[漫画]失われていく、妖怪と語らう世界。『向ヒ兎堂日記』1巻
向ヒ兎堂日記 1 (バンチコミックス) (2012/11/09) 鷹野 久 商品詳細を見る |
昔はね 皆信じていたんだ 妖怪が本当にいるって
「向ヒ兎堂日記」1巻です。
鷹野久さんの絵が前から好きなので(いつだったかの月刊ヤンキンとかで読んだ)、この作家さんの単行本は待っていました。で、コミック@バンチ連載作がこのたび単行本化。
絵買いではありましたが、しみじみとした余韻が味わえて内容もよかった。
明治時代。それは文明開化にやっきになり、これまで人と共存していた妖怪たちを「非現実的なものだ」と信じず、切り離そうとする人間たちが増えた時代でもあります。
そんな中、妖怪関係の本をあつめるものずきな貸本屋があり、その店主が主人公。
その貸本屋の名前は「向ヒ兎堂」。今日も妖怪といっしょに、ちょっと不思議な日常へ。
その回のメインとなるゲスト妖怪が悩みをかかえて向ヒ兎堂にやってきて
主人公の青年・伊織とその同居人(人というか妖怪だけど)たちが、それを解決する、という一話完結スタイル。読みやすいですし、いろんな妖怪が出てきて楽しいです。
猫又、化狸、座敷わらしといったメジャーどころから、聞いたことがないものも。
看板猫の銀くん(猫又)のモフモフした感じが実に癒し。
個人的に好きなのは第3話で出てきた座敷わらしの女の子。
表情コロコロかわって、本当に子供の女の子みたいな愛らしさですよ。
主であるおじいちゃんに懐きまくり。すぐに不安になっちゃうし、そのたび泣きそうな顔する。
というか人と妖怪でありながら、本当の家族のような感じの2人です。
主人公もそうだけど、こうやって妖怪とともに生きられる人もいるんだよねえ、ちゃんと。いい妖怪ばかりではないのかもしれないけれど、こういう場面をみせられて、改めて作中で失われつつある人と妖怪の風景を惜しく感じる。
人と妖怪の今後について、ちょいと示唆的だなと感じたのが第二話「浮かぶ金魚」のエピソードでした。
ずばり人と妖怪の未来を示したものではないんですが、「こういう風に続いていくものなんだろうな」という感慨深さがあるのです。
ある日突然、空中に浮いてしまって水に戻れなくなった金魚。
主であるおさない女の子にみられてはビックリしさせてしまう。でも水槽にいないと心配させてしまう。どうしたものか・・・と向ヒ兎堂にやってくる金魚です。
主人公たちも頭をひねり、そして出された結論は、こういうもの。
「見えない水に入っているんだよ」と言い張る。
そんなムチャな!と思いつつもなんとかなってしまうものだw
見えないもの、「不思議」を信じる心。
それは人と妖怪の関係のも重なる姿だと感じるのです。消してはいけないもの。
よく分からないけど、見えない何かが世界にはある。そのことを受け止める思考。
そして、それを子供に伝えるということ。それも直接妖怪が伝えているのです。
こういう部分からも、妖怪側から「私たちの忘れないでね」と言っているかのような裏を感じる。これからも人といたいという思いが、きっと透けている。
人から疎まれるくらい、存在が認められないくらい苦しい現実がいま妖怪の前にあるけど
こういういじらしくも可愛らしいメッセージを放ってくるもんだから、もどかしい。
目新しさはない漫画ですが、心をもぞもぞさせるちょっとしたアクセントが憎い!
今後のストーリーに関わってきそうな陰陽師やら、警察やら・・・
カギとなるキャラクターもすこしずつ顔見せされており、動き出しています。
2巻から主人公の秘密も絡んで、ストーリー色が強まっていきそうかも。
で、まぁ鷹野久さんの絵は素敵だなぁと。
しゅっとスマートなんだけど温かみがあって。カッコよくて可愛いね。
漫画だし、絵に惹かれて買うことはなにも悪いことではない。そこからプラスアルファの魅力を見つければいいし、そうして内容の良さも光るのがこの作品なのですよ。
消えていく、忘れられていく時代・妖怪たちを憂うノスタルジー。
華やかな明治ロマンの裏側に、ひっそり花咲くかわいらしい妖怪たちの世界があります。
『向ヒ兎堂日記』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
地味だけどいい世界観が広がっています。妖怪たちみんなかわいいなー。
[漫画]ただのドMです。あなたが好きです。『待て! モリタ』
待て! モリタ (エフ×コミックス) (2012/08/09) 松本藍 商品詳細を見る |
今日制服のまましよっか
発売してから結構経っていますが、「待て!モリタ」の感想を。
「生きろ!モリタ」の続編ということで、実質2巻目です。
メイン2人ともが可愛くて、ちょっとマニアックな恋を楽しませくれるシリーズ。
「生きろ!」を読んだときは2巻が出るとは思っていませんでしたが、続編が出ることは喜ばしいことです。今回の「待て!」もノリは全く変わっていません。相変わらずかわいい2人。
前巻→ドM童貞×ドS女子高生な変態恋愛模様『生きろ!モリタ』
掲載誌のエロティクス・エフというと、サブカル色の強いマニアックな作品が揃っているという印象(本誌未読)。しかしこの「モリタ」シリーズは読みやすい、明るく幸せなラブコメディー。エロFってほんといろんな作品あるようです。
たしかにSMの世界を描くマニアックさはありますが、それがこの2人の関係を面白おかしくさせている!
SMといってもガッツリ描写があるでもなく、全体的な印象としてはむしろ爽やか。
ざっとストーリー。
26歳童貞フリーター、モリタ。趣味はSMグッズ収集。ちなみにM。
勇気を振り絞り、掲示板でSMのパートナーを募集したら、会ってくれたのはなんと女子高生。
その彩ちゃんは ふだんの振る舞いからしてサディスティックさが隠せてない・隠してない。
10歳も下も女の子とSMでつながってしまったモリタ。彼が彩ちゃんのことが好きになってしまうのは自然な流れとして、はたして彩ちゃんの方は・・・?
とにもかくにも、いいように彩ちゃんに振り回されるモリタがヒサンかわいのである。
職なし童貞、かつナチュラルにヘタレ、受身、ドMとそんな男なんですけど
それをいじる彩ちゃんが彼を魅力的にしている。そしていじってると彩ちゃんもぐっとかわいくなる。ようするに2人がイチャイチャと縛ったり叩いたりしてるシーンでとても和む(ひでえ
相手の人間性とピッタリ合わさってる感じが見て取れるんですよね。
SMといってもハードなプレイはないし、こちらとしても安心できる。
・・・もっとキッツいのも見てみたかったかもしれないけど、やりすぎると雰囲気崩壊か。
2巻でツボだったのはモリタのこの告白シーン。誰にしたのかは伏せますが、これは読んでて吹き出してしまったw こんなの用意してきたのかよ!
ヤル気を出すために自分を縛って興奮してから作業をするような男ですけど
これまで、SM趣味をあることは後ろめたい事として考えていたように見えます。
しかしここで、自分を開放してみせた。笑ってしまったけれど、モリタが一生懸命に振りしぼった勇気が感じられる、アツいシーンであることは間違いありません。
時期を同じくして彼は就職をするのですが・・・・・・・いやぁ、いい具合に開き直ってていい調子じゃないですか!なんだかんだで人生、順風満帆なのでは。少なくともこれからの未来は。
ストーリーとしてはだいぶ王道で、なんとなく先は読めるんですけどそれって別に作品の魅力が浅いというわけではない。ストレートに来るからこそ、胸を刺さるものも当然ある!
やっぱり素敵なのはこの2人の、イビツなようで安定したじゃれあい(SMプレイとも言う)。
やってることは結構ひどいのになぁ。繰り返しますが、本当にほほえましい!
彩ちゃんの毒舌笑顔に胸ときめかすのは、モリタだけじゃないんだ!
しかし16歳でこれだからすごいなぁ。これから知識を得ていったらどうなるんだこの娘・・・!
モリタシリーズの2巻目ですが、3巻目はあるのかなぁ。やることやったし、完結かな。
松本藍さんは別の連載を準備中とのこと。そちらも楽しみにしよう。
この単行本には「コール・ミー」という読み切りも収録されていますが、こちらも大学生カップルの小っ恥ずかしい恋愛模様が楽しめる一作でした。
『待て!モリタ』 ・・・・・・・・・★★★☆
2冊目。相変わらずニヤニヤほっこりできる2人でした。こいつらのデートかわいすぎ。
[漫画]死んでからできることって何があるかな。『まじめな時間』2巻
まじめな時間(2) <完> (アフタヌーンKC) (2012/09/21) 清家 雪子 商品詳細を見る |
まだね 乗り越えられる気はしない 一生無理なんだろうけど
まぁ……なんとかやっていくわ
清家雪子先生の「まじめな時間」2巻が発売されているので感想を。
全2巻。あらかじめこの構成が決まっていたようで、本当にスマートに、柔らかな着地を見せてくれました。この終わり方は自分はすごくいいものだと思います。
「死」というヘヴィーなテーマを、不思議と軽快なタッチで魅せてくれた作品。
重くなりすぎず、適度に力の抜けたムード。けれど大事なことからは逃げない。
「死」というテーマから人間の生き方を描く感動作です。ボロボロ泣きましたからね・・・!
2巻の表紙はのびのびと身体を伸ばし、満足げな一紗が印象的です。
1巻の時は丸く縮こまって、泣きそうな顔していましたね。
夕暮れ時というのも、人生の終わり際を示しているのかなと思ったり。
1巻→突然死んじゃったらどうすればいい?『まじめな時間』1巻
死をドラマティックに飾り過ぎない、この作品の姿勢がとても好きでした。
最後まで読み終えたことで、そのことをしみじみと感じます。
ドラマティックもなにも主人公が死んで幽霊デビューするところから始まるんですけどね。
死とどう向き合うか。それを言葉と、言葉だけじゃ足りないメッセージ性で、しかと描きってくれたと思います。
死を特別なものだと扱わない。そこにじんわりと叙情的な魅力があります。
最初はとまどうけれど、徐々に自身の死を受け止めていく幽霊たち。
幽霊が主人公の作品・・・ということでイメージされるかもしれない、絶望に塞ぎこむようなダークな雰囲気はこれっぽっちもない。とても自然でリラックスしています。
不慮の死を遂げても、こんな何でもないように居られるものなんだな。いいものかもしれない。
ストーリーの話。
1巻の時点では、まだ気持ちの整理ができていなかった一紗。しかし死んでしまった今だからこそ、やりたいこと、やらなきゃ気がすまないことができます。
一紗の死後、ずっと元気がなく倒れてしまった母親を、助けてあげること。
でもそうするためには、幽霊には難しい、現実への干渉を果たさなくちゃならない。
霊感を持った女の子・蘭子を介してがんばる一紗。周囲の幽霊たちもおちゃめに一紗をサポートしていきます。この幽霊たちのノリの良さや明るさが、この作品の雰囲気の良さに一役買っていましたね。
そして2巻の、いやこのシリーズ屈指の盛り上がりどころがここ。
葬式のときにも呆然としたまま涙も流せなかった母親。
娘の一紗の思い出話をぽつぽつとしながら、改めて彼女が一紗と向き合うシーンです。
次から次への溢れる一紗との思い出話。どんなに話しても尽きない。
「まだまだあるの。たくさんあるの。あの子のいいところ」
からの一連のセリフにはほんとに、びっくりするくらい涙が溢れてきて困った。
今年読んだ漫画で1番泣いたかも知れない・・・。これが涙腺決壊かという勢いで・・・。
アフタヌーンで読んだときに泣いて、単行本で読んで泣いた。感想書くためにまた読んだらまた泣いた。
彼女が涙を流し始めたら、こちらももう限界でした。
ああ・・・いまやっと、一紗の死が母親の胸に届いたのだ、と。
あまりの痛みに感覚がマヒしてしまった彼女の心が、動きだした。
しかしそれは改めて娘の喪失という、大きすぎる哀しみと向き合うことでもあり・・・。
読んでるこちらが切なすぎて辛すぎて。でも、このシーンが見たかったんだ。
本当に素晴らしい。名シーンだと思います。文句なし。
一紗たちだけではなく、ほかの幽霊たちのドラマもさらりと描かれていきます。そしてこれがこの作品の、もう1つの好きなところです。
みんながどんな人生を歩んでいたのか。どんな死を迎えたのか。
1番胸が痛い例をだすと、児童虐待を受け続け、あげく焼死した子供達がいます。
けれど大半の幽霊たちの心が穏やかで、まったりと現実を見守っている。
それは幽霊になってしまったことによる諦めの気持ちもありますが・・・けれどこの心安らぐ「ロスタイム」な時間も、なかなか素敵じゃないかと思えました。
なんとなくでも恨みつらみを溶かして、心を丸くしていける時間です。
そして「死後」に対しての幽霊たちのスタンス。これもまた面白いし、染みます。
この言葉がとても心に残ります。忘れられていくこと。消えていくこと。それら全てを自然なことだと受け止めていく。ちょっとさみしいけど、仕方ないよね、と。その「仕方ないよね」がどれだけ、辛くて大切か。僕が死んだのも、みんなが死んだのも
幸せだったのか不幸だったのかも、きっと大きな意味はないことで…
みんなやがて流れて、なくなっちゃうんだ
それは悲しいことでも苦しいことでもなくて
さみしいけど、そんなに悪くないよ
「さみしいけど、そんなに悪くないよ」の達観した感じが悲しくもある。けれど同時に、そんな素直に自分と世界を見つめられる心の平穏が得られたら、とも思う。
死んだからこそ「生」への漠然とした理解も深まる。一紗がドキッとすることを言います。
145Pあたりの「みんなの中で生きていたから私が生きてるって感覚があったのかも」と思い返す一紗のシーンも、さらりと流れていきそうな中で鋭いこと言っているなと感じました。
「人は二度死ぬ」・・・みたいな有名なセリフがありますが、改めてその意味を噛み締める。
なんだろう。やっぱり不思議だな。いろんな感情が込められた作品で、いろんな作品が胸の中でぐるぐると回って広がっていく。そんな作品です。一言じゃ感想を言い表せない。
柔らかな雰囲気の中で、するすると作品に浸っていけるんですけど
気づけば心がすごくナイーヴになっていて、なんてことないシーンでまで涙ぐんでしまう。
カバー裏、なにげなく見てたら、一紗と大久保さんが仲良さそうで笑いました。
あんたら楽しそうだな、安心したよ、幽霊たちw
で、このラスト。あれ、そこで終わるんだ、というのが最初の印象でした。
けれど何度か読み返すうちに、やや中途半端に思えたこのラストも、すごくいいものに感じられるようになってきた。死んだって人は世界を変えられる。人を変えられる。自分を変えられる。
ずっとずっと時間は流れつづけて、1人1人は消えていくけれど。それが当然のことだから。
インパクトがあるラストではありませんが、その意味をじっくり噛み締めることができる、味わい深いエンディングだったと思います。
本編終了後には清家さんの四季賞受賞作「狐陋」も収録されています。
こちらも面白かった。今とは絵柄も結構ちがいますが、人間の弱い部分を深く描いていくような、豊かな人間描写力はすでに感じられます。全体的にドライな読み心地も新鮮です。
この作家さんの描く人間はいいな。次の作品も楽しみにしたいです。
それでは最後に。「まじめな時間」、名作だと思います。
全2巻と集めやすく、内容については↑で書いてきましたが、自分はドハマり。
誰が読んでも何かを得られるんじゃないかなと思います。死という普遍性があるテーマを見事に描いています。この浮遊感。感情を気持ちよく揺さぶってくれる感覚。一読の価値アリ。
『まじめな時間』2巻 ・・・・・・・・・★★★★★
いつか受け止めなきゃいけない現実。「死」って、こういうものなのかな。
しみじみと、いい漫画だったなぁって満足できる作品でした。集めやすいし、ぜひ。
[漫画]歪んで苦しんで愛しあって、キラキラしてる。『妄想少年観測少女』4巻
妄想少年観測少女 4 (電撃コミックス) (2012/07/27) 大月 悠祐子 商品詳細を見る |
ゆ…指いれちゃ やだ…
発売して結構経ってしまってますが関係ないや。「妄想少年観測少女」の4巻の感想。
これにて完結となります。全4巻・・・もっと読みたかったという気持ちもあり、衝動にあふれたこの作品ならベストかなというタイミングでもあり・・・。
オムニバス形式でいろんなカップルの「ちょっと歪んだ恋」を描き続けてきた本作。
フェチズムを絡めて刺激的なストーリー。少年少女のむき出しな本音がぶつかり合う、青春漫画としてもとても楽しめた作品でした。もちろん恋愛モノとしても、エロも。
なにかに追い詰められているかのように、刹那的に生きる彼ら。
思春期のよどみやらキラめきやら小っ恥ずかしさやらがギュッと詰まった、大好きな漫画です。
→フェチ心あふれる、少年少女の恋愛模様 『妄想少年観測少女』
→欲望にまみれて生きよう少年少女 『妄想少年観測少女』2巻
→この色香に惑わされたい。『妄想少年観測少女』3巻
オムニバス形式でつづられるので、各ペアごとに触れていきたいと思います。
●一ノ瀬陽太/大地花
「妄想少年観測少女」史上、1番まったりのほほんとした癒しカップル!
ヒロインの花は3巻ラストに収められていた短編「恋愛観測」の主人公です。
あの頃はまだ観測者でした。でも今度は、恋をする。
4巻は他のエピソードでも感じましたが、他エピソードとの因果関係も強調されていたかな。
だから「連鎖する」「どんどんと続いていく」というイメージが強まりました。
オムニバスならではの楽しい仕掛けですし、最終巻としてのまとまりも良い!
このエピソードで微笑ましいのは、花ちゃんの変化でしょう。間違いなく。
「見ているだけだったはずが・・・」という転落感。まさに恋におちたというやつである。
見つめることが生きがいだった。見ることで恋をした花。
でも「恋愛観測」ができなくなってしまう瞬間すらきてしまいます。
心がいたんで、まっすぐ見れない。けれどそれは、彼女が変わった証であって。
恋をしている人たちは、キラキラで、眩しくてとても綺麗だと花は言っていました。
そして彼女もまた、星みたいにキラキラする。
その星が輝くのは、好きになってしまった少年の瞳の中、というのが、なんともロマンチックすぎる落としどころだなと思いました。こういう、綺麗に前フリとオチがつながると、どんな作品でも清々しい気持ちにさせられますね。
●繭
番外編みたいなものですね。2巻登場の百合カップルと、清水良介×木乃内リサ。
清水良介×木乃内リサは本作トップクラスにエロいシチュだなと思っていたので再登場嬉しいです。まぁエロいシチュのペアばかり登場する作品ですが・・・あのラストには度肝抜かれましたからね!
あのラストの見開きに至るまでの流れ。なんて艶やかなシーンか・・・!
ひとりよがりな、わがままな欲望に目覚める少年。いや目覚めたんじゃないか。そういう乱暴をしてしまうほど、目の前の相手に狂っているわけで。
いじめられては、女装させられては「男なのに・・・」と悔しがっていた清水くんですが
この時本当にゲスい、けどれ必死でど美しい表情をしています。欲望に忠実でキラキラ。
で、イヤイヤいっておきながら自分から彼の頬に手をそえるリサさんである。
お前らあああああああああああ!!!(笑顔で)
●岡崎透/本田美羽子
これはなんというか、この作品なりの王道だなぁと感じたお話w
この作品は、何かに追い詰めらてるようにして行動を起こすキャラクターたちの、『切羽詰まってる感』だと思っています。このお話はその切羽詰った感じを、ちょっとかわいく仕上げた感じ。
かわいく感じたのは、他のカップルと比べても、「子供のころにしていたピアノ遊びをもう一度しよう」という回帰的な動きがメインだからかな。昔に戻りたいっていうノスタルジーがあって。
けどその子供の頃にしてた遊びっていうのは非常にアブないものです。
幼稚なことかもしれないけど、もう子供じゃない彼らがそれをしたら・・・きっと大変なことになってしまう。本当ならしてはいけないこと。そしてその禁忌を破る。
「こんなことしちゃいけないのに」という意識が常にあることが、よりムードを高めます。
理性におしたおして畳み掛けるエロスです。直情的に暴走するキャラたちを読んでいるとこちらもテンション上がってきますよ。
それは甘美なる禁断の果実。自分たちの意思で、決意で、それを手にする。
少女側が触れ合うことを強く求め、少年がそれに戸惑うばかりの描写がかわいらしいです。
美羽子は・・・うーん、こんな幼馴染いたら道踏み外すわなw
しかし中学2年生でこんなことになって・・・とってもいけないと思います・・・ハフハフ
しかしストレートに性的行為がテーマとなっているぶん、直接的にエロいエピソードだったとも思います。
そういう雰囲気を孕んでる、ほのめかしてる、じゃなくまっすぐにエロい。
けどそこに所有欲だとかサディスティックな気持ちだとかがなく、純粋に2人ともが相手を好きというだけで求め合っている。「昔に戻りたい」は、もう一度ふれあいたいというのを言葉を買えて言っているだけのこと。やはりピュアな構造だと思う。
性行為は、彼らの好きだという気持ちのエネルギーが正方向に向けて解き放たれた結晶でもあります。
長編エピソードでは本編最後に位置するこのエピソードですが、「無垢な恋」も暴走すりゃこうなるんだよ、ってのを見せつけてくれる、「妄想少年観測少女」らしいメッセージだったのかなと。
無垢なら何をしてもいいのかい、と投げかけてるような。結果的にそれは本当に清らかなものだっただろうか。なにが美しく、なにが醜いのか。そういうところにまで言及している気すらします。恋とはすなわちそういうものだろうと。
どんな2人の形であれ、本当にただ綺麗なだけじゃ、きっとつまらないから。
もっと欲しがっていいよ。汚しあっていいよ。それはおかしなことじゃない。
「『好き』の形はたくさんあって、きっとそれらは、ヘンなんかじゃない」
というこのシリーズを総括してのモノローグで〆。素敵です。
●妄想少年観測少女
そしてシリーズ通してのエピローグ。次の主人公にバトンタッチをする内容。
見ているだけだったけど、いつのまにか主人公になっていた少女がいました。
どんどんと繋がって広がっていくからこそ、次の主役がこうして描かれていますね。
「妄想少年観測少女」の世界を完全に閉じはしません。
あとなにげに、恋敗れてしまった女生徒が切なかわいい・・・。好きだな。
ということで、各話?ごとに感想を書いてきました。最後まで楽しませてくれた漫画です。
思春期こじらせて熱にうかされて暴走しちゃうような少年少女の青春とか性春とか、自分は本当に大好きです。この作品はツボをチクチクと、ズクズク刺激してきました。
もちろんエロいです。エロいのはいいですね。でもそれだけじゃない。
心の底から相手を欲しがってしまってどうしようもない。焦燥感と自己嫌悪とその他いろいろな感情に振り回されて、自分でも意味分かんなくなってる感じのキャラクターたち。
彼らの姿は、まさに青春を生きているって感じで、すごく眩しいです。愛らしい。
汚らしい欲望を見せてもいい。ボロボロになってもいい。
ただただ「夢中になっている」その様子が、本当に心に残りました。刻まれました。
いい作品でした。個人的にはこういうドロドロした色っぽい青春漫画の、代表格として記憶しておきたい作品になりました。大月悠祐子先生ありがとうございました。
『妄想少年観測少女』4巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
大好きなシリーズの完結巻。とても楽しめました。微笑ましさがあり、脳がビリビリくるエロスもあり、恋愛漫画として素直に面白かった。欲望に忠実なのは、いいことだ。
[漫画]おかえりなさい!愛おしい変態学級の日常!『みつどもえ』12巻
みつどもえ 12 (少年チャンピオン・コミックス) (2012/09/07) 桜井 のりお 商品詳細を見る |
はぁーっ 佐藤くんちを眺めながらのクリスマスパーティーは格別ね!!
待ってました・・・本当に待ってました!!「みつどもえ」12巻が出ました!
1年7ヶ月ぶりの新刊とのことです。待ちましたね・・・連載が止まっていましたもんね。
妙に続く休載・・・そのままなんのアナウンスもなく・・・みつどもえの存在感もうすれてゆき・・・。まさかフェイドアウトかと不安でしたが、無事に連載が再開され、単行本発売に繋がりました。
またこの騒々しい三つ子らの日常を読めるかと思うと、とてもとても嬉しいです。
1年以上も休載がされて、読者としては絵や雰囲気の変化は気がかりでしたが
いざ始まってみれば、本当にまったく以前までと変わらない。安心しました。
休載前から復帰後へと収録されていますが、特に違和感もなく1冊読み通すことができました。
大好きなみつどもえの世界は変わらずここにある!
そしてみつどもえという作品の持つ密度を、久しぶりに肌で感じました。
暴れん坊で騒々しいキャラクターたちを、ぎっちぎちに箱庭に詰め込んだような。
箱庭が狭いんじゃなく、彼らが元気いおっぱいに走り回るものだから。
1話1話の質も高く、それが単行本となるとずらーっと一気読みができて、あらためてこの作品の持つある種の迫力のようなものが感じられます。またこの感覚を味わえて嬉しい限り・・・!
次から次へと新しい出来事が起きて、その度いろんな子達が動き回って・・・毎回そんな調子なので情報量がすごいんです。キャラクターみんな濃い。だからかわいい。
相変わらず宮なんとかさんはウザいし。
相変わらずひとはと矢部っちは微笑まししくて心荒ぶるし。
他にもたっぷりどっさり見所といえる箇所はあって。というかこれだけのキャラがいてこれだけそれぞれが動いてたら、人によって見所も変わってくるよねという。
個人的にツボだった話は、まず213話。
みつばがヒドい目に合うのはお決まりではありますが、この回のみっちゃんは・・・。
千葉氏にふともも触られて「誰だよハムなんて持ってきたやつ」とか言われてしまうのに笑ってしまいましたよ・・・どんな触り心地だよ・・・!肌触りからしてもう豚なのか・・・しかも食用加工された。
次に217話。上にも画像をはった矢部っちとひとはの2人がとてもかわいらしいエピソード。
なんつーかこの2人はガチレンジャーという健全なもので心を許し合っているからこその距離感で、これがいつ別の感情に転ぶかわからないソワソワ感がいつも俺の胸に居ついていましてハイ、カップリング談義はやめとこう。
219話は「極上女子会」のサブタイトルままの杉崎、吉岡、宮・・・なんとかさんのメイン回。
宮・・・川?さんのウザさが際立っていますが、吉岡さんのかわいさも極上じゃないですか!
その後の書き下ろしもすばらしい。杉崎衣装の吉岡さんは素直にかわいいぞ・・・杉崎が来てたときと見比べるとたしかに胸元が窮屈そうでたまりません。しかし吉岡さんのあの羞恥はなんなんだろう。珍しくおもっきりガーリーなものを着たからか、それとも本当にダサいと思っているからなのかw 次ページの「宮style」はおいやめろって気持ちに。
229話。ひとはとオカルト大好き松岡の絆ってやっぱり面白い形だなぁと再認識。
「これではまるで松岡さんを心配してるみたいじゃん・・・不本意極まりないよ・・・」
ひとはは本気で松岡さんをうっとおしく思っているように見えますけど、アグレッシブな松岡さんが距離をつめてきてくれることはまんざらでもないように思っているような。
というかこんな風に「松岡さんを心配してるって思われたくない」って照れてる時点で意識してるの丸分かりである。大切な友達になってるじゃない・・・たぶん。
そして俺はひとはが顔を赤らめているのを見るのが好きすぎる・・・はあぁあ。
と、そんな感じの第12巻。
久しぶりのみつどもえコミックスも、とてもみつどもえらしさ溢れてて笑顔になれます。
今回も書き下ろし漫画が結構あってサービスいいです。
巻末には三十路先生の過去の栄光メモリー。いやあんまり栄光でもないような気がする。女子高生三十路はとてもかわいいが・・・やっぱり残念すぎた・・・。
あと関係ないですが、みつどもえで制服姿の女子高生がたむろするのを見るのは新鮮。
賛否あるかもしれないですが、個人的には1度夢オチ的なものでもいいから高校生になったみつどもえキャラクターを見てみたいかも、なんて思いました。
・・・休載について邪推をしてしまうことはありますが、まぁ、おとなしく漫画読めて楽しめていればそれでいいかな。どこかで詳細がわかるとモヤモヤが晴れて嬉しいですけども。
みつどもえの連載はこの12巻分を最後に、週チャンから別チャンに引っ越すようです。
連載ペースに変化はあっても、楽しいみつどもえワールドが今後も楽しめそう。
感慨もあってこの12巻は特別面白かった!13巻楽しみにしてます!
『みつどもえ』12巻 ・・・・・・・・・★★★★
久しぶり!!今日も明日もあさっても、愛らしく騒がしい小学生たちの日常。