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正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[漫画]鋭さを増す少女たちの闘争本能!『鉄風』5巻

鉄風(5) (アフタヌーンKC)鉄風(5) (アフタヌーンKC)
(2012/05/07)
太田 モアレ

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   キツイです でも…いいですねコレ……嬉しい……

待ちに待ってたと言える「鉄風」5巻が発売されています。
前々からそのタイトルだけは知ってて、NumberGirlの「鉄風鋭くなって」みたいなタイトルの漫画ね、とか非常にどうでもいいことを考えてたわけですが、4巻出ていたタイミングで一気読みしたら・・・なんだこれはと。安直な言い方しかできなくて悔しいですが、超面白いわ!
しかしGood!アフタヌーンという隔月雑誌で連載されているため、単行本発売ペースは結構遅めかもしれません。スピード感たっぷりな上に続きが気になってしかたない作品で、それはもうそわそわと5巻を待っておりましたよ。
それで発売された5巻を読んでみたら、もう、はぁ。たまらない。
女子格闘技を描いたこの作品。ここからまた、一層熱い展開に突っ込んでいきますよ!



女子の総合格闘技ルールにおける一大イベント「G-girl」。
その開催に向けてテンションを高めていく女子総合格闘界。名だたる有名選手たちが参加を表明するその大会に、主人公の石堂夏央も出場を目指します。馬渡ゆず子を叩き潰すために。
ということで5巻はG-girlの新人枠を狙い集った8人による、トーナメントが開催されます。
いやぁトーナメントですよトーナメント!

鉄風3

5巻ではこの少年漫画のバトルにありがちなトーナメント形式を採用して、またちょっと少年漫画っぽい印象を強めます。もとから迫力たっぷりのバトルとか、少年漫画ファンも反応しそうな出来でしたね。今回のトーナメント形式だって、それだけなんとなくワクワクしてしまう人も多いのでは。
けれどこの作品には、青年誌だからこその「少年漫画」という感触があります。少年漫画っぽい形式をとってみてはみるけれど、実際は・・・。間違いなく熱いんだけれども、それは王道のものではない。セオリーをあえて裏切るようなひねくれたセンスがキラリと輝く。
そしてそれは登場人物の『根っこ』の部分からくる印象が強い。



まぁまず主人公ですよね。夏央ちゃんですよ。すんごい性格悪いの。
「私は充実してる人間を許さない」と、しょっぱなからすごいこと言い出します。そして強い。彼女はビギナーの段階で強すぎる。努力して高みを目指す人間たちにとっては、無慈悲なほどに。
でも結局はもっと全力振り絞って、勝ったり負けたりで喜んだり悔しがったりしたいんだろうなあ。そういう思いは間違いなくあるんだけれど、過去のトラウマやら生まれ持っての才能やらでとことんまで捻くれてしまった。全力だして努力しないと渡り合えないような相手に、出会えなかったのだ。
というわけで嫌味なくらい才能を魅せつける。性格も悪い。なんか怖い。けれど憎めないのは、その性格の悪さが見ていて気持ちいいから。
普通じゃないようで、普通で。普通なようで、致命的に普通じゃない。上手く言葉に言い表せないバランス感覚。不安定なようで、ちゃんと筋が通ってるのが不思議。
5巻にも出てきた表現ですが、「ポジティブでネガティブ」キャラというのがすごく面白いキャラクターです。

そして夏央がが目標としている馬渡ゆず子という少女もすごい。得体が知れない。
すごく強くて、すごくまっすぐで、すごく輝いていて・・そんな、まるで少年漫画の主人公みたいな女の子。性格の悪い、残酷なひねくれ者たちが闊歩するこの作品において、作中トップレベルの実力者でありながらこんな正当性を全面に押し出したキャラをしてるという。
ゆず子もこの先どうなっていくのかなとっても楽しみなんですが、どう立ち向かえばゆず子を揺るがすことができるんでしょうねぇ。
5巻では「まっすぐすぎて逆に歪んでいる」と、気になる表現がされたゆず子。これからの動きが気になりますね。

そんなそんなキラッキラなゆず子に対し「頑張ってあの子の笑顔を潰してあげよう」と対抗心剥き出し(ゆず子の充実への嫉妬ももちろん込み)な夏央。
その2人がいよいよ公式戦の舞台でぶつかるか!?という今回のトーナメントは本当に続きが楽しみで楽しみで。でもこの2人だけに集中してるのだってもったいない、個性豊かなメンバーが揃っております。
バトルシーンにおける一瞬の駆け引きもうまく描き出していますし、それでテンポを悪くしてないのもお見事。読んでいて楽しいバトルになっていますことに加え、文句なしにストーリーにも引き込まれる展開になってきてますねー!
トーナメントが始まるまでの、様々な人物の思惑がからみあって集結していく様子なんか、王道の盛り上がり。やまったくもう王道なのかそうでないのか。本当に面白いことやってる作品ですよ。



さて話を変えます。前置きしておくと別にそこに特別な注目を注ぐべきではないとわかってます。作品のテーマを分かった上で、でもあえて外れたことを言ってしまうならば、「あれ?女の子がかわいいぞ?」です。
いや、この作品に登場する彼女らに向かって「かわいい」というのはちょっと的外れかもしれない。けどあえて・・・あえて言うならば・・・!・・・かわいいな。うん。

鉄風

いや違くて。ロリ夏央ちゃんのかわいさに予想外の方向から飛んできた流れ弾に撃ちぬかれた感覚を否定はしませんが、それだけじゃない。
筋肉つけてがっしりフィジカル強そうな女の子が好み、というわけでもないはずなんだけれど・・・なんだろうなぁこの感覚。女性キャラにすごく心惹かれる作品なんですよね。
格闘技というあんまり女性がやらないであろう題材の影響か、戦う女の子ロマンのそれか・・・いやそれよりもまずは、自分にとってあまりにも未知の存在だからだろうな。
みんな複雑怪奇な思考回路。よく分からない。けれどみんなたくましくて、傲慢で、性格が悪くて(もう何度もこの表現をしている)・・・そんな所がなんだか愛おしい・・・気がする。外見的なものだけじゃなく、その人物の芯の部分をもっと知りたくなるキャラクターたち。
純情で、儚げで、可憐で・・・なんてイメージ微塵もまとわぬファイター揃いです。
生理中の話とか出ると、「うわ!なんか普通の女の子っぽい話題出てきたよ!」と逆にビックリする始末。いや女の子と認識してるんだけども、この作品の女子は得体のしれない連中が多すぎてな!
でも本当に純粋な連中なんですよ。ピュアもピュア。けれどそのピュアさがどこ向いてるかって、「相手をたたきつぶしてやりたい」とかそういうのですよ。うわぁ・・・。

鉄風2

個人的に我如古舞はこの5巻でビリビリッと来ましたよ!いい表情してましたね。
秘められし僕っ子属性も解禁して勢いに乗っております!
しかしまぁなには置いといてもロリ夏央は天使のかわいさであるよ。うん。
こんな娘がいつのまにやら性悪女に・・・いやあある意味すくすくまっすぐ育ちましたがw



5巻で気になったポイントに、「純粋さ」と「天才」の関係がありました。
敗れた浅野選手の本間が感じた「この子、純粋すぎる……」の一節がすごく面白いなと。(181P)
この作品、「純粋であること」と「強いこと」が必ずしもイコールにはなっていないんですね。純粋さがどこを向いているものなのかが、とても重要なんだろう。

鉄風3

本間が語る「大成できる人間」は2種類。業のある天才。才能が無いと思い込んでいる天才。その二種類なんだとか。意識的にでも無意識的にでもためらうことなく強さを追い求めることができる、人間。そして天才であることは不可欠だと。凡人には至れない場所があるという。
それでもってこの言葉を言うのが間違いなく天才側の人間である本間なんだから、この人もいい性格してるよなぁ。

ともかくそういう事らしく、なら夏央たちはどうかな?と考えてみたり。
夏央は前者だろうなぁきっと。どちらも多分当てはまらないゆず子の異常性が、ここで浮かび上がってくるわけですねえ。
とはいえ女子格闘技界は群雄割拠の天才だらけの様子。夏央たちはどこまでいけるかな。
夏央のまっすぐな異常性(字面として矛盾してそうだけどこれはきっと正しいはず)は、純粋さからくるエネルギーを感じますが、でも行き先が見えないものでもあるんですよね。例えばゆず子を倒したらそれからどうなるの、とか。

それと格闘家たちの会話を見ていてなんとなく感じたのが、この人たちすごく狭い世界で生きてるなーということ。自分と世界を共有できる人間としか深くは付き合って行かない。それが許される程度には強いのだ。そもそも1人で戦う世界に身をなげうってるわけで、そういう連中しかいない作品なのは分かり切ってる。
でもそういう連中だからこそ、勝つか負けるかで全てが別れる、シビアな勝負の世界が盛り上がるんだろうなぁ。



・・・と、とりとめなく思ったことをつらつら書いてきましたが、そんな感じの第5巻。
一気に読めてすごく心に印象を残してくる作品ですねえ。やはり面白い。
予告を見るに、次の第6巻は夏央と兄の過去が詳細に明かされそう?
5巻でもゆず子の充実ぶりに「それは駄目よ!!」とやたら反応をしめす夏央のシーンがありましたが、その時脳裏に浮かんでいるのは、兄との因縁が始まった日のことっぽい?
かなり根が深そうなイベントなだけに、どういうエピソードか期待。
女子格闘技・・・かなりマイナーな題材かと思われますが、詳しくを知らなくても問答無用に楽しませてくれるパワーがある作品です。リアル系格闘技バトルが好きな人はもちろん、刺激的な漫画が読んでみたいって人にもおすすめしたいシリーズ。ビリビリ来ますよ、すごいキャラばかりなんで。

『鉄風』5巻 ・・・・・・・・・★★★★
熱い、熱いよ鉄風!どんどん面白くなる雰囲気が出てて、本当に先が楽しみ。

[漫画]胸の奥がずっとずっと熱いままなんだ。『演劇部5分前』

演劇部5分前 2巻 (ビームコミックス)演劇部5分前 2巻 (ビームコミックス)
(2012/05/14)
百名哲

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演劇部5分前 3巻 (ビームコミックス)演劇部5分前 3巻 (ビームコミックス)
(2012/05/14)
百名哲

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   けどそういう時 こういう思い出少しずつ消費しながら 生きてくんだろうね

Fellows!にて連載された、百名哲先生の「演劇部5分前」が、2,3巻同時発売で完結。
1巻が出たのは2010年1月・・・なんと2年以上も間が開いてしまいました。もう忘れちゃってる人もいるのでは・・・しかし1巻を読んだ人がこの2,3巻を読まずにいるのは正直もったいない。もったいなさすぎる。
3巻までじっくりと読み終えて一息ついて余韻にひたると、なんて清々しい青春を描き切った作品だろうかと。なんてカッコいいヤツらだと。そんな想いがじわじわとやってきました。
今回は1巻から3巻まで通しての、シリーズ全体の感想でも。1巻の感想書いてなかったし。

主役は演劇部3年生の女の子たち。後輩もおらず、部を続けていくのにも跡がない状況。
正直、スタートはそんなに面白くなかった。
けれどシリーズ全3巻を通して読んだ今なら1巻あの、うっとおしいくらいの喧騒とおふざけや、やる気はあるけど充満する倦怠感、なかなか進まないストーリーも必要なものだったとわかります。
最初彼らは、本気になりたくても本気になりきれなかった。気楽に遊んで楽しんでいたい。
全力をかけて勝負の世界に挑むというのは、勇気がいることなのだ。
物語の始まりがヒドいものだったからこそ、そこからの変化が気持ちいい。プロ意識・上昇志向のかたまりのような少女・矢野が入部する1巻中盤から少しずつ、少しずつ。
ストーリーが進むにつれみんなが変わっていく。どんどんとメンバーたちが「本気」になって演劇にのめり込んでいく様子には、何度も何度もゾクゾクさせられました。

演劇部5分前(3巻230ページ)

本作のクライマックスのアッコ。あんなにふざけてばかりだった女の子が、演劇に命を燃やすように頑張って、やりきれなさに顔を歪め涙を流すまでになる。

主人公のアッコだけじゃない。最初はあきれ果てていた矢野や、「演劇なんて嫌いになった」と言い放つ、昔は劇団に入っていた教師・早坂・・・などなど否定的な意見も持っていた人たちもいつの間にかストーリーを協力に動かすキーパーソンになり、心通わせる友人になり、ますます賑やかに物語も熱気を帯びていく。
単純に言い切れることではありませんが、単行本ごとの面白さだったら1巻と2、3巻は段違いですよ。後半になるにつれてものすごい勢いで面白さが加速していく!



細かく「このシーンはどうだ」「このシーンもたまらん」とかやってるとキリがないこの作品。
些細なワンシーン、ちょっとしたセリフの1つ1つ、その断片にでさえこの作品は鋭いメッセージを発してくる。メッセージは読者に向けてでもあると思うし、作中のキャラクターたちを導くためのものでもある。
そしてキャラクターが見せてくる何気ない一瞬に強烈なインパクトを与えられたりする。
例えば藤本さんが珍しく意地を見せてくるこのシーン。

演劇部3 (2巻186ページ)


自分の中に感情を押しとどめがちな、おとなしい藤本さんの性格を思うと結構意外なシーンなんですが、なぜこう言ったのか、その心境を想像しては興奮する。「アッコ、見くびらないで。」なんて言っちゃうわけですよ。彼女にだって譲れないものがある。これは彼女が誇りを持って仕上げてきた「仕事」なのだ。
友達同士の誠実な思いがぶつかりあっても、うまくいかない時だってある。
けどぶつかってこそ気付けることだってたくさんあって、この翌日にちょっと照れくさく挨拶を交わす2人に思わずニヤリ。こんなやりとりができている時点で、以前までの彼女たちではない。とっくの昔に本気で、情熱燃やして演劇に立ち向かっているんですね。
それとこのシーンは、さっき画像を張った3巻のアッコにもつながっています。

ほかにも矢野さんに関しての描写は素晴らしいですね。
プライドが高く、役者としての技術もある。けれど彼女もいくつも壁にぶつかる。なによりそのプライドがジャマをして、他人を認めること出来ない事が大きな課題でした。
矢野さんがどうやって周囲に馴染んでいくのか・・・。彼女は本作をひっぱっていくキャラクターですし描写も非常に多いです。彼女の成長もまた見逃せない、無茶苦茶に心熱くしてくれるポイントでしょうね。本作では珍しく、まっすぐとしたラブコメをくりひろげることにも注目かw

いや、もう登場キャラ全員に愛着が湧いています。初期メンバーだって、途中から加わる新メンバーにだって。
この作品はかなりキャラクターを追い詰めますよ、精神的な意味で・・・それはもうエグいくらいに。読みながら「もうやめてやってくれ・・・」と感じたこともしばしば。
けれど追い詰められて・・・その先できちんとカタルシスを味わわせてくれる。
満面の笑みを浮かべることはひょっとしたらできないかもしれない。けれど絶望のままで終わらない、希望を与えてくれる物語になっていると、ラストを読んでじみじみと感じました。
各キャラクターの掘り下げもしっかりしていて、何気ない動きの1つ1つにも特徴が現れています。
一つ難点を言えばブーちゃんに関してもっとエピソードが欲しかったなーとは。
でもブーちゃんなてネタキャラ・ギャグキャラにしかならないようなキャラクター(少なくとも登場当初はそうとしか思えなかった)を、ばっちりストーリーの本筋に絡め、シリアスな場面にだって活躍するようになっていたのは素晴らしい。
この作品を魅力的にしていることに、豊かで巧みな人物描写があります。



魅力のもう1つ、それは間違いなくストーリー。特に終盤は問答無用に心揺さぶってくるようなエネルギーを感じました。
これを逐一説明してちゃ意味がないので「是非読んでください!」ってとこですが。
しかし3巻の中盤からラストにかけて・・・練習に練習を重ね、汗も涙を流して頑張ってきたことを結晶させる、まさにそのタイミングになってからの展開は壮絶の一言。
ただただ慄く。あまりの迫力に。鬼気迫る舞台に。
そしてクライマックスでアッコが見せた渾身の「振り返り」!この見開きを見た瞬間の衝撃といったら、まんまのこの作品にしてやられたなと思いましたよ・・・!

みんなが一緒になって突き進んだ日々。一瞬一瞬がかけがえのない思い出になっていく。
演劇に関する専門的なシーンも数多く盛り込まれており、本格的なこの作品。
そしてその至る所に青春らしい空気が漂っているのが、いいんだ。
部活漫画というのが青春と強く結びつく題材。この作品も様々な青春の一面を描いていきます。それは熱血というだけではなくて、ぼんやりとした将来への不安とか、家族・兄弟とのいざこざとか、友達との間柄とか、恋だとか・・・。
そういう青春らしい感情を胸いっぱいに感じて、その全てを舞台の上で、演技として発露させる。全てが芸の肥やしだ。そんなキャラを最近PCゲームでもプレイしたけれども・・・演劇という題材は、見た目よりも本当に奥深いようです。
とは言え、すべての出来事が芸の役に立つとは言え、この忙しくも楽しい日々を全力で楽しみ、そしてその終わりを惜しむ気持ちにこれっぽっちも嘘はない。

演劇部2 (1巻17ページ)

本格的に練習をする前。くすぶっていたころのアッコは「ずっと今が続けばいいのに」と思っていました。最後まで読んで再びこの第一話を読みなおした時、こんな所にも成長が現れていたのかとビックリですよ。
途中、なぜ演劇は心にのこるのか、それは記録ではなく記憶に残るから、記録するものはないから、せめて何も見逃さないよう・聞き逃さないよう最大限の集中で臨むからだ・・・と、そんな説明がされました。
それを踏まえて3巻クライマックスのアッコがどんな心意気で演じたのかというと、それはネタバレになるので避けたいのですが、それは1巻最初の彼女のものとはだいぶ違ったものでした。
「今がずっと続けば・・・」じゃない。「今が終わっても、この瞬間が記憶に焼き付いてはなれないような演技を!」
と。それは永遠なんかありえないと悟った、寂しくも確かな成長のあかしでもあるでしょう。刹那的とも言る生き様をアッコは見つけるんですよね。
そして一番にシビれたあの最後のページの、最後の『お別れ』。
最高にカッコいいラストシーンだと思います。いろんな含みがある言葉でした。そしてこれは、演劇部である『今』への手向けの言葉だとも思うのです。上の画像の1巻の頃のアッコとは、もう決定的に違っている。
紆余曲折ありましたが、最後の最後はなんと静かな、なんと鮮やかな幕引き。
それは主人公の成長を確信させてくれるもの。ちょっとだけ寂しさに後ろ髪ひかれる・・・けれどそれよりも胸が熱い。一言ではとてもいい表せない、極上のラストシーンですよ。



『演劇部5分前』1~3巻にまたがっての感想でした。大好きな作品です。
決して絵は上手くないこの作品。勢い重視でもっと描写がほしい場面もありました。けれどこの作品にここまで心惹かれるのは、ひとえに「物語」の魅力にまとめられそう。
その内容はずらずらと書いてきたわけですが、正直こんなの俺の感想文読んでくれた所で面白さの一かけらだって掴めないとおもいます。読む人が実際にこの世界を体験してこその、奥深い面白さ。これは一読の価値は十分にあると思います。
特に2巻以降、物語が加速し熱を帯びてから、まさしく世界が変わっていく。その素晴らしさとある種の残酷さは読み応えがあるはずです

どのキャラクターも成長が描かれていて、気分もとてもいい。
けれど一筋縄ではいかない人生のシビアさだって存分に込められた、愛もあれば意地悪でもある、実に味わい深い作品。
演劇に情熱を燃やして燃やしまくって人生における一瞬を駆け抜けた演劇部。
この日々はきっと誰もが忘れられない。それはひょっとしたら、読者ですらも。

『演劇部5分前』 ・・・・・・・・・★★★★☆
高校演劇を描いた青春部活漫画。色々ひっくるめて愛おしい漫画。辛い場面もいっぱい。幸せで楽しい場面もいっぱい。大切な思い出を刻みつけよう。

[漫画]全力でケンカして、全力で踊ろう。青春してるんだろ!『BUTTER!!!』4巻

BUTTER!!!(4) (アフタヌーンKC)BUTTER!!!(4) (アフタヌーンKC)
(2012/03/23)
ヤマシタ トモコ

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   …あたしは皆にどんなふうに優しくしてもらって…助けてもらったんだっけ…

感想書くの遅れましたが、今日はヤマシタトモコ先生の「BUTTER!!!」4巻を。
リアルな空気感の中描かれる、社交ダンス部の面々の青春劇。
今回のオビは、書店の手書きポップみたいなデザインになっていて面白いですね。好きなデザインです。「青春のもどかしさとまばゆさがぎっしりつまってます!!」ってのも、自分が言いたいことをばっちり書き表しててw
物語も動き出して、一層楽しみな作品になってきましたよ。

前巻→苦しくても逃げたくても、立ち向かわなきゃ。『BUTTER!!!』3巻



ひとまず目標の文化祭公演を成功させるため練習をしていくダンス部。
4巻は文化祭めがけての具体的なアクションと本番、そしてその後が描かれています。
ストーリーも当然面白かったのですが、ちょいと気になった所を挙げていきましょう。

●夏をめぐる「努力」の話。
4巻は最初の17話からして夏の様子がおかしい。おかしいというかいつもどおりなのかもしれないんだけど、明らかに彼女の本質をフィーチャーして「いやな人間」に見せようとしてる感じ。
それはつまり、この巻では彼女の成長を描いていくんだぞっていう意志のような。
いろんな話題に首を突っ込んでは「私も頑張ってるんだよー!」ってアピールしたげな夏。彼女の友人曰く、というか誰から見てもまるわかりなんだけど、話題の中心にいたがりなんですねこの女の子は。
才能がないとはもう分かったからから、頑張りは認めて欲しい・・・。
成長して新たに見えてきたのは、夏のねっこに根付いた醜さですよ。そういう性格の悪さがあると自分でもわかっているんだけど、意識できてもすぐ改善できるなら人間苦労はしません。
自分より優れてる人間には才能がある、ってレッテルをおしつけて、自分と同じフィールドにいないと考える。無意識に。すごい人は才能があるんだって考えて自分を守ってる。自分に努力がたりないと認めたくない。それはつまり逃避。
そういう、ちょっとチクッくる描写がそこかしこに用意されている。
けれど4巻の夏は自分の醜さを受け止め、変えようとする姿を見せてくれています。

そんな夏が、とある女の子とケンカをするのが第19話。
これはもう、「自分には才能がないんだから」ってむしろ卑屈になりすぎてしまったからこそ起きてしまったトラブル。「私よりこの人はすごいんだから」と要らないにも程がある遠慮かましてこの大失敗。ままならんなあ青春というのは。
でもこのケンカ、相手の女の子も完全にいい子というわけではなくて、わりとこじれる。
はあーこのケンカ、大好きです。
経緯の子供っぽさとかくだらなさとか・・・本当に未熟。けれど切実な苦しさがある。
それだけでも楽しいんですが、解決法もフィジカルを武器にし肉弾戦をしかけていく感じが本当にたまらない!若い若い!大人同士ならなあなあで流してしまいそうなすれ違いにも、全力でぶつかってくんですよ。
そこで飛び出す「フツーこんなちゃんとケンカなんかしてくんねーぞ!」っていうセリフもまた大好きで。本当にそうだよなと。ぶつかり合ってこんなに真正面からケンカできる機会、そうそうあるものじゃない気もするんだ。ちゃんとケンカするって、大切だなあ。

ほんとにみんな自意識過剰なんだ。誰かと比べて自分がどうとか、気になってばかり。
でも高校生だろ、それが当然だしそれでいい。自意識に振り回されて浮かれたりへこんだりするのって、それ自体すごくまぶしいのだ。



●そして文化祭当日。
いよいよ練習の成果を見せるときぞ、とテンションあげちゃうみんなですよ。

バター3

「すっごいうまくいっちゃったらどーしよー・・・」

ぼんやりと大成功を思い浮かべる。練習はしたよ。なら期待してしまうよ。
一方で端場くんはやっとこさ家族に、自分がなんの部活をしてるかを明かす。それも彼なりに本番を成功させるために覚悟を背負うためのものだし、やっぱり端場くんも気合入ってる。
そうやってみんながちょっとずつ緊張しながらも期待を募らせる様子に、読んでいて自分もボルテージ上昇ってもんです。けれどさて結果は――・・・

失敗はしなかった。それだけ。ささいなミスはあっても全然大丈夫。
“なんとなく”できちゃった。けれどそれってさ、なんか違うんじゃないか。
体中が熱く震え上がるような、言葉にならない叫びを上げたくなるような満足が、果たしてあったと言えるのか。
学生ノリで楽しく可愛く。それは正しいことに違いない。間違いなく思い出になる。
それで満足したメンバーもいる。精一杯に頑張って、なんとか結果を出したんだ。それは嬉しいに決まってる。頑張っただけの成果はあったに違いない。

けれどこんなちょっぴりの、普通の感動だけでは満足できない人もいた。130ページのみんなで手を上げて決めるクライマックスで、1人だけ、普段とは明らかに違う表情してる人ですよ。普段だったらこの人、絶対高揚して顔赤くしてたり多少なりとも表情を出すはずなのに、なんて無表情。
「不完全燃焼なんだろそうなんだろ」ってヤツです。思い返して見れば、自分達がやってきた練習も100%の全力で取り組んだのか、そもそも輝かしい大成功を望めるようなものだったのか。
心のどこかで、「これくらいやっておけば、なんとかなるか」なんて考えていたのかもしれない。そんな覚悟じゃ、最初からこんな未来はわかりきっていたんだ。けれど不相応の期待をしてしまった。それは仕方のないことなんだけどさ。
時間と努力を一杯一杯に使って・・・それで「全力の賭け」をしなきゃ、強烈な満足感なんてあるわけないんだよ。

「若いくせに必死じゃねーとかなんだそれ!!」「もっとやれるだろ、違う!?」

叱咤するのは大人たち。「なかなかよかったよ」とは言ってくれるけれど、そんなのはオマケみたいなもので真実ではない。学生だから、最低限の苦しさで楽しい思いができて、お手軽に盛り上がれるような・・・そんな生ぬるい環境の中でしか成り立たない嘘の優しさ。
そんなものはいらないと手を振りほどけば、次にやってくるのは大人の、プロとしての厳しい意見に貫かれる瞬間。
本当に、このダンス終了後のシーンは熱い。ゆるやか~にダンスをやってきた漫画ですけど、ここでダンスにおける「熱血」が芽吹いたような気がするのです。
こんな満足じゃ終われない・・・。そう感じてから、ダンス部は一歩を踏み出すのです。

でも高校生ってもう無邪気な子供でもないから、なにかに全力投球的に夢中になるというのも難しい年頃だと思う。

●ここで気になるのが二宮和美、副部長さんですよ。
「やりたいことだけやってなんとなく許される人にはある種才能のよーなモノがある」って一節が4巻に出てきましたが、これって彼女のことなんだよな。
どこか冷めている二宮さんは、無気力な女の子。いろんなモノを背負いたがらない。それで今は(きっと)最低限の努力で、今は部活を引っ張っていられるほどマスターしてる。
でもこれから先はきっと、今の彼女のスタンスのままじゃ壁にブチ当たる。
友達同士みたいな部活と言っても、一枚岩ではない。目標や、それを叶えるための意識や・・・違うことは沢山あるし、それが原因でおこるいざこざだってこの先たくさんあるんじゃないかな。
部長さんとの関係と合わせて、今後盛り上がるのは彼女のエピソードなんじゃないかと密かに期待をしていたりします。人が変わっていく瞬間を描くのが上手いこの作品だからこそ、楽しみなんだ。



という感じの「BUTTER!!!」4巻でした。
ちょっとストーリーの内容に踏み込みすぎてネタバレしすぎたかと反省しているんですが、書いておきたいことを書くにはちょっとこれくらい必要でした。
今回はかなりストーリーが動きましたが、むしろこれから大きく膨らんでいく未来へのプロローグであるという印象が強いです。
連載も2年を超え、更に盛り上がってくる感じでしょうか?

これまで自分がこの作品に感じていたの魅力はスポ根的な一面ではなく、思春期のパーソナルな悩みやそれを吹き飛ばす爽快な展開が大きかった。小さな世界の中のカタルシス。こじんまりした、個と個のバトルだったりふれあいだったり。
けれどこういう展開になってくると、多分もっと大きな世界に彼らは触れていく。この作品がどうなっていくか、この愛おしいダンス部の面々がどうなっていくのか、超楽しみですよ!
まぁこの作品のことだから、世界観が広がっても相変わらずみんなウジウジ悩んだりするんだろうけどw でもそれが楽しくて可愛くて、期待している自分です。

精密な人物描写は今回も冴え渡り、微妙な人間関係をふんわり感じ取らせてくれる。人間関係のリアルさですよ。キャラクターの「人間」がガシッと定まっていて、それぞれが絶妙に絡み合ってる。見える部分見えてこない部分の作りこみも素晴らしい。だから些細な日常のワンシーンにだって最新の注意を払ってじっくり読んでみたくなるんですよね。
ダンス部の男の子たち、どんどん仲良くなっててニヤニヤ止まらないですよ・・・!大事件はなくとも日々の積み重ねが確実な変化をもたらしている。こういう所も大好きで。
キャラクター愛溢れる漫画ですよ。その人のいい所も悪い所も、愛を込めて描かれてる感じ。
キャラ愛といえばそうそう、明らかに贔屓されてる子がいてニヤニヤするw

バター

『「かわいいから」の一言が言えれば人生は楽』とかね!こんなわかりやすいフォロー(というかいじり?)を作家から入れられるキャラ、作中じゃ他にいないよなw
コイツもツンデレこじらせて過去に大失敗してるからなあ。今度こそなんとかしろやと!

長々とかいてしまいましたが今度こそ以上。5巻楽しみしてます!
もっと本気で青春掛けようぜ。それがまさしく青春だからさ。レッツ・ダンシン!

『BUTTER!!!』4巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
ちゃんと本気で感動したいんだって。とんでもない失敗があっても、青春は全力投球ですよ。
「青春」って書きすぎてもうこっ恥ずかしさなんてどっかに飛んでいってしまった。

[漫画]コミティア100で買った本の感想をいくつか。その2

はい、2回目のコミティア100同人誌感想記事です。一応前回のリンク
個別更新するタイミングもなんとなく難しいので、イベント後にまとめてってパターンが良さ気。
じゃあさっそく。

hanato.jpg

2娘」さんの「花と砂糖と君が好き」の3巻目。
乙女サバさんとこのシリーズには名古屋のコミティアで出会ったんですが、すごく愛着が沸く世界なんですよね。1巻、2巻と楽しませてもらいました。
けれど3巻はこれまでと比べると変化球かな。これまでは2人の女の子を主軸に展開してきましたが、今回は教師の男性が主人公です。
正直読み終えるまで、このエピソードが「花と砂糖と君が好き」のシリーズに組み込まれていたのはやや意外だったのですが、最終的にはすっと受け入れられました。
「好き」という思いには色々あるってこと。終盤の眩しさはかなりお気に入り。
教師として、教科書にはのっていない人生の楽しさも教えようとする。けれど生徒たちには「テストに必要ない」と喜ばれない・・・そんな理想と現実のギャップに思い悩む主人公。
そこから1,2のメインキャラたちも関係しつつ、暖かく丁寧に盛り上がっていくお話。
気持ちいい風が吹きこんでくるような、ポジティブな陽のエネルギーを貰える作品でした。
テンポよくコメディチックなシーンもちょくちょく出てくるので読みやすい。

それともう1つの新刊「苺とミルクと蜂蜜が好き」もよかったです。
こっちは百合ん百合んしてて期待通り。緑山さんの表情がいちいち可愛くてなー。



domasyu.jpg

Domani」さんの初個人誌「とどいてとどけて」です。やったーどまっしゅのさんの本だー!
百合アンソロ同人誌「少女制服」という本が大好きだった自分ですが、それにどまっしゅのさんも描いていてすごく印象に残っており、気になる作家さんでした。というところでの初個人誌ということで、ああこりゃ買わざるを得ないなと。
さて本作はちょっぴりの身長コンプレックス?と、「王子様」をめぐる百合漫画。
こじんまりとした素朴なストーリーでしが、きちっとまとまっていて1つの作品として愛らしいですね。主人公の2人それぞれが愛らしいのも間違いないんですが、2人の関係性も素晴らしい。どっちが「王子様」なんだろうね。それは2人がこっそり考えてみればいいか。
回想でちずが涙ぐんでいるシーンなんか特にお気に入りです。
女の子の肉感も好きな感じ。絵柄はシンプルなんですが、やわらかそうなんですよね。画はわりと絵で選びがちなので、絵の好感度が高いというのはそれだけでポイント。
ほのぼの楽しめる一冊でした。コンプレックス萌え的にもなかなかニッコリな出来。



ponpono.jpg

ぽんぽんお」さんのオリジナル百合同人シリーズ一気買い。
「ぷくゆり~pierce~」「ななゆり」「ぷくゆり~kiss~」3冊ですね。
このサークルさんはもともとかわゆい百合イラストを描いてくれている所として認識していただけなのですが、同人誌の方には手を出していなかったんですよね。というか出せていなかった。
冬コミでは買い忘れたり、イベントに行けなかったり・・・。でもコミティアで既刊もずらっと置いてくれていたのでまとめがい!これはいい本を買ったな・・・!
絵のクオリティはさすがといった所で、ほぼ揺らぐことなく高水準。
そしてストーリーの方もいいんだなこれが。3冊それぞれグッと来ましたが特に好きなのは「ぷくゆり~pierce~」。不良娘と芋娘という、クラスメイトだけど住んでる世界が違うような2人が惹かれ合い心を近づけていくシリーズ。この話の、ピアスを開ける流れにゾクゾクッと来ました。
本当だったらこんなチャレンジできないはずの芋っ娘なのにな。旗から見れば不良娘の悪い影響を受けているとしか思えないだろう。でもささいな非行だろうと、大切な人に手をひかれることの感動が少女の胸を震わせるわけです。そのままどこまで堕ちていきそうな、甘美な闇を感じさせる。
けれどそんあドシリアスに突き進むではないし、不良娘ちゃんもそこまで深刻に非行に走る様子もない。微笑ましく見守ることができ、ブラックさも全然ありません。ただ、そういうシチュエーションがたまらないぞっていう話です。
思春期を描くにおいて「非行」って刺激的なエッセンスになるよなと再認識。まぁピアスなんてまだ可愛らしいものです。そういえばこういう透明のピン、高校の時友人もやってたな。
ともかく、いいシチュエーションが展開されている作品だったと思いますね!
「ななゆり」は完璧に純度100%の甘さ。2人ともおっとり系でこれも大好き。
うむ。マウンテンプクイチさんの百合漫画はとびっきりに甘い!
甘くてラブい百合が好きならぜひ。



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9X9」さんのコミティア新刊「スモーキー・ピンク」。
70ページという大ボリューム。美麗な作画で女の子たちの甘酸っぱい想いが綴られます。
あれ?なんかさっきから百合漫画ばっかりじゃね?・・・だって創作百合、好きだしな・・・。

さてさて、ページ数が多い本作ですが2部構成です。主人公が入れ替わる。
1章だけだと一方の女の子がどんな子なのかを、真に理解することはできない構成。1冊の本として完成度の高さを感じます。2章を読んでからまだ最初に戻ると読み方が変わって、これが面白い。
勘違い・すれ違いから絆を深めての回帰。そんな王道展開を退屈させずに読ませる力がある。
相手に真剣に向きあおうとする、臆病だったり勇敢だったり、いろんな一面を持つ女の子たち。
気持よく完結を迎えましたが、まだ掘り下げが行われないまま放置された男の子がいました(桐江くん)。これに関しては後日、続編というか番外編のようなエピソードが描かれるようで。楽しみですなー。こうやっていろんなキャラの視点から1つの物語を見つめるタイプのお話は、パズルみたいに答え合わせをしていく面白さがあって好きです。
先にも書きましたが作画レベルは非常に高いです。漫画も上手いんですが、一枚絵としての美しさを堪能するにも耐えうる。いずれどこかで連載持ってくれないかな、なんて。BE・LOVEに掲載された同人誌発の受賞作も面白かったですしね。



ということで以上4冊(シリーズ?)。いい本とたくさん出会えました。百合多め。
同人誌の感想も、いい本と出会えた時には積極的にやっていきたいですねえ。

[漫画]コミティア100で買った本の感想をいくつか。その1

コミティアから1週間が過ぎましたね。入手した本も読み終えられました。
どうせならいくつか感想かいてみようかなぁと思う今日の更新。普段同人誌で更新しませんし、たまにはということで。
気に入った本からいくつか。画像が残念画質なのは携帯のため仕様。



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高嶋屋。」さんの新刊「チョコレートと加瀬さん」。
たっぷりニヤニヤできる、甘み100%な一冊でしたね・・・かわいいなぁーもう!
新書館の百合アンソロジー「ひらり、」にて連載?中の「加瀬さんシリーズ」番外編です。定期的に買っている「ひらり、」でも特に楽しみにしている作品。
20ページほどの、本編と比べれば短めなエピソードですが、バレンタインなんてとっておきのお話を持ってきてるわけで、これが面白くないわけがないだろうっていう。
山田さんの乙女全開の慌ただしさは見てて癒されるし、加瀬さんが山田にだけきっと見せている特別な表情の素晴らしさにテンション上がります。
そしてこのセリフに心射抜かれる。「友チョコ・・・他の友達にはしてないから 誰にも内緒にしてね?」ってもう・・・友チョコって言ってんのに本気すぎるでしょうが・・・!

しかし高嶋先生のHPでさらっとコミックスって言葉が出てきて、ああ単行本化するんだなぁと一安心。同人誌とは話が外れてしまいますが、「ひらり、」はかなり良質な百合漫画を送り出してるので単行本化が待ち遠しい作家さんが沢山いるのです。まだひらりレーベルでの単行本出てないですし、加瀬さんシリーズの単行本も期待大!



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続いても「高嶋屋。」さん。俺は自分で思ってるより自分が高嶋ひろみ先生が大好きなんだなって分かって来ましたよ最近。
さて「ポンチョ。」とはまんがタイムラブリーやらスペシャルで連載がされていた4コマ漫画。1巻は出たのにもろもろの理由で2巻が出版されなかったので同人誌で!というのが今回のこの本ですね。
このパターン、自分は以前にまがりひろあき先生の「よいこのしごと」って漫画で味わいましたが、4コマ界隈ではわりとあるあるな話なんでしょうかね。ちらほらと見かけるような気がします。ちゃんと買えてよかったー・・・。

彼氏が彼女さんの家に遊びにくるんだけどなぜか彼女さんの妹のポンちゃんと遊び転げて帰っていくという、ラブコメのふりしてあんまりラブいことしないコメディ漫画。しかし直接会うような描写がほぼ無いとはいえ、恋人同士の絆の深さを印象づける甘い場面は盛りだくさん。ニマニマしながら楽しめる一作でしたね。最終話は念願の・・・というお話で読後感もよし。読みやすく雰囲気も心地いい、賑やかな漫画でした。
「小さな子でも読める漫画」を目指したということですが成功してるんじゃないかなぁと思います。ポンちゃんがぐいぐい作品を引っ張っていきますし、大人キュラも純粋で。
個人的に、お化けに扮した彼女さんの手を一瞬で見分けてにぎにぎする彼氏、それに慌てながら赤面する彼女さん、な「バイトDEおばけやしき」のオチが大好きw



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Neige」さんの新刊「How's life?」です。
このサークルさんは葵さんに教えてもらったんですが、この作家さんの感性はなかなかに自分の心に直撃する。今回の新刊だってすごく淡々としていて、ちょっとドライな印象すらある。
今回の本は2つの短編が収録されていますが、そのどちらもなんとなく煮え切らない。その煮え切らなさが、なんだか魅力的なんですよね。
登場人物に特別な事件はおきない。悶々とした悩みや、現在の自分への違和感を抱えていて、ぐずぐずと立ち止まったりうまく歩み出せない女の子たちが描かれます。
そして結局を言えば、彼女たちは大きな結論は出さない。

「ピアノとわたし」では母親の期待を背負ってピアノを始めた女の子の話。
繊細で淡い印象がある絵とマッチした微細な心理描写・・・いつのまにかぐいぐいと引き込まれています。「しょうがないから」と言う「わたし」。最後のピアノを弾く姿に不思議と胸に刺さってくる。本当に煮え切らない。現実に押し流されてるだけ・・・なのになんとなく切ない。

表題作「How's life?」はなんとなく疎遠になった元カレと再開する女の子の話。
もう1つの短編は自己完結のお話だとするなら、こちらは他者との距離がテーマかな。
なんでもないように自然に会話をしていった、その最後にそっと小さな決意をするというのが面白い。決意といっても小さく、けれどそこから派別する様々な感情を想像するのが楽しいのです。そしてチクリと胸がいたくなる。
最後のページではちょっと泣きたくなるくらい。

なんとなく何かを感じる、そんな本でした。朧気なんだけど漂っている切なさ。
じっくり静かに読んでみたくなる、淡々と心のゆらぎを描いた一冊です。



torikoto.jpg

メメチダイヤモンド」さんの「トリコトナリテ」1~4巻。4が新刊でした。一気買い。
今回のコミティアで初めて出会ったサークルさんだったんですが、ツボすぎて衝撃。出会えてよかった、もしかすると今回では1番の掘り出し物かもしれない、予期せぬものに出会えたという意味で。
とびきり可愛い絵柄で綴られるのは、離せなくなった狼の男性と、甘えん坊で一途な小さいウサギの女の子の夫婦生活!ようするにロリコン狼が幼な妻ウサギ娘とイチャラブしまくる漫画である!
18禁ではありませんが2人の間にちゃんと夫婦生活があることは間違いなく昂ぶります!
それは興奮するというよりあくまでも微笑ましく見守ることができる絶妙のバランス。

舞台は動物たちの国、十二神国。森の動物たちは人間に隠れ、人間の姿をして生活している。そして自分の身分のずきんを着用することが義務付けられている。狼なら狼の、ウサギならウサギのずきん。
単純にケモミミではなく、みんなが耳つきフードみたいなのをかぶっているそのデザインだけでもひたすらに可愛らしくて心射止められる。
そしてなにより奥さんウサギの六花ちゃんがかわいすぎんぞ、と!
4巻までに新キャラもちらほらと登場したり、色々と事件も起きたりしますが、最終的には夫婦の愛情の深さを生温かく見守りニヤニヤする漫画だと断言できる!
一途でちょっとエッチで夫にベタ惚れで、もう本当にハートを鷲掴みされる女の子。
少女としての未熟さと、妻としての包容力・慈しみ深さをその小さな身体に共存させていて、くるくるといろんな姿をみせてくれるキャラクターなんですけど、そのある種の忙しさもツボですね。
妻となっても「恋する女の子」のまま在り続けている、日々のふれあいに新鮮に感動して赤面して興奮して・・・ああーなんか長くなってきましたけど本当にかわいいんだ、本当に!

一方、夫である狼の十真も魅力的なキャラクター。こんなかわいい女の子を射止めた男がどんなものかと見てみれば単なるロリコンムッツリ野郎じゃねーか!
でも仕事できる男ですし、ロリコンと言っても、妻への愛が大きくてそれを隠そうともしない、力強い夫婦の絆の証明でもありましょう。まぁロリコンというのは彼を面白半分になじるための言葉で、十真はロリコンだから六花を好きになったのではなく、偶然出会った六花に心惹かれて、結果的にロリコンのレッテル張られてるだけw
そんな男なので嫌いになれるわけもなく、むしろもっと心の奥底に秘めたムッツリエロスを開放し俺に見せてくれよとがぜん応援したくなるのですよ!だってどんな事だって六花ちゃん受け止めて頑張ってくれちゃいそうで・・・!
ということで主人公である夫婦にイヤミがなく、見ていて本当に気持ちがいい夫婦なのです。
2人ともが相手を全力で好きでいる。なんて眩しい、なんてかわいらしい!
あまあまなラブコメ好きならきっと好きになるシリーズだと思います!

そして本当に絵が可愛らしいんですよ・・・サークルさんのHPに行ってイラストをいくつか見てみると、どんなものかわかりやすいかも。六花ちゃんがする様々な甘い表情にクリッとした瞳にぷにぷにしてそうなボディラインにぐへへへうふふふ。六花ちゃんへの愛が止まらない。脳が蕩かされる。



とりあえず今回は以上の4つで〆。書いてたら長くなってしまった・・・。でもそれだけ熱く入れこむことができる作品にたくさん出会えたのってすごく嬉しいことです!
まだ書きたい本はあるのでその2も書きます。(追記)→書きました

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「さざなみ」と読みます。
漫画と邦ロックとゲーム。
好きなのは思春期とかラブコメとか終末。

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