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正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[漫画]ブラックでサイケ。精神が病みそうな濃厚ダークファンタジー『世界鬼』1,2巻

世界鬼 1 (裏少年サンデーコミックス)世界鬼 1 (裏少年サンデーコミックス)
(2012/12/18)
岡部 閏

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世界鬼 2 (裏少年サンデーコミックス)世界鬼 2 (裏少年サンデーコミックス)
(2013/03/18)
岡部 閏

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   全部、私が殺る。

裏サンデーにて連載中の「世界鬼」の感想です。
1巻も読んでいましたが、この作品は2巻からキましたね!面白くなってきたー!
2巻まででプロローグなので、一気に感想を書こうと思います。

刺激的な作品が集められたWEBコミック誌「裏サンデー」ですが
この「世界鬼」は退廃的なムード漂う、サイケで濃ゆいダークバトルファンタジー。
設定として見れば異能バトル漫画とも捉えることができますが、その背景にある要素がブラックすぎて、全然ストレートな印象を受けませんね。
この澱み、歪み、負のエネルギーが充満している様子に打ちのめされる。
サイケな世界観はそのまま世界に引きずり込まれそうな気味の悪さ!
決して気持ちがいい作品ではありませんが、確かに心揺さぶられるパワーがあります。
気が滅入ります。どんどん落ち込みます。でもそれが突き詰められて、面白くなる。

作品紹介には裏サンデーの公式と、あといいNaverまとめがあったので貼っておこう。
公式→http://urasunday.com/sekaioni/
NAVER→裏サンデー「世界鬼」の主人公が歪みすぎて人気



主人公、東雲あずまは中学2年の女の子。両親を失い親戚に預けられていますが、そこでは日常的に虐待を受けていました。しかも叔父からは性的暴力さえも。
希望の見えない日々に精神を病み、いつしか彼女はおかしな症状に悩まされます。
「鏡の国のアリス症候群」。
実在する病気の「不思議の国のアリス症候群」に似たそれは、症状として鏡の中に強烈な幻覚を見る。
あずまはしかし鏡の中の幻覚(文鳥)と仲良くしゃべったりしており、むしろ居場所のない現実からかけ離れた鏡の幻想に、ひとつの居場所を見つけていたりしています。
鏡のように何かを映すものなら、水面にも幻覚は見える。
その幻覚はあまりに突拍子もなくそして不気味で、現実に忍び寄る異物感がよく現れています。

世界鬼1

「鏡の国のアリス症候群」を患う人間は、鏡の向こうの幻覚に向き合っています。
あるものは居場所として。あるものは忌避すべきものとして。

そんな「鏡の国のアリス症候群」罹患者(以下「アリス」)たちが、鏡の向こうの異世界に集められ、命をかけて怪物「世界鬼」と戦うことになります。
それはアリスたちだけでなく、世界をも破滅させる戦い。
この戦いのルールはだんだんと明かされていくのですが、いわゆる異能バトル的要素に加え、意地が悪すぎるエグいシステムに衝撃を受ける。

1巻はまるごとプロローグ、2巻の中盤でついに第一章スタートという具合ですが
このプロローグのラストが凄まじい。どうせならここまでを1巻にした方がよかったのでは、と思うくらいここから作品のテンションが変わってくる。それでいて光が見えてくる。
底の無い絶望は、ある日突然に希望へ変わる。
ここからが「世界鬼」の本番!暗すぎるけど続きを追いたくなる求心力の強いストーリー展開に、まさに釘付けになる!



ドロドロの絶望感と、躁鬱の躁状態のような異様にハイテンション。
頭イカれてるというか実際そんな感じのキャラクターばかりな本作ですが
主人公の東雲あずまに関してはとにかく引き込まれまくる。
序盤の、なにも救いがない暗黒っぷり。ただただ踏みにじられる少女。
あずまちゃんの境遇は本当に辛すぎて、直視することも時に嫌になるくらい。
がっつりと虐待描写。だからこそ、この漫画の展開は映えるんだよな……。
救いのない現実は、しかし逆転する。アリス病をあえて利用する形で。

世界鬼にとどめをさしたアリスは現実で大切な人を失う。
日常的にアリスに密接する生命が奪われる。
当然うろたえる他のアリスたち。もう戦いなんてできない。でも戦わなくては自分が死ぬ。世界が死ぬ。逃げ場のない残酷なルールがアリスたちを追い詰める。
しかしそのルールを理解した途端ににあずまは覚醒する。
殺意を武器に能力に買え、チェシャ鬼を瞬殺してみせた彼女は
無事、あずまを日頃から虐待していた叔父一家の一員を死なせるのです。
この展開で、いよいよ「世界鬼」という物語は本当のスタートを切りました。
漫画で読んでると、ヤバいですよ、このシーンの衝撃は。

彼女には大切な人などもはやいない。会いたい母も今や行方知れず。
だから彼女には、身近にいる死なせたくない人なんていなくて、むしろこの残酷なルールを逆手にとって殺してやりたい人間ばかり。
これが絶望が希望に変わった瞬間。
残酷なルールも、彼女にとっては生きる希望になったのです。
見事、ずっと自分を虐待してきた男を見事に死に至らしめた時のあずまちゃんがコチラ。

世界鬼3

やべえ、満面の笑み!
ムカつく人間を殺したあずまちゃんの、見たこともない最高のキラキラ笑顔!

きたきたきた!どうしようもなくダークだけど面白くなってきた!
正直言うと、プロローグの内容全部を1巻に収めてくれれば、もっとよかったのになぁと。1巻でも面白かったですが、プロローグのラストの展開で本当にウオオオオ!っとテンション上がるので。
この作品は1,2巻一気読み推薦ですね……!



主人公だけでなくいろいろクセモノ揃いな「世界鬼」。
濃い奴らばかりなので、彼らがどう物語を動かしていくのかがとても楽しみですわ。
特に注目したいのはアリス病の女子高生、黒江稔。

世界鬼4

彼女はとにかくセックスがしたいニンフォマニア。セックス依存症です。
2巻の途中からその本性を表し、シリアスなバトルを尻目に1人サカっている異次元空間を作り出していました。シュール……。
そして3月25日更新分の裏サンデー掲載話で、彼女のことが語られるのですが……
「はじまったな!!」と言わざるを得ない。ダメだコイツ!
もう殺す気マンマンの覚醒待ったなし状態!!この最新話は、内容を全く知らない人でも見る価値ありそうな衝撃回なので、気になったらぜひ!ヤバいよ!セックスセックスだよ!オゲェ!3/25更新分

あとなにげにお気に入り元自衛官のヤク中男が面白カッコいいんですよ。
ガンギマリのトリッパーなんですけど、時々ちゃんとカッコいいんです。時々。
頼れる大人でありながら間違いなく見習えないクズ野郎っぷり隣り合わせw

世界鬼2

「私とセックスしませんか!?」
「シャブセックスはいいぞお」


なんだよこれはww
ドがつくシリアス漫画ですが、時折くだけたシーンが入るので不意をつかれて笑うw

そして気になるのが『鏡の向こうの怪物・世界鬼はどういう存在なのか』という疑問。
生物ではあるのですが、どういう意識で存在しているものなんだろうか。
もしかしてアリス病を極めすぎて、鏡の世界の住人となったアリス病患者の成れの果て、とかだろうか。などと妄想は膨らみます。鏡のむこうからの侵略者ですからね。
そして、親密な人間が代わりに死ぬ、この作品のキーとなるというルール。
これが今のところはあずまにとってプラスに働いていますが……
そのうち、きっと彼女が願っていなかった人を失う展開とか来るんじゃないかと、ヒヤヒヤ。
続きが気になる漫画なので、この先どうなるかの考察もはかどるというものです。
もとはWEB漫画で公開されていたらしいのですが、自分はそちら完全未読なもので。



というわけで「世界鬼」1,2巻の感想でした。
どんよりとした息苦しい作風と、救いのない舞台・設定。これは万人受けしねーよなーと思いつつ、でも多くの人に読んでもらいたい独特の鋭さ。
そしてさっきにも言いましたが、この作品の面白さは2巻から本領発揮です。ぜひ。
裏サンデーで2巻収録分の直後から読めるので、単行本派も嬉しいですし
普通にがっつり第一話から試し読みできる意味でもいいですな。

画力という面ではまだ発展途上な、もうちょい厚みがある絵が欲しいなと思う箇所はありますが、この作品ならではの気持ち悪さは存分に振るわれており、これはこれで全然アリ。
どう転ぶかわからない、続きが気になりまくるタイプの漫画なので、今後はちゃんとWEB連載でおっていこうかな。
独特のセンスが光るダークファンタジー。ハッピーエンドなんて見つかるのか?

『世界鬼』1,2巻 ・・・・・・・・・★★★☆
よむなら2巻まで一気読み推奨で。心にガツンと衝撃を与える、暗く重い漫画。

[漫画]ここが百合ちゅっちゅパラダイスか……!! 『桜Trick』 2巻

桜Trick (2) (まんがタイムKRコミックス)桜Trick (2) (まんがタイムKRコミックス)
(2013/02/27)
タチ

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   春香にキスした音です!

女の子と女の子がちゅっちゅしまくる「桜Trick」2巻が出ています。
読んでいるときの多幸感がハンパなく、脳がシロップに浸されているかのような感覚を味わえるデロ甘ガチ百合4コマ漫画!!
これを読んでいるときの自分はおよそ誰にもお見せできない醜態です。
1巻ではちゅっちゅしまくりでしたが、2巻でも相変わらずちゅっちゅしまくり。少女たちの心がドキドキで揺さぶられ、しっとりと口づけを交わす。ああもう、これだよ。これが見たいんだよ俺は!
今回の表紙の上2人、優と春香の甘ったるい表情も素晴らしいですな……。

1巻→イチャイチャ百合ちゅっちゅ!『桜Trick』 1巻



では感想を。
ノリは本当に1巻と変わりなく、安心できる仕上がり。
文化祭準備から当日、プールにイルミネーションデートに大晦日に結婚式!!結婚式!!
季節感の強いエピソードからスペシャル感たっぷりなシチュエーションまで各種取り揃え、その全てにおいてとにもかくにもひたすらに甘い甘いイチャイチャが繰り広げられています。恐ろしい。どれだけ俺を幸せにしてくれるんだ。

優と春香の磐石ペアの突き抜けたバカップルぷりに最大限癒されつつ、2巻で注目したいのはしずくとコトネ。というか一番に心打たれたのはこのシーンで、このセリフが突き刺さったのです。

桜23

「軽はずみでキスなんかしないでよ」
キスしまくり「桜Trick」ではありますが、軽はずみでキスをする、と言われてしまってはね。しずくちゃんすぐ拗ねちゃうから……慰めてほしそうに振舞っちゃうから……かわいいよな……。
シリアスなこと言っておいてすぐコケちゃうしずくちゃんが可愛いからかわいそうやら、この作品のバランス感覚が心地いい。

そうそう。優と春香がわりと能天気な2人なので、こんな風に思い悩んで暴走してしまうような、シリアスなすれ違いエピソードはほぼありませんでした。
春香×優がぽわぽわっと優しい柔らかい雰囲気のペアだとしたら
コトネ×しずくは結構鋭い感情をあらわにする、とがりのあるペアなのかも。
コトしずは結構ケンカもしそうだけど、仲直りのたびにめちゃくちゃ甘酸っぱいイベントをしてくれそうだよなーと、今回のを見て感じましたよ。あー落ち込んだしずくちゃんをナデナデするコトネちゃんー……。心配性で寂しがり屋なしずくちゃんが拗ねたら、コトネちゃんがそれを優しく包み込んだりして。あぁぁーかわいい。かわいい……。もっと知りたいなコトしずのこと。

しずくちゃんの中学時代の思い出話も、いいなぁ。
心通じ合える友人はきっといなかった。でも今は違う。
一緒に夜を過ごしたらすごく嬉しくて、切ないくらい胸高鳴って、キスをしたくなる大切な人がいる。今のしずくとコトネの関係性の甘酸っぱさをさらに噛み締めることができた小話でした。



そしてさてメインである優と春香ですよ。今回もたっぷりどっぷりイチャ甘ざんまいのおふたりですが、2巻も絶品イベント盛りだくさんであり、ニヤニヤしすぎて俺の顔面崩壊も大変なことになる。
特に結婚式は正気を失いそうになるほど破壊力ある萌えシチュ……!
親戚の結婚式にお呼ばれするのですが、優は勘違いして、自分と春香の結婚式だと思い込んでしまう!一人で暴走して舞い上がったり恥ずかしがったり興奮したいとせわしない優ちゃんキャワワ!!キュートなアホっ娘の真髄であるよ。
勘違いだった結婚式。けれど2人は、2人にとっての結婚式に則り、誓いのキスを交わす……最高ですやん!!

桜21

「これも これも 全部 誓いのキス』
この2人は結婚さえ意識しているんだな……!なんかもう、幸せっ!

ほかにも本当に素晴らしいキスシーンがたくさんある2人なのですが
その多種多様なキスシーンにおいて、2巻は重要な進化があります。進化というか重症化というか。これは震えましたね……。
ちゅっちゅの限りを尽くす百合漫画として、新たなフェイズに突入するッ!!

桜22

おぎゃぎゃーーーテレフォンちゅっちゅ!!!!

大変なことですよこれは……。ドラマCD化とかしたら1トラックまるごと2人のテレフォンちゅっちゅ音声とかやってくんないかなとマジで思う。
会えばちゅっちゅ。離れてもちゅっちゅ。これが百合ちゅっちゅパラダイスか。



そんな「桜Trick」2巻でした。
はぁ~~~~~幸せたっぷりな百合漫画って、本当にイイですね……。
この作品には3人のメイン百合っぷる(百合カップル)がいて、それぞれに可愛らしいのですが、「桜Trick」唯一の恋愛感情ナシ仲良しコンビ、ゆずと楓ちゃんが個人的にはかなり気になる。いやこの作品のキャラクターはみんな気になりますが。
ほかのキャラがこれだけイチャイチャしているからこそ、色気のないカラッとしたゆずと楓の雰囲気がいい。
恋愛感情はないけれど、友達同士の増え合いの中で自然とにじみ出る百合スメルを嗅ぎ味わう。それもまた良き愉しみでありましょう。
描き下ろしの巻末漫画やカバー裏もすばらしい破壊力!特にカバー裏としずくちゃんとコトネちゃんは完全に同棲状態であり、よだれが止まらねえ……。
おねえちゃん可愛いけど報われませんねえ。振り回されキャラが板についてきて、さらにかわいくなってきましたが。幸せになってくれよ!
満足いく第二巻でした。女の子の秘密のキスは甘く切なく最高だっ!

『桜Trick』2巻 ・・・・・・・・・★★★★
イェー百合ちゅっちゅ最高ー!幸せ前回の百合4コマ第2巻!!

[漫画]今日もうまくいかなかった。今日も空が灰色だった。『空が灰色だから』5巻

空が灰色だから5(完結)(少年チャンピオン・コミックス)空が灰色だから5(完結)(少年チャンピオン・コミックス)
(2013/03/08)
阿部共実

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   どうか 許さないでくれ

「空が灰色だから」5巻が出ました。これにて完結となります。
最後の最後までこの作品らしさが貫かれましたね。「らしい」一冊でした。
最終巻だからと特別なこともせず、灰色な1話完結オムニバス。
ザクザク心を切り刻んでくるような悲しいお話から、心をほっこりさせてくれる暖かなコメディ。テンションの振り幅激しいのが魅力です。

心ざわめく空の色。レッツ・ガガスバンダス。『空が灰色だから』1巻
傷ついたらハマる、思春期の光と闇。『空が灰色だから』2巻
きっと絶対、世界は悪に満ちている『空が灰色だから』3巻
あなたもきっと心ざわめく。『空が灰色だから』4巻



いつも通り、特に気に入ったお話を個別感想していきます。

●53話「私を許して」
陰か陽かだったら陽のお話。というかストレートに感動できるタイプのお話。
生真面目すぎていろんなことが許せない女の子が、その性格ゆえに友人たちに離れられていく。
友達同士の仲だからこそ冗談みたいにも通じる「もう友達じゃない」「もう絶交」なんて言葉は、使われるシチュエーションや相手の心ひとつで、その重大さは変動してしまう。
一度口にしてしまったからには撤回なんてできない主人公の、頭でっかちさは可愛くもあるんだけど世界は随分と冷ややか。自分が思ったより世界は自分を置き去りにしていく。
そうして心をドキドキさせながら読みすすめた先に待つ「許容」に、すっかりヤラれた。

灰色51

「空が灰色だから」は短いページの中でのテンションのコントロールがすごく上手いよなぁ。うまいこと上げて下げられまた上げられ、楽しいと同時にヘビーで心が疲れる・・・。過去にも書いていますが、この作品は単行本で一気読みするとヘトヘトになるんですよ!

「許す」という行為については、この巻の中だと最終話でも描かれていて
2つのエピソードを比べてみても、なかなか心に突き刺さるものがあります。

●54話「負けず嫌い」
ラブコメチックなほっこり話。女の子と男の子、それぞれの意味不明な暴走が楽しいw
「洗剤が混入した手作り弁当を必死に食べる」という危険なことに情熱を燃やす漫画なのですが、バカバカしいのに最後は達成感かなにかでイイハナシダナー風にまとまる。
口汚く激しい会話劇の裏側でむずがゆい恋心がこっそり存在感を現しており、クライマックスでは思わずニヤニヤしてしまう!

●57話「マルラマルシーマルー」

灰色52

ビクッ  こえーよ!!
クレイジーなお話は「空が灰色だから」のこれまでに何度かありましたがこの作品は途中で様子がおかしくなる。コメディの域を超えた恐怖感で持ち上げて、最終的にコメディっぽく戻って終わる、けっこう変則的構成。「おわっ来たかまたこのテのヤツが!」と身構えると裏をかかれてしまったw

この作品も緩急というか、雰囲気がガラッと変わる瞬間がおもしろい。窓から投身しようとするあたりで、あれ、これってもしかしてギャグなのか?と思い直す。
この作品の狂気を知っている人だからこそひっかかるフェイクっぽい。
そして何はともあれ、おかんの圧倒的癒しパワー!
いや、言い間違えを指摘されると恥ずかしいですよね。このブログも誤字脱字だらけですが・・・(なおせ

●58話「私のルール」
潔癖症の少女の失敗。悶々とひとりで思い悩んでいく序盤の流れはこの作品らしい。しかしそこからの後半の流れでゾクゾクしました。あ、そう裏切ってくるのか・・・みたいな。

「でも 手をつないでくれたっていいんじゃないかなとは思うよ」
「大丈夫なの私 好きな人になら汚されたっていい」
「黒木くんのならその移された黴菌だって幸せに感じられるから」


潔癖。だけど恋する少女。例えどんなに汚くても、きっと許せるはず。
彼女なりの理論に基づく歩み寄りは、きっと彼には伝わらない。彼女の頑張りも抱く愛おしさも理解はされない。
最後のチェックボックスにチェックが打たれるシーンが残酷でこちらもダウン・・・。
きっとこの断絶を、彼女は取り戻せないんだろう。チェックを入れてしまったのだから。自分の意識のために自分が泣く。自分のコントロールってどうやるんだ。無意識だったからこそ事実が辛いよなぁ・・・。

●最終話「歩み」
あぁぁぁぁぁ。最後まで・・・最後まで「空が灰色だから」だった・・・。
なんでことない、きっと現実でも有り得るすれ違い。
しかしここまでシリアスでシンプルにエグいなんて。
「友達になってくれてありがとう」でこちらの心をへし折られるし、続くクライマックスのモノローグの暗いこと辛いこと・・・。

誰かこんな情けない私を どうか許さないでくれ
これからの未来に一切の喜びや幸せを与えず
こんな卑怯者で弱い私に一生罰を与えてくれ


身も心も切り裂かれそうな切なさ。嫌な動悸が加速する。
後悔と申し訳ない思いで爆発しそうで、この切実な「許さないでおれ」の願いにすっかり打ちひしがれる。大切な人を傷つけた。そのことに途方もなく傷つく主人公。もうひと握りの素直さがあれば、きっと世界はかわったのに。傷つく彼らの涙を見てると、本当につらい。

灰色53

第53話「私を許して」は、いつも相手に許容してもらっていたのは自分じゃないか、と認識してラストを迎えます。一方で最終話では、自分が自分を許さない。
それは相手が自分を許してしまったから。暴言を吐くことなく感謝をし、殴りかかることなく静かに席についた。そうしてまた1人になって、ボロボロ泣いた。それでも自分を許してしまったから。
「許さないでくれ」と願う最終話は、大切な人との断絶、そして世界中すべての幸福との断絶を願って終わるのだ。取り返しがつかない。取り返しができちゃいけないんだ。だって許されてはならないのだから。
後でまた書こうと思うけれど、様々な「孤独」を描いてきたこの作品らしいラストだったと思います。けれどやはり、心に生々しい傷を残していきやがった。



この作品を通して思ったことは、孤独の描き方の巧さというかバリエーションの豊富さというか、視点の持ち方というか。ともかく孤独にまつわる描写の1つ1つだ。
マイノリティやらもとのコミュニティからはじかれた人物がたくさんいた。
作品紹介でも「うまくいかない日々を描く」というフレーズが使われています。
自意識の空回り。会話の不成立。得られない理解。普通と異常の狭間のゆらぎ。そこから連鎖されるとことん救われない現実と、上手くいかないけれど愛おしい時間。

自分に印象的なのはキャラクターたちが孤独の中で、それぞれ物思いにふけっている様子でした。
孤独ってのは憐れかもしれない、コミカルかもしれない、癒しや救いかもしれない、絶望かもしれない。いろんな含みを持たせて、色々な「1人の人間」を切り取った作品でもあったように思いますね。
孤独を発展させる話もあれば、孤独のまま完結する話もある。孤独の痛みはときに癒しにもなる。誰にも干渉されないのは楽ちんだ。
人とのコミュニケーションって難しいね。うまくいかないね。悲しいね。でもたまに楽しいね。
そんな黒白はっきりしない様がまさに灰色。人間の心模様は、大半いつだって灰色なんじゃないか。少なくともこの漫画を好んで読む人なんかは、きっと。

「空が灰色だから」を読むとき、とくに心を敏感にして臨んでいました。癒されたりヘコまされたり死にたくさせられながら、自分の喜怒哀楽を楽しめる作品でもあったから。
インパクトの強かったエピソードの鋭利な読み心地はそうそう忘れられるものでない。
芳醇な絶望の香りがまたじんわりと心に染み付いてる。

本当に思春期独特の息ぐるしくなる感覚が、むせ返るほど詰まっていて
自分をまるっと重ねることはできなくても、この漫画の中で繰り広げられたドロドロと蠢く得体の知れない感情の暴走にあてられて、吐き気がする。
強烈な漫画体験を与えてくれて、すごくありがたい漫画です。
しかし一方でもう二度と読み返したくないようなエピソードと、その悪意と毒気も内包されていて、自分の中ではショッキングな作品でしたよ。
まぁそういうショッキングなエピソードも、結局読み返してしまうんですけど。読み返しては、分かりきっていたのに再び打ちのめされるスパイラル。

最後まで「空が灰色だから」エッセンス全開で嬉しかったです。
これで終わりというのは寂しいですね。もっと読み続けていたかった。こんなに『濃い』漫画をオムニバスで、週刊で連載していたこれまでが異常だったとも思いますが。恐れ入りますわ。
最後まで勢いの衰えないままに終わったと自分は思いますし、終わるタイミングはこれでよかったのかもなとも感じます。全5巻。なかなかいい尺でまとまりました。
阿部共実先生の新しい作品が読めるのを楽しみにしつつ
自分の中でまだまだ熱の冷めない「空が灰色だから」を何度も読み返して味わいたい。

『空が灰色だから』5巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
ありがとうございました。最後まできっちり灰色。大切な作品になりました。

[漫画]あなたもきっと心ざわめく。『空が灰色だから』4巻

空が灰色だから 4 (少年チャンピオン・コミックス)空が灰色だから 4 (少年チャンピオン・コミックス)
(2013/01/08)
阿部 共実

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   中浦は泣いてもブスだな クソがあ

心揺さぶる名オムニバスシリーズ、「空が灰色だから」第4巻!
去年に輝きをはなった新作ですが、2013年になってもインパクトを与え続けてくれるんだろうなー。4巻も、いい一冊になっていますよ。
「なんだか上手くいかないなぁ」な失敗談を中心に、とにかくいろんなタイプのエピソードを打ち放ってくる作品。次にどんなお話が来るのか、ドキドキしたりヒヤヒヤしたり。一度ハマったらやみつきですよ!受け付けない人も当然いるであろう、クセのつよい作品ではありますが・・・。



4巻は愛情を感じさせてくれる、暖かなエピソードが個人的には胸に強く残りました。
ただ甘いだけでも暖かなだけではないのがこの作品のお約束。傷ついたり絶望したり・・・でもその上で、やはり暖かさが
この作品で描かれる優しさ、暖かさってのは、本当に染みるのだ。
まぁそれは普段のこの作品の雰囲気があるからでしょうね。残酷なほどに突き放してくる、コミカルだけど嗜虐性たっぷりな作風。でも、たまに。たまにね。めっちゃくちゃ優しい。泣ける。

第39話「世界一我侭な私から世界一ブスなお前に」。傑作だこれは・・・!
これは雑誌で読んだときからとてもお気に入りだったんだけど、単行本でまた読んだらまた泣けてしまった。
空灰って、「裏切り」が結構描かれています。だからこの話でもそれが来るんじゃないかって、すごく身構えちゃうんですよ。
この話だと、派手目な女子と地味目な女子が2人が主役。
小学生から腐れ縁のつづく、絆の深い二人ですけど、そういう前フリをされたらやっぱり嫌な予感がしてしまって。ヒヤヒヤですよ。
でもこのエピソードは、本当に深い友情を見せつけてくれた。
裏切るじゃないかなんて嫌な考えをしてしまった自分を反省しつつ、びっくりするくらい胸に突き刺さりました。この作品じゃなきゃ味わえない感覚と感動かもしれない。
この作品に毒されると、ネガティブな予想なしがちになるんですけど、それを逆手にとってこういう話もやってくるから侮れない・・・!!

空灰41

思わず涙があふれる名シーン。
ひねくれたこの作品で、ここまでまっすぐな叫びが描かれるとは。

第46話「初めましてさようなら」。これも素晴らしい!
学校で死んだせいで学校の地縛霊になった女の子。幽霊なのに幽霊がこわくて夜の学校でワンワン泣いている・・・っていう笑えるような切ないような、皮肉感あるエピソード。
夜の学校で、彼女は1人の女の子と出会います。その娘は自殺をはかったけれど失敗して生きながらえてしまった。それを聞いた幽霊は、「生きろ!」とめちゃくちゃ応援してくれる。
でもそうして全力で叫んだエールが、すぐに無意味になるという滑稽さ。
この作品らしいブラックユーモアも含んだラストだと思うんだけど
でもその結末を見て、2人の目にも俺の目にも涙が浮かんだりしているのだ。
取り返しのつかない結果になっても、すぐそばで一緒に泣けちゃう大切な友達が、その時できちゃってさ。優しいとはまた違うお話だけど、でもぬくもりあるいいお話です。




そんな暖かさが印象的なエピソードも収録しつつ、でもやっぱりこの作品なので、心にグサリ深く突き刺さるエグいエピソードもある。
第40話「マシンガン娘のゆううつうつうつうつうつ(以下略」なんかは、明→暗→明とムードがガラッと変わる展開が面白いエピソード。
一度主人公の心の闇を知ってからだと、明るい場面でもつい主人公の声にならない嘆きが、モノローグとして自動再生されてしまう。
何も考えていないような表情の裏は、もうグチャグチャでボロボロ。

空灰42

第43話「膨らんだ」は、理想を押し付けをし合うイビツな姉弟のお話。これが第一話でハートウォーミングなストーリーが始まるならいいじゃない、と思えるけど、まぁこれでおしまいなので。おしまいになっちゃったらこれはもう息苦しいばかりのエピソードとして完結せざるを得ない。

第45話「名乗る名もない」はエグいなぁ。もしかしたら現実でもありえる、些細なようでとても致命的な裏切りのお話。あーこれが空灰だよなー、みたいな。
ヒーローを演じる少女。嘘を見破られた少女。最後のコマに込められた、静かな絶望は表現しづらいものですわ。

ブラックなものでも感動的でもなく、単純にコメディチックなお話も楽しいですよ!
ポジティバーとネガティバーとぶつかり合う38話。エレベーターに閉じ込められておしっこを我慢し続ける少女の壮絶な死闘を描く第42話は、好きな人結構いるんじゃないかw

空灰43

と、1冊の中で本当にいろんなお話が読めて満腹感がすごい!
最後まで読まないとどんなお話なのかわからないのもいい。1ページ先が読めないというハラハラ感!
これからもどんなお話が読めるか楽しみです。本気で。
個人的には第39話がモストフェイバリットでございますが、ほかの人がどのエピソードがツボなのかも気になるところ!いろんな人の言葉で語られるのも読んでみたい作品でもありますね。

『空が灰色だから』4巻 ・・・・・・・・・★★★★
自分の涙腺に直撃のエピソードに震えた一冊。あなたもきっと心ざわめく。

[漫画]想いはつながりきっと実を結ぶ『1/11 じゅういちぶんのいち』5巻

1/11 じゅういちぶんのいち 5 (ジャンプコミックス)1/11 じゅういちぶんのいち 5 (ジャンプコミックス)
(2013/01/04)
中村 尚儁

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   ――――またあえるといいなぁ・・・

『1/11 じゅういちぶんのいち』の5巻が発売されました。
前に4巻が出たときに既刊含め一気読みしたのですよ。なのでブログで書くのは今回が初めてですが、もっと早くに読んでおくだったなぁと後悔したものです・・・いい漫画だ!
サッカー漫画というよりは、サッカー選手・安藤ソラを軸に展開していく人間ドラマという色が強い。これがまた泣けるんですよ・・・!サッカーを知らなくても楽しめて、知っていればより楽しめる。そんな作品なんじゃないかなと思います。
毎回主人公を変えてオムニバ連作形式。いろんなお話が読めます。
人と人の繋りが生むこのドラマは、とにかく心を揺さぶってくる!
今回のオビでは曽田正人先生がコメントを寄せています。



●青柳大樹
もとはFWだったものの、有力選手たちに押し出されるかたちでDFへの転向を余儀なくされた青柳選手が主人公。不満を抱きながらセンターバックに就くも、ストレスは積もり積もって、ある日爆発してしまう・・・。

行き詰まる主人公→再起の流れがこの作品の基本ですが、それが毎度綺麗に決められて、毎度とても気持ちよく感動させてくれるんですよね。
このエピソードもこの作品らしい盛り上がりなんですが、分かっていてもジンときてしまいますよ。
自分に人生を託してくれた愛する妻・藍。彼女につい辛くあたってしまった青柳ですが、藍さんの覚悟を知ったことで変われた。

じゅういち51

しっかしまぁ藍さんいい奥さんすぎですよ!!
基本いつもニコニコしていて、優しいというかこれはもう強さを感じる程だ。
「私は、あなたの隣に咲く花になるわ」なんて言われたらね。ここまで尽くそうと言ってくれる人がそばにいたらね。そりゃあ、頑張らなきゃ。家族だからさ。男だからさ。
この夫婦はきっと幸せの花を咲かせていけるだろうな。
男にとっての理想像的ヒロインだけど、やっぱ素敵ですわこういうの。



●藪田冬太
この話は安藤ソラとは離れたところにありますね。登場しないし。でもそもそも主人公はサッカー選手を目指さないし。でも間違いなく「1/11」なんだ。
漫画を書くのが趣味の主人公、冬太。彼は学校一に凶暴なクラスメイトの大神にパシリにつかわれています。大神はボクサーとしての相当な実力者であると言う。
そんなある日に公園で冬太が出会ったのが、大神の妹の遥夏。
遥夏に惹かれつつも、サッカー選手として才能を発揮している彼女に距離を感じてしまう冬太ですよ。

才能を持っている人。臆せず勝負の世界に向かっていける人。
それができない人からすれば、それは尊敬と同時に恐ろしさすら感じる存在だよなぁ。
好きなものを好きだと癒えないのは悔しい。でも、自分をアピールすることで周囲のリアクションで傷つけられることだって当然ある。
冬太もそんなトラウマがあって、殻を破れない少年でした。踏み出せない彼にもどかしさを感じる流れをしっかり踏まえるからこそ、クライマックスの展開は王道の熱さがありますな!
さっきにも書きましたが、気をてらうことはしない作品なんですよ。でも面白いしアツい。ストレートだからこそ、キャラクターの熱がダイレクトに伝わる気がする。大神兄のカッコよさにもしびれるな!
ラストはちょっと切ないものでもある。でも大神兄との友情が確かめられた今なら、遥夏ちゃんとも繋がっていられる望みがあるよな。
でもこのまま遠さを保ったまま、見守っていくポジションというのもまた素敵かもしれない。それは失恋とはいわずもっと前向きで暖かなものだと思う。憧れの人ってのはいい言葉だ。



●津吉四季
ソラにとってのヒロインでヒーローでもある四季。
この5巻で第一部完結、ということらしいこのシリーズの、一旦の総まとめにピッタリのお話。第1話の裏側を描いた、アナザーストーリー的エピソード。
女の子だと気づかれないまま、ソラと友情を育んだ四季。
彼女がどんな想いでソラとサッカーをしていたのか。そしてどれだけ再会を待ち望んでいたのか。四季の気持ちを重点的に描いたお話です。

ソラが四季に伝えた『1/11』の意味。それから月日が経ち、ソラがそれを見失ったころに四季は再びソラに『1/11』を伝えに来る。
このサイクルをじっくり考えると、改めて感動しますな。
あとの展開が分かっているだけにけっこう辛かったけれど、でも読めてよかったエピソードですね。1話の流れは素晴らしかったけれど、このエピソードでしっかりと四季サイドの気持ちが補完されました。
これ読んでからまだ第一話読み返したら、またしても目頭が熱くなってきた・・・。

じゅういち52

受け取ったこのボールと、ソラはずっと一緒に歩んでいるだよな。
『ラブレター』という練習法は、このエピソードにぴったりだな。
四季なりのラブレターは、形も言葉もないけれど、ソラに胸に刻まれている。



そんな『1/11』第5巻でした。
これにて第一部完ってことで、収まりもいいラストでした。
でも作者的には、連載再開までちょっと開くからってことで第一部完って言っておいた、的意味が強いらしい(あとがきにて)。
第二部はジャンプSQの5月号から始まるとのこと。
ぬくもりを勇気をくれるいい漫画。オススメの人間ドラマですね。

選手の1人1人が大切なものを背負ってピッチに立つ。
サッカーをしない人もめぐりめぐっては誰かの背中を押しているなら
やっぱりみんな、『1/11』としてピッチにいることにもなるのかな。
こじつけみたいですけどね。
これまで描かれてきたキャラクターそれぞれの人生の積み重ねが、さらにこの作品を大切なものに感じさせてくれます。どんどん好きになってきている気がする・・・!

『1/11 じゅういちぶんのいち』5巻 ・・・・・・・・・★★★★
いろんな人に読んでもらいたいアツい人間ドラマが詰まっているシリーズ。

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