[漫画]自由に愛して自由に生きよう。 『かなしい人はどこにもいない』
たまにはBL。
思いのほか胸がいたくて 興奮した
前回がだっいっじけっん!(関係ない)な感じで百合更新だったので今日はほもほもします。
山田酉子先生の新刊「かなしい人はどこにもいない」です。
「女の子のすべて」でこの作家にハマり、BL単行本「クララはいつも傷だらけ」もよかったので、結構楽しみにしていた一冊。
山田酉子先生の作品らしさは本作にもいきていますね。肩の力をぬいてリラックスしてるような空気。でも鋭さと毒も持ち合わせているような。
でもBL作品はけっこう甘いものが多くて読みやすい気がします。
ではさらりと感想をば。
今回は大きく2つのシリーズに分かれて収録されています。
最初が「Almost Summer」、中盤「オールドファッション」とその続編・番外編。
それぞれに関して個別に感想を書いていきます。
●Almost Summer
血のつながりがない兄弟もの。
プーなお兄さんを養ってやってるということで心理的優位にたっていた弟。ですがお兄さんが家を出て、バイトして自立をしようとすることから話が動いていきます。
とはいっても物語自体は短いもので、水気と感情をたっぷりと含んで膨らんでいます。
さらりと読めますが、表情やしぐさ、言葉の1つ1つや噛みしめることに美味しさがある作品。
読んでて感じるのが、兄弟間の距離感がふわふわしているなということ。
それは家族として当然の安定感のようにも、家族としてではない愛情があふれて感覚がくるってるようにも感じるような。
家族の延長線上の愛とは違うけど、まぁきっといろいろごちゃ混ぜになった感情か。
家族という確実なつながりですでに結ばれているため、恋人として関係をこじらせるよりは、「家族」という名目に守られていたほうがよっぽど楽で。でも手に入れたいのは本当で。
まとめとしては、最初はあんなにしっかりしてたのに、終盤ではすっかり涙目になってたり弱い面を見せてくれる弟くんかわいいなって話。
使用後ティッシュをベッドに放置してるのはなかなか不衛生なのでやめるべきです弟くん。
●オールドファッション/かなしい人はどこにもいない/ワンルーム
いろいろありますが、どれも共通のキャラが登場するシリーズ。
開始3ページで「とりあえず犬とやった」とか高速展開。この作品も、微妙に感情を揺らぎ動かしながら進んでいく作品なのですが、キャラの性格もあってか常習的にSEXしてますね。
さて、「犬」くんがとにかくエロいのです。お前本当に男なのかという感じで。体つき、顔立ち、ながいまつ毛、言葉の選び方など、非常にフェミニンな男性キャラクター。
主人公と犬、2人を仲介するのがサナダさんというキャラクターなのですが、彼はそうそうに退場をして、その寂しさからさらにメイン2人の関係が深まっていくという感じ。
お互い、他に誰か想い人がいると知っている。でも愛し合う。その残酷さを2人をむしろ楽しんでいるようで、面白い生き方です。「他の男の名前を呼ばれるのは 思いのほか胸がいたくて 興奮した」のモノローグにはしびれましたねえ。
物語全体としては、そういうちょっとした矛盾や切なさを抱えて、新しい愛に向き合っていくというもの。糖分おおめ、ポジティブな作品となっています。
人間ってとても勝手で冷たくて、でも甘えたがりで。
やさしくスタイリッシュに、のびやかな雰囲気をたたえたシリーズだと思います。
巻末描き下ろし、「サナダさんのその日」もお気に入りです。雲みたいにとらえどころのないキャラクター、その思考。最後におかれて物語が引き締まった気がします。
結構スッキリまとめられたような。「かなしい人はどこにもいない」の感想でした。
いやあ、やっぱり山田酉子先生の作品は好きだなぁって感じです。
どの作品でも、根底の冷え冷えとした空気と、ゆるやで温かな感触があります。
いろんなキャラクターがわりと自分勝手なのもいいですよね。自由だ。
性描写もそれなりにはあるものの、やらしすぎず清涼感すらあるのも○。そこに重きを置いておらず、心の動きをメインに追うドラマティックなものになっているのも読みやすい。
個人的には「女の子のすべて」で容赦なく女の子たちをボロボロにしてみせる姿勢が好きだったので、もうちょっと悲しくさせちゃっていいんですよ!という感想も抱きます。ボロボロなのに平然としてて、なんとなくぬくもりを帯びて女の子が生きるあの感覚が好きだったので。
しかしBLでもあの空気の片りんを味わえるので、やはり今後も作品を追っていきたい作家さんだなと再認識をしました。いいなぁ、この自由さ。そして甘い窮屈感と束縛。
『かなしい人はどこにもいない』・・・・・・・・・★★★☆
実はこっそりとどこかに/だれかに縛られているキャラクターたちがかわいい一冊。
かなしい人はどこにもいない (ドラコミックス) (2011/09/03) 山田酉子 商品詳細を見る |
思いのほか胸がいたくて 興奮した
前回がだっいっじけっん!(関係ない)な感じで百合更新だったので今日はほもほもします。
山田酉子先生の新刊「かなしい人はどこにもいない」です。
「女の子のすべて」でこの作家にハマり、BL単行本「クララはいつも傷だらけ」もよかったので、結構楽しみにしていた一冊。
山田酉子先生の作品らしさは本作にもいきていますね。肩の力をぬいてリラックスしてるような空気。でも鋭さと毒も持ち合わせているような。
でもBL作品はけっこう甘いものが多くて読みやすい気がします。
ではさらりと感想をば。
今回は大きく2つのシリーズに分かれて収録されています。
最初が「Almost Summer」、中盤「オールドファッション」とその続編・番外編。
それぞれに関して個別に感想を書いていきます。
●Almost Summer
血のつながりがない兄弟もの。
プーなお兄さんを養ってやってるということで心理的優位にたっていた弟。ですがお兄さんが家を出て、バイトして自立をしようとすることから話が動いていきます。
とはいっても物語自体は短いもので、水気と感情をたっぷりと含んで膨らんでいます。
さらりと読めますが、表情やしぐさ、言葉の1つ1つや噛みしめることに美味しさがある作品。
読んでて感じるのが、兄弟間の距離感がふわふわしているなということ。
それは家族として当然の安定感のようにも、家族としてではない愛情があふれて感覚がくるってるようにも感じるような。
家族の延長線上の愛とは違うけど、まぁきっといろいろごちゃ混ぜになった感情か。
家族という確実なつながりですでに結ばれているため、恋人として関係をこじらせるよりは、「家族」という名目に守られていたほうがよっぽど楽で。でも手に入れたいのは本当で。
まとめとしては、最初はあんなにしっかりしてたのに、終盤ではすっかり涙目になってたり弱い面を見せてくれる弟くんかわいいなって話。
使用後ティッシュをベッドに放置してるのはなかなか不衛生なのでやめるべきです弟くん。
●オールドファッション/かなしい人はどこにもいない/ワンルーム
いろいろありますが、どれも共通のキャラが登場するシリーズ。
開始3ページで「とりあえず犬とやった」とか高速展開。この作品も、微妙に感情を揺らぎ動かしながら進んでいく作品なのですが、キャラの性格もあってか常習的にSEXしてますね。
さて、「犬」くんがとにかくエロいのです。お前本当に男なのかという感じで。体つき、顔立ち、ながいまつ毛、言葉の選び方など、非常にフェミニンな男性キャラクター。
主人公と犬、2人を仲介するのがサナダさんというキャラクターなのですが、彼はそうそうに退場をして、その寂しさからさらにメイン2人の関係が深まっていくという感じ。
お互い、他に誰か想い人がいると知っている。でも愛し合う。その残酷さを2人をむしろ楽しんでいるようで、面白い生き方です。「他の男の名前を呼ばれるのは 思いのほか胸がいたくて 興奮した」のモノローグにはしびれましたねえ。
物語全体としては、そういうちょっとした矛盾や切なさを抱えて、新しい愛に向き合っていくというもの。糖分おおめ、ポジティブな作品となっています。
人間ってとても勝手で冷たくて、でも甘えたがりで。
やさしくスタイリッシュに、のびやかな雰囲気をたたえたシリーズだと思います。
巻末描き下ろし、「サナダさんのその日」もお気に入りです。雲みたいにとらえどころのないキャラクター、その思考。最後におかれて物語が引き締まった気がします。
結構スッキリまとめられたような。「かなしい人はどこにもいない」の感想でした。
いやあ、やっぱり山田酉子先生の作品は好きだなぁって感じです。
どの作品でも、根底の冷え冷えとした空気と、ゆるやで温かな感触があります。
いろんなキャラクターがわりと自分勝手なのもいいですよね。自由だ。
性描写もそれなりにはあるものの、やらしすぎず清涼感すらあるのも○。そこに重きを置いておらず、心の動きをメインに追うドラマティックなものになっているのも読みやすい。
個人的には「女の子のすべて」で容赦なく女の子たちをボロボロにしてみせる姿勢が好きだったので、もうちょっと悲しくさせちゃっていいんですよ!という感想も抱きます。ボロボロなのに平然としてて、なんとなくぬくもりを帯びて女の子が生きるあの感覚が好きだったので。
しかしBLでもあの空気の片りんを味わえるので、やはり今後も作品を追っていきたい作家さんだなと再認識をしました。いいなぁ、この自由さ。そして甘い窮屈感と束縛。
『かなしい人はどこにもいない』・・・・・・・・・★★★☆
実はこっそりとどこかに/だれかに縛られているキャラクターたちがかわいい一冊。