[漫画]触れて、感じて、愛して、1人で描く。『夏の前日』3巻
夏の前日(3) (アフタヌーンKC) (2012/06/07) 吉田 基已 商品詳細を見る |
また 夏がくる
吉田基已先生の「夏の前日」第3巻が発売されています。
んーいい表紙だ。2人の穏やかな時間がにじみ出るような。これまでで一番好きかも。
芸術大学の学生の哲生と、いつも和服を着ている年上女性・晶のラブストーリー。
淡く情感豊かなストーリーや絵楽しめますし、結構エロいこともやっているのでそういう面でも笑顔になれる作品だと思います。笑顔。
基本的に主人公の2人がイチャイチャするのを眺める漫画、ってことで間違いない。
それじゃ感想をー。
●この2人、かわいすぎる!!
まぁ書きたいことのほとんどはこれですよ。もうほんっとかわいすぎるんだ、この2人のやりとりは。まさしくニヤニヤがたまらん。しっとりと愛しあう2人。眼福である・・・!
まず晶さんが実にイイ。年上お姉さんキャラとしては個人的に猛烈なヒットキャラですよ。
か、かわッ・・・・・・
かわいすぎる・・・!!!
書きながら今の俺は満面の笑みでございますギャーなにッコレ!!
乙女のような恥じらいを見せつつ、いざという時にはお姉さんがリードしちゃうみたいな。
ビジュアル的にも和服をいつも着ていてツボですし、時折見せる凛とした表情とかもうね。いろんな一面をみせてくれるキャラクターなんですよ。
この作品は「いかに晶さんを魅力的に魅せるか」に注力しているようにも感じます。もちろんメインテーマは別にあるのですが、看板娘として素晴らしい魅力を解き放っている!
「キスうまくなったネー」のからかいとか完全に殺しに来てる。俺を。かわいさで。
そして彼女のかわいらしさは、やはり哲生と一緒に時こそがマックス。
いじらしく恋慕し、少女のように甘え、時に逆に甘えさせる。このバランスが素晴らしい。
でもこの2人の逢瀬に感じるのは可愛らしさだけではない。ぼんやりとした切なさもあって。
この2人、お互いに不安を抱えているんだけど、それは2人きりの時には表情に出さない。知らん顔して愛し合う。そうして優しいぬるま湯にひたる。
哲生がなにかを思い悩んでいるとわかっても、哲生が別の女の子を気にしているとわかっても、晶さんはそれを追求したりはしない。1人でいるときはあんなのうじうじ悩んでばかりなのに。そうやって、晶さんは哲生にとっての居心地のいい帰り場所であろうとしている。
そういうのがもどかしくもありますが、大人っぽい寄り添い方だなとも思います。
哲生も、どう晶さんと接すればいいかなどなど模索していることはたくさんある。末永く2人でイチャイチャしていってほしいなぁ・・・なんて思うしかないですよ、これ読んでると。
さてこの作品といえば、情熱的に絡み合う2人のセクシーなシーンなわけですが、3巻では
お前らなにやってんだ。
普段のムッツリ顔とはいったい何なのか・・・美脚黒タイツに顔を挟まれこの恍惚である。
そう、3巻ではスーツ姿の晶さんが拝める超レアシーンがあるのです。普段と違った格好してる女の子ってたしかに眩しいし、いいよねえ。それにガッツポーズかますのは読者だけでなく哲生もで、この醜態w
黒タイツを前に正座してる絵からして面白いし、そのまま黒タイツで下半身弄られて身悶えする哲生にニヤニヤするしかない。黒タイツのHって男のコだよな(何がだ)。
●晶の矛盾
この巻でクローズアップされていたことに、晶が抱える矛盾があったなと思います。
彼女自身自覚しながらも、一見するとおかしな要求をしていく。
例えば3巻で印象的だったのが、絵を書く哲生の元を訪れた時の反応。
やってきた晶をみて哲生はパッと明るい笑顔で歓迎します。まさに犬!尻尾ブンブンやってるのが見えそう!でもそれを見てさ晶さんはフッと残念そうな表情を見せる。自分に気づかずキャンバスを前に必死に絵を描いていた哲生を見た時は、すごく幸せそうだったのに。
けど「もう来んな」と突っぱねられると、この嬉しそうな表情。不思議。
哲生には犬であってほしくないのだ。でも犬なら犬でかわいいんだ!
側にいてほしい恋人像と、憧れる芸術家・・・つまり最初であった頃の哲生のイメージ、それらは微妙に重なりあいつつも、どうしても両立が難しい2つ。
愛してほしい。私ナシじゃいられなくなってほしい。でも孤独であってほしい。矛盾だ。恋人として幸せを育んでいっているように見えますが、「孤独を手放さないで」「私に媚びないで」と訴える彼女の心理は複雑で、だからこそとても面白い!どう愛せばいいのかにも微妙な葛藤があるんですよね。
森が語り弾きした自己満足の歌を、哲生が「いい歌だ」というシーンがありました。芸術家の孤独とは、それとも関連付けられますね。
誰の評価も気にしない。ただ自分を満たすための歌。
哲生ももっと芸術家らしいわがままさをふりまわしてみろよ。1人の世界に閉じこもって、自分のためだけの絵を描いて。
そんな哲生だから、晶さんは好きになったんだから。1人で戦う哲生が好きなのだから。
●はなみをめぐる迷走
ここの所いい調子に歩んできていた哲生ですが、3巻は後半から波乱の展開。
この作品1巻からわりとゆったりとしたストーリー展開をしてきました。しかしはなみ関連は読んでいてドキドキさせられる場面が多くあり、いつどう動くのかを注目していました。
と言うことでいよいよやってきたか・・・というべきファーストコンタクト。
もう道で探す必要はない。どう話しかければいいのか悩む必要もきっとない。
彼女はすぐ近くまでやってきた。予想だにしなかった形で突然に。
ついに触れてしまった。けどだからってこんな形でかよと。
そこから心のバランスを失ってしまう哲生。これまでになく話が動きそうな・・・!
それにしてもこれまで散々ひっぱったからか、あの見開きページの緊張感はすごい。
もうすぐ来たる夏。どんなドラマが待っているのだろうか。
そうそう、主人公が人物の「顔」を描けないのは、その人間の心をまだ知れていないから。。
もっと全てを知らないと描けないのがコイツの頭の硬さであり、芸術家としての誇り高いこだわりなんだろう。そんな彼は、ものを上手く描くには、という質問に対し「触って確かめる」と答る。
さぁて、触ってしまったよ、あの「はなみ」を。けど状況的にどうしようもないな。
いつかもっと人のことを知って、顔を描けるようになるといいんだけど。
ともかくいろんなモノに触れている今は、間違いなく彼の成長の日々。
そんな感じの「夏の前日」3巻でした。
スローテンポでしっとりと楽しませてくれる哲生と晶さんのふれあいも、芸術への情熱も、ついに進展を見せたはなみ関連のストーリーも・・・様々な面で面白かったです。
後半のストーリー面ではかなり動揺しましたねえ、これからどうなるんだか。
しかし相も変わらず微笑ましく、そしてエロい2人ですよ。けしからんなもっとチャつけよ!
晶さんというキャラが、よくばりなくらいにこれでもかと可愛いポイントを詰め込んだように思えてしまうのは俺の好みにジャストミートしているからでしょうかね・・・!
吉田先生の描く風景もまた美しくて、漫画としての雰囲気の良さも素晴らしい。
今回の表紙を見ておっと思った人は、読んでみて損はないんじゃないかなと。
でも清楚な内容を期待していると、想像以上に変態くさいことやってるのにビックリするかも。
まぁそこらへんのギャップもこの作品の持ち味か!ということで4巻も楽しみ。
・・・そういえばこの作品は吉田先生のデビュー作「水と銀」シリーズの前日譚にあたるようです。自分はそちらは完全未読なので、そっちもいずれ読んでみたいですねえ。
『夏の前日』3巻 ・・・・・・・・・・★★★★
とどまる所をしらぬ晶さんのかわいいお姉さんぶりに心射抜かれそのまま倒れこむ。