[漫画]もう一度君を助ける!『有線少女~plugーin girl~』 1巻
有線少女~plugーin girl~ 01 (電撃コミックス) (2013/01/26) kaya8 商品詳細を見る |
生きててくれてありがとう
『有線少女~plug-in girl~』1巻の感想を。
タイトルやら表紙やらでわかるとおり、普通の身体じゃない女の子が看板背負った漫画。ストレートなボーイミーツガール。ストレートな少年漫画。気持ちがいい作品です。
ストーリーに勢いがあってグイグイ読ませるし、しっかりラブコメ的ニヤニヤを提供してくれるし、これはなかなか期待できるシリーズが始まったなと!
表紙の雰囲気がいいですねえ。内容を読むと、1巻をこういう表紙に決めたのはなかなか面白いなと思ったりしました。綺麗な背中にドキッとしますな。
ヒーローに憧れた幼い男の子は、その身を挺して女の子を守ろうとした。
少年・月彦はそのまま病院でながいリハビリ生活を送ることになります。
でもそのままじゃいけない。損傷した身体じゃ、また誰かを守ることなんてできない。彼は自分を改造し、再び学校生活を取り戻します。
そして戻ってきた学校で、かつて彼が守った少女と再開!さらにその少女を狙う謎の集団!んでもって主人公の隠された力が解放される!
とまぁ1話でできるだけ詰め込みました、という感じですごい勢い。
展開はえーなと思いつつ、でも70ページもあるのを一気に駆け抜けた感じは確かに気持ちよかった。この第一話は王道ながらいい出来だよな・・・!
あの時救えていなかったと思った女の子は、コードにつながれているけれど元気で、可愛らしくわらってくれた。
彼女を抱きしめて「生きててくれてありがとう」は名シーンだと思います。その深い感謝と愛情を見て、この主人公の凄さを理解できたような気がします。
基本的に能天気なんだけど、男の子らしい夢を抱いていて、それを努力で実現させていくアツい姿勢が見える。そしてストレートな愛情表現。気持ちがいい主人公ですよ!
まぁきっと主人公クオリティで恋愛沙汰には鈍感とかなんでしょ?ふへへ。2巻ではブラコンくさい妹ちゃんも目いっぱいストーリーに絡んでくれると歓喜!
1巻のラブコメ面はとにかくヒロインの紗魅ちゃんが担いましたね。メインヒロインらしく。この膝枕シーンとか悶えましたね・・・素敵です。(満面の笑み
ストーリーはまだまだ序章といった段階で、先の世界観の広がりを予感させる、ワクワクするキーワードが散らばっているのも気になる。
紗魅のプロフィールにて、「世界は一度滅んだ」とか何事もないようにさらっと書いてあったり、月にある王宮にいるという神々が、月彦の写真を持っていたり。
主人公の名前が「月彦」っていうのも、まぁ無意味なわけじゃないでしょう。
月にいる女の子もこっからラブコメ展開に混じってくれればいいと思います!
作者のkaya8さんはイラストレーターとして活躍されていたということで、絵の見やすさ・可愛らしさも素敵ですね。
面白くなりそうな要素が沢山ありますし、これからが楽しみじゃないですか。
1巻の段階ではドラマに魅せられましたが、きっとこれからの作品の深化が進めばバトルにも熱くさせてもらえるのでは、という期待。
1巻のバトルの構図としては主人公VSデカいロボット、というもの。
こういう小さいやつがデカいやつを倒すようなのは、見た目それだけで爽快感ありますな。ロボット描くの大変そうだけど頑張って欲しいなぁ。
描き下ろし漫画もよかったですね。紗魅ちゃんの想いの理解がより深まった。
とつらつら感想を書いてきましたが、やっぱり一言でまとめると、いい少年漫画だな!
ヒロインは一途でかわいいし、主人公はカッコいいし、ベタだけど大切な部分をきっちり押さえていい仕上がり。これから人気作に成長していくかも。
『有線少女』1巻 ・・・・・・・・・・★★★★
期待できる新シリーズ。ワクワクできる作品に成長して行ってくれそう。
[漫画]粉のように飛び出す、せつないときめきです『ラストゲーム』3巻
ラストゲーム 3 (花とゆめCOMICS) (2013/01/04) 天乃忍 商品詳細を見る |
急に あ―― 男の子なんだなーって思ったんだよね――
「ラストゲーム」3巻が発売されました。
いやぁ今回も恋する男の子萌え漫画ですなー。しかも今回からは柳くんだけではない!表紙に相馬くんもいるあたりわかってる。
柳くんと九条さんの初々しすぎ・もどかしすぎな関係にニヤニヤできるこのシリーズ。プライドの高いせいでなかなか九条さんに告白できない柳くんと、鈍感すぎる完璧少女の九条さんの物語。大学生になってまでお前らなにやってんの、なピュア恋愛が繰り広げられるのだ・・・!
前巻→この恋、もどかしすぎる!『ラストゲーム』2巻
2巻では事故でキスしちゃって柳くんはドキマギしまくり。でも九条さんはキスがあったことにも気づかずあいも変わらず空回る柳くんであったとさ。
イケメンくんがうまくいかない恋愛にジタバタする様のなんとブザマで、愛おしくて可愛らしいものかってコトをこの漫画は噛み締めさせてくれますよ・・・!!
そこから続く今回の第3巻。
2人きりの遭難!看病イベント!おめかししてパーティー!
とまぁズラリとラブコメ漫画の王道シチュエーションが揃っております。
その1つ1つが実にオイシイ展開で、王道の少女漫画らしいトキメキを与えてくれますなー。
新歓合宿にやってきた天文部の面々。
楽しそうな周囲とは違い、柳くんの表情は暗い。「もしかして俺、九条に男として見られていない・・・?」と根本的な問題がここにきて浮上してきたのです。
相馬と九条の仲がよくなっているっぽいのをみて更に焦る柳くん。(九条さんが柳くんとの関係の相談を相馬に持ちかけているだけなんだけど。)
しかし事件が発生!なんと合宿中に柳くんと九条さんだけが遭難してしまった!
でも過ごしやすい季節だし、別荘からそう離れてないはずだしで、イマイチ深刻さがないのである。遭難した2人は「しゃーない、今夜はここで寝るか」くらいのノリ。気楽すぎだろ!と思わなくもないがそこはほら、2人のラブコメを見るための舞台装置なので、あまり仰々しくシリアスだと、ね。この漫画はこれでいいのだ。
2人きりで、外で星とか見ながら夜を過ごす。そのことが大切です。
遭難してしまったからにはしかたない。とこっ恥ずかしいやりとりを繰り広げていくわけですよ。このシーンとか、もう最初読んだ時思わず天を仰いだ。(天井だけど)
「早く起きろよ、眠り姫」
ヒャアアアアアアアアアアアwwwwwwwww
柳くーーーんこれはだめだよーーーーー恥ずかしすぎるよおおおおおおおおお
寝てる女の子に「眠り姫」とか呼びかけて浸ってるけど、お前その娘が起きてたらそんなこと絶対できねえだろうが!!!!むしろ今ここで彼女に起きられたら慌てふためくだろが!!!!もう鼻息あらくツッコむしかないw 目覚めを願うキスは手にするという絶妙のチキンぶりを披露しておいて本人は余裕たっぷりな表情がまたもおおおおおもどかしい!!!(混乱)
柳くんはたしかにカッコいいんですけど、情けない一面が目立っていてすごく可愛らしいよなぁ。こういう王子様もいいじゃないですか。
この遭難イベントでカゼを引いてしまった柳くん。
生まれてこのかたカゼを引いたことがないと言う鉄の女・九条さんに看病してもらいます。看病イベントはどういう性別の組み合わせでもおいしい・・・ッ。
看病しようとはりきる九条さんも、看病してもらえて感謝すると同時に恥かしさに襲われる柳くんも、ハーっ、かわいい!
好きなシーンは、柳くんスピスピしながらの寝顔(鼻がつまってる)を見つめる九条さんですねえ。穏やかなやさしい表情で、グッとくる。
でも「ずっとこんな風にいたい」なんて、柳くんからすれば嬉しくもあり、残酷でもありなコトですねえ。九条さんは、これ以上進展することを望んではいないんだから。
彼女の中では、自分がだれかと恋仲になるって想定がされていない。
柳くんこりゃ頑張らきゃいけないな。九条さんの気持ちは揺らいでいるけれど。
しかしこの距離感で「ずっとこんな風にいたい」って、コレ殺し文句じゃなかろうか!
この話でひさびさに柳のお姉ちゃんと九条さんが再会。
お姉ちゃんはパワフルなキャラクターなので、うまい具合に話を引っ張って行ってくれそうですねえ。実際この次の話はお姉ちゃんが引き金になって、パーティの話になります。
スーツにドレスで男女どっちも煌びやか。いつもと違う衣装に身を包んで新鮮ですな。
3巻で動いた人間関係は、目立ったところで相馬くんですねえ。
相馬くんをフィーチャーしたエピソードの中で、明らかに恋が走りだしてる!
(どうでもいいけどこの九条さんの顔、妙にかわいい)
相馬くん、そこに入っていくのは不憫だぞ・・・と思わざるを得ないけれど、まぁ報われないポジションが似合いそうな男の子だよねえ・・・!
そして九条さん。柳くんを、ちょっと男の子として意識しだした様子。10年かけてやっとこの段階というのがもう・・・ね!(ニヤけながら) でもいつも飄々としている彼女が、明らかに柳くんを意識して挙動がおかしくなっているのは、すっげェかわいいですハイ。
この「男の子としてちょっと意識しだした」というのが、どれだけ大切な一歩か!
来てますよー来てますよー!ニヤニヤするなぁ!
あ、柳くんは相変わらずかわいそうでかわいい。なんたって九条さんのこんな表情を見逃してしまっているしな。まったくもう。
メイン2人が話しているだけで、自分はちょっとニヤけてしまいますよ!・・・。
サブキャラクターもいい味が出始めました。ラブコメとして王道の楽しさをくれるシリーズですね。キャラクターみんなに嫌気がなくてめちゃくちゃ可愛い。天文部の先輩カップルも癒し。4巻は夏ごろとのこと。楽しみに待ちます。
ちなみにコミックスの最後は番外編で、2人が高校時代のお話。懐かしいです。
三つ編みの九条さんはとてもかわいいですなー。似合っていてすごく好きなのです。もちろん現在のストレートも好きですが。
1巻の構成上、早足に過ぎ去ってしまった小中高時代。でもせっかく連載化したんですし、あれっきりというのももったいない気がしていました。
こうやってたまーに番外編として小中高時代を描いてくれると嬉しいなぁ。
『ラストゲーム』3巻 ・・・・・・・・・★★★★
この2人なりの王道イベントをたっぷり楽しめる可愛い第3巻!
この作品はスピッツの「スピカ」か「三日月ロックその3」のイメージ。
[漫画]行くあてもなく僕らは放課後をさまよう。『ローファイ・アフタースクール』
ローファイ・アフタースクール―五十嵐藍短編集 (BLADE COMICS) (2012/05/10) 五十嵐 藍 商品詳細を見る |
何もない人は放課後何をしてればいいんだろうね
「ワールドゲイズ クリップス」の感想を書いたのにこちらをスルーしていたことに気づき、いまさらながらに感想。
今年の春に発売された「ローファイ・アフタースクール」という本です。
ブレイドコミックスですが、同人誌やら他社での読み切りを集めた一冊。とても短い作品もあったり、結構実験的なことやっていたり。
表紙のちょっとダウナーな雰囲気が好きそうだったら、中身も問題なく楽しめそう。女の子キャラの飄々とした様子も楽しく、かわいいです。
短篇集なので気に入った作品について、さくっと感想書いていきます。
●神様ごっこ
高いところに登って町を見下ろして、なんでも知ったふりして神様気分。
ボーイミーツガールのときめきも味わえる佳作です。
舞台は90年代末らしく、ノストラダムスのてきとー大予言、「世界はもうすぐ終わる」に心動かされる男の子と女の子が登場。
でも世界の終焉は絶望ではなく、むしろ楽しみなものとして描かれる。ヒロインは「何が起こるんだろう」とか、遠い目をしながらいうわけです。終わりがもうすぐだからこそ、今楽しまなきゃもったいないよね、なんておかしな前向きさも発揮したり。
しかし主人公は、ただ楽になりたいの一心で滅亡を望む。
静かな世界観に漂うのは、投げやりで不安定な思春期のマイナスなエネルギー。
この作品のキャラクターは無力感に支配されてて、なんだかぐったりしてる。
なんだか憂いが感じられるその雰囲気が結構好き。
「何もない人は放課後何をしてればいいんだろうね」 印象的なセリフの1つ。
ストーリーのラストを見ても、主人公もヒロインも、世界も、きっとなに1つ変わっていない。出口の見えない物語は、最初読んだとき、なんだこれと思ったのも事実です。
でもこのオチだからこそ、実はけっこうこの作品が好き。
気まぐれに生きて、気まぐれに恋をして。
全部燃やして気持ちの整理をつけても、けっきょく彼女を見つけたら表情を和らげてしまう主人公ですよ。なんだよ、ずいぶん懐いちゃったじゃないか。
キャラクターの心も物語もあやふやだけど、不思議と暖かな感触を心に残してくれる作品でした。
●ekstasis
5ページの短編。しっかしこれがすごいインパクト!
女の子のながい黒髪に舌を這わす少年。お前は何をしているんだ。
短編だけに特別なストーリーはありませんが、短いページに込められた変態的な興奮や熱気や・・・とにかく異様にドキドキさせられてしまう短編でした。
最後にヒロインが気づいてるってオチだったけど、逆に気づいていなかったらそれはそれでドキドキするじゃないの・・・とか考えた。「なんか私の髪が匂う」・・・とか。
●アフタースクールショウ
単行本ラストを飾った、これまたとてもみじかな作品。4ページだけ。
でもこの4ページにすごく心安らぐんだ…。
「山田おまえさぁ 俺のこと好きなんでしょ」「まーねー」
いきなり出だしの会話がこれ。なんでこんな色気なく話してんだw
しかし最後まで、なんて居心地のいい男女だろうとしみじみ。女の子の片思いだけど、男の子が彼女を近づけも遠ざけもしない絶妙のポジショニング。
それって結構ヒドいことだよなぁと思いつつ、2人ともやたら楽しそうなので微笑ましい。淡々と会話のキャッチボールしつつたまに暴走するのもテンポよくて気持ちいい。
暗い作品おおめの作品集のラストにあるからこそ、この軽さがいきるな。
どいつもこいつも覇気がない単行本だよ!!(雑なまとめ
じめじめのドロドロ。だらだらしては悩んで、自分がイヤになって、世界を嫌って、全部消してしまいたくなる。いやぁー暗いなぁ。でもこの塞ぎ込んだダークな感情は、確かに身に覚えがある気がする。たしかに思春期の負のエネルギーが渦を巻いている作品。
けれど暗いだけではなくて、結構どれもこれも、他者と接することできちんと感情を動かすもの。後ろ向きでも、暗いばかりでも、冷たい作品ではないんですね。
孤独な作品もありますけど、不思議と空気は澄んできれいだったりして。
キャラクターたちは歪んでいながらも、実はピュアだったりするのが理由でもあるかな。
ストーリーを楽しむタイプの漫画ではないと思います。でもこういう雰囲気の漫画、きっと好きな人は多いんじゃないかなとも思います。自分はそう。
「なんで自分には何もないんだろう…?」なんて不安に怯えるキャラが結構いる。
10代の閉塞感は存在感をはなっていますが、それだけじゃない魅力がある作品たち。暗い顔したってやっぱり彼らは青春してて、伸びやかに生きてる様はそれはそれで心に気持ちのいいものなのです。当の本人は必死に戦っていて、そんなことわからないだろうけれど。
「ワールドゲイズ クリップス」と似た雰囲気なので、合わせて読みたい一冊。
『ローファイ・アフタースクール』 ・・・・・・・・・★★★☆
こちらもちょっとダークで、でも不思議にキラキラしてたりする思春期の漫画。
[漫画]世界も私たちも曖昧なまま。『ワールドゲイズ クリップス』1巻
ワールドゲイズ クリップス (1) (カドカワコミックス・エース) (2012/11/01) 五十嵐 藍 商品詳細を見る |
じゃね 元気でね
五十嵐藍さんの新作作品集「ワールドゲイズ クリップス」1巻の感想。
1巻となっていますが長編シリーズではなく、この1巻にも3つの作品が収録されています。
同じヤングエースで連載された「鬼灯さん家のアネキ」は、基本的には姉弟のエロ&ラブコメでしたが、ときどた乾いたような、うら寂しい雰囲気になるシーンがあったように思います。
というか後半は結構そういうシーンが目立っていたような気もしますね。
本作「ワールドゲイズ クリップス」はあの感覚をさらに鋭くしたような味わい。
どの作品もうまく未来が見えない少年と少女の、ぼんやりとした想いを切り取っています。
前に出た作品集「ローファイ・アフタースクール」と似た雰囲気。
五十嵐さんは「アネキ」で知ったのですが、この作家さんの真骨頂はこの作風っぽいなぁ。
●放課後ロスト
最初の作品。2人の女の子が出会い、なんとなく気があって、なんとなく家出をする。
常にその「なんとなく」のぼや~っとした曖昧な気だるさが蔓延している世界。
なんとなく居心地が悪い瞬間。なんとなく居心地が良い瞬間。
ふらふら舞うように少女は出会って近づいてまた離れていったりする。
自然に、いつのまにか仲よくなっていっている感じとか、いつも表情を変えない主人公が、家出したとき(第3話のあたり)はちょっと表情豊かになってたりだとか、
些細なところまでキャラクターが動いている様子がいいですな。
よく見ると第3話だけ、主人公の娘の目がおおきく開かれている気がするw
とくに大きな理由もなく、気が向いたから家出して、気が向いたらまた帰る。
そんなフリーダムでてきとーな家出だけど、確かな意味はあったように見える。
やっぱり「なんとなく」だけど・・・少しだけ、寂しくなくなったよ、なんて。
個人的にはラストシーンが印象的です。アメをほおばるところ。
最後に口にふくんだアメは、その身体の一部になる。溶け出した甘味は記憶に焼き付く。
そうしてあの旅が、ちょっとだけ大切なものだったように思える。
掴みどころのないけれど、心のひだをくすぐられる感覚。
時間を持て余したようなのびのびとした時間の中に、うっすらとした絶望と希望。
不思議と青春の匂いも色濃い。
●ウォーキング ウィズ ア フレンド
これもなんだかすーっと、飄々とした雰囲気の漫画。
この単行本の中では短いもので、かなりあっさりとした内容。
それでも、卒業を控えた学生の皮肉めいた寂しさ。「何かすれば変な空虚さが埋まるかなって、悪あがき」とか言ってしまう達観したドライさ。その虚無感と、でも最終的にはなんだか心が満たされた気になるラストへの流れは、なかなかに鮮やか。気持ちよく心が空をすべっていく感じ。
●緑雨
これはちょっぴりの狂気が顔をのぞかせる作品。
これまでは心おだやかな作品が並んでいたぶん、ダークな感触にドキドキします。
というかずーっと雨が降っていてじめっとして湿度高め。そして冷たい闇が広がる。
「濡れた黒」のイメージが強烈でした。
例えばヒロインのつやつやの黒髪。夜に降るさめざめとした雨も、雰囲気を盛り上げる。
なによりこの雰囲気が素敵すぎる。心をかきむしられるような、じわじわ責め立てられるような、でも落ち着くような。
行くあてもない思春期の少年少女のモヤモヤも閉じこまれれていて、すごくいい雰囲気。
それでも最後は清々しい快晴。
思い出を飼い続けた主人公。妄想から開放されたことは痛みを伴うけれど、でも笑顔で迎え入れるべきことなんだろう。
途中ヒヤヒヤしたけれど、告白してきた女の子が幸せそうでよかっですわ。
主人公の闇にドキドキするとともに、雰囲気も魅力たっぷり。ほんのりダークな作品。
●blue imaginary birds
さくっと終わる短編。元カレとよりをもどすために青い鳥を追いかける女の子の話。
一つ前の作品が結構重かったためか、最後は作品集で1番お気楽ムード。
青い鳥を追いかける本人は切実なんだけど、結構追いかけることを楽しんでるし。
「なんだ、これは本物の青い鳥じゃなかった」のセリフがいいなぁ。幸せを手にしても救われなかった時、青い鳥を「ニセモノ」にしてしまう。世界のどこかには幸せの青い鳥がいるって信じ続ける。
というわけでそんな作品集。
いろんなタイプの作品が納められていますが、一言で言えばどれも地味です。
大事件が起こるわけではなく、ただ静かに心の動きを追っていく。
心の動きといってもこれまたドラマティックなものは少なくて、言葉にならない漠然とした不安や虚無感やらがちょっと前向きなものに変わるというだけ。
でもその微妙な心境の変化を、大切に大切にしてくれるからこそ、染みる漫画。
この感覚は言葉にしづらいけど・・・間違いなく、好きなタイプの漫画なんだ。
きっと多くの人が味わったことがあるであろう、この乾き。
思春期のころの、あの甘くも毒々しいもどかしさが詰まった作品集でした。
『ワールドゲイズ クリップス』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
たゆたうあいまいな気持ち。爽やかな読み心地の中に、結構な毒が混じっていたり。
[漫画]そのドレスちょっと待った。『八潮と三雲』5巻
八潮と三雲 5 (花とゆめCOMICS) (2012/09/05) 草川為 商品詳細を見る |
私の心臓が 前よりはねあがるのは なぜでしょうか?
「八潮と三雲」5巻が出ました。いい調子で連載続いてます。
今回の見所は結婚式。表紙も八潮&しー君がめかしこんでます。
誰と誰の結婚式・・・?ってのはお楽しみで。今回も甘甘で素晴らしかったです!
しかしこの表紙なぁ・・・しー君とかこの巻ほぼいいとこなのに、なにスカしてタキシード着てるんだろうかとwいやいいけど!
八潮のバラの持ち方はいいですね。ぶっきらぼうな持ち方だけど大きな花束。少し彼らしい。
それでは5巻の感想を。
前巻→キスの3秒ルール、見せてあげます。『八潮と三雲』4巻
さて4巻ではキスに3秒ルールを適用するというわけのわからない手口で八潮さんに猛アタックした三雲ですが・・・あまりのかわいさに俺もトロトロになってたわけで。頭が。
まぁそもそも3秒ルールとか持ち出して関係がこわれるのを避けたのは八潮だったか。
と思ったら5巻では「あれは事故だったの!3秒以内だったし!」と言い訳始めました。
いや最後は三雲ちゃんからノリノリでキスしにいってたじゃん!
彼女にとってはあれは自分のわがままで起こした事故であり、勝手な思い出作りの一環。
キスできてうれしいと舞い上がる一方で、やはりちょっと苦い想いも含んだ記憶でもあるのか。
謙虚なんだか強引なんだか。三雲ちゃんは面白いな。
でも彼女の行動は彼女なりに一貫性があって、けっしてどう動くか想像がつかないキャラクターではない。誠実で、かわいくて、カッコいい女の子なのです。
5巻の番外編の夏祭りエピソードの一幕。
射撃の腕前が実はすごかった三雲。「じゃあなんでさっき射的ゲームで俺にものをねだったんだ、自分でとれただろう」という八潮に、「とってもらうってのがいいんです」と三雲がいいます。
すごいなぁ。八雲ちゃんは女の子を楽しんでるよな。八潮へどうじゃれつけばいいのか分かっているし。好きな人に祭りでプレゼントをもらうって、ある意味醍醐味じゃないですかと。わかってるなあ。
でもいたずらに女の子を振りまくだけじゃなく、きちんと「出来る女の子」です。
ちゃんと八雲を支えるパートナーなっている。ラブコメとしてのかわいらしさだけじゃなく、この2人の関係はとても好きです。
猫らしいちょっとした気まぐれが、彼女をよりかわいくさせるアクセントになっているかな。
猫っぽいと言えば八潮もだ。いや実際に猫なんだけれど。
懐いているようないないような、真面目なような気まぐれなような。
八潮さんは今回、だいぶ迷走します。どこに行けばいいのか迷っている。自分の気持ちがわからなくなる。
今回の目玉である結婚式のエピソードでは八潮がやらかし、と思ったら三雲もやらかして、非常にラブコメ的に動きがあったのに表面上なんの発展もしていないという残念な状況です。
この話では八潮が明確な独占欲(と言えるかな)を見せます。
「こんなドレスは破れてもかまわねえが、破っていいのは俺だけだ」とか!何いってんのお前!
結婚式というシチュエーションが多かれ少なかれ八潮の心を乱したのか
このエピソード中の彼はずっとテンションがおかしかったw
そのおかげであの誤爆をやらかすわけで・・・「あの時は冷静じゃなかった、どうかしてた」と後々反省しています。
やはりその場にやや流された形だったのは間違いない。
しかし三雲が遠くに行ってしまわないように溢れ出た言葉です。
これをきっかけに、八潮本人がつよく三雲を意識しだしていることも確実だよなあ。
これからの2人が楽しみですよ!
擬似ウェディングな2人はなんだか微笑ましかったなー。いつか本当になる。なれ。
相変わらずむすっと不機嫌そうな表情を崩さない八潮さんだけど、なんとなく彼が寂しがってるときの表情がわかってきた気がします!
あと今回は印象的なモノローグが多かったと思います。
「私の心臓が 前よりはねあがるのは なぜでしょうか?」
「八潮さんのために使ってもいい時間は まだちゃんとある」
あたりはたまりませんし、15話ラストの八潮のモノローグもニヤニヤとまらないw
2人の気持ちのたかぶりがみずみずしく感じ取れます。
やはりいいモノローグを紡ぐ漫画は好きだな。心に残る。
それにしても三雲ちゃんは相変わらず、どころかかわいさ上昇中でどうしようか。
冗談めかして「私のこと好きなんじゃないですか?」と期待まじりにきいてみたり
でもきっとこの想いは報われないんだろうなぁ、なんて漠然とした不安も抱えている。
報われないどころか、自分からせっかくのチャンスをムダにしたんですよ三雲さん!あの結婚式の最後にあった最高の一言を情緒なくふっとばしたのあなたですよ!
でも大満足の幸福は、もしかしたらもうすぐそこかもしれない。
17話でいったん距離があいてしまったけれど、心の距離はその限りじゃないだろう。
あー。やっぱりこの2人の事好きだな。
子供っぽいような大人っぽいような・・・そんな恋のやり取りはドキドキしますね。
『八潮と三雲』5巻 ・・・・・・・・・★★★☆
八潮さんのデレきたか・・・!?相変わらず面白いシリーズ。6巻は来年夏。待ち遠しい。