[漫画]きっと許されない恋だけど。『Liqueur―リキュール―』Vol.2
ブラコンアンソロジー Liqueur―リキュール―2 (Flex Comix) (2012/08/11) 草野紅壱、kashmir 他 商品詳細を見る |
でもこれからは 一緒にいられないよ
うひょう!ブラコンアンソロジー「Liqueur(リキュール)」のVol.2がでました。
vol.1は去年の春に出たので、1年以上ぶりになりました。Vol.1もお気にいりだったので、待ってましたの一冊。
まずテーマがブラコンですよ。姉/妹オンリーの近親恋愛アンソロジーって時点で買います買います。
それに参加している作家さんもなかなかに豪華で見逃せない。
Vol.1とは結構違った作家さんの並びになっていますが、固定されるよりは良し良し。
作家一覧は公式HPとかでチェックできますのでそちらで。
この公式HPの「ブラコン・ネバー・ダイ」のコピー大好きw (ちょっと終了フラグを感じますがVol.3も待ってますよ!)
豪華執筆陣で送る姉/妹オンリー本 『Liqueur-リキュール-』
では気に入った作品を順番に触れていきたいなと。
●ある姉の不道徳/渡辺静
「この彼女はフィクションです。」の人。黒髪セミロングのおねえちゃんが主人公。
後半の変貌がインパクト大でした。最初のイメージをぶち壊す乱れっぷりがすごいw
やましさや罪悪感を内に秘めた感情描写もひかり、巻頭らしく勢い十分な一作。
●伝染/よしだもろへ
うーかわいいー。よしだもろへさんの女の子はかわいい。
兄姉の気兼ねない距離感に1人胸ときめかす妹、という構図が魅力的に描かれいます。
許されない恋をしているという苦しみがにじみ出ていて雰囲気も好み。
こういうふわふわした片思いは、切ないけどほっとします。お兄ちゃんが狙っていたら面白いんだけど、お兄ちゃん純朴そうだし、なさそうだなぁ・・・。
明らかに狙って子供っぽいデザインの妹ちゃんが見せる、キス直前の色っぽい表情がたまらないです。
●よるとまひる2/カザマアヤミ
Vol.1からの続投作。前回に一瞬見せた寂しさを拡大させたようなエピソード。
成長への、変わっていくことへの恐怖がまひるを捉えてはなさない。普段のあっけらかんとした明るく騒がしい振る舞いは、そういう現実から逃れたいという思いもあるんだろうな。
というか今回でグッとこの2人のドラマが深まったし続きとか気になります。普通に連載とかしてくんないですかね!ハフハフ
●おにいちゃんカメラ/雨隠ギド
きたー雨隠ギドさん!今回のVol.2で一番好きな作品でした。
切ない雰囲気を醸しつつ、けれど明るく進行していくのですが、なんといってもエンディングが好きすぎる。こういう、思いを引きずる女性の姿に弱いのかもしれないな、俺。
やっぱり肉親は近すぎて壁があって、それを乗り越える2人もいればそうじゃない人もいる。でも穏やかな表情で思い出をとりだすこのラスト、じんわり染みる。ブラコンネバーダイ。死なせはしないこの恋。自然に死んだりもしない。
●いもうと観察日記/kashmir
かまってちゃんな妹ちゃんが輝きまくる一作。むぅぅかわいい。
最後の複雑そうな表情も味わい深い・・・な・・・困ったものだ・・・ふぅ。6ページと短い作品ですが、これでもかと1人の女の子のかわいいポイントを押し込めたような構成で、満足度たかし。
●今年からは妹/狩野蒼穹
これも大好き。最後のページのぐぐっと引き込まれました。
狩野蒼穹さんといえば執拗なまでに姉×弟もののエロスな漫画を発表している作家さんですが、本作も多分に漏れず姉漫画!しかし姉は「あたし妹になるわ」と宣言。
詳しくは言わないけど1番トリッキーだったかな。面白かったです。ナイス姉漫画。
●たぬきねいり/キダニエル
キダニエルさんの作品は今回はじめて読みましたが、いい表情を描く作家さんですね
クールな甘えん坊という妹のキャラクターにやられました。
主導権をにぎりたいのかそうでないのか、あやふやな妹ちゃん。いや、これはただ兄といっしょにいたいだけだw コロコロといろんな表情を見せてくれるのも愛らしい。
可愛らしいだけでなく葛藤も描かれていて、軽いものにはなっていないのもいいですね。
●たくらんで妹/位置原光Z
いつもの位置原先生のマンガです、おわり。
・・・いや終わりませんけど、いつものあんなノリですよ!
女の子がダベってはじまりダベって終わる基本スタイル。でもちゃんとブラコン漫画。アホらしい盛り上がりの中でブラコン魂に火がつき、おのおの密かにたぎっていくのに笑ったw
●はさみ。/大朋めがね
大朋めがねさんの涼やかな絵柄はトリにピッタリじゃないでしょうか。ラストの作品。
これもラストシーンがすごく好き。切ない余韻が広がり、大満足で本を読み終えました。
笑顔のまま出て行って、最後のページ、子供がふしぎそうに彼女の顔を見上げて終わる。どんな表情をしていたのかはわからないけど、きっと・・・。
ハッピーでキュートなものも好きですが、ヒリヒリする甘酸っぱいものもいい。
そんなリキュールVol.2でした。
今回は姉にも妹にも目立った作品があって、バランスがよかったと思います。
ページ数も参加作家も増え、パワーアップが上手くいってる印象。
あとVol.1より、なんとなく切なげな作品が増えてる・・・かも?
このジャンルにならそういう要素を期待しがちな自分としては嬉しい傾向ですよ!
チクリと心に刺さる背徳感。家族だからこそ想いを届けることができない切なさ。近くて遠い・・・そして許されない恋。そんなこのジャンルならでは醍醐味がいいスパイスになっています。Vol.1でも感じましたが、さらに。
いろんな作家さんのブラコン少女の漫画を読めるということで、自分はこのシリーズ大応援ですよ。
あとは安定して供給してもらえれば嬉しいんですが・・・Vol.3は出るのかな。
安定して供給してほしいのはフレコミ全体に言えることですが。ゲフンゲフン
ともかく、今回も良質な一冊でした。いろんな作家さんに触れることができますし、作家の新規開拓という意味でも個人的にはおいしい。
[漫画]愛しい人のためにできること。『恋愛ディストーション』6巻
恋愛ディストーション 6 (サンデーGXコミックス) (2012/07/19) 犬上 すくね 商品詳細を見る |
あなたに似た、真面目で優しい子になるといいな。
「恋愛ディストーション」6巻。6巻・・・6巻!続きが読める第6巻!
去年に小学館から出た新装版ではじめて触れた作品ですが、それでも「やっと読める」という感慨が沸く。旧版から待っていた人の喜びはどれほどのものか・・・!
複数の男女の恋模様を描き出していくシリーズ。5巻は江戸川くんとまほ先生の間柄を引き裂きかねない出来事が起きました。6巻でもたっぷりとそのエピソードが綴られており、波乱のシリーズがひと段落。つらつらと感想書いていきます。
6巻は開幕からシリアス全開。なほとまほ、双子の女性をめぐるお話。
まほからすれば、届いていたとも知らなかった手紙の行方にまずびっくりですし、それをなほが読んだことにも衝撃。そこから回想を交えて、この双子の心の深部を見つめていく流れ。
双子の女が、同じ男を好きになった。
そんなシチュだけでも泥沼修羅場な様相をイメージしてしまうわけですが、むしろまほとなほは、もっと前に修羅場になっているべきだったのかもしれない。気持ちの整理をつけられず逃げていたことが今につながっている。
過去の恋を明かす。それもまだ完全に終えていない、くすぶったままの想いを。
さらにそれは自身の醜さをさらけ出す行いでもある。
粛々と恋人である江戸川くんに昔話をするまほ先生のシーン、その静かでありながらも緊張が忍び寄ってくる感覚にゾクゾクしました。沈みきったようなまほ先生の表情もなぁ。
ありのままを言い訳せずに提示して・・・というか、あの1夜の真実を話さなかったまほ先生の心中を想像するに、やはりすごい葛藤を抱えた人だと思う。
大好きな今の恋人に愛想つかれるかもしれないという恐怖を承知している。その上では自分にとってはいいものであるはずの情報を隠す。まほ先生にとっては結果はどうあれ、あの夜に自分がしてしまった行動そのものにとてつもない罪悪感を抱いている。そしてあの夜の真実は、なほや江戸川くんを安心させるものではあったけれど、まほ先生の罪の意識を軽くさせるものではないんだな。
許してもらうのために都合のいい真実を伝えない。罪を受け止めるだけ。
打算的な考えをしない、被虐的とも言えそうな真摯さもすごい。でもそれって傷つくためのある種の暴走だとも感じられて痛々しい。
・・・もし政広があのまま間違えたままだったら・・・と想像をしてみたら、ヤバい。それはそれでゾクゾクするが目も当てられない惨状。いやほんと、よくやったよ政広さん。
あの夜の、あの恋のなにもかもが、重い鎖になってまほ先生を縛り付けている。
双子の女性の不和や、やましい感情や、後悔や懺悔や・・・
そんなヘヴィなものををじっくり描いていっての、やさしいクライマックスがたまらないのです。
スカッと爽快な解決なんてできないですよ。そう割り切れるものではない。
でも、みんながちょっとずつ傷ついてでも、ちゃんと歩き出せるように。
いやー江戸川くん、好感度がグンと上がりましたね!今までも好きだったけど、一段と。
この一連のエピソード、〆を飾ったのが彼の「こんなふうにして俺は二十歳から21歳になった。」というモノローグ。これがまたとても鮮やかなのだ。あっさりと、しかし人生の節目としての感慨深さをこめたモノローグ。とても気持ちがいいエンディング!
江戸川くんとまほ先生サイドが落ち着いたら、大前田くんの方へ。
こっちはねえ。もう、お前ら何度ささいなことでスレ違うんだ!
それというのも棗がかなりのネガティブ思考&すなおになれない暴走娘なことと、大前田がふだん犬っころなくせにご主人様がちゃんとかまってくれないっていじけるもんだから。
今回なんて携帯買ったけど、どう連絡しあえばいいのかわからない!という、お前ら微笑ましすぎだろうと思うしかないきっかけ。
まぁささいなことだというのは、こう客観的に漫画で読んでる身だからこそな言い分なわけで、彼らとすれば一大事なんですよね。
いつでもつながれるという安心は、逆に不安を掻き立てる場合だってある。
それは棗が携帯を手にしたことで、大前田との新しい距離感に戸惑っているだけで、じきになれていけばちゃんと掴んでいけるはず。
この2人の恋模様はいつまでたっても初々しさが感じられるんですね。
初々しいといえば山野辺くんサイドもとてもニヤつくのです!
長らく独り身のままさまよっていた山野辺くんにもついに春が来ている。始まったばかりのういういdaysを満喫中ですよ!
お相手の里中さんですが・・・・・・いや、ほんとかわいいな。
お姫様みたいな女の子ではなく、むしろ結構力強く生きてそうな感じなんですが、山野辺にちょっかい出して遊んで、でもあわよくばもっと近づきたいって空気にこっちもそわそわ。
恋ディスヒロイン、いろんな女の子がいますが、中でも特にお気に入りかもしれない。里中さんの軽やかな立ち住まいと、山野辺のムキになりがちな性格が、見ていて実に面白いw
この2人を結ぶのは身長というキーワードかな。
山野辺はいぜんに低身長フェチを開眼させており、身長ひくい女の子を彼女にしたいなぁウホホと練り歩いていた変態でした(捏造)が、里中はすらっとモデル体型、身長も同じくらい。
フェチと実際の好みは違うのか・・・「いや、俺、ちっちゃい女の子が好きだし」と自分に言い訳しながらうまいこと転がり落ちていく山野辺の明日はどっちだ。
徐々に詰まる距離。これから先はもう、悶絶するしかない。
里中さん回もっと来い!来い!山野辺との友人同士みたいな気兼ねないやり取りもっとみたい!といいつつラブコメ見たい!
たらたら書いてきましたが「恋愛ディストーション」6巻でした。
シリアスにラブコメに、いつもとはちがうようでいつもどおりのような内容。
まほ先生関連はかなり心苦しいエピソードでしたが、きちんとこの作品らしい、切なくも暖かなところに着地をしてくれてよかったです。
いろんなカップルの恋模様を見つめていくシリーズですが、恋愛だけにとどまらず人間関係の中で大切なものが描き出されているように思います。
この作品の好きなポイントに、ざっくりしていますが雰囲気のよさがありますね。一貫して肌触りいい感じの、なんだかうまく表現できませんが、深いところにまであったかいエネルギーを与えてくれるような。しなやかな作品だと思います。
サンデーGXで順調に連載がされているようなので、7巻も出ることでしょう。
新装版からでも読み出してよかったなぁ。続きを楽しみにしています。
『恋愛ディストーション』6巻 ・・・・・・・・・★★★★
まほ先生編はいい決着が見れてよかったなぁ・・・ほの暗く、光もある、バランスのいい一冊。
[漫画]俺の嫁なんて、いねえ!!『百合男子』2巻
感想書きたくても溜め込んでた本がかなりありますなあ。
百合への愛故に 俺は苦しまねばならないのか・・・!?
独特の百合哲学を炸裂させる「百合男子」待望の2巻が出てますよ。
百合といえば男は介入できない、女の子だけの世界・・・。その百合を遠くから愛する男たちの幸福と苦悩を描いた本作。百合漫画なのに男が主人公・・・というかこれ百合漫画扱いでいいのだろうか。まぁ作中でも百合女子たちは登場するので百合ん百合ん。
2巻の表紙は正二郎。ムサっ!yhコミックスにあるまじき男臭!しかし彼もまた百合を愛する百合男子。1巻にも登場した彼が啓介と激論交わすシーンもあり。
相変わらず小難しいことを小難しく考え込む啓介ですが、そういううっとおしいナイーブさもこのキャラクターらしいですね。というか彼が言うことには時折強烈に共感する。
さくっと2巻の感想を書いていきます。
前巻→我思う、故に百合あり。『百合男子』1巻
どうして男なのに百合を愛してしまうのか。どうして自分はこんな矛盾を抱えた存在なのか。
百合を愛するがために悩み続ける探求者たち・・・百合男子。
その苦悩は一巻のうちでもたっぷりと描かれており、この作品の核となる部分だと思います。
しかし2巻はそんな苦悩からさらに踏み込んだ、2人の百合男子による議論・・・衝突が描かれもしており熱い。ムダに熱いのです。本気の男同士がぶつかり合う!互いの百合論で戦う!
しかしこの正二郎、外見と違ってかなりまともな考えをしていた。
読み進めると主人公である啓介が一番クレイジーであるという結論に。
というか主人公だからこそ啓介に同意しつつ読みすすめていたけれど、ハッとさせられました。よく考えてみればこいついろいろオカシイんだやっぱり。
彼のすさまじい情熱についつい流されていたけど、彼はマナー違反も結構していた。
マナーってなんだよという感じではあるけれど、百合男子は百合男子としてのこだわりがある。
確かに2巻の中で言うと、茜と陽子を仲直りさせようとむりやり2人を観覧車におしこめた場面なんかは、コミカルに描かれはしているけどかなり踏み込んでいる。ようするに余計なお世話だ。
男がその好奇心から百合の世界をかき乱すなんて許されない。
そこには不可侵のおきてがある・・・と考えるのは百合男子共通らしい。だがその掟とどう向き合うのか、というところにはそれぞれに違いがある。
啓介は「なぜ自分は男なのか!」と真剣に悩み込む時点で、許されないということを分かっていても百合の世界を味わい、あわよくば世界を壊さない程度に寄り添ってみたいと考えている様子。
申し訳ないと感じているからこそ、現実の百合カップルたちを応援するような行動をとる。ただ眺めるだけではなく、女の子達の世界にそっと介入してしまう。
これを批判するのが正二郎。2人の議論はかなり印象的です。
「大体百合を愛すると言うけれど、その百合ってなんだ?
セクシャルマイノリティー つまりは他人の苦悩を餌にした妄想じゃねえか」
このセリフはグサッと刺さりましたねえ・・・。能天気に楽しんでいるのもヒドいことだよなあ。
誰も傷つけないために。安全に萌えるために。そんな意味も込めて、無意識に創作物のみに焦点を絞るのかもしれない。自分のことなのでよくわからないけれど、考えとしては正二郎のものに近いと思う。
同じ百合男子でも、違った考えを持った人もいて、対立する。
そういうシーンはちょいと辛くもあるけど、実に興味深くて面白い。
いろんな生き様があるねえ、百合男子。
百合男子としての謎のプライドからか、普通の男の子としての生き様を拒否する啓介。
女の子と付き合いたいとか思うはずもなく、このまま童貞で間違いない。というか童貞すてたら百合男子じゃない、とか思ってる節もある。
どっぷり百合につかり、百合に人生捧げる気マンマンである。覚悟してる。
けれど作中登場するほかの百合男子の多くは、趣味として百合を愛好している。その愛は強烈ではあるけれど、彼らの人生を縛るものではない。家族を得て子供も作る。
百合を愛するのは趣味だけにとどめ、きちんと現実の社会に迎合していく。それは自然なことなんですが、それに納得できないのが啓介。「百合はファンタジー」・・・なんてを認めたくない。
百合への愛を貫く。百合の世界に操をたてることで自分のプライドを守ってる。
それは正しいことなのか間違っているのか。まだ答えは出されていない状態。
啓介は理想家で、現実が見えてない部分もあります。でもだからこそ彼の言葉はときに意味不明に人の心を揺さぶるし、コイツならなにか新しい道を切り開くんじゃ、なんて期待もしてしまうw 狂っていても、アツい魂を持っていることは間違いない。
さて、2巻の限定版はドラマCD付き。キャストは佐倉綾音、戸松遥、茅野愛衣。男はいない。百合男子のドラマCDなのに男がいない。いいぞ、これが正しい姿だ。
百合男子を気持ち悪がる女の子達・・・という、まさしく百合男子の生き様かくあるべしな一幕が収められています。
でもそれだけじゃなく、気持ち悪がる以外の反応もいくつか見れて、楽しかったです。
女の子から見る百合男子とはどんな存在なのか・・・という、ちょっと珍しい視点でしたね。
百合男子は男たちの苦悩を描いた作品なのですが、それと同時進行的に描かれる、現実の百合っぷるたちのドラマも面白いんですよ。宮鳥茜ちゃんがお気に入り。
元気よくてかわいらしくて、でも計算高くしたたかで。ドラマCD内でも彼女が電話をかけてくるタイミングとか、もしかして・・・とゾクゾクしたりもしましたね。
女の子の世界のきらめきも恐ろしさも楽しみたいってのが、自分が百合作品に寄せる期待でもあります。もっとこじれてもっと面白くなって欲しいなー!
男たちのムサくるしい議論も最高に面白いですが、それだけじゃないんですよ「百合男子」!
『百合男子』2巻 ・・・・・・・・・★★★★
苦悩を深めていく百合男子。一発ネタで歩みを止めずいいテーマを描いています。
百合男子 2巻 限定版 (百合姫コミックス) (2012/06/18) 倉田 嘘 商品詳細を見る |
百合への愛故に 俺は苦しまねばならないのか・・・!?
独特の百合哲学を炸裂させる「百合男子」待望の2巻が出てますよ。
百合といえば男は介入できない、女の子だけの世界・・・。その百合を遠くから愛する男たちの幸福と苦悩を描いた本作。百合漫画なのに男が主人公・・・というかこれ百合漫画扱いでいいのだろうか。まぁ作中でも百合女子たちは登場するので百合ん百合ん。
2巻の表紙は正二郎。ムサっ!yhコミックスにあるまじき男臭!しかし彼もまた百合を愛する百合男子。1巻にも登場した彼が啓介と激論交わすシーンもあり。
相変わらず小難しいことを小難しく考え込む啓介ですが、そういううっとおしいナイーブさもこのキャラクターらしいですね。というか彼が言うことには時折強烈に共感する。
さくっと2巻の感想を書いていきます。
前巻→我思う、故に百合あり。『百合男子』1巻
どうして男なのに百合を愛してしまうのか。どうして自分はこんな矛盾を抱えた存在なのか。
百合を愛するがために悩み続ける探求者たち・・・百合男子。
その苦悩は一巻のうちでもたっぷりと描かれており、この作品の核となる部分だと思います。
しかし2巻はそんな苦悩からさらに踏み込んだ、2人の百合男子による議論・・・衝突が描かれもしており熱い。ムダに熱いのです。本気の男同士がぶつかり合う!互いの百合論で戦う!
しかしこの正二郎、外見と違ってかなりまともな考えをしていた。
読み進めると主人公である啓介が一番クレイジーであるという結論に。
というか主人公だからこそ啓介に同意しつつ読みすすめていたけれど、ハッとさせられました。よく考えてみればこいついろいろオカシイんだやっぱり。
彼のすさまじい情熱についつい流されていたけど、彼はマナー違反も結構していた。
マナーってなんだよという感じではあるけれど、百合男子は百合男子としてのこだわりがある。
確かに2巻の中で言うと、茜と陽子を仲直りさせようとむりやり2人を観覧車におしこめた場面なんかは、コミカルに描かれはしているけどかなり踏み込んでいる。ようするに余計なお世話だ。
男がその好奇心から百合の世界をかき乱すなんて許されない。
そこには不可侵のおきてがある・・・と考えるのは百合男子共通らしい。だがその掟とどう向き合うのか、というところにはそれぞれに違いがある。
啓介は「なぜ自分は男なのか!」と真剣に悩み込む時点で、許されないということを分かっていても百合の世界を味わい、あわよくば世界を壊さない程度に寄り添ってみたいと考えている様子。
申し訳ないと感じているからこそ、現実の百合カップルたちを応援するような行動をとる。ただ眺めるだけではなく、女の子達の世界にそっと介入してしまう。
これを批判するのが正二郎。2人の議論はかなり印象的です。
「大体百合を愛すると言うけれど、その百合ってなんだ?
セクシャルマイノリティー つまりは他人の苦悩を餌にした妄想じゃねえか」
このセリフはグサッと刺さりましたねえ・・・。能天気に楽しんでいるのもヒドいことだよなあ。
誰も傷つけないために。安全に萌えるために。そんな意味も込めて、無意識に創作物のみに焦点を絞るのかもしれない。自分のことなのでよくわからないけれど、考えとしては正二郎のものに近いと思う。
同じ百合男子でも、違った考えを持った人もいて、対立する。
そういうシーンはちょいと辛くもあるけど、実に興味深くて面白い。
いろんな生き様があるねえ、百合男子。
百合男子としての謎のプライドからか、普通の男の子としての生き様を拒否する啓介。
女の子と付き合いたいとか思うはずもなく、このまま童貞で間違いない。というか童貞すてたら百合男子じゃない、とか思ってる節もある。
どっぷり百合につかり、百合に人生捧げる気マンマンである。覚悟してる。
けれど作中登場するほかの百合男子の多くは、趣味として百合を愛好している。その愛は強烈ではあるけれど、彼らの人生を縛るものではない。家族を得て子供も作る。
百合を愛するのは趣味だけにとどめ、きちんと現実の社会に迎合していく。それは自然なことなんですが、それに納得できないのが啓介。「百合はファンタジー」・・・なんてを認めたくない。
百合への愛を貫く。百合の世界に操をたてることで自分のプライドを守ってる。
それは正しいことなのか間違っているのか。まだ答えは出されていない状態。
啓介は理想家で、現実が見えてない部分もあります。でもだからこそ彼の言葉はときに意味不明に人の心を揺さぶるし、コイツならなにか新しい道を切り開くんじゃ、なんて期待もしてしまうw 狂っていても、アツい魂を持っていることは間違いない。
さて、2巻の限定版はドラマCD付き。キャストは佐倉綾音、戸松遥、茅野愛衣。男はいない。百合男子のドラマCDなのに男がいない。いいぞ、これが正しい姿だ。
百合男子を気持ち悪がる女の子達・・・という、まさしく百合男子の生き様かくあるべしな一幕が収められています。
でもそれだけじゃなく、気持ち悪がる以外の反応もいくつか見れて、楽しかったです。
女の子から見る百合男子とはどんな存在なのか・・・という、ちょっと珍しい視点でしたね。
百合男子は男たちの苦悩を描いた作品なのですが、それと同時進行的に描かれる、現実の百合っぷるたちのドラマも面白いんですよ。宮鳥茜ちゃんがお気に入り。
元気よくてかわいらしくて、でも計算高くしたたかで。ドラマCD内でも彼女が電話をかけてくるタイミングとか、もしかして・・・とゾクゾクしたりもしましたね。
女の子の世界のきらめきも恐ろしさも楽しみたいってのが、自分が百合作品に寄せる期待でもあります。もっとこじれてもっと面白くなって欲しいなー!
男たちのムサくるしい議論も最高に面白いですが、それだけじゃないんですよ「百合男子」!
『百合男子』2巻 ・・・・・・・・・★★★★
苦悩を深めていく百合男子。一発ネタで歩みを止めずいいテーマを描いています。
[漫画]この恋、もどかしすぎる!『ラストゲーム』2巻
ラストゲーム 2 (花とゆめCOMICS) (2012/07/05) 天乃忍 商品詳細を見る |
・・・いーよもう どこまでも付き合いますよ
「ラストゲーム」2巻発売!
もともと全三話の集中連載として構成されたお話ですが、好評につき連載化されました。
本屋行ったら今でてるLaLaの表紙になってましたね。人気出てきているのか!可愛すぎて買いましたとも。ちなみに雑誌の方はこの2巻のすぐ続きになってました。
さて2巻の感想を。1巻の感想はこちら。
もともと全三話で終えるはずだったため、1巻だけでとても綺麗にまとまっていました。
小学校、中学、高校、そして大学と、ずっと一緒で腐れ縁みたいな2人。
1巻はその構成が見事にハマっており、気持ちいい読後感を与えてくれていました。
というところで2巻。続編は大学生となった2人を描いていきます。
20歳を超えても、まったくもって二人とも進歩がない。いい意味でも悪い意味でもw
大学生になってまで、なんて純な関係やってるんだろうかと!
それがもう本当にかわいくて仕方ないのです。なんという牛歩。もどかしすぎる。
2巻で特にオイオイこいつらと思わせられたのは
いろいろあって九条に「私に何かしてほしいことない?なんでもする」といってもらった柳くん。
やったれ柳!花とゆめレーベルからヤングアニマルレーベル飛び出しちゃえよ!と、この2人にはありえない展開を冗談として期待しながら読み進めたら・・・やっぱりいつもの期待を裏切らない奴らです。
主人公の柳は家よし顔よしの勝ち組、そしてオレ様チックな少年。
そんな彼が自分の思い通りになってくれない女の子にお願いしたことは・・・
「下の名前で読んでほしい」ってこと。なんだよコイツかわゆ!!
ここでそういうお願いをするのが柳くんですよ。実際呼ばれて照れまくりだしなーあーもう!本当にピュアな奴らめ!10年来の腐れ縁で、いまさらこの進歩かよって。
この作品、いつもクールな九条さんを振り向かせようと柳くんは悪戦苦闘するっていう一番のお決まり展開があるのですが、お決まりと分かっていてもこれが読んでいて可愛すぎる。
柳くんのイケメンぶりは作中でアピールされていますが、彼はあまり嫌味じゃないですね。というか、自分の恋が上手くいかずいっつもジタバタ頑張っていて、微笑ましいくらい。
柳くんが他の女にグラつくこともないだろうなと思える。片思い一直線だねえ。
でもジタバタしてるだけじゃつかれてきてしまうもの。九条さんに全く反応がないわけでもないです。適度にデレ(・・・?)を出してきており、そのたび柳くんは浮ついてしまう。
九条さんがちょっと微笑みかけてくれるだけで柳くんは有頂天ですよ。
それで「コイツもしかして俺のこと好きなんじゃ」なんて。いや、そういう期待するたびに後でガッカリしてんだから学びなさいよと。でもいつまでもそんな微笑ましい男の子でいて欲しいw
九条さんがとる距離感って、時々すごく残酷かもしれない。
普段全然なついてくれないのに、ふとした時にはグッと近づいてきたりして。
九条さん自身が他人の気持ちにも自分の気持ちにも鈍感です。肝心な時にヘタレる柳くんと彼女の組み合わせは、ああそりゃ時間かかるよねえという感じ。
九条さんと言えば、2巻の7,8話なんかは九条さん視点が多く入っていて新鮮でした。
柳くん視点からじゃあまり見えてこない、九条さんが感じるささやかな寂しさが感じられてニヤニヤできましたね。恋とはまだ遠いけど、打ったらちゃんと、ゆっくり小さく響いてるじゃないですか。
彼女も柳くんの側にいる時間を大切に感じている。いい感じ。
柳くんと、だけじゃなく2巻で新しく入ったサークルのメンバーとも馴染めてきてますね。
本作はちょっとずつ九条さんが新しいことを知っていく、成長の日々でもあります。
そうそう、このサークルの女の子、藤本さんもいいキャラしてます。物語引っ張っていきます。元気いっぱいでかわいい。
「ラストゲーム」2巻はそんな感じ。小中高と時間が流れていった1巻とは違い、大学生に落ち着けて再始動。作者自身、1巻第3話の終わり方の後、どうストーリーを続けていけばいいのか悩んだそうですが、続編が読めて嬉しいというのが1番の想いです。
小学校からつながりがあるのに、どこまでもどかしい恋してんだよというw
純情すぎる大学生たちですが、大学生ならではイベントも活かされていていいですね。
1巻で感じたラブコメとしての少々のパワー不足ですが、2巻は全編ニヤニヤし通しでムハァ!
3巻以降もこっ恥ずかしくもどかしいラブコメを期待したいところ。
柳くんが萌えキャラすぎて辛い。
そしてこの2巻には最後に「わすれ雪」という読み切りが載ってます。
これがもう、名作。これ30ページほどの短い作品ですが、これだけでも★★★★☆つけたくなるくらい好き。
ラストゲームがだいぶ明るいノリのラブコメである一方、かつての「片恋トライアングル」や「夏のかけら」で見せてくれた、シリアスな中の鋭く切ない胸の痛みも天乃先生の持ち味。
この「わすれ雪」はかなり胸をえぐってくる切ない物語で、オチも含め素晴らしい。主人公がついつい悪口ばかり言ってしまうのも、最後まで読むとズキズキと。全編漂う切ない雰囲気もいい。
つなぐことができなかった手。それを踏まえてのラストシーンにはもう震えんばかり。泣いてしまいました。読み返すと見方がかわる構成もお見事。
天乃忍先生のこういう話も大好きだなぁ。というかここまで暗いのは初めて読んだかも。
この読み切りの出来も素晴らしいので、ぜひ読んでもらいたい・・・!!
『ラストゲーム』2巻 ・・・・・・・・・★★★★
ラブコメとしてグングン魅力上昇中の第2巻。本編とは雰囲気を変えた読み切りも必見。
[漫画]ゾンビ(に巻き込まれ)ライフはいつも賑やか。『りびんぐでっど!』3巻
りびんぐでっど! 3 (少年チャンピオン・コミックス) (2012/06/08) さと 商品詳細を見る |
ふしだらと思われてもいいから…一緒にいてください
少年チャンピオンでやっている「りびんぐでっど!」3巻が出てます。
しかしもう3巻か、順調に巻を重ねていて嬉しいです。
毎度毎度、表紙がとてもかわいくてこれも楽しみにしています。
ひたすら脳天気でテンションの高い一話完結コメディな漫画。
元気いっぱいでお肉好き、ときどき理性を失っちゃうゾンビ娘・もなこちゃんと、彼女に振り回される人たちを描いた作品です。独特のノリと緊張感のないやりとりになんとなく病みつき。
実に安定感ある内容です。質は高いままですし、むしろパワーアップしてきてる感すら。
でも感想書く側としては、とても楽しめているけど書けることが減ってきてるw
大体この作品で感じていることは、1巻2巻の感想で書いてしまっています。
ゾンビなあのコと色々あぶない同棲生活『りびんぐでっど!』1巻
今日も明日も楽しくゾンビライフ!『りびんぐでっど!』2巻
それでも3巻も感想書きたくなる。だって面白いんだもの。
さて3巻で感じたことは、サブキャラの魅力が深化してきたなということ。
もなこに振り回されるたち、逆にもなこを振り回したり・・・この作品を彩るサブキャラクターはみんなとてもかわいい。というか濃い。
どんどん賑やかに楽しく、そして物語を飽きないものにしてくれてるのは彼らの活躍もかなり影響しているんじゃないかなと思っていたりもする。
彼らがどう日常を引っ掻き回していくのか・・・その様子が楽しくて楽しくて・・・!
特に水森アンリちゃん素晴らしい!第2のヒロインとしての地位を固めてきています。
今回はもなこだけじゃなくアンリちゃんも絡んだラブコメチックなエピソードがたんまりとあって、ラブコメ好きとしては実に喜ばしい仕様。
アンリちゃんが青山家に泊まりに来る第39話は全編ニヨニヨできる上、この作品にしては珍しくストレートなお色気描写が光る気合の入ったエピソードでしたが、この単行本オマケがまた素晴らしくてですね。
なんだこれえ(笑顔)
もなこちゃん、青山くんにうっかり胸を見られちゃったんですよええ。でその場に居合わせたアンリちゃんは涙目で「私のも見てくれないと平等じゃない!!」と。ちょっと何言ってるか分かんないですが超かわいい。
見てくれないと!って。そんなふうに服まくりあげちゃう女の子見たことねえ。
しかし彼女に負けず輝きを放つ女性キャラがもう1人。
決まってる!青山ママだ!主人公の母だ!
その包み込むかのようなぬくもり!さすがエロい大人なボディライン!
それでいてど天然で、少女のような笑顔を向けてくる・・・。もうヒロインでいい。
この作品基本的にボケだらけなんですが、大人キャラまで総じておとぼけなのがまた・・・!
そんな大人としての威厳を微塵も感じさせないママさんも、3巻でぐっと魅力を深めた1人とだと思います。
出番もかなり増えてママさんフィーバー吹き荒れる!!
いろーいろと好きな話はあるんですが、個人的に昔のママさんの武勇伝(?)が好き。
ああ・・・ドン引きというか・・・これでパパさん陥落たよね・・・。この時にはもうおちてたかもw
しかしなんという可愛さ・・・!若かりしあおやママんスピンオフくるで!(来ねえよ)
青山家はみんなボケボケですねえ。両親もボケてるんですが、でもそんな中で夫婦の絆の深さと、変わらぬ愛情を感じさせてくれるエピソードもありほっこりほっこり。
「りびんぐでっど!」3巻はアンリちゃんとママさんの魅力がはじけていたなと思います。
抜群の安定度でここまで来ていますし、これからも楽しませてもらいたいな。
今回ラストで新キャラが登場してますし、まだまだ新しい展開が見られそう。
それにしてもこの作品はみんな脳天気でてきとーで、楽しそうだ。
悩みもなにも吹き飛ばしてくれそうなバカらしさとかわいらしさ。
ずっとまったり世界に浸っていたくなる。
そういう居心地の良さって、作品としてとても魅力的ですね。
けどなぜか1巻まるっと一気読みすると、今回もそうでしたけど結構途中で満腹になってしまうシリーズ。なんでかな、なんとなくテンポ的に一休み入れたくなるかもしれない。
ちょいちょいっとつまむように少しずつ読むと、実に美味しいです。
チャンピオンで毎週読んでいるペースに慣れてしまったからかなあ。
ヒマなときに考えなしに手にとってなんとなく読みかえして楽しみたいです。
それじゃそんなところで〆。ずっとこのままでいてほしい漫画です。
『りびんぐでっど!』3巻 ・・・・・・・・・★★★★
安定感抜群の一話完結ゾンビコメディ。ヒロインたちの魅力が深まる第3巻。