてよかったなぁ・・・ほの暗く、光もある、バランスのいい一冊。
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