[漫画]炎に焼かれ、嵐の中で戦い続ける者たち。『3月のライオン』8巻
3月のライオン 8 (ジェッツコミックス) (2012/12/14) 羽海野 チカ 商品詳細を見る |
―――まるで焼け野っ原にいるみてーだ…
爺様―――!!!
買いに行ってこの爺様表紙とご対面した時には軽くびっくり。目立ってました。
まぁ確かに、8巻はこの柳原朔太郎が輝きを放ちまくりでありまして。
爺様カッコよすぎるだろ・・・と打ちのめされました。
もちろん柳原さんだけじゃない。宗谷名人の凄まじい才気と静かなる狂気にも触れる。深々と心に染み入る、穏やかだけど透明感ある迫力。読みながらなぎ倒されてしまいそうになる熱気。その両方が1冊で味わえもうほぎゃぎゃー。
大きく2つのポイントがあった巻だと思います。
順番に行こう。まずは宗谷名人について。
前巻のラストでいよいよ桐山と宗谷名人の対局が始まりました。
8巻はそこから、桐山が宗谷名人の世界に入っていくのが印象的。
嵐の中心、台風の目は穏やかだと言いますが、その穏やかな空間を知ることが出来るのは、もとより嵐の中心にいるか、嵐を突破した者のみ。
73話「白い嵐」で、自分はまだ嵐の中に入ってさえいなかった、と桐山が感じるシーンがありました。
そして対局に合わせるように、台風が日本にやってくる。目前には嵐が待ち構えている。多くの先人たちが戦い続けている領域が。
勝負の世界、宗谷名人の世界が「嵐」に例えられてあり、この作品の技を見せつけられます。
宗谷名人に関して、静か、無音、といったキーワードがちょくちょく出てきます。
その真髄を見ることができるのがこの対局でした。
嵐の中心にいる彼の心は、ひたすらに穏やか。
対局がはじまってすぐはがむしゃらな桐山でしたが、じきに様子が変わる。
「まるで銀色に光るまぶしい水が すみずみまで流れこんでいくようだった」
という桐山のモノローグがありました。これがすごく好き。
「まぶしい水が、すみずみまで流れ込む」。とにかく爽やかで気持ちよさそうな表現だ。ただ清々と心地よい空気に浸っています。
事実対局を終えたあとの桐山はぼんやりしながらも熱にうかされたようなリアクションを見せています。「まっ白だった。指してる間、2人でずっとまっ白い中にいた。――それがとても心地よかった」とまで語る。
宗谷名人の世界は、まっしろで無音で、心が気持ちいい。
対局してはじめて、その世界を知った。
78話の島田さんを見ても、宗谷名人の世界は、ほかの棋士から見てもあこがれであることが伺えますね。
あの強さを手に入れたい、という憧れのではない気がする。
静寂の中で深く将棋を楽しみたい、と言葉にすれば甘ったれなものな気がするが、それに近い、楽園を見上げてるかのような姿勢が見える。
宗谷名人の世界は唯一無二であり、狂気に近いものがあれど、それは確かに遠く高い頂だ。
孤高はひどく美しい。誰も寄せ付けないのではなく、近づいた人を魅了する。
その世界を知ったからには、我慢はできない。
また戦いたい。盤の向こうに宗谷名人がいる場で、自分の将棋を指したい。
至極当然のことのような、しかしまばゆい新鮮さを持った意思。
また戦えることを目指して、嵐の中を戦っていくんだ、彼は。彼らは。
対局後、宗谷名人の過去の棋譜をあさる桐山。
自然と吸い寄せられてしまうものなんだな。嵐という戦いの中に。
今回宗谷名人の身体的な秘密も明かされました。ああ本当にアブない人ではなかったんだな、というちょっとした安堵。桐山のあとをついてくる場面ではかわいいなとすら。
しかしこんなものを背負っていながらも戦い続けているのかと思うと、痛々しくもある。しかし、将棋に執着し続けるその姿勢は、やはりカッコいいのだ。
誰も寄せ付けない自分の世界を確固たるものとして持っているんだろう。だからこそ強い。悲しいことでもあるけど、棋士のとっての1つの理想を体現している人なんだろうな。まぁ名人なんだからそのまんまなんだけど、地位の話だけじゃない。
続いては棋匠戦。島田さんと柳原さんによる対局。
これが凄まじくて、ふつふつと血が湧いてくるような高ぶりを感じました。
おいおいオイオイ、柳原棋匠カッコよすぎんだろ!!
柳原さんは通算十期達成の「永年棋匠」獲得のため、島田さんは初タイトル獲得を目指す一局。いくら見た目地味でも、戦いを積み重ねてきた熟練の男たちによる激闘に、胸を熱くせずにいられようか!!
66歳、A級。現役最年長の大ベテラン。化物の1人とまで言われる男。
柳原は7巻とかでも明るく元気なおじちゃんっぽさを見せていましたが
勝負に望むときの彼はつい息を呑んでしまう迫力。明るい人のイメージとのギャップで、牙を向いたときのカッコよさにはしびれるしかない。
「今日もまた火だるまになって 存分に苦しんでやろうじゃないか」
余裕に構えているようで、全然そんなことない。
この煮えたぎる闘志。爺になっても1人のプロ棋士だ。
「勝つことも、そして負けることも、いつだって簡単には決まっちゃくれない」
という彼の言葉が印象深いです。いつまでだって戦い続けてあがき続けて苦しんで、それを心の底ではしっかり楽しんでいる、器の大きさ。豪胆とも言える将棋バカっぷり。
かつての仲間たちは去っていった。今や現役最年長。
彼には多くの「たすき」が預けられています。志を叶えることができなかった友たちの「あとは頼む」「俺たちの分まで頑張ってくれ」の言の葉が込められた、1つ1つ重たいたすき。それがおびただしい程たくさんに。
たすきを預かる柳原さんのイメージは作中でも描かれますが、たすきが多すぎてそうとは見えない風になっている。
まるで包帯で巻かれた重傷者のような姿です。
焼け野原をさまよう、炎に焼かれ続けた男。
自分のような若輩者には伺い知れない、それでも想像できるプレッシャーだけで心が苦しくなってくるな・・・。
111ページでは老いた男の身体ってのをリアルに描いている。悲壮感ただよう姿ですが、これを見たからこそ、今なお戦い続ける柳原棋匠の姿に重みを感じる。彼の前をゆく者はいない。
島田さんと柳原さんの対局は激戦でした。
「棋士ならば誰もが、こんな将棋が指してみたいと、心の底から思わずにいられないような」と言われるまで。解説の桐山・二海堂も体の底からこみ上げる興奮を感じている。82話の桐山の泣きそうな表情もいいなあ。
最初この表紙を見た上で読みすすめていたら、
柳原さんはたすきから解放されるのかな、という予想をしていました。
それがねえ。上手いことやられた。泣けてきた。
島田さんの「じじい、若々し過ぎるだろう、その手はよ」もアツい。
この対局のクライマックスでの攻防、そして柳原さんの心理における演出は絶品でしたよ。
棋士たちを描いた作品だもの、高齢のキャラがたくさん出てきますよ。これまでもオッサンキャラに魅せられる場面もたくさん、たくさんありました。でもここまで爺さんキャラを中心に据えてカッコよく描いてくるとは。改めて「3月のライオン」すげぇ!
そんな「3月のライオン」8巻の感想。
学校のイジメ問題片付けて、次に66歳の爺さんを、ここまで熱く描いてくるんだもんなぁ。幅広い。それでいてテーマが散らからないんだ。
今回で二海堂くんも復帰して嬉しい。この子が元気だと癒し。
勝負の世界を描いた、「戦い」の物語です。
でも相手との勝ち負けだけじゃない「戦い」が、この作品にはある。
そこに重みがあり、やさしさがあり、強さがある。
心も身体も極限まで消耗して戦うんだもんなぁ、この漫画は。
この巻のクライマックスでは、大の大人が対局後に上向きに倒れ込みながら、顔に手あてて悔しがってんだ。それだけでもう、グッとくる。
自分にとっては、戦い続けている人生の大先輩らの胸のうちに圧倒されるばかり。
月並みな表現しかできなくて歯がゆいのですが、確かに勇気を授けてくれる漫画です。
戦う人。その姿を描く「3月のライオン」らしい巻でした。
いろんな人が、いろんな思いを胸に戦っているんだ。
『3月のライオン』8巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
爺さんのカッコよさがみなぎる一冊。男の戦いだ。食い合いだ。
[漫画]今年面白かった4コマ漫画たち。-『4コマオブザイヤー2012』参加記事
「素晴らしい日々」さんが開催する『4コマオブザイヤー2012』参加記事です。
自分の去年の参加記事はこちら↓
好きな今年の4コマ漫画。-『4コマオブザイヤー2011』参加記事
4コマ漫画はなかなか手薄なのですが、せっかくのお祭りなので。
【新刊部門】5作、【既刊部門】3作を選びました。
【新刊部門】
・桜Trick/タチ
桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス) (2012/08/27) タチ 商品詳細を見る |
個別記事→イチャイチャ百合ちゅっちゅ!『桜Trick』 1巻
ヤバいテンションで記事書いたことを思い出します。
ようするに女の子がちゅっちゅしてチュッチュする漫画です。
ほんわか雰囲気百合漫画かと思ったら突如として読者に襲いかかるガチ百合展開。やましさも後ろめたさもなく、思いを確かめ合う手段としてキスしまくっております。
カラッと健康的な、しかしどこか色彩の淡いふわふわした感じが素敵。
・月曜日の空飛ぶオレンジ。/あfろ
月曜日の空飛ぶオレンジ。 (1) (まんがタイムKRコミックス) (2012/09/27) あfろ 商品詳細を見る |
よくわからない漫画。きららミラクで最初読んだときは「なんだこれ」でした。でも「なんだこれ」がずーっと続いて、なんか知らないけどツボ。好きだ!!と強く言える作品ではないんですが・・・・・・この記事書くにあたってわりとすぐタイトルが浮かんだので、自分自身気に入ってる作品らしいです。謎センス炸裂。しかしミラクが2連発ですね。
・桜乃さん迷走中!/えのきづ
桜乃さん迷走中!(1) (まんがタイムコミックス) (2012/08/07) えのきづ 商品詳細を見る |
主人公がリアルにクズい。しかし愛嬌があるギリギリのラインは保っている…?
すぐ調子にのって、空気もよめないし、嘘はつくし、うわぁダメダメだー。
就職すぐ会社がダメになって、家も職も失った。でも桜乃さんはしぶとく生きるのだ!
・恋するみちるお嬢様/若林稔弥
恋するみちるお嬢様(1) (ガンガンコミックス) (2012/09/22) 若林 稔弥 商品詳細を見る |
個別更新→ちょっとは振り向いてよ!こんなに好きなのに!『恋するみちるお嬢様』
少年ガンガンでやっている家庭教師とお嬢様のラブコメ。タイトル通り、恋するあまり暴走しちゃうみちるお嬢様を愛でまくる作品です。
キャラクターに嫌味がなく、素直な気持ちで二人を見守れます。
作者はWEBでもこっ恥ずかしい青春系4コマを発表しており、こちらも大好き。
・月刊少女野崎くん/椿いづみ
月刊少女野崎くん(1) (ガンガンコミックスONLINE) (2012/04/20) 椿 いづみ 商品詳細を見る |
ガンガンオンラインの4コマ。確かに面白く、売れているらしいのも頷ける。
まーキャラが濃い濃い。そしてバカばっかりである。みんなかわいいな!
しかし「俺様ティーチャー」まだ最新刊まで追いつけてないので読まないと。こちらも少女漫画ですが全力のドタバタ学園コメディで楽しい作品。
【既刊部門】
・棺担ぎのクロ。~懐中旅話~(3) /きゆづきさとこ
棺担ぎのクロ。~懐中旅話~ (3) (まんがタイムKRコミックス) (2012/01/27) きゆづき さとこ 商品詳細を見る |
個人的に今年はコレが出てくれたっていう事が大きなニュース。よく覚えてないけど、きらら系4コマで初めて読んだ作品だったような。懐かしいなぁと思いながら、過去の作品に勝手にしてしまっていた自分に絶望。
無事に完結までたどり着いてくれーと願うばかりです。
・きんいろモザイク(2)/原悠衣
きんいろモザイク (2) (まんがタイムKRコミックス) (2012/04/26) 原 悠衣 商品詳細を見る |
去年も新刊部門で上げましたけど今年は既刊部門で。
やさしい絵、やさしいお話。とにかく和む和む。美少女を眺めながらまったりするのは至福でございます。でれーっ、だらーっとしながら読みます。カラーも美しい。
これはそのうちアニメ化するでしょ、と勝手に思ってるんですが、どうなんでしょね。
・ゆるめいつ(4)/saxyun
ゆるめいつ【通常版】 4 (バンブーコミックス) (2012/08/30) saxyun 商品詳細を見る |
なんという安定株。去年も選んでたよ!今年も選んじゃったよ!
「空想科学X」とどちらにすべきか悩むのですが、僅差でこちらをチョイス。読んでてみるみる活力を奪われる。雰囲気からセリフまわしから全て好き。ダメ人間パラダイス。
アニメは結局見れずじまいでした。まぁ漫画があるからいーです、ハイ。
以上、新刊部門5作、期間部門3作でした。もっと4コマ読みたいもんです。
[漫画]高まる僕の鼓動と、高まる君の鼓動が、『ハレルヤオーバードライブ!』8巻
タイトルは音速ラインから。作品的にこういうことやりたくなる・・・!
自分が心の声を聞かないなら…誰が聞くんだ!
「ハレルヤオーバードライブ!」最新の第8巻が出ました。
うひょー今回の表紙は小雨と麗のツーショット表紙!これまでで1番好きなイラストかもしれません・・・!!自分が麗好きということを抜きにしても素晴らしい。
音楽が化学反応する一瞬を捉えたかのような一枚ですね。麗のイメージは桃色の花びら。小雨のイメージは水玉。左右でキレイに色が分かれているのが美しい。
表紙中央のやや左下の、花びらが水滴になる様子がまたにくい演出ですよ!
二人の音が合わさって広がっていく。改めて、無茶苦茶カッコいい!
というか麗の右手はどゆこと!小雨の口元に添えられているわけですが、熱っぽい表情と合わせてなんとも色気のあるポーズですよ!!
・・・ふぅ。そんな表紙の第8巻の感想―。もう8巻まできたか。
ライブシーンでぎっしり!やたらとテンション上がって仕方ない仕上がり。
→一瞬一瞬を刻みつけて『ハレルヤオーバードライブ!』7巻
スランプを抜け出した麗。海の家で行われる野外イベントに、これまでとは違ったメンバー構成の新バンド「ポニーテールズ」で参加。麗は見事に自分の殻をやぶることができました。
よかったなぁ!よかったなぁ麗!
ぼくぁもう麗ちゃんがダントツなくらい好きなので、この涙は本当に染みる。
ここしばらくの苦しみをはねのけ、彼女はまた一歩成長しました。
1つの壁を乗り越えることができたのだ。
そしてこのポニーテールズの演奏が、小雨の新曲のアイディアをもたらす。
彼が引っかかった点から予測すると、「踊る」ってのがキーワードかな。
海の家野外ライブ後のシーンを見ても、この新曲を大切に仕上げていこうという小雨の意識も見えます。こうやってタメを作るってことは、作品としてもこの曲が大きな意味を持ちそうですよね。
しかしまぁ、麗が刻んだ新しいグルーヴが小雨を刺激を与えたということを考えても、今回の表紙は素晴らしいものだなぁと改めて思ったり。
小休止をはさんで新展開。合いまみえる新たな敵・・・!
ある日小雨が出会った、山田早介となのる男。その出会いが波乱を招くことに。
業界にもツテがあるという山田。「ラベンダーヴァーブ」というバンドのベーシストらしいですが小雨はその正体はわからず。
しかしリリーパスカルから「希望」を取り戻すという目標がある小雨。ひとつ上のステーイに行くためにも、山田の誘いに乗って「ラベンダーヴァーブ」とのライブに挑むことに。
しかしこのライブが、いきなりティアドライブの運命を左右することになる・・・!
ここのところの展開は実にうまく、それでいて嫌らしさがあった。
ティアドライブとともに、読んでいる自分もがっつり入れ込んで怒りが湧いてくるような。いいねえ。これまでラブコメとしての魅力が大きいと思っていますが、ストーリーにもうねりが出てきましたよ。
珠姫の登場はもっと焦らしてからでもいいかと思ったけど、それくらい。
心揺さぶる熱い展開、きてます。
無謀だろう。無茶だろう。でも黙っていられるか。あの娘は、泣いてたんだ!
ティアドライブ全員の意識が統一されてのぞむライブ。その集中力はハンパじゃなく、何かが起こるのではと期待を抱くのもムリはない。覚悟決めた小雨イケメンですなぁ。
ティアドライブに興味がなく退場しようとする客たちを、全員はムリだっただろうけど、何割かの足をとめてやることはできていたんだ。
このライブではまだ敵わないかもしれない。しかし彼らの歌は世に放たれて、聞いた人の心に残り続ける。このライブを見た人の心に、ひっかかりを残す。
小雨の生みだす「雫」は、聴く人の心に静かに届く。
彼の音は、聴く人の魂をじっくりと揺さぶっていく、
小雨が得意とする直情的な音楽性とは裏腹と、聴く人をしっとりと夢中にさせる穏やかな一面もあるように思えますね。いや、直情的がゆえにここまでピュアに人の心を揺さぶるのか。トリッキーなプレイヤーではないもんな。
それにしても心を熱くたぎらせる!ってタイプではないんだ。それこそ水のように「染みていく」。
現状のストレートなロックナンバーたちから変化球をはなてるようになることが、ティアドライブの未来を決めそうです。
この巻、とにかくライブシーンが多い。しかも初期から見ても、だいぶ見せ方がうまくなっているように感じます。画力がアップしていることもそうですが、カッコいいアングルで魅せてくれるシーンばかり。純粋に、作者のセンスが磨かれてきているのかな。
バンドのミュージック・ビデオとか見るのが好きなんですけど、せっかくバンド漫画だし作者もヤル気ですし、こういう惚れ惚れする演奏描写に今後も期待したいものですよ!
ここまで演奏シーンにしっかりページを割いてくれるのって、やはり嬉しいですねえ。「カッコよく描いてやろう!」っていう気概も感じる。
単行本クライマックス、「やってやった!」と言わんばかりに拳を突き上げるティアドライブ。鼓動を早めてくれる圧倒感、疾走感で演奏を爆走したのちの、この熱い余韻!胸が高鳴る!
ほかにも各話のタイトルナンバーをオサレに演出してみたり、小ワザをきかせて読者の興奮をあおってくるよなあ・・・!演奏描写のカッコよさという華やかさが本作の武器。
そんなこんなで「ライブシーンに魅せられる」点では過去最高峰の出来栄え。
8巻ともなって作品として成熟してきているのを感じます。
しかしそれは大人しくなった・落ち着いてきた、というわけではなく
イキオイの付け方がうまくなったというか、ストーリーに味わい深さが出てきたというか
ああ、いいなあ、成長してきているよ、キャラも作品も!
『ハレルヤオーバードライブ!』8巻 ・・・・・・・・・★★★★
ライブシーン山盛りで楽しすぎる第8巻!ストーリーとしても大きな盛り上がり所。
ハレルヤオーバードライブ! 8 (ゲッサン少年サンデーコミックス) (2012/12/12) 高田 康太郎 商品詳細を見る |
自分が心の声を聞かないなら…誰が聞くんだ!
「ハレルヤオーバードライブ!」最新の第8巻が出ました。
うひょー今回の表紙は小雨と麗のツーショット表紙!これまでで1番好きなイラストかもしれません・・・!!自分が麗好きということを抜きにしても素晴らしい。
音楽が化学反応する一瞬を捉えたかのような一枚ですね。麗のイメージは桃色の花びら。小雨のイメージは水玉。左右でキレイに色が分かれているのが美しい。
表紙中央のやや左下の、花びらが水滴になる様子がまたにくい演出ですよ!
二人の音が合わさって広がっていく。改めて、無茶苦茶カッコいい!
というか麗の右手はどゆこと!小雨の口元に添えられているわけですが、熱っぽい表情と合わせてなんとも色気のあるポーズですよ!!
・・・ふぅ。そんな表紙の第8巻の感想―。もう8巻まできたか。
ライブシーンでぎっしり!やたらとテンション上がって仕方ない仕上がり。
→一瞬一瞬を刻みつけて『ハレルヤオーバードライブ!』7巻
スランプを抜け出した麗。海の家で行われる野外イベントに、これまでとは違ったメンバー構成の新バンド「ポニーテールズ」で参加。麗は見事に自分の殻をやぶることができました。
よかったなぁ!よかったなぁ麗!
ぼくぁもう麗ちゃんがダントツなくらい好きなので、この涙は本当に染みる。
ここしばらくの苦しみをはねのけ、彼女はまた一歩成長しました。
1つの壁を乗り越えることができたのだ。
そしてこのポニーテールズの演奏が、小雨の新曲のアイディアをもたらす。
彼が引っかかった点から予測すると、「踊る」ってのがキーワードかな。
海の家野外ライブ後のシーンを見ても、この新曲を大切に仕上げていこうという小雨の意識も見えます。こうやってタメを作るってことは、作品としてもこの曲が大きな意味を持ちそうですよね。
しかしまぁ、麗が刻んだ新しいグルーヴが小雨を刺激を与えたということを考えても、今回の表紙は素晴らしいものだなぁと改めて思ったり。
小休止をはさんで新展開。合いまみえる新たな敵・・・!
ある日小雨が出会った、山田早介となのる男。その出会いが波乱を招くことに。
業界にもツテがあるという山田。「ラベンダーヴァーブ」というバンドのベーシストらしいですが小雨はその正体はわからず。
しかしリリーパスカルから「希望」を取り戻すという目標がある小雨。ひとつ上のステーイに行くためにも、山田の誘いに乗って「ラベンダーヴァーブ」とのライブに挑むことに。
しかしこのライブが、いきなりティアドライブの運命を左右することになる・・・!
ここのところの展開は実にうまく、それでいて嫌らしさがあった。
ティアドライブとともに、読んでいる自分もがっつり入れ込んで怒りが湧いてくるような。いいねえ。これまでラブコメとしての魅力が大きいと思っていますが、ストーリーにもうねりが出てきましたよ。
珠姫の登場はもっと焦らしてからでもいいかと思ったけど、それくらい。
心揺さぶる熱い展開、きてます。
無謀だろう。無茶だろう。でも黙っていられるか。あの娘は、泣いてたんだ!
ティアドライブ全員の意識が統一されてのぞむライブ。その集中力はハンパじゃなく、何かが起こるのではと期待を抱くのもムリはない。覚悟決めた小雨イケメンですなぁ。
ティアドライブに興味がなく退場しようとする客たちを、全員はムリだっただろうけど、何割かの足をとめてやることはできていたんだ。
このライブではまだ敵わないかもしれない。しかし彼らの歌は世に放たれて、聞いた人の心に残り続ける。このライブを見た人の心に、ひっかかりを残す。
小雨の生みだす「雫」は、聴く人の心に静かに届く。
彼の音は、聴く人の魂をじっくりと揺さぶっていく、
小雨が得意とする直情的な音楽性とは裏腹と、聴く人をしっとりと夢中にさせる穏やかな一面もあるように思えますね。いや、直情的がゆえにここまでピュアに人の心を揺さぶるのか。トリッキーなプレイヤーではないもんな。
それにしても心を熱くたぎらせる!ってタイプではないんだ。それこそ水のように「染みていく」。
現状のストレートなロックナンバーたちから変化球をはなてるようになることが、ティアドライブの未来を決めそうです。
この巻、とにかくライブシーンが多い。しかも初期から見ても、だいぶ見せ方がうまくなっているように感じます。画力がアップしていることもそうですが、カッコいいアングルで魅せてくれるシーンばかり。純粋に、作者のセンスが磨かれてきているのかな。
バンドのミュージック・ビデオとか見るのが好きなんですけど、せっかくバンド漫画だし作者もヤル気ですし、こういう惚れ惚れする演奏描写に今後も期待したいものですよ!
ここまで演奏シーンにしっかりページを割いてくれるのって、やはり嬉しいですねえ。「カッコよく描いてやろう!」っていう気概も感じる。
単行本クライマックス、「やってやった!」と言わんばかりに拳を突き上げるティアドライブ。鼓動を早めてくれる圧倒感、疾走感で演奏を爆走したのちの、この熱い余韻!胸が高鳴る!
ほかにも各話のタイトルナンバーをオサレに演出してみたり、小ワザをきかせて読者の興奮をあおってくるよなあ・・・!演奏描写のカッコよさという華やかさが本作の武器。
そんなこんなで「ライブシーンに魅せられる」点では過去最高峰の出来栄え。
8巻ともなって作品として成熟してきているのを感じます。
しかしそれは大人しくなった・落ち着いてきた、というわけではなく
イキオイの付け方がうまくなったというか、ストーリーに味わい深さが出てきたというか
ああ、いいなあ、成長してきているよ、キャラも作品も!
『ハレルヤオーバードライブ!』8巻 ・・・・・・・・・★★★★
ライブシーン山盛りで楽しすぎる第8巻!ストーリーとしても大きな盛り上がり所。
[漫画]女の子の生活は不思議と楽しみがいっぱい?『ぼくは麻理のなか』1巻
ぼくは麻理のなか(1) (アクションコミックス) (2012/12/07) 押見 修造 商品詳細を見る |
僕はっあなたの許しがないのに・・・裸を見たり・・・そういうことは絶対にしません!
押見修造先生の「ぼくは麻理のなか」1巻が発売されました。
前に「惡の華」7巻を更新したのですが、12月7日には押見作品3冊が同時に発売に発売されたのです。もちろん全買いである。
漫画アクションにて連載されているこの新シリーズ、「うわあこの作家さん変態だなぁ」と、何度も思ったことを再度思わせられる内容となっています。
でもドロッとした作風の「惡の華」と比べるとだいぶポップな読み心地。
じんわりと胸にやってくる嫌らしさはあるけれど、コメディ仕立てな作品だと思います。
内容はずばりTSモノ。
冴えない童貞大学生が、ある日目覚めたら美少女の体になっていた。
しかもその美少女というのが、彼がひそかにストーカーまがいのことをしていたほど憧れていた女の子・・・。天使のようなあの娘の体を、自分は手に入れてしまった!
わけがわからないまま少女・麻理としてとして家族とふれあい、学校にいき、授業を受けて、友人たちと戯れて・・・。
ダメダメな生活を送ってきていた男が、突然女の子として生活をはじめても・・・。そりゃ当然ボロは出てきて、周囲から不審がられて・・・思わず冷や汗出てくるような緊張感・・・!
女の子の生活ってどういうのだろう?
男からじゃ伺い知れない未知の世界に突然放り出された主人公。
まず朝おきてから大変ですよ。そう、トイレに行きたくなる。
でも、女の子のトイレって、どうやるんだ?
なんという新鮮な放尿ッッ
「何コレ!?どっから出てるの!?何コレッ!?」と完全に混乱中inトイレ。
目をつぶり耳をふさぎ、ただ戸惑うばかりの主人公。何やってるんだお前!
このシーンに代表されるように、彼(彼女の)潔癖な様子が面白いです。
女の子にうまく接することができない男のダメっぷりが露呈している。うまく接することができないもなにも、自分が女の子なのにな。
着替えも入浴も目隠してやっていて、徹底的に麻理を汚さないようにする。
自分は男だという意識を持っているから、この体を男の目に触れさせてはいけない!という思考になっている様子。せっかくこの体を手に入れたのにねえ。
こんなときにでも「麻理ちゃんには綺麗であって欲しい」という理想を抱き続けているのがとても気持ち悪くて良いと思います!
もっと遊んじゃえよ、いじっちゃえよ!とゲス顔かまして期待するところですがそれは2巻以降のお楽しみかなふへへ。
主人公があたふたする様子はとても可愛いです。外見は美少女だし。
中身がキモオタだろうと・・・そこはいいんだよ・・・。
しかし主人公が羞恥に震える第8話は今回のハイライト!
自分のオナニーシーンに直面!
うわぁ・・・自分のそういう場面、客観的に見たくないなぁ・・・。
しかも完全な女子高生には直接見られてしまうし。
この場面の恥ずかしさは一言で言い表せません・・・悶えたなぁw
主人公と行動を共にするようになるメガネの女の子、柿口さんも結構特殊。
彼女も麻理に幻想を抱いてる感じで、主人公がのりうつったニセモノの麻理に「お前は誰だ」と詰め寄りました。もとの麻理につよく憧れていたのは、立場としては主人公と似たような物か。
最初はちょっと戸惑いましたが、1巻ラストで泣いてしまったシーンでちょとキュンとなった。
しかし主人公の意識が麻理に乗り移って、麻理の意識はどこに行ったんだ。
それだけでなく主人公のもともとの体は、なんの違和感もなく生活をしている。もし入れ替わりで誰かの魂が入ったのなら、主人公が話しかけた時点でなにかリアクションがあるはずなんだけど。
主人公の「男として意識」は、いったいどこからやってきた代物なんだろう。
不思議なかたちで「自分さがし」と「麻理さがし」が2巻以降に始まりそう。
しかしその麻理って娘も、絶対裏があるよねえ。
1話で振り返った、もともとの麻理のあやしげな微笑みが意味深でした。
彼女にはなにかしらの秘密がありそうなんだけど、それはまだ全然わかりません。
1巻の中ではストーリーはあまり進みませんでした。
混乱する主人公の姿を集中的に描いてあって、そういう部分でまずは楽しめました。
今後ストーリーにも展開があるはずですし、2巻も楽しみにしています。
ちなみにこの単行本のあとがきには、押見先生の女性観?というか「女性になりたい欲」が語られています。深くうなづきました。というか、まさに自分もそういう気持ちはあったのでびっくり。ぼんやりとしかなかった自分の感覚に言葉で形をくれたような感覚。ちょいと感動。
女の子を、自分の性欲から遠く離れたところにおいておきたい気持ちがある。
そして気持ち悪がられようと、女性の思考をちょっと理解したいなとか思ってたりする。
男としてゲスいことを考えていても、しかし根底にあるのは女性への広義な「憧れ」だったりするんだなぁ。そういう女性への興味がこじれて、自分は百合漫画等を読み出したのかもな。
まったく作品に関係ない自分語りになってしまった。おしまいおしまい。
『ぼくは麻理のなか』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
美少女になってしまった童貞大学生があたふたするのをニヤニヤする漫画。
[漫画]その目に焼き付けてくれよ、僕らの”惡”を。『惡の華』7巻
惡の華(7) (講談社コミックス) (2012/12/07) 押見 修造 商品詳細を見る |
さようなら!さようなら!すべてのクソムシども!!
「惡の華」7巻発売きたああああああっと読んでその日に感想書く!日付的には翌日になってしまいましたが。
待ってましたよ7巻!自分は単行本派なので、前巻の衝撃的すぎるラストからドキドキしっぱなし。いったいどんな事が起きるのか!?
と思って書店でコミックス手にとったら裏表紙のあらすじでさくっとネタバレされちゃったんですけど。ああ、うん・・・そういえばこのシリーズ、結構その巻の突っ込んだ内容まであらすじで書いてあったね・・・へへ・・・。
ともあれネタバレ踏もうともこの面白さ揺るがず!心震わせてくれる、とびっきりにこじれた思春期の淀みと、暴走。
まさにクライマックスのまま終わった6巻。ぜひ、6巻をもう一度読み直してその勢いで7巻を読み出して欲しい。しょっぱなから、ハンパない大興奮・・・!!表紙も素晴らしい!
春日と仲村からクソムシどもへ向ける、魂の絶叫。そして彼らの未来とは。
前巻→思春期の大暴走…もう後戻りはできない!『惡の華』6巻
●ページをめくる手が止まらない!
夏祭りの夜に、二人は舞台に上がった。
全て捨てる。これからの人生のなにもかもを、捨ててやる。その覚悟で。
手には包丁。向けられる大勢の人の目。テレビ中継もされている。
もう後戻りはできないさ。「向こう側」へ2人で行くんだ。
意気揚々と、この世界のクソムシどもに見せつけるように、死ぬんだ。
しょっぱなから、本当に、凄まじい展開です。
第33話「翔び立ち得る者は幸なり」。安い言い方をすれば神回!
シリーズ最高潮のハイテンション。ハイというかダメな躁状態。ダウナー極めてハイになってるあの不安定な恐ろしさ。
思春期をこじらせた子供たち、とかわいらしい表現で言える段階はとうに過ぎた。
彼らは罪を犯した。犯罪者だ。
そして今まさに、命をとした犯罪をしようとしている!
社会的に、彼らはとんでもないことをしている。取り返しのつかないことをしようとしている!そんなリアリティがとことん胸をいやらしく窮屈にして、ドキドキが止まらないのだ。
もともと少年少女を圧迫するものとして、警察や学校など「社会」の脅威はリアルに描かれてきた本作。だからこそ、それを振り切ってことに及ぶ春日と仲村の姿は、心配を通り越して恐怖の粋。しかしそれ以上に、圧倒されそうなくらい、眩しかったりする・・・。
ああ、どうなってしまうんだ!この2人はどこへ行ってしまうんだよ!!
とにかく読み手を心を揺さぶる、エネルギッシュな作品であることを再確認しましたね・・・こわい漫画ですよ。
読みながら焦燥で胸がかきむしられる感覚。
じっくり読みたいのに紙をすべる目の動きは止まらないし、手はページをめくり続けるし、とにかく先が気になって仕方のない!むしろじっくり読もうって意識が働くヒマもなかった。待ったなしの凄まじいスピード感を体感しました。
本当に夢中になってしまうとこういう現象が起きるんだよな。
●2人の最後の言葉
6巻の最終話で、彼らは最後の言葉を考えようと言っていていました(165P)。
いざ舞台に上がった彼らの口上から幕を開ける、衝撃的なこの7巻では
まさに彼らが心から叫びたかったものの全てがぶちまけられています。
クソムシが!!
クソムシが!!
クソムシが!!
クソムシが!!!
口汚く叫ばれる言葉が、泣きたくなるくらいに頭に響く。
こんな気持ち、いつまでも心にいさせちゃ苦しくて仕方ないよな。胸が張り裂けそうな悲痛。その叫びはもはや悲鳴だった。
読んでいるあいだ、体がブルブル震えていた。
壮絶。それに尽きる。
意味はわからないんだよ。具体的にこれがイヤだあれが不満だ、といった言葉はないから。でもそんな具体的な言葉をあげられるくらいだったら、最初から暴走なんかしてないんだ。
何もかもが嫌なんだ。自分も世界もみんな。
彼らの叫びを聞いていると、どこか恍惚とさえしてくる。
1度でもここまで心から吐き出しきったら気持ちいいだろうなぁという、憧れの思いすら抱く。春日も仲村も晴れやかさはないけれど、全力で戦っているその姿は、たしかに神聖なくらいの眩さがある。
思春期に悩みの1つもなかった人はきっといない。
少年少女は叫びたかったんだ。泣きそうな夜に、心が凍えそうな夜に、どうしようもなく全てを壊してしまいたくなる夜に。
無力感と怒りで狂ってしまいたかったんだ。
それが現実味のある形で実現されるのがこの一連の場面なんだな。
「向こう側は無い!!」と彼らは口にした。
なんだ、分かっていたのか、とここでついに涙が出た。
「私もクソムシだ!!」「ニセモノの変態!!!」
そんな風に、自分たちを否定しけなす言葉も吐き出した。
なんか意味わかんないけど、吐き気がするくらいスカッとしたのが事実。こんな言葉を望んでいたのかぁ俺は。でも、彼らがその言葉を言ってもなお諦めず戦っていることがすごかった。この結論に至ってこの舞台に上がったことに賞賛したい。
行き場をなくしたからこそ死を目指したのだとしても、こんな苦しみを抱えた人間がいることを、知らしめてやりたかったんだ。
叫び終えたあと、2人とも燃え尽きたような顔をする。自分もきっとこんな顔してた。
そのとき、惡の華は咲いていた。そして彼らを見ていた。
あの山のおく、「向こう側」で、確かに華は咲いていたんだ。
それを見た春日は涙を浮かべ、満足したように「仲村さん、いこう・・・」と呟く。
強烈なインパクトのこの見開きは、この作品通しても重要なものなのではないでしょうか。
●高校生編スタート。
えっ、高校生編・・・?
というのが第一印象。でも仕方ないか、あそこまでしたらこうして舞台を入れ替えざるを得ない。春日の両親はもともと引越しするつもりだったし。
春日は高校生になりました。田舎を離れ、都会で学校に通っています。
普通の生活にもどっていたように見える。けど全然違うな。
彼はまだ「惡の華」にとりつかれている。仲村の姿を探している。
詳細は語られませんが、きっとすぐに引き離され会話もろくにできていないんじゃないかな、仲村と春日は。あれだけの凶行に及んだ2人がまた一緒にいることを、大人たちが許さないだろう。
この新章、だいぶ説明不足のまま始まりました。
事件のあと、二人はどう制裁を受けたんだろう?それに佐伯さんは?
そこはすっきりカットするのか、これから描かれていくことになるのか。ううむ、佐伯さんに関しては「さよなら」の決別をしたわけだし、もう描かれないかもな。
しかしだとしたら佐伯さんは・・・不幸と言えばいいのかなんなのか。とにかく振り回し振り回された。彼女もまた惡の華を携えた人だったけど(6巻の感想で書いたやつ)。
さて、新舞台に合わせて新ヒロインが登場しました。
名前は常磐さん。リア充グループにいるけど、読書の趣味は春日と合った。
彼女が詩集「惡の華」を手にとったことから、春日との交流が始まりました。
またあの詩集かいな・・・やはり春日はこれから逃れられない。
この常磐さんがこれからどんな混乱に巻き込まれていくのか楽しみですよ!(混乱が起きることはもはや前提として話を進める)
しかし常磐さん、かわいいですわ!
「惡の華」初期からどんどん押見先生はうまくなって女の子も可愛くなってきていますが、ここに今1つの結晶を見た。
リア充っぽいけど趣味はサブカル臭満点だったりしててナイス。怖いのは彼女の年上の彼氏さんですが・・・こいつから絶対話動くよなぁwうわぁどうなるんだ!
●新しい表紙デザイン
「惡の華」は1~3巻、4~6巻で表紙デザインが一新されてきました。
3巻ごとに新しいデザインになるんですよね。紙質も変える。
こういう遊びはすごく面白いし、それぞれのデザインに特徴があって好きです。1~3巻はモノクロ・デカデカと吹き出しが載る珍しいでザインで目を引きました。
4~6巻はストーリーが混沌としてきたのに合わせたかのようにブラックなムードに。各キャラの眼力がハンパなくて、本棚に並べるとムチャクチャかっこよかった。
それで今回から新デザインです。今回は水彩!
最初見たとき、一瞬「惡の華」の表紙って気づきませんでした・・・ガラッと変わった!
新章に入ったことでキリがいいですし、なにより素晴らしく美しい。
惚れ惚れします。これ書きながらじっとり見つめて味わっています。
このキャラは仲村さん・・・だと最初は思いましたが、常磐さんですね。
仲村さんと常盤さんが似ているのは色々うまいよなぁと感じます。
まとった雰囲気とかは全然違うんですけどね。この表紙が仲村さんだったらなんて安らかな表情をするようになったんだ・・・ホロリ、とかなっていたころだった。危ない危ない(?
そんな「惡の華」7巻でした。
中学生クライマックスと、気になる高校編のオープニングが一緒になった一冊。中学編の怒涛の展開については、上で書いたとおり。
新章で心機一転!とは行かず、再度どんよ~りとした高校生活・・・。
やはりこのドロドロしたムードは、町を出た程度じゃどうにもならない。
高校編なんてものに突入するのは結構予想外ですが、楽しいですね。過ぎ去った過去をとおく見つめるような視点が生まれて新鮮。
テレビアニメ化も決定しましたね。大丈夫?「惡の華」だよ?
しかし映像で見てみたいシーンとなれば山ほどあって、どんなアニメになるのか今から楽しみです。ノイタミナっぽい?作品かなと思うのですがさて。
目を閉じたはずの惡の華は、まだ胸の中に秘められている。
またいつか目を開くときが来るんじゃないか。
そんなことを、不謹慎だけど、とてもワクワクしながら待っている。
だってそういう漫画だもの。惡の華を咲かせる瞬間が、待ち遠しい。
『惡の華』7巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
冷静になってる方がもったいないなこの漫画は。一緒に飲み込まれてしまおう。
以降の感想
怯える幽霊と忘れられない華の影。『惡の華』8巻