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[漫画]今はまだ遠い君の所に。『鉄楽レトラ』2巻

鉄楽レトラ 2 (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)鉄楽レトラ 2 (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)
(2012/04/12)
佐原 ミズ

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   今のままじゃ辿り着けない、君の所まで・・・・・・・

ゲッサンにて連載中の「鉄楽レトラ」2巻が発売しています。
1巻から胸熱くさせられたこの作品ですが、2巻も十分に熱く仕上がっていますよ!
静かにけれど確実に、心の深いところから感情がせり上がってくるような作品。
優しく、そして力強い。ひたむきにそれぞれの闘いに挑んでいく。

しかしこの2巻・・・驚くべきはその加筆修正の多さですよ!
雑誌でも読んでいる人は相当ビックリしたと思います。加筆修正ってレベルじゃない。ストーリーも一部リライトされています。ストーリーまで変わってるってすごいなこれ!
では加筆修正についてもあわせて、2巻の感想を。

前巻→痛みを超えて、もう1度立ち上がれ。『鉄楽レトラ』1巻



●まず加筆修正の話を。
・・・と言っても、単行本派の人にとってはなにがなんやらって感じになりそうですが・・・。
ゲッサンのバックナンバー片手に読み比べてみたところ・・・修正箇所が多すぎて整理ができませんでした!なんだこれ!
背景の書き足しやコマの書き直しなど一般的な修正も沢山あるんですが、それだけじゃない。
一部はほぼ新作といえてしまうくらい、ストーリーが変わっているんですよね。
特に描き直されていたのは、第4話「放課後のリレー」第5話「救世主」。
このあたりはまるっとリメイクされており、雑誌で読んだ人もかなり新鮮なのでは。第4話はページ数も倍くらいに増えている。
そういえば現在出ているゲッサン5月号の巻末コメントのページに、編集が「本誌で連載を読んでいる人にも驚きの仕上がり」とあったので、こういうことだったんですね。
第6話以降は雑誌版のものとストーリーも統合されるので、6話に至るまでの過程をいじくった形というわけです。でもこれ、かなり面白い修正がされていますよ。

ではこの修正はどんな効果をもたらしているのか、というと
主人公以外の人間にもかなりスポットライトが当てられるようになっています。
視野を広めた、やや群像劇的な色合いを出していたことが印象的。
特にニヤリとさせられたのは、第5話に登場する女装した男性を交えたエピソード。
ここ、雑誌では主人公の鉄宇(きみたか)がオカマと出会うことになっていました。

レトラ1 これが雑誌版。

けれど単行本だと皐(たかし・表紙の子)に変更されています。
1巻のころは主人公が見た・感じた世界を中心にストーリーが構築されてましたが、
主人公からサブキャラへとメインを移し替えたこのエピソードからも、主人公から見える世界だけを描こうとしているわけでない、この作品のちょっとした方向性の変化が見えるかも。1巻の頃からもありましたが頻度が高くなってきたということかな。

レトラ こちらコミックス版。

単純にキャラクターを入れ替えただけでなく、その後の展開もかなり違う。
一方のみを知っていてももちろんいい話ですし、両方を知っているならIFの世界を覗き見ることができるニヤリとできる仕様となっています。
このエピソードは雑誌版のストーリーも捨てがたいような気がしますが、単行本には収録されないんでしょうかね、こういう修正がされていると。

それと、皐のキャラクター自体も変わったような気がします。
雑誌の頃は穏やかなふんわりとした表情をしていることも多く、主人公との出会いのシーンでもなんでもないように女装して女の子のように接していたり、結構とらえどころのない正確だったように思います。
ところが単行本ではかなり突っ張った一面も持った男の子としても描かれます。
最初は主人公にたいしての好感度が低く、彼に突っかかったりもしています。
2巻の表紙が公開されたときも、最初皐くんだとわかりませんでしたよ。こんな凛々しい表情を見せるキャラクターでは、少なくとも雑誌連載時ではなかったのです。
皐に関しては単行本でいい修正が入ったなと感じました。彼のキャラにビシッと芯が生まれたような気がしますね。鉄宇と彼が少しずつ仲良くなっていく様子も単行本ならでは。

他にも雑誌になかった大きなシーンがあって、フラメンコを踊るおばあさんの場面。
ここは完全に新たに追加されたエピソードで実にあつい内容!
フラメンコはよくわかりませんけど、なんとも言えない迫力があり、彼女のひたむきさと胸に秘めた思いの強さを感じさせてくれます。言葉はなくとも、じんと胸に染み渡る。
知られざる努力と闘いの一幕。
2巻はそんな、主人公以外のキャラの内面描写や頑張りがじっくりと描かれてます。
違った立場での、違った舞台での、それぞれの「闘い」。
この作品の世界観が、いいふうに広がったように思います。
鉄宇はもちろん、おばさんも皐も、あのオカマの男性だってきっと闘っている。
誰かを力になったり、誰かから力をもらったり・・・そんな前向きなエネルギーで世の中がまわっていく様子が心をあっためてくれます。この感覚がこの作品の良さですねえ。

雑誌版のストーリーでも十分に面白かったと思うんですが、そこからさらに手間を賭けてリメイクというのは・・・すごいですなあ。こだわりが感じられます。



●さて、加筆修正の話を交えつつ面白かった部分を書いてみましたが2巻のハイライトは第7話なのかなとも感じます。鉄宇と、彼のあこがれである少女・宝がメインのお話。

レトラ2

しばらく顔を合わせていない、けれど相手のことを思っては自分を奮い立たせる・・・互いが互いを間接的に支えているような2人。
そんな距離感を保ってきた彼らが、ついに接近するのです。
・・・とは言え、まだ顔をあわせるわけにはいかない。
そう簡単に、そんななんでもないように、声をかけるわけにはいかない。
まだ満足してない。まだ頑張りきっていない。彼女が思い描いてくれている「強い鉄宇」に、近づいてからじゃないと。今はまだその勇気も足りないし、資格もない。
自分が満足する自分になっていないと、自分が納得できない。
特別言葉をかわしてもいない。けれど彼らは示し合わせたように同じ方向を向いて頑張っているのです。つまり「あの人に恥ずかしくない自分になりたい」と。
それは恋とか友情とかとも違った、複雑なようでシンプルな感情。
今回は主人公が宝を見つけ、宝の方が彼の存在に気づきませんでしたが
もし2人の立場が逆だったとしても、きっと宝は鉄宇に声をかけられなかったんじゃないかなって思ったりしました。2人ともまだ弱くて、誠実で、ムダにストイックだもんな。
鉄宇と宝の関係はもどかしすぎますが、そんな2人だからこそ、応援したくなる。
いつかしゃんと立って、誇れる自分で、君に会いに行くよ。なんて。

誰からの物か悟られないように、そっと忍ばせた応援のメッセージ…ほんとグッと来ます。



そんな「鉄楽レトラ」2巻でした。
1巻も素晴らしかったですが、2巻も大変たのしめました。
1巻の第3話のような涙腺ぬズガンと直撃するようなエピソードはありませんでしたが、心を芯から暖かくしてくれる、そして勇気をくれる、そんな力強いエピソードが並びます。
そうそう、開始当初はなんのこっちゃかわからないタイトルでしたが、説明が入りました。「レトラ」とはフラメンコの曲の「歌詞」を指す言葉なんだとか。
ちょっとずつ練習が始まり、音楽的な要素も入って来ましたね。続きが楽しみ。
実にまっすぐな人間ドラマ。読めば読むほど心動かされます。
心がいたんだり、切なくて身悶えするようなシーンも多いですが、それでも立ち上がり闘っているキャラクターたちの姿は、多くの人が何かを感じるんじゃないかなと。

『鉄楽レトラ』2巻 ・・・・・・・・・★★★★
安定のクオリティですね。切なく、凛々しく、たくましい人々の姿が描かれます。

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