[漫画]世界が広がる。やさしくなれる。『Latin 高畠エナガ短編集 1』
Latin 高畠エナガ短編集 1 (高畠エナガ短編集) (2012/04/25) 高畠 エナガ 商品詳細を見る |
自分が好きなものが増えていくっていいよね!
「高畠エナガ短編集1 Latin」が発売されました。
SD&Goという集英社の新雑誌を買って出会ってから単行本化を待っていましたよ。
ラノベレーベルSD文庫のコミカライズが大半を占める雑誌において、オリジナルで1話完結の連作読み切りシリーズとして連載されました。
この単行本には4つの読み切りが収録されていますが、それぞれに違った味わいがあって嬉しい一冊。ストーリーはもちろん、この絵がかなり好きです自分。
それでは4つの読み切りそれぞれに触れていきながら感想でも。
特設サイトから単行本の試し読みもできますので、それを読んでみてもいいですね。
●Latin(ラテン)
表題作。この短編集では自分も一番好きな、破天荒で甘いラブストーリー。
主人公は人間の男の子の渡辺。彼が偶然ひろってしまったのは、アンドロイドのくせに仕事をしない、前の家から出てきたという女の子・ラテン。
同居生活を送る男の子と女の子・・・けれど人間とアンドロイド。時に口喧嘩をしながら、時におもいっきりケンカしながら賑やかに暮らす2人の不思議な関係性は、どこか温かい。
この話、ヒロインであるラテンが実に可愛らしいんですよ。
アンドロイドではありますが、この作品に登場するアンドロイドたちは実に人間くさい。思いっきり泣くし、まぶしい笑顔も向けるし、きっと恋もする。機械だけど、本当に人間みたいです。
身体をギャグマンガみたいに自分から分解するラテンは、すごくアンドロイドを楽しんでいるようにも見えます。
でもそんな人間みたいなアンドロイドも、一方でアンドロイドだからこその苦悩を抱える。
そこから物語は一気に動いていくわけですが、これはぜひ読んでみてほしいなと。
しかしまーラテンさんがかわいいったら、もう!
そればかり言っててごめんなさい、でもかわいい!主人公とのラブコメにニヤニヤしてしまいますよ!雑誌でこれを読んだ段階で「あ、単行本買おう」と決心したものです。
ツンツンしまくりな序盤から紆余曲折を経て、こんなデレデレになっちゃうんですよ!
ちょっとずつ想いを深めて、近づきたくなって、触れたくなって・・・一緒に歩んでいく。ラテンさんまじ恋する女の子。
人間とアンドロイドが恋することになんの後ろめたさを感じさせないパワーもあって、実に清々しい。読んでるこっちも何の不安もない。
SF世界観にもしっかり魅せてくれますし、人間くさい内面を抱えながらも身体は完全に機械であるというラテンが抱えるギャップも、効果的に作品を雰囲気を作り出しているように思います。
強い感情が思わず溢れでてしまうような、衝動的なシーンも数多く、そのそれぞれで魅力的な表情が描かれていて素晴らしい。泣き顔も笑顔も。
いい表情を描く作家さんはそれだけでも好き。
なお、単行本巻末はこの話の2年後を描いた描きおろしもあり。
●雪原のネストーレ
人間、妖精、エルフ、そしてロボットをめぐるファンタジーアクション漫画。
Latinと同じく別種族のキャラクターたちが絆を深めていく様子が描かれており、加えてまたロボットも登場するので、高畠エナガさんはこういうモチーフが好きなんだなぁと感じます。
とは言えこの作品はアクションを重視して描かれており、とても少年漫画チック。
きちんとした盛り上がりをみせてくれる丁寧な作品だと思います。
妖精ヒロインがそう戦うか、とやや意外性あるバトルが展開されました。
そして最後のコマ、雪原にひっそりと、しかし力強く構えるネストーレに姿が印象的。
●猫又荘の食卓
前2作と比べれば落ち着きがある日常漫画。日常とは言え人化したネコたちがぞろぞろと登場する、やっぱりこれもどこかファンタジックな作品。
でもやっぱり日常漫画なので、蔓延しているのはまったりだらけた生活感。
事件はおきない。けれど少しずつ人間とネコの生活が交わっていって、お互いにとって居心地のいい空気になっていく様子がいいですね。心穏やかに楽しめるお話です。
少しずつ心を開いていく主人公の変化にも微笑ましくなりますね。
好きなものが増える、そんなちょっとの変化で毎日は楽しくなる。世界が広がっていく。
人化してもネコミミやしっぽは生えたままなので、そんなネコたちがぞろぞろと所狭しと登場しとても賑やか。見た目は人間なのにネコっぽい反応を見せてくれて、みんなかわいいですw
女の子みたいな外見の人間になるネコたちですが、オスもかなりいるみたい。
ヒロインが三毛猫らしく、人化すると髪が3色になってしまうというのが面白かった!
連載として続けられてもおかしくない設定ではありますが、心地良いラストを迎えてくれたので満足。個人的に気に入ったので、そのうち連載になったりしないかな。
たくさんのネコが出てきますがみんな個性豊かだし、もっと読んでみたくなる作品。
●Reversi
悪魔の女の子と天使の女の子が仲良くなっていくのを描いたお話。友情百合かな。
今度は完全に人間のキャラクターを排除したファンタジー。
悪魔やモンスターといった人外らが通う学校に転入してきたのは、天使の女の子。
悪魔のユリカは天使に憧れているけれど天使になんかなれないし、天使を妬んだり憎んだりする自分自身をイヤになってしまったり・・・天使のユリにも反発してしまいます。
惜しかった所を言えばうまく天使のユリを自分がうまく掴めなかったというのがあるけれど、それでも2人の気持ちが力強く結ばれる流れは感動的。ユリちゃんの包容力が凄まじい。
悪魔と天使。種族を超えた女の子同士のふれあい・・・いいですね!
あと作画も非常に丁寧に書き込まれているなと感じました。
メカニカルなパーツも魅力的に描く作家さんですが、この絵はなんにせよ人を惹きつける力があるような気がします。たんに自分の趣味に合うだけなのかな。
そして個人的にクラスメートのモンスター娘たちに目がいってしまいます。
さらっと描かれてますが、クモっ娘の笑顔がやたらと眩しいんだ・・・!
そんな高畠エナガさんの初単行本短篇集「Latin」でした。
表題作「Latin」が個人的大ヒットでしたが、ほかの作品でも色々な世界をみせてくれる楽しい一冊。それぞれの世界にかわいいキャラクターたち。
絵柄や作品の雰囲気をまるっと一括した感想を、通じるかわからない自分勝手な表現をすると、結構「コミティアっぽい」漫画かなと。「コミティアっぽい」て凡庸性高すぎる表現すぎるけど・・・まぁ、なんとなくなものです。
コマ割も整然としたものではなく、必要もなく斜めに仕切られていたり、それで読みづらいということはなかったですが結構実験的なのかも。
絵・物語・キャラクターそれぞれが絶妙で、面白いのは当然なんですがやたらと好感度が高い作品であり、作家さんだと感じました。これは次の単行本も買おう。
どうやら雑誌の方では集中連載をはじめるようで、楽しみにしています。
高畠エナガさんのHPでは「Latin」の前身作?である「latin」をはじめ、いろいろとWEB漫画が公開されてますね。これもあわせて楽しんでみてはどうでしょうか。自分も読もうっと。
オビからして「この新人すごいですよ!!」とプッシュしまくりですが、たしかにこれはいい作家さんが出てきてくれました。絵だけでもグッと心を掴んできます。いい表情がたくさん。
『Latin 高畠エナガ短編集1』 ・・・・・・・・・・★★★★
期待の新鋭の初単行本。気持ちのいい漫画が詰まっています。
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