[漫画]恋と欲望のディープ・スロート・デイズ 『レセプタクル』
レセプタクル (2012/05/31) 黒咲 練導 商品詳細を見る |
わがままぬかせって 自分の意志押し通すのが怖いわけ?
楽園コミックス黒咲練導さんの「レセプタクル」が発売してます。
オビには「ディープスロートな物語」とあり、実に挑発的な感じですねえ!
実際にディープスロートなえっちぃ行為が繰り広げられるわけではありませんが、黒咲先生らしいねちっこさとかは味わえる作品なんじゃないかなと。直接描写がないだけで色々やってるのは匂わせます。じゃあ感想でも。
レセプタクルは「楽園」Vol.2で掲載され、以降はWEB楽園にて継続されていたシリーズ。
前回の楽園コミックス(感想→火照る心と身体はもっと熱く。『C- 黒咲練導作品集』)には収録されていなかったので、そのうちレセプタクルだけで単行本でるんじゃないかなーとか思ってたらやはり。
まぁ確かに話題性のある作品なんですよ。『放課後プレイ』のあの2人も登場したり!
裏表紙にも普通にいるよ!出版社違うのにちょっとすごいですね。
とは言え今回の主人公は彼らではなく、彼氏くんのお姉さんが主人公。
表紙の左側ですね。その隣のストレートヘアの女の子と、奥にいる男の子がメインキャラといったところ。だいたいこの3人で話が展開していきます。
とは言え長いストーリーはなくて、キャラ同士の会話劇やその雰囲気を楽しむように描かれた作品に仕上がっているといます。ストーリーは結構シンプルな作り。
『C-(シーマイナー)』には過激な性描写がありましたが、本作にはそれもなく。
それは物足りないという意味ではなく、また別の魅力を発揮してくれているということ。1冊使って2人の女の子の友情を、そして3人の男女の3角関係ををじっくりと描く。
最初こそ、女の子2人で学校の帰り道に猥談に興じる場面だったり、弟にちょっかいかけたり、微笑ましいシーンが続いきます。しかし進むに連れて雰囲気が変わっていく。
いや、最初から賑やかな中にひっそりと闇を潜ませていて、それが表に出てくるのか。
軽やかでかつ生々しい女の子同士のリアルな恋愛トークから様子がかわり、切実で強烈な嫉妬心・独占欲が顔をのぞかせる。
こじれた人間関係が楽しい一作。それだけでなく、先にも書きましたが会話劇も魅力ですね。
遠慮ない言葉の応酬。コメディとしてだけでなくシリアスなシーンにおいても、心に突き刺さる言葉が飛び出します。そしてそれを口にするのは、真剣に思い悩んだ人間たち。
黒咲練導さんのかく表情はすごく惹かれます。何かに追い詰められてるような、必死さがすごく伝わってきますなー。読んでてドキドキしてしまいますよ。
後半には濃厚なキスシーンも用意されていて、これも大きな見どころか!
あくまでオマケ要素的なものではありますが、『放課後プレイ』の2人も本編に登場。
出番は多くありませんが、存在感はかなりありますねえ。
オマケページの最後、つまりコミックスの最後で持っていくのはプレイ1の彼女さんだったりw
ファンサービス的なものではありますが嬉しかったです。
彼女さんと、彼氏くんのお姉さんの絡みというのはかなり新鮮でした。
彼氏くんの家庭事情もこの作品で結構描かれましたねえ。一番上にお兄ちゃんもいるそうです。いずれ何らかの作品に出る・・・というか、もう何かの作品に出ている・・・?
そんな感じの『レセプタクル』。1巻完結です。
黒咲練導ファン、『放課後プレイ』ファン、ねちっこくエグみのある恋愛描写が好きな人にオススメしたい一冊。単独作品としても完成していますが、この作家さんの他作品も読んでる人だとニヤリとできそうな。
値段はやや高めに感じますが、表紙を外した本体にもカラーイラストになっていたり、豪華な仕様。3Pを迫る描きおろしオマケ漫画も面白いので、WEB楽園等で読んだ人もどうぞ。
トーンを使わないため、白と黒でクッキリした画面もグッド。やはり黒咲さんの絵はイイ。
さくっと読めて後を引く物語。ねっとり深く飲み込もう。
『レセプタクル』 ・・・・・・・・・★★★☆
3角関係を描いた1巻完結作品。濃ゆい描写が魅力的。あとロケットおっぱいな。
[漫画]誰か声かけて・・・誰か好きになって・・・『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』2巻
私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(2) (ガンガンコミックスONLINE) (2012/05/22) 谷川 ニコ 商品詳細を見る |
大丈夫 気にすんなって よくあることだって 元気だせよ
どうしたのもこっち・・・ポーズもなんかかわいい表紙!でも目が死んでる・・・。
直視することができない青春を謳歌する『もこっち』こと、黒木智子を観察するシリーズ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」第2巻が出てます。
今回も、直視できない・・・。しかもなんてこった、物語は夏休みに突入です。
身悶えするほど痛々しいシリーズですが、今回はリア充が浮かれきる夏休み中の彼女の生態(?)が詳細に描かれることとなり、鬱屈しまくりのオタク喪女ライフが展開。
破壊力の高いエピソードもかなり収録されており、勢いにのる一冊でしょう。
もこっちの孤独ぶりも勢いにのる・・・。じゃあ感想を。
新たなダメ少女、登場。『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』1巻
2巻もイタいエピソードがぎっしり。
さっきも書きましたが2巻は1冊まるっと、夏休みの間を描いた内容となっています。
「夏はみんな楽しく遊んでるんだろ?」「私もなんとか夏を漫喫してやる!」とヤル気をだすもこっちですけども・・・まぁ・・・うまくいかないよね、もこっちだもの・・・(ヒドイ)
わざとらしい!なんてわざとらしい「私誘われるの待ってます」アピール!
もこっち、行動力はあるんですよ。でもどうにも世界が彼女に優しくしてくれない。
もっとも、彼女の性格とか言動の極端さとか、理由は探せばいくらでもありそうなのが辛い所。
というか「漫画ならもしかしたら・・・」なんて期待を寄せてしまう部分を「まぁ現実なんてそんなもんですよ」と切り捨てるかのような感触すらあるんだよなぁ、この漫画。
モテない女の子をギャグにしているわけで、実はどういうふうに楽しめばいいのか戸惑うこともあったりしますよ、この作品は。
ギャグもなかなかレベル高いとおもいますが、しかしギャグの質的に、おもいっきり笑い飛ばすことが辛い。それはもこっちが一応女の子だからって遠慮してるわけでもなく、自分とのシンクロ部分があるからですよ。
楽しみながら、あれ、なんか胸がいたい!なんて瞬間が、この作品にはちらほら。
「うわーもこっちイタいなぁー!!・・・あれ、この娘の思考、俺と同じだ・・・」とハッとした時には俺の心がグサリ。思考回路が微妙に似てて辛い・・・。
もこっちの性格の悪さは作品全体で示されてて、タイトルからして多数の第三者「お前ら」に責任放り投げてますけども、やっぱり自分と似てる部分があって。
ちょっと優しくされたら「もしかしてコイツ私のこと好きなんじゃ・・・?」とか都合のいい事考えたり、部屋こもって恋愛ゲームやって悶々しながら奇行に走ったり、ダメ人間のくせに見栄っ張りで・・・・・・うわーなんか他人ごとじゃない。
でもついつい目を離せなくなる作品であり、もこっのは強烈なキャラには惹かれる!
そんなもこっちの残念っぷりは全力で発揮されていたと思うのは・・・考えてみればいつも全力で残念だったけども・・・個人的に印象に強く残ったのはいとこのきーちゃん関連の話。
毎年夏休みに遊びにくるいとこの女の子、きーちゃん。もこっちは彼女に「親戚のオトナなおねーさん」として、なんとなくそれっぽいことを言って優越感に浸っていました。
しかしいよいよ今年、化けの皮が剥がれてしまう・・・。
もこっちに失望の視線を向けるきーちゃんの冷たい無表情が、刺さるッ・・・!
でもあんまり可哀想すぐて、失望とも違う気持ちがきーちゃんの胸に生まれる。
大人げない・・・大人げなさすぎる・・・!
自慢するためにズルをしてまで勝利する。しかも相手は小学生。場所は年下しかいないカードゲーム大会。ズルして得たポジションで「クイーン」と呼ばれご満悦。もう・・・やめて・・・っ
もこっちを理解したきーちゃんは、今後はやさしくしてあげなければと決意。
失望されるのもキツいけど、これはこれで絶対キツいだろう・・・。
そしていたたまれなさ過去トップクラスの第17話「モテないし握手会に行く」もたまらない。
もこっちのオタ趣味を前面に押し出したネタ。そしてもこっちの業の深さが2度3度と事件を起こす、非常に濃いエピードでしたよ。
そしてオチが強烈。声優さんに会ってリクエストしたセリフに自分の声を挿入して編集した、オリジナルボイスドラマを作って・・・、親に聞かれる。
いたたっっっったああああああもうギブギブギブ
親バレとかは結構誰もがゾクゾクッとくるもんだと思います・・・。イヤ~な空気が場を満たして時間が凍りつくような一瞬。
そして自分の恥ずかしい部分が明るみに出されて…ああ逃げたい消えたい死んでしまいたい。
まぁ・・・そんな内容の第2巻。
1巻でもこっちを気に入った人なら間違いなく楽しめる1冊。パワーダウンどころか、さらに面白くなってきてるように思います。
いちいちネタがしんどくて、笑えるんだけどそれだけじゃない苦味を提供してくれるのもこの作品ならではか・・・!今回もいっぱい楽しく、そしてイタい作品でした。
もこっちの状況がこれっぽっちもよくなる兆しがないのがすごいですねえ。
もこっち以外だと弟くんぐらいしか定番キャラいないし・・・最小限の人物で話を広げ盛り上げてるあたりもすごいんじゃないかなと。それだけもこっちのキャラが濃いということか。
3巻は冬ごろ発売とのことで。ガンガンオンラインで追いつつ発売を待ちます。
もこっちが刻んだ、甘さ0%の高校の夏休み。悩んでくすぶっていじけることも、青春か・・・? 確実にダメな方のな・・・。でも、それってやっぱり、共感できてしまう部分も多いのだ。
そうそう、ティッシュを用意するのがやたら手慣れてたもこっちを見て、ほほうほほうとなったダメな読者も結構いるはず。わりとアケスケに思春期の少女の性欲を描いた作品でもあるんですよね。そこも好きなポイントですよ。性欲に限らずともいろんな欲望がうずまいてる。でもそれが上手く実を結ばないのがこの作品の面白さ。
まぁとりあえず、言い訳ばかりのもこっちに、1巻の頃と同じことを言って〆よう。
お前がモテないのはどう考えてもお前が悪い。
『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』2巻 ・・・・・・・・・★★★☆
慣れてきても切れ味鋭い、モテない女子高生の暴走青春物語。傷を負うのはあなたかも?
[漫画]取り戻せなくなる前に。『雪にツバサ』3巻
雪にツバサ(3) (ヤンマガKCスペシャル) (2012/05/07) 高橋 しん 商品詳細を見る |
もう二度と私の前に現れるな
高橋しん先生の「雪にツバサ」3巻が発売されました。
うむ、今回の表紙も好き。高橋しん先生のカラーの美しさは素晴らしい。
しかしさて中身はというと、ヘビーでウワアな展開に向かっております。
前巻→声にできない想いを託して『雪にツバサ』2巻
2巻中盤から始まった楽器捜索編は3巻をまるっと使い、そしてまた続いていく。
この章のクライマックスへの過程となる第三巻ですが、正直気が重くなる内容・・・!
しっとりと切ない感情を盛り上げていく感じはさすが上手い。
でもこの巻はその切ない雰囲気とは食い合せが悪いような・・・雰囲気を悪くさせるエゲツなさが込められていたように感じました。
まぁ過去作読んでみればこういう方向になることも十分予想できてましたし、1巻の頃から雪先輩関連でブラックな一面を見せていましたが・・・やっと本性を表したか、という感じ。
どうにも高橋しんさんは、少女に重荷を持たせるんだ。
「もうこれ以上、私・・・汚れようがないから、大丈夫」
眼鏡の女の子・チコをめぐる一連の流れは痛くて痛くて・・・思わず何度も単行本をおいて読むのを中断したりしました。
この漫画はキャラクターがガンガン周囲にメッセージを飛ばしてきて、それはつまり読者めがけて投げつけてくる刃物みたいなもので。
3巻のあとがきにも書かれていましたが、本当に痛みを伴う物語になってきている。
うすらぼんやりと、優しい青春ボーイミーツガールを期待しつつ読み進めていた自分は、ちょっとやそっとじゃなく心をグサグサ傷つけられております。高橋しん先生だって時点でなんでそんな期待を持っていたのか!
少年少女たちの輝きを時に前向きに、時にネガティブに捉えようとする所がある作家さんだと高橋しん先生を思っているんですが、今度ばかりはやり口がキツい上に状況もひどくて息苦しいったらない。
思春期まっただ中にある「少女」、その幸福や揺らぎや悲しみをすべてひっくるめて少女ロマンを作り出しているんですが、そうする手段として「少女たちをあえて傷つけてみる」といった、サディスティックなイヤらしさみたいなのがある。
サディスティックかどうかは自分の受け取り方次第か。でもなんというか、本当にしんどい漫画なのだ、この「雪にツバサ」は。
なにより、紡がれるこの物語にいまだ何らかの救いも見えて来ない。これが一番辛い。
何故こんな不幸な事になっているのか、という問いがあるとしても、それを「仕方ないだろ、そういう世界なんだ」と消化してしまっていてやるせなさすぎる。作品に諦観が満ちてるような。
だからこそこんな容赦無い世界に、ほんのちょっとのファンタジー(超能力)でもって足掻いて歯向かってみようとする臆病な男の子を、応援してみたくはなるんだけど・・・その前に俺の心が折れそうだ・・・な・・・。がんばってよツバサくん・・・。
そんな「居心地の悪さ」。きっとこれがこの作品の本質なんだろうなと感じてきました。
なんでもないように、ありふれたように、すぐ側に人の「悪意」がある。自分を、自分の大切な人をふいに切りつける邪悪がある。
単なるボーイミーツガールの青春モノに収まり切らないのは確かで、個人的にそのジャンルに収まりきってくれた方が嬉しいなとかちょっと批判的なことを思ってしまうことも事実。
けれどちゃんと、いつか暖かい未来がみんなを迎えてくれることを信じてみる。
なんか作品じゃなくて作家を語りつつあるんだけれど、高橋しんという作家にはなんか好きとか嫌いとかをすっ飛ばして読んじゃう何かがあるんですなあ、個人的に。
作品の話に戻ると、チコ以外のこの3人も静かに病んでる。
歳相応に賑やかでこんなにかわいい彼女たちが、その影ではムリヤリ○○させられて心ボロボロにしてるってんだからもう何も信じられねえよウワァン!
しかしむしろ恐ろしいのは、それを抱えてもこんな飄々としている女の子マジック。
でも傷つけられた・踏みにじられた少女たちがこれからどう戦っていくのか、ってところに、この作品が描きたいものがあるんだろう。
あんまりストーリーに触れませんでしたが、今回はかなり毒が強くてそっちのことばかり書いてしまいましたね。でもいいか。だいたい思ったことはそんな感じです。
3巻は特に気が滅入る内容でしたが、4巻では見事にこのモヤモヤを吹き飛ばしてくれる爽快な展開があってくれる・・・!んじゃないかなぁ、はぁー・・・。
まぁ正直、レイプ描写って自分はすごくショッキングで(最初からエロい目的で読む漫画でなら話は別です)。本作は初期からその要素を匂わせてくる作品でありビクビクと震えながら読んでます。なぜならこの漫画の気持ち悪さ、いびつさ、それでもなんとなく綺麗で切ない感じ、悪くない。けれどこれを不快だという人の気持ちもわかる。
4巻は秋発売ってことで、ここからし間が空きますが待つとしますか。
・・・蛇足だけど、「思わせぶり」な引きが多すぎるのもなんとなく感じる。「まさかあんなことになるなんて、この時はまだ思いもしなかった・・・」的な感じのアレ。まぁ実際にその後に何かしら起こるんですが、過去の連載作でもこんなしつこい風になってたっけなぁと若干首をかしげる。
色々とアンバランスでグラグラしてる作品だとは思いますね。それでも見守りたくなるのは、いつのまにか作品の魅力を感じ取っているからか。
『雪にツバサ』3巻 ・・・・・・・・・・★★★☆
心にダメージを追う第3巻。切なげでいて良くも悪くもパワフルですよねこの作品。
[漫画]世界が広がる。やさしくなれる。『Latin 高畠エナガ短編集 1』
Latin 高畠エナガ短編集 1 (高畠エナガ短編集) (2012/04/25) 高畠 エナガ 商品詳細を見る |
自分が好きなものが増えていくっていいよね!
「高畠エナガ短編集1 Latin」が発売されました。
SD&Goという集英社の新雑誌を買って出会ってから単行本化を待っていましたよ。
ラノベレーベルSD文庫のコミカライズが大半を占める雑誌において、オリジナルで1話完結の連作読み切りシリーズとして連載されました。
この単行本には4つの読み切りが収録されていますが、それぞれに違った味わいがあって嬉しい一冊。ストーリーはもちろん、この絵がかなり好きです自分。
それでは4つの読み切りそれぞれに触れていきながら感想でも。
特設サイトから単行本の試し読みもできますので、それを読んでみてもいいですね。
●Latin(ラテン)
表題作。この短編集では自分も一番好きな、破天荒で甘いラブストーリー。
主人公は人間の男の子の渡辺。彼が偶然ひろってしまったのは、アンドロイドのくせに仕事をしない、前の家から出てきたという女の子・ラテン。
同居生活を送る男の子と女の子・・・けれど人間とアンドロイド。時に口喧嘩をしながら、時におもいっきりケンカしながら賑やかに暮らす2人の不思議な関係性は、どこか温かい。
この話、ヒロインであるラテンが実に可愛らしいんですよ。
アンドロイドではありますが、この作品に登場するアンドロイドたちは実に人間くさい。思いっきり泣くし、まぶしい笑顔も向けるし、きっと恋もする。機械だけど、本当に人間みたいです。
身体をギャグマンガみたいに自分から分解するラテンは、すごくアンドロイドを楽しんでいるようにも見えます。
でもそんな人間みたいなアンドロイドも、一方でアンドロイドだからこその苦悩を抱える。
そこから物語は一気に動いていくわけですが、これはぜひ読んでみてほしいなと。
しかしまーラテンさんがかわいいったら、もう!
そればかり言っててごめんなさい、でもかわいい!主人公とのラブコメにニヤニヤしてしまいますよ!雑誌でこれを読んだ段階で「あ、単行本買おう」と決心したものです。
ツンツンしまくりな序盤から紆余曲折を経て、こんなデレデレになっちゃうんですよ!
ちょっとずつ想いを深めて、近づきたくなって、触れたくなって・・・一緒に歩んでいく。ラテンさんまじ恋する女の子。
人間とアンドロイドが恋することになんの後ろめたさを感じさせないパワーもあって、実に清々しい。読んでるこっちも何の不安もない。
SF世界観にもしっかり魅せてくれますし、人間くさい内面を抱えながらも身体は完全に機械であるというラテンが抱えるギャップも、効果的に作品を雰囲気を作り出しているように思います。
強い感情が思わず溢れでてしまうような、衝動的なシーンも数多く、そのそれぞれで魅力的な表情が描かれていて素晴らしい。泣き顔も笑顔も。
いい表情を描く作家さんはそれだけでも好き。
なお、単行本巻末はこの話の2年後を描いた描きおろしもあり。
●雪原のネストーレ
人間、妖精、エルフ、そしてロボットをめぐるファンタジーアクション漫画。
Latinと同じく別種族のキャラクターたちが絆を深めていく様子が描かれており、加えてまたロボットも登場するので、高畠エナガさんはこういうモチーフが好きなんだなぁと感じます。
とは言えこの作品はアクションを重視して描かれており、とても少年漫画チック。
きちんとした盛り上がりをみせてくれる丁寧な作品だと思います。
妖精ヒロインがそう戦うか、とやや意外性あるバトルが展開されました。
そして最後のコマ、雪原にひっそりと、しかし力強く構えるネストーレに姿が印象的。
●猫又荘の食卓
前2作と比べれば落ち着きがある日常漫画。日常とは言え人化したネコたちがぞろぞろと登場する、やっぱりこれもどこかファンタジックな作品。
でもやっぱり日常漫画なので、蔓延しているのはまったりだらけた生活感。
事件はおきない。けれど少しずつ人間とネコの生活が交わっていって、お互いにとって居心地のいい空気になっていく様子がいいですね。心穏やかに楽しめるお話です。
少しずつ心を開いていく主人公の変化にも微笑ましくなりますね。
好きなものが増える、そんなちょっとの変化で毎日は楽しくなる。世界が広がっていく。
人化してもネコミミやしっぽは生えたままなので、そんなネコたちがぞろぞろと所狭しと登場しとても賑やか。見た目は人間なのにネコっぽい反応を見せてくれて、みんなかわいいですw
女の子みたいな外見の人間になるネコたちですが、オスもかなりいるみたい。
ヒロインが三毛猫らしく、人化すると髪が3色になってしまうというのが面白かった!
連載として続けられてもおかしくない設定ではありますが、心地良いラストを迎えてくれたので満足。個人的に気に入ったので、そのうち連載になったりしないかな。
たくさんのネコが出てきますがみんな個性豊かだし、もっと読んでみたくなる作品。
●Reversi
悪魔の女の子と天使の女の子が仲良くなっていくのを描いたお話。友情百合かな。
今度は完全に人間のキャラクターを排除したファンタジー。
悪魔やモンスターといった人外らが通う学校に転入してきたのは、天使の女の子。
悪魔のユリカは天使に憧れているけれど天使になんかなれないし、天使を妬んだり憎んだりする自分自身をイヤになってしまったり・・・天使のユリにも反発してしまいます。
惜しかった所を言えばうまく天使のユリを自分がうまく掴めなかったというのがあるけれど、それでも2人の気持ちが力強く結ばれる流れは感動的。ユリちゃんの包容力が凄まじい。
悪魔と天使。種族を超えた女の子同士のふれあい・・・いいですね!
あと作画も非常に丁寧に書き込まれているなと感じました。
メカニカルなパーツも魅力的に描く作家さんですが、この絵はなんにせよ人を惹きつける力があるような気がします。たんに自分の趣味に合うだけなのかな。
そして個人的にクラスメートのモンスター娘たちに目がいってしまいます。
さらっと描かれてますが、クモっ娘の笑顔がやたらと眩しいんだ・・・!
そんな高畠エナガさんの初単行本短篇集「Latin」でした。
表題作「Latin」が個人的大ヒットでしたが、ほかの作品でも色々な世界をみせてくれる楽しい一冊。それぞれの世界にかわいいキャラクターたち。
絵柄や作品の雰囲気をまるっと一括した感想を、通じるかわからない自分勝手な表現をすると、結構「コミティアっぽい」漫画かなと。「コミティアっぽい」て凡庸性高すぎる表現すぎるけど・・・まぁ、なんとなくなものです。
コマ割も整然としたものではなく、必要もなく斜めに仕切られていたり、それで読みづらいということはなかったですが結構実験的なのかも。
絵・物語・キャラクターそれぞれが絶妙で、面白いのは当然なんですがやたらと好感度が高い作品であり、作家さんだと感じました。これは次の単行本も買おう。
どうやら雑誌の方では集中連載をはじめるようで、楽しみにしています。
高畠エナガさんのHPでは「Latin」の前身作?である「latin」をはじめ、いろいろとWEB漫画が公開されてますね。これもあわせて楽しんでみてはどうでしょうか。自分も読もうっと。
オビからして「この新人すごいですよ!!」とプッシュしまくりですが、たしかにこれはいい作家さんが出てきてくれました。絵だけでもグッと心を掴んできます。いい表情がたくさん。
『Latin 高畠エナガ短編集1』 ・・・・・・・・・・★★★★
期待の新鋭の初単行本。気持ちのいい漫画が詰まっています。
[漫画]傑作になりえた遺作。『よいこの黙示録』2巻
よいこの黙示録(2) (イブニングKC) (2012/02/23) 青山 景 商品詳細を見る |
世界はつながってつづいているのだ
「よいこの黙示録」2巻が出ました。・・・出ましたけど、複雑です。
作者の青山景先生は昨年10月に自殺しました。この作品は未完結です。
この2巻は連載された原稿に加えて、キャラ設定画やラフイラスト、ネームやプロットといった資料が巻末に収録されています。
永遠に続きが読めないと分かりきってる作品を買うのは虚しいわけですが、・・・やっぱり好きな作品なので買いました。そしてやっぱり面白い。面白いので感想書きたくなります。でも普段と違う気持ちで書いてます。この感想を一体どんなテンションで書くべきなのか。
1巻の感想→このクラスに神様を作ろう。 『よいこの黙示録』1巻
この作品は小学生がクラスの中に宗教を興し、それを拡大させていくという内容。
2巻では野球部にいた五十嵐くんが宗教に傾倒し、それに複雑な思いを抱く根津くんを主軸に描かれていきます。男の子同士の泥臭い友情が見所。
それだけでなく主人公の先生にストーカーがついてしまったり、森ユリカを教祖とするその宗教の名前や役職をしっかり決定して更に組織として安定感を増したり・・・
「ここからどうなるんだろう!」とついワクワクさせられてしまうんですよ。
でもそのワクワクが気持ちよく消化されることはこれからずっとないのです。面白いからこそ余計つらいというか悔しいというか・・・。
普段なかなか描かれないであろう「宗教」という題材にあえてチャレンジした意欲作であり、好きだったポイントです。アイデアだけというワケでもなくちゃんと芯があり、作品の熱を確かに感じられるものでしたね。
小学校という舞台で、子供たちが宗教を作り組織し成長させていく、という設定も面白かった!
独特の人心掌握術が見えてくるというか、宗教がスピリチュアルなものに見えて実際はすごく作為的で計算づくめに組み上げられているという一面が描かれていました。
宗教というちょっと恐ろしいテーマを奥深くきり込んでいった内容で、なるほどを思わせられる部分も多く、読み応えがったんですよこれが。
子供が作ったおままごとみたいな宗教でも、信仰心を芽生えさせ人を操る事ができる。
かわいらしいタッチで描かれながらも背筋がゾクッとするような部分もあり。子供社会を舞台にしたからか、人間の本質に訴える光と闇がわかりやすい形で存在していたのもうまい。
作品のメインテーマの奥深さだけでなく、キャラクターがとても魅力的でした。
可愛らしいキャラクターが作品を飲み込みやすいものにしてくれていましたよなーと。
特に宗教を作り、意図的に人間をコントロールしていこうとする少年・伊勢崎のキャラクターも恐ろしいながら独特できらめくものがありました。
そして伊勢崎と朝子先生の関係も、なにやらエロさがあって素晴らしかったです。
小さい男の子にまんまと弄ばれちゃう大人の女性って・・・素敵じゃない。
伊勢崎と先生に関しては、巻末のプロットに気になる部分を発見しました。
青山先生が遺した、今後の展開の予定を書いたメモの一部です
・・・・・・・なんだと。・伊勢崎に良いように利用され、反旗を翻そうと決意した朝子がとち狂い、性的な誘惑と調教によって伊勢崎を手なづけようと試みるも、逆に伊勢崎に性的に支配されてしまう。
と、漫画はなにより娯楽なんだってことで明るめに本作の好きなポイントを語ってきましたが、もちろん一読者としてそれだけでないモヤモヤも抱えています。
というか上の時でも、「でした」とか「面白かった」とか過去形で言ってしまうのが辛い。
青山景先生には「ストロボライト」という作品で出会って、それからいろいろと単行本を集めてました。大好きな作家さんでした。絵が可愛らしく、しかしメッセージや世界観は重厚でいつも魅了されてきました。若い人間たちがエネルギー持て余してるようなちょっとねじれた青春劇も、またとても魅力的でした。
この「よいこの黙示録」にも期待していたんですが、この作品は永遠に完結しません。それはとても不幸なことです。こんな形で終わってしまうなんて、作品が不幸です。書き方が癇に障ってしまった方がいたらごめんなさい。
巻末のプロットを読むに相当先の展開まで構想してあったことが伺えます。
未完作品のプロットをこのように公開してもらえて、読者としてはわずかながらでもこの作品の未来を知ることができて幸せかもしれません。でも本来だったらちゃんと漫画として読めたであろうことを思うとすごく複雑なのです。プロットだけ読んでも超面白いんだものこの漫画。
あああーーーーなんだかなあーあ。もっと読みたかったんだよ青山先生の漫画が。本当に。
漫画を読みだして自分はそんなに経っていなくて、せいぜい7、8年くらいなんですけど、こんな形で楽しみにしてた連載作品が途絶えてしまうってことは今までなくて、どうすりゃいいのかわからないです気持ち的には。
そんな風にモヤモヤしながら読んでたら、コミックス一番最後のページで泣きましたよ。
グチャグチャなままの気持ちがせり上がってきて爆発しそう。
だって青山景キャラが勢ぞろいでこっち見てこんな微笑んでるんですよ。これ書かれた時にはそんなつもりはなかったはずでしょうけど、結果的に自分は青山先生から「さよなら」と言われてような気がしてしまいました。
そんな風に、とても冷静には読めない作品です。
ミュージシャンのCDが死んでから売れたりしますが、この作品は内容的にも非常に中途半端なので、この漫画を手にとってもきっといい気分にはなりません。だから人にも勧められない。
でも内容がつまらないなんてことは決してなく、このまま続いていれば傑作となっていたであろうポテンシャルを感じさせます。いろんな人に読んでもらいたいのは本当です。ファンとして青山先生の作品をもっと広めていきたいのも本当です。でもこの作品に限っては事情が違う。未完作品を勧めるのもおかしな話なので。
まぁともかく、これからきっと何度も青山先生の漫画を思い出して読み返したりするはずで、今まで楽しい漫画を届けてくれてありがとうございましたというのは書いておきたい。
「よいこの黙示録」第2巻でした。未完です。
『よいこの黙示録』2巻 ・・・・・・・・・★★★★
採点が上手くできない作品ですけど一応。本当に面白いからこそ惜しい。悔しい。