[漫画]キスの3秒ルール、見せてあげます。『八潮と三雲』4巻
「あの夏で待ってる」見て「おねがいティーチャー」も見だしました。
八潮さん数かぞえててくださいね
「八潮と三雲」4巻が発売されました。
人間社会の裏側にあるという猫社会を描くちょっとファンタジックなお話でありつつ、毎回のようにニヤニヤさせられてしまうお気に入りのラブコメ作品でもあります。
3巻では成り行きで同居することになった八潮と三雲。(→いじらしいワガママに思わず笑顔 『八潮と三雲』3巻)4巻では2人の中をギュっと縮めるイベントが起きた、ような・・・?
4巻は八潮・三雲ペアのニセモノが登場する番外編からスタート。
指を舐められて顔真っ赤にしてキュンキュンしてる三雲ちゃんがかわいいのう!という感じですが、太刀魚ゲーム(ポッキーゲームみたいに太刀魚を二人で食べる謎のゲーム)をした後の八潮のセリフが、なにげに伏線になっていました。
「もし離してなかったら よかったんですか 私と く・・・唇がふれても」
「よかねえよ ややこしいことになるじゃねえか」
で、実際にややこしいことになっちゃってタイヘンなのがこの4巻なのですよ!
偶然重なった唇。しかしこれを三雲が意識しまくってしまい、途端にギクシャクしてしまう2人。八潮は動じていませんので1人でふわっふわしてる三雲ちゃんのちょっと空回りしてしまっている感じもまたニヤニヤしてしまうw
そんな気にしまくる三雲に対して八潮が言い放ったのが、今回のキーワードでもある『3秒ルール』。彼いわく、3秒以内ならキスもノーカウント。
ああ、もう、この三雲の表情が!
八潮と三雲は同居をしていても好意を明らかにしていても、仕事上のパートナー。
彼の言葉は三雲との関係が気まずくならないためのものです。やや寂しい一言ではありますがそういう意図がわかるからこそ、三雲も強がってキスなんて慣れてますからなんて言っちゃうのです。
でも本当ははじめてだったし、ファーストキスを無かったことにされてヘコんでもいる。
決してロマンチックなキスシーンではなかったと思いますが、そんな形でしてしまったキスにでもこだわる女の子の純情がうまく現れていて素晴らしいですね! 恋する女の子ってなんでこうかわいいんだろか。
で、そんな微妙な雰囲気から脱出すべく奮起する三雲。
その方法というのが八潮が示した「キスの3秒ルール」を逆手に取ってしまうというもの。
それはちょっとしたイタズラ心や小悪魔的発想であり、乙女としての勝負の一手でもある。
自分はちゃんと女の子なんだというアピールを、すごくストレートに八潮にぶつけてみせる。
ついでに「自分はキスには慣れてる」なんてバレバレを嘘を突き通してみたりも。
4巻はこのキス騒動を中心とし、三雲のかわいらしさが発揮されまくっていました。
そして物語の本筋も動いて、三雲を追う別エリアのボスが登場しました。
気になる続きは5巻にて、というトコロですが、一波乱ありそうで楽しみですね。
しーくんがまたしても登場し、三雲を慕うかわいい様子を見せてくれてもいます。
もともと安定感のある作品ですが、4巻まで来ると安心して読めましたねえ。
今回のメインであるキス関連でしっかりと楽しませてもらえました。
作品全体から感じられる優しい雰囲気がじんわり気持ちいいです。
八潮さんはあいっかわらずデレませんけど、ちょこっとずつ近づいてきてるのは感じますね。いずれ来る彼のデレに期待は高まるばかりです。ホントに来るのかわかりませんけども!
5巻は夏ごろ発売予定。八潮がかっこいいとこ見せてくれるかな。楽しみです。
そうそう、ネコの本能のためソワソワする八潮さんもなにげに可愛かった!
『八潮と三雲』4巻 ・・・・・・・・・★★★☆
クールな八潮、デレまくる三雲。2人のやりとりは読んでて幸せになれますね。
八潮と三雲 4 (花とゆめCOMICS) (2012/01/04) 草川為 商品詳細を見る |
八潮さん数かぞえててくださいね
「八潮と三雲」4巻が発売されました。
人間社会の裏側にあるという猫社会を描くちょっとファンタジックなお話でありつつ、毎回のようにニヤニヤさせられてしまうお気に入りのラブコメ作品でもあります。
3巻では成り行きで同居することになった八潮と三雲。(→いじらしいワガママに思わず笑顔 『八潮と三雲』3巻)4巻では2人の中をギュっと縮めるイベントが起きた、ような・・・?
4巻は八潮・三雲ペアのニセモノが登場する番外編からスタート。
指を舐められて顔真っ赤にしてキュンキュンしてる三雲ちゃんがかわいいのう!という感じですが、太刀魚ゲーム(ポッキーゲームみたいに太刀魚を二人で食べる謎のゲーム)をした後の八潮のセリフが、なにげに伏線になっていました。
「もし離してなかったら よかったんですか 私と く・・・唇がふれても」
「よかねえよ ややこしいことになるじゃねえか」
で、実際にややこしいことになっちゃってタイヘンなのがこの4巻なのですよ!
偶然重なった唇。しかしこれを三雲が意識しまくってしまい、途端にギクシャクしてしまう2人。八潮は動じていませんので1人でふわっふわしてる三雲ちゃんのちょっと空回りしてしまっている感じもまたニヤニヤしてしまうw
そんな気にしまくる三雲に対して八潮が言い放ったのが、今回のキーワードでもある『3秒ルール』。彼いわく、3秒以内ならキスもノーカウント。
ああ、もう、この三雲の表情が!
八潮と三雲は同居をしていても好意を明らかにしていても、仕事上のパートナー。
彼の言葉は三雲との関係が気まずくならないためのものです。やや寂しい一言ではありますがそういう意図がわかるからこそ、三雲も強がってキスなんて慣れてますからなんて言っちゃうのです。
でも本当ははじめてだったし、ファーストキスを無かったことにされてヘコんでもいる。
決してロマンチックなキスシーンではなかったと思いますが、そんな形でしてしまったキスにでもこだわる女の子の純情がうまく現れていて素晴らしいですね! 恋する女の子ってなんでこうかわいいんだろか。
で、そんな微妙な雰囲気から脱出すべく奮起する三雲。
その方法というのが八潮が示した「キスの3秒ルール」を逆手に取ってしまうというもの。
それはちょっとしたイタズラ心や小悪魔的発想であり、乙女としての勝負の一手でもある。
自分はちゃんと女の子なんだというアピールを、すごくストレートに八潮にぶつけてみせる。
ついでに「自分はキスには慣れてる」なんてバレバレを嘘を突き通してみたりも。
4巻はこのキス騒動を中心とし、三雲のかわいらしさが発揮されまくっていました。
そして物語の本筋も動いて、三雲を追う別エリアのボスが登場しました。
気になる続きは5巻にて、というトコロですが、一波乱ありそうで楽しみですね。
しーくんがまたしても登場し、三雲を慕うかわいい様子を見せてくれてもいます。
もともと安定感のある作品ですが、4巻まで来ると安心して読めましたねえ。
今回のメインであるキス関連でしっかりと楽しませてもらえました。
作品全体から感じられる優しい雰囲気がじんわり気持ちいいです。
八潮さんはあいっかわらずデレませんけど、ちょこっとずつ近づいてきてるのは感じますね。いずれ来る彼のデレに期待は高まるばかりです。ホントに来るのかわかりませんけども!
5巻は夏ごろ発売予定。八潮がかっこいいとこ見せてくれるかな。楽しみです。
そうそう、ネコの本能のためソワソワする八潮さんもなにげに可愛かった!
『八潮と三雲』4巻 ・・・・・・・・・★★★☆
クールな八潮、デレまくる三雲。2人のやりとりは読んでて幸せになれますね。
[漫画]小学校から大学へ、10年かけて挑む恋のバトル 『ラストゲーム』1巻
ラストゲーム 1 (花とゆめCOMICS) (2012/01/04) 天乃忍 商品詳細を見る |
―――勝負しよーぜ 九条
天乃忍先生の「ラストゲーム」1巻が発売されました。
「片恋トライアングル」という作品を読んで以来この作家さんのファンなのですが、前回の単行本から約2年ぶりに新刊の発売!テンションも上がるというものです。
本作はもともと全3話の集中連載だったらしいのですが、好評だったようで続編の連載が決定しているため1巻して発売されました。続編は現在発売中のLaLade始まってるそうで。
全3話の集中連載ということで、それならではの構成になっている作品です。
第1話が小中学校、第2話が高校編、第3話が大学生編。
順序良くきれいにまとまって、コンセプト的に読みやすかったです。
長い期間を通じて描かれる2人の様子に「腐れ縁」っぽさが上手く出ているのも面白い。
ざっくりとあらすじ。
勉強もスポーツもできてオマケに家もお金持ち、オレ様キャラを貫く主人公・柳。
しかしある日転入してきた九条という女の子が、彼のプライドを折りまくる。
得意としてきたことでも、目標の立派さや人としての格でも敗北感を覚えた柳は、ひとつの計画を考えつくのでした。それは九条を自分に惚れさせて、優位に立った上で彼女をフッてやるというもの。なかなか外道かつムチャなこのプラン、果たして上手く行くのか・・・?
まずメインの2人が、絶妙にかわいらしいキャラクターなのです。
基本的に無表情でカタブツなヒロイン九条さんは、三つ編みがかわいい女の子なんですが、かわいいのはむしろ主人公の柳の方で。
自分を気にしてもらおうと(「好きになってもらおう」じゃなくて張り合いたいだけなのがまたかわいい)頑張るも九条に華麗にスルーされたり、ドキドキさせられてしまったり。
九条の周りをグルグルしてる犬っころみたい。完全に空回りしてる男の子で、あんまりカッコいいところはない(ヒドい)んですけど、ちゃんと九条のことに一生懸命になっている姿が魅力的。オレ様主人公ですがそれでイラつかされるようなことはありませんでした。
九条のピンチの時には、ライバルというより友人として隣にいてあげる。
で、不純に彼女と付き合っている自分に罪悪感を覚えていたりする。
かるい男の子ですけど、根っこの部分の人間味の良さが現れていて好きな主人公。
そしてライバルへの対抗心は、いつしか淡い恋心へ・・・!
でもそんな自分の気持ちを認められない主人公の不器用な様子がまた、ね。
大学生編ではハッキリ恋に落ちたことを認めた柳ですが、天然な九条に見事に振り回されてて笑ってしまうw 根本的に上から目線になってしまうから全然相手を誘えないというw
「試写会のチケットもらった。いいだろう。」
「よかったね」
この2人ダメすぎる・・・。でもそこがかわいいんだなー!
そして最後、「ラストゲーム」と称して九条にとある勝負を持ちかけるのですが、その内容というのが「九条に気持ちを自覚させられたらオレの勝ち」というね。それを宣言されても全然状況が把握できていない九条さんも大概ですけども、これを「ラストゲーム」と言ってる柳にニヤニヤしてしまう。
本当だったら「惚れたほうが負け」というゲームを持ちかけるはずじゃないですか。それを無条件ですっとばしているということは、彼にとっては「惚れたほうが負け」のゲームの勝敗は着いてしまってるんです。もちろん彼の負けですよええ。「今度こそ勝ってやる」って意気込んじゃってる。どんだけ負けず嫌いなの。どんだけかわいいのこいつ。最後の一言「オレが勝ったら・・・」にも悶絶してしまうじゃないですか!
そんなわけで、キャラ愛的には実に色々燃え上がる作品なのです。
ただし、全3話を通しで見てみても若干盛り上がりにかけていたかなという印象。
加えてラブコメとしての進行具合は消化不良に感じた点も。コメディとしての面白さはあれど、ラブの方面のパワー不足。
思うに自分は、ヒロインにはちゃんと自身の恋を自覚して欲しいんですよ!燃え盛る恋心にどうしようもなく身悶える女の子が見たいんです!天然カタブツな九条さんだって、最終的には変化があったのですが、それにしたって足りない!九条さんが思わず顔真っ赤にして照れちゃうような展開が見たい!天乃忍先生の描く赤面女子は最高でござるって叫びたい!
というところで続編ですよ!集中連載からのステップアップ、2巻もきっと出るはず。
とは言えこの集中連載、各話ごとに年代が違っていてそこが面白かったのですが、連載となるとどう続きを書いていくんでしょうね。
大学生編から「ラストゲーム」の過程を描いていくのかな。
なんにせよキャラクターの魅力という面に置いてはかなり気に入った作品なので続編が読めるというのは嬉しいです。どうなるやら。
九条さんは高校生までの三つ編みが可愛いので、大学生編でも三つ編みしてくれないかなー。黒髪ロングでもかわいいんですけども!
んでもってこの単行本には読みきりが2本も収録されています。
どちらも今から8,9年前のもとということで絵柄もだいぶ違っていますが、こういう時期の作品を載せてくれるのはありがたいですね。てっきり最近の読みきり作品が載るかと思ったんですが、それらは今後2巻だったり短篇集等で拾って行かれるんでしょうか。
載っているのは「きみと、しあわせ。」「ひだまりの庭」。
天乃忍先生の作品は報われない恋(少なくとも作中描かれる範囲では)を描くことが多く、今回の「ラストゲーム」はそういう意味ではちょっと珍しい作品だったのですが、読みきりではらしさが現れています。
「きみと、しあわせ。」は切なさ全開でかなりお気に入り。
「春日、知らないでしょ。あたし、春日ばっかり見てるんだよ」の台詞にはやられた・・・。
という感じの1冊。
絵も相変わらず可愛らしく、内容も明るく読みやすかったです。読みきりは切ないけど。
表題作はわんこのように右往左往する主人公と、天然堅物ヒロインの掛け合いが魅力的。
とりあえずどんなふうに続いていくのかが気になりますが、メイン2人が気に入ったので出来れば結構続いて欲しいなーなんて思っています。2巻も楽しみにしています。
『ラストゲーム』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
10年をかけた恋のバトルの行方はいかに。メイン2人がかわいくてニマニマしちゃう。
[漫画]きっとこれは運命の出会い。『ロンリーウルフ・ロンリーシープ』
ロンリーウルフ・ロンリーシープ (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ) (2011/12/12) 水谷 フーカ 商品詳細を見る |
私もう 「ひとり」には戻れそうにないんです
水谷フーカ先生による「つぼみ」掲載作品2作目の単行本。
前回の短篇集「この靴知りませんか?」もまた素敵な作品でしたが、今回は1冊まるごとの長編。長いだけあってじっくりとストーリーが進んでいきます。
また今回は従来の水谷先生らしさに加えて、ダークな雰囲気も強いのが特徴か。
「つぼみ」掲載作ということで百合です。しかし過激なものではなく、百合描写はほんわか。
同姓同名。同じ病院。同じ時間。同じケガ。誕生日もたった1日ズレてるだけ。
でもタイプは全然違う2人の女の子が出会ってストーリーが始まります。
2人とも垣本伊万里。仲良くなろうと頑張ってみる2人ですが、果たしてうまくいくのか。
いやまぁ確かにタイプは違いますよこの2人。
かたやざっくりガテン系、かたや森ガールちっくなゆるふわっこ。
でも第1話からあまりにも似たもの同士すぎてニヤニヤしてしまうんですよ!
2人して自分から誰かにコミュニケーションをとっていくことが苦手で、どうすれば友達になれるのかも分からない。8,9、10ページの流れはそんな微妙なムードが出てて面白かったですね。
「待ちたいけど、なんか怪しく思われないかなあ、名残惜しいけど帰ろうかな」「あれ、待ってくれてない・・・それはそうか」みたいな。ほとんどセリフも表情の変化もないのに、もじもじした2人の思いが伝わる。絶妙の雰囲気表現がされています。これで一気に物語に引きこまれてしまいました。
水谷先生はこういう「空気(ムード)の演出」がとても上手い作家さんだなと思います。リズムのとり方も合わせて素晴らしい。
2人してどんよりして「もっと仲良くなりたいけど、私なんか迷惑だよね・・・」と。
こいつら完全にシンクロしてやがるっ!どんよりしたシーンですが、なんて愛おしいんでしょうか。このシーンの他にも彼女たちは知らないところでシンクロしまくりなのです。
そんな不器用さにも、それぞれに違った経緯があったりする。
2人ともが相手に負い目を感じていて、そうなってしまう理由も隠し持っているのです。
しかし互いが互いの悩みを、暖かな気持ちで受け止めてみせる。
そうすることで自信を得ていくんですよね。誰かに「この人のそばに居たい」と思われるのは、それだけで力になるのかもしれない。自分は自分でいていいのだと。まさに氷解。
人のやさしさが織り成すドラマは、心をぽかぽかにしてくれるのです。
物語は前半まで2人を中心とした、ほんわかな友情物語として進行。
時折ブラックな面を見せるも、きちんと2人で解決していきました。
しかしながら某B子さんが登場してから急転。思わずヒヤヒヤする展開へ!
水谷先生の作品にしてはちょっと珍しい、ストレートな悪意と、生々しい激情がほとばしるようになっていきます。なかなか新鮮だなと思いました。
B子さんというかこの理佳さんが怖いのなんの。
大きい方の伊万里に執着し実力行使に出たり、明らかに束縛しようとする。
けれどこの彼女もまた、孤独な一匹の狼だったのかなあとも思ったり。
「またひとりになっちゃったなぁ・・・」という大伊万里の言葉にいっきに態度を変えたのは、演技がかりすぎてるくらいの彼女の本当の想いの発露。
こんなに近くに自分がいるのに、彼女を自分を「1人きり」と言っている。どんなに優しい言葉と場所を与えても、彼女の心はそれを求めては居ない。いつだって別の誰かを欲しがった。
理佳さんもついに限界が来たということか。怒りをぶちまけてみせるも、それは彼女が最後にした「嘘」。真実と後悔と激怒とちょっとのやさしさを織りまぜた苦味のある嘘です。
理佳さんは確かに怖い人なんだけど、嫌いにはなれないんですよね。歪んだ愛し方しかできないことも、彼女の狡猾なのに不器用な部分が強く現れてるみたいで。
悪役として描かれはしても、ちゃんと最後にはそこから一歩抜け出します。
巻末描きおろしにも彼女は登場しており、彼女にもどうか幸せになってもらいたいものだなと。
彼女のようなキャラクターって扱いが難しそうですが、かなり上手くハマっています。
要所要所でくらーいモヤモヤがやって来て、そのたびにドキドキさせられましたが、でもやっぱり主人公2人のイチャイチャっぷりにはほっぺた落ちそうな勢いでニンマリしてしまう。
ラストシーン、そして巻末の描きおろし漫画はまさに極上と呼びたい仕上がり。
第1話のころから2人揃ってアタフタしながら縮めていった関係の結論は、単行本の最後のページにて出ます。こんなにギュッと握れば、もう離れることだって出来ない。
とりあえず自分は最高の笑顔で単行本を読み終えることができたのでした。最高!
そしてタイトルの「ロンリーウルフ・ロンリーシープ」。
これにも結構含みがあって、読んでいくうちにそこを意味してるのか、あそこの繋がるのか、と色々楽しむことができました。誰が誰にとっての羊かな、狼かな、とかなんとか。
小さい伊万里の風貌や性格からして彼女が羊なんだろなーなんて思いましたが、描きおろしを読んでみたらケロとした顔で「私の方が夫です」とか言っててもうなんなのこの子!ウボァー
まぁ誰が羊だ狼だって決めてしまうより、定義と想像の幅を広げるのがベストか。
どっちにしたって、最高にかわいらしい2人なのだから。
濃ゆい恋愛が展開される百合作品ではありませんが、優しくあっさりとした中に深いメッセージ性、痛みや孤独などネガティブな要素も強く打ち出されており、けしてさらりと読み流せるものではありません。
それでもこのふんわりとした幸せな雰囲気で、最後にはちゃんと笑顔になれる。
百合と聞いて一歩ひいてしまうような人にもお勧めしたい一冊。
不器用で弱虫な女の子たちが、精一杯に手を伸ばして進む、愛のお話です。
『ロンリーウルフ・ロンリーシープ』 ・・・・・・・・・★★★★
ほんわか甘いラブコメにダークな色が混ざる。一巻完結百合作品。最後はちゃんと笑顔。
[漫画]星々(ぼくら)の運命を占おう。 『ロンリープラネット』
ロンリープラネット (KCデラックス) (2011/11/30) 売野 機子 商品詳細を見る |
寂しいんだよ そろそろ誰かと深く関わりたいんだよ
講談社BE・LOVEにて連載された「ロンリー・プラネット」。
売野機子ファンとしては白泉社「同窓生代行 売野機子作品集2」の同時発売ということで、11月末はテンション上がったものです。ひとまずこちらの単行本から感想を書こうかなと。
思えば売野先生として今回が初めての連載作品ということになるんでしょか。
「ロンリープラネット」全5話と、読みきりをひとつ収録した単行本となっています。
●まず表題作「ロンリープラネット」の話。
占いをテーマに、恋愛に限らず人と人との繋がりを描いた作品。
カリスマ占い師の姉を持つ主人公は、イケメンであることがある種のコンプレックス。顔がいいということだけで期待をされて、実際には中身がない自分を見透かされるのを恐れている。
そんな彼が周囲から勘違いをされ、姉の代わりに占い師(のまねごと)を始めます。
各話ごとにメインとなるキャラクターいて、それぞれに印象的な場面がありました。
愛を求めすぎて空回りしてしまう女性(第2話)なんか面白かったですね。
最初は滑稽で笑えていたものも、すすむにつれエスカレートし笑えなくなってくる。必死な姿に切なさや寂しさすら・・・主人公はやさしい言葉はあげても行動で応えてはあげないし。
でもこのエピソード中に「占い」は、なかなか面白いものとして描かれている。
「未来なんかわからなくていい」と占いをいったん否定しておいて、「今の私をだれかが知ってくれている」ことが彼女にとっての救いであり、勇気になる。
占いを信じる人も、きっとそれが本当の未来だと信じきっているわけではないだろう。それでも誰かから、なんの根拠もなくていいから、自分の支えてくれる言葉が欲しい。
そうして涙を流す彼女。印象的なシーンでした。
これはこの作品全体に行き渡る「占い」の考えかなぁと。
なんの根拠もないけれど、誰かの背中をそっと押してあげられる、力強い肯定。
未来はだれにも分からないから、人の手に及ばない「運命」を信じたくなる。願わくばそれはほんのちょっとでも幸せな運命であることを。
第1話の終盤、病気の女性のシーンが心にズキッとしましたが、あれが正しい。所詮気休めにすぎなくても、占いはその人の心をほんのちょっと軽くしてあげられるのです。
主人公の初恋の女の子・菜菜と、その人に恋している既婚の女性漫画家・リサ(第3話&第4話)は純粋に切なくも力強さを備えたエピソードで大好き。
主人公、菜菜、リサで妙な3角関係が出来上がり、さぁどうなるかと思ったらなんてことなく皆(いや2人か)が現実を受け止めぐっと痛みを胸に宿すのみ。
でもリサが最後に握り締めるのは、いつか悲しんでいた誰かへ向けた幸せな物語を紡ぐためのペン。熱い!かっこいい女性だなぁリサさん。抗いはしないけど、精一杯の努力と誠意で戦っている。健全で、正しくて、でもだからこそ切ない。
全5話、それぞれの話に幸福と切なさを宿した余韻がありました。いいですねえ。
ただ第1話の三つ編みの女性に関してはもうちょっと掘り下げて欲しかった気も。
さて、終盤に印象に残ったのはやはり主人公の変化です。
勝手に期待されてはガッカリされて。ガッカリされないように頑張ることにも疲れて。
寄せられる期待を裏切らぬように、相手が喜ぶ言葉を選んで行う彼の占いは、やっぱりどんどんとボロが出てくる。というかもともと占いなんて出来ない。
笑顔を見せないのも特徴か。基本的に表情は硬いままです。
ですが1話から4話の様々な出来事から、彼は変わるのでした。
第5話では彼は周囲へと 嫌われたくないと行動してきた彼が、はっきりと「自分はニセモノです」と言ってしまう。
で、彼なりにちゃんとした占いをしてあげようと、何冊もの本を見比べ見比べ占ってあげますが、相手の女性はウンザリな顔で帰っていく。
ようするに客が求めているのは正しい占いではなく、お手軽にいい気分になれる占いなのだ。
彼の精一杯の占いは、うまく相手の心には届かなかった。でも大きな一歩です。
そしてここから、彼は本当の心を表に出していくようになる。
涙をこぼしたり、顔を赤らめ恋に落ちたり、「たいやき屋になる」なんて突拍子も無いことを笑顔で言い放ったり。途端にイキイキしだす主人公。こちらまでニヤッとしてしまうw
恋の落ち方もなんだか笑えてしまう。でも幸せそうでなによりです。
占いだってステキだけど、でも何より自分の意思と脚で踏み出すのだ。「スタート地点を僕が決めよう」は彼の素直で前向きな思いが輝いたような、爽快な一言でした。
そうそう、夜空を見上げて、人を星に例えて物思いにふけるシーンも素敵でした。
見上げれば同じように輝く星々も、本当は途方もなく離れていたりする。けれどそうやってそこにある限り、きっと誰かにちょっとずつ影響を与えている。
星空をバックにしたこのコミックス表紙も、人間を星にたとえているように思います。
一人ひとりは孤独でも、きっと些細なところでつながったりしてる。世界ってもしかしたらそうやってできてるかもしれない。ロンリープラネットでも、宇宙全体から見ればひとりきりじゃない。
人間関係の切なさや暖かさを、売りの先生らしい独特の空気とテンポで綴る作品でした。
「占い」が持つ意味をうまく描かれていて、作品の根底になっています。
詩的でありつつ、どこかコミカルな味わいです。
●そして同時に収録されている「その子ください」も秀逸な読みきり。
こちらは家族愛を描いた作品なのですが、一癖ある設定です。
特に娘と母親の関係というか空気が面白かったですね。
終盤には「友達」という言葉で表現されたりして、新鮮な家族のカタチ。
個人的に好きなのがお母さん。
まわり色んな物に覚える少女時代の彼女の描写には、頼れるものが周りにない心細さがあるんしょう。母親になった彼女の感情が揺れ動く様子が印象的です。
そして終盤のお父さんとお母さんの恋愛イベントにはニヤニヤせざるを得ない!
また、ラストシーンには視点の華麗な入れ替わりも素晴らしい。鮮やか。
2人のキャラクターの成長や、互いの友情がくっきりわかって楽しかったです。
そんな単行本「ロンリープラネット」でした。
味わい深いストーリーを複数楽しめて、満足感のある1冊になっていると思います。
特に連載作「ロンリープラネット」はお気に入り。心地よい暖かさ。
ドラマの面白さはもちろん、空間をたっぷり使った贅沢なテンポも魅力です。
どこかレトロな雰囲気を漂わせる絵柄ですが、これがまた好き。
売野機子先生を読んだことのない人にも当然おすすめしたい作品。
『ロンリープラネット』 ・・・・・・・・・★★★★
1巻完結。占いを通じてつながっていく人の心。優しいだけじゃなく、切ないだけでもなく。
[漫画]喋れない少女とエスパー少年『雪にツバサ』1巻
雪にツバサ(1) (ヤンマガKCスペシャル) (2011/12/06) 高橋 しん 商品詳細を見る |
翼がなければ 翔ぶこともなかったろう。傷つくこともなかったろう。
高橋しん先生の久しぶりの週刊連載作「雪にツバサ」1巻が出ました。
少年サンデーでやった「きみのカケラ」以来の週刊連載なんですね。
やはり「いいひと。」や「最終兵器彼女」を連載したこともあり、小学館のイメージが強い作家さんですが、講談社のヤンマガでの新連載です。最初ちょっとビックリしました。
現代を舞台とした、中学生の男の子と高校生の女の子のお話。
ちょっとファンタジーが入っていますが、なかなか読みやすい作品じゃないでしょうか。
周囲とうまく馴染めない中学生・翼。なんとなく不良グループに入っています。
そんな彼には、実は超能力者であるという秘密が!
といっても手を使わずテレビをけしたりハブラシを動かしたり、これじゃ「少能力」。
実際手でしたほうが効率がよかったりして、せっかくの超能力なのにムダとしか思えないことも翼のネガティブ思考を増長させるかたちに。
しかしある日、となる少女の心の声を読んでしまったことからストーリーが動き出します。
翼が出会ったのは、しゃべることができない女の子・雪。
誰にも聞こえない彼女の声を、翼だけが聞きとることができるのです。
この2人をメインにストーリーは進んでいくのですが、まだ大きくは動かず。
とりあえず舞台の説明と、2人の馴れ初めと心のふれあいをしっかり描くことを重視したオープニングになっていると思います。丁寧に2人が近づいていくことがわかります。
その際、この作品のキーワード「超能力」が大きく働いている。
しゃべることができず、そのせいで酷い目にあわされることもしばしば。外見的にはかなりかわいい娘なので、街の不良たちに目を付けられてレイプされそうになったり。しゃべることが出来ないのでうるさくされる心配がないんだとか。いやぁ胸糞悪いですね。
彼女にはとにかく拠り所がないのです。友達と仲良くしてる様子もみられないし、翼を探して平日に街中うろついてる謎の行動力は、普通は周囲から疎まれてるだろうなと。しゃべれないという障害もきっと影響してるだろうし、そのせいで悲しい思い出もたくさんあること臭わせられる。(男たちにおもちゃにされてる的な・・・)
まだ雪の家庭環境は明かされていませんが、そこも気になる所です。
そんな雪ちゃん、自分に超能力があると思い込んでめちゃくちゃテンション上がります。
私には超能力があるに違いない。そう信じて涙を溢れさせる。
自分を劇的に変えてくれる。ドラマチックな未来がやってくる。
己だけではなんとも打破できない現実と戦う、新しい圧倒的な力を信じる。
普段はあっけらかんと明るい雪ですが、冷たい寂しさを溜め込んでいるはずなのです。
超能力の『誤解』がストーリーを動かし、少女を変えていくのかな。
でも雪ちゃんの拠り所が超能力だけではなく、翼くん自身でもありそうなのがステキだ。
ボーイ・ミーツ・ガールのぬくもりですよ。寒そうな作品だからより強くそう感じる。
でもこの主人公がまたクセモノで、名言されてませんがかなり馬鹿で、卑怯者。
本当に超能力を持っているのは彼ですが、彼はもう何かを成すことを諦めている。
卑屈になって努力をしない。さえない自分を受け入れてしまっている。
まぁ自虐ですよね。自分なんてなにもできないし、誰とも必要とされてないんだと自分と言い聞かせる。誰かと関わることにちょっとした恐怖を抱いている。
でも、ときどき超能力がすごい威力を発揮する瞬間があります。
彼自身戸惑っていましたが、そのシーンを改めて並べて見ると、全部の場面に雪先輩が関わっている。雪先輩のためなら、彼はすごい力を出せてしまうのだ。
第1話、誰も聞くことができないはずの雪の悲鳴をただ1人聞きつけ、助け出せる程度には。
「自分でもなにかをすることができる」そんな発見をついにしてしまうのです。
訳に立たないと思っていた力だけど、女の子を守ることができそうなのだ。なんだ充分だ。
これまで無価値だった超能力は、少年と少女が出会ったとたんに輝き出す。
表面上は見えない、2人の意識のすれ違い。けれどそれも居心地の悪いものではない。
雪ちゃんが「自分には超能力はない」と気づいてしまった時は怖いですが・・・それはきっと先の話で。今は2人のぎこちないやりとりを眺めていたいです。
そういえば友達がいない翼くんですが、街のおねえさん方には人気なようで。
「翼の童貞はわたしたちが予約してる」とまで言われてる。どういうことだ!
翼くんもってもてやないか。まぁ童貞ってことでからかわれてる意味合いも強そうですが、羨ましいかぎりでござりまする。おねえさんたちも今後物語に強く絡んでくるかも?
そんな「雪にツバサ」1巻でした。
まだ展開に起伏が少なく、1巻の段階ではやや面白みに欠けたというのが正直なところ。
でも卑屈で寂しげなのに、どこか暖かな雰囲気づくりのうまさは流石です。
雪が降り積もる街において、ただひとつのぬくもりがあるように。
節々で感じられる切ない雰囲気、そしてメインの2人のやりとりの面白さが魅力。
この高橋しん先生は単行本での加筆修正が多いので、ためしに雑誌掲載Verと見比べつつ読んでみたりもしましたが、今回はそこまで大きな変更点はなかったです。
冒頭「翼がなければ」の詩と、第1話の冒頭がリファインが1番大きい箇所?
あとせっかくカラーが綺麗なのだから、第1話の冒頭はカラーで収録してほしかった。
「雪」という少女、「翼」という少年。
タイトルはそのまま主人公である彼らの名前からですが、しかしそれだけではないメッセージが込められていそうでワクワクしますね。「雪にツバサ」。
話すことができない「雪」、彼女は翼という少年の存在でうまく羽ばたけるのか。翼は彼女をうまく羽ばたかせてあげることができるのか。
単行本頭に添えられた詩も、この先の展開を暗示するかのようで意味深。
『翼がなければ 翔ぶこともなかったろう。傷つくこともなかったろう。』雪が翼が出会ったことで、傷ついてしまう未来にもなってしまうのか。はてさて。
1巻のラストでは予想外に緊迫した雰囲気になってきましたし、今後どんなストーリーになっていくかは気になる所です。2巻は早くも1月に発売予定。
『雪にツバサ』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
盛り上がりは2巻以降かな。雰囲気はかなり好み。雪先輩の笑顔に癒される。