[本]だらけた日常、過激な背徳。『放課後プレイ3』
電撃4コマコレクション 放課後プレイ3 (電撃コミックスEX) (2011/01/27) 黒咲 練導 商品詳細を見る |
あなたも・・・私の物よね
1→2に空いた期間と比べると、比較的早めに出てくれた「放課後プレイ3」です。
2の時もオビに注意がされましたが、今回も同じメッセージがついております。本書は「放課後プレイ」の3巻ではなく「放課後プレイ3」。結構間違いやすいので自分も気をつけます。
「今度は戦争だっ!(恋の)」なんて大きくオビにあり、ほほうどれどれとテンション上げて読んだわけですが、・・・あーまぁ、これは後で書くんですけども。今回も色んな意味でドギツい、えぐみの強い作品になっているなぁと。
1,2の作風からかけ離れているわけではないのでこれまでこのシリーズを楽しんできた方なら問題ないですが、これまでとは結構違った方向へ展開する新境地な3。
では感想へー。
3は冒頭3回が「サディスティック」シリーズという、1の彼氏さん彼女さんたちをメインとしたエピソードが収録されています。
久しぶりに人のイチャイチャっぷりが見れて嬉しい限り。相変わらずけしからん2人!
彼氏さんのテクニックにすっかり骨抜きな彼女さんが眩しい!(みみかきですが)
と序盤はこんな微笑ましいシーンなのですが、まぁ「放課後プレイ」ですよ。しかもすでに遠慮も何もしない間柄な2人ですよ。ここから耳に舌を挿入されたりなんなりと、このシリーズらしい粘着質かつマニアックなエロスを堪能できる展開へと突入していきます。
そんなのが3の最初に収録されてしまっているので、色々麻痺しながら物語を読むことに・・・。
「サディスティック ドミネーター」は1の彼女さんと3の彼女さん(部長)のやり取りが描かれ、いじめられまくる彼女さんにこちらとしても笑みを抑えられないわけですが、同時にかなりSな部長さんにゾクゾクしてしまうのでした・・・。一筋縄ではいかないオーラが半端ない。
なんにせよ、「1」の2人が再登場してこれだけの絡みを見せてくれたことは非常に嬉しいです。
さて3の本編の話へ。
自分は漫画を読むとき、本編より先にまずカバー裏をチェックしてしまうのですが、
今回それをしたところいきなりハートブレイク。とんだ罠ですよこれは。
ア"ーーー
しかも同じくカバー裏には鏡映しのように左右反転され不安感を煽るアトガキと、レ○プされた後らしき部長さんの姿も描かれています。
これが後々に本編終盤で少し触れられる彼女の過去であるわけですが・・・おうふ。
今回の主役となる二人は、下まつ毛が特徴的で関西弁キャラな彼氏さんと、1の彼女さんの部長にあたり、図書委員でもある先輩。それと彼氏さんのいとこにあたり少女も登場。
この作品、キャラクターの名前が明かされないので文章にしたとき結構困りますねw
まぁそれはいいとして、今回も「ゲームネタを多数織り交ぜつつメインキャラがダベる」というこのシリーズの基本形式を踏襲していますが、今回は結構ライトなゲームネタが多く、ゲームに疎い自分でも楽しめました。モンハンネタとか。3rdは130時間超えたよ!正直どうでもいい。
そしてきっちりと恋愛的進展も描かれ、少しずつ高まっていく感情に戸惑いながらも、それに逆らわずにむしろすすんで流されてく感のある2人にときめくのでした。
部長さん(と呼ぶことにする)は底は見えない上にエスなキャラをしているのですが、そんな彼女が逆に彼氏さんから悪戯されて慌てるようになってくるとラブコメ的にも大盛り上がり。
55ページなんかの微妙な雰囲気もこそばゆくて良いのですが、一度陥落ちてしまってからの部長さんは顔真っ赤にしちゃってホントかわいーんですよ!
普段から余裕たっぷりな年上女性。
だからこそ、そんな彼女の混乱ぶりや乱れた様が新鮮であり、興奮する。
こんな表情が見れるのは自分だけ。この表情にさせられるのも自分だけ。
そんな倒錯した快感もあったりなかったり。・・・書いてて変な気分になってきました。
彼女のことを「おまえは俺のやろ」なんて過激な台詞を放つシーンもあり
学生らしい甘酸っぱい青春というよりは、大分サディスティックで過激な感じ。
若いからこその本能の暴走でもあるのかな。まぁそこはシリーズ共通ですけども、今回の「3」はより陰りのある変態性が見えるいうか、異常にねちっこくてにやらしい。ナイス。
しかし下まつ毛(と呼ぶことにする)のいとこの少女が物語に関わりだしてから本作はまた違った雰囲気を醸すようになります。
そしてラストで明かされる事実と、幸せムードを吹き飛ばす修羅場へ。なるほど、戦争だ。
真実は分からないけれど、部長が秘めている暗い過去も少し垣間見えます。ここでカバー裏のイラストに繋がるのですね・・・。
部長は少女に対して怒りをぶつけますが、これは過去の自分への後悔を含んだ叱責でもある。有効な手であることは間違いないけれど、それは卑怯で、狡猾で、いつか傷を生む。
登場人物みんなが、どこかしら少し狂っていた、蝕まれていた「3」。
けれどそのラストは、人間としての成長を描いたものとなりました。
シリアスな終盤になりましたが、ラストシーンの能天気さには救われました。
ラストにやや締りがないとは感じましたものの(もうちょっとラストの余韻が欲しかった)、ちょっと意外な方向に飛んで行ったわりにしっかり着地がされていたのでは。
部長さんにはきっといい恋人同士の生活を楽しんでもらいたいです。
まとめ。
黒咲練導先生は本当にドSなんだなと・・・それをはっきり再認識しました。
それは作中描かれる心情や発言・行為の内容もあるのですが、読者にもナイフを向けている。
2のメッセージ性のある物語とはまた別の方向で、ナイフをかざしてきています。痛い。
また、よく話題になるエロ描写ですが、今回は凄かったですねぇ。
下品なくらい(そこが好き)の激しい性描写ですが、行為のマニアックさがより加速していますし、3巻では背徳感のスパイスも利きまくり。ぬるぬる。とげとげ。楽しい。
平均的なエロスでは過去最高なのではと自分は思ってます。好みはあれど。
一方で「2」でも見せつけてくれたセンシティブな心理描写は今回も威力を発揮しており
ドラマとしての面白みも十分にあると言えます。えぐみはありますけどね。
このシリーズは1,2,3で少々繋がりはあるにしても独立した作品となっているため、どこから読んでも楽しめるのですが、個人的には3から読み始めるのはあまりオススメはしませんw
けれど男の子と女の子の、大分過激だけど初々しい様子にはやっぱりほっこり。
人を選ぶ作品ではあると思いますが、濃い作品なので合う人はかなり楽しめるはず。
もちろんニヤニヤできるシーンは今回もいっぱいですよ!
そして何度も言いますが、1の彼氏さん彼女さんがたっぷり再登場してくれて緒嬉しい!
4もまったり楽しみにしています。
『放課後プレイ3』 ・・・・・・・・・★★★☆
物語としてもエロとしても、かなりドキドキさせてくれた1作でした。耳責め!!フンフン
4月末には楽園コミックスで「C- 黒咲練導作品集」が発売されるようです→■
[本]大切な一瞬一瞬を、君と家族として過ごしたい。 『高杉さん家のおべんとう』3巻
高杉さん家のおべんとう 3 (MFコミックス フラッパーシリーズ) (2011/01/22) 柳原 望 商品詳細を見る |
大きな未来は君の思いのままに 小さな未来を共に語り 共に作る
31歳の独身主人公のもとに12歳の女の子がやってきて、もう随分と経ちました。
最初はぎこちなかった2人も少しずつ少しずつ絆を深めているようで。
2人を繋ぐのはお弁当。そんな「高杉さん家のおべんとう」も第3巻です。
毎話しっかりと料理をメインに物語を進めていくのですが、今回もほんのり切ないような、でも温かなエピソードが満載。色んなキャラクターが動き出してより賑やかになりました。
では3巻の感想へー。
夏!ということで冒頭カラーページには水着の久留里ちゃんが登場。
雑誌掲載時の季節に合わせた進行をしている作品なようですので、単行本とのズレは仕方ないです。でもしっかり水着姿頂きましたー!
まぁそんなことは置いときまして、今回ちょっとした騒動がありました。
ふとしたきっかけで血液型の話になったのですが、その際に温巳と久留里は実は血縁関係に無いということが発覚してしまいました。
「そういうものか」というふうにわりと簡単に受け入れた久留里ですが、温巳にとっては少なからずショッキングな出来事だったようで、かなりの動揺っぷりを見せます。
しかしそうした中で、2人は今ある自分たちの関係を改めて認識することになります。
血は繋がっていなくても、これまでこうして2人で生きてきた。
お弁当をつくって、何度も2人で食卓について。これが家族以外のなんなのだろう。
「家族」たるに必要なのは血の繋がりではなく、心の繋がりなのでしょうね。
家族のぬくもりを噛みしめる久留里と温巳にほっこりしてしまうのです!
ちょっぴりの気恥かしさと、温かな安心感。
「家族だ」と言えることは、素敵なことですね。
この温巳の表情、なんだかとても好きだったりします。
と、家族としてまた一つ強くなった2人ですが、久留里ちゃんの方は更に大きな進歩!
ひっそりと温巳に恋心を寄せているらしい彼女ですが、今回でついに・・・
ついに!本人の前で「ハル」と呼んじゃいましたよ!
これまで本人に聞こえないようにだったり心の中でだったり、こっそりと「ハル」の呼び名を自分の中で定着させていった彼女ですが、うっかり本人の前でも言ってしまいました。
しかし大喜びの温巳!大興奮の俺!照れる久留里ちゃんがもおおおおー!あー・・・
照れてさらに料理に気合いがはいる温巳も含め、この2人はホントかわいいですね!
そうそう、彼女はこの3巻でもう一つ大きな進歩をしていました。
結構かわいいはずなのに学校の友達が少ないのは、彼女の性格ゆえ。しかし学校行の2泊3日林間キャンプにて、ついにその料理スキルをみんなにお披露目することとなったのでした。
これまで上手くいかなかったので、周囲の子たちが久留里に対して話すきっかけが見つけられなかったというのも理由にあったのかもしれません。そして人気者になってしまう久留里・・・!
と思いきやお昼の弁当に××を入れてきてドン引きされ、いつも通りに戻ってしまったり。
そう言うちょっとズレた部分も可愛らしいですが、彼女にとっては今回のようなケースは珍しいことで、いい経験、というか刺激にはなったのかもしれません。その結果、やっぱり1人の方が気楽だなと感じていても。
人間としても、女の子としても順調なステップアップを重ねている久留里。
本作の鉄壁ヒロインとして、今後も目が離せない存在です。いい娘です。
まとめ。
今回も心地よく読める料理×家族な漫画でした。
今日取り上げたのは久留里ちゃんのことが多かったですが、本記事冒頭でも書いたように少しずつ作品の世界観も広がってきましたし、主要な登場人物も増えてきて賑やかになってきたと思います。
特に丸宮兄は今回で随分マイルドなキャラになってくれたなーと。
2巻で兄が初登場したときには、今のこの作品のムードを若干変えてしまいそうな気がして不安だったのですが、全くの杞憂でした。自分の思いを誤爆して伝えてしまったことや、血のつながらない弟との不器用なやりとりにはほくほくと笑顔になってしまいましたw
毎回作中に取り上げられた料理のレシピがきちんと記されるなど、料理漫画としても良い。
それと舞台が自分の現住所・愛知県であることもなんだか嬉しかったりします。
いくつか見たことある背景が出ていましたし、故郷の岐阜もときたま舞台になりますしね。
そんなわけで色々と楽しみがある作品になっているのです。
(今のところですが・・・)安心して読める作品ですし、男女関係なく広くオススメ出来る漫画。
ラストの「最後の日まで」のモノローグにチクッとしましたが、長く続いて欲しいなぁ。
『高杉さん家のおべんとう』3巻 ・・・・・・・・・★★★★
しっかりと未来へ歩んでいって欲しいキャラクター達と物語。みんなかわいいです。
[本]言葉はなくても繋がるわっか、伝わる想い。 『森田さんは無口』3巻
森田さんは無口【通常版】 3巻 (バンブーコミックス) (2011/02/26) 佐野 妙 商品詳細を見る |
千の言葉より無言の笑み
祝アニメ化!→公式HP
好きな作品がこうして映像化されるというのは、何度合っても嬉しいものですね。
3月25日のOVA発売に先駆けこの3巻では、アニメDVDやら描き下ろし小冊子やら別イラストカバー等が付いてくる豪華な仕様の限定版も同時発売しております。
しかしこの記事は通常版での更新です。つまり、ええ、限定版買い逃しました・・・!
そんな前置きは良いとして、では3巻の感想へ行きたいと思います。
と言ってもストーリーなんてあってないような日常系4コマであるこの作品。
今回もまったりと学園生活を送る森田さんたちにニヤニヤしてしまうのでした。
ちょっとえっちな話もしたくなるお年頃!
森田さんの新しい表情が見れて嬉しくなってしまいますねぇ。
また、今回も彼女にセクハラ的いじりをしまくるいとこのおねえさんも登場。
意外と自分のことには気が回らない森田さんなので、今回も結構遊ばれてしまいますw
でも第38話ではそんなおねえさんの「大人」な一面が垣間見れたり。
遊び心いっぱいな人ですが、きちんと切り替えができる仕事人。カッコいいですねぇ。
大人と言えば、自分が何気に好きなのが森田さんのご両親。
ラブラブしてると思いきや、すぐ父は浮気をして、それをあの手この手で責めまくる母。でもなんだかんだで上手く行ってるような不思議な御夫婦。
いざこざはしばしば起きても、2人は妙な信頼関係で結ばれているようで。
きっとお父さんも、本気で心揺るがされて浮気をしたケースは無いんじゃないかなと。
そしてそれをなんとなく悟っていて、でもされた浮気に納得はできない母、みたいな。
2人とも、本当に大切な人は誰なのか、大切なものは何なのか、分かっています。
そんな中での3巻のラストシーン。兄に「幸せか?」と尋ねられた森田母・由美さん。
けれど質問の答えを、あえて言葉にしない。今ある自分が、その答えなのだから。
森田(由美)さんは無口。親子揃って表情で想いを伝える女性たちでした。
見た目不安定でも、心の底ではしっかり繋がりあっている盤石の御夫婦ですねぇ。
森田父の、大人としての気遣いにもニヤリ。それを分かっている母にもニヤリ。
では森田さんの話へ。
「喋らない」ことが彼女の大きな特徴なんですが、それで影が薄いわけではなく
本人は無意識でも、彼女の人柄の良さが周囲に影響を与えていっています。
もの言わずとも行動で示す、ある意味とても素直な女の子なんですよね。
3巻で彼女が発した言葉は「な」とか「あ」とかそれくらいなんですがw
一貫している、主人公として異例なくらいなこの言葉数の少なさは、森田さんのキャラがよく表れています。これでちゃんと漫画として成立して、しかも面白いのがなんだか不思議。
それは周囲の人間がきちんと森田さんを盛りたててくれているからでしょうか(洒落ではない)。
色んな人と繋がりあっているからこそ、物静かな彼女が際立つというか。
1巻2巻とこれまでが森田さんの1人で表紙だったのに対して、今回は初めて4人揃って表紙を飾っていることも少し関係しているのかも知れませんが、これまで以上に登場人物たちが“通じ合っている”感じが出ていたなと思います。
この作品の主人公は森田さんではなく、この4人全員なんだなと。
大体どの話にもちゃんと4人ともが活躍をしますし、各キャラ掘り下げられてますしね。
千尋は程よく軽い(軽過ぎないのがポイント)今時の女の子っぽさが全面に出てて可愛い。
美樹もギャルっぽいんだけど、きちんと気配りができて凄くいい娘・・・!恋愛面が失敗続きでも全然めげていないしたたかさも面白いですw
最も森田さんと一緒にいる女の子で、2人の固い友情にもグッと胸熱くさせられるのです。
そして花ちゃんの家庭に笑顔が戻ることはあるのか・・・!気になるところですね(泣
ではまとめ。言いたいことは上で結構言ったので短めに。
ゆる~い空気で非常に安定している作品です。しんみりしたり心温まったり。
決して過激な作品ではありませんが、じっくりと女の子たちの時間を楽しめます。
ほんのり百合を感じさせつつも、とても健全。ストレートな女子高生4コマ。
笑いが得られる作品とはちょっと言いづらいですが、十分魅力的な作品です。
日常でたまに感じるかも知れない、普遍的でちょっとした感覚を拾い上げたネタもいくつか。
3巻冒頭カラーページの罪悪感で顔を赤くする森田さんとかね。痛い痛い。可愛い。
これからもまったりとした時間を届けて欲しい、優しい作品です。
『森田さんは無口』3巻 ・・・・・・・・・★★★☆
喋らないけど凄く分かりやすい女の子・森田さん。温かなムードが嬉しい作品。
[本]フルカラーで見る、ちょっと不思議な世界たち。 『惑星さんぽ』
惑星さんぽ (WANIMAGAZINE COMICS) (2011/02/11) toi8 商品詳細を見る |
ありがとう
画集のような漫画作品、toi8さんの初単行本「惑星さんぽ」です。
toi8さんと言えばライトノベルのイラストを多数手がけていたりしていたり、アニメ「鋼の錬金術師FA」で一部背景デザインを担当していたりと、しばしば名前を見かけていた作家さんでした。
今回は「季刊 GELATIN」等で掲載されていた短編漫画が一冊にまとめられたと言うことで、値段は少々高かったですが購入してみた次第。しかし、いい買い物でした。
まず表紙がいきなり素晴らしいのです。
柔らかな紙質(ビニール感ゼロ)の手触りもいいのですし、箔押しされたタイトルも高級感アリ。
しかもこのイラストは裏面まで続くロングサイズで、本から外してポスターに出来そうな程。
宇宙服を来た女性と風になびく洗濯物、という不思議な生活感を漂わす表紙ですが、続くその右側・つまりは裏表紙には、大きくそびえ立つ謎の建造物!ワクワクさせられますねぇ!
この単行本は漫画作品ですが、ここはイラストレーターの力量を見せつけられました。
内容に関してですが、短編は9編収録。うち9割がカラーでかなり豪華な一冊。
その分ひとつひとつの作品は短めで10ページに満たないものもあります。長いもので20ページを少し超えた程度で、どれもファンタジックな物語。
普通の人間(主人公)が、界の神秘やちょっとおかしな人物に巻き込まれる、という設定は一貫しており、これがテーマとして定まったものであることが分かります。
では気になった作品をいくつか紹介しますかー。
進撃の巨人!!・・・ではないですが、途方もなくデカい巨人が登場するお話。・巨人の塔
この世界の人々の生活が推測できる描写がささやかながらに散りばめられていて良いですねぇ。硬質な世界観と、その中で生きる主人公の少女の明るさが面白い。
歪な塔のフォルムも少年心をくすぐられますね。
そして目玉である「巨人」ですが、害意は無いように見えますがなぜ周期的に人間の住む土地へとやってくるのかという謎も明かされず、一切コミュニケーションが取れないということで、もはや天災みたいなものですね。
意味が分からないし、恐いし、危ないし・・・でも、なんだか心魅かれてしまうような。
そして巨人への超接近を試みる主人公。最後の主人公の情けない笑い顔かわいいなぁw
奇妙な形ではありますがある意味上手く周ってる世界。楽しそう。
1000年生きているおばあちゃんと、その孫である少年のお話。・マジョ
しかしそのおばあちゃん、不労になった歳の時点で外見が変わっていないために、見た目はまるで少女のままなのです。
当然ドキドキして身を硬くしてしまう男の子なのでした!
(クリック拡大)
孫への可愛がりからか、結構密接なコミュニケーションをとろうとしてくるおばあちゃん。一緒にお風呂とかぬふふー!自分がもう「おばあちゃん」であるという自覚を持っていて、そのために色々お世話をしてくれているんだけど、自分が外見少女であることは全く気にしておらず・・・すごく無防備。
ほかにも布団にもぐりこんできて「足の先が冷えとるぞ 温めてやろ」と脚を絡ませてくるという・・・あーかわいいー!
でもちょっと昔ヤンチャだったりで、、その頃の名残で今もたまに恐い一面を見せたり・・・
不思議と魅力のあるヒロインでしたね。色んな女の子が登場する本ですが、個人的には彼女が一番だったかも。1000歳を超えるおばあちゃんなんですけどね・・・いや、それがいい。
「絵」の力を最も感じたのはこの短編。・マボロシの中野区
突如自分以外の人間がいなくなった世界。けれど不思議の世界は変化なく周っていて・・・
舞台が実在する土地である「中野区」ではありますが、本作で登場するのはすでに変貌しきった姿。うっそうと茂る森、長い時の経過を感じさせられる無数に立ち並んだオブジェ・建造物。
(クリック拡大)
上の画像は巻末に収録されていたオマケのラフスケッチなのですが絵の密度が凄いことになっており、台詞少なくとも説明無くとも、物語の背景を思わず考え込んでしまいます。
破滅的なシチューションなのにすごく空気が緩いのもいいなぁ。
のんきにTwitterやってる神様(プリキュア実況垂れ流しで)と主人公はこの先どう生きていくのか・・・想像したくなる作品。
それにしてもこういう背景たまらないですねぇ。大きい絵で見れて嬉しいです。
まとめへ。
短編集であり、しかも絵を見せるための物語構造をしているため、ストーリー要素は薄目。
物語として語る部分はそう多くないと感じましたが、絵の力によって物語に深みが相当加えられており、絵本を読むような感覚で楽しめる作品になっているのではないでしょうか。
物語を楽しむというよりは、想像の土台を読者に与えてくれる作品かな。
もうちょっとこの世界の続きを描いて欲しいなぁという作品がいっぱいで、これは見事にこの作品にハマってしまたということなんだろうなと我ながらに感じたりw
もちろん独特の色彩で描かれた「ちょっとおかしな世界」はそれだけでも十分魅力的。
ぼけーっとページを開いて絵を眺めているだけでもかなり楽しめます。
作品によって線の粗さが異なっており、「おてつだい」なんかはざくっとした下書きの上から着色を加えていったようなタッチ。見やすいとは言いづらいですが、これも味が合って良し。
方向性が若干違うとは思いますが、「ヨコハマ買い出し紀行」とか「水惑星年代記」等が好きな方にお勧めできる一冊なのではないでしょうか。
絵にピンと来たら表紙買い大丈夫だと思います。
巻末にはポスターっぽい描き下ろしカラーピンナップ3枚収録。見る価値十分。
かわいい女の子と、かわいい男の子と、ちょっと不思議な世界のおはなし。
「惑星さんぽ」は、そのタイトルの如く、様々な風景を見せてくれる作品です。
『惑星さんぽ』 ・・・・・・・・・★★★☆
画集のような漫画。想像の翼を広げて、いろんな惑星を見に行こう。