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正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[本]フルカラーで見る、ちょっと不思議な世界たち。 『惑星さんぽ』

惑星さんぽ (WANIMAGAZINE COMICS)惑星さんぽ (WANIMAGAZINE COMICS)
(2011/02/11)
toi8

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   ありがとう

画集のような漫画作品、toi8さんの初単行本「惑星さんぽ」です。
toi8さんと言えばライトノベルのイラストを多数手がけていたりしていたり、アニメ「鋼の錬金術師FA」で一部背景デザインを担当していたりと、しばしば名前を見かけていた作家さんでした。
今回は「季刊 GELATIN」等で掲載されていた短編漫画が一冊にまとめられたと言うことで、値段は少々高かったですが購入してみた次第。しかし、いい買い物でした。



まず表紙がいきなり素晴らしいのです。
柔らかな紙質(ビニール感ゼロ)の手触りもいいのですし、箔押しされたタイトルも高級感アリ。
しかもこのイラストは裏面まで続くロングサイズで、本から外してポスターに出来そうな程。
宇宙服を来た女性と風になびく洗濯物、という不思議な生活感を漂わす表紙ですが、続くその右側・つまりは裏表紙には、大きくそびえ立つ謎の建造物!ワクワクさせられますねぇ!
この単行本は漫画作品ですが、ここはイラストレーターの力量を見せつけられました。

内容に関してですが、短編は9編収録。うち9割がカラーでかなり豪華な一冊。
その分ひとつひとつの作品は短めで10ページに満たないものもあります。長いもので20ページを少し超えた程度で、どれもファンタジックな物語。
普通の人間(主人公)が、界の神秘やちょっとおかしな人物に巻き込まれる、という設定は一貫しており、これがテーマとして定まったものであることが分かります。
では気になった作品をいくつか紹介しますかー。

・巨人の塔

進撃の巨人!!・・・ではないですが、途方もなくデカい巨人が登場するお話。

20110302194444.jpg

この世界の人々の生活が推測できる描写がささやかながらに散りばめられていて良いですねぇ。硬質な世界観と、その中で生きる主人公の少女の明るさが面白い。
歪な塔のフォルムも少年心をくすぐられますね。
そして目玉である「巨人」ですが、害意は無いように見えますがなぜ周期的に人間の住む土地へとやってくるのかという謎も明かされず、一切コミュニケーションが取れないということで、もはや天災みたいなものですね。
意味が分からないし、恐いし、危ないし・・・でも、なんだか心魅かれてしまうような。
そして巨人への超接近を試みる主人公。最後の主人公の情けない笑い顔かわいいなぁw
奇妙な形ではありますがある意味上手く周ってる世界。楽しそう。

・マジョ

1000年生きているおばあちゃんと、その孫である少年のお話。
しかしそのおばあちゃん、不労になった歳の時点で外見が変わっていないために、見た目はまるで少女のままなのです。
当然ドキドキして身を硬くしてしまう男の子なのでした!

20110302194454.jpg (クリック拡大)

孫への可愛がりからか、結構密接なコミュニケーションをとろうとしてくるおばあちゃん。一緒にお風呂とかぬふふー!自分がもう「おばあちゃん」であるという自覚を持っていて、そのために色々お世話をしてくれているんだけど、自分が外見少女であることは全く気にしておらず・・・すごく無防備。
ほかにも布団にもぐりこんできて「足の先が冷えとるぞ 温めてやろ」と脚を絡ませてくるという・・・あーかわいいー!
でもちょっと昔ヤンチャだったりで、、その頃の名残で今もたまに恐い一面を見せたり・・・
不思議と魅力のあるヒロインでしたね。色んな女の子が登場する本ですが、個人的には彼女が一番だったかも。1000歳を超えるおばあちゃんなんですけどね・・・いや、それがいい。

・マボロシの中野区

「絵」の力を最も感じたのはこの短編。
突如自分以外の人間がいなくなった世界。けれど不思議の世界は変化なく周っていて・・・
舞台が実在する土地である「中野区」ではありますが、本作で登場するのはすでに変貌しきった姿。うっそうと茂る森、長い時の経過を感じさせられる無数に立ち並んだオブジェ・建造物。

20110302194417.jpg (クリック拡大)

上の画像は巻末に収録されていたオマケのラフスケッチなのですが絵の密度が凄いことになっており、台詞少なくとも説明無くとも、物語の背景を思わず考え込んでしまいます。
破滅的なシチューションなのにすごく空気が緩いのもいいなぁ。
のんきにTwitterやってる神様(プリキュア実況垂れ流しで)と主人公はこの先どう生きていくのか・・・想像したくなる作品。
それにしてもこういう背景たまらないですねぇ。大きい絵で見れて嬉しいです。



まとめへ。
短編集であり、しかも絵を見せるための物語構造をしているため、ストーリー要素は薄目。
物語として語る部分はそう多くないと感じましたが、絵の力によって物語に深みが相当加えられており、絵本を読むような感覚で楽しめる作品になっているのではないでしょうか。
物語を楽しむというよりは、想像の土台を読者に与えてくれる作品かな。
もうちょっとこの世界の続きを描いて欲しいなぁという作品がいっぱいで、これは見事にこの作品にハマってしまたということなんだろうなと我ながらに感じたりw
もちろん独特の色彩で描かれた「ちょっとおかしな世界」はそれだけでも十分魅力的。
ぼけーっとページを開いて絵を眺めているだけでもかなり楽しめます。
作品によって線の粗さが異なっており、「おてつだい」なんかはざくっとした下書きの上から着色を加えていったようなタッチ。見やすいとは言いづらいですが、これも味が合って良し。
方向性が若干違うとは思いますが、「ヨコハマ買い出し紀行」とか「水惑星年代記」等が好きな方にお勧めできる一冊なのではないでしょうか。
絵にピンと来たら表紙買い大丈夫だと思います。
巻末にはポスターっぽい描き下ろしカラーピンナップ3枚収録。見る価値十分。
かわいい女の子と、かわいい男の子と、ちょっと不思議な世界のおはなし。
「惑星さんぽ」は、そのタイトルの如く、様々な風景を見せてくれる作品です。

『惑星さんぽ』 ・・・・・・・・・★★★☆
画集のような漫画。想像の翼を広げて、いろんな惑星を見に行こう。

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