[漫画]歪んで苦しんで愛しあって、キラキラしてる。『妄想少年観測少女』4巻
妄想少年観測少女 4 (電撃コミックス) (2012/07/27) 大月 悠祐子 商品詳細を見る |
ゆ…指いれちゃ やだ…
発売して結構経ってしまってますが関係ないや。「妄想少年観測少女」の4巻の感想。
これにて完結となります。全4巻・・・もっと読みたかったという気持ちもあり、衝動にあふれたこの作品ならベストかなというタイミングでもあり・・・。
オムニバス形式でいろんなカップルの「ちょっと歪んだ恋」を描き続けてきた本作。
フェチズムを絡めて刺激的なストーリー。少年少女のむき出しな本音がぶつかり合う、青春漫画としてもとても楽しめた作品でした。もちろん恋愛モノとしても、エロも。
なにかに追い詰められているかのように、刹那的に生きる彼ら。
思春期のよどみやらキラめきやら小っ恥ずかしさやらがギュッと詰まった、大好きな漫画です。
→フェチ心あふれる、少年少女の恋愛模様 『妄想少年観測少女』
→欲望にまみれて生きよう少年少女 『妄想少年観測少女』2巻
→この色香に惑わされたい。『妄想少年観測少女』3巻
オムニバス形式でつづられるので、各ペアごとに触れていきたいと思います。
●一ノ瀬陽太/大地花
「妄想少年観測少女」史上、1番まったりのほほんとした癒しカップル!
ヒロインの花は3巻ラストに収められていた短編「恋愛観測」の主人公です。
あの頃はまだ観測者でした。でも今度は、恋をする。
4巻は他のエピソードでも感じましたが、他エピソードとの因果関係も強調されていたかな。
だから「連鎖する」「どんどんと続いていく」というイメージが強まりました。
オムニバスならではの楽しい仕掛けですし、最終巻としてのまとまりも良い!
このエピソードで微笑ましいのは、花ちゃんの変化でしょう。間違いなく。
「見ているだけだったはずが・・・」という転落感。まさに恋におちたというやつである。
見つめることが生きがいだった。見ることで恋をした花。
でも「恋愛観測」ができなくなってしまう瞬間すらきてしまいます。
心がいたんで、まっすぐ見れない。けれどそれは、彼女が変わった証であって。
恋をしている人たちは、キラキラで、眩しくてとても綺麗だと花は言っていました。
そして彼女もまた、星みたいにキラキラする。
その星が輝くのは、好きになってしまった少年の瞳の中、というのが、なんともロマンチックすぎる落としどころだなと思いました。こういう、綺麗に前フリとオチがつながると、どんな作品でも清々しい気持ちにさせられますね。
●繭
番外編みたいなものですね。2巻登場の百合カップルと、清水良介×木乃内リサ。
清水良介×木乃内リサは本作トップクラスにエロいシチュだなと思っていたので再登場嬉しいです。まぁエロいシチュのペアばかり登場する作品ですが・・・あのラストには度肝抜かれましたからね!
あのラストの見開きに至るまでの流れ。なんて艶やかなシーンか・・・!
ひとりよがりな、わがままな欲望に目覚める少年。いや目覚めたんじゃないか。そういう乱暴をしてしまうほど、目の前の相手に狂っているわけで。
いじめられては、女装させられては「男なのに・・・」と悔しがっていた清水くんですが
この時本当にゲスい、けどれ必死でど美しい表情をしています。欲望に忠実でキラキラ。
で、イヤイヤいっておきながら自分から彼の頬に手をそえるリサさんである。
お前らあああああああああああ!!!(笑顔で)
●岡崎透/本田美羽子
これはなんというか、この作品なりの王道だなぁと感じたお話w
この作品は、何かに追い詰めらてるようにして行動を起こすキャラクターたちの、『切羽詰まってる感』だと思っています。このお話はその切羽詰った感じを、ちょっとかわいく仕上げた感じ。
かわいく感じたのは、他のカップルと比べても、「子供のころにしていたピアノ遊びをもう一度しよう」という回帰的な動きがメインだからかな。昔に戻りたいっていうノスタルジーがあって。
けどその子供の頃にしてた遊びっていうのは非常にアブないものです。
幼稚なことかもしれないけど、もう子供じゃない彼らがそれをしたら・・・きっと大変なことになってしまう。本当ならしてはいけないこと。そしてその禁忌を破る。
「こんなことしちゃいけないのに」という意識が常にあることが、よりムードを高めます。
理性におしたおして畳み掛けるエロスです。直情的に暴走するキャラたちを読んでいるとこちらもテンション上がってきますよ。
それは甘美なる禁断の果実。自分たちの意思で、決意で、それを手にする。
少女側が触れ合うことを強く求め、少年がそれに戸惑うばかりの描写がかわいらしいです。
美羽子は・・・うーん、こんな幼馴染いたら道踏み外すわなw
しかし中学2年生でこんなことになって・・・とってもいけないと思います・・・ハフハフ
しかしストレートに性的行為がテーマとなっているぶん、直接的にエロいエピソードだったとも思います。
そういう雰囲気を孕んでる、ほのめかしてる、じゃなくまっすぐにエロい。
けどそこに所有欲だとかサディスティックな気持ちだとかがなく、純粋に2人ともが相手を好きというだけで求め合っている。「昔に戻りたい」は、もう一度ふれあいたいというのを言葉を買えて言っているだけのこと。やはりピュアな構造だと思う。
性行為は、彼らの好きだという気持ちのエネルギーが正方向に向けて解き放たれた結晶でもあります。
長編エピソードでは本編最後に位置するこのエピソードですが、「無垢な恋」も暴走すりゃこうなるんだよ、ってのを見せつけてくれる、「妄想少年観測少女」らしいメッセージだったのかなと。
無垢なら何をしてもいいのかい、と投げかけてるような。結果的にそれは本当に清らかなものだっただろうか。なにが美しく、なにが醜いのか。そういうところにまで言及している気すらします。恋とはすなわちそういうものだろうと。
どんな2人の形であれ、本当にただ綺麗なだけじゃ、きっとつまらないから。
もっと欲しがっていいよ。汚しあっていいよ。それはおかしなことじゃない。
「『好き』の形はたくさんあって、きっとそれらは、ヘンなんかじゃない」
というこのシリーズを総括してのモノローグで〆。素敵です。
●妄想少年観測少女
そしてシリーズ通してのエピローグ。次の主人公にバトンタッチをする内容。
見ているだけだったけど、いつのまにか主人公になっていた少女がいました。
どんどんと繋がって広がっていくからこそ、次の主役がこうして描かれていますね。
「妄想少年観測少女」の世界を完全に閉じはしません。
あとなにげに、恋敗れてしまった女生徒が切なかわいい・・・。好きだな。
ということで、各話?ごとに感想を書いてきました。最後まで楽しませてくれた漫画です。
思春期こじらせて熱にうかされて暴走しちゃうような少年少女の青春とか性春とか、自分は本当に大好きです。この作品はツボをチクチクと、ズクズク刺激してきました。
もちろんエロいです。エロいのはいいですね。でもそれだけじゃない。
心の底から相手を欲しがってしまってどうしようもない。焦燥感と自己嫌悪とその他いろいろな感情に振り回されて、自分でも意味分かんなくなってる感じのキャラクターたち。
彼らの姿は、まさに青春を生きているって感じで、すごく眩しいです。愛らしい。
汚らしい欲望を見せてもいい。ボロボロになってもいい。
ただただ「夢中になっている」その様子が、本当に心に残りました。刻まれました。
いい作品でした。個人的にはこういうドロドロした色っぽい青春漫画の、代表格として記憶しておきたい作品になりました。大月悠祐子先生ありがとうございました。
『妄想少年観測少女』4巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
大好きなシリーズの完結巻。とても楽しめました。微笑ましさがあり、脳がビリビリくるエロスもあり、恋愛漫画として素直に面白かった。欲望に忠実なのは、いいことだ。
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