[漫画]触れて、感じて、愛して、1人で描く。『夏の前日』3巻
夏の前日(3) (アフタヌーンKC) (2012/06/07) 吉田 基已 商品詳細を見る |
また 夏がくる
吉田基已先生の「夏の前日」第3巻が発売されています。
んーいい表紙だ。2人の穏やかな時間がにじみ出るような。これまでで一番好きかも。
芸術大学の学生の哲生と、いつも和服を着ている年上女性・晶のラブストーリー。
淡く情感豊かなストーリーや絵楽しめますし、結構エロいこともやっているのでそういう面でも笑顔になれる作品だと思います。笑顔。
基本的に主人公の2人がイチャイチャするのを眺める漫画、ってことで間違いない。
それじゃ感想をー。
●この2人、かわいすぎる!!
まぁ書きたいことのほとんどはこれですよ。もうほんっとかわいすぎるんだ、この2人のやりとりは。まさしくニヤニヤがたまらん。しっとりと愛しあう2人。眼福である・・・!
まず晶さんが実にイイ。年上お姉さんキャラとしては個人的に猛烈なヒットキャラですよ。
か、かわッ・・・・・・
かわいすぎる・・・!!!
書きながら今の俺は満面の笑みでございますギャーなにッコレ!!
乙女のような恥じらいを見せつつ、いざという時にはお姉さんがリードしちゃうみたいな。
ビジュアル的にも和服をいつも着ていてツボですし、時折見せる凛とした表情とかもうね。いろんな一面をみせてくれるキャラクターなんですよ。
この作品は「いかに晶さんを魅力的に魅せるか」に注力しているようにも感じます。もちろんメインテーマは別にあるのですが、看板娘として素晴らしい魅力を解き放っている!
「キスうまくなったネー」のからかいとか完全に殺しに来てる。俺を。かわいさで。
そして彼女のかわいらしさは、やはり哲生と一緒に時こそがマックス。
いじらしく恋慕し、少女のように甘え、時に逆に甘えさせる。このバランスが素晴らしい。
でもこの2人の逢瀬に感じるのは可愛らしさだけではない。ぼんやりとした切なさもあって。
この2人、お互いに不安を抱えているんだけど、それは2人きりの時には表情に出さない。知らん顔して愛し合う。そうして優しいぬるま湯にひたる。
哲生がなにかを思い悩んでいるとわかっても、哲生が別の女の子を気にしているとわかっても、晶さんはそれを追求したりはしない。1人でいるときはあんなのうじうじ悩んでばかりなのに。そうやって、晶さんは哲生にとっての居心地のいい帰り場所であろうとしている。
そういうのがもどかしくもありますが、大人っぽい寄り添い方だなとも思います。
哲生も、どう晶さんと接すればいいかなどなど模索していることはたくさんある。末永く2人でイチャイチャしていってほしいなぁ・・・なんて思うしかないですよ、これ読んでると。
さてこの作品といえば、情熱的に絡み合う2人のセクシーなシーンなわけですが、3巻では
お前らなにやってんだ。
普段のムッツリ顔とはいったい何なのか・・・美脚黒タイツに顔を挟まれこの恍惚である。
そう、3巻ではスーツ姿の晶さんが拝める超レアシーンがあるのです。普段と違った格好してる女の子ってたしかに眩しいし、いいよねえ。それにガッツポーズかますのは読者だけでなく哲生もで、この醜態w
黒タイツを前に正座してる絵からして面白いし、そのまま黒タイツで下半身弄られて身悶えする哲生にニヤニヤするしかない。黒タイツのHって男のコだよな(何がだ)。
●晶の矛盾
この巻でクローズアップされていたことに、晶が抱える矛盾があったなと思います。
彼女自身自覚しながらも、一見するとおかしな要求をしていく。
例えば3巻で印象的だったのが、絵を書く哲生の元を訪れた時の反応。
やってきた晶をみて哲生はパッと明るい笑顔で歓迎します。まさに犬!尻尾ブンブンやってるのが見えそう!でもそれを見てさ晶さんはフッと残念そうな表情を見せる。自分に気づかずキャンバスを前に必死に絵を描いていた哲生を見た時は、すごく幸せそうだったのに。
けど「もう来んな」と突っぱねられると、この嬉しそうな表情。不思議。
哲生には犬であってほしくないのだ。でも犬なら犬でかわいいんだ!
側にいてほしい恋人像と、憧れる芸術家・・・つまり最初であった頃の哲生のイメージ、それらは微妙に重なりあいつつも、どうしても両立が難しい2つ。
愛してほしい。私ナシじゃいられなくなってほしい。でも孤独であってほしい。矛盾だ。恋人として幸せを育んでいっているように見えますが、「孤独を手放さないで」「私に媚びないで」と訴える彼女の心理は複雑で、だからこそとても面白い!どう愛せばいいのかにも微妙な葛藤があるんですよね。
森が語り弾きした自己満足の歌を、哲生が「いい歌だ」というシーンがありました。芸術家の孤独とは、それとも関連付けられますね。
誰の評価も気にしない。ただ自分を満たすための歌。
哲生ももっと芸術家らしいわがままさをふりまわしてみろよ。1人の世界に閉じこもって、自分のためだけの絵を描いて。
そんな哲生だから、晶さんは好きになったんだから。1人で戦う哲生が好きなのだから。
●はなみをめぐる迷走
ここの所いい調子に歩んできていた哲生ですが、3巻は後半から波乱の展開。
この作品1巻からわりとゆったりとしたストーリー展開をしてきました。しかしはなみ関連は読んでいてドキドキさせられる場面が多くあり、いつどう動くのかを注目していました。
と言うことでいよいよやってきたか・・・というべきファーストコンタクト。
もう道で探す必要はない。どう話しかければいいのか悩む必要もきっとない。
彼女はすぐ近くまでやってきた。予想だにしなかった形で突然に。
ついに触れてしまった。けどだからってこんな形でかよと。
そこから心のバランスを失ってしまう哲生。これまでになく話が動きそうな・・・!
それにしてもこれまで散々ひっぱったからか、あの見開きページの緊張感はすごい。
もうすぐ来たる夏。どんなドラマが待っているのだろうか。
そうそう、主人公が人物の「顔」を描けないのは、その人間の心をまだ知れていないから。。
もっと全てを知らないと描けないのがコイツの頭の硬さであり、芸術家としての誇り高いこだわりなんだろう。そんな彼は、ものを上手く描くには、という質問に対し「触って確かめる」と答る。
さぁて、触ってしまったよ、あの「はなみ」を。けど状況的にどうしようもないな。
いつかもっと人のことを知って、顔を描けるようになるといいんだけど。
ともかくいろんなモノに触れている今は、間違いなく彼の成長の日々。
そんな感じの「夏の前日」3巻でした。
スローテンポでしっとりと楽しませてくれる哲生と晶さんのふれあいも、芸術への情熱も、ついに進展を見せたはなみ関連のストーリーも・・・様々な面で面白かったです。
後半のストーリー面ではかなり動揺しましたねえ、これからどうなるんだか。
しかし相も変わらず微笑ましく、そしてエロい2人ですよ。けしからんなもっとチャつけよ!
晶さんというキャラが、よくばりなくらいにこれでもかと可愛いポイントを詰め込んだように思えてしまうのは俺の好みにジャストミートしているからでしょうかね・・・!
吉田先生の描く風景もまた美しくて、漫画としての雰囲気の良さも素晴らしい。
今回の表紙を見ておっと思った人は、読んでみて損はないんじゃないかなと。
でも清楚な内容を期待していると、想像以上に変態くさいことやってるのにビックリするかも。
まぁそこらへんのギャップもこの作品の持ち味か!ということで4巻も楽しみ。
・・・そういえばこの作品は吉田先生のデビュー作「水と銀」シリーズの前日譚にあたるようです。自分はそちらは完全未読なので、そっちもいずれ読んでみたいですねえ。
『夏の前日』3巻 ・・・・・・・・・・★★★★
とどまる所をしらぬ晶さんのかわいいお姉さんぶりに心射抜かれそのまま倒れこむ。
[漫画]女の子の世界はやわく可愛く切なく危うい。『百合アンソロジー dolce』
百合アンソロジー dolce (マジキューコミックス) (2012/05/25) アンソロジー 商品詳細を見る |
女の子は ちょっとキケンなくらいが 一番かわいいんだから
最近の百合ジャンルの盛り上がりっぷりは、百合をテーマにしたアンソロジー雑誌が多く登場していることからも伺えますねえ。
エンターブレインから発売された「dolce(ドルチェ)」も良質な百合アンソロジーでした。
基本的に甘い作品ばかりで、わりと安心してニヤニヤ楽しめる仕上がりかと。
「dolce」は以前エンターブレインから発売されていた「amaro」の発展系なんですね。
amaroと言えば毎号違ったテーマを設けていたちょっと珍しい構成の雑誌でした。
例えば「初めて」「男装女子」「秘密」が過去のテーマでしたね。
→男の子、女の子、ほんとはどっち?男装女子アンソロジー『amaro』Vol.2ほか
今回のテーマは「百合」であり、「amaro」から「dolce」とタイトルを改めて再始動ということか。毎号テーマが変わったamaroの系譜なら、このdolceが今後も続くかはわかりませんが。
「amaro」は苦いという意味でいしたが、「dolce」は甘いという意味。
そのタイトルにふさわしく、幸せも甘さもいっぱいに詰まった一冊!
まー「amaro」の時から表紙の雰囲気に反してニヤニヤできる作品ばかりのシリーズでしたがw
公式の特集ページはこちら。今回はとくに好きだった作品いくつかの感想を。
●とりあえずは表紙ですよ。なもり先生による表紙イラスト、かわいいなぁ・・・!
ベッドの上に携帯が置いてあるのがミソでしょうね。状況から見るに、きっとそれまでは携帯をいじっていたはずなんだけれど、今この瞬間には後ろから伸ばされてきた愛おしい女の子の手を握っている。
携帯が外の世界とのつながりを示すなら、それを手放し相手の手を握っていることで、2人の世界がより強調されている形になっている。細かなアイテムの使い方が素晴らしい。一枚絵にドラマが閉じ込めています。妄想が《加速》する!
●離れられない世界/飴沢狛
個人的に大好きな飴沢さんの短編。大王ジェネシスで連載も始まったし、来てる来てる。
本作は双子の少女を描いたもの。甘くもあり、しかしかなり酷な一面もある作品ですね。最後には思いを飲み込んでしまうわけですし。けれど百合としてみれば正解。
「わたしがいればそれでいいじゃん・・・」というこのわがままさ、身勝手さ!でもそんな、むちゃくちゃな事を言っているとわかっても抑えが効かない様子も素敵。
少女の卑怯さと、受け止める大人らしさがいい塩梅ですなあ。この2人はずっとこんな調子でいそう。そして飴沢さんの描く女の子は本当にかわいい。
●ヒミツのトビラ/ぴかち
ぴかちさんはヒャッコ同人の人!ってイメージを引きずる俺ですがこれもナイス百合。
健康的なインモラルさというか、やましくもあり微笑ましくもある絶妙の雰囲気。
あと巻末コメでビビッと。「ファーストキスのシーンを見せなかった(作中で隠した)のは2人だけのモノにしたかったからです」ですって。あ・・・あンまー!!
その記憶は2人だけのもの!
●綴る秘め恋/百合原明
PNに百合の二文字を持つ作家さん・・・そしてこの本でも一二を争うお気に入り。
たった12ページですが脳内で強烈に膨らみ上がるストーリーで、余韻もいっぱい。
なくなった祖母の、唯一の友人だったという女性の元を尋ねる主人公の少女が出会ったのは・・・というもの。オチも予想できたけど大好きです。
この本の中では1番切ない短編だったと思います。百合漫画に切なさを求めがちなので、もちろん甘くて悶絶するようなラブストーリーも好きだけど、こういう作品もあってくれて嬉しかった。
●ワガママなセカイ/渡まかな
この作品はなんというか、百合に感じている面白さとか、どういう所にロマンがあるのかってところを言語化してくれてるなと思って好きになった。物語もいいんだけど、百合への力強い肯定を与えてくれるいい作品だなぁと。
特にこのモノローグ。
「手を繋いだりハグしたり、かわいいけどそれだけじゃなくて、触れたら溶けてしまいそうな、甘いような危ういような、ギリギリのバランスに酔う、わがままな世界の住人」
色々ひっくるめても愛ある視線で見守ってる感じ。心に突き刺さるモノローグ!
少女同士の恋の世界を知ってとまどうばかりの主人公もかわいいし
彼女にちょっかいをかけて遊ぶ女の子も魅惑的な目をする。イタズラな。
コメディ調でテンションの高い中に、百合への愛もぎゅっと詰め込まれてて満足!
●嘘吐きシガレット/やまもとまも
んあー!かーわーゆ!泥棒とそれを追う刑事をモチーフにした短編。
これはもう主人公の不良っ娘がかわいすぎてな!たまらんですなー!責められたら弱くてあわあわしちゃう様子とか見てるこっちも熱くなる・・・!
綺麗にまとまった甘い百合漫画で、この2人の物語続きが見たくなりました。
●The pace of two/MATSUDA98
生粋の女の子絵師たるMATSUDA98さんの百合漫画わほーーい。
なにはともあれ女の子の可愛さを噛み締めるのだ・・・!
ふわっふわで、なんだか儚げで、触れたら壊れてしまいそうで、きっとこの女の子らに触れるのは同じく女の子しかありえないわなと感じざるを得ない。
ストーリーはシンプル。もっとページ数があってもよかったかなと思いましたが、実に微笑ましいハッピーな百合漫画に仕上がっています。
ざっと感想を書いてきましたが、他にもいい作品がたくさんありましたね。
たくさんの作家さんが参加しており、バリエーションに富んだ誌面になっています。その反面1作1作のページ数が少なくなっていて、ちょっと物足りなさを感じたものもいくつか。
そして「dolce」の名があらわす通り、収録作は優しく微笑ましいハッピーエンドの百合漫画がほとんど。なもり先生が表紙を描いていますが、これにピンときた方は読んでみてハズレではないはず。
しかしこれ、今後も継続して出ていくかはわかりませんねえ。
次が出るなら大歓迎ですが、せっかくテーマを変えて変えてこれまでやってきているシリーズなので、次なる新しいテーマに挑戦してみてほしいという思いもあります。
そんなわけで、「amaro」シリーズを応援し続けたいなと思える一冊でした。
女の子の世界は甘くて甘くて切なくて、ちょっと泣けてくる。
[漫画]お腹が空いて…どうにかなっちゃいそう…『pupa』2巻
作品が作品なので、1巻の時と同じくグロい更新になっているかもしれないので注意。
最後に・・・お兄ちゃんの顔・・・夢にちゃんと見せて・・・
アングラ臭が漂いすぎてすごい「pupa」2巻が発売されました・・・!
あーうん。2巻もグチョグチョでドロドロでした。ですよねー。それでこそです。
さて2巻はオビから非常に印象的ですね。「食べたい食べたいお兄ちゃんを食べたい!!」である。なんという勢い・・・全速力で襲いかかってきそうです。
しかしズバッとこの作品を表現している。1巻オビはまだやんわりとボカしていましたが、開き直ったかのようにこのアピール。正解なんじゃないかな。
「究極の兄弟愛とカニバリズムの新境地!!」・・・な「pupa」2巻の感想。
前巻→食べられてもいいんだよ。兄妹に愛に震える。『pupa』
さくっと紹介してみるならば、かわいいかわいい妹がある日バケモノになったというお話。理性失って人間もむしゃむしゃ食い散らかす。姿はグロテスク。
けれど妹のことが大好きなお兄ちゃんは、すべてを投げ打って妹を救おうと奔走する。
さらには彼らを付け狙う怪しい組織も近づいてきて・・・という感じでしょうか。
スリリングすぎる展開の連続でドキドキしっぱなしの作品です。
そのほか、ちょっとコレは人を選ぶ・・・という要素もてんこ盛りなわけですが、そこらへんは1巻の感想のときに書いたので見てくださればと。1巻の雰囲気は2巻になっても微塵も変化ナシ!
国が国ならきっと18禁だよねえ・・・と思ったり。
言ってしまえばすごく気持ちわるい漫画なんですよ。
どんどん人間は死んでいくし、その死に方もいちいちヒドいから気分悪くなる。
主人公たちを追い詰めていく状況も最悪で、どこにも光が見えてこない息苦しさが辛すぎる。
モチーフとして虫が多様されているため、蝶はいいとしてもイモムシやら潰れたサナギやら、不気味な描写ばっかり。エグ味しかない感覚。グロテスクなシーンもたくさんあるし、人にオススメしづらいんだよなぁ。読んでてやや気分悪くなってくることを否定しません。
ただ、そんな目を背けてみたくなる過酷な状況の中で、美しいものがきらめいている。
それはすなわち主人公である兄と妹の愛情。かれら兄妹の互いを思いやる想いの眩しさや力強さは、この作品の1番の、そして唯一の救いなんですよね。
けれどその想いは果たしてどこまで許されるものなのか・・・どこまで叶えられるものなのか・・・。なにしろあまりにも絶望的な状況なので、読んでる自分の心がまっさきに折れてしまう。
でも兄である現くんは絶対に諦めない。なんとかして妹を助けようと、もとの平和な2人だけの日常を取り戻そうと奮闘する。
現くんはこっちが吐き気がしてくるレベルに痛めつけられたりしてて、シスコンパワーまじはんぱねえと笑ってやれる余裕もない。いや、シスコンだろうと、この根性は本当にすごいよ・・・。
とは言え、2人の絶対のコミュニケーションとしてカニバリズム要素が盛り込まれているあたり、やっぱり人にはおすすめしづらい。
でも読んでてすごく魅力を感じる場面でもあることは事実。ドキドキするんだよなぁこれ。
グロい・・・けどなぜか心あたたまる1シーン。
食われることが快感となっているあたり、主人公の感覚もヤバすぎますが。
このアングルすごいですね。食べられてるのは自分ですよこれ。自分の身体が食べられているのとゆったり眺めているような・・・そんな描き方です。どこまで読者を引かせるんだよ!
極限まで、人間であることを手放してまで、お互いがお互いを助けようとする兄妹。
その姿は哀れみと感動がごちゃまぜになった不思議な感覚を産みます。
この兄弟愛がすごい!って話をした所でストーリーの話もしますか。
今後の展開を左右する重要キャラの登場、そして妹の決断、兄が見た「夢」・・・
2巻もドロッドロにヘビーな展開が目白押しで、ガーッと読めてぐったり疲れる一冊!・・・それは褒めてるのはどうなのか・・・いや、面白いんだけど・・・。
読んでいて思ったのは、兄と妹はそれぞれを思う気持ちは強固だけれども、個々は本当に不安定な存在なのだなぁということ。
人とバケモノの境界をふわふわと行ったり来たりしている。そして当人たちは想い合ってるからいいが、それに巻き込まれる人間たちはなんの考慮もなしに殺されまくりである。だってこいつらはこの2人だけの家族を守りきれればいいし、極論言えば自分だって壊れてしまっても相手が生き残ってくれればいいんだという思考の持ち主。
そんな破滅願望チックな感情に彩られ、加えてマニアック&グロテスクな要素の数々・・・かなり不健全な漫画であることは言うまでもない。
なんにせよ、彼らの不安定さはそのままこの作品の行き先の不明瞭さを生み出している。きっとハッピーエンドにはなれっこないというイヤな予感をビシビシを感じさせるわけですが、「もしかしたら・・・」と淡い期待もいだいてしまいそう。この絶妙のバランス感覚が、余計に読者をドキドキさせてくれるのでは。
このキャラはいつ『壊れて』しまうんだろうか。そんな不安がいつも頭をチラつく・・・、
このカットもすごい。女の子の背がパックリと割れて、そこからバケモノの姿が剥けて出てきている。この作品ならではと言えるショッキングな一枚絵といえるのでは。
こういう異形のモンスターが、女の子の中から顔をのぞかせているファンタジー感・・・これもまた、実は気に入っている要素でもあるのです。
そうそう、2巻は妹さんが完全にバケモノにならないまま、背中からガケモノのパーツをはみ出させているシーンがいくつか出てきましたが、これも面白いですね。
ほのぼのな絵柄で超シビアな設定を描き、巻き込まれて傷つけられながら愛しあう2人。そして背中からは人間ならざるモノの一部が生えている。イメージとしては個人的に「最終兵器彼女」をなんとなく思い出す組み合わせですが、似ているかと言われば、どうだろうなコレは・・・。
そんなところで「pupa」2巻感想のまとめに入ります。
相変わらず独特の濃厚な世界が広がっています。間違いなく人を選ぶ!アングラでインモラルなムードが強烈ですよ・・・!しかしストーリーの疾走感も素晴らしく、一気に楽しめるシリーズ。
一見突拍子もない漫画ではありますが、読者を引き込む迫力は十分。日常パートの絵などを見て感じる本来の作家さんのタッチと、メインストーリーでの絵柄のギャップが凄まじい。このギャップがこの作品に味わい深さを与えているような気もしますね。
緊迫感MAXな本編に加え、愛しあいながらどこか遠くから眺めてしまうどかしさや切なさにキュンとくる兄弟愛も見所ですよ。その2つが俺の心にガッとはまるのです。
本編に癒しがほとんどなかった分、各話の合間にあるオマケカットや巻末の描きおろし4コマなんかはとてもほのぼのしていて、心のダメージ回復ができるような気分。かわいい・・・。
まだまだ謎がいっぱいにある「pupa」。
次の第3巻では様々な秘密が明かされていくとのことで、予定の来年春が楽しみですよ。
気になる要素と言えば、兄妹の両親の話。それぞれの動きに要注目か。
カギを握るである重要人物もだいたい出揃った感あり、話も深まっていきそうです。
逃れれない残酷な運命は、愛しあう兄妹をどこへ連れていくのか・・・!
残虐と混沌と愛情がエネルギッシュにひしめき合うスリリング・ホラー。
『pupa』2巻 ・・・・・・・・・★★★☆
どんな結末をみせてくれるのだろうか・・・気になって仕方ない一作。妹も兄もマジ健気。
追い詰められてあがく少年少女の姿って、なんだかちょっとときめきませんか。
pupa(2) (アース・スターコミックス) (2012/06/12) 茂木清香 商品詳細を見る |
最後に・・・お兄ちゃんの顔・・・夢にちゃんと見せて・・・
アングラ臭が漂いすぎてすごい「pupa」2巻が発売されました・・・!
あーうん。2巻もグチョグチョでドロドロでした。ですよねー。それでこそです。
さて2巻はオビから非常に印象的ですね。「食べたい食べたいお兄ちゃんを食べたい!!」である。なんという勢い・・・全速力で襲いかかってきそうです。
しかしズバッとこの作品を表現している。1巻オビはまだやんわりとボカしていましたが、開き直ったかのようにこのアピール。正解なんじゃないかな。
「究極の兄弟愛とカニバリズムの新境地!!」・・・な「pupa」2巻の感想。
前巻→食べられてもいいんだよ。兄妹に愛に震える。『pupa』
さくっと紹介してみるならば、かわいいかわいい妹がある日バケモノになったというお話。理性失って人間もむしゃむしゃ食い散らかす。姿はグロテスク。
けれど妹のことが大好きなお兄ちゃんは、すべてを投げ打って妹を救おうと奔走する。
さらには彼らを付け狙う怪しい組織も近づいてきて・・・という感じでしょうか。
スリリングすぎる展開の連続でドキドキしっぱなしの作品です。
そのほか、ちょっとコレは人を選ぶ・・・という要素もてんこ盛りなわけですが、そこらへんは1巻の感想のときに書いたので見てくださればと。1巻の雰囲気は2巻になっても微塵も変化ナシ!
国が国ならきっと18禁だよねえ・・・と思ったり。
言ってしまえばすごく気持ちわるい漫画なんですよ。
どんどん人間は死んでいくし、その死に方もいちいちヒドいから気分悪くなる。
主人公たちを追い詰めていく状況も最悪で、どこにも光が見えてこない息苦しさが辛すぎる。
モチーフとして虫が多様されているため、蝶はいいとしてもイモムシやら潰れたサナギやら、不気味な描写ばっかり。エグ味しかない感覚。グロテスクなシーンもたくさんあるし、人にオススメしづらいんだよなぁ。読んでてやや気分悪くなってくることを否定しません。
ただ、そんな目を背けてみたくなる過酷な状況の中で、美しいものがきらめいている。
それはすなわち主人公である兄と妹の愛情。かれら兄妹の互いを思いやる想いの眩しさや力強さは、この作品の1番の、そして唯一の救いなんですよね。
けれどその想いは果たしてどこまで許されるものなのか・・・どこまで叶えられるものなのか・・・。なにしろあまりにも絶望的な状況なので、読んでる自分の心がまっさきに折れてしまう。
でも兄である現くんは絶対に諦めない。なんとかして妹を助けようと、もとの平和な2人だけの日常を取り戻そうと奮闘する。
現くんはこっちが吐き気がしてくるレベルに痛めつけられたりしてて、シスコンパワーまじはんぱねえと笑ってやれる余裕もない。いや、シスコンだろうと、この根性は本当にすごいよ・・・。
とは言え、2人の絶対のコミュニケーションとしてカニバリズム要素が盛り込まれているあたり、やっぱり人にはおすすめしづらい。
でも読んでてすごく魅力を感じる場面でもあることは事実。ドキドキするんだよなぁこれ。
グロい・・・けどなぜか心あたたまる1シーン。
食われることが快感となっているあたり、主人公の感覚もヤバすぎますが。
このアングルすごいですね。食べられてるのは自分ですよこれ。自分の身体が食べられているのとゆったり眺めているような・・・そんな描き方です。どこまで読者を引かせるんだよ!
極限まで、人間であることを手放してまで、お互いがお互いを助けようとする兄妹。
その姿は哀れみと感動がごちゃまぜになった不思議な感覚を産みます。
この兄弟愛がすごい!って話をした所でストーリーの話もしますか。
今後の展開を左右する重要キャラの登場、そして妹の決断、兄が見た「夢」・・・
2巻もドロッドロにヘビーな展開が目白押しで、ガーッと読めてぐったり疲れる一冊!・・・それは褒めてるのはどうなのか・・・いや、面白いんだけど・・・。
読んでいて思ったのは、兄と妹はそれぞれを思う気持ちは強固だけれども、個々は本当に不安定な存在なのだなぁということ。
人とバケモノの境界をふわふわと行ったり来たりしている。そして当人たちは想い合ってるからいいが、それに巻き込まれる人間たちはなんの考慮もなしに殺されまくりである。だってこいつらはこの2人だけの家族を守りきれればいいし、極論言えば自分だって壊れてしまっても相手が生き残ってくれればいいんだという思考の持ち主。
そんな破滅願望チックな感情に彩られ、加えてマニアック&グロテスクな要素の数々・・・かなり不健全な漫画であることは言うまでもない。
なんにせよ、彼らの不安定さはそのままこの作品の行き先の不明瞭さを生み出している。きっとハッピーエンドにはなれっこないというイヤな予感をビシビシを感じさせるわけですが、「もしかしたら・・・」と淡い期待もいだいてしまいそう。この絶妙のバランス感覚が、余計に読者をドキドキさせてくれるのでは。
このキャラはいつ『壊れて』しまうんだろうか。そんな不安がいつも頭をチラつく・・・、
このカットもすごい。女の子の背がパックリと割れて、そこからバケモノの姿が剥けて出てきている。この作品ならではと言えるショッキングな一枚絵といえるのでは。
こういう異形のモンスターが、女の子の中から顔をのぞかせているファンタジー感・・・これもまた、実は気に入っている要素でもあるのです。
そうそう、2巻は妹さんが完全にバケモノにならないまま、背中からガケモノのパーツをはみ出させているシーンがいくつか出てきましたが、これも面白いですね。
ほのぼのな絵柄で超シビアな設定を描き、巻き込まれて傷つけられながら愛しあう2人。そして背中からは人間ならざるモノの一部が生えている。イメージとしては個人的に「最終兵器彼女」をなんとなく思い出す組み合わせですが、似ているかと言われば、どうだろうなコレは・・・。
そんなところで「pupa」2巻感想のまとめに入ります。
相変わらず独特の濃厚な世界が広がっています。間違いなく人を選ぶ!アングラでインモラルなムードが強烈ですよ・・・!しかしストーリーの疾走感も素晴らしく、一気に楽しめるシリーズ。
一見突拍子もない漫画ではありますが、読者を引き込む迫力は十分。日常パートの絵などを見て感じる本来の作家さんのタッチと、メインストーリーでの絵柄のギャップが凄まじい。このギャップがこの作品に味わい深さを与えているような気もしますね。
緊迫感MAXな本編に加え、愛しあいながらどこか遠くから眺めてしまうどかしさや切なさにキュンとくる兄弟愛も見所ですよ。その2つが俺の心にガッとはまるのです。
本編に癒しがほとんどなかった分、各話の合間にあるオマケカットや巻末の描きおろし4コマなんかはとてもほのぼのしていて、心のダメージ回復ができるような気分。かわいい・・・。
まだまだ謎がいっぱいにある「pupa」。
次の第3巻では様々な秘密が明かされていくとのことで、予定の来年春が楽しみですよ。
気になる要素と言えば、兄妹の両親の話。それぞれの動きに要注目か。
カギを握るである重要人物もだいたい出揃った感あり、話も深まっていきそうです。
逃れれない残酷な運命は、愛しあう兄妹をどこへ連れていくのか・・・!
残虐と混沌と愛情がエネルギッシュにひしめき合うスリリング・ホラー。
『pupa』2巻 ・・・・・・・・・★★★☆
どんな結末をみせてくれるのだろうか・・・気になって仕方ない一作。妹も兄もマジ健気。
追い詰められてあがく少年少女の姿って、なんだかちょっとときめきませんか。
[漫画]思春期の大暴走…もう後戻りはできない!『惡の華』6巻
惡の華(6) (講談社コミックス) (2012/06/08) 押見 修造 商品詳細を見る |
春日くん・・・明日捨てようか これからの人生全部
ヤバイヤバイヤバイなんてすごい作品だろう!
押見修造先生の「惡の華」6巻が発売されました。これはもう、待望の一冊と言える!
発売ペースが特別遅いわけじゃないんですがもう早く読みたくて仕方なくて。単行本派である自分は、5巻を読んでからソワソワソワソワしてましたよ!
そして息を潜めるように読んだ最新6巻。今回も、すさまじい。感想書く!
前巻→背徳と情欲で暴走する少年少女に目が離せない!『惡の華』5巻
春日と仲村、2人だけの河原の秘密基地。その中には「向こう側」があった。
誰にも理解されないし許されない、おぞましくてきっと尊い、2人だけの秘密。そんな常識の「向こう側」が。中学生のもやもやが形となった、ある種の芸術が。
それを失わせたのが、クラスメイトの女の子、佐伯。
加えて佐伯の暴走が春日と仲村の関係をも揺るがす!5巻の佐伯はおおくの読者の度肝を抜いたと思われますが、その一件を受けて3人がこの先どうなってくのか・・・!?
「向こう側」に行く計画書は、警察の手に渡った。クラスが、学校が、両親が、国家権力が彼らを見つめる。彼らをとりまく状況は悪くなる一方。笑い話で済むラインをとっくに超えている。さぁ、どうする。
ノンストップ思春期。追い詰められて追い詰められて、未だあがき続ける若者たち。
この乾きが癒されるまで、彼らは走るのをやめはしない。
●決意の佐伯さん
さてなんか浸りながらあらすじ書いたところで6巻の話。
読んでてこんなにゾクゾクする漫画、そうはない。
事態を大きく動かした佐伯さんは6巻においても存在感を放ちます。一度覚悟を決めたら、とことんまで突き進んでいくんだな。
仲村から春日を奪うため、ムリヤリに彼とセックスした佐伯さん。彼女はその2日後、再び春日の前に髪を切った姿で現れました。何かを決意したように、優しい笑みを浮かべつつ。
ここからの佐伯さんのセリフは1つ1つに重みがありますが、特にこれが突き刺さった。
「・・・不幸にするのは、私だけにしたら・・・?」
なんてすごいセリフ・・・なんてすごい女の子なのか・・!
春日とどこまで堕ちる覚悟ができている。それでいて根深い独占欲を見せる。
深く、慈しみのあふれた、生臭いほどの愛情。
「君を不幸にできるのは、宇宙でただ一人だけ」なんて、自分の大好きなスピッツの曲の歌詞にもありますけど、まぁそれはおいといて、とにかくこのセリフは6巻でも一等気に入りました。
彼女が抱える想いに想像が追いつかない。分かるんだけど、どれだけ底が深いものなのか把握しきれない。ただ震えて受け止めるしかない・・・!
一度はあんなに心を剥き出しにして迫ってきた佐伯さんですが、今度の彼女の様子はそれとは違いましたね。あの時は仲村さんのものを強奪するためかすごい勢いがありましたが、心境の変化もあるのでしょう。1度セックスをした余裕・・・ともちょっと思えない。
にじり寄るように、囁くように、穏やかに手招きをしているような・・・。
そして彼女の進んだ道もまた衝撃で。この作品はどこまでも予想の上を行く。
どんな気持ちで春日の部屋を訪れたのか・・・想像すればするほど胸が苦しい。
●この緊張感、すさまじい!
佐伯さんが訪れるシーンも見所ですが、その前にあった警察官と対峙した場面の緊張感も凄まじかった。本気で息が苦しくなるくらい。
特にあの眼がギョロッとした男性警官。前にも登場したことがありますが、全てを知っているかのような雰囲気を醸しだしており、出てくるたびにドキドキしてしまう。
漫画の緊張感とかスリリングな味わいって、だんだんと慣れてしまう場合もあると思います。
でもこの作品は、常にドキドキさせてくれるなぁ。
この作品における「脅威」が、非常にリアルなものだということが理由か。
突拍子がなかったり、想像が追いつかないことではない。現実的な脅威ばかり。
いや、現実的だからこそ恐ろしい!間違った一歩を踏み出してしまえば、世界は一瞬で敵だらけになる・・・そのリアリティに身震いがする。
クラスメイトたちからは疎まれ、町ではうわさ話をされ、教師からも威圧され、両親すらも味方にはなってくれない。誰も守ってくれない。どこにも居場所がない。
「コイツらの人生は崩壊に向かっているのだ」という、寒気がするほどの実感があるのです。
それでも間違え続ける主人公たち・・・。
悪いことだって知ってる。だから、悪いことをするんだ。
たった1つの大切なものを見つけるんだ。
そうじゃなきゃ、こんなクソムシだらけの世界で生きていけない。
思春期の暴走がなにをもたらすのか。
彼らはどこへ行くんだろう。どこまで行けるんだろう。激動のまま7巻へ進む。
●『惡の華』をたずさえた3人
本編の話からちょっと外れて、オマケページについて。
これまでも話の合間に描かれているオマケですが、この6巻のものはとても印象的でした。
こんな感じ。メインキャラ3人と、惡の華が描かれています。
左から仲村、春日、佐伯。
これ、誰がどういうふうに惡の華を持っているのか、その違いがとても面白いのです。
仲村は高らかに掲げるようにして、惡の華を持っています。迷いなく、力強く手を伸ばして凛としている。彼女のキャラクターがよく現れていると思います。
しかし春日は、惡の華を背に隠すように持っている。
春日はまだ後ろめたさを持っているということが表現されているのかな。彼と比較すれば、仲村がどれだけ思い切りのいい性格・・・言い方変えればイッちゃってるかが分かる。
ただまぁ、春日も今や仲村と一緒に暴走しちゃっていますよね。このオマケイラストは、現在のストーリー進行に直接シンクロしたものというよりは、各キャラクターの資質を示したものなのかな。物語にシンクロしたものならば、彼の中にいまだ悩みを抱えている(バカになりきれていない)ことの現れか。
女の子が2人とも歩いているのに、主人公の春日だけが立ち止まっているのも深い。
そして佐伯。隠しはせず、しかし誇りはしない。自然に惡の華を持ち歩いています。
自然に惡とともにあるというのがいいですね。勝手に天使だと思い込んでイメージを押し付けていたかつての春日は、きっとこの構図は認められなかっただろうけれど、こうして歩いて行くのって特別なことではないよな。人間は正しく生きてばかりじゃないと思うし。
最初こそ「漫画のヒロイン」らしく美しい理想として描かれてきた佐伯さんですが、人間らしく自然で生々しい欲望を爆発させた最近の流れだからこそ描かれたイラストだと思います。
それと、惡の華を握る佐伯さんの手が、親しげに手をつないでるようにも見えるのは、変な解釈かなぁ。
6巻の佐伯さんの行動を見ると納得してしまうのだ。この惡の華は彼女の罪。罪だと知った上でそれを受け入れている、共に歩んでいくことを選んでいる。肝が座った彼女らしいじゃないか。
けれど親しげに罪をたずえているなら、やっぱり佐伯さんも怖いよ。普通の人間ならやっぱり後ろめたさを感じてしまうんだ。声高に惡を誇り叫ぶのも、惡と自然に歩んでいくのも、質が違うだけでどちらもすごいと思う。
『惡』と手を結んだ少女・・・そうしてでも手に入れたいものがあった。
意味不明な欲望に押し流されて理不尽な犯行に及ぶ春日・仲村よりもずっとわかりすい。けどやってることはなんら変わりない。彼女もまた、『惡の華』の犠牲者であり、共犯者だ。
じゃあまとめでも。
まさに息もつかせぬ展開へと爆走していく、思春期ダークジュブナイル『惡の華』。
泥沼にハマって戻れなくても、向かう先に未来なんかなくても、闇の中でのたうちまわって何かをつかもうとしている。そんな姿が描かれます。
それは滑稽で恐ろしい。けれどちょっとだけ理解ができて、そんな自分が怖くなったり。
言うなればこんなの、ガキどもが理性を失って暴走する、それだけの話だ。
この作品はとことんまでそれをやり通している。だからこそ凄まじい力がこもっている。マイナスのエネルギーをまき散らしている。それが気持ちよくすらあるんだ。ブチまけることの快感だ。
読むものを圧倒しそのまま深淵に引きずりこむようですよ。読んでいて自分もなにかに追い詰められているかのような感覚になります。
この作品が提示する『闇』はすごく深い。そえは人によっては身近に感じられるものかもしれないし、闇それ自体が強烈な魅力を放っていると思います。
キッチュという美的概念があるようですが、本作はまさにそれですよ。wikiによると「一見、俗悪、異様なもの、毒々しいもの、 下手物などの事物に認められる美的価値」とのこと。
おぞましいが故に人の心を惹きつけてやまないもの、それは惡に違いない。
この画像のシーン、これまで汚い世界をあんなに憎んでいた仲村とは思えぬセリフです。けれどこの時、きっと彼女は確かに初めて、なんでもない世界を美しいと感じたのだろう。それは彼女の胸にとある決意が秘められているから。
さぁ、冒険もいよいよ終わりが近いかもしれない。行けるとこまで行ってやろう。
刃を持て。クソムシだらけのこの世界に突き立てるに刃を。
もう後戻りはできない。
『惡の華』6巻 ・・・・・・・・・★★★★
煮詰まりまくりの思春期。疾走感やら緊張感やらでとびきり刺激的。本気で続きが気になる!
以降の巻
その目に焼き付けてくれよ、僕らの”惡”を。『惡の華』7巻
怯える幽霊と忘れられない華の影。『惡の華』8巻
[漫画]女子高生はやっぱり異常だな!『男子高校生の日常』6巻
男子高校生の日常(6) (ガンガンコミックスONLINE) (2012/05/22) 山内 泰延 商品詳細を見る |
かっこいい男の条件って何かな
男子高校生の日常、6巻が発売しています。
アニメ面白かったですねえ!どうなるかと思ってましたがずっごい出来よかったです。脇役に使うのかよってくらいいちいち声優に有名所が多かったのもギャグ。いやギャグじゃないけど。
好評のまま終わったアニメ版。それを見届けてから発売されたこの6巻の感想を。
表紙には「女子高生は異常」の3人が初進出。まったく女子高生は異常だぜ!的な。
「あれ、アニメでみた話が最新刊に入ってる!」
ってのを思いましたが、まぁ1話1話が短いショートコメディで、アニメにするとどんどん原作を消費しちゃいまして。ガンガンオンラインに掲載はされたけど単行本化はまだっていう話もアニメにされました。
(おかげでアニメの第2期は相当オリジナルを頑張らないと実現はそうとう先になります・・・)
ともかく、アニメで見ていた人はもう馴染みあるエピソードもいくつか収録されています。
しかしまぁ、ちゃんと原作漫画で読んでもおきたいのがファンとしてのなんとなくなアレ。
漫画と言えばパラッとめくればすぐに楽しめるお手軽さも魅力ですし、特にこの作品はなんとなーく手にとってなんとーなく読むってのが気楽で1番いい楽しみ方だと思ってます。
さて内容の方で。
ストーリーなんてほぼほぼ無いギャグ漫画なので、適当に気に入ったエピソードの話を。
まず第86話である。これがもう、さらっとひどいことしてて大好きw
個人的に本作トップクラスのお気に入りキャラ、りんごちゃんが登場!
と思いきや出番はこれだけなんですよ!食いかけのフランクフルトをいきなり顔面にたたきつけられて「ぐわっ!」と色気なく呻いて出番終了です・・・。
ツッコミも何もない。以降の流れでりんごちゃんの姿はどこにもない。ど、どういうことなんだ・・・。ヒドすぎる・・・!
そういえば前の5巻にはりんごちゃんの出番がほっとんどなくて結構寂しかったのですが
喜ばしいことに、6巻ではりんごちゃんの出番がそれなりに多い。
出てくればいつだって、あの愛すべきおバカさをみせつけてくれます。
ああ、やっぱウザい。そしてかわいい!第90話はまさしくりんごちゃん無双。
生徒会の面々が明らかに適当な相槌打ってるのにも笑ってしまう・・・。
5巻で出番が少なくちょっと不満だったのはりんごちゃんだけではないです。
文学少女ですよ!1巻の「でもこの風…少し泣いてます」のシーンは何度見てもニヤニヤしてしまいます。
最初のあんな出会いから、何度もヒデノリと会っては、なんだかんだで絆を深めてきている・・・のかは謎なんだけど・・・でもまぁとりあえず何度も顔は合わせているわけで・・・
この作品においては珍しくラブコメの匂いを感じる2人なわけで、文学少女が出てくると俄然テンションも上がってしまいます。
そんな文学少女をクローズアップする回も収録されていて、これがまた素晴らしいんだ。
こわいよ!無表情なのが余計にこわいよ!
相手がヒデノリを分かるやいなや、すぐに扉を閉めてエレベーターでふたりきりになる。
でもこれまで読んでいれば彼女がどれだけ不器用なのかはわかっているし、オチを確認すればなるほどなという感じに。
この第92話、ヒデノリの大混乱のモノローグも面白かったですが、もし文学少女のモノローグもあったらさらに笑えただろうなぁ。あのポーカーフェイスの内では凄まじい混乱と葛藤があったのだろうな。絶対焦りまくりで必死に表情を抑えていたんだろうw
めぐり合わせがいいんだか悪いんだかわからない2人だなー!
2人して頭の中がごっちゃごちゃになって暴走しちゃう感じが本当にかわいいw
文学少女は積極的にヒデノリに近づいていこうとしているのが見えます。この2人のエピソードはどれを読んでも好きだなぁ。ニヤニヤするじゃないですか。
本当にこの作品の女性キャラは、よくわかんないけど可愛く思えるってケースが多いな!
多くがギャグに突っ走ってるのに、そこになんだか愛嬌を感じてしまう不思議。
「男子高校生の日常」というタイトルではありますが、それを華やかに彩る女の子の存在は青春に欠かせないのではないだろうか!まぁ、あんまり青春してないけど!
りんごちゃん、文学少女の出番も多く満足の第6巻でした。
女の子だけでなく、いつもどおり男子たちもバカなことで遊んでるのでご安心を。
そして巻末オマケ「女子高生は異常」がやっぱり面白かったw
堂々とした陰湿さとか、ケンカの売り買いの仕方とかいちいち笑える。機嫌が悪いときの生島さんの目付きやばいわ・・・!女性キャラ全般に言えるかもだけど、やはり女子高生は異常である。
というわけで、個人的には充実の一冊となりました。
「最後にもう1ひねりあったら面白かったかな」という話もいくつかありましたが、独特のテンポで繰り広げられるギャグの数々に、たくさん楽しませてもらいましたね。
ギャグの切れ味は1巻がピークだったと思っていますが、面白さがそこから衰えていっているわけではなく、キャラへの愛着がましてきたことで作品の魅力もだんだん増えてきている。
なんとなーく読み返したりしてまったり楽しんでいきたいシリーズですね。
またアニメやってくんないかなーなんて期待してますが、いつになるやらだなぁ・・・!
『男子高校生の日常』6巻 ・・・・・・・・・・★★★☆
メインキャラがだいたいバランスよく?登場する楽しい第6巻。女子高生はやはり異常(迫真)。