[漫画]炎に焼かれ、嵐の中で戦い続ける者たち。『3月のライオン』8巻
3月のライオン 8 (ジェッツコミックス) (2012/12/14) 羽海野 チカ 商品詳細を見る |
―――まるで焼け野っ原にいるみてーだ…
爺様―――!!!
買いに行ってこの爺様表紙とご対面した時には軽くびっくり。目立ってました。
まぁ確かに、8巻はこの柳原朔太郎が輝きを放ちまくりでありまして。
爺様カッコよすぎるだろ・・・と打ちのめされました。
もちろん柳原さんだけじゃない。宗谷名人の凄まじい才気と静かなる狂気にも触れる。深々と心に染み入る、穏やかだけど透明感ある迫力。読みながらなぎ倒されてしまいそうになる熱気。その両方が1冊で味わえもうほぎゃぎゃー。
大きく2つのポイントがあった巻だと思います。
順番に行こう。まずは宗谷名人について。
前巻のラストでいよいよ桐山と宗谷名人の対局が始まりました。
8巻はそこから、桐山が宗谷名人の世界に入っていくのが印象的。
嵐の中心、台風の目は穏やかだと言いますが、その穏やかな空間を知ることが出来るのは、もとより嵐の中心にいるか、嵐を突破した者のみ。
73話「白い嵐」で、自分はまだ嵐の中に入ってさえいなかった、と桐山が感じるシーンがありました。
そして対局に合わせるように、台風が日本にやってくる。目前には嵐が待ち構えている。多くの先人たちが戦い続けている領域が。
勝負の世界、宗谷名人の世界が「嵐」に例えられてあり、この作品の技を見せつけられます。
宗谷名人に関して、静か、無音、といったキーワードがちょくちょく出てきます。
その真髄を見ることができるのがこの対局でした。
嵐の中心にいる彼の心は、ひたすらに穏やか。
対局がはじまってすぐはがむしゃらな桐山でしたが、じきに様子が変わる。
「まるで銀色に光るまぶしい水が すみずみまで流れこんでいくようだった」
という桐山のモノローグがありました。これがすごく好き。
「まぶしい水が、すみずみまで流れ込む」。とにかく爽やかで気持ちよさそうな表現だ。ただ清々と心地よい空気に浸っています。
事実対局を終えたあとの桐山はぼんやりしながらも熱にうかされたようなリアクションを見せています。「まっ白だった。指してる間、2人でずっとまっ白い中にいた。――それがとても心地よかった」とまで語る。
宗谷名人の世界は、まっしろで無音で、心が気持ちいい。
対局してはじめて、その世界を知った。
78話の島田さんを見ても、宗谷名人の世界は、ほかの棋士から見てもあこがれであることが伺えますね。
あの強さを手に入れたい、という憧れのではない気がする。
静寂の中で深く将棋を楽しみたい、と言葉にすれば甘ったれなものな気がするが、それに近い、楽園を見上げてるかのような姿勢が見える。
宗谷名人の世界は唯一無二であり、狂気に近いものがあれど、それは確かに遠く高い頂だ。
孤高はひどく美しい。誰も寄せ付けないのではなく、近づいた人を魅了する。
その世界を知ったからには、我慢はできない。
また戦いたい。盤の向こうに宗谷名人がいる場で、自分の将棋を指したい。
至極当然のことのような、しかしまばゆい新鮮さを持った意思。
また戦えることを目指して、嵐の中を戦っていくんだ、彼は。彼らは。
対局後、宗谷名人の過去の棋譜をあさる桐山。
自然と吸い寄せられてしまうものなんだな。嵐という戦いの中に。
今回宗谷名人の身体的な秘密も明かされました。ああ本当にアブない人ではなかったんだな、というちょっとした安堵。桐山のあとをついてくる場面ではかわいいなとすら。
しかしこんなものを背負っていながらも戦い続けているのかと思うと、痛々しくもある。しかし、将棋に執着し続けるその姿勢は、やはりカッコいいのだ。
誰も寄せ付けない自分の世界を確固たるものとして持っているんだろう。だからこそ強い。悲しいことでもあるけど、棋士のとっての1つの理想を体現している人なんだろうな。まぁ名人なんだからそのまんまなんだけど、地位の話だけじゃない。
続いては棋匠戦。島田さんと柳原さんによる対局。
これが凄まじくて、ふつふつと血が湧いてくるような高ぶりを感じました。
おいおいオイオイ、柳原棋匠カッコよすぎんだろ!!
柳原さんは通算十期達成の「永年棋匠」獲得のため、島田さんは初タイトル獲得を目指す一局。いくら見た目地味でも、戦いを積み重ねてきた熟練の男たちによる激闘に、胸を熱くせずにいられようか!!
66歳、A級。現役最年長の大ベテラン。化物の1人とまで言われる男。
柳原は7巻とかでも明るく元気なおじちゃんっぽさを見せていましたが
勝負に望むときの彼はつい息を呑んでしまう迫力。明るい人のイメージとのギャップで、牙を向いたときのカッコよさにはしびれるしかない。
「今日もまた火だるまになって 存分に苦しんでやろうじゃないか」
余裕に構えているようで、全然そんなことない。
この煮えたぎる闘志。爺になっても1人のプロ棋士だ。
「勝つことも、そして負けることも、いつだって簡単には決まっちゃくれない」
という彼の言葉が印象深いです。いつまでだって戦い続けてあがき続けて苦しんで、それを心の底ではしっかり楽しんでいる、器の大きさ。豪胆とも言える将棋バカっぷり。
かつての仲間たちは去っていった。今や現役最年長。
彼には多くの「たすき」が預けられています。志を叶えることができなかった友たちの「あとは頼む」「俺たちの分まで頑張ってくれ」の言の葉が込められた、1つ1つ重たいたすき。それがおびただしい程たくさんに。
たすきを預かる柳原さんのイメージは作中でも描かれますが、たすきが多すぎてそうとは見えない風になっている。
まるで包帯で巻かれた重傷者のような姿です。
焼け野原をさまよう、炎に焼かれ続けた男。
自分のような若輩者には伺い知れない、それでも想像できるプレッシャーだけで心が苦しくなってくるな・・・。
111ページでは老いた男の身体ってのをリアルに描いている。悲壮感ただよう姿ですが、これを見たからこそ、今なお戦い続ける柳原棋匠の姿に重みを感じる。彼の前をゆく者はいない。
島田さんと柳原さんの対局は激戦でした。
「棋士ならば誰もが、こんな将棋が指してみたいと、心の底から思わずにいられないような」と言われるまで。解説の桐山・二海堂も体の底からこみ上げる興奮を感じている。82話の桐山の泣きそうな表情もいいなあ。
最初この表紙を見た上で読みすすめていたら、
柳原さんはたすきから解放されるのかな、という予想をしていました。
それがねえ。上手いことやられた。泣けてきた。
島田さんの「じじい、若々し過ぎるだろう、その手はよ」もアツい。
この対局のクライマックスでの攻防、そして柳原さんの心理における演出は絶品でしたよ。
棋士たちを描いた作品だもの、高齢のキャラがたくさん出てきますよ。これまでもオッサンキャラに魅せられる場面もたくさん、たくさんありました。でもここまで爺さんキャラを中心に据えてカッコよく描いてくるとは。改めて「3月のライオン」すげぇ!
そんな「3月のライオン」8巻の感想。
学校のイジメ問題片付けて、次に66歳の爺さんを、ここまで熱く描いてくるんだもんなぁ。幅広い。それでいてテーマが散らからないんだ。
今回で二海堂くんも復帰して嬉しい。この子が元気だと癒し。
勝負の世界を描いた、「戦い」の物語です。
でも相手との勝ち負けだけじゃない「戦い」が、この作品にはある。
そこに重みがあり、やさしさがあり、強さがある。
心も身体も極限まで消耗して戦うんだもんなぁ、この漫画は。
この巻のクライマックスでは、大の大人が対局後に上向きに倒れ込みながら、顔に手あてて悔しがってんだ。それだけでもう、グッとくる。
自分にとっては、戦い続けている人生の大先輩らの胸のうちに圧倒されるばかり。
月並みな表現しかできなくて歯がゆいのですが、確かに勇気を授けてくれる漫画です。
戦う人。その姿を描く「3月のライオン」らしい巻でした。
いろんな人が、いろんな思いを胸に戦っているんだ。
『3月のライオン』8巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
爺さんのカッコよさがみなぎる一冊。男の戦いだ。食い合いだ。
[漫画]♀→♂の性転換SFラブストーリー『少女恋愛変異』1巻
少女恋愛変異 1 (少年サンデーコミックス) (2012/11/16) 大月 悠祐子 商品詳細を見る |
ありすの指……太くてゴツゴツしてる。
大月悠祐子さんの新作「少女恋愛変異」1巻が出ました。
WEB雑誌、クラブサンデーにて配信されている作品です。
近年の大月先生は、「妄想少年観測少女」やら楽園で新たにはじまった「彼女達の最終定理」やら、過激な作品が多い印象。まぁ妄想少年~から読み出したんですけどね俺!
今回の「少女恋愛変異」も大月先生らしさは発揮されています。でも少年漫画としての魅力もあって、なかなかに新鮮。そしてやっぱり、ニヤニヤできる!
クラブサンデーの公式から第1話と最新2話が読めます。気になったらチェックしてみては。
舞台は女だらけになった日本。人間はみな女として生まれてくる。
女が成長すると、ごく低い確立でのみ、男に性転換する。
男は1人の女を選んで、結ばれた2人は「EDEN」というこの世の楽園に行ける・・・らしい。
そんな世界の中、2人の仲良し少女が主人公です。
おっとり大人しい子、ありす。男勝りなボーイッシュな子、桃香。
桃香は自分が男になって、ありすとEDENに行くことを目指す。
しかしそんな桃香に魔の手が迫る。その時ありすは・・・!といったストーリー。
最初は百合ん百合んしていますが、予想通りに片方が変異してしまうので、この光景はほぼ1話限りのものに・・・。でも2話以降も十分にニヤニヤさせてくれますよ。
女しか生まれてこない。女が男に変異する。これだけで興味をそそられるストーリー。
しかもこれがまた主人公の少年は普通にカッコいい活躍をしてくれる。
ヒネった設定ですが、少年漫画らしい勢いの良さもあるのです。
完全にイケメン化。守られていたはずが、守るために「俺のパートナーになれ」とかドヤ顔で言えちゃう男の子になってしまったでござるの巻。
あー少年漫画らしいというか、それは2人の主人公の視点を切り替えれば少女漫画らしいということにもなるのかな。桃香からすれば守られて言い寄られてびっくり。攻守逆転はステキシチュだよ!
ボーイッシュな子が稀に見せる女らしい一面にトキメくってのは、至って自然なことさ!
しかしありすちゃんは・・・いやありす君の変化ぶりはすごい。
元は女の子だったのに、その頃の名残はこれっぽっちも残していないのが清々しく楽しくもあり、寂しくもあり・・・。あの気の弱い女の子がよくもこんな豪快な少年に変異するもんだ・・・。
作中登場した、あのいけすかない男を見ても、ありすの倫理観は歪んでいなくて安心する。というか変異した男が最初からあんなゲスくなることもないだろう。
男というだけでチヤホヤされて、女を好きなように選べて、傲慢な態度も許されて、どんどんとあんな感じのクソ男が出来上がっていくのだろう。
じゃあここから、特徴的なこの舞台について書いてみようかな。
まず「EDEN」って何よって話ですよ。
この世のどこかにある楽園。それを目指すために、女たちは男を求める。
でも女たちも「EDENに行きたい!」というだけで男に群がっているわけでもなさそう。
この世界は「恋」を知らない。大多数は夢のように思い描くものだ。
この作品で描かれる世界は、盲目的に男女の愛に飢えている。
国民総恋する乙女。これはこれですげえ世の中だ。
それで女を好き勝手に使う男が許容されてるあたり、本当に盲目的になってしまっていて、その痛ましさは結構胸を刺激してくるものでもある。
「幸せになりたい」というなんとなくな気持ちが、EDENを求めさせているんだろう。
EDENに行きたいから恋に憧れるのか。それとも純粋に恋に恋しているのか。
どちらが、というわけでもなくこの2つが織り交ざって少女たちを悶々とさせているようだ。
こんな世の中なら、やはり男があんな人間になってしまうのもムリない。それだけじゃなく、男という存在がとてもイヤなものに思えて、個人的には結構どぎついこと描くなーと思った。
けっこう気味の悪い、怖い世の中だなーと感じるのは、きっと作者の意図通りなのだろう。男の人となりはまったく見られないかなねぇ。贅沢にみえて、その実息苦しいもののように見える。
しかし結ばれた2人のみが行ける「EDEN」って、そもそもどんなモノなのか。
漠然としすぎて、なにか仕掛けや裏がありますよねえ。実際はどんなのやら・・・。
思う存分に人間として原始的に愛し合える場・・・とかならいいんだけど
「EDEN」という幻想を抱かせる教育をさせて、結ばれた男女のカップルは子作りさせまくる機関にさせられる・・・とか怖いねえ。狂気。
だって女しか生まれてこない、試験管から子を成す社会って、不健康すぎる。
だからこそ、そうじゃない方法で子を作る方法がロマン化するのもムリはないのかなぁ。
「EDEN」の正体もきっとこの先、物語の核心として描かれるのでは。
単に変化球チックな恋愛漫画だけじゃない、SFとしてもゾクゾクさせてくれそう。楽しみですよこれは・・・!
あとは桃香の今度が気になるところ。
男になってありすを幸せにする、ってことに意識を向けて成長してきた女の子なので
「男になったありすに選んでもらってEDENに行く」というシナリオにすぐに気持ちを移せていない様子。というか桃香が好きだったのは、女だったありすだったっぽいな。
ありすの記憶喪失もあるし、男女になったところで素直にくっつかない2人だ。
この2人が作品のメインキャラなので、どういう関係性を紡いでいくか、注目したいです。
本編も面白いのですが、個人的に単行本オマケの4コマ漫画がとても面白かった!
巻末だけでもかなりあるのに、カバー折り返し、カバーを外した本体表紙にと、たくさんオマケ漫画があってそれだけでも大満足。内容もすごくいいんだこれが。
女から男に変異。女だったころの記憶は失ったありす君。
性転換したがゆえの悩みやら楽しみやらいろいろ描かれてますw
かなりあけすけにエロい4コマもあり、笑顔がとまらんな!
本編が拾いきれなかったピースを細かに拾っている感じで、さらに作品愛も深まる内容。
まだまだウラがありそうなSF設定が面白く、性転換してからのラブコメ模様も素敵。
そして前も大月作品の感想でかいたけれど、自分はこの作家さんの、時々えげつないくらいに鋭く人間を追い込んでくる漫画が大好きで。少年漫画というフィールドでどうこの面白い設定で物語を仕上げていくのか、とても楽しみです。
1つ惜しいのは、女だったころの記憶をなくしてしまうので、男の身体を手に入れたときの興奮やら感動やらが本人にないことだよ!TSモノとしてはそこで慌てる姿も見たかった・・・!
『少女恋愛変異』1巻 ・・・・・・・・・★★★★
オマケも充実。大月先生の新シリーズはドキドキの性転換SFラブストーリーです。
あとボーイッシュな子に女としての一面を出させるのって、いいね。ハイ。
[漫画]恋の病は死より重い?『サイトーくんは超能力者らしい』3巻
サイトーくんは超能力者らしい 3巻 (ガムコミックスプラス) (2012/10/25) いみぎむる 商品詳細を見る |
不死身能力を上回る 謎の病魔だ
「サイトーくんは超能力者らしい」3巻の感想。
ここのところリアルが忙しくちょっと通常更新を止めたら、文の書き方を忘れた・・・。
1週間あけるとこうなってしまうんだなぁ。まぁいいや、さくっと感想いきましょう。
今回が初めてとりあげる作品ですね。超能力者が集まる部活を描くコメディ漫画です。
まずキャラの掛け合いが楽しいんですよ。しっかり会話を投げかけ返してつないでいく。爆笑できるとかではないんだけど、ホッと一息つける安らぎがあるというか。
そういう気持ちいいテンポがキープされつつ、いみぎむるさんの超キュートな絵がきらめく。
この絵の魅力はデカいですわ。アニメっぽいタッチでデフォルメが異様に可愛いのである。
絵が好きな漫画ってなにげなーく手に取って読み返しやすいですね。
コメディ色が強いですがラッキースケベ的エロ要素もあり、ばっちりニヤニヤできます。
しかし毎回ヒロインたちが水着を披露するコミックス表紙シリーズですが、今回もやっぱり水着シーンはないのであった。
それじゃ3巻の内容に。
2巻は気になるヒキで終わったのですが、それに関連する志乃森さんメインのエピソードから幕を開けます。ここらへんは超能力がテーマとなる作品だけに、結構SFチックな仕組みになっていました。
でも小難しさは全くなくお気楽でしたね。もっと真面目な感じに振り切って面白そうだけど、頭使うような内容になってしまったらこの漫画じゃなくなる!これでいいよ!
なにに志乃森さん巫女部の部長さんとフラグ立てちゃってる気がするな。
まぁその巫女部部長さんというのが憎めないヤツなので、違和感はない。
というかそもそもこの作品は、ダメ人間だが憎めない、というのが大勢いて、そういうのがこの雰囲気の良さを作り上げている理由の1つなのかもしれないな。
それでだ。志乃森さん関連が片付いたと思ったらラブコメ編突入ですよ!
いつか来るだろうかと思っていた展開が、なんかやや突然始まった感はあるけども!
ラブコメみたいな設定でラブ要素がほとんど無いのも面白かったのでちょいと寂しいけれど!
恋することり先輩が可愛すぎるので全て良し。
(きっと)初めての恋にわたわたしたりぼうっとしたり、熱まで出してしまったことり先輩。
しかし彼女が熱を出すということは、そもそも異常なのです。
だってことり先輩、不死身です。傷も負わない病気もしない、無敵の人だったはず。
外的要因からなら決して死なないことり先輩が、なんと熱を出す。
命を脅かすありとあらゆる難病より、なんでもない恋の病が彼女を火照らせてしまった。
死んでもおかしくない現象も受け止め無効化してきた彼女の「不死身」の超能力ですが、恋の前には無力だったと。うわぁ、クセぇ!そんなバカな!いやいやバカでいい。こういうクサいシチュ大っ変好みですよ!
言いすぎかもしれないけれど、彼女にとっては、死より恋の病が方が重いってことだ。ことり先輩はそういう逆転現象が起こってしまう。いいねぇバカみたいだ!これぞ超能力だ!
ここらへん、不死身の超能力者という設定でラブコメがよりドラマティックにうまい盛り上がり方をしていて興奮。
さらに。ことり先輩が主人公に文字通りお熱な最中、サイトーくん目掛けてもう1人の女の子が空を颯爽と駆けてやってくる。恋のライバル出現か!真っ当にラブコメっぽいぞ!
でも実際、主人公のサイトーくん、いいヤツだ。
間違いなくクズだろうけれど、結果的にキメるところキメちゃう美味しい男の子。
主人公がイヤミっぽくないのも好きだったりする。憎めないなぁ。クズだけど。
ともかく風雲急を告げるラブコメ編のまま3巻は終わって4巻へ続く。
2巻までも面白かったけど、なんだかんだでラブコメ始まったら断然のめり込んでしまいました。ううむ、突然ラブコメになったときは「おぉう・・・」と思ったけれど、急に転がり落ちていくのもまたいいものだよ!
とことんラブコメ漫画好きなんだなぁ俺は。即物的。
ほかのヒロインもラブコメはじめちゃってもいいのよ(チラッ
そんなこんなで3巻の感想でした。
今回も全然頭使わなくていいお気楽コメディ。ラブコメ要素も濃くなり歓喜。
1巻から洗練されてきた絵も、3巻はビシッと定まって高水準。むちゃくちゃ可愛い。
いみぎむるさんの女の子のクリッとした目には本当に・・・いいな!
表紙とかこのイラストとかを気に入った人はぜひ。本編ずっとこのタッチで頭ほわほわする。
いみぎむるさんは最近、電撃マオウでも新連載を始めたようで。そっちもチェックしたい。
『サイトーくんは超能力者らしい』3巻 ・・・・・・・・・★★★☆
おやおやラブコメ始めたよ、もっとやれ。賑やかで爽やかでたのしいです。
[漫画]きっと絶対、世界は悪に満ちている『空が灰色だから』3巻
空が灰色だから 3 (少年チャンピオン・コミックス) (2012/10/05) 阿部 共実 商品詳細を見る |
それって普通でしょ?
「空が灰色だから」の3巻の感想。
今回のイメージカラーは青。これまでの赤、黄よりちょっと爽やかでヤバい雰囲気は薄い・・・?
いやいや、3巻もこれまで通り、多彩で刺激的なエピソードが並びます。
本当にこの漫画は心をえぐってくる。面白いんだけど、テンションあがるタイプのものではないなぁ・・・。しみじみと自分に染み込んで、というか自分が吸い込まれていく感覚。
この作品らしさは1巻から揺るがないですね。過去の更新でも触れていますが。
心ざわめく空の色。レッツ・ガガスバンダス。『空が灰色だから』1巻
傷ついたらハマる、思春期の光と闇。『空が灰色だから』2巻
1話完結オムニバス。今回も特に気に入ったエピソードの個別感想を。
●第26話 世界は悪に満ちている
うわぁ。。これをこの漫画がやるか。というか、この漫画でやるから破壊力が凄いのか。
主人公はマジカルラブファイター・アン。と名乗るニート女子。
高校を中退してからはや5年。今日もぬいぐるみを引きずり町をパトロール。
この設定だけでアイタタなのに、さらに追い詰めてくるんですよ。
「世界は悪に満ちている」そう信じることで救われる。正義を振りかざす、自分の役目が生まれるから。悪が存在するということは彼女の存在理由だから。
けれど尽くパトロールは失敗してしまうのです。
イジメをしている子供達を制裁。でも勘違いで子供達ただ遊んでいただけ。自分の間違いを認めず力技で解決、したと思い込んで自己満足。「妖怪コスプレババア」とか呼ばれている。
見るからにワルそうな不良たちを見かけても、「ここは私の出る幕じゃない」と自分を納得させてスルー。子供には強くでられるのに、怖そうな相手にはこのザマである。
情けなくて弱っちい正義の使者。
世界を信じることができなくなって、勝手な妄想を押し付けている。
おもわず「うわぁ・・・」とひいてしまいそう。この漫画はストレートに悪意やバイオレンスを描くけれど、こういう遠回りな居心地の悪さとか病んだ様子を描くのもすごく上手い。
けれど感動的なのは、最後のパイン入りカレーですよ。
最初はギョッとするかもしれないけど、嫌いな人もいるかもしれないけど。
でも食べてみれば意外とイケるよ。そういうもんだ。世界は意外と懐が深い。
女の子が抱き続けた幻想が、ちょっとずつ現実と溶け始めた。短い話の中ですごく奥行きがあるというか、ドラマの奥深さがあります。これはいいな。大好き。痛みと、安らぎがある。
カレーに入れる食材なんて、よっぽどヘンなもんじゃない限り、だいたい美味しく食べられる気がするな。それはもっと広い意味で考えることができる、というか考えたくなる、美味しさの秘密だ。
●第28話 歩く道
この手の話はお手の物感ありますが、なんでだろう。
夢見がちな思春期の失敗。第28話「世界は悪に満ちている」とは違うようで同じメッセージを届けます。世界は大したことなんてない。
メッセージは同じの「世界は悪に満ちている」「歩く道ですが」ですが、世界をどう捉えるかが違うし、そのせいで真逆のエンディングを迎える。これは面白い関係にあるなぁ。雑誌掲載時には気づかなかったけれど、単行本で一気読みすることで考えがまとまることもあるな。
それとこのオチを見て、この作品の徹底した姿勢を再確認。
徹底的に落すときは落す。容赦がなくて思い切りがいい。・・・落ち込む。
夢が打ち砕かれた瞬間の、どうしようもなくさめた空気が心臓に突き刺さりますわ。ドキッとするというより、鼓動が止まってしまったかのような。音がなくなる瞬間がやってくる。
●第29話 少女の異常な普通
普通ってなに?
誰が決める?
私って普通?それとも異常?
普通かそうじゃないか。周りの人と自分の違いはなにか。誰だって考えたことがあるんじゃないだろうか。ヒトと関係して生活していかなきゃならないなら、当然考えてしまうことだ。
自分のアイデンティティについて頭を悩ませる少年少女はこれまでたくさん登場してきたけど
周囲の人間への敵意とイラ立ちを、ここまでストレートに露にしたのも珍しいかも。
口数少ない女の子が、心の底で友たちへの怒りをバクハツさせている。
その内容は、他人に対する「普通」「異常」のレッテル貼りに関して。自分としては1度か2度ではないくらいに感じたことがあることだけに、このエピソードへは没入した気がする。
この話に限らず、「ああ、この気持ち、1度は経験があるぞ」ってのを、この作品には何度も感じている。
自分を投影して作品を読み込もう、なんて体力のいることいつもはできないけれど、無意識のうちそうなっているなら話は別。そうさせるだけのパワーがその作品にはあるのだから。
鬼の形相になって口汚く不満を吐きちらかす主人公も、後半には息切れしてくるんですよね。そりゃ、心で思っているだけではなにも変わらない。だんだんと心は折れてくる。
まぁ、そこからの逆転が待っていますけど。でも結局この決着だって、数でひねり潰した形なんだよなぁ。内容がアレだったのでスカッとする展開には違いないけれど。
各々の道徳心と世間が認める「普通」は、どう組み合わさって世界のルールになっていくのか。
なんて、いかにも中学生な思考をぐーるぐると楽しんで、この話はおしまいにしよう。
まとまってないけどなぁ。この息苦しさ、ツボです。好きだ!とは言えないけれど・・・!
●第36話 ただ、ひとりでも仲間がほしい
ウヒョオオオオオきたきた!ムリにテンション上げてるけどこれは読むことすらツラい!
この気持ち悪さは過去トップクラス!コミックスの1番最後でこれ持ってくるのか・・・!
「みんな“きょう気”が全然足りないわ(得意気」
きょう気だけが自分の存在理由であり、居場所とする女の子が主人公。
怖がられたり気持ち悪がられたりして嬉しがってる様子。背伸びしている感ありあり。
頭がおかしな人のフリをして特別感を味わいたいってだけ・・・なファッションキチさんかな。
このコミックスのカバーを外したところの描き下ろしマンガも、この娘のなんちゃって狂人さんっぷりを茶化した内容でした。微笑ましいというか、苦々しいというか・・・!
それを踏まえてのあのラストシーン。やり方がヒドいよな。意味不明な日本語からして、正体不明の恐怖がありますし、なにより見た目のインパクトがすごすぎる。
これも「異常」と「普通」の話に繋がるのかも。
途方もない「異常」が出てくれば境界線は歪んで見方もかわる。主人公泣きながら「絶対普通じゃない」とか言ってしまうし。
けれどグロテスクさに隠されているものに目を凝らして見れば、結構切ないものがある、かも。
痛ましいほどの寂しさ。でもそんな想い汲み取ってやれるほど、こちらも冷静じゃいられない。
衝撃的なお話です。
そんな「空が灰色だから」第3巻。
安定しています。こういう作品で安定しているってのは凄いことです。クオリティの維持とか難しそうだし、読む側のハードルも上がっていく一方。でもこの作品はそれ応えていきます。
注意して欲しいのは、この漫画、別にグロやホラーばかりではないということ。
インパクトが凄いのでついついそちらに注目がいってしまいますが、心の奥深くまで届いてしみこむような優しいお話もあります。笑ってしまうコメディや恋愛ものも。
とにかくいろんなストーリーが読める。この欲張りさ、幅広さ、それも大きな魅力です。
そしていろんなストーリーがあるからこそ、次の話がどんなモノになっているのか最後まで読めない緊張感がある。そのあたりは、これまでの単行本感想でも書いてきました。
いやー面白いなぁこの漫画は。万人に勧められるはずもない作品だけれど、いろんな人がこの作品に圧倒されてみてほしいなと思います。好きになるか嫌いになるかわかりませんが、いい読書体験はできそうな。
「心がざわつく」とは本当にこの作品らしいコピーです。4巻でも心ざわつきたい。
『空が灰色だから』3巻 ・・・・・・・・・★★★★
少年少女たちのナイーヴな心を映しだす、光と影の思春期コミック。
[漫画]イチャイチャ百合ちゅっちゅ!『桜Trick』 1巻
桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス) (2012/08/27) タチ 商品詳細を見る |
ウソだよ たくさんキスしてあげるね
タチ先生の「桜Trick」の1巻が発売されています。まんがタイムきららミラク連載作。
「イチャイチャ百合ちゅっちゅ!」とはなんともアタマの悪いタイトルの記事になりましたが、この漫画を読んでる最中の俺のテンションからすれば、これはもう仕方がない。
くおおおおおおおなんぞコレえええええええ
こんなシーンばかりの作品なんです!本当に!激アマ!
ひたすらに女子高生たちがイチャイチャし、気持ちが高ぶってちゅっちゅしまくる。
こんな作品読んだらおかしくなるって。もうずーーーーっとキスしてんの。
あまりにも甘さが強いので、自分の中で過剰摂取にならないように3日くらいかけて読みました。
では今日はこの「桜Trick」の感想をー。
きららミラク創刊号から掲載されている作品です。
4コマ雑誌を定期購読したことなかったので、いいタイミングで登場してくれた雑誌でした。
で読んでみたらこの漫画の第1話にブチあたり・・・凄まじいインパクトに震えた・・・!
その時にはミラク創刊号感想のときにも書きました。
→"自由"がテーマの新4コマ雑誌創刊!『まんがタイムきらら ミラク』創刊号
ゆる~い、ほわほわ~な女の子たちの女子高生ライフのはじまり。
いわゆるきらら系らしい、やさしい雰囲気。最初は少々の百合要素を匂わせる程度でした。
ふむふむ、繊細でかつ柔らかそうな女の子たち、いいじゃないですか!
と思ったらチュッチュしはじめたのである。
「んぅ」
「優ちゃん今声だした 可愛い」
「んむ」
「ううっ声が出ちゃう 春香に聞かれていたらどうしよう…」
「もっと出して優ちゃん」
「もう一度 もう一回だけ」
「ん」
「抑えなきゃ 抑えなきゃ」
「んにゅ」
これは…恥ずかしすぎる・・・。ニヤニヤがとまらんな・・・!!!
というわけでけっこうガチな方向に百合百合している本作。
第1話以降もキスシーンは続きます。ノルマでも課せられているのかと思うくらいに、毎度ちゅっちゅしまくるお約束。
メインとなるキャラクターは2人。
あまえんぼうで照れ屋で花の髪飾りが目立つのが優。わんこみたいなツインテだ。
好きの気持ちををとめられない暴走
基本はアグレッシブに突っ込んでいく春香が優を誘っていくかたち。
優も、春香とのキスが大好きだとは口では言わないけど、態度でまる分かりです。なんにも繕えてない不器用さが最強に愛らしい・・・!
結局のところ、見ていて本を投げ出したくなるくらいに小っ恥ずかしく満開両思いなので
なーんの心配もすることなく、ただただ2人の甘い甘いイチャイチャを堪能するのみ。
ドロドロした黒い感情がうずまく・・・そんな百合ワールドも好きなのですが
こちらはカラッと明るくみずみずしい。ピュアで美しい世界が広がっています。
やってることはキスまでで、2人は満足している様子。
さらにディープな関係に進むことはあるかなぁ。なさそうかも。あったら凄いなw
関係はすでに出来上がっているので、ストーリーや関係進展の要素は薄いかな。
優の姉である美月さんあたりが覚醒するかどうかはカギになりそうですが!
話はズレますが・・・美月さんが今回まで何度も家にやってきているはずの春香の顔を知らなかったのは、どうやらたまたま風邪だったり修学旅行だったりのタイミングらしいです。
そういう日を「狙って」家に上がり込んで春香は優との時間を満喫していたのではないかと・・・そんな適当な妄想をしてしまいました。そんな裏はないかなぁw
作中登場するカップル(?)はほかに2組います。
個人的には恋愛感情ぜんぜんなさそうにつるんでる、ゆずと楓がお気に入り。
主人公たちがベタベタしまくりなので、ほどよい距離感で互いを分かり合ってる感じがほっとします。どっちがより良いということではなく、いろんな女の子2人の関係があるのだなという意味で。
もう一方のしずく&コトネは・・・しずくちゃんが完全にネコでかわいらしいですね。気まぐれだけどちょっと甘えん坊で。小動物チックな魅力あふれてます。あと超受身。
つらつらと書いてきましたが、とにっかく甘い漫画でした。多幸感はんぱない。
各エピソードもほっぺたおちそうに美味なものばかりですが
カバー裏もかきおろしの巻末漫画も、オマケがどれも震えるほど可愛らしく・・・ッッ!
切ない百合漫画が好みなのですが、ここまでハッピーを突き抜けてくれるのも最高です。
もうかわいいとしか言ってない更新になっていますが、仕方ないですよね。
「桜Trick」1巻、最高に幸せな女の子たちのキスが楽しめる作品です。
では最萌えな1コマを紹介して終わります。
もおおぉぉぉマジかわいいな!!
『桜Trick』1巻 ・・・・・・・・・・★★★★
百合チュッチュ最高みゃああああああってことです。溶けてしまいそうな甘い百合キス。