[漫画]悩める少女たちはどこへいく『やさしいセカイのつくりかた』2巻
やさしいセカイのつくりかた 2 (電撃コミックス) (2011/11/26) 竹葉 久美子 商品詳細を見る |
あ そうか これがわたしの初恋なんだ
電撃大王GENESISで連載中の「やさしいセカイのつくりかた」2巻です。
19歳の天才少年が女子高の教師になってしまうお話。資金の問題で研究がストップし、やむなく知り合いのツテでやってきました。
ラブコメとして素晴らしくニヤニヤできる破壊力を要しながらも、それだけじゃない深いテーマを掲げてもいて、非常に見入るストーリーとなっています。思春期とは悩むための時間だ。
2巻は新キャラを複数交えつつ展開。メインメンバーの新たな1面も見れたり。
→“才能”を巡る学園ラブコメ 『やさしいセカイのつくりかた』1巻
2巻はしょっぱなから主人公が女装(メイド)をするお話で、ドタバタコメディとしての楽しさがあります。みんなで文化祭を楽しんでる様子が楽しそう。
ただラブコメっぽいことやっておきながら、ところどころトゲを見せてくる。
葵と母親のやりとりからはそれが感じられて、どことなく不穏というか、心にひっかかりができるというか。そして2巻では、葵の動きがいろいろときになるのです。
この作品、ハルカと葵という2人のヒロインが軸になっているのですが、それぞれポジションの住み分けが見事にできています。ハルカが恋愛、葵は学問から主人公に接近していきます。
ハルカは1巻で大きく行動を起こして行きましたが、2巻のメインはどちらかと言うと葵?
『ギフテッド』・・・特定の分野において高い能力を発揮する、才能ある人間。
主人公と葵は同じギフテッド。しかしそれをどう扱うかに決定的な違いがあります。
葵はは目立ちたがりません。周囲と足並み揃えて、ふつうの少女あることを望みます。
彼女をそうさせるのは、そう縛るのは、幼少のころ向けられた周囲からの奇異の視線。
最大の理解者であってほしい実の親にすら「気持ち悪い」と言われ・・・。
自身の才能を押し隠し、ひっそりと孤高にいる女の子なのですね。
でも主人公の朝永が与えてくれる、特別な学習の機会には瞳を輝かせたりして。
彼女は、本当は今にだって自由に飛び立ちたいと思っている。
でも女自身が抱えたトラウマがそれを妨げる。葵が乗り越えていくべき壁しょう。
でまぁそういう女の子だからこそ、2巻は葵の動きが見所。
いつまでも自分を封じ込めてちゃ、ストレスがたまるというものよ。
それはひとつのプライド。表に出さない怒り。ある種の対抗意識。
「オモチャ」呼ばわりされて、なんだか黒い火がついてしまった葵です。
憤っているのは、何も当然やってきた外国人だけにじゃない。
本当の自分を閉じ込めている自分自身にだって、ムカついているのだ。
・・・でも結局うまく行動に移せなかったりして。
「前」がどちらなのかは分かってる。でも踏み出せない。前途多難だな、悩める少女。
そして彼女は、ハルカがちゃんと勇気を振り絞ったことを思い出す。
自分のやりたいことのために、ストレートに行動を起こせるハルカの姿を思って、ちょっと羨ましくなる。ハルカと葵、ふたりのヒロインの関係性もなかなか魅力的なんですよねこの作品。2巻はそれが強く見えてきて、ニヤリとさせられました。
ハルカはいつも朝永の近くにいつ葵にちょっとモヤモヤしますが、葵は心配ない(朝永先生を男性とは意識はしない)と。なんかそう言い切られてしまうのも寂しいんですけども、ともあれこれで葵もハルカの恋を応援しだします。
葵は朝永に対して、まだ強い恋愛感情を抱いているわけではなさそう。尊敬はしていそうですが、しかしなんだか芽はありそうな気がしますねえ。この先どうなっていくのやら。
1巻のころから匂わせていますが、三角関係に陥る可能性もありそうです。
さて、葵がほんのり牙をむいたシーンが2巻のハイライトだったと思いますが
他にも気になった部分はあります。例えば朝永の妹さんと弟さん(双子)。
歳相応に賑やかさを持った妹さんは可愛らしかったですが、その妹も弟も、朝永先生と同じギフテッド。特殊な側の人間です。
日本に戻ってきてからちょっとギクシャクしてしまっている兄と弟。
才能があるかどうかとか、それがどんなものなのかとか、そういうのはこの際どうでもよくて、これは家族の距離感の問題です。こいつら勉強はできても人付き合いはヘタなのだ。
兄弟揃って不器用で、でもインテリっぽいイタズラの掛け合いをして楽しみ合う様子を見てると、なんか面白い1面を観れた気分になれました。
「いつか追いついてみせるよ」というセリフは、同じく才能ある人間としてのライバル意識と、家族としての絆の再構築の意思の現れでしょうか。なんて力強くあったかいセリフなんだろう!
今はまだいろんなモノが足りないかも知れないけれど、まずはそういう目標でつながり合っていることが、この家族にとっては大切なんだろな。家族として、同じ才能ある者として、きっと強く理解しあえるであろう近しい存在なのだから。
「いつまでも置いてけぼりは嫌だものね」。兄は目標だ。追いかけて、もっと仲良くなろう。
双子の話も「才能とどう付き合っていくか」「人と人がどう近づいていくか」というこの作品の本流の中にあるエピソードでした。それに家族との絆をからめ、主人公の特殊性を再認識。
もう1件気になるものといえば冬子ですよ!ですよね!
ごく短い会話で、小野田先生に急速に心ひかれていくさまは悶絶ものでございます!
最初は困ったような恥ずかしいような申し訳ないような、複雑そうな表情をしていましたが、もうみるみると恋する女の子モードに入っていく。一連の表情の変化を追うだけでニヤニヤしますな。かわいすぎるだろーくそー。
この作品はみんな悩んでばかりですけど、女子高生の1番のパワーは恋なのだ。
がむしゃらに。自分の気持ちに正直に。堂々とお姫様になりきってしまえ。
しかし相手は学校の先生です。どうなってしまうのか!
小野田先生と冬子のこの先が気になりすぎてヤバい!
というわけで第2巻の感想でした。
この作品はキャラクターの配置が絶妙だなと感じます。ラブコメしても「才能」をめぐるちょっとだけシリアスなパートにしてもキャラがうまく動く。無理矢理感が無いというか。
でもそれが全部、多くの人が抱くであろう思春期特有の不安や興奮で、あーもーみんな青春してんな!という感じ。ほくほくしますね。
そしてみんながみんな、何らかのくすぶりから飛び出していく。
2巻は特にそういう姿がたくさんあって、作品のメッセージが染み入ります。
飛び出した先に何が待ち受けているのか、まだ答えにたどり着いていない人ばかりですが。
ただ、2巻目にしてストーリーの進みがちょいと遅いことが気がかり。
丁寧に描いてあることは間違いないので、今回は「溜め」の巻だったのかも。
とは言えこれまでに書いてきたように、この作品らしさは損なわれておらず、むしろテーマの力強さが増してきました。これからも物語を楽しみ追っていきたいですね。
この作品が面白いのは、「恋愛」という他者との関係が重要なものと、「才能」という自分をこつこつと磨いていく2テーマの共存。他者と、そして自分とどう向き合っていくか。これってきっとすごく普遍的なテーマですが、物語への組み込み方が上手な気がするのです。思春期の女の子たちをメインに回っていく物語にもバッチリ。
主人公だって先生ですがまだ19歳の男の子ですからね。成熟なんてしていません。
みんなの成長が楽しみです。やさしいセカイは、まだ遠いのかな。
『やさしいセカイのつくりかた』2巻 ・・・・・・・・・★★★☆
順調に進んできている第2巻。ラブコメ度が上がっていそうな3巻が今から楽しみ!
[漫画]ゾンビなあのコと色々あぶない同棲生活『りびんぐでっど!』1巻
りびんぐでっど! 1 (少年チャンピオン・コミックス) (2011/10/07) さと 商品詳細を見る |
断面まじまじ見るのはご勘弁を・・・
待ってましたの「りびんぐでっど!」1巻です。
少年チャンピオンはショートギャグ連載陣もなかなかな充実度で、ここ最近のお気に入りはこの「りびんぐでっど!」でした。単行本化してくれるかなーとちょいと不安でしたが、無事に。
最初は短期連載として始まり、そこから本格連載として再スタートした作品です。
ゾンビっ娘ってニッチだと思ってたんですけど、「さんかれあ」もアニメ化するらしいですし、流れが来てる気がしますなー。この「りびんぐでっど!」もステキなゾンビですよ!
ゾンビ少女と彼女に恋をする少年が同居をすることになるお話です。
ワケわかんないけどいつも賑やかな女の子・灰田もなこ。
階段から落ちてる死ぬというノーベルおドジ賞モノなことをやらかしてこの世を去った彼女・・・とおもいきやあっさりゾンビとして生き返りました。家もなくしたもなこは、棺に自分へのラブレターをくれた少年の家にやってきたのでした。
なんで主人公はお別れのラブレターきちんと住所まで書いたのか!はともかく、そんなこんなですぐに体がバラバラになる元気いっぱいな女の子との同棲が始まってしまいました。
目玉となる要素がゾンビであるだけあって、ゾンビらしさを存分にいかしたネタが次々飛び出してきます。まず表紙がいきなりおかしい構図w でもこれすごいかわいいですよね。
そういえば、前と比べるとちょっと顔色がよくなった、ような・・・?(どっちにしろ青白い)
これが連載のわりと初期のころのカラー。
でも顔色がどうとかより、このもなこがやたら可愛くてどうしようー!
ゾンビでこんな顔色わるそうなのに、実にいきいきしてるもなこ。
狂気を感じてもおかしくない絵面なのに、彼女を中心としたキャラクターたちの、慌ただしいのにどこかあっけらかんとした雰囲気のおかげで(せいで?)逆なごめてしまうようなシーンがたくさんあります。
ズレてるのはもなこだけじゃない。主人公もその両親もほかのみんなも、もなこのあれやこれやをあんまり不思議には思わない。それどころかそれに順応しだしていたりもw
「ゾンビがゾンビゲームしてるんじゃねーよ!」ってツッコむのそこなのか。
もなこは手持ちぶさたに自分の体を分解してしまったり、ずいぶんと自由にゾンビライフを楽しんでいますね。というか明らかに自分の体で遊んでます。自由だなー。
自分の腸もロープがわりにするよ!
人助けとは言えなんという発想・・・しかも子供たちもなんのためらいもなくもなこの腸を掴んで引っ張り上げようとしてるし、なんだろうこれ・・・。
そしてこの生命力!
さすがゾンビ!どこまでバラされたって平気だ!・・・あれ、ゾンビってここまで丈夫なの?
人体バラバラとかひどすぎるのに、なんでこう明るいんだろうなぁw
誰1人、まるでなにも気にしてない。それがある意味この作品の狂気・・・!
ギャグ要素が濃すぎて、設定から想像するほどラブコメっぽくはないのですが、なぜかイイハナシダナー的にラブコメっぽいことしてたりもします。それも結局はギャグになっていったりしますが。全体的にハイテンションなこの感じも好きです。
もうひとつ。この作品は天然ボケが多すぎる!
主人公がかろうじてツッコミ役をこなすも、彼自身も世間的にはおそらくボケ側の人間。そんな人間にツッコみをまかせてもトンチンカンなことにしかならないのです。
ということでもうボケボケですこの漫画。ツッコミ不足ですよ。だれかー!この漫画キャラのだれかー!こいつらにツッコんでやってくれよー!ボケがナチュラルに放置されすぎですー!
そしていちいち言い回しが面白いんですよね、この作品。
「青山くんのけちんぼザムライ!」「勤労ゾンビ目指すよ!」「肉とふれあえない!」
「ひっひどい!!人を肉奴隷みたいに言うなんて」(それ意味違う)だとかなんとか。
こういう言葉の選び方も好きですね。これらがやたらとテンポいいギャグの中に散りばめられていて、いちいちおかしくて笑ってしまいます。
とまぁそんな風に、結構な密度のあるギャグ漫画になっていて、単行本で一冊通してガーッといっき読みするとちょっと疲れたかもしれませんね。
すこーじずつ、好きなだけつまんでいく楽しみ方が合いそうです。
そして1度読んでパワーを失うようなタイプの漫画ではなく、何度も読み返して楽しめる。
しばらくは近くに置いておく一冊になりそうです。
そしてなんといっても、この作品はもなこはグロかわいい。
こんな臓物をボロンボロンこぼしてていいのかw 作者曰く「腸とか出てるのにアチャ~くらいに思ってる女のコってかわいい」ということで、今後もどんどんともなこの内蔵がさらされることでしょう。もなこちゃんのなにもかもが丸見えだ!楽しみ・・・です、ね・・・?
ギャグ漫画の感想ってうまくまとまりませんね。とりあえず、良質なゾンビ漫画でした。
たまに肉を求めて暴走モードに入ったもなこもまたかわいいいんだ。
『りびんぐでっど!』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
みんなそろっておトボケなゾンビコメディー。みんながかわいい漫画でした。
[漫画]我思う、故に百合あり。 『百合男子』1巻
百合男子 1巻 (IDコミックス 百合姫コミックス) (2011/08/18) 倉田 嘘 商品詳細を見る |
百合道とは死ぬことを見つけたり!!!
以前から話題になっていました「百合男子」ですが、いよいよ1巻が発売されました。
自分は百合姫を購読しているわけではないので、これまで本格的にこの作品を読んではいませんでしたが、なにやら百合への熱い想いを叫ぶ漫画があるらしいと聞いて購入。
いやぁ、コレは大当たり。むちゃくちゃ面白かったです。
単行本めくって1ページ目のカラー口絵の笑顔が、カッコいいのにまたウザいw
今日はこの作品について、感想をかいていきたいと思います。
とにもかくにも、主人公・啓介の言動が面白すぎます。
漫画好き・百合好きにとっての「あるある」ネタも数多く交えつつも、やはり彼の真骨頂は、その熱いパトスほとばしらせる様子にアリ!
自分の脳内で「百合名場面名観」を作りあげていたり、ページ見開きで妄想をSS形式で垂れ流したり、女の子に扮して疑似百合を繰り広げる男の子に激怒し服を脱がせたり、女の子の様子を盗み見ながら勝手にモノローグを付けて勝手に悶々してしていたり、その百合にかける情熱にはドン引き、もとい、畏敬の念を抱かざるを得ません。(爆笑しながら)
他社の作品も伏字無しでがっつり紹介、そして愛を語りまくります。加えて「なんで先生に執筆をお願いしないんだ仕事しろよ編集部!!!」とまさかの編集部批判。もうめっちゃくちゃだw
しかし彼をそんな破天荒な方向に突き動かしているのは、百合への愛に尽きるのです。
この作品は、シリアスな笑いを積極的に取り入れたギャグ漫画として、十分に楽しむことができると同時に、真摯な想いが、恐るべき熱量を持って渦巻いている作品でもあります。
「好き」という感情を、こんなに力強く叫んでくれる主人公・啓介。
彼の姿は、ギャグとして笑い飛ばすには、あまりにもカッコよすぎるのです。
百合を愛するがゆえの葛藤に悩まされる啓介。彼の想いは非常にリアルで切実。
百合が大好きだ。もっと見たい。もって触れたい。近づいてみたい。
けれど百合に男、つまり自分という存在は完全に不要。むしろ害であるとも言える。
百合を世界を覗き見るとき、覗き見ている自分という不純物を意識してしまえば、必然的に「完全なる百合の世界」は成立しなくなっていまう。百合の世界と、それを楽しむ自分という存在は、共存が不可能なのだ。自分という存在が、百合を汚してしまう・・・それでも!愛することをやめられない!壮絶なまでの愛情・・・葛藤・・・百合男子とは、かくも罪深き存在か・・・!
しかしこういう作品の捉え方・見方って、考えてみると面白いものですよね。
自分という存在への矛盾と罪悪感を覚えながら百合を楽しんでいる啓介。
作中触れられていましたけど、彼は間違いなく「○○は俺の嫁!」と言う人間では無い。むしろ「自分なんかが彼女たちの邪魔を出来るものか」と言いきるタイプです。
なんか心底めんどうくさい考え方ですが、そうじゃなきゃ満足できないんです。というのは自分はそういう人間だから、というのも正直どうでもいいか。ともかく、彼の考え方は意外なほど自分とシンクロする部分が多くて、そういう意味でもとても面白かった。
例えば秘められた2人の関係にロマンを感じたとしても、その存在を自分が認識した時点で、「対象2人だけ」の関係でなくなってしまう。つまり自分の理想ではなくなってしまう。あれ、俺ってすごい邪魔じゃない?そんなジレンマ。好きなのに・・・!
「百合道とは死ぬことを見つけたり」という格言が作中登場しますが、これは「百合に男は要らないから、俺、死ね」という意味も込められている模様。なんて覚悟だ・・・感涙ものです。
啓介は物語の主人公でありながら完全に「部外者」であり、むし我々読者とほぼ同じ位置から百合を見つめています。ここまで読者に寄り添ってくれる主人公というのも凄いなと・・・!
とにかくこの主人公が濃いキャラクターになっているので、彼が好きになれたらこの「百合男子」という作品はあなたにとって素晴らしい作品になると思います。彼の叫びは私たちの叫びそのもの!
と長々語りましたが、他にも魅力的な面があります。
まず先にも話題にしましたが、他社の作品だろうとガンガン話題にしてきます。「少女セクト」「けいおん」「オクターブ」「ささめきこと」などなど。
それらの作品を、一見なかなかのいい男たちが真面目に熱く語りあっている第4話は、個人的にも大のお気に入りエピソード。
(クリック拡大)
自分の意見や「好き」をぶつけあう・・・やや行き過ぎた口論になっても、趣味を同じくする仲間たちとこうして熱く語りあってる姿は、微笑ましくも羨ましい、素敵な一幕に見えます。
口論してる内容はなかなか酷いものなんですけど、本人たちは真剣そのもの。だからこそ笑えてしまうwそしてその内容を読むこともとても楽しいんですよ!
というか、すごく他人事じゃない感じです。リアルで趣味の話をしてる時、周りからだと自分たちはこんな風に見えているんでしょうか。胸が熱くなるな(白目)。
内容も文句なしであるのに、巻末インタビューや作者あとがきもとても面白かった。
しかもどうやら5巻分のプロットができ上がってるといいうことで、思ったより長いシリーズになってくれそうです。まだまだ百合男子ワールドを楽しむことができそうで嬉しいですね。
しかもカバーはまさかのリバーシブル仕様。啓介妄想カラーイラストは満足度高し!
カラーが画像だと上手く映らなくて残念ですが、とても素敵なイラストです。
とにかく、ギャグ漫画としても最高に楽しめるのに、ここまで百合への考えや作品への愛をを深く考えさせてくれるとは。病みつきになる面白さです。
「ひらり、」は毎号ですが、「百合姫」「つぼみ」はごくたまに、という具合のまぁしょぼい百合漫画読者ではあるのですが、この作品は百合への愛もまた深めてくれた気がします。
「あるある」ネタも凄く共感してしまうものばかりで、オビ裏の「これ、なんて俺?」は非常に的確。2巻以降への期待も思わず大きくなってしまうシリーズ1巻目でした。
そういえば、こそこそとエロ漫画を持って行く妹さんはナニをしているんだと小一時間。
『百合男子』1巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
最大級に滑稽で情熱的。百合男子たちの哲学と業の深さをご覧あれ。
ワイルドローズうんぬんも最高のバカらしさw
[漫画]いじらしいワガママに思わず笑顔 『八潮と三雲』3巻
八潮と三雲 3 (花とゆめCOMICS) (2011/07/05) 草川 為 商品詳細を見る |
すみません寝たいんですけど刺激が強すぎて・・・・・・
「八潮と三雲」3巻が発売されました。8か月くらいぶりなので結構お久しぶり。
自分はそうたくさんの少女漫画を読んでるわけではないのですが、「八潮と三雲」は大好きな作品の1つ。今回も引き続き楽しめる1冊でした。
表紙に見慣れない男がいて誰なんだろうと思ったら、気になってたアイツでしたね。
まぁそんな3巻の感想をー。
2巻収録の第4話で家がなくなってしまった三雲。
新しい家ができ上がるまで、なんだかんだで八潮の家にお世話になることになりました。
八潮にどんなに軽くあしらわれても、「少女漫画じゃ下宿人と書いて"こいびと”ですよ八潮さん!」と1人テンション上げてる三雲がかわいいですね!
ひとつ屋根の下、お約束のお着替えイベントもさくっとこなして、凄く楽しそうな三雲。
大好きな八潮さんと1日中ずっと一緒でいられるのが嬉しくでしかたないのですね。
しかし浮かれ続けてたら風邪をひいてしまったのが、第7話の三雲です。
この風邪のエピソードが個人的には3巻のベストだったかなと!
八潮に迷惑をかけてしまっていることの申し訳なさに悶々したり、「大人しくしてればワガママを聞いてやる」という八潮さんの言葉に、ベッドにこもりながら何をしてもらおうなぁと妄想していたり。一途なのが仕草や様子からがんがん伝わってきてなんというか本当かわいい。
でもいざワガママを聞いてくれる時になって、彼女は遠慮をしてしまうのです。
本当にして欲しいことを押しとどめて、手間もかからない上すぐ済むようなことをリクエスト。1番してほしいことは、もっと時間がかかる面倒なことでした。
それがなんだったのかは、読んでのお楽しみということで。
ふだん八潮に対してぐいぐい好意をアピールしていっている彼女ですが、きちんと彼との距離をはかっているのは間違いのないこと。八潮のためにしたいことはたくさんあっても、彼の負担になりたくない。
それは仕事のパートナーとしても、(あわよくば恋に続いていくことを期待しつつ送っている)現在の同居生活においても。うまく甘えることができない生真面目さでもありますね。
でもそういうところを含めて、八潮は三雲のことが気にいっているのかな。ガンバリ屋だから。
三雲ちゃんの人柄がよく表現され、かつラブコメとしての大盛り上がりのエピソードでしたね。
第7話の終盤はニヤニヤの連鎖が止まらず大変なことになってました。ぐおー!
ワガママ叶いすぎな!
表紙に登場している見慣れぬ男の子が初登場する8話,9話も面白かったですね。
2巻で三雲が寝言でつぶいやいた「しーくん」がやっとこさ登場です。
馴染みのある人・・・というか猫との久しぶりの再会に、2人で盛り上がるのですが
作者も狙っていたように、八潮が疎外感からちょっとだけテンション低い感じ。
暇つぶしに1人で影遊びに興じる八潮は、かわいいような寂しいようなw
さて、外見まるで人間でも、彼らは実はネコ。
「9生の猫」という特別な存在である彼らは、9つの命を持っていて、1度命を落とすたびに残りのライフが減っていきます。そして残り命数は名前に現れるという仕組み。
八潮なら残りの命は8つ、三雲なら3つ、という感じですね。
つまり命を落とすような危険な行為も、覚悟さえあれば無茶がきいてしまう。
三雲と白(しーくん)の回想シーンでは、三雲が自分の命を1つなげうって白を助けた、という描写がありました。三雲が大切な人のためなら、簡単に自分を犠牲にできてしまう彼女。
それはとても勇気のある尊い行動にも思えますが・・・・・・。このことも描く第9話も良かった。
「9生の猫」が1つの命をどう生きるか。それは今後この作品で描かれることになると思います。
んでもって白君と笑いあう三雲を見て、八潮も思うところがあったようで。
自分と一緒だと三雲は心からは笑わない。そのことに引っかかりを感じたと。
でもこんなストレートな確かめ方はどうなんだ!ビックリしました。
しかし、こんな意志確認をするという時点で、彼の中で三雲という存在がどんどんと大きくなってきてることがうかがえます。まだ自分のそばにいてくれるのか、その確認でもあるのだから。
いいですねいいですねー。変わらず仏頂面なのもまた!いつかちゃんと笑って欲しいけど。
今回も安定した面白さで楽しませてもらいました「八潮と三雲」。
ファンタジー漫画ですが、なんなんでしょうねこのさらりと読めてしまう感じ。
甘い恋愛描写も悶絶級に素晴らしいのですが、それを引き立てる八潮のぶっきらぼうさも好きですね。どんどん前に出てくる三雲といいコンビだと思います。見てて楽しい。
白くんが今後どれくらい本筋に絡んでくるかは気になるところですね。
八潮と三雲のやりとりの雰囲気が好きなので、適度に過度にイチャつきつつのんびりやっていって欲しい作品ですね。あとは単行本がもっと頻繁に出てくれれば。
そういえばこの3巻で一番笑ったのはオマケページ。
雑誌掲載時の広告スペースに「ボスの目安箱」というコーナーがあり、その上には八潮がつぎつぎと帽子を換えて描かれるのが定番になっているのですが、
もう帽子ってレベルじゃないな!オマケもますます熱い(?)第4巻が楽しみ!
『八潮と三雲』3巻 ・・・・・・・・・★★★★
風邪のエピソードには存分にニヤニヤさせていただきました。心地いいファンタジックラブコメ。
[本]"美しいもの”を見つけた女たち。 『蝋燭姫』
蝋燭姫 1巻 (BEAM COMIX) (2009/10/15) 鈴木 健也 商品詳細を見る |
蝋燭姫 2巻 (ビームコミックス) (2011/02/14) 鈴木 健也 商品詳細を見る |
泣かないで スクワ
Fellows!にて連載していました、鈴木健也先生の「蝋燭姫」1,2巻です。
今年の2月に発売された2巻で完結し、取り上げるのが遅れてしまいましたが、いやぁしかし何度読んでも本当に味わい深い作品です。Fellowsはかなり独特な誌面で雑誌そのものが大好きなのですが、個人的にはこれまでの掲載作品の中でもイチオシ。
中世ヨーロッパをイメージさせる世界観で、その描写力(おもにフェチっぽい方向における)と二転三転するスリリングなストーリー展開にすっかり惚れてしまいました。
今日はこの作品について感想をー。
国の辺境にある聖イルーユ修道院にやってきた突然2人の少女。スクワとフルゥ。
スクワはこの国の姫なのですが、次期国王ルルクス王子との権力争いに一時的に敗北し、王家の血を引く少女であるにも関わらず修道院へと追放されてきたのでした。
フルゥはそんなスクワ姫に付き従う従者。世間知らずで暴力的で、スクワ姫を溺愛してます。
質素倹約を重んじる修道院に幽閉された、一国の姫とその従者。
修道院での生活に不慣れなフルゥは、スクワのために、と無茶な行動を起こし、そのたびに修道院にトラブルを呼びます。姫を愛するがゆえの暴走ですが、これには修道女たちも困り顔。
そうして最初は浮いていた彼女たちですが、少しずつ周囲から理解を得て打ち解け始めます。
のどかな平和が続くと思いきや・・・しかし急展開、突如現れた男たちが修道院を襲撃。
いくらこんな辺鄙な修道院に押し付けられたからと行っても、国の姫であるからしてそ利用価値は計り知れません。姫を守るためにフルゥは剣を手に取り、修道女らも立ち向かいます。
次々現れる男たち、追い詰められる少女たち、その中でキラリ光る『本当に美しいもの』。
酷く現実的な重みのあるストーリー展開ですが、だからこそ感じるロマンに胸が躍ります。
以下、特に気になったところをいくつか紹介。ネタバレ注意。
目覚しいのはやはりスクワ姫様の変わりっぷりですよ。何ですかこの娘ー!・スクワ姫の変化
1巻の最初では尊大な態度で表情1つ変えることない、お堅い女の子だったのですが
2巻からはどんどん言葉数も表情も豊かになってゆき、自分を慕ってくれていたフルゥに「初めて会ったときからあなたのこと大嫌いだったの」と言ったと思ったら、見たこともないくらい顔を赤らめて「あなたのこと好きになったみたいなの」!やりおった!ガチ百合展開っ!しかも極上の格差恋愛っ!このときのテンションの上がりようはハンパじゃなかったですよ!!
以降フルゥに対してものすごい愛情を示すお姫様。
序盤の姫を見てからだと、子猫のようにじゃれる後半の彼女にはニヤニヤせざるを得ません。これまで距離をとってしまっていたからこそ、もっと近づきたい、もっと知りたい、もっと触れたい、積極的なお姫様ですよ。
フルゥとしては意外ではあってもどこか望んでいた関係のはず・・・ですが、やっぱり現実問題こんなことになってしまっては、彼女もどう姫に接していいかよく分からない。
ぎこちなくも甘い2人の様子には笑顔にならざるを得ないというものです!
微笑ましい2人の時間。しかしふと、スクワがフルゥに物語の読み聞かせを求めたとき、戦闘によるものとはまた別の緊張感が急に芽を出します。・フルゥに眠る狂気
フルゥが語ったのは、彼女の昔話。
幼いフルゥを救った、白く美しい一頭の狼。やがて彼女が大きくなり力をつけ、その狼と山中で再会をした。美しかった毛並みは汚れ、やせ衰え、率いていた群れを追われたらしくたった一匹で山にいた。憧れた強さ・美しさ・・・それはとうに失われていた。
自分にとってのかつての英雄に対し、彼女は行動を起こす。
その哀れさがかつての面影を塗りつぶしてしまう前に、殺したのだ。
それはフルゥの中に眠る無垢な狂気。
彼女はもともと珍しい黒い肌色をしており、それが原因で迫害を受けたこともあったのでしょう。そんな背景があったとすれば、彼女が「美しいもの」に強い憧れを持っていることに説得力があります。そしてそんなフルゥは「美しいもの」と言ったものは、紛れもなくスクワ姫。
ふと不安が襲います。フルゥが守りたいものはスクワ姫ではあるけれど、突き詰めていってしまえばそれは彼女の命ではない。美しさなのだ。
フルゥに心を開き、まるで普通の小娘のような振る舞いをするようになったスクワ姫を、彼女は良いようには感じていません。彼女が憧れたスクワ姫は、変わってしまったのだから。
姫の「美しさ」に異常な執着を抱く従者フルゥ。やがて彼女は、姫に刃を向けることとなります。
少女が抱く美への憧憬。それは至極当然で可愛らしいものでありながら、時として酷く歪で醜い姿を現します。この作品に繰り返し「美しい」という言葉が登場するのも、そういうものがテーマの1つとしてあるからなのでしょう。
一度は姫に剣を向けたフルゥ。しかしその後に自らたどり着いた答えには感動です。
ただ美しいだけではない、「本当に美しいもの」。それはなんだろう。
この物語でかなりな存在感を放つキャラクターに、ヤージェンカという少女がいます。・美しいもの
修道女の1人なのですが最初から何かにつけてはフルゥに突っかかり、言い争いを起こしていた女です。後に明かされますが、彼女もまた王家が差し向けたとある組織に属する人間でした。
けれど修道院に敵が迫ったとき、スクワとフルゥのために奔走した働き者。
到底そんな人物には思えなかったのに、なんですかこの頼りがいのあるお姉さんは・・・!と驚きつつもニヤニヤしていたわけですが、敵に囚われたヤージェンカが発した言葉には思わずさらに胸が熱くなる・・・!
「美しいものを見たんだ 命くらい張るさ」
その後にはフルゥのアップが入るなど、彼女が指す「美しいもの」がフルゥであることが示されています。前はあんなに疎んでいた風なのに・・・ヤージェンカさんー!!
彼女が命を張れるまでに憧れたもの、それはたった1人のために、1つのことだけを見て、ひたむきに行動できる強さと純粋さ。後にフルゥのそれが揺らぐからこそ読んでいてオイオイどうなるんだと酷く動揺してしまったのですが、それにしても熱い展開です。
美しいもの、それは人を変える。ヤージェンカの生き様もまさしく美しい。
「蝋燭姫」で一番痺れるのが、物語の終わり方なのです。以下ネタバレ注意。・物語の結末
結末に関しては様々な解釈ができます。
現実的なことを言えば、医学がそれほど進歩していないこの舞台でフルゥは腕を切断する大怪我と、あの衰弱っぷり。スクワは無傷ですが、フルゥを背負って治療のために吹雪く山を歩き通す体力なんてあるとは思えません。
そして最終コマ、2人の向かう先に描かれている意味深な十字架。
人的な意見ではありますが、2人はきっとこのまま生きて修道院へ戻ることは叶わなかっただろうと思っています。そう判断するに足る要素が、あまりにも多いのです。
物語としても、本当に美しいものを見つけたというところで本当に綺麗にまとまっているぶん、ここで2人は共に命を落としてしまったというシナリオでも十分に、いやだからこそロマンチックで感傷的な面白みがあるのではと。
と思えば、この作品、2巻の表紙に意地悪な仕掛けがしてありまして・・・それはお手にとって作品を読んでみてのお楽しみなのですが・・・表紙を手に取り広げて見てると、涙が出てきそうになります。
こんなに悶々させられた物語の結末は久しぶりで、それも別に嫌だとは思わないんですよね。ずっとこの作品を味わえるようで、幸せですらあります。
2chへのリンクになってしまいますが、鈴木健也先生スレには面白いものがあります。
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/comic/1297823220/36-37 キャプ画像→■
たまに見かけるコピペの改変ではありますが、本当に上手くできています。どのエンディングも、間違いないと肯定することも否定することもできないのです。
つまりこの作品、読者それぞれが思う一番「美しい」エンディングを、それぞれの中で迎えることができる作品でもあるのですよ。美しさに拘ったこの作品ならではの結末!面白いですね。
精密かつ豪華、独特なタッチで描かれる中世ロマン百合物語「蝋燭姫」。
2巻で綺麗に収まった、それでいて無限に広がりを見せるラスト・・・感服です。夢中で何度も読み、そのたびに甘酸っぱい感情で胸がいっぱいになりました。
素敵な物語を届けてくれた鈴木健也先生に、感謝するほかありません。
・・・と、上ではシリアスな部分をメインで取り上げましたが、他にもいろいろと楽しめるところの多い作品です。例えば、色々と下ネタも凄い作品でもあったりするのです。
ます異様に気合の入った女体描写にはビビらされます。いつだったか鈴木先生はFellowsの作者コメント欄で女体描写への熱を語っておられましたが、果たして披露されたフルゥの乳首は、まさに大迫力と言ったものでございました(神妙な顔)。ああ、自分は大好きですよ!!
ほかにも生理だ脱糞だと生々しい話題がどんどこ出てきますし、サディスティックな描写・シチュエーションも目立ちます。とんだ変態漫画ですよ!まぁだからこそ、精神面における美しさがよりキラリ際立つというものです。でもそんなマニアックな部分も魅力的!
基本的に野郎は敵、女性たちが戦うお話で、構図的にも時代背景的にも熱いです。
あらゆる部分で重厚な読み応えを提供してくれる物語でありますが、1巻2巻それぞれの中間くらいに収録されている書下ろしオマケ4コマ漫画がまた特にヒドいことになってます。
本編とはまた違ったシュールなノリのギャグが展開し、普通に笑ってしまいましたw「ガバガバさ」の歌を真顔で歌うフルゥはなんだよこれとw 鈴木健也先生ギャグも上手い!
・・・と色々書いてみましたが、まとめますと、何から何までツボな作品でした。
美しい記憶(物語)として、ずっと自分の中に残りそうな、名作と呼びたい作品です。
強いクセがありますが、いろんな人に読んでみてほしい物語。
鈴木健也先生の新作を楽しみに待つとします。
『蝋燭姫』全2巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
2巻完結にしてボリューム満点、そして文句なしに面白い。インパクトのある作品でした。