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正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[本]半座初陣!戦う先人たちの姿に胸焦がせ 『ハンザスカイ』3巻

「アイドルA」面白いすな。
ハンザスカイ 3 (少年チャンピオン・コミックス)ハンザスカイ 3 (少年チャンピオン・コミックス)
(2010/10/08)
佐渡川 準

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   おいおい やめろやめろ 泣いたらどーすんだよ・・・

今日は週刊少年チャンピオンにて連載中の作品、佐渡川準先生の「ハンザスカイ」について。
1巻から激熱で大好きな作品ですが、先日発売したこの3巻が過去最高の大盛り上がり。
読んでる間ずっと脳汁が溢れ出て、もうどうしようかと・・・!!

この作品を取り上げるのは初めてなので、大雑把にこれまでのあらすじ。
不良として確固たる地位・そしてプライドを持っていた主人公の半座龍之介ですが
高校入学早々、空手部2年の女の子・藤木穂波に余裕でブチのめされます。
しかしこれを機に、自分を安々倒してみせた空手に興味を持つ半座。
そして無事に空手道部に入部し、不良の道から足を洗った半座は
なんとさっそく練習試合の先鋒に選抜。相手は去年の県大会優勝校・蓮城。
団体戦のメンバーに選ばれて迎える初試合!浮足立つ半座だが・・・?
そして3巻からいよいよ団体戦が本格的に始まるのです!



半座の相手は、トリッキーなステップが特徴的な選手・峰岸。
峰岸は試合の序盤、半座を「不良」と判断・切り捨てていたのですが
半座の予想外の健闘に、逆境に追い込まれてしまいます。
片や黒帯、片や白帯。蓮城としては去年打ち勝った相手。
華麗で圧倒的な自らの試合運びを期待していた峰岸ですが、ここで“変身”、「カッコよさ」ではない、もっと純粋で本能的、そして当初より目指していた「強さ」を示すために、ようやく本気モードへ!

この試合、実に面白い。
何がって、試合をしながら半座が目に見えて成長をしてくれること。
中段突きしか持っていない・使えない半座は、それを封じられてただ点を取られていくだけの試合展開に絶望しかけますが、「そんなカッコ悪いあるか」と我武者羅に繰り出したのが、まさかの上段突き。それも中→上の連突き。
驚く峰岸ですが、それは半座の先輩たちも同様。
半座にそんな技を教えた覚えなんて無かったから。
半座はただひたすら勝利を目指し続けることで、その場で瞬時に新たな自分を切り開いたのです・・・!
しかし決定打(3P獲得できるもの)を知らない半座は、残り時間に苦しまされる。
一撃で逆転しなければ勝てない・けれどそんな方法はまだ知らない・・・

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いや、あった。
それは部活での練習じゃない
「空手」との出会いの日、自らが浴びたであろう一撃。
不良な自分を生まれ変わらせた、あの清々しい一撃だ。

しかしそれに至るまでの技の流れは、半座が明らかに練習風景を想起してるのも良いなぁw
そしてその時の半座のモノローグも、これまた素晴らしい。

「つくづくあン時とは違ぇな 1人じゃ――――勝てねぇ」

このセリフの、なんとも素晴らしい高揚感・・・!
半座はこの時間違いなく、過去の自分との決別を果たした。
少なくともこの時の彼の心情的には・・・!
全編通して胸の熱くなる、ドラマティックな試合展開でしたね。
この初試合は、彼のポテンシャルの高さと思いの強さを存分に示しました。
そして初めての味わう、チームで戦う空手の面白さも。
もちろん個人戦ではあるけれど、団体戦はチームでの勝利が最終目標。
自分が背負っているものが、自分の空手だけでなくチームののプライドでもあるプレッシャー。そして後ろから自分を見てくれている・応援してくれている仲間たち・・・!
空手をやったことのない自分でも、こんなにも熱く震えることができる・・・
この試合で、心からの「面白い」を言える作品になったなと個人的には思っています。


対戦相手の彼に関しても・・・。
峰岸は半座の初試合の対戦相手。
そのためか、相手役ながら非常に丁寧な心理描写がされて試合が進行していきます。
半座の描写は当然ながら多くあるので、試合序盤は彼らの心の動きを追うのも楽しい。
そしてこの双方の心理描写は、試合後にてその最大の効力を発揮します。
半座が勝ったあと、余韻に浸る間もなく峰岸と言葉を交わすシーンです。
そして、互いに矛盾した誓いを立てる。
次やるときは(も)、俺が勝つ。
ハッとしたし、実に気持ちのいいやりとりだなぁと。
彼は「そうなるかもしれなかった半座の姿」でもあるのだ。


それとこのシーンも見逃せません。
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大はしゃぎしちゃって、で我を取り戻してちょっと恥ずかしそうな表情・・・
藤木先輩が実に微笑ましい!こういう些細なところにグッと来るw



さて熱いは先鋒戦だけではありません。
もちろん半座が飾った初勝利と、その後の峰岸とのやりとりは胸が熱くなるものですが
続く先輩たちの試合にも、同等かそれ以上に熱く、滾る。
半座が初めて見る、試合の中の先輩たちの背中。
今後の指標となるであろうその姿が、魅力的じゃないワケがない!
そして何より痺れる、先輩たる堂々とした振る舞いと、揺るがぬ意思・・・!

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先輩として、後輩たちに何を示すべきなのか・・・彼らはちゃんとその答えを知っている。
試合に出場した番場・財前・青柳・・・、実際に試合で戦った今だからこそ、半座は先輩たちの凄さを思い知る。どうしようもなく、みんなカッコいいんだ。
つか最近のチャンピオンの展開もそうですけど、作者まじで番場先輩好きそうですねw

そしてこの先輩たちの試合シーンには、 意図的でしょうが、試合イメージのビジュアル化が多いのも上手いなぁと思うし、面白い。
レベルの高いやり取りをこなす彼らの対戦を、視覚的に分かりやすく描写しています。
狩人と兎、足元の爆発、潜む虎、巨塔と砲台、舞う蜂。
こういう表現は漫画ならではで、イメージが膨らんでとても楽しめます。

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しかしこの使いどころが上手いのもこの作品のよさで
勝敗が決する瞬間、そしてそこに至るまでの身体の動きにはこのような比喩的描写はされず、しっかりと選手の動きを追うことに徹しているように思います。
最後には人間の体の動きそのもので魅せようとする作者の意図も、ここにあるのかな。
こだわりある漫画の描き方が感じられて、自分は大好きなのです。



んではまとめでも。
とにもかくにもこの3巻はまるっと激熱で俺がヤバイ。
半座といい先輩たちといい・・・とくに青柳戦はもうゾクゾクし通しw
試合前と試合後の、青柳とメンバーとのやり取りもニヤニヤしてしょうがなかったし、加えて負けた後の伊奈選手の言葉にまで痺れてしまうとか・・・。「これで更に強くなれる」ですって!もう前見据えてるってか全然ヘコんでねぇし!なんだこの漫画の奴ら男出来上がり過ぎだろ!
・・・・・・と、テンションが上がってしょうがありません。
主人公の半座も、個人的に高感度高くて良し。
2巻での中段突き特訓の時もそうですが、この3巻では試合中に技を編み出したりと、半座は技術会得が早い設定なのでしょうね。今後の彼が成長していくのか(空手の腕前も、精神面も)非常に気になるところです。
作品自体も非常に今油が乗っているのではないかと思います。
まだ3巻が発売したてで集めやすいですしね、内容は文句なし。
本誌での連載もカラー獲得率高いですし、人気高まってきてるのでしょうか。
だとしたら個人的にかなり嬉しいです。とても楽しみな連載作品です。

しかし・・・野田くんマジどうしようもねぇな。(オチ)

『ハンザスカイ』3巻 ・・・・・・・・・★★★★
テンションMAX第3巻!まだまだ伸び白ありそうなのが恐ろしくも楽しみな作品です。

[本]ほのぼの切ない、妹たちとの日常ラブコメディー。 『加納家の事情』

偶然プレイした「ほん呪! durbbing girls revival fest」が面白かった。
元気のいい貞子ちゃんとの同居物語。ノベルゲームだけど漫画的表現多いのも楽しい!
続き早く読みたいです。無料ゲームですよー。→作者ブログ。



加納家の事情 上 (マンサンコミックス)加納家の事情 上 (マンサンコミックス)
(2009/12/25)
小石川 ふに

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加納家の事情 下 (マンサンコミックス)加納家の事情 下 (マンサンコミックス)
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   今日も相変わらずの加納家です。

今日は「加納家の事情」上下巻について。
comicキャンドールにて各話6Pずつの、3年もの連載をまとめた単行本です。
最近ようやく読んだのですが、実に素敵なもじもじ漫画でした・・・!
本編と合わせて「真昼の星は見えない」が上下巻に、「耐えがたくもアツイ季節」が下巻に収録・・・そして中田ゆみ先生描き下ろし特別寄稿漫画も収録!と充実の内容となっています。
表紙とオビの雰囲気も良く、思わず表紙買いしてしまったという方がいるのも納得。俺も俺も。



父が再婚して血のつながらない妹が出来た!
なんて設定はもう聞きたものですが、しかし大好物なのはまぎれもない事実・・・!
しかも妹は1人だけじゃありません。3人も出来てしまったのです。
さてその3人、それぞれとても魅力的な女の子たちで、お兄ちゃん困っちゃったな。(え
3人の妹たちと繰り広げられる日常や、ちょっと暴走しすぎたり、絡まった感情に四苦八苦したり、決意が固まっても上手く行動に移せない・移れない・・・・・・と、
ゆる~く、それでいて時折センチメンタルが炸裂する、ほのぼの日常ラブコメ作品。
では3人の妹の紹介をしながら、ちょっとずつストーリーにも触れてみます。

○三女、るかちゃん
なぜかトップバッターるかちゃん。出番が少なかったのが残念・・・。
しかし幼いからこその天然ムードメーカー的存在となっており
物語がややシリアスな時期にでも、彼女だけはいつものような笑顔を見せてくれました。
大きな活躍は無かったにしても、るかちゃんの存在は大きいです。

上巻ではハプニング担当(?)、下巻ではクッション役として動く彼女。
特に上巻でのるかちゃんはたまりませんでしたねー!
人見知りな性格で、最初は主人公にビクビクと怯えた表情を見せていましたが
ひとたび心通わせば、人懐っこい笑顔を見せてくれるようになるのです。

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うわ――――ッ。

目覚めたら眼の前に幼女って!おい!「おはよーのチュー」って!!おぉい!!!(落ち着け
加えて「お兄ちゃんとお風呂はいるー」と全裸で突撃してくるお約束シーンも!
中田ゆみ先生によるオマケには、ブラを付けたがるゆかちゃんもあります。
ちょっと背伸びして大人のマネをしたがるのも、また良いんですよね・・・しみじみ。
いやはや、まさに「幼女の鑑」・・・Niceロリ!

○二女、ちかちゃん
中学2年でEカップとかいう反則スペック。性格もからっとしていていい感じ。
知らない男性は苦手ですが、それ以外には非常にフレンドリーで社交的。
けれど年頃の女の子らしく、恋愛面での悩みはそれなりにあるようで
時折みせる切ない表情には、思わず心動かされてしまうものです。

しかし下巻でのちかちゃんは、非常に心苦しいものがありました・・・。
冒頭カラーページでは「好きな人の好みのタイプだと、自分でもこの胸を好きになれる」
なんて、中学で出来た彼氏とのノロケモード入っていたのに、中盤であっさりフラれる。
しかもその理由というのが、彼氏からのHを拒み続けたからで。
「何のためにそのでかいおっぱい付いてんだ」とまで言われてしまった。
男性全般への猜疑心が強まり、唯一信頼できる男性として主人公にすがるようになる彼女。
失恋のショックからか、唐突に主人公への恋(と錯覚?)に目覚めてしまったり・・・。
なんだかなぁと思いながらも、頼りにされてる嫌な優越感はあるんだよな。
まぁそれは置いといて、このあたりからのちかちゃんの可愛さは脳天突き抜ける。

なんだか大きいおっぱいをつかって主人公・正を誘惑しはじめるちかちゃん。
正が部屋に戻ると、下着姿のちかちゃんがそこに!
戸惑う正が「こんなことをするちかちゃんは、嫌いだ・・・」なんて童貞臭いこと言ったら
いそいそ服を着始めて、このセリフ。

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「嫌いにならないで」入りましたあー!!
いやちょっとコレ・・・・・・かわいすぎる・・・・・・わ・・・。

○長女、ゆかちゃん
本作のメインヒロインの眼鏡っ娘さん。
妹がEカップでなぜ姉がAカップ・・・いやいや、美乳だから問題なし。
眼鏡っ娘ですがお風呂上がりのノー眼鏡Verも可愛いのですよー!
さて、彼女はメインヒロインですので当然登場回数も段違いに多いです。
本作はゆかちゃんとのイベントを主軸に展開していきます。
膨らみ続ける感情と、じわりじわりと近づく2人にキュンキュンするのです!
・・・まぁじわりじわりと言っておきながら、序盤からかなりイチャオチャしていますが。
にしたってこのシーンはちょっと大変ですねぇ・・・、俺の頭沸騰しちゃいそう。

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俺も妹にのっかられて頭ナデナデされたい。

正もゆかちゃんも、2人揃ってチャンスがあっても決定打を避けてしまう性格で
このおかげでこの作品がすばらしいもじもじ漫画となっています。
ゆかちゃんは、感情を吐き出せずため込んでしまうタイプですしね。
主人公は妄想ではいろいろやってたりするのに、実際行動には映してくれない!
二人とも、なんとなく相手が自分に好意を持ってくれていることは分かっているのです。
なのに動かない。動けない。
胸には溢れだすほどの「好き」があるのに、それを伝えることが恐い。
だからこそ、ついに動き出した時の盛り上がりはたまりません。

20101011225101.jpg (クリック拡大)

このシーンには思わず満面の笑みでガッツポーズ!
思い通じた二人はどこまで行くのか・・・!



毎話6Pずつというまったり進行の作品ですが
毎度最低1つは盛り上がりを作っている構成なので、ゆるやかながらとにかくテンポが良い。
それとヒロインたちと同居している作品なので
いい具合の生活感が作品の雰囲気の良さを支えてくれていますね。
そしてほんのり香る背徳感のスパイスも絶妙。
血のつながらない、けれど世間的にはまぎれもない「家族」への恋愛感情。
禁忌であるそれに向き合う彼らは、・・・意外とあっさりその壁を越えてしまうw
一応罪悪感はあるにしても、ラストで両親があっさり関係を受け入れてしまいます。
それでいいんかーいとも思いますが、彼らが幸せそうで自分は満足なのですよ。

ちょこちょことえっちぃシーンはありますが(乳首登場頻度高し)
それ目的に読むには弱いかなと思います。というかそういう人は他当たりましょうw
ほんのりのんびりラブラブちょっとエッチ。そういう作品です。
上下巻で集めやすく、ハッピーエンドで終わってくれるので読みやすい!
幸せな気分に浸りたい方にお勧めしたいです。



それと特別収録されていた「真昼の星は見えない」が何気にツボでしたw
なんでこんな地味女と・・・なんて悪態をつきまくっていた男が
だんだんと彼女の魅力にやられていく連作ショート。男性がかわいいw
最初は身体で交わることで感じていた正体不明のエネルギー「コスモ」が
ついに何でもない彼女の笑顔にまで感じてしまうようになってしまいます。

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ちょっとおバカなノリなのですが、ほっこりできるいい短編漫画でした!

『加納家の事情』上下巻 ・・・・・・・・・★★★★
存分にジタバタできるもじもじキュンキュン漫画。
笑顔花咲く楽しい時間は、僕たち家族の日々は、今日も明日も、その先にも。

[日記]サカナクション初武道館ライブに行ってきたよ!とか

えー、つい先日10月8日に行われました
サカナクション武道館ライブ、SAKANAQUARIUM 21.1(B)に参加してまいりました!
サカナクション、初の日本武道館「あと5回くらいやりたい」
サカナクション、1万1000人を酔わせた圧巻の初武道館

しばらく漫画の更新ばかりになっておりましたが
先日せっかく良いイベントに参加しましたので、これについて久しぶりの日記的更新でも。
どうでもいいことつらつら書いてるだけなので、退屈な記事です。

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旅行や受験等で東京は行ったことはありましたが、
実はたった1人で東京を自由にまわる時間が得られるのは初めてで
非常に楽しい時間を過ごすことができました。

往復で1万行かないという安い夜行バスで行くことにしたのですが
朝6時に新宿西口に放り出されてしまいました。(しょうがない
なのでごはんを適当に済ませて、お昼までは漫画喫茶で時間をつぶしておりました。
「声優かっ!」は気にはなっていましたが読めていませんでしたので
チェックできたのは幸運だったなと。面白かったので今度買いたいです。
PCやって漫画読んでってやっていたら簡単に時間はすぎてしまって
お昼からは約束していた人とZINにて待ち合わせ。
途中もうお一人とも合流し、二人の後ろをこそこそ付いていきながら
とら・ゲマズと買い物し、お昼もご一緒させて頂きました。
ネットでもお世話になっていましたが、実際に会って話してみるというのは全く感覚が違うもので、オフ会などというオサレかつリア充感溢れるなイベント等にこれまで縁が無かった自分は、もう緊張しきりで・・・。
しかし、本当に楽しい経験でしたね。
お世話になりましたお二人には、ここでもお礼申し上げます!
・・・まさかリアルで対面することになるとは思ってなかったので
ツイッターで好き勝手変なこと書いてきたのは失敗だったなぁと・・・w
いや、うすうす「穴」ネタは来るのかなーとは思っていましたけども。

そしてついに「おたくのヨメちゃん」をゲットしたのでした。やったー



新宿を離脱し向かうは武道館です。
グッズ販売が午後3時からでしたのでひとまず目当てのものだけでも確保をと。
雨TのLと、お馴染み骨ロゴタオルのアクア、武道館カラーのストラップを購入。
当たり付(メンバーサイン入り手ぬぐいだとか)のサカナ缶も魅力的でしたが
やや残念な軍資金で臨んでいたので自重。
グッズ購入のあとは荷物預けるロッカーを探して駅をうろうろしてました。
そして18時開幕!
自分は2階西スタンド席の前方。実際にそこに着くと、かなり見通しよかったです。
2階でもメンバーの動きをしっかり見ることができました。
それと自分はこんな大きなキャパの会場でのライブは初めてだったので
見渡す限り人間!なこの状況で、みんな1つのバンドの音楽を聴きに来てるんだなと思うと、なんだか凄いレアな体験できてる感じでとても嬉しくもありました。
ちなみに俺の席には制服姿の女の子が座ってました。学校帰りっぽい。やったね。



19時、ついに開演。
照明が落ちるとステージ後方ディスプレイに、「雨降る夜」のイメージ映像が。
暗闇にまっすぐ縦に落ちていく雨・・・そしてカメラの角度が変わっていき
まるで武道館上空からその雨が降り注ぐような形になって、会場ズームアップ。
最初の映像からオープニングナンバーは予想出来ていましたが、
やっぱりサカナライブは「Ame(B)」で始まるのが最高に気持ちいい!
自分はこれでサカナクションのライブは3度目でしたが
続く「ライトダンス」「セントレイ」から「Klee」までの展開は凄かった!
怒涛のロックナンバーの連続に、前日の体育で筋肉痛な俺はすでに限界を超えました。

短めなMC(歌詞が一部飛んだことなどをネタに挨拶)を挟み、
始まったのは1st曲「フクロウ」、シンシロツアーの時名古屋のライブでも聞きましたが、ライブでのこの曲はサビでの盛り上がりと全体的な瑞々しさ(イントロのコーラス等)がより強調されたようなアレンジで素晴らしい!まぁ会場で生で聞いてるからってのもあるかもですけど、そういうのがたまらない曲。
さらに「涙ディライト」が来て、「アンダー」と来たならもちろん次は「シーラカンスと僕」!
「kikUUiki」で一番好きだったりする曲なので、この選曲・流れは大興奮w
そして2ndインストのマレーシア32。これは生で聞くのが初めてだったので嬉しかった。
「Paradise of Sunny」ではもくもく立ち上がるスモークと、その中にシルエットとして見えるメンバーの姿がカッコよかった・・・!掴みどころのない展開のように思えて、実はキメる場面は多い曲なんだなぁと見ていて思いました今更かよ・・・。しかしこの曲の電子音は爆音すぎますw

さて、ここで一番のサプライズ、新曲発表!
曲名は明かされませんでしたが、イントロ~Aメロはなんとなく三日月っぽい感じでしたね。
しかしサビでは一気に熱量満点の高音が飛び出し、華も十分!
「つらーいつらーい」はやたら耳に残るメロでした。シングル化は決定済み?
ボーカル・山口さんのギターストロークに合わせて照明がジャキジャキ入れ替わる間奏シーンに痺れまくり・・・!なんだこれーと!!このライブ、全体的に照明やレーザーを非常に上手く使った空間演出がされていてまじ恍惚。これだけ見てても楽しめそう!
そしてその魅力は次の「ネイティブダンサー」でも炸裂。



ライブでの定番で、歌われるたびに緑のレーザーが会場に踊るのがなんとも幻想的な曲。
しかし今回はそのレーザーが、上に張ったPV映像のアレンジにも使われていました。
↑の靴で光っている部分が、緑のレーザーでギュイギュイ浮かぶ特別仕様。
どうなってんのあのレーザー器の動き・・・。
難しい手拍子も、なぜか武道館の大舞台で完全再現w観客すげーw
そしてこのあたりからやや縦ノリっぽい展開(?)へと移っていきます。
「インナーワールド」「サンプル」は予想していましたが、武道館で聞ける喜びは大きい!
続く「三日月サンセット」では思わず半泣きに・・・!一応サカナとの出会いの曲です。
ライブでは原曲とはかなりちがったアレンジのイントロで始まりますが
今回もあの気持いいうねりが聞けて嬉しかったです。
そしてこの曲でまた歌詞が飛んでましたね。途中ラララで突破していましたw
そろそろ結構な曲数やったよなーと思ったところで、
恐らく終盤の大盛り上がりとしてのセトリに突入。
「アルクアラウンド」「アイデンティティ」の連続は、俺の脚を完全に殺すつもりの展開だったのでしょうか。2階席なのに大きく跳ねてすいませんでした!
「アイデンティティ」のバックコーラスはもちろん観客も参加。
腕を大きく振りながらの「ラララ」大合唱は、やってる自分でも鳥肌・・・!!
そして「enough」で、しっとりとメンバーはステージを降りて行きました。

・・・んでアンコール。
MCが少なすぎるwと思ってたので、ここでたくさんしゃべってくれて嬉しかったです。
アンコールでやった曲は、なんとなく秘密にしたいので、感想はここらで止めますか。
(一番上に張ったナタリーさんの記事にセトリありますけどね)
しかし、エンドロールは感動的でしたね。
無茶苦茶上手いなーと思いました。そして笑ったw



歌詞が飛ぶアクシデント等もありましたが、個人的には大満足のライブでした。
聞きたいと思っていた曲も大体聞けましたし、新曲披露はたまらなかった・・・!
観客も、各々のスタイルで音楽を楽しめているようでした。
こんな気持ち悪い男がテンションあげて腕をブン回してる横で
ゆったり体をゆらしていた女子高生まじクールで素敵だった。
会場全体の男女比は綺麗に半々と言ったところでしょうか。もしかすると若干女性多め?
年齢層は、自分のまわりもみんな特別若いという感じではなかったし
えっ、大丈夫なの?と失礼な心配をしてしまいそうなおばさんおじさんもいたりと
過去2回のライブ参戦では見かけなかった客層もちらほら。年齢層はやや高め?

2階席の自分でしたが、全然に気にならないまま楽しむことができました。
しかし個人的な考えですが、やはり自由に動けない指定席会場は
サカナクションにはやや合わないかなぁと。もっとゆらゆらうろうろしたい!
しかし音は良かったなぁ、流石は武道館?

そして、サカナクション山口一郎さんが、
「ライブでありコンサートであり、ショーでもある」と言っていましたが
なるほど、「ショー」という表現は自分の中でもピッタリだったと思い舞います。
様々な方面で「エンターティメント」を楽しませてもらいました。

会場を出るとそこには、スポンサーや友人たちからの花束が。

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ホント野球熊さんと仲いーなw



武道館を後にしたあとは再び新宿へ。
せっかく東京来たんだからなんかお土産でも買うかーと思ったのですが
すでにほとんどのお店が閉じられていたので断念。
まぁたくさん漫画を買えたので、それがお土産ですよ。読むぞー。
23時30分くらいにバスに乗り込んで魔都・東京を離脱しました。
朝早くから0時ちかくまで、非常に実りある時間を過ごすことができましたね。
いい1日でした。はい。


なんだかこれだけだと味気ないので、新宿で一番ビビッと来たスポットを曝します。

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(※今回のオチ)

[本]青春は走れ!オムニバス青春学園ストーリー。 『むすんでひらいて』1巻

東京行ってきます。サカナ武道館!
むすんでひらいて (1)むすんでひらいて (1)
(2010/07/14)
水瀬 マユ

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   もう少しだけ 好きでいさせて

「EDEN&ブレイドコミックアーカイブ」にて連載中の恋愛オムニバス漫画。
EDENが始まったときに第一話を読んで注目していたんですが
予想以上に発売まで時間がかかりまして、7月にようやく1巻が発売しました。
それにしては更新するの遅いじゃねーかという感じですが・・・・・・。
・・・さて、この1巻では第4話までを収録。
オムニバス形式なので、それぞれについて書いていってみたいと思います。

第1話 泣かないで センパイ!

登場シーンからパンチラを決める優等生な先輩、朝木先輩がヒロイン。
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男性恐怖症の彼女と、どうすれば距離を縮められるのか!
悩む主人公・広呂ですが、残念なことに彼は馬鹿ですので不器用なことしかできず・・・

「むすんでひらいて」のオープニングというわけで
内容は非常にストレートな、全力疾走の気持ちのいい青春漫画です。
(まぁこの漫画、どれもベタなんですけどね。それが良いのです)
主人公が暴走君なので、きもちよーくストーりーが転がっていきます。
そして恋心に浮かれっぱなしの広呂が、初々しくて可愛いのです!
ヒロインである先輩が結構絵的にサービスしてくれるのも嬉しいですね!ニコニコ

しかし、この1話だけではヒロインをやや描ききれてない感じも。
もうちょっと描写があればよかったですが、すんなり終わって2話で主人公チェンジ。
未来での発展を大きく望めるラストとはいえ、
もっと先輩の赤面をくれ!を叫びたかったのは確かです。
まぁ、これでこのペアとはさよなら、では無いので2巻以降の彼らに要注目!

第2話 “ヒミツノート”のひみつ

「ぬらりひょんの孫」の椎橋先生も射抜かれちゃった第2話。
主人公は1話主人公広呂の親友、明智。
彼のような、いわゆる情報通キャラが主人公になるのってあまり無い気がします。
ちょっと新鮮な感じですね。
そしてこのヒロインが個人的にストライク。

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扉絵の時点でこのオーラ・・・・・・!!

引っ込み思案で他人の顔色を窺ってばかりの、小動物のような女の子、牧原さん。
女子のデータ採集を趣味としている明智。彼女のデータを採るため近づきますが
そこで偶然、彼女を秘密を知ってしまいます。
彼女が、漫画家を目指していることを。
けれどそれはいまだ夢のような単なる憧れで、まだ行動に移せていない。
そんな彼女にアドバイスをしていく中で、明智の心に少しずつ変化が・・・。

牧原さんの成長のカタルシス、終盤の疾走感ある展開、そして牧原さんの可愛さ・・・と
個人的にはこの話が一番好みでした。特に2人で自転車に乗るシーンは、俺ほにょほにょ。
教室での告白は、彼女の精神面の成長が目に見えて分かって、非常に爽快でした。
こんな風に自分を夢を語れるなんて、随分強くなったなぁw
そして最大のキモは、家に帰ってから1人で思い出しニヤニヤをする明智君!

彼女の成長は明智のおかげで。そしてそれは彼女が一番よく分かっていて。
だから言ったんだ。
彼から貰った勇気で、彼への想いをこめて。
「私のこと、明智くんに、見ててほしいです」

恥ずかしいわ!!!
あと何気に「他人の顔色窺ってやりたい事をやらないなんて変」は明言。ビビッときた。

第3話 片恋 幼なじみ

明智君モテモテ回。
第2話でちょろっと出てきた明智の幼馴染・夏。
ヒロインは牧原さんの話を読み終えてこの第3話を読むと、複雑気持ちになりますね。
しかし予想を上回る、『上手い』落とし所を見つけてくれました。

昔から明智のことを知っている彼女だからこそ、最近の明智の変化は分かっている。
そしてそれで自分が動揺しているのを、理解したくないけど理解せざるを得ない・・・。
うっすらと想像は付く。
明智は牧原さんが好きで、牧原さんも明智が好きなんだろうって。
ずっと隣にいたはずの明智が、なんだか遠くに行ってしまったみたいに思えて
いつも通りの自分でいられない。イライラする。
本当に心苦しいけど、こういうのも結ばれた恋の2面性だよなぁ。
彼女の恋は、彼女がそれをはっきり認識できる前に、終わってしまった・・・?

彼女は、明智が牧原さんと仲良くなる前から、自分の恋心を認識してたのだろうか。
これは明言されてはいませんが、恐らくこれは非常に曖昧な問題だったんだろう。
身近すぎたせいで、家族としての愛情と異性としての愛情が混ざってしまって、彼女自身その境界を理解していなかったし、恐らく理解する必要がなかったんだ、今までは。
ずっと今の関係が続くんだろうって、どこか安心しきっていた部分があった。
残酷だけどその「甘さ」が、こういう結果になってしまったのかなぁ。

けど、だからと言って黙っていられる女の子じゃないのです。
グシャグシャになった自分の気持ちを、なんとかカタチにしたくて。
あのバカに、思い知らせてやりたくて。

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胸が熱くなる展開ですが、うあぁ、悲しいことに、遅すぎた。
この恋を叶えるには、この勇気は手遅れだった。
・・・でも、まだ終われない。
見込みなんてなくても・・・すぐにこの気持ちとバイバイなんて、出来ない。

幼馴染スキーとしては、かなり心苦しい展開。
しかし嫉妬まみれになるでもなく、真正面からぶつかっていった夏ちゃんは
やはり、幸せな未来を迎えて欲しいなと心から思うのです。
後味もよく、僅かなドロドロムードをさっぱり断ち切ってのラストも秀逸。
爽やかながら、ほんのりビターな味わい。
こういうのも、青春漫画の良さだなあ。

第4話 片恋連鎖

2連続でビターラブ(?
主人公は広呂の友人グループのイケメン君・西野。
クールな彼も、また熱く切ない恋をしちゃってたりするのでした。

「勝ち目のない恋愛はしたくないね」なんて零しながら
達成感を味わって清々しい顔をしてる西野君に、なんだか自分もキュン。
そういう感情から一歩引いて、達観している彼だっただけに
この表情は、なんとも味わい深いのです。
自分から恋を終わらせることを選んだことで、西野君は確実に一歩進めたんだろうし、
この結末はベストだったように思う。
西野君は本当にイケメン。
イケメンは心までイケメンでイケメンです。よく意味が分かりません。
離れていく先生を見つめる西野君の、あの無垢はほほ笑みはやられますよ。

それで、3話と4話のやりとりを見ると、西野と夏がくっつく展開も、無きにしも非ず?
20101006220603.jpg
彼女の言葉は、西野君を動かす一番の要因になりましたしね。
ただなぁ、言い方悪いけどなんか仲間内でとっかひっかえって感じでそれも違和感。
まぁ夏ちゃんが笑顔でいてくれれば俺はいいんですが。
西野君が今後メイン描かれることがあるなら、そのポジションに注目したいですね。



まとめ。
甘くも切ない、それぞれのラブストーリーがじわじわ染みてくる一冊です。
毎話必ず誰かが全力疾走するのもいいなぁ!青春は走れ!!
それと各エピソードの主要キャラが少しずつ繋がっているのも面白い。
微妙に絡み合いながら、どんどん新しい物語を紡いでいって欲しいですね。
そしてなんと言っても女の子がかわいい。
今後はどんなヒロインが登場するのでしょうか、非常に楽しみなのですよ。

『むすんでひらいて』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
期待の青春オムニバス第一巻。明智君を巡る女の子2人はどっちまじかわ。
ネットでの連載ということで、気になる方はすぐに読むことができます→

[本]女神が見つめる未来の街。“創られた幸福”の是非。 『スキエンティア』

実家の猫が3匹になっていた。
スキエンティア (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)スキエンティア (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
(2010/01/29)
戸田 誠二

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   みんながんばって、幸せになるんだよ

戸田誠二氏のオムニバスSF作品集「スキエンティア」。
近未来の日本を舞台に繰り広げられるSF短編全7作が収録されています。
「ロボット」「クローン」といった王道な題材から、「媚薬」「ボディレンタル」などはっと気を引き付けられるタイトルが並んでおり加えてオビがとても魅力的だったので購入。

禁断の科学×ヒト 深いところに灯がともり、涙が・・・溢れる。

科学によって変わるもの、変わらないもの。
科学の力で創られた、人工の幸福。
人間は未来においても『人間らしく』いられるのか。
深いメッセージが込められた、いい短編集だったと思います。
長くなりそうなので今回は内4作について。

ボディレンタル

「世にも奇妙な物語」でドラマ化された作品。
主人公は閉塞した現実に疲れ、自ら命を絶とうと計画をし始めた女性。
ある日「自殺志願者募集!」というかなり怪しい広告を見つけた彼女は
最後の最後に人の役にたてるならと応募し、審査に合格。説明を受ける。
仕事内容は、ボディレンタル

依頼主はおばあちゃん。若い体で、もう一度バリバリ働きたいとのこと。
おばあちゃんと生活を共にするうち、徐々に変わっていく主人公が気持ちいい!
やたらエネルギッシュなんですよね、おばあちゃんw
そして作中にて主人公は「前の私と顔が全然違う・・・」と驚きましたが、
前半の主人公がほんとにのっぺらぼうなのに対して輝きある表情が対象的。
同じ人間なのに、心の持ちようでどれだけでも雰囲気は変わると言うことすね。

仕事だけに生き、しかし志半ばで働けなくなったおばあちゃん。
ボディレンタルをしてから若い体を手に入れた彼女は、人生で培ったテクニックを惜しげなく使い、僅かな期間ですぐさま社内で大活躍。愛すべき「仕事」を満喫。
しかしなにごとにも終わりというのはやって来るもので・・・・・・最後の日。
叶わなかった初恋。仕事の犠牲にした、日常の幸福。
仕事だけじゃなく、それらもほんの少し手にして、ボディレンタルは終了。
主人公からしてみれば、ある意味、目を背けたくなるほど残酷だよなぁ。
自分の中の他人が、それまでとは自分からは想像つかないほど成功していく。 
けれどそれで卑屈になるんじゃなく、「ならば自分も」と奮い立てたから素敵だ。
彼女はもう、十分強い人間ですよ。
おばあちゃんの強い生き様を見つめ続けた彼女なら、幸せな未来も待ってるさ。

クローン

交通事故で夫と娘を亡くした母。
たった1人この世に残された彼女がすがったのは、最新のクローン技術。
そして手に入れた『創られた幸福』は、娘のマナミそのままの姿で成長をする。
しかしかつてのマナミに近づき、そしていつかはオリジナルを追い越し成長を続けていくであろうクローン体・ヒロミを見つめる母は、複雑な想いを胸に抱えたまま・・・。

胸の中にあるヒロミへの罪悪感と、薄れていくマナミの存在感。
癒され救われ、傷を忘れていく、自分。
幸せになって良いのだとしても、忘れてはいけない傷もあったはずなのに。
ヒロミに少しずつ塗り替えられていく、記憶の中のマナミ。
けれどヒロミはまぎれもない人間で、クローンであることも本人は知らず、もちろん罪があるはずもない。問題なのは事実を知り、そして彼女の母である自分の気の持ちようだけ。
けれど割り切ることなんてできない。
マナミが死に対しまだ納得できていない部分は、どうしてもあるから。

このお話は、映画等でも耳馴染みのある『クローン』が主題。
それだけにこの話題は考えやすく、かつ現実にすでに成立もしている技術ですので、その感覚的リアリティは他の作品と比較しても群を抜いているなぁと。
『クローン』はオリジナル体と完全同一な存在に成長するというわけではない、という設定もよくありますが、嫌らしい一ひねりだと思いますね。
本物そのままだったら、気に悩むことなんてないのに。
まるで同じような外見で、少しずつ少しずつ見えてくるわずかな動作の癖・性格の相違。
嫌が応にも・・・ヒロミとは違うんだと思い知らされる。
どこで折り合いをつけるか、そして娘のクローンを、娘同然に愛せるのか。
愛せたとして、それが死んだマナミの面影を重ねただけかも知れない。
その愛が、まっすぐヒロミ自身と向き合えた結果としての愛だと、自分でもよく分からない。
別にそれでもかまわないかもしれない。けど、なんか・・・なんか居心地悪いでしょう。
当事者の倫理観に、非常に繊細な問題を投げかけてくる話ですね。

終盤の観覧車のシーンは、自分も涙がほろり。
創られた幸福にしがみつくしかなかった母と、無垢な娘。
このラストが伝えることは、中々感動的。
創られた幸福は、人によってはぬぐいきれない違和感・罪悪感を残す。
そこから真の幸せを掴むには――その方法は、恐らく自分たちの今いる現代と変わらない。

ロボット

個人的にイチオシな短編はこの「ロボット」。
これもまた、読む人になにかを問いかける内容となっています。
「ロボット」ということで、『創られた』という特徴がより顕著な存在。
彼らと、人間はどのように生きていくべきか。この物語はそんな疑問を投げかける。 

ガンが見つかり、余命数年と申告された男性。
身寄りのいない彼は、ロボットのパートナーを得て、残り少ない人生を歩むことにした。
外見は人間そっくりの、優しい笑顔を見せてくれる女性型ロボット・ナオ。
普段の生活の中での細かなサポートや、体調が悪い時の看病もしてくれる。
ずっと自分のそばにいて、温もりをくれる存在・・・。

ロボットとどう共存していくべきなのか。
主人公はこの問題に、はっきりとした答えを出している。
「全く新しい人と、新しい生活をしようと思ったんだ。」
余命幾ばくかの主人公が口にした言葉。
なんでもないように流してしまいそうになってしまいましたが、これが凄い。
こんなにもさらりと、ロボットであるナオを「人」と呼んだ。
人として彼女を捉え共存することを、彼は最初から決めていたのだ。
そしてこの直後の、無言のままのナオの表情も・・・・・・、いやこれは深読みしすぎかな。
とにかく、こういう答えを出してくれたこの作品が描く未来は、とても魅力的。

物語的には、簡単にラストの予想が出来るシンプルなつくり。
というか読者を裏切ろうなんて全然考えていない、とても素直な展開。
しかしだからこそロボットと、彼らと共に生きる人間との関係の、ある意味理想的な形であるラストシーンが非常に染みる。理想的かどうかは、読む人によるかなぁ。
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空に舞うあの人の欠片を、その向こうのスキエンティア・タワーを見ながら
ナオは何かを想ったのだろうか。想えただろうか。
彼女はロボットで、作中では彼女の心理描写やモノローグはない。
けれど、目をつむるでもなく、まっすぐと空を見続ける彼女の瞳には
何か深い想いがあるように感じてならない自分。

覚醒機

30歳、フリーターの主人公・相澤。
ミュージシャンになる夢を追い続けるも、上手く行かない現実に徐々に追い込まれていくが、自分と似た境遇の友人・田島から『覚醒器』についての話を持ちかけられる。
脳を一気に活性化させ、まるで神のような圧倒的能力を得られる技術。
しかし命を燃やすような全能の反動として、寿命は7、8にまで縮んでしまう。
活路の見出せない現状のまま、必死にもがき続けるか・・・
この技術に懸け、何が何でも自分をこの世界に認めさせるか・・・
葛藤の末、相澤はこの話を見送った。愛する女性がいたのも大きいかも知れない。
けれど田島は勝負をした。
大型新人としてメジャーデビュー、年に何枚もアルバムをリリース、そのどれもが大ヒット、内容も文句なし・・・田島は、『覚醒器』で夢を叶えた。
その一方で相澤は背水の陣で臨んだオーディションでも何の足がかりもつかめず、審査員から優しく、プロを諦めることを勧められた。夢は、断たれた。

サラリーマンになった相澤。
結婚もして子供もできて家庭は円満。音楽は、趣味として続けていた。
そんな彼の前に、時代を揺るがす大人気を獲得した田島が現れる。
夢を叶えた田島と、夢を諦めた相澤。
しかし田島が放ったのは、意外にも後悔の言葉だった。

20101002115624.jpg

この後、田島は最初で最後のツアーを成功させ、音楽家として最高の評価を残して
覚醒器の反動で、この世を去った。

人生観なんてそれこそ人それぞれで、自分がどうこう言えるものではないけれど
田島が、夢を諦めなんでもない生活を送る相澤を、「お前は偉いよ」と褒めるシーンは
なんとも言えない感動というか、感慨深さがありました。
この『スキエンティア』という作品は、科学技術による人間の「幸福」を問う作品。
そして『覚醒器』は、この最後に収録された作品です。
けれど意外にも、科学によって創られた幸福を、登場人物に否定してみせた。
紹介したもの以外の短編でこの方向性を示したものもありましたが、最後でも来たか。

しかし、科学の全てを否定しているわけでもない。。
否定されているのは、科学に頼り切り、歩みを止めてしまった人間たちだ。
この作品は、「みんながんばって、幸せになるんだよ」のセリフで幕を閉じる。
頑張らなきゃ、幸せにはなれない。
結局のところ、どんなに世界が便利になったとしても
人間が人間らしくあるのに大切なことは、あんまり今と変わらないんだなと。




以上、長くなりましたがさくっとまとめ。
全7話、250P以上ある単行本でボリュームはあります。
内容はリアルで切実で、優しい作品が多いです。
毒が利いているのもありますが、どれもが素敵なヒューマンドラマでした。
「媚薬」「ロボット」が個人的にストライクでした。いい未来じゃないですか!
女性キャラの顔立ちがみんな似ているのは、まぁ慣れてくださいとw
しかしド派手な展開や華やかさはあまり無い単行本なので
そういうのを期待してしまうと、肩すかしをくらってしまうかも。
未来を描いてはいますが、風景的には全然現代と変わっていませんしね。
しかしほっと笑顔になれる、素朴で良い短編集だったと思います。
自分が生きてる間に、こういう未来になったら楽しいだろうな。

『スキエンティア』 ・・・・・・・・・★★★☆
「世にも奇妙な物語」が好きな人には合うと思います。
未来・幸福・科学・人間・・・いろんなことを見つめなおせる作品。

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「さざなみ」と読みます。
漫画と邦ロックとゲーム。
好きなのは思春期とかラブコメとか終末。

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