[本]秘密のカイカン・・・傷だらけの僕らの思春期。 『R-中学生』1巻
学祭です。大変だーい。
誰にも言えない僕のフェティシズム
前回の更新で触れていたのに、そういえばこの作品で更新していなかったなと。
そんなわけで今回はゴトウユキコ先生の「R-中学生」。
毒々しさとほんのりインモラルなムードを醸す表紙からインパクト強いですが
内容もなかなかに酷いものとなっています。もちろん褒め言葉です。
単行本のカバーには「このマンガにはバカくさいシーンやちょいエロな表現が含まれています」と書かれておりますが、この1冊でそれらを本当に目いっぱい味わえるようになっているかなと。思春期全開!
この1冊には6つの話が収録されており、そのどれもがイタ気持ちいい青春作品。
今回は内3話について書こうかなと思います。
こういう1話完結ものの作品は記事が書きやすいですねー。
しょっぱなから普通じゃない物語と作者のセンスに圧倒される、渾身の1作。
この作品で第60回ちばてつや賞ヤング部門大賞を受賞したようです。
主人公は中学生の伊地知くん。人には言えない特殊性癖持ち。
彼はこっそりと、ゴミ袋を開けて臭いを嗅ぐ。中身は女子トイレのアレやコレや。
伊地知くんは女の子の汚物に性的興奮を覚えるのだ。
そのむせるほどの異臭をいっぱいに味わって恍惚の表情。まさに変態ですね。
しかしそんな秘密の日々は、ある日唐突に崩れ去る。
一年の女子に、女子トイレのゴミの匂いを嗅いでいるところを見られてしまったのだ。
逃げ出す女子を追いかける伊地知君。しかし女の子は生理中だったのか、走るにつれて脚元から血が滴る・・・のを見て全力勃起の伊地知君。もうやだこの中学生。
そうしてなんとかその女子を捕まえて、ズバッと言って見せた伊地知君。
「君のナプキン、僕にくれ」
早くこの中学生を止めろ。
こんな感じでダメダメな伊地知君ですが、なんとこの後その後輩と交際を始めます。
その女の子・小林さんは彼のために、自分のナプキンをあげ続けました。
彼女はわりとそういうアブノーマルな方面には寛容・・・というか、受け入れてあげようという努力と包容力がある女の子。いい娘ですなー・・・(?
面白いのは、彼女がショックを受けるのはそんな変態的な伊地知君の姿ではなく
自分とじゃなく、友だちを楽しそうに笑う彼の姿だったこと。
自分でいるときよりも楽しそうな笑顔が、遠く離れたところにあるのだ。
そんなありふれた、普通の理由で、彼女は傷ついた。
作中で描かれていることに限定してしまえば、彼氏彼女としての伊地知くんと小林さんはナプキンという到底普通とは言えないアイテムでのみ繋がっていて、それは他人には通常見せることのない点だからこそお互い妙な信頼感で繋がっていたのだと思う。
秘密の共有というのは、優越感やらなんやら、確かに素敵な感覚があるはずだ。
けれどそれは結局伊地知くんに小林さんが応えてるという形ばかりで
あまりにもバランスが悪い関係だった。
だから、案外すぐに2人は崩れ始めてしまったのかな。
小林さんからすればあまりにも手応えの無い、といったら意味がおかしくなるかも知れないけれど、恋人でいる意味が分からなくなるほどには、伊地知くんは自分しか見えてない。
掛け合いというのは、自分と相手がちゃんと向き合えてないと成り立たない。
小林さんの向かいにいる伊地知君は、彼女じゃなく彼女のナプキンばかり見てる状態。
うん、最低だ。
小林さんは彼女なりに伊地知くんと向き合えていたんだけど、伊地知くん自身は小林さんとは向き合えていなかったように見える。というより、向き合えていたつもりでいただけ。
彼にあるのは自己満足のための興味だけだったんだなぁと、ややガッカリ。
フラれそうだっていうのに、真っ先に考えてるのは「もうナプキンが貰えない」だし・・・。
けど、全て終わったあとに見つめなおして成長できるなら、それはそれで。
最後には、彼はちゃんと世界を広く見ることができている。
そしてラストシーンで、名も知らない女の子のナプキンを嗅ぎながら小林さんのナプキンを求め続けている伊地知君の背中は、変態うんぬんは置いといて、相変わらずちょっとズレてるのも置いといて、恋する男の子だなと思う。
彼なりに答えを見つけた上で、もう一度小林さんを求めているのだから。
でも、もう遅い。
・・・という、結構苦いエンディングを迎える内容。
上手い付き合いなんて出来ないんだ。だって、まだ中学生なんだ。
そういうむず痒い、もっと器用にできないのかよ!っていうところが
客観的に見るところの「思春期」だなぁとか思ったりします。
本人たちはあれで超一生懸命ですからね。だからタチが悪いというか、楽しめるというか。
この単行本で一番好きなエピソード。
失敗もまた青春だ!
夏場にはみんな気になっちゃう、あの透けブラでございます。
夏服の白の向こうに見える色に目を光らせるのは自然の摂理。もはや本能。
そしてエロスに燃える男子中学生が透けブラを気にしないわけがありません。
(みんなあまり口に出しはしないけど、気にしてるはず・・・!)
今回はそんなところから始まる物語です。
いつも黒のブラジャーを着けている稲沢さんが気になる吉倉くん。
透けて見えるその黒への胸のときめきは、いつしか稲沢さん本人にも反応するように・・・?
しかしある日、クラスメイトの堀田を巡り2人にトラブルが。
「ウザい」「死ね」なんて辛辣な言葉を感情的に吐き出してしまったり
その事を後悔して涙を流したり・・・いつだって走りすぎちゃってる感じが素敵。
遠慮なしの感情は、いつだって衝撃的で心が熱くなる。
それは過激に燃え上がりもすれば、かつてないほどの落ち込みようを見せたりする。
普段見えない・見ることのできないそれぞれ1面。
いつだって能天気なような堀田くんも、悲劇に心底沈むことだってあるのだ。
ましてや家族を失ってまで笑顔でいられる子供がどこにいるか。
弱さなんてものは、自分にも他人にも見せたくないけれど、どうしたって溢れてしまう瞬間はあるものだろう。そういうのはあって当然なのだ。
エロくたって、大人になった気がしていたって、やはりまだ子供のままで
だからこそ些細なことで心が揺らいだり苦しんだりしてしまう。
傷つけたり傷つけられたりそのことで後悔したり・・・そんなのを何度も繰り返す。
そういった若々しい感性は、どういう面を見たって凄く魅力的。
読んでてなんだか胸が苦しくなってしまうなぁ。
懐かしい痛みがぼんやり浮かんでくるような、不思議な感覚を味わえるのです。
そりゃ今だってたくさん後悔したりしますけれどなんだか、あの頃とは違う気がしたりしなかったり。うーん。痛い。今の自分がどういう人間かを今理解するは難しいです。
あ、シリアスなシーンでブラチラを気にしまくる吉倉くんは流石の現役中坊ですねw
空気読めないエロへの興味もそりゃあるさ!
色んな一面を見て、ちょっとだけ近づいて
前より優しく、前より好きになれた気がする日。
もちろん、黒ブラジャーも含めて、だ。
主人公はスポーツ・勉強・ルックルすべて○、可愛い彼女もいる伴太樹くん。
まさに理想の男子そのものである彼が、最近悩んでいることは、自分の男レベル。
いつも下品なエロ話をしてて、女子からどんなに疎まれようと己を貫き続ける少年たち。
彼らのそんな姿を見て、伴君はなにかが自分に欠けていると感じてしまう・・・。
いや、お前はそのままでいいんだよ!と言ってあげたいくらいなのですが
どんどん破らなくていい殻を破っていく伴君の姿は、非常に間抜け眩しいものですね。
伴君はもっとバカになりたいけれど、そうなることで失われることが分かるから上手くバカになれない男の子。周囲を見渡せる頭の良さがあるからの閉塞感も、あるものなんだろう。
そんなわけで、自分に足りない何かを持っているエロバカ集団に憧れ
少しずつ彼らに近づき、絆を深めていきます。
そして周りからおかしな目で見られだしてしまうけれど、彼はそれで満足気。
普通の人と違うことがカッコいいとか特別だとか思いこんでしまう・・・そういうお年頃。でもそれでいいのです。まず自分が満足できなきゃ進めないのです、少年時代。
アウトローへの憧れは強まるばかりの伴君。
そんな彼を見て不安と戸惑いを覚える、恋人の早乙女さん・・・。
2人の関係はどうなってしまうのか、というのもこの話の見どころですね。
伴君を悩ませるのは完璧だからこそのコンプレックス、なのかな。
『良く出来る』ことが自分の全てのように思えてしまう。
本当の自分を、その価値を探してしまう。無意味なのに。
行儀のいい教科書のような自分じゃなくて、自分らしい自分を好きになって欲しい。
でも、こういうことを尋ねてしまうということは
彼自身、変わってしまうことの恐怖はうっすらとあるんだ。
でも早乙女さんの返答で、彼は決心してしまうんだよなぁw
ちゃんと見てくれるんだ、彼女は。だから彼は走るんだ。
そんな単純さも、男の子感あって気持ちよかった!
一大決心のもと戦場に赴き、見事男度をあげた伴君。
ラストでは「もみ夫」なんておかしな愛称で呼ばれるようになり
より少年らしい仕草を見せてくれるようになります。
「完璧」ではなくなっただろう。確実にダメな中学生男子だ。
けれど彼の笑顔や、彼を取り巻く人々の楽しげな雰囲気には、読者としてもニヤリとせざると得ないのです。こんな馬鹿をやっていられることがどんなに楽しく、どんなに貴重なことか!
この空間こそが「中学校」。中学生は、たのしい。
正体不明の欠落感は、誰もがふっと感じてしまうものなのでは。
避けられないもののようにも思うけれど、それをなんとかしようともがく少年の様子は
別に自分を重ねるわけではないですが、とても好きだったりします。
男の子が男の子らしくある瞬間ってのは最高に気持ちがいい!
それとこれには衝撃ですよ。
オレンジでこれやるとかほんとにバカだなコイツらw
それも堀田君はすごい良い顔で啜ってるんですよね・・・酷いw
ちと長くなりましたが、最後にまとめなど。
前にアップした「ウシハル」は一発ネタが多いというか、ストーリーをそれほど重要視していない構成・限られた世界観であるのに対し、この「R-中学生」はオムニバス形式のストーリー展開で、より幅広い人間関係を楽しめる作品になっています。
今回紹介した3話の他にも
父親を失った堀田家にて怒る、堀田君のAV騒動や、幼児体型コンプレックスの女の子がなんとか変わろうと色々しでかすエピソード、なぜか男子も女子も下着姿になって蜂を対峙する単行本ラスト等、様々な中学生が楽しめる1冊になっています。
中学校を舞台とした、下品なんだけどどこか甘酸っぱくもあるシナリオの数々は
なんともかんとも、読む人に様々な感情を呼び起こしてくれそうです。
読む人の奥底にある少年の心に呼びかける、ちょっとおかしな「あるある」ネタ。
この作品に登場する中学生たちは、間違いなく自分“だった”・・・の、かも。
「R-中学生」読んでいる間は、どうしても色々思いだしてしまいます。
よく言われるこの作品の下ネタも、自分は大好き。
青年誌掲載なので結構キツい話題もあるにはありますけれど、
けれどそれはネタっぽくもあり、ちゃんと物語に組み込まれた魅力的な要素の1つでもある。
そして見事に青春漫画として成立している。ややパンクっぽく。
カッコよかったり情けなかったり切なかったり楽しかったり。
変な風に輝くおかしな青春の日々!綺麗じゃなくてもいいんだって。
好き嫌い別れそうな作風ですが、自分は非常に面白い作品だと感じました。
読み返しては何度もほろ苦い感覚を味わったりしています。
そういえば「1巻」と打たれていますが、2巻はいつ出るんでしょうか・・・楽しみ!
『R-中学生』1巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
いろんな感情がふつふつ沸いて悶えさせられる、破壊力ある作品。
全力で青春やってるのが本当に自分好みでした。中学生っていいなー。
R-中学生(1) (ヤングマガジンコミックス) (2010/04/06) ゴトウ ユキコ 商品詳細を見る |
誰にも言えない僕のフェティシズム
前回の更新で触れていたのに、そういえばこの作品で更新していなかったなと。
そんなわけで今回はゴトウユキコ先生の「R-中学生」。
毒々しさとほんのりインモラルなムードを醸す表紙からインパクト強いですが
内容もなかなかに酷いものとなっています。もちろん褒め言葉です。
単行本のカバーには「このマンガにはバカくさいシーンやちょいエロな表現が含まれています」と書かれておりますが、この1冊でそれらを本当に目いっぱい味わえるようになっているかなと。思春期全開!
この1冊には6つの話が収録されており、そのどれもがイタ気持ちいい青春作品。
今回は内3話について書こうかなと思います。
こういう1話完結ものの作品は記事が書きやすいですねー。
第一話から凄まじい出来。赫色少年の素晴らしき日々
しょっぱなから普通じゃない物語と作者のセンスに圧倒される、渾身の1作。
この作品で第60回ちばてつや賞ヤング部門大賞を受賞したようです。
主人公は中学生の伊地知くん。人には言えない特殊性癖持ち。
彼はこっそりと、ゴミ袋を開けて臭いを嗅ぐ。中身は女子トイレのアレやコレや。
伊地知くんは女の子の汚物に性的興奮を覚えるのだ。
そのむせるほどの異臭をいっぱいに味わって恍惚の表情。まさに変態ですね。
しかしそんな秘密の日々は、ある日唐突に崩れ去る。
一年の女子に、女子トイレのゴミの匂いを嗅いでいるところを見られてしまったのだ。
逃げ出す女子を追いかける伊地知君。しかし女の子は生理中だったのか、走るにつれて脚元から血が滴る・・・のを見て全力勃起の伊地知君。もうやだこの中学生。
そうしてなんとかその女子を捕まえて、ズバッと言って見せた伊地知君。
「君のナプキン、僕にくれ」
早くこの中学生を止めろ。
こんな感じでダメダメな伊地知君ですが、なんとこの後その後輩と交際を始めます。
その女の子・小林さんは彼のために、自分のナプキンをあげ続けました。
彼女はわりとそういうアブノーマルな方面には寛容・・・というか、受け入れてあげようという努力と包容力がある女の子。いい娘ですなー・・・(?
面白いのは、彼女がショックを受けるのはそんな変態的な伊地知君の姿ではなく
自分とじゃなく、友だちを楽しそうに笑う彼の姿だったこと。
自分でいるときよりも楽しそうな笑顔が、遠く離れたところにあるのだ。
そんなありふれた、普通の理由で、彼女は傷ついた。
作中で描かれていることに限定してしまえば、彼氏彼女としての伊地知くんと小林さんはナプキンという到底普通とは言えないアイテムでのみ繋がっていて、それは他人には通常見せることのない点だからこそお互い妙な信頼感で繋がっていたのだと思う。
秘密の共有というのは、優越感やらなんやら、確かに素敵な感覚があるはずだ。
けれどそれは結局伊地知くんに小林さんが応えてるという形ばかりで
あまりにもバランスが悪い関係だった。
だから、案外すぐに2人は崩れ始めてしまったのかな。
小林さんからすればあまりにも手応えの無い、といったら意味がおかしくなるかも知れないけれど、恋人でいる意味が分からなくなるほどには、伊地知くんは自分しか見えてない。
掛け合いというのは、自分と相手がちゃんと向き合えてないと成り立たない。
小林さんの向かいにいる伊地知君は、彼女じゃなく彼女のナプキンばかり見てる状態。
うん、最低だ。
小林さんは彼女なりに伊地知くんと向き合えていたんだけど、伊地知くん自身は小林さんとは向き合えていなかったように見える。というより、向き合えていたつもりでいただけ。
彼にあるのは自己満足のための興味だけだったんだなぁと、ややガッカリ。
フラれそうだっていうのに、真っ先に考えてるのは「もうナプキンが貰えない」だし・・・。
けど、全て終わったあとに見つめなおして成長できるなら、それはそれで。
最後には、彼はちゃんと世界を広く見ることができている。
そしてラストシーンで、名も知らない女の子のナプキンを嗅ぎながら小林さんのナプキンを求め続けている伊地知君の背中は、変態うんぬんは置いといて、相変わらずちょっとズレてるのも置いといて、恋する男の子だなと思う。
彼なりに答えを見つけた上で、もう一度小林さんを求めているのだから。
でも、もう遅い。
・・・という、結構苦いエンディングを迎える内容。
上手い付き合いなんて出来ないんだ。だって、まだ中学生なんだ。
そういうむず痒い、もっと器用にできないのかよ!っていうところが
客観的に見るところの「思春期」だなぁとか思ったりします。
本人たちはあれで超一生懸命ですからね。だからタチが悪いというか、楽しめるというか。
この単行本で一番好きなエピソード。
失敗もまた青春だ!
第2話ブラジャー話。黒ブラジャーの君
夏場にはみんな気になっちゃう、あの透けブラでございます。
夏服の白の向こうに見える色に目を光らせるのは自然の摂理。もはや本能。
そしてエロスに燃える男子中学生が透けブラを気にしないわけがありません。
(みんなあまり口に出しはしないけど、気にしてるはず・・・!)
今回はそんなところから始まる物語です。
いつも黒のブラジャーを着けている稲沢さんが気になる吉倉くん。
透けて見えるその黒への胸のときめきは、いつしか稲沢さん本人にも反応するように・・・?
しかしある日、クラスメイトの堀田を巡り2人にトラブルが。
「ウザい」「死ね」なんて辛辣な言葉を感情的に吐き出してしまったり
その事を後悔して涙を流したり・・・いつだって走りすぎちゃってる感じが素敵。
遠慮なしの感情は、いつだって衝撃的で心が熱くなる。
それは過激に燃え上がりもすれば、かつてないほどの落ち込みようを見せたりする。
普段見えない・見ることのできないそれぞれ1面。
いつだって能天気なような堀田くんも、悲劇に心底沈むことだってあるのだ。
ましてや家族を失ってまで笑顔でいられる子供がどこにいるか。
弱さなんてものは、自分にも他人にも見せたくないけれど、どうしたって溢れてしまう瞬間はあるものだろう。そういうのはあって当然なのだ。
エロくたって、大人になった気がしていたって、やはりまだ子供のままで
だからこそ些細なことで心が揺らいだり苦しんだりしてしまう。
傷つけたり傷つけられたりそのことで後悔したり・・・そんなのを何度も繰り返す。
そういった若々しい感性は、どういう面を見たって凄く魅力的。
読んでてなんだか胸が苦しくなってしまうなぁ。
懐かしい痛みがぼんやり浮かんでくるような、不思議な感覚を味わえるのです。
そりゃ今だってたくさん後悔したりしますけれどなんだか、あの頃とは違う気がしたりしなかったり。うーん。痛い。今の自分がどういう人間かを今理解するは難しいです。
あ、シリアスなシーンでブラチラを気にしまくる吉倉くんは流石の現役中坊ですねw
空気読めないエロへの興味もそりゃあるさ!
色んな一面を見て、ちょっとだけ近づいて
前より優しく、前より好きになれた気がする日。
もちろん、黒ブラジャーも含めて、だ。
しょうもない思春期の暴走を描く第5話。その球児・・・
主人公はスポーツ・勉強・ルックルすべて○、可愛い彼女もいる伴太樹くん。
まさに理想の男子そのものである彼が、最近悩んでいることは、自分の男レベル。
いつも下品なエロ話をしてて、女子からどんなに疎まれようと己を貫き続ける少年たち。
彼らのそんな姿を見て、伴君はなにかが自分に欠けていると感じてしまう・・・。
いや、お前はそのままでいいんだよ!と言ってあげたいくらいなのですが
どんどん破らなくていい殻を破っていく伴君の姿は、非常に
伴君はもっとバカになりたいけれど、そうなることで失われることが分かるから上手くバカになれない男の子。周囲を見渡せる頭の良さがあるからの閉塞感も、あるものなんだろう。
そんなわけで、自分に足りない何かを持っているエロバカ集団に憧れ
少しずつ彼らに近づき、絆を深めていきます。
そして周りからおかしな目で見られだしてしまうけれど、彼はそれで満足気。
普通の人と違うことがカッコいいとか特別だとか思いこんでしまう・・・そういうお年頃。でもそれでいいのです。まず自分が満足できなきゃ進めないのです、少年時代。
アウトローへの憧れは強まるばかりの伴君。
そんな彼を見て不安と戸惑いを覚える、恋人の早乙女さん・・・。
2人の関係はどうなってしまうのか、というのもこの話の見どころですね。
伴君を悩ませるのは完璧だからこそのコンプレックス、なのかな。
『良く出来る』ことが自分の全てのように思えてしまう。
本当の自分を、その価値を探してしまう。無意味なのに。
行儀のいい教科書のような自分じゃなくて、自分らしい自分を好きになって欲しい。
でも、こういうことを尋ねてしまうということは
彼自身、変わってしまうことの恐怖はうっすらとあるんだ。
でも早乙女さんの返答で、彼は決心してしまうんだよなぁw
ちゃんと見てくれるんだ、彼女は。だから彼は走るんだ。
そんな単純さも、男の子感あって気持ちよかった!
一大決心のもと戦場に赴き、見事男度をあげた伴君。
ラストでは「もみ夫」なんておかしな愛称で呼ばれるようになり
より少年らしい仕草を見せてくれるようになります。
「完璧」ではなくなっただろう。確実にダメな中学生男子だ。
けれど彼の笑顔や、彼を取り巻く人々の楽しげな雰囲気には、読者としてもニヤリとせざると得ないのです。こんな馬鹿をやっていられることがどんなに楽しく、どんなに貴重なことか!
この空間こそが「中学校」。中学生は、たのしい。
正体不明の欠落感は、誰もがふっと感じてしまうものなのでは。
避けられないもののようにも思うけれど、それをなんとかしようともがく少年の様子は
別に自分を重ねるわけではないですが、とても好きだったりします。
男の子が男の子らしくある瞬間ってのは最高に気持ちがいい!
それとこれには衝撃ですよ。
オレンジでこれやるとかほんとにバカだなコイツらw
それも堀田君はすごい良い顔で啜ってるんですよね・・・酷いw
ちと長くなりましたが、最後にまとめなど。
前にアップした「ウシハル」は一発ネタが多いというか、ストーリーをそれほど重要視していない構成・限られた世界観であるのに対し、この「R-中学生」はオムニバス形式のストーリー展開で、より幅広い人間関係を楽しめる作品になっています。
今回紹介した3話の他にも
父親を失った堀田家にて怒る、堀田君のAV騒動や、幼児体型コンプレックスの女の子がなんとか変わろうと色々しでかすエピソード、なぜか男子も女子も下着姿になって蜂を対峙する単行本ラスト等、様々な中学生が楽しめる1冊になっています。
中学校を舞台とした、下品なんだけどどこか甘酸っぱくもあるシナリオの数々は
なんともかんとも、読む人に様々な感情を呼び起こしてくれそうです。
読む人の奥底にある少年の心に呼びかける、ちょっとおかしな「あるある」ネタ。
この作品に登場する中学生たちは、間違いなく自分“だった”・・・の、かも。
「R-中学生」読んでいる間は、どうしても色々思いだしてしまいます。
よく言われるこの作品の下ネタも、自分は大好き。
青年誌掲載なので結構キツい話題もあるにはありますけれど、
けれどそれはネタっぽくもあり、ちゃんと物語に組み込まれた魅力的な要素の1つでもある。
そして見事に青春漫画として成立している。ややパンクっぽく。
カッコよかったり情けなかったり切なかったり楽しかったり。
変な風に輝くおかしな青春の日々!綺麗じゃなくてもいいんだって。
好き嫌い別れそうな作風ですが、自分は非常に面白い作品だと感じました。
読み返しては何度もほろ苦い感覚を味わったりしています。
そういえば「1巻」と打たれていますが、2巻はいつ出るんでしょうか・・・楽しみ!
『R-中学生』1巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
いろんな感情がふつふつ沸いて悶えさせられる、破壊力ある作品。
全力で青春やってるのが本当に自分好みでした。中学生っていいなー。