[漫画]苦しいほど愛おしい思春期 『うみべの女の子』1巻
<追記>
2巻の感想更新しました。
青の時間は汚れあって消えていく。『うみべの女の子』2巻
やっぱ… やっぱキスはやだ……
出てからかなり経っていますが、今日は浅野いにお先生の「うみべの女の子」1巻。
購入はしていましたが、なんだか読むのが怖くて長く置いていたんですよね。
実際読み出せばスルスルと読めてしまったんですが、ダメージでかーい・・・。
田舎町を舞台に、14歳の男の子と女の子の揺れ動く心を描いた作品なのですが、その設定だけで想像できるような素朴~なものなんかじゃ全然ない。瑞々しい毒が渦まいている。
やっぱりいにおさんの作品だなぁとしみじみ感じつつ、強烈に引きこまれてしまいます。
雰囲気はいいんですが、やっぱりどこか気持ち悪いんだよなあ。
「恋というには強かで、打算というにはあまりに脆い。」
オビにあるこの文章がすごく作品の雰囲気を表していて好き。
オシャレで淡い色彩のカバーイラストと合わせて、「おお、なんか爽やかな恋が期待できそうだぞ!」と一瞬思ってしまいますが、中身は安心の浅野いにおブランドである(気分がどんよりするブランド)。
この作家さんの作品は、わりとストレートな作品とこじれにこじれた作品の2パターンがあると思っているんですが、この作品は一見前者なようで、このクセの強さは後者に属していそう。
中学生の男女を主人公に据えておきながら、展開される物語は美しさとはかけ離れていて、非常に衝動的で生々しい。

いろんな過程をすっ飛ばして、とりあえず・なんとなくでセックスをした2人。
平凡な女の子・小梅と、内向的で孤独な男の子・磯辺は、恋人になるわけでもなくこっそりと2人きりになり、身体を重ねていきます。
暇つぶしのように、憂さ晴らしのように、とにかくヤります。部屋でも、メールで呼び出して学校のトイレでも。若い生命力を持て余す2人の性的な自堕落っぷりがすごくいい。
最初は自暴自棄からのセックスでしたが、だんだんと交わうことに慣れていく2人。
後半は無感動に惰性で性交をこなしているようにすら。若い中学生の男女なのに、なんだろう、このくたびれたムードは。
やってることはエロ漫画ですよね。しかしかなり写実的なエロ描写で美しい。蛋白とも言えるか。肉体的にたかぶり表情を歪ませる2人の様子をしっとりを描いていくのが魅力。
キャラクターの息遣いを感じさせてくれるようなエロスの使い方だと思います。

この作品の面白さの1つは、主人公の中学生2人のリアルさだろうなと。
上のシーンが「あー中学生だなこいつら」って思わされる印象的なワンシーンでした。
「近々死ぬと思うんだ」なんて根拠も何もないことをつぶやいて、女の子は「うそーん、それは悲しいね」とあからさまにテキトウな返答。
でもこれ、まじめにやりとりはしてないのは間違いないけれど、100%ウソの言葉ではないんだろうなとも。この作品にはこのシーンだけでなく思春期のモヤモヤが溢れているのです。
自分でもなにかはわからないんだけど、なにかとてつもなく恐ろしいものが目前にあるような気がして、気に入らないことが世界中にあって、でも見えてる世界なんてちっぽけで。
2人してそういう寂しさやいらだちを抱えて、上辺だけで慰めあっている。
そういう青臭さや、精神的な未熟さがつくる雰囲気がすごく好き。
心がふわふわと揺れ動き、セックスを繰り返してもだんだん行為が形骸化していく感じ。
そして後半では、だんだんと不協和音が混じってさらに雰囲気が悪くなっていきます。
ヒロインの心が主人公に近づくにつれ、そのせいで主人公の心がヒロインから離れていく。
全体的に間違っていますけど、こじれた青春模様がたまらないのです!
噛み合わずにすれ違って・・・、このうまくいかない感じにキュンてしてしまう。

ああ、ひどすぎる。「知らねぇよバーカ、死ね」って歯に衣着せなさすぎじゃないですか。
女の子を傷つけてやるために、酷い言葉を吐きつけてみせる。
この主人公は決して読者から好意的に見られる男の子ではないと思います。いけすかない人間だし、態度だけ偉そうだし。でも何かに追い詰められ怯える姿や、酷い言葉で人を突き放したり挑発したりする場面はまるきり子供で。こんな醜い暴走だって、なんだかちょっと愛おしく見えてきたり・・・する、のか?
132ページでは小梅に抱きつくように眠っていたりして微笑ましいのに、なんでこうタイミング悪く反発してしまうのか。面白いなあ。
本当に後半はどんどんと気まずくなっていく。前半だって決して幸福感のある内容ではないのに、メイン2人の関係がゆがみだして(まぁ最初から歪んでいるけれど)からは切なくて切なくて。些細なことで変わってしまう。
自分の感情をコントロールできないし、人間関係もうまい構築だってできない。
中学校の中でうずまく、「思春期」の悶々としたイヤ~な空気。息が詰まるみたいになるし、同時にちょっと懐かしい気分にもなって、逃げ出したくなる。でもちゃんと続きを読んでいきたくなるストーリーの面白さ。意地の悪い作品だなあ。
この1巻のラストは、同作者の「ソラニン」を思い出したりしましたが、2巻になったって「ソラニン」みたいな切なくも爽快感あふれる展開が待っているとは到底思えず・・・。
タイトルになっている「うみべの女の子」がどんな意味を持ってくるのかも。あの写真の女の子のことなのか、それとも先のなにかがあるのか。
楽しみなような恐ろしいような。気分は落ち込むのにそわそわする。不思議だな。
この2人の関係は、決して「恋」ではない。
思春期の不安定さが引き起こした、ラブストーリーだなんて呼べるわけがない代物。
でも非常にリアルな背景とセットみたいになにかが心に重くのしかかる。
すごくロマンティックな苦味がある作品でもあると思うのです。しんどいけれど、超たのしい。
退廃的な中学生たちの恋模様。心の距離、身体の距離。人間は間違えてしまうものだ。彼らはそれを大きく、致命的にやらかしているだけで。
浅野いにお先生の詩的な演出も、中学生たちの青臭い物語とマッチしていると思います。
でも単に中学生の恋物語とだけ言うには、生々しさが強すぎるか。読んでいて苦しくなってくる人もいるはずだし、幅広い層が楽しめる作品ではないのでは。だからこそ、ハマる人は、ガッツリ心掴まれて動けなくなる。動けなくなるというか逃げられなくなる。
2巻はけっこう先になると思いますが、これは期待して待ちたいところ。

小難しいことはおいておいても、中学生の男の子と女の子の一見静かに暴走していく青春模様はそれだけで心踊るのです。この作品の雰囲気にはすっかり惚れ込んでしまいました。
『うみべの女の子』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
よどみと歪みに魅せられる青春。キラキラはしてないけど瑞々しい。
2巻の感想更新しました。
青の時間は汚れあって消えていく。『うみべの女の子』2巻
![]() | うみべの女の子 1 (F×COMICS) (2011/03/17) 浅野 いにお 商品詳細を見る |
やっぱ… やっぱキスはやだ……
出てからかなり経っていますが、今日は浅野いにお先生の「うみべの女の子」1巻。
購入はしていましたが、なんだか読むのが怖くて長く置いていたんですよね。
実際読み出せばスルスルと読めてしまったんですが、ダメージでかーい・・・。
田舎町を舞台に、14歳の男の子と女の子の揺れ動く心を描いた作品なのですが、その設定だけで想像できるような素朴~なものなんかじゃ全然ない。瑞々しい毒が渦まいている。
やっぱりいにおさんの作品だなぁとしみじみ感じつつ、強烈に引きこまれてしまいます。
雰囲気はいいんですが、やっぱりどこか気持ち悪いんだよなあ。
「恋というには強かで、打算というにはあまりに脆い。」
オビにあるこの文章がすごく作品の雰囲気を表していて好き。
オシャレで淡い色彩のカバーイラストと合わせて、「おお、なんか爽やかな恋が期待できそうだぞ!」と一瞬思ってしまいますが、中身は安心の浅野いにおブランドである(気分がどんよりするブランド)。
この作家さんの作品は、わりとストレートな作品とこじれにこじれた作品の2パターンがあると思っているんですが、この作品は一見前者なようで、このクセの強さは後者に属していそう。
中学生の男女を主人公に据えておきながら、展開される物語は美しさとはかけ離れていて、非常に衝動的で生々しい。

いろんな過程をすっ飛ばして、とりあえず・なんとなくでセックスをした2人。
平凡な女の子・小梅と、内向的で孤独な男の子・磯辺は、恋人になるわけでもなくこっそりと2人きりになり、身体を重ねていきます。
暇つぶしのように、憂さ晴らしのように、とにかくヤります。部屋でも、メールで呼び出して学校のトイレでも。若い生命力を持て余す2人の性的な自堕落っぷりがすごくいい。
最初は自暴自棄からのセックスでしたが、だんだんと交わうことに慣れていく2人。
後半は無感動に惰性で性交をこなしているようにすら。若い中学生の男女なのに、なんだろう、このくたびれたムードは。
やってることはエロ漫画ですよね。しかしかなり写実的なエロ描写で美しい。蛋白とも言えるか。肉体的にたかぶり表情を歪ませる2人の様子をしっとりを描いていくのが魅力。
キャラクターの息遣いを感じさせてくれるようなエロスの使い方だと思います。

この作品の面白さの1つは、主人公の中学生2人のリアルさだろうなと。
上のシーンが「あー中学生だなこいつら」って思わされる印象的なワンシーンでした。
「近々死ぬと思うんだ」なんて根拠も何もないことをつぶやいて、女の子は「うそーん、それは悲しいね」とあからさまにテキトウな返答。
でもこれ、まじめにやりとりはしてないのは間違いないけれど、100%ウソの言葉ではないんだろうなとも。この作品にはこのシーンだけでなく思春期のモヤモヤが溢れているのです。
自分でもなにかはわからないんだけど、なにかとてつもなく恐ろしいものが目前にあるような気がして、気に入らないことが世界中にあって、でも見えてる世界なんてちっぽけで。
2人してそういう寂しさやいらだちを抱えて、上辺だけで慰めあっている。
そういう青臭さや、精神的な未熟さがつくる雰囲気がすごく好き。
心がふわふわと揺れ動き、セックスを繰り返してもだんだん行為が形骸化していく感じ。
そして後半では、だんだんと不協和音が混じってさらに雰囲気が悪くなっていきます。
ヒロインの心が主人公に近づくにつれ、そのせいで主人公の心がヒロインから離れていく。
全体的に間違っていますけど、こじれた青春模様がたまらないのです!
噛み合わずにすれ違って・・・、このうまくいかない感じにキュンてしてしまう。

ああ、ひどすぎる。「知らねぇよバーカ、死ね」って歯に衣着せなさすぎじゃないですか。
女の子を傷つけてやるために、酷い言葉を吐きつけてみせる。
この主人公は決して読者から好意的に見られる男の子ではないと思います。いけすかない人間だし、態度だけ偉そうだし。でも何かに追い詰められ怯える姿や、酷い言葉で人を突き放したり挑発したりする場面はまるきり子供で。こんな醜い暴走だって、なんだかちょっと愛おしく見えてきたり・・・する、のか?
132ページでは小梅に抱きつくように眠っていたりして微笑ましいのに、なんでこうタイミング悪く反発してしまうのか。面白いなあ。
本当に後半はどんどんと気まずくなっていく。前半だって決して幸福感のある内容ではないのに、メイン2人の関係がゆがみだして(まぁ最初から歪んでいるけれど)からは切なくて切なくて。些細なことで変わってしまう。
自分の感情をコントロールできないし、人間関係もうまい構築だってできない。
中学校の中でうずまく、「思春期」の悶々としたイヤ~な空気。息が詰まるみたいになるし、同時にちょっと懐かしい気分にもなって、逃げ出したくなる。でもちゃんと続きを読んでいきたくなるストーリーの面白さ。意地の悪い作品だなあ。
この1巻のラストは、同作者の「ソラニン」を思い出したりしましたが、2巻になったって「ソラニン」みたいな切なくも爽快感あふれる展開が待っているとは到底思えず・・・。
タイトルになっている「うみべの女の子」がどんな意味を持ってくるのかも。あの写真の女の子のことなのか、それとも先のなにかがあるのか。
楽しみなような恐ろしいような。気分は落ち込むのにそわそわする。不思議だな。
この2人の関係は、決して「恋」ではない。
思春期の不安定さが引き起こした、ラブストーリーだなんて呼べるわけがない代物。
でも非常にリアルな背景とセットみたいになにかが心に重くのしかかる。
すごくロマンティックな苦味がある作品でもあると思うのです。しんどいけれど、超たのしい。
退廃的な中学生たちの恋模様。心の距離、身体の距離。人間は間違えてしまうものだ。彼らはそれを大きく、致命的にやらかしているだけで。
浅野いにお先生の詩的な演出も、中学生たちの青臭い物語とマッチしていると思います。
でも単に中学生の恋物語とだけ言うには、生々しさが強すぎるか。読んでいて苦しくなってくる人もいるはずだし、幅広い層が楽しめる作品ではないのでは。だからこそ、ハマる人は、ガッツリ心掴まれて動けなくなる。動けなくなるというか逃げられなくなる。
2巻はけっこう先になると思いますが、これは期待して待ちたいところ。

小難しいことはおいておいても、中学生の男の子と女の子の一見静かに暴走していく青春模様はそれだけで心踊るのです。この作品の雰囲気にはすっかり惚れ込んでしまいました。
『うみべの女の子』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
よどみと歪みに魅せられる青春。キラキラはしてないけど瑞々しい。
[漫画]悩める少女たちはどこへいく『やさしいセカイのつくりかた』2巻
![]() | やさしいセカイのつくりかた 2 (電撃コミックス) (2011/11/26) 竹葉 久美子 商品詳細を見る |
あ そうか これがわたしの初恋なんだ
電撃大王GENESISで連載中の「やさしいセカイのつくりかた」2巻です。
19歳の天才少年が女子高の教師になってしまうお話。資金の問題で研究がストップし、やむなく知り合いのツテでやってきました。
ラブコメとして素晴らしくニヤニヤできる破壊力を要しながらも、それだけじゃない深いテーマを掲げてもいて、非常に見入るストーリーとなっています。思春期とは悩むための時間だ。
2巻は新キャラを複数交えつつ展開。メインメンバーの新たな1面も見れたり。
→“才能”を巡る学園ラブコメ 『やさしいセカイのつくりかた』1巻
2巻はしょっぱなから主人公が女装(メイド)をするお話で、ドタバタコメディとしての楽しさがあります。みんなで文化祭を楽しんでる様子が楽しそう。
ただラブコメっぽいことやっておきながら、ところどころトゲを見せてくる。
葵と母親のやりとりからはそれが感じられて、どことなく不穏というか、心にひっかかりができるというか。そして2巻では、葵の動きがいろいろときになるのです。
この作品、ハルカと葵という2人のヒロインが軸になっているのですが、それぞれポジションの住み分けが見事にできています。ハルカが恋愛、葵は学問から主人公に接近していきます。
ハルカは1巻で大きく行動を起こして行きましたが、2巻のメインはどちらかと言うと葵?
『ギフテッド』・・・特定の分野において高い能力を発揮する、才能ある人間。
主人公と葵は同じギフテッド。しかしそれをどう扱うかに決定的な違いがあります。
葵はは目立ちたがりません。周囲と足並み揃えて、ふつうの少女あることを望みます。
彼女をそうさせるのは、そう縛るのは、幼少のころ向けられた周囲からの奇異の視線。
最大の理解者であってほしい実の親にすら「気持ち悪い」と言われ・・・。
自身の才能を押し隠し、ひっそりと孤高にいる女の子なのですね。
でも主人公の朝永が与えてくれる、特別な学習の機会には瞳を輝かせたりして。
彼女は、本当は今にだって自由に飛び立ちたいと思っている。
でも女自身が抱えたトラウマがそれを妨げる。葵が乗り越えていくべき壁しょう。
でまぁそういう女の子だからこそ、2巻は葵の動きが見所。
いつまでも自分を封じ込めてちゃ、ストレスがたまるというものよ。

それはひとつのプライド。表に出さない怒り。ある種の対抗意識。
「オモチャ」呼ばわりされて、なんだか黒い火がついてしまった葵です。
憤っているのは、何も当然やってきた外国人だけにじゃない。
本当の自分を閉じ込めている自分自身にだって、ムカついているのだ。
・・・でも結局うまく行動に移せなかったりして。
「前」がどちらなのかは分かってる。でも踏み出せない。前途多難だな、悩める少女。
そして彼女は、ハルカがちゃんと勇気を振り絞ったことを思い出す。
自分のやりたいことのために、ストレートに行動を起こせるハルカの姿を思って、ちょっと羨ましくなる。ハルカと葵、ふたりのヒロインの関係性もなかなか魅力的なんですよねこの作品。2巻はそれが強く見えてきて、ニヤリとさせられました。
ハルカはいつも朝永の近くにいつ葵にちょっとモヤモヤしますが、葵は心配ない(朝永先生を男性とは意識はしない)と。なんかそう言い切られてしまうのも寂しいんですけども、ともあれこれで葵もハルカの恋を応援しだします。
葵は朝永に対して、まだ強い恋愛感情を抱いているわけではなさそう。尊敬はしていそうですが、しかしなんだか芽はありそうな気がしますねえ。この先どうなっていくのやら。
1巻のころから匂わせていますが、三角関係に陥る可能性もありそうです。
さて、葵がほんのり牙をむいたシーンが2巻のハイライトだったと思いますが
他にも気になった部分はあります。例えば朝永の妹さんと弟さん(双子)。
歳相応に賑やかさを持った妹さんは可愛らしかったですが、その妹も弟も、朝永先生と同じギフテッド。特殊な側の人間です。
日本に戻ってきてからちょっとギクシャクしてしまっている兄と弟。
才能があるかどうかとか、それがどんなものなのかとか、そういうのはこの際どうでもよくて、これは家族の距離感の問題です。こいつら勉強はできても人付き合いはヘタなのだ。

兄弟揃って不器用で、でもインテリっぽいイタズラの掛け合いをして楽しみ合う様子を見てると、なんか面白い1面を観れた気分になれました。
「いつか追いついてみせるよ」というセリフは、同じく才能ある人間としてのライバル意識と、家族としての絆の再構築の意思の現れでしょうか。なんて力強くあったかいセリフなんだろう!
今はまだいろんなモノが足りないかも知れないけれど、まずはそういう目標でつながり合っていることが、この家族にとっては大切なんだろな。家族として、同じ才能ある者として、きっと強く理解しあえるであろう近しい存在なのだから。
「いつまでも置いてけぼりは嫌だものね」。兄は目標だ。追いかけて、もっと仲良くなろう。
双子の話も「才能とどう付き合っていくか」「人と人がどう近づいていくか」というこの作品の本流の中にあるエピソードでした。それに家族との絆をからめ、主人公の特殊性を再認識。
もう1件気になるものといえば冬子ですよ!ですよね!
ごく短い会話で、小野田先生に急速に心ひかれていくさまは悶絶ものでございます!

最初は困ったような恥ずかしいような申し訳ないような、複雑そうな表情をしていましたが、もうみるみると恋する女の子モードに入っていく。一連の表情の変化を追うだけでニヤニヤしますな。かわいすぎるだろーくそー。
この作品はみんな悩んでばかりですけど、女子高生の1番のパワーは恋なのだ。
がむしゃらに。自分の気持ちに正直に。堂々とお姫様になりきってしまえ。
しかし相手は学校の先生です。どうなってしまうのか!
小野田先生と冬子のこの先が気になりすぎてヤバい!
というわけで第2巻の感想でした。
この作品はキャラクターの配置が絶妙だなと感じます。ラブコメしても「才能」をめぐるちょっとだけシリアスなパートにしてもキャラがうまく動く。無理矢理感が無いというか。
でもそれが全部、多くの人が抱くであろう思春期特有の不安や興奮で、あーもーみんな青春してんな!という感じ。ほくほくしますね。
そしてみんながみんな、何らかのくすぶりから飛び出していく。
2巻は特にそういう姿がたくさんあって、作品のメッセージが染み入ります。
飛び出した先に何が待ち受けているのか、まだ答えにたどり着いていない人ばかりですが。
ただ、2巻目にしてストーリーの進みがちょいと遅いことが気がかり。
丁寧に描いてあることは間違いないので、今回は「溜め」の巻だったのかも。
とは言えこれまでに書いてきたように、この作品らしさは損なわれておらず、むしろテーマの力強さが増してきました。これからも物語を楽しみ追っていきたいですね。
この作品が面白いのは、「恋愛」という他者との関係が重要なものと、「才能」という自分をこつこつと磨いていく2テーマの共存。他者と、そして自分とどう向き合っていくか。これってきっとすごく普遍的なテーマですが、物語への組み込み方が上手な気がするのです。思春期の女の子たちをメインに回っていく物語にもバッチリ。
主人公だって先生ですがまだ19歳の男の子ですからね。成熟なんてしていません。
みんなの成長が楽しみです。やさしいセカイは、まだ遠いのかな。
『やさしいセカイのつくりかた』2巻 ・・・・・・・・・★★★☆
順調に進んできている第2巻。ラブコメ度が上がっていそうな3巻が今から楽しみ!
[漫画]「好き」が響きあう暖かな場所 『ひまわりさん』2巻
今年もあと1ヶ月ですか・・・。
ひまわりさんのことが 好きだからですよ!
コミックアライブで連載中の「ひまわりさん」2巻が発売されました。
学校のまんまえにある、古くて小さな本屋・ひまわり書房。
その店長であるひまわりさんと、彼女を訪ねやってくる人たちのお話です。
各話20ページほどで読みやすく、内容の暖かさがお気に入りのシリーズ。
12月7日までにオビの応募券で応募すると、ひまわり書房から年賀状が届くそうです。
応募者全員サービスなので皆さんも送ってみては。応募期間が短いのでお早めに。
2巻となりましたが、基本的に雰囲気は1巻と変わりません。
それは決して悪いことではなく、2巻目にしてこの安定感は素晴らしいなと。
でも1巻にちょこっと登場したサブキャラが再登場したり、賑やかさはアップ。
2巻はいろんなキャラクターの新たな1面を見ることができた内容だったとも思います。
この作品は本当に「好き」という言葉が印象的です。
物語の隅々から「好き」が溢れているかのよう。うあー眩しい。
それを1番に感じさせてくれるキャラクターが、多分主人公の女の子、まつり。
ものすっごい天然で、本を読むのが苦手なのにひまわり書房に入り浸るちょっと不思議な子。このまつりちゃんが、とにかく全身全霊で好き好きオーラを出してるもんだから、読んでいてこっちも笑顔になっちゃうのです。
彼女の「好き」は、もちろんひまわりさんという人物に向けて放たれていますがそれだけでなく、彼女はひまわりさんを取り囲む空間、つまりひまわり書房を好きになっているのですね。
それが特に現れていたなと思うのが第11話。
他の本屋さんにやってきて、「これはひまわり書房にも合った本だ!あの人が買った本だ!」と脅威の記憶力を披露したシーンです。

いつもアホの子なのになんだか様子がおかしい・・・(ひどい
これぞ好きが成せる技ということでしょうか。そんな特技があったのか・・・。
でこの後にいうセリフがまたいい。「まだ本を読むことは苦手だけれど、もっと読めるようになったら、ひまわりさんが好きな本を読みたいから覚えているんです」。
好きという思いを共有したい。もっと好きな人に近づいてみたい。
今の自分に足りないものはたくさんあるけれど、精一杯な努力をしている。そしてその努力を苦ともしてないんだろうなあ。それすらきっと楽しいんでしょう。
しかし、どんな本をおいてあるのかを暗唱できるくらいに1つの本屋さんを好きになれるというのもいいですね。自分もここの本屋が好きだ、というのはあるので。
いつだって全力で「好き」を伝える。そうじゃなきゃ満足できない。
なんてエネルギッシュでかわいい女の子なんだろうか!俺が好きだよまつりちゃん!

さて、この2巻ではかなり重要な回想シーンが描かれています。
1話完結が基本のこの作品で、3話にまたがって展開されたのが、「前・ひまわりさん」についてのエピソードです。まだ今のひまわりさんが「ひまわりさん」ではなく、普通の学生だったころのころ。(紛らわしい話ですが、ひまわりさんの本名は明かされていないのです)
先代のひまわりさんもまた、本が大好きな女性でした。

前にも出ていた話ですが、現ひまわりさんは、昔は別に本が好きということではありませんでした。それが今ではひまわり書房の2代目店長。
一体何が彼女を変えたのか。それはこの初代ひまわりさんの影響です。
彼女と過ごした日々が、今のひまわりさんを完成させたのだなと感じるお話ですね。
ひまわりさんも、前のひまわりさんの「好き」が伝染したのでしょう。ここにもまた「好き」という思いの暖かさと力強さを感じます。
この流れが現在にまで続いていることを考えると、さらにほっこり。
結末も合わせて、初代ひまわりさんを知れるこのエピソードは必見。
なんとなくですが・・・この話を読むと、もし今の2代目のひまわりさんが本屋の店長を退くなら、3代目の店長になるのはもしかしたらまつりちゃんかも、なんて思いました。
心穏やかに、でもときおりちょっと切なくなったり。
キャラクターの心の中にある大切な感情を、じっくり丁寧に描いていている作品。
ヒーリングコミックとも言えるかも知れませんね。
本で人と人がつながっていく様子は、本好きな自分としても魅力的なものです。
登場するキャラクターもみんな可愛くて、雰囲気の良さも合わせてプラスのエネルギーがたっぷり詰まってるように感じます。読み心地がいいのです。
みんながいい表情を見せてくれるのを見てると、こっちも暖かな気持ちになります。
優しい世界観なのにヤワではなくがっしりしているのも上手い。背景もしっかり書きこまれていたり、言葉のチョイスや会話テンポがいいこともここにつながっているかも知れません。
安定感というか、安心感。なんだかずっとこの漫画の世界にいたくなる。
周りへどんどん広がっていって、そのたびに前より賑やかで暖かな空間になっていく。
いろんな人が集まっては、それぞれの「好き」を表現したり、見つけたり。
ここはひまわり書房。いつもゆるゆる営業中。
『ひまわりさん』2巻 ・・・・・・・・・★★★★
「好き」がいっぱい。雰囲気がとてもいいですね。ほんわか、ぬくぬく。
![]() | ひまわりさん 2 (MFコミックス アライブシリーズ) (2011/11/22) 菅野マナミ 商品詳細を見る |
ひまわりさんのことが 好きだからですよ!
コミックアライブで連載中の「ひまわりさん」2巻が発売されました。
学校のまんまえにある、古くて小さな本屋・ひまわり書房。
その店長であるひまわりさんと、彼女を訪ねやってくる人たちのお話です。
各話20ページほどで読みやすく、内容の暖かさがお気に入りのシリーズ。
12月7日までにオビの応募券で応募すると、ひまわり書房から年賀状が届くそうです。
応募者全員サービスなので皆さんも送ってみては。応募期間が短いのでお早めに。
2巻となりましたが、基本的に雰囲気は1巻と変わりません。
それは決して悪いことではなく、2巻目にしてこの安定感は素晴らしいなと。
でも1巻にちょこっと登場したサブキャラが再登場したり、賑やかさはアップ。
2巻はいろんなキャラクターの新たな1面を見ることができた内容だったとも思います。
この作品は本当に「好き」という言葉が印象的です。
物語の隅々から「好き」が溢れているかのよう。うあー眩しい。
それを1番に感じさせてくれるキャラクターが、多分主人公の女の子、まつり。
ものすっごい天然で、本を読むのが苦手なのにひまわり書房に入り浸るちょっと不思議な子。このまつりちゃんが、とにかく全身全霊で好き好きオーラを出してるもんだから、読んでいてこっちも笑顔になっちゃうのです。
彼女の「好き」は、もちろんひまわりさんという人物に向けて放たれていますがそれだけでなく、彼女はひまわりさんを取り囲む空間、つまりひまわり書房を好きになっているのですね。
それが特に現れていたなと思うのが第11話。
他の本屋さんにやってきて、「これはひまわり書房にも合った本だ!あの人が買った本だ!」と脅威の記憶力を披露したシーンです。

いつもアホの子なのになんだか様子がおかしい・・・(ひどい
これぞ好きが成せる技ということでしょうか。そんな特技があったのか・・・。
でこの後にいうセリフがまたいい。「まだ本を読むことは苦手だけれど、もっと読めるようになったら、ひまわりさんが好きな本を読みたいから覚えているんです」。
好きという思いを共有したい。もっと好きな人に近づいてみたい。
今の自分に足りないものはたくさんあるけれど、精一杯な努力をしている。そしてその努力を苦ともしてないんだろうなあ。それすらきっと楽しいんでしょう。
しかし、どんな本をおいてあるのかを暗唱できるくらいに1つの本屋さんを好きになれるというのもいいですね。自分もここの本屋が好きだ、というのはあるので。
いつだって全力で「好き」を伝える。そうじゃなきゃ満足できない。
なんてエネルギッシュでかわいい女の子なんだろうか!俺が好きだよまつりちゃん!

さて、この2巻ではかなり重要な回想シーンが描かれています。
1話完結が基本のこの作品で、3話にまたがって展開されたのが、「前・ひまわりさん」についてのエピソードです。まだ今のひまわりさんが「ひまわりさん」ではなく、普通の学生だったころのころ。(紛らわしい話ですが、ひまわりさんの本名は明かされていないのです)
先代のひまわりさんもまた、本が大好きな女性でした。

前にも出ていた話ですが、現ひまわりさんは、昔は別に本が好きということではありませんでした。それが今ではひまわり書房の2代目店長。
一体何が彼女を変えたのか。それはこの初代ひまわりさんの影響です。
彼女と過ごした日々が、今のひまわりさんを完成させたのだなと感じるお話ですね。
ひまわりさんも、前のひまわりさんの「好き」が伝染したのでしょう。ここにもまた「好き」という思いの暖かさと力強さを感じます。
この流れが現在にまで続いていることを考えると、さらにほっこり。
結末も合わせて、初代ひまわりさんを知れるこのエピソードは必見。
なんとなくですが・・・この話を読むと、もし今の2代目のひまわりさんが本屋の店長を退くなら、3代目の店長になるのはもしかしたらまつりちゃんかも、なんて思いました。
心穏やかに、でもときおりちょっと切なくなったり。
キャラクターの心の中にある大切な感情を、じっくり丁寧に描いていている作品。
ヒーリングコミックとも言えるかも知れませんね。
本で人と人がつながっていく様子は、本好きな自分としても魅力的なものです。
登場するキャラクターもみんな可愛くて、雰囲気の良さも合わせてプラスのエネルギーがたっぷり詰まってるように感じます。読み心地がいいのです。
みんながいい表情を見せてくれるのを見てると、こっちも暖かな気持ちになります。
優しい世界観なのにヤワではなくがっしりしているのも上手い。背景もしっかり書きこまれていたり、言葉のチョイスや会話テンポがいいこともここにつながっているかも知れません。
安定感というか、安心感。なんだかずっとこの漫画の世界にいたくなる。
周りへどんどん広がっていって、そのたびに前より賑やかで暖かな空間になっていく。
いろんな人が集まっては、それぞれの「好き」を表現したり、見つけたり。
ここはひまわり書房。いつもゆるゆる営業中。
『ひまわりさん』2巻 ・・・・・・・・・★★★★
「好き」がいっぱい。雰囲気がとてもいいですね。ほんわか、ぬくぬく。