[漫画]突然死んじゃったらどうすればいい? 『まじめな時間』1巻
![]() | まじめな時間(1) (アフタヌーンKC) (2012/05/23) 清家 雪子 商品詳細を見る |
生まれて初めて あんたの頭なんて撫でたくなったのに
清家雪子先生の初オリジナル連載「まじめな時間」の1巻。
アフタヌーンで連載された「秒速5センチメートル」の作画担当の方ですね。あれは素晴らしいコミカライズでした。素晴らしすぎてなんて書こうか悩んでるうちに更新のタイミングのがしてますけどね。うわぁ。
さて、秒速のコミカライズの中で豊かな人間描写を見せつけてくれた作家さんですが、恋愛をメインに扱ったそれとは違った方向性の新作となっています。
よりコミカルに。けれど秒速とは違った方向に、超シリアス。
しかしこれがまた面白いのです。「まじめな時間」1巻感想を。
主人公の植村一紗(うえむらかずさ)は今時の普通の女子高生。
性別を問わずバカみたいなことで盛り上がれる友達や、好きな人に囲まれて、なんでもないように幸せな日々を過ごしていました。ところが死んでしまう。ある日突然。あっさりぽっくり。
交通事故による即死。あっさりしすぎて死んだことにすら最初気づかなかったレベル。
そして死者の魂として残された彼女は、現実のだれにも気づかれないまま「自分が死んだあとの世界」を見つめていきます。あらすじとしてはこんな感じ。
●突然『死』に直面した若者のリアル
本作を読んで1番に感じたことはこれ。様々な年齢のキャラ(幽霊)が登場しますが、基本は一紗とそのクラスメイトたちの動きを追うストーリーなので、メインキャラに若者は多いです。
死。育つばかりの少年少女にとっては縁遠く現実味のないものかも知れない。
けれど突然そんな『死』に直面してしまう彼らが、何を感じ、どう動いていくのか。
突然死んでしまった一紗。突然友人を失ってしまったクラスメイト。
そんな2方向から、若者が感じる死が描かれています。
まず面白いのがクラスメイトたちの立場。
多くのクラスメイトが一紗の通夜に参列して大号泣。その様子を見ながら「誰か気づいてよー」と声をかけてみる死んだ一紗。
すごく辛いシーンのはずなのですが、まだ状況がうまく把握できていないのか、死んだ一紗自身が雰囲気をシリアスすぎるものに染めてはいないというか。まだ生きてるようなつもりで友達に話しかけているものだから。
滑稽で笑えるような、けれどもう2度も楽しく会話なんてできない、致命的な距離感が示される場面で、すごく切ないのです。
けれど一紗を見送ったあとクラスメイトたちが何をするかと言ったら、カラオケである。
それを見て「私が死んだことがイベントになってるじゃん!」と怒ったりガッカリしてたりしている一紗も、なんだか面白くって切ない。
まぁ・・・死後の現実を見るって、すごく勇気がいることだと思うけれど。
彼らはふざけているわけではない。心の底から一紗を思って行動している。けれどハタからみればそれはとてもおかしな行動で、つまりどう悲しめばいいのかもうまく掴めていない。
そこは単行本の巻末描きおろし番外編でも描かれていますね。こちらも好きなエピソード。
友人の死をどう受け止めようか。戸惑ってばかりの高校生たちの姿がとても印象的。
死んだ一紗としては、どれだけ悲しんでもらえるかで、自分がどれだけ好かれていたかを知ろうという思いもあったんだろうなぁ。それって結構自然なものかも知れないけれど。

けれど漫画としては、悲しみにくれるクラスメイトを向けて感動する幽霊の一紗、という構図は、どういうふうに受け止めればいいのか悩む描写である。
軽いノリと強烈にヘヴィーな要素が共存してしまっているイビツさやアンバランスさ。
それがやっぱり面白い部分でもあるんだけれど。
一紗視線で進む物語だから、彼女の明るさに流されがちになってしまうけれど、ふと冷静に状況を見渡してみれば、こんなに辛いシチュエーションで笑えるわけない・・・。
●幽霊たちの世界。
現実に干渉できなくなったかわりに一紗が新しく仲間入りした、幽霊たちの世界。
生きてる人には基本見えていないだけで、幽霊は本当にどこにでもいるんだそうだ。
ただ死んでから日が経っていなかったりで未練がある幽霊は、その状態で人間界を見ている。
そしていつしか現世へ見切りをつけて、満足した幽霊から成仏していくという事らしい。
それで面白いのは、死んでからどういう幽霊になっているのかということ。
強い憎しみを抱いたまま死んだ人は、現実に影響を及ぼすほどの負のエネルギーをまきちらす。一方で幽霊になったことをいいコトに女の子の着替えをのぞきまくる幽霊もいる。楽しそうでなによりです。まぁようするに死んだ後にも、いや後だからこそ自由が効いて、やりたいようにやれている。もちろん幽霊だから限界はたくさんあるだろうけれど、幽霊も十人十色。
けれどわりと楽しそうに描かれるから錯覚するけど、みんな死んでるんだよなぁ。
あまり描かれない部分だけれど、幽霊1人1人には死を味わった人生があった。
どんなドラマがあったのか見えないキャラも大勢いますが、望むべくして死んだ人なんてほとんどいなくて、どの幽霊もだいたい後悔を抱えている。
何より痛ましいのは、なんでもないようにいる子供たちの幽霊。これが痛ましい。
火事でもろとも死んだ姉妹(母親の放火っぽいのがつらい)、髪のない、小学校に通うことを夢見た男の子(きっと重い病気だったことをうかがわせる)・・・明るくそこに存在しているキャラクターたちの背景も、よく考えてみれば、なんというか、言葉がうまく紡げない、虚しさが。
死者はいずれ忘れられていくもので、自分が生きた証もどんどん失われる。
そして幽霊もはやくの成仏を目指す。死者なのだからそれは当然の流れか。
現世を眺めていても「死者の自分にはもうどうすることもできないんだ」という諦めがあって。
でもそんな流れを、今の一紗が受け入れられるとも思えない・・・。
だからきっとあがきまくるんだろうな彼女は。
きっと辛すぎて見ていられなくなるんだ。幽霊になった自分を認識してくれる人もおらず、ただ見ているだけの日々は、きっと本当につらい。
それで何にも感じなくなっていくことは、幽霊として自然なんだろうけれど。
でもやはり、諦めて諦めて寂しさを抱きながら消えていっては欲しくない。
一紗が笑顔で成仏していくような、展開が読んでみたいですねえ。
●一紗の家族
読んでいて1番辛かったシーンの話。それは一紗の家族の話。
彼らは肉親を失ったわけで、その喪失感たるや想像を絶するもの。
中でもお母さんがピクリとも表情を動かさず、呆然としているシーンなんか、つらすぎ。

このシーンは幽霊の一紗に影がないことで生者と死者の違いが強調されていたり、こんなに近くにいるのにお母さんは一紗に気づくことができないもどかしすぎる距離感があったり、すごく好きな場面。
そして弟を想ってやる一紗もたまりません。
「生まれて初めて あんたの頭なんか撫でたくなったのに」・・・もう触れられない。
このセリフに身悶えですよ・・・生前なんでやらなかったのか。なんで死んでから・・・。
やっぱり根本的にどうしようもない切なさを孕んだ作品ですよ・・・チクチクと心が痛む。

死んでからじゃ遅すぎるのに。でもだって高校生だったんだよ。人生まだまだだったんだよ。
●まとめ
つらーっと書いてきましたがまとめということで。今度の展開がとても気になる作品です。
突然死んでしまったことに、まだ全然整理がついていない一紗。
物語が進むにつれて幽霊がどういう存在なのかを理解していき、一紗は変化をしていきます。変わっていきますけど、まぁ基本的に明るい娘。
一紗は現実への未練たらたらですよ。両思いだと思っていたら・・・と、死んでから知ってしまうことばかりで、なんとか現実に干渉してやろうと頑張るわけですが、さてどうなるやらと。
霊感の強い少女・岡部蘭子を軸にさらに展開をしていく流れ。どこまで一紗はあがけるか。
死を扱う作品ですが適度に挿入されるコミカルな描写で、雰囲気は和らぎます。読んでいて疲れるようなものではない。最初の主人公と周囲との温度差は、一見すればややシュールで面白い。
けどそこに宿る傷の深さは、笑えるようなものなはずがない。切なく、胸に突き刺さる。
オビにもありましたが、確かに「奇妙な心地よさ」があります。死者が登場しまくる作品とは思えないほどに空気はなんだか明るい。けれどその奥にはかなりネガティブな感情が渦巻いている。
でもそういうグチャッとした感覚を、わりと軽やかに、けれど軽くなりすぎず仕上げてあるのがこの作品の凄さ、かなぁ。
こういう設定なら身体は生きたまま生き霊になって最終的にはもとにもどるってパターンがありかと思いますが、この作品は冒頭1ページ目から死なせて火葬もすませて、正真正銘幽霊なのである。「死んでからわかったってどうにもなんないじゃんね」というセリフが重いこと重いこと。蘇生なんてムリムリ。
じゃあどうすればいいんだろう?どうすればこのモヤモヤを晴らせるんだろう?
一紗はどんな決着を、自分につけるのか。納得することはできるのか。
で、タイトル。「まじめ」とはどういう意味がこめられた言葉なのだろうか。
生と死について思い悩む・・・だけじゃない含みがあるような気がしてて、何らかの答えが明かされる瞬間が今から楽しみですね。ということで第1巻でした。長い連載にはならないと予想。
上手くまとまれば、すごくいい作品になってくれそうです。今の段階でもかなり面白いですけどね、どういう結末を迎えるのかがとても大切な作品です。
1巻表紙の一紗は暗い顔。どうか最後は、笑顔で。難しいだろうけれど。
『まじめな時間』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
『死』を扱った作品。深いテーマ性と、重くなりすぎない絶妙の雰囲気作りが魅力。
[漫画]乳に幸あれ。『揉み払い師』3巻
![]() | 揉み払い師 3 (少年サンデーコミックス) (2012/03/16) 空詠 大智 商品詳細を見る |
俺はプロだ。揉むべき乳は揉む!
「揉み払い師」3巻が出ています。
サンデー流「To LOVEる」かなと思う積極的なエロ描写をシリアスギャグに放り込んだ作品。3巻はストーリーが盛り上がりましたが、同時に乳揉みもヒートアップしまくりでしたな。
しかしオビにも単行本説明にも本編にも書かれていませんが、ここで一旦の区切り・・・みたい。
まぁ打ち切りというわけでもなく、「週刊の企画準備に入る」ために揉み払い師の連載がストップしているようです。→HP まさか週刊に移転するのか・・・この作品が・・・?
まぁ感想でも、って感想と言ってもだいたいやってることは1巻から変わらないので、もう書きたいこと書きつくしちゃった感じですね!ということで今回さらっと行く感じ。
おっぱい揉んで問題解決!期待の新シリーズ 『揉み払い師』1巻
揉むだけじゃない!おっぱい舐めて除霊だ! 『揉み払い師』2巻
第9乳から第12乳の4話を収録。前半はいつもどおりの1話完結のおっぱい揉んで人助け編、後半は小波の失われた記憶に関係するエピソードに入っていき、物語はクライマックスに向かいます。
一応の一区切りを迎える一冊ではありますが、内容はいつもどおりなので一安心。
読みながら「ひでぇ漫画だなー」とツッコみながら楽しむ作品で、その魅力を失わぬままむしろアクセス踏んでラストにまで突っ込んでいきます。
様々なタイプの女の子、様々なタイプのおっぱいと向き合い活動してきた主人公・小陰。
第9乳はこれまで意外となかった2人同時除霊で魅せる一話。お気に入りです。
2人ともサイズはやや控えめ。2人一緒に高まっていく様子にごちそうさまですと。

空詠先生の描きたい乳揉みシーンを実現させるための物語、とも言えるであろうパッション溢れる本作ですが、今回もやたらと力が入ってて笑うw
「2人の感覚をあわせなければ払えない」とかなんとか理由を作って姉妹をふたりとも脱がしてしまうあたり、実にこの作品らしいアグレッシブな押しを感じますね!
今回も色々と笑わせてもらいましたが、この作品のポイントである「シリアスな笑い(バクマン。風に言うなら)」が一番輝いていたのがこのシーンかもしれない。

「お前は逃げろ。いいから行け!」(胸を揉みながら)
こんな謎すぎるシチュエーションが当然のようにシリアスに繰り出されるのがこの作品。
最終話なんて、20ページにもわたって実の妹の胸をいじくり倒すという壮絶さ。
少年漫画としてはどう考えてもやりすぎな感じなんですが、まぁToLOVEるとかもタガが外れすぎてますよね。でもこんなのが少年誌のお色気漫画スタンダードになられても困るというかw
でもこういういかにもネット層に面白がられそうな作品が、いまいち話題になっていなかったというのもなかなか寂しいかも。ネットで受ければいいというものでもないけれど。
ともかく、この作品らしい最高にバカっぽいラストを楽しませてもらい、満足。
そんな「揉み払い師」3巻。一応、一区切り。
一見ちょっとシリアスな状況において、「おっぱいを揉んで除霊する」とアホとしか思えない要素を入れることで自分からチャカしてみせる作風が好きでしたねえ。
セリフ回しも秀逸で、いちいちニヤッとさせられますよ。
今回で好きなのは「俺はプロだ。揉むべき乳は揉む!」。なんだこの潔さ。
頭からっぽで楽しめる作品でした。深みはそんなにありませんが、それでいい。
それで、これからどうなるかですねえ。
3巻のオマケページには、その他の払い師が何人か掲載されています。
連載に使えそうなアイデアをこうして放出するということは、週刊用に動いている企画というのは「揉み払い師」ではないのかもしれない・・・?
ただ、最後に出ている「もう1人の揉み払い師」が今度の主人公になる可能性もありそう。
今回の3巻で小影たちの旅は一旦の収束を迎えますし、主人公交代が有りそうな線か。
なんだかんだで気に入ってしまった作品なので、どう展開していくか楽しみです!
『揉み払い師』3巻 ・・・・・・・・・★★★☆
第一章完結、という感じ。こんなに壮大な乳揉みシーンもそうそうお目にかかれない。
[漫画]この色香に惑わされたい。『妄想少年観測少女』3巻
![]() | 妄想少年観測少女 3 (電撃コミックス) (2012/02/27) 大月 悠祐子 商品詳細を見る |
私は 汚されて 汚されて あの人の妻となる。
一月ほど経ってしまっていますが、「妄想少年観測少女」3巻が発売しています。
隔月連載なのに結構なハイペースでコミックスが発売していますねえ。
まぁ雑誌1号あたりの掲載量も多いですし、ファンとしちゃありがたい。
オムニバス形式に進行する、思春期男女の欲望うず巻く本シリーズ。3巻もグイグイ心掴まれるエピソードが詰まっています。エロいというか、色っぽいと言いたい作品ですな。色気がある。
フェチ心あふれる、少年少女の恋愛模様 『妄想少年観測少女』
欲望にまみれて生きよう少年少女 『妄想少年観測少女』2巻
男女それぞれの視点からストーリーを置い、2話ずつでメインキャラを交代していくシステムの作品。今回は沙夜と満というペア。●11話「華宮沙夜」/12話「加藤満」
病弱な令嬢・沙夜と粗暴な少年・満は子供のころから許嫁と定められた2人。
二十歳になれば夫婦となる。しかしそれまでは、指一本触れることも許されぬ関係。
子供からだんだんと2人の成長を追うような描き方をしており、満は男らしく、沙夜は女らしく、それぞれが変わっていくのが印象的なお話でした。
少年時代の3年ごとに特定の人物と決まって会っていたら、たしかにその成長に驚きそう。まさに成長期にある男女。成長するにつれ芽生えるエロチックな欲求を含んで、独特の静寂と緊張感が漂う雰囲気になっています。
成長していく少女の姿。3年ごとに、生々しく、大人になっていく。
いつしかその顔は赤らんで、なにか言いたげにこちらを見上げてきたりする。
満サイドのお話もブルッと来ますが、個人的に震えるのは沙夜パートなんですよ!
病弱な彼女に生きる意味を与えたのは満。
どんなに苦しくても、もう死に怯えることはない。そうしてくれたのは貴方だから。
と、こんな胸に迫るお話を読んでしまうと沙夜の幸せを強烈に願ってしまいますな。
せめて心は自由にしてあげたいと、自分以外の愛してくれと願う沙夜ちゃんもなぁ。
その冷たい微笑の裏に、思慮深さというか遠慮というか負い目があって、なんだかすごく幸せになってもらいたい感が胸で暴れる。「自分だけを、」とは言わない慎ましさがしみますねえ。我慢してしまってもう。女の子は欲張りでいいんだけど。
そして見せつけられる、少女のむき出しの欲望。
満を求めてしまう彼女のモノローグにはドキドキ必死・・・!
しかし沙夜の身体の弱さは周囲もわかっているだろうにそれでも儀式を決行してしまうあたり、規則や掟に縛られた堅苦しい社会なのだなと。そういう日本の古来からの湿っぽさや雰囲気の良さも、このエピソードの魅力でもあるんですが。
しかし、ラストシーンも素晴らしいですねえ。

ドキリとするシーンですが、やはり一緒に『ならない』と強調されてるのが深い。
家のしきたりで結婚をすることになった彼女。意志も強いわけではなく、かなり流されがちな性格をしていることが疑えますが、そんな彼女が見せた強い意志、「一緒にならない」。
しきたりで一緒になった2人だからこそ、なりゆきじゃない「意志」が光る。
一方で満も「じゃあもう2度と他の女に『しろ』とは言うな」と、恨みがましくも情けない言葉を吐く。彼らしくもない。けれど彼の心の真実に近づく貴重な泣き言。
やってはいけないこと、やってほしいこと。2つの板挟みにされ揺れる2人の姿はやはり扇情的というか、思春期の悶々とした甘みと苦味があって実にグッド。
しかし沙夜自身あんな妄想をしておいて、男が実際に触れてきたらこんなこと言って抑制かけるんだから、とんでもない女の子ですよまったく!
どうしようもなくお互いを欲しがっている2人。けれど時は、まだそれを許さない。
それでも触れたがるのはきっと仕方のないことで、避けようもないことで。
前回の2人と関連ある人物が登場するエピソード。華宮玲は沙夜の妹。●13話「小泉翔平」/14話「華宮玲」
大事なお姉さんを奪う満が、憎くて憎くて仕方ない様子の玲。
そんな彼女に興味津々なクラスメイト・翔平。不思議な関係が出来上がる。
気になる女の子のために奔走し、時には危なげな行動にも出る翔平。明るいように見えて歪んだ性癖(睨まれて超興奮してる)を持っていたり。妄想少年、ってタイトルが素直に当てはまってしまう男の子だったかもしれない。
しかしまぁ、この作品は若者たちの性欲をストレートに描くからドキンとしますな。

そして、何かしらに追い詰められた人間の表情が、本当に上手い。
ギリギリの緊張が走るシチュエーションだったり、高ぶりあふれた欲望を露わにする瞬間だったり。何度も何度もゾクゾクさせられてしまう作品です。
このエピソード、最初はずっと主人公に取り合わなかったヒロインが、最後には翔平にうまいこと遊ばれてしまうという転落が面白い。
きっと好きだったんだろう満からは自分を見てもらえず、そこが殺意に変換されていたというのも大きいであろうなぁと思います。しかし自分が誰か(翔平)から想われているとわかった時の表情が!今までのヒドい目付きから打って変わってとても女の子らしい赤面をみせてくれましたよわぁい!
番外編のようなエピソード。これまでのペアが再登場します。●15話「恋愛観測」
これは電撃大王に出張掲載したときのものなんですね。しかし、これは上手いなぁ。
連載を読んだことがない人には興味を持たせるだろうし、連載を読んでいる人には各カップルの「その後」を読むことができる。まぁ単行本で読んでる限りは後者になるはずですがw
ストーリーは新キャラ・大地花をメインに進行。
人間観察が趣味である彼女は、人を見ながらその裏側を勘ぐってみたりする。
けど普段じゃ見えないところに、秘密は隠すものです。
言ってしまえば所詮は部外者。第三者。だから観測していても、大地花は本当のところは見えないのです。彼女が何気なく通りすぎたカップルたちが潜ませたもの。ああ、ドキドキする・・・!
この作品に登場するペアたちって、野暮かもしれませんけど、すごく「その先」を見てみたくなるんですよね。ということで各カップルのその後がちょっとだけ覗けたこの話は大好き。

特にお気に入りだった柏木さんと相原くんのボディペインティング・カップルは、前より格段に進化したエロスをみせてくれていて、自分のテンションがひどいことにw
完全に「手」に甘えている柏木さんヤバい。本能に直撃するかわいさ。
という感じの「妄想少年観測少女」3巻!
思春期の少年少女!秘密とか性欲でなんだか仄暗い雰囲気!そして色っぽい!・・・と自分のツボを的確かつ強烈に突いてくる作品ですね・・・。
今回は「マニアック」というよりかは、普段なら見せない一面をボロボロとみせてしまう、崩壊の流れが実にステキでした。ついつい暴走してしまうのも、少年少女にはつきもの。
だからすごく、人間の生々しい部分で魅せてくる作品ですね。
4巻をワクワクしながら待っています。この色香、惑わされる。
『妄想少年観測少女』3巻 ・・・・・・・・・★★★★
こっぱずかしい良質な青春恋愛シリーズ。ドキドキしすぎる・・・!
[漫画]男子高校生…魔法少女…?『妄想奇行―Adolescence Avatar』
![]() | 妄想奇行―Adolescence Avatar (電撃コミックス) (2012/01/27) 森山 大輔 商品詳細を見る |
外道はまとめて爆砕しちゃうゾ☆
森山大輔先生が電撃大王GENESISで連載していたものがついに単行本化。
「妄想奇行―Adolescence Avatar」は全1巻に収まった読みやすい作品です。
森山大輔先生は「クロノクルセイド」「ワールドエンブリオ」等に、結構シリアス色の強いストーリー漫画をメインに執筆する作家ですが、本作は突き抜けて明るいコメディです。
過去の単行本でも1番、いろんな意味でぶっ飛んだ作品になっているんじゃないかなとw
メインテーマはずばり厨二病!
人によっては心がチクチクと刺激される内容でしょうw 厨二病で学校を守れ!
主人公・有理はオタクであることを隠していた男子高校生。
彼が住むこの街には不思議な力があるらしく、それが困った事態を引き起こします。
ある日有理がいつものように自作ラノベの執筆に勤しんでいたら、それが原因で3年生の雪見先輩と出会い、勘違いから彼の悶々とした妄想が学校中にバラまかれてしまいます。
バラまかれた妄想は街の力でなんと実体化!そして人々を襲いだすのです。
これは困ったぞ!こうなったら変身だ!わるい化け物たちをなんとかしなくちゃ!

オリジナル魔法少女・ヒルデちゃんになって、敵をやっつけるんだ!
男子高校生魔法少女、誕生の瞬間です!
・・・いやいやいやウワアアアアアアアアア完全に羞恥プレイだよおおおおおお!なにが「ヒルダの歌声聞かせてあげる!外道はまとめて爆砕しちゃうゾ☆」だよつらい・・・・!
ぼくのかんがえた最強にかわいい魔法少女ヒルデちゃんということですか。ウオオオオオ
こんな風に物語は、恥ずかしさに我慢できなくなりそうな感じで幕を開けてしまいます。
有理くんは学校中にバラまかれた自らの妄想の化け物たちを、自作小説「ヴァルキリア無双ヒルデ☆ぶれいく」のヒロイン・ヒルデちゃんに変身して退治していかなければならないのです。
それって要するに自作自演のような・・・!色々とノリノリでやっちゃうのが更にイタイ。

なんとバトル中に歌が流れだす!もちろん自作である。
ラノベ書き上げる前にアニメ化の妄想までしてたのかこいつはうおおおおヤメテエエエエエエ。中高時代に有理みたいなことした人にとっては、心に何かもにょもにょしたのがガンガンやって来る!
基本的にずーっとこんなふうに厨二病を逆手にとったネタが続きます。
有理とはまた違ったタイプの厨二病を患った女の子も登場し、集団となってみんなで恥部を晒しまくるというなんとも頭のイタい内容となっています。
もうね、設定だけムダに作りこんだ完成してない自作ラノベとか、テイルズの技名っぽく字面だけカッコよくて意味はさっぱり分からない必殺技とか、憧れの自分になりきって自己陶酔とかいちいち鋭い。こんな共感したくなかったよと思ってしまうシーンがあちこちにあります。
そんなネタが非常にテンポよく繰り出され、コメディとしてなかなかに面白い!
色々とツッコミつつ、時折なにか心痛めつつ楽しめてしまう作品なのです。
しかし時折空気が変わるシーンがあり、とくに後編は印象的でした。
厨二病をテーマにした作品だけに、基本的にリア充ではない学生たちが主人公です。
たまにバカにされたり、蔑まれたりもする彼らのフラストレーション。そんな心の傷跡が描かれていて、厨二病をネタにした「コメディ」だけでない一面を見せてくるのです。

有理と同じく厨二病で変身もできてしまう女の子、華ちゃん。自分のお気に入りですが、彼女も現実に不満を感じているうちの1人です。
しかしそんな厨二病であることを楽しみつつ、ある意味コンプレックスでもある彼らに、ヒルデちゃんは勇気を与えてくれるのです。それが本作の最終話。
あの印象的な展開から、真正面から厨二病を肯定するのがこの作品なんだなと思います。
その力強い主張は読んでる自分も熱くしてくれましたよ。
現実で青春を謳歌することを拒否しているように見えた華ちゃんも、ラストでは自分から有理に腕をからめたりしてる。彼女の変化は著しかったです。華ちゃんかわいいなああああ!本気ではなくいたずらなだけだとしても、そうやってはしゃげることがどれだけ大きいことか。
単純にコメディとしても面白いのですが、厨二病の面白いところとちょっとズキンとくる部分を両面的に描き、それまるごと「素敵なものじゃないか」と後押しをする、そんな内容です。
あとがきを見るに、森山先生も過去の傷をほじくりかえしながら執筆していたようですが、こういう熱いメッセージを厨二病に投げかけてくれる作品を描くのは流石という感じですね。だってクロノのワンブリも厨2全開じゃないですか!そこが大好きなんですよもちろん。嬉しくなります。
絵の質も高く、ヒルデちゃんのバトルシーンにはいちいちほっこりしてました。
全1巻と読みやすく、ちゃんとまとまっていますので、手軽にお手にとって見てはどうでしょう。
開き直って厨二病を考え、見つめてみる面白さ。好きなものはとことん楽しもう!
『妄想奇行―Adolescence Avatar』 ・・・・・・・・・・・★★★☆
厨二病だっていいじゃない。魔法少女になってしまった男の子が送る、勇気と恥辱の物語。
[漫画]青春は甘く切なく、ドキドキが鳴り止まない 『むすんでひらいて』5巻
![]() | むすんでひらいて 5 (BLADE COMICS EDEN) (2012/01/14) 水瀬 マユ 商品詳細を見る |
オレの初恋はまだ続いてる
オムニバス形式で送る学園青春ラブストーリー「むすんでひらいて」5巻です。
上質なストーリーを毎回楽しませてくれて大好きな作品。性別問わず楽しめるであろう漫画だと思います。こっ恥ずかしくもあり、胸熱くさせられもある、輝かしい青春たち。
今回の表紙は雨宮ありす。2巻でのメインエピソード以来久々の主役です。
いろんなキャラクターが登場する作品だけにしばらく出番がありませんでしたが・・・ありすは大好きなヒロインなので今回はテンション上がりましたよ!
まぁ好きなヒロインばかりで困ってしまう作品でもあるのですが!
前巻→初恋は近くて遠く、甘くてにがい。『むすんでひらいて』4巻
20話から22話まで3話使って描かれるのが今回のメイン、雨宮ありすと村田雄成のエピソード。
8、9話以来なので実に1年ぶりくらいですか。
幼い頃のつながりで再び接近することができた2人。
しかし思い出話ばかりじゃ満足できなくなってるのがありすと村田。もっともっと相手のことを知りたい。近づいてみたい。でも二人揃ってシャイなもんで、全然上手くいかない。
そんなもじもじした空気が見てる方としては心地よく、とてもニヤニヤできるのです。
きっかけが無ければ話しかけることもできない、なんのアクションもかけられない村田のチキンっぷりはなかなかリアルで情けない・・・。しかし一方、ありすちゃんは攻めの姿勢。
「作ったお弁当を彼に食べてもらいたい」、その一心で彼を目で追います!・・・でも結局話しかけることもできず断念・・・。がんばれ恋する女の子!ありすちゃんはつい応援したくなりますね。
しかしひょんなことからありすは村田家を訪れることに。
ドキドキが止まらない中、2人の関係は一気に縮まっていきます。
ありすのヘコみやすいメンタルと、村田がちょこっとだけカッコいいところを見せてくれたのが印象的な第20話から、2人のギクシャクしたやりとりがなんとも微笑ましい21,22話へ。

緊張からかしてしまった失敗のため、ありすはお風呂に入ることになりますが・・・
村田は自分の家で女の子がシャワーを浴びてるってことに思春期男子らしく意識しまくり!ベタなシチュではありますが、イレギュラーな事態において「自分の家なのに気づかなかった。シャワーの音ってこんなに響くんだな」と改まって発見をしたり、彼の緊張がじんわりと伝わってくるような雰囲気がとてもよかったです。
この作品は「青春」を感じさせてくれるものをこれでもかと投入されてるような気が。
あと女の子の背中ってなかなかいいですよね。脱ぎかけの上のシーンは見ててドキドキしました。完全に自分の趣味ですけども。
そんな風に村田がドキドキしてる一方で、ありすはありすで1人反省会。

胸の大きなを気にするありす!
んーかわいい!身体的なコンプレックスを抱いてる女の子って王道ながらやはり良い!
村田の家にいるからって色々と慌てたりミスをしたり、いろんな表情を見せてくれるありすが可愛くてしょうがない!
しかしまぁ2人して慌てちゃって失敗もたくさんして全然上手くいかない。なんて格好悪い、自分。2人の申し訳なさそうな曖昧な空気にもギュッと胸を締め付けられる甘酸っぱさがアリ。
でもそこからちゃんとクライマックスにかけての盛り上がりがやはり良い!
別段難しいことはありません。非常にベタなストーリーでした。
しかし効果的に過去回想を挟み、メイン2人の不器用っぷりとこの異常事態のドキドキをたっぷり描いたあとにやってくる爽快な展開は、期待通りのはずが期待以上のものを感じさせてくれる出来栄え。それは2人のキャラクターの魅了をじっくりと引き出した上で進行しているからでしょうか。心理描写も丁寧で。
そんなワケで、ありすたち物語はスッキリとした一区切りを迎えました。
日摩裏先輩、夏らの他ヒロインを中心としたエピソード群が未だはっきりとした決着をしていない中、村田たちは先に一歩抜けた形になりましたね。
こっからまた揉めることがあるかもしれませんが、個人的にはかわいい2人の不器用なりのイチャつきがもっと読みたいなと!
続く第24、25話は番外編的なお話。作中アイドルMIUをめぐるお話。
普段の主人公たちとは年代が上のキャラクターが主役となっており、就職を目前にひかえた大学生と、すでに現役トップアイドルMIU。今自分が現実的にすべきことと、本当にしたいこと。はかるにはかれない天秤に頭を悩ませる主人公は、どんな結論を出すのか。
同じ「青春」と言ってもややタイプの違ったものを楽しませてくれるエピソードでした。
高校生たちの青春は、今目の前の壁を超えていくのに精一杯。
一方もう子供ではない大学生。今から何かに飛び込んでいくには、リスクもある。
だから目の前だけでなく、もっと未来を見据えて誓う約束の言葉。リアリティあるプレッシャーと、それを背負うことで前に進んでいく決意の力強さ!
終盤、熱のこもったドラマティックな展開に魅せられました。これも好きなお話です。
恋愛色がそれほど強くなく、主人公とヒロインの関係性もまたカッコいい。
しかしこのエピソード内で面白いことが起きましたね。「○年後―――」とやったのです。これまで作品を通じて
描いてきた時間軸を突破して未来に進んだエピソードだったのです。
そして完全に決着を見たエンディング。番外編だからこそ、な仕掛けでしたね。
以上、5巻の感想でした。今回も楽しませてもらいました。面白いなーやっぱ。
オムニバス形式というのがこの作品の特徴ですが、色んなキャラたちの物語が贅沢に味わえますねぇ。今回はありす・MIU両ヒロインともにやや独立したヒロインでしたが、こういうのを一緒の作品内でやれてしまう自由さが素晴らしいです。オムニバス設定がハマっています。
女の子のかわいらしさが際立つ作品ではありますが、男の子だってがんばりますし、とても輝いている作品です。そういえばMIU編の主人公なんかカッコいいですねえ。いやいや、みんなカッコいいです。イケメンばかりではないにしろ、みんな青春燃やしてます。
やってることはすごく王道の青春恋愛ものなんですけども、何作読んでもこういう作品が大好きですねえ自分は。青春のみずみずしい輝きを、色んな方面から楽しませてくれる作品です!
6巻では日摩裏先輩関連に動きがあるようで、引き続き期待ですね。
次の表紙は誰でしょうねえ。あと残ってる娘というと、柚になるのかな。
『むすんでひらいて』5巻 ・・・・・・・・・★★★★
あまずっぱーい。心躍る青春オムニバス群像劇。ありすちゃんはかわいいなあ!ラブ!