[漫画]痛いほど本能で踊って!『ボールルームへようこそ』4巻
ボールルームへようこそ(4) (講談社コミックス月刊マガジン) (2013/04/17) 竹内 友 商品詳細を見る |
おめでとう 君がフロアの女王だ
バチバチ火花がはじけるライバルとの緊張感!燃え上がる闘志!背筋を這い上がり体震わせる興奮!最高に盛り上がっている「ボールルームへようこそ」第4巻。今こそ読み時というヤツです。内容も注目度も勢いが出てきています。おもっしれー!!
今回で第一部完、みたいな感触でした。それだけまとまりがいい。
まるで炎の嵐のよう。
物語から、絵から、全てから吹き上がる熱風に吹き飛ばされてしまいそうですよ!!
1巻から作品に宿ったこの熱量にゾクゾクしていましたが
今そのアツさはここにひとつの到達点を見せる!
3巻 待ちきれないんだ、体が熱くなりたがっている!『ボールルームへようこそ』3巻
「天平杯」決勝戦に駒を進めた多々良&真子ペア。
引っ込み事案でこれまで特別華のあるダンスをしてらこれなかった真子を、あえて「花」として輝かせようと「額縁」の役割の徹する多々良。
ライバルの賀寿&雫ペアは、そのダンスを見てメラメラと更に激しく燃え上がる。
お互いがお互いだけを見つめて「勝ちたい!」と。
情熱が研ぎ澄まされていく。闘争本能が純化していく。
しかしあくまで優雅に華麗に、美しく情熱的に踊るのだ。だってそれがダンスだろう。
4巻はまるっと天平杯決勝戦。この興奮度は尋常ではない!
ほんとに名シーンが多くてどう感想を書こうか悩みますが最初にこれかな。
とにかくこの漫画は本当に、表情が魅力的です。
集中した凛々しい顔も、ライバル意識バリバリの緊張顔も素敵ですよ。
自分を誇ってみせる不遜な表情も、ダンスの美に酔いしれる表情も
ダンスのあと、全力を出しきった疲労と充実が入り交じる表情も。
でも個人的には1番はこのシーンに代表される表情かな。
メッチャクチャ苦しそうないい顔してる!!
まさに必死の形相です。このページだけでも熱気がひしひし伝わってきますね…!!
本当に苦しそうな極限状態。けれど彼らはこんな苦しそうな表情は極力伏せて、あくまでも余裕を感じさせるほほ笑みを周りに見せようとする。
ダンサーって見栄っ張りでカッコつけたがりなのです。痛そうなくらいに全力で、けれど笑ってみせる。だからこそ、本当に痺れるくらいにカッコいい。力の限りカッコつけるんだ。これまでの悔しさも苦しみも血の滲む努力もすべて笑顔の下に押し込めてカッコてつけみせる!
あまりに熱気と迫力がこもりすぎて、読みながらヒリヒリと胸焦がされる!
作中で彼らのダンスを見ている観客同様、本当に自分も魅せられてしまう…!
バチバチ火花ちらしあう多々良と賀寿。互いが互いを焚き付けて、全力全開で競い合う。
でもパートナーの女の子たちも負けてはいない。
多々良とパートナーとして踊る真子。
賀寿の妹であり、彼から一度見放されてしまった少女です。
4巻は賀寿と真子の複雑な感情入り交じる、兄妹のドラマも印象的でした。
賀寿がダンスを始めたきっかけの回想シーンなんかは鳥肌だった。「ダンスを選んでくれてありがとう」なんてさ。そんなの言われたらもう…!
賀寿なりのこだわりと意地がかいま見えて、よりストーリーに熱が入る!
ロリ真子ちゃんもまさに天を仰ぐ可愛らしさであった…ふう…。
真子と賀寿、兄妹のドラマもアツい。しかし仮初めのペアとなった真子と多々良たちのドラマは更にアツい!目指すは大番狂わせ。実力差は歴然。それでも勝ってやると誓ったんだ!
真子は賀寿に、自分を認めて貰いたい。そしてまた兄と踊りたい。
その気持ちを叶えてあげようとする多々良の応え方もカッコいいんだ。
ダンサーの目立ちたがり本能を押しのけ「額縁」に徹するプレイで、いかに真子が魅力的なのかを会場に見せつけようとしました。そして実際に会場を沸かせてみせた。
そして決勝戦にまで到達。この勝負に勝てば、晴れて多々良と真子は『解散』です。
この戦いに勝てば、多々良と真子のペアは解消される。
もともとは賀寿を見返してやるために、半ばあてつけのように組んだペア。
勝ちたい。勝って見返したい。お前の妹はこんなにすごいんだぞと、賀寿に見認めさせたい。真子を認めさせたい。
賀寿との勝負に勝利するという同じ目標を持った多々良と真子は、逆に言えば自分たちのペアを解散するために勝とうとしているんだ。
だからこんな、矛盾を抱えながらも晴れやかな表情を見せてくれる。
「もったいないなぁ 踊りたくないなぁ!」
そんなこと言って、なんて踊りたそうな顔してやがるんだ!ワクワクしてんじゃん。
名残惜しさを覚えつつ、しかしその顔は開始直前の高揚に染まっている。
もっとこのパートナーと踊りたい。楽しみたい。興奮したい。
けれどこの勝負に勝って、それで最後だ。だからこれが最高のラストダンス!
きっと本当だったら素晴らしいペアとして絆を磨き高めてきた2人。当然お互いに解散への寂しさはあるんだろう。それでも前に進もうとするこのストイックに惚れる!!
こうして考えると男女ペアが当たり前のダンスは、どんなカタチであれ、男女のドラマが生まれるのだろう。
そしてそれぞれの想いを胸に、男は男らしく、女は女らしく、美しいダンスを踊るのだ。もうね、深く考えるまでもなくロマンチックですわ!
多々良と真子。このペアが解散に向かっていく(勝てばね!)のは見ていて本当に寂しいです。だってこんなに素晴らしいダンスを踊る2人なのに。こんなにお互いを見つめ合えている2人なのに。それに「ラブコメとかしちゃえよ!」と思ってしまったのは確かですよ。
でも個人的には多々良と真子が恋愛感情ぬきの絆の深まりを見せてくれたのが素晴らしかった。
ラブコメを期待していた反面、決してその方向にブレなかった2人が素直にカッコいいと思えたのです。多々良は雫一直線ですが、真子ちゃんはどうなるかなーと見ていましたが。いやはや、下世話な期待をしてしまった己を恥ぢよ!
目標に向かって進んでいこうとする、ダンサーとしてのストイックな清潔さを感じて清々しかった。尊敬と友情でつながりあっていたな。
二人は共に想いも美しさも強さも絆を高めあった、素晴らしい相棒になった。
そしてもう1人のヒロイン。賀寿とペアを組んで大会に出場している雫さん。
彼女は作中でも実力者として描かれていましたが
4巻では改めて、彼女の恐ろしさと美しさを魅せつけられました。
これが花岡雫というダンサーか!
優美な中に闘志を燃やす。たおやかな少女なようで、彼女もまたダンサーらしく目立ちたがりやで負けず嫌い!自分の一挙一動が会場を沸かす興奮の虜なのですよ!
ダンサーの誇った顔も素敵な本作ですが、上の雫は本当にゾクゾクさせられた…!なんてまっすぐ「私を見なさい」と訴えているのか。すげえな。真面目に、傲慢だ。
これまでで理解はできていたと思ったんだけど、再度思い知らされましたよ。彼女の強さ、深さ、恐ろしさ、美しさ。ダンサーとしての実力に、多々良と賀寿とはまた違う女性としての魔力も合わさり輝いて、さらに奥深い!
そして大好きなのがこのシーン。1人になってから流した悔し涙。
ああ、こうしてまた、彼女は強くなる。
そんな「ボールルームへようこそ」4巻でした。
上に書いてきたように、過去最高潮のハイテンションに圧倒された一冊。
興奮が、高揚が、伝播する。
ダンスは会場に。そしてそれは読者へと!
互いが互いに自分を見せつけ合う。そしてそれを見て、また燃え上がる。
バカみたいな情熱のサイクルが、ライバルと自分をグルグルめぐって、もう勝負の相手がどうとか目的を見失って、ただ「なんかすげーぞこれ!!」とバカになってしまう。
けれど勢いばかりじゃなく繊細な人間描写も光り、とにかく物語にノせられます。言葉の選択も巧みで、人間やダンスをそこに宿るドラマと熱量を絶妙に表現してくれています。『言葉』で人を、読者を煽るのがうまい作品。
ダンサーってのは人を興奮させるのが上手いよね。まったく。
あと改めて、多々良はいい子だなぁと思ったりもした。
競技中まさに自分も踊りながら賀寿を見て、ああこの人はなんてカッコいいんだ、と尊敬していたりする。当然その賀寿に勝つ気持ちは消えないままで。
そして彼のダンスは、技術ではなく本能レベルで周囲を魅了する。
第15話、多々良たちのダンスをみて客席にいるダンサーたちが、「踊りてぇ~~~!!」とウズウズしてしまう。なによりダンスを楽しんで、それを見せつける彼だからこそのワンシーンかもな。まだダンス初心者の多々良だけど、その根っこにはすでにダンサーとしての天性の魅力がきちんと芽吹いて育っているように感じますね!いや、初心者が初心者なりにはしゃいでる姿が、ダンスに夢中になっている根源的なエネルギーが、熟練者の魂をも揺さぶっている。
踊るのが楽しくて楽しくて仕方ない!そう叫ぶような多々良のダンス!
ついにとことん根っこまでこの作品に捕まったような感じです。呑み込まれた。こりゃ面白いわ。5巻早く読みたいー!!
『ボールルームへようこそ』4巻 ・・・・・・・・・・★★★★☆
圧巻!高まるテンションを抑えきれない絶好調の内容。大迫力ですな。
[漫画]深く息をして、僕らは悲しい恋をする。 『ばらのすべて』
ばらのすべて (Canna Comics) (2013/04/26) 山田 酉子 商品詳細を見る |
光への憧れだけで焼きつくされそうになる時もある‥・
ッヒョーー格好いいなぁこの表紙!鮮やかに散る赤色。目を奪われます。
山田酉子先生の新作「ばらのすべて」の感想です。これはBL作品。
うちのブログでBL取り上げる事はほとんど無いんですが、この作家さんはがっつり追いかけているのでね。へへ。しかしうちでBL更新していったい誰が読んでくれるのか。でも大好きな作家さんなんですよ!!
著者通算5冊目の本作は、一冊まるっと使った長編。
芸能界の裏側を描く、スリリングな読み心地が楽しい作品。
ジャ○ーズJr(みたいなもん)に所属する.主人公らのドロドロな関係を主軸にしたストーリー。あとがきにも触れられていましたが、銃とかクスリとかヤ○ザとか、アブない要素も詰め込まれています。
作者特有の静寂やもの寂しさ漂うお洒落なムードは今回も健在。
山田酉子作品の青さ、鋭さ、軽さ、冷たさ。今回も魅了してくれました。
海の底で深呼吸しているような。まぁそんなのできないですけど。ゆっくりと心を切なく浸してくれる感覚が素敵すぎる。
過去の作品の感想
刹那的、オンナノコ。『女の子のすべて』
カッコよくて弱くて泣き虫で強がりで 『クララはいつも傷だらけ』
自由に愛して自由に生きよう。『かなしい人はどこにもいない』
「好きだから」の先にあるもの 『ロング&ビューチフルライフ』
内容について。
アイドルの卵として活動する気弱な青年・糸田川。彼が片思いする植芝くんは、1年前に事務所をやめて音信不通になり、そして今はアダルトビデオに出演中。
そのAVを糸田川がたまたま見てしまい、そしてある日再会までしてしまう。
やっと再会できた片思いの相手。しかし植芝はすでに光のあたる舞台を降りて、闇の世界に踏み込んでいる。深い考えをすることをなく植芝に近寄っていく糸田川は、そうして彼の知らない世界へと関係していくことになります。
芸能界を舞台にしているだけあり、個性的かつ作中世界におけるイケメン力(ぢから)の高い連中ばかり登場しています。あんまりキラキラはしていない印象ですが。
そしていろんな男が出てくる。弱い男。強い男。悪い男。
いろんなヤツがいろんな絡み方(物語的に・物理的に)をしており
それぞれの人間関係がはらむ緊張感や怠惰や甘酸っぱさがいい感じです。
しかし植芝くんが面白いのです。
ビジュアルはカッコいいんですが、その内面が実にダメ野郎で。
優しくない・地も涙もない・大事にしてくれない‥そんなダメ男を好きなダメ男です。ようするにドM!ドマゾである!(どうでもいいがドエムというよりドマゾと言う方がより変態性が増して好き)
自分をきちんと愛してくれない相手“だから”好きになってしまう、その根っからの不幸体質!激しくいたぶられるのが好きだし、キツい言葉を浴びせられるのが好きだし、報われないのが好きなのだ。なんて面倒臭いヤツだ。不憫でかわいい。
自分を好きになってくれる相手を、植芝は好きにならない。
人の好意を受け止めようとしない、自分の性欲に忠実でワガママな男なのだ。
そういう残酷なエゴイストであることを彼は自覚しているし、それでも変わろうとしないその決意の強さも魅惑的に見える。
植芝は作中で女性から「ブスな女みたいだ」と言われますが、これ面白い見方だよなーと思って印象的です。コミックス帯にもこのフレーズは引用されてましたね。
しかしまぁ主人公の糸田川君もMですからね!
糸田川と植芝。ふたりしてドM!糸田川は植芝よりはマイルドだけど、好きな人に困らされたい願望はアリと見える。ドM同士のカップリングとか不毛じゃないですか‥お前ら大丈夫なのか‥。でもそんな不安定な関係性もまた面白いんだ。
でも糸田川と植芝、両方とも似たような髪型・顔で混乱したなぁ。このメインの2人は見た目まで似通っている。これはあえてなのかなとも思うけれど、やや不親切な気がしないでもないかな。
2人がラストで掴んだ相思相愛の関係を、ずっと続けられるとは思わないかも。
どこかで破綻しそう。ヒドイ別れ方をしそう。糸田川くんは絶対としても、植芝もなんだかんだで糸田川のことを引きずったりしてさ。
そういう、一生忘れられないってくらいまで相手を心に刻むことが出来るのはそれはそれで非常にロマンチックなことだよなと思う。
それで全く話はあー江夏くんカッコいいなー。コイツはカッコいいよ。
でもあとがきで「江夏くんは中村くんに片思いしてる受キャラ」と裏設定暴露されてて笑ったwww こいつがどんな恋愛するかも見てみたいw
これがカバー裏面。ビジュアル面でもカッコよさで言ったらコイツ断トツだな。
しかもそれでいて作中で一番の働きものであり、努力をしているし、それを鼻にかけないカリスマがある。どうすんだよこの男!すげーいいヤツじゃねぇか!この完璧スペックで男に片恋しててしかも受というのがいいね(ニコッ
そんな感じの「ばらのすべて」でした。
これまでの山田酉子コミックスの中でもトップクラスにキャッチーな要素が詰まっているんでないかと。いやBLの知識浅いですけどたぶん…だってジャ○―ズだよ…。
でも明らかに影が濃い。漂う空気がひんやりとしていて心地いいです。
どこか仄暗くてお洒落でリリカルで、自分でも不思議なくらい心が澄まされていくのを感じるんだよなあ。気持ちがいい。肌に合うというか。
繊細で、残酷で、優雅で、詩的で。うむ、かっこいい。
ちなみに来月にも山田先生のコミックスが別の所から出るようで、こちらも楽しみ!
『ばらのすべて』 ・・・・・・・・・★★★☆
推してる作家さん。芸能界のアブない闇をクールに描く。無条件降伏で好きな空気。
[漫画]終末のそばに儚い日常はある。『花と奥たん』2巻
花と奥たん 2 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕) (2013/03/29) 高橋 しん 商品詳細を見る |
生きていること。繰り返されること。その幸せ。
でたー!高橋しんさんの「花と奥たん」2巻!
何度かの発売延期を経て、1巻からなんと4年ぶりの第2巻ですよ!
1巻が2009年4月発売でした。高橋しんさんがスピリッツでたまーに載せる不定期連載シリ―ズですが、まさかコレほどスローペースになるとは…。
個人的には「最終兵器彼女」以降の作品では1番お気に入りなのです。
カラーもたっぷりなおかげで値段もちょい高めですが、満足度高し。高橋しんさんのカラーはめちゃくちゃ眩しく綺麗なので、ちょっと値段張ってもこういう豪華仕様なコミックスが嬉しい。
内容は、非日常における日常系お料理漫画…という感じでしょうか。
毎回料理のレシピもついてくるので、料理漫画の要素は濃いです。
でもそれだけではない。心を締め付ける人間ドラマこそ最大の魅力。
1巻から2巻の間、この作品の読み方に影響を与える出来事がありました。311です。
物語が始まったのは、もちろんあれよりも前のことです。
しかしこの作品は緊急事態に陥った日本の混乱、そしてその中で生きる「家族」の現実を描いています。フィクションではありますが、しかしこの内容は、東日本大震災をめぐる出来事にも重ねられる…かも?
まぁそういう読み方ばかりしてもアレなので、普通に漫画として読みますが。
高橋しんさん自身、311以降にこの物語を進めていくことに、痛みが伴っていることがあとがきから伝わってきます。少しの迷いも感じ取れます。でも頑張って欲しいなぁ。この漫画を読んで、きっと勇気づけられる人もいるんじゃないかな。
そんな「花と奥たん」2巻の感想を。
ほのぼの天然な奥たんの日常は、驚きと優しさと、どうしようもない痛みと切なさの中にある。ほんわかとした中に、心がピリピリくる仄暗さと破壊的な部分が隠れていて、その二面性にドキドキする。
東京に巨大植物に呑み込まれ、奥たんの旦那さんは、帰ってこなくなった。
東京は完全に閉ざされ音信不通。たくさんの人の無事が分からなくなった。
それでも奥たんは待ち続けます。
きっと今夜にも旦那さんが帰ってくると信じて、旦那さんのごはんを作ります。
なんとも平凡そうにみえる日常。でも空を見れば、禍々しい巨大な花。
日常に異物が溶け込んだ風景は、この作品ならではの強烈なインパクトを与えてくれます。
「花と奥たん」は奥たんのお料理が主軸。食材を集めるために外出しいろんな人と出会ったり話したり、そして最後にごはんを作っておしまい。そんなお話なのです。
簡単に料理と言ってもこれが大変!
東京に巨大植物がはえて、そのせいで環境は大変化。おかしなカタチだったり、巨大すぎたり、いろいろ不安にさせられるミラクルな野菜たちが現れる。
そんな中で、「旦那さまのために!」と美味しく健康的なお料理を作るために奮闘する奥たん!
一途でおっちょこちょい、だけど逞しい奥たん。奥たんの活躍を見ていると、おもわず心動かされてしまうというものです。
…ちょっと、というかかなり、あざとさも感じますけどね、奥たんのキャラクターってw でもそれもいいのです。あざとくても和むしかわしいし胸がほかほかするのです。
奥たんは、家を守るために頑張るのです。家族でいるために頑張るのです!
多くの家族が離れ離れになり、心も荒んでいくひどい現実の中で、
奥たんのこの言葉は、とてもとてもきらめいている。
2巻。着実にストーリーが進みました。主に悪い方向に。
実は世界中であの巨大植物、通称「花」が咲いていて、世界中で混乱が起こっていること。…もはや世界の終わりを感じさせる、ショッキングな事実。
2巻で登場する学者の話では、「ちょっと、東京は手遅れかな。」とか。
そして人の心も、やがて疲れ果てます。
帰ってこない人を待ち続けることに。みにくい現実に。
奥たんと同じく夫の帰りを待ち、本来は避難しなくてはならない地域に住み続ける主婦たち。みんなで稲作をしたり、やってくる巨大バッタと戦ったり、賑やかに強く生きてきた主婦たちです。
その奥たん以外の主婦たちが、少しずつ、この町を去っていく。
これが2巻でとても重要なことであり、すごくつらかった。
だってそれは諦めだ。「もうあの人は死んだんだ」と割り切ったわけではない。けど生きるために今は決断をしなくてはならない。他の主婦たちは、帰りを待ち続けることを諦めてしまう。
彼女たちを責めることはできないんだよな。きっと当たり前のことなんだ。生きていく中での取捨選択。
でもあまりに「家族」が迎える一つの区切りとしては寂しくて、でも終わりが見えないから自分たちの心に区切りをつけるしかなくて。
奥たんは町に残ります。異常な日常の中に、自らを取り残します。
今日も旦那さんの帰りを待つために、美味しいごはんで出迎えるために。
みんなが去っていった2巻。だからこそ、いまだ家に居続けてたくましき生きていこうとする奥たんのその姿に、どうしようもなく胸打たれてしまうんだよな。
いつも奥たんの胸を揉んできてエロ親父もいなくなったのかな。
いままで彼女が暮らしていたおかしな日常も、寂しくなっていく。
3巻からどうなってしまうのか。今まであったものが失われたことで、さらにこの作品は冷たく鋭く、奥たんの笑顔を破壊していく。
あんなにちっちゃくて優しくて天然な奥たんには、いつ笑っていて欲しいのに!
そして変わっていくのは、奥たんの周りだけじゃない。奥たん自身だって変化がある。
とあるエピソードで描かれた、「今日、奥たんは結婚して初めて、旦那たんのためだけのゴハンをつくることができなかった。」という一節がすごく苦しかった。
生きるために、ひとつずつ「切り詰めて」いく。その中で、奥たんは小さな、しかし大切な決断を一度したのです。これまでずーっと作り続けた、旦那さんのためだけの夕飯を作らなかった。作れなかった。…崩壊の始まりかのような不穏を突きつけてきます。嫌な動悸が…!
他の家族はバラバラになってしまった。もう一度固く結ばれて幸せをかみしめるハッピーエンドを、なんとか奥たんには迎えてほしいんだ。
「さみしんだよ。ばか。」
ぽつり、小さく小さくこぼした寂しさ。
どうしようもない心の傷をにじませながら、今日もお料理を頑張るのです。
それにしても普段おとなしい奥たんが「ばか」とかわいい悪口を言うこの場面は、夫への愛情の深さが感じられてなかなかお気に入り。でも萌えるというよりはこう涙腺にくる感じの…。
清らかで暖かで尊い、そして力強い「家」「家族」への憧れ。
生きること。誰かと共にあること。そのことへの前進力。生命力。
「花と奥たん」を読んでいると、そんなことを感じます。
奥たんに萌える漫画としては、あまりにも禍々しく重苦しいこの作品は
きっと大切なことは全て日常の中にある、と訴えているかのようです。
奥たんのペットのウサギ目線で語られるこの作品ですが、ウサギのこのモノローグがいいんですよ。
繰り返されること。その幸せ。
夜が来て、朝が来ることの幸せ。
冬が来て、春が来ることの幸せ。
おなかがすいて、ゴハンを食べた時の幸せ。
そんな日常の中の「幸せ」が見開きで語られるシーンが、今回のハイライトかな。
まさにこれがこの漫画の本心なんじゃないだろうか。
生きてることって、幸せなんだよ。なんてそんな軽々しくは言えないことをさらっと読み手に呑み込ませるのは、この作品のチカラに違いない。
生命賛歌。もしかしたら、そういうのも感じられる。苦しすぎる現実を描いているから。
生きるために。明日のために。家族のために。今日もごはんを食べよう。
その点で良かったのは、途中めちゃくちゃデカくて気持ち悪がられる巨大バッタが出てくるのですが、奥たんはバッタくんを保護して飼い始めるのです。
排除するのではなく、共存しようとしてみる。うまくいくはわからないけど、こういうところにもこの作品の(というか奥たんの)包容力が伺えます。
でもこんなおかしな世界との共存は……奥たんでも、できるのかな。
今にも消えそうな、信じることだけでつながっている家族。
それでも、今日も奥たんは旦那さんを待って、たくましく生きている。
切なくて暖かくて、大事なものをくれる、とある家族の物語。
巨大キノコの中で見つけた謎の植物。こっそり奥たんちの庭に生えてきました。きっとまた話が大きく動く第3巻。できれば…早めに読みたいな…!2年以内くらいでよろしくおねがいします!
『花と奥たん』2巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
待ちに待った最新刊はこの作品らしさたっぷりの出来栄え。生命とは、家族とは。そんな大きなメッセージを内包した奥たん癒し漫画である。
そういえば月刊スピリッツ創刊号に載った、花と奥たんエピソードゼロは収録されませんでしたね。そのうち載るでしょうけれど、それが何年後になるか分からないのが怖いんだよ!
[漫画]本能ゆさぶるイチャラブフェチエロ放課後!『放課後プレイ High Heels』
電撃4コマ コレクション 放課後プレイ High Heels (電撃コミックス EX 電撃4コマコレクション 127-5) (2013/03/27) 黒咲 練導 商品詳細を見る |
・・・いっぱい「なかよくしようね・・・」
これはひどい。こんなの最高に決まってる!!
そんな「放課後プレイ」シリーズ5冊目となる「High Heels」の感想です。
これエロ漫画だよ!もう完全にエロ漫画だよ!
前回の「放課後プレイR」が珍しくちゃんとゲームをやるシリーズでした。
面白かったけど、俺が本当に読みたいのはイチャイチャなんですよねぇ!
と思ったら反動がきたように今回の新刊はもう、ただひたすらにイチャイチャし尽くすイチャイチャ三昧。しかも主役は無印「放課後プレイ」からの、チビ情けない彼氏くんとツンデレ彼女さんのあのカップル!
甘さも分からなくなるくらいにダダ甘で、身悶えするくらいマニアックでフェチズム爆発なインモラル・エロス。いけないことはしてないよ、だって彼氏彼女だもの。
「これはヒドい」ってお話ばっかり詰め込んだ、激アマ放課後プレイ!
もおおおお!!!
なんだよ!!これは!!バンバンバン!!
シリーズ最初の単行本で2人の関係は行くトコまで言ったので、その延長戦である今回は、なにはともあれちゅーっとしてレロレロしてぬぷぬぷビクンビクン。
お前ら発情しすぎぃ!!
前回→1,2,3メインキャラ勢揃いでTRPG!『放課後プレイR』
コミックスのウラ表紙や、カバー折り返しのところの4コマからヤバい!
歯止めが効かない暴走リビドーで幕を開ける本作は、一冊ずっとそんなノリ。
脳みそ痺れまくる、粘りつくかのようなエロ描写はさすが黒咲練導先生!
ただ普通のじゃれあいが、長いキスが、すっげぇヤラしくてたまんない。はぁ~これだよ!こういう放課後プレイが読みたかった!たまにアホみたいなアブノーマルプレイやっても、2人とも嬉しそうで楽しそうでなー!
胃がもたれるくらい頭がヘトヘトになるくらい、「放課後プレイ」の甘い空気を吸っていたいという夢が見事叶えられました。やったね!
背がちっちゃくて恥ずかしがり屋でゲームオタクな「彼氏」くん。
まっ黒で攻撃的で恥ずかしがり屋でゲームオタクな「彼女」さん。
名前もないこのカップルの、放課後の繰り広げられるなんの事件もない日々をつづるのが「放課後プレイ」。
いちおう電撃プレイステーションでの連載なので、ゲームネタ豊富。
正直ゲームネタの方は自分の知識では、なんのこっちゃかわかりませんが、分かる人はニヤニヤできるラインか。俺も自分が知ってる数少ないゲームネタではおおっとなりました。
だがしかし。ゲームとは関係無い所でこの作品は羽ばたいている!
「ゲームするために部屋に来て、だらけながらイチャ学生カップル」という舞台を用意するために、この漫画におけるゲームは存在していると言ってもいいな。
ちょうど公式で試し読みができるので、気になるひとはこれを読んでみては。
試し読み→http://dps.dengeki.com/tachiyomiya_/houkago_play_hh/001.html
しかし試し読みでこれかよ、攻めすぎだろ!!確かに単行本の最初のエピソードだけど。初めて読む人はもしかしなくてもドン引きなんじゃないのかw
まぁでも、いつもこんな感じです。ハイ。この漫画らしいエピソードですよ。
こんなのが一冊まるまる。バカか!
特にストーリーもなく、ただ部屋でゲームしながらなんとなく気分が盛り上がって相手を押し倒しちゃう。基本彼女さんから、たまに彼氏さんからその気になって。
なんの発展もしません。ただそこに留まって、甘い時間を貪る2人。そんな堕落した雰囲気がまたすっごくエロくて、
でも結構感想書きづらいんですよね。ストーリー無いから。毎回ちゅっちゅくちゅっちゅくやってるだけだから。
本当に楽しい漫画だったんですけど、この2人の変態イチャラブ模様は最高だな、というただそれだけしか出てこない…!もっとこう、いろいろ器用なことを書きたい…!
まぁともかく、幸せすぎる漫画である!!
じゃあ良かったシーンをちょっと書いていこう。
この漫画の2人の表情は、ダイレクトにエロい。
まさに興奮しているその熱気がもんもんと立ち上っているようで。
お互いしか見てないその情熱的なふれあい。愛おしげな視線と愛撫。
そんな仕草の1つ1つにも、本能を揺さぶるエネルギーがある。
上のシーンは、「捕まえてキスする」っていう一瞬のときめきがめちゃくちゃデカくて印象に残りました。本当に、普通のキスでも、ちゅって啄むみたいなモンじゃないですからね。じゅるじゅる行っちゃいますよ。うはぁ。
で、いろんなプレイをしちゃってる今回でもドキドキしまくったシーンこれ。
指を口に入れるって行為にやたらエロスを感じるのは、そういうフェチなのかねえ。エロ漫画でも指で口内かき回したりする描写あるとめっちゃゾクゾクですよ。性別はどうでもいいい。指で唇に触れるとか、口に突っ込むとか。いいですなあ。
めっちゃ感じてる彼女さんの表情がたまらない…。
ほかにも、鼻水プレイとか、コントローラーコード巻きとか、彼氏くん女装ニャンニャンとか、お前らバカだろとしか、もう!
普段はドSなのに「される側」になるともう流されっぱなしな彼女さん。
足蹴にされるわおちょくられるわ、受け身っぽい彼氏くんだけどたまに強気に出て、こんな時だけはヘタれない。
見透かして、見透かされて、でも結局2人とも同じこと考えていたりして、「今日はどっちがどんな立場で?」って無意識に駆け引きみたいなこと楽しんでいたりして。
お腹いっぱいですよもう。ここまでアマアマな生活見せられたら、白旗。
しかし今回のオビは何事か!
いやいや、最後になに「そんなふうに考えていた時期が俺にもありました」的オチをつけてるんですか!放課後プレイ1の彼女さんといえば黒ロンツンデレそして黒ストじゃないですかーブーブー!黒ストッキングは神聖にして最強!
つまりはそれを脱がしてしまうなんて、信じられないというか、心ないというか!
・・・と思っていた自分が浅はかでした。
黒ストは脱がせても神聖にして最強だと思いました。
あと破いてもいい。
なんか、ぐだぐだ書いてたらそれなりな長さになってきましたね。
ともかく!「放課後プレイ High Heels」!今回はエロかったなぁ…!
のろけまくりでイチャラブしかない。ねっとりフェチエロ4コマ。
1冊トータルでざっと読むと、頭がポワポワしてきましたよ。
それくらい強烈に甘ったるく、生ぬるい空気がぬる~っと続いていく。
ずーっとずーっとこのまま世の終わりまで、2人にはこうしていて欲しいね!
あいかわらず各話の最後の煽り文も「やれやれ」的ノリで、これに完全シンクロ。
やりすぎなんじゃないかというくらい、1冊トータルで山も谷もなく本当にイチャついていますが、こういう漫画あってもいいよ!
「放課後プレイ」シリーズ5冊目にして、ご褒美のような素晴らしい一冊でした。
彼氏くんを足蹴にしたり、縛られたり、脱がされたり、彼女さんの脚が輝いた一冊でもある!もっちり程々に重そうでいい質感の脚描写だよなぁ。スリムだけど脚が肉感的な彼女さん。
『放課後プレイ High Heels』 ・・・・・・・・・★★★★
のろけまくりでイチャラブしかない。ねっとりフェチエロ4コマ。
[漫画]ショートショートの面白さを堪能できる、これぞアイデアの泉。『ひきだしにテラリウム』
ひきだしにテラリウム (2013/03/16) 九井諒子 商品詳細を見る |
私はただ呆然と立ち尽くすのでした
九井諒子さんの新作単行本「ひきだしにテラリウム」の感想です。
デビュー作「竜の学校は山の上」がまさにストライクな作風で、それ以降追いかけている作家さんです。これが本当に素晴らしかったんだ・・・!
→奥様は馬で、同級生は天使で。 『竜の学校は山の上』
去年には「竜のかわいい七つの子」という作品集も出しましたね。
今勢いにのっている作家さんの一人だと思います。
そして今回の新作「ひきだしにテラリウム」は、実に33つものショートショートを収めた豪華な作品集。アイデアで魅せる九井漫画の面白さをギュッと詰め込んだ一冊と言えるのでは。
ストーリーにそれぞれおもしろい仕掛けがあり、1つ読むたび「すごい世界観だなぁ」とか「おお、なるほど!」とか。そういうのが33つもあるのですからもうめまぐるしい。贅沢な読書体験でしたよ。
33つものショートショートが収められている本作の面白さは、とにかくいろんな話が読めるお得感も大きいです。そして各話のアイデアとその魅せ方。
これぞショートショートの面白さを堪能できる1冊と言える!
お気に入りの作品ばかりですが、中でもこれは!と思ったものをいくつか個別に感想を書いていきたいと思います。選ぶのが大変でしたが……!
●恋人カタログ
未来の自分の恋人候補を見ることができる、夢のカタログ。未来に出会うことができる恋人候補を見ながら、どの女性を選ぶかを決めることができる。そんな道具を手に入れてしまったら……。
いい意味で期待を裏切られる気持ちよさと、たっぷりスウィートなクライマックスにがっしり心掴まれてしまいました。ファンタジーもいいけれど、九井さんの描く現代・現実の女性もすっごく魅力的だ。
●かわいそうな動物園
命を潰していく飼育委員。その惨状にオイオイ大丈夫かこの話は、と思ったら。最後にきっちりと希望が見えました。
最後にオリーヴが運ばれてきたことで、この作品は有名な「ノアの方舟」を描いているんだなとわかる仕掛け。まるで現代が舞台かのようなので最初えっとしますが、ラストシーンの鮮やかさな希望がとても印象的でした。
●未来面接
人類を救う大きなロボット。そのパイロットは、面接で決まる!
「なーんか……思ってたよりつまんねーな、未来……」
のぼやきが全てを物語る。そうだよね、選ばれし力とか、禁じられた契約とか、そういうのが欲しかったんだ。でも現実は空想に追いついて、かつての空想のロマンを塗りつぶす。ちょっと寂しい雰囲気がまたグッとくる。
●春陽
ペットとして小人を買っている人間たち。6ページという短いページの中で女の一生を駆け抜ける。幼女から老人になるまでを優しく見つめるお話。
とくに反抗期を迎えた頃の小人の様子がとても可愛らしい。
小人と共生はなんだか見ていて楽しそうですね。羨ましくなってくる。
●秋月
……という一個前の「春陽」と対をなすエピソード。恐らくこちらが、小人から見える世界を描いた作品。こちらでは「春陽」で登場していた飼い主の人間たちが、無機質な機械として描かれます。
ついさっきまで見えていた景色がクルリと反転。これはすごい。
種族が違えば、それぞれ見えている世界も違うんだよな。
それでもこれら違った視点で読んでみると、それぞれの存在への感じ方は異なっていても、愛着を持って接している。愛はきちんと伝わるんだよな。与える愛情はその全てを正しく理解してもらえるとは限らない。残酷なすれ違いを描いているように思いますが、しかし大きな救いがあるお話。
●ショートショートの主人公
非常に面白いメタ構造を持った作品。熱血漫画主人公の父。おてんばおっちょこちょいの少女漫画主人公の母。アナウンサーとして活躍するOL漫画主人公の姉。千年に一度の役割を担う超能力バトル漫画主人公の兄。そして末っ子の私は……
なにもない平凡な、ショートショートの主人公。
いろんなオチが用意されているショートショートだからこそ、生き残るための努力を惜しまない。
しかし用意されたオチは結構救いがないものでしたね。面白いけど、こういう拍子抜けで残酷なものがやってくるとは。
劇画タッチの熱血漫画主人公な親父がサイコになっていくのに笑ったw
なんにも縛られない、「物語の主人公」ではなくなった彼女。そしてただ真っ白い未来を前に立ち尽くす。それはすなわちこの話を読む読者と同じ世界にたったということだろうな。メタ構造を上手く使ったようで、実際はフィクションという幻想を消滅させる破壊的な作品。
●こんな山奥に
お天気雨を「狐の嫁入り」と言いますが、それを可愛らしく描いた短編。きつねたちが人間になりきってやりとりを交わしているのは面白いし、きつねといえば!なヒントを散りばめているのが面白いですね。そしてラストシーンがめちゃくちゃ可愛いんだ!
●スペース お尺度
生きることに無気力になってしまった男性が、宇宙の広大さに魅入られてトリップするお話。人間関係に悩むことなんてバカバカしい。煩わしいことは全部忘れて宇宙を夢見よう。
と思ったって僕らが生きていられるのはバカでかい宇宙じゃなくちっちゃくくだらないこの現実なわけで。主人公もなんだかんだで頑張るのです。
気持ちがまっすぐになっていく過程がさりげなくて、でもそれが気持いい。この世界のなにもかも、宇宙に比べれば些細なことだ。それをどう捉えるかで、生き方は買えられるな。非常にロマンチックな読後感に満足度も非常に高い一作品でしたね。
というのがズラーッと33篇収められた短編集です。
各話のアイデアも面白いですし、漫画としての読みやすさも流石。
なめらかでありながら心にあとを残していく。ショートショートというだけあってページ数は少ないのに、終わったあとの余韻のよさで満足度が跳ね上がる。
絵柄も自由自在に変えて作品を生み出していくのも面白いですね!
線が多くてキッラキラしたいかにもな少女漫画タッチだったり、伊藤潤二作品みたいなホラータッチ。ファミリー向けにありそうな海外旅行レポ漫画のほんわか丸っこいタッチまで。一瞬松本零士絵っぽくもなったか。
絵柄の使いわけすら駆使して、いろんなお話を紡いでいく作家さんです。
九井諒子。これからも要注目の作家さんでしょう!次の単行本も楽しみ。
そういえば「テラリウム」って言葉がすごくピッタリでしたね、こういうセンスも好き。
『ひきだしにテラリウム』 ・・・・・・・・・★★★★
良質な作品集。とにかくいろんな話が読めて、頭にいい栄養が回る感じ!