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正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[漫画]真夏の夜の夢。いじっぱりな秘密。 『ひらり、』vol.5

ピュア百合アンソロジー ひらり、 Vol.5ピュア百合アンソロジー ひらり、 Vol.5
(2011/08/25)
平尾 アウリ、磯谷 友紀 他

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    どうぞ お幸せに

百合アンソロジー「ひらり、」も5号目になりました。
毎号質の高い作品が並ぶ本ですが、今回も堪能させていただきました。いやぁやはり良い!
注目は今回初参戦の2作家さんでしょうか。『本屋の森のあかり』の磯谷友紀先生・『まんがの作り方』平尾アウリ先生が読み切りを発表しています。
参加作家さん一覧や各作品のあらすじなどは、公式サイトでどうぞ。
ちなみに記事タイトルは表紙イラストから考えました。あー。
夏発売号ということで、制服が夏服だったり、夏らしいイベントがあるのにも注目ですね。
今回は特に気に入った作品について、個別に感想を。



●さようならむつきちゃん/磯谷友紀
歳の差カップル。年上のほうが、現実と折り合いをつけて男性と結婚をすることにします。挙式前日、2人きりですごす夜を描くセンチメンタルな短編となっています。
ああ、こういうシビアな面を見せてくる、ちょっと残酷な百合、大好きです。
あえて言葉にはしないふわふわした関係の心地よさに浸っていた。けれどその、悪い言い方をすれば煮え切らない様子が、2人の温度のズレにつながってしまったのかな。
信じあえてると信じていた。けれど・・・という、心をズキズキさせられる一作でした。
「うぶげが濃い」という表現がマニアックでゾクリとさせられましたし、それがわかるほど近くにいたということも切ない。

20110910232810.jpg

最後の「どうぞ お幸せせに」が、祝福のようにも突き放しているようにも取れて面白い。温もりがあってかつドライなのが本当にいい。胸に残ります。抜けないトゲがささってるみたいに。

●ふたりの卒業式/平尾アウリ
前半小学時代、後半に高校の卒業式直前の1日が描かれるお話。
女同士の関係の社会的な限界をちゃんと理解して、その距離感を内包してのハッピーエンド。
「私だってわかってるよ でも 一緒にいてね これからも」
この気持ちを乗せきった簡潔な言葉。素敵です。

●ラブソングと加瀬さん。/高嶋ひろみ
加瀬さんシリーズの最新話。今回もあわただしい女の子たちの、かわいい青春の1ページ。
間接キスを見せつけられて顔を赤くする山田さんと、勝負掛けてる感を漂わせる加瀬さんの目つきが最高なラストシーンでした。というか山田かわいすぎる・・・。

20110910232815.jpg

あと今回も扉絵にタイトルのローマ字表記が載っているんですが、これがまた。
「Lovesong to kase-san」となっていると、「to」にニヤリとさせられる・・・!

●ソプラノ・フォルテシモ/吉田丸悠
Vol.4で「ひらり、GLコミック大賞」グランプリ作品でデビューした吉田丸先生の新作。
前作には衝撃を受けましたが、2作目もまたかなり楽しめる1作になっていました。
子供のころから歌の練習をしており、それで夢を追っている主人公レイカ。
普段はあまり目立たないけれど、両親が有名アーティストで一目置かれている五百森。
一方的に五百森を敵視しているレイカと、なんとかレイカと仲良くなりたい五百森さん。レイカは自分の声質にコンプレックスがあり、そのためもあってかとにかく五百森にひどい言葉を投げかける。
突っ張ってしまうレイカと、彼女に傷つけられてしまう五百森のアンバランスな関係にやきもきしてしまうのですが、そのぶん終盤の盛り上がりにも胸も熱くなりました。

20110910232813.jpg

2人の間のコマ枠がとけていくようになっているのが、まるで2人の心の壁がなくなっていくことを表しているようです。いい演出。
途中、生々しい感情をおもいっきり叫んでみせる様子は吉田丸先生の十八番という感じか。
それが最高に気持ちいいんですよね。痛々しくもあり。
ただ今回はそれを最高潮とはせず、言葉で引き裂かれた2人の心が、歌の力でふたたび近づいていくシーンがクライマックス。最後の最後まで楽しめました。
この作家さんの描くお話ってけっこう苦みとかえぐ味があるんですが、そこがいい。

●一日白紙/未幡
やほー、「ひらり、」vol.4では欠席されていましたが未幡先生の新作来ました。
このアンソロジー全体の中でもかなり好きな作家さん。
「ひらり、」では切ない作品を結構発表していますが、今回はソフト目な百合です。
特に今回メインの登場人物の1人が、いつも笑顔を絶やさないような女の子なので、とくに雰囲気がこれまで以上にやさしげだったような気がします。かわいい漫画になってます。

20110910232806.jpg

舞台は女子高。日直日誌から友情が始まるところを描いた短編です。
仲良くなるファーストステップを描いているもので、それほど百合度(イチャイチャしてるかどうかを適当に測る個人的数値)は高くないのですが、さわやかな内容でとても読みやすい。
ちょっとこれは続編も読んでみたいくらいにお気に入りな2人ですよ。

●だってあのこ、ばかだもの/木原音瀬/古張乃莉
今回は巻末に配置された小説。なにげに小説を欠かしませんよね「ひらり、」。
しかもこれが今回なかなか面白い作品で、思わず一気読みしてしまいました。
「きれい」にこだわり過ぎてるところとか、同じ女の子で友達同士でも価値観がかみ合わないところとか、心の中ではチクチク悪態ついて表にはあらわさないところとか。
なんだかすごいリアルな女の子たちの心をのぞいてるようで、とても楽しめました。

友達だからこそイヤな面もたくさん知っていて、でも友達だから放ってはおけない。それはきっと相手も同じで、違う価値観から同じようなことを感じて、同じような距離を保ってる。
女の子同士の恋愛というよりまるきり友情を描いた作品ですが、刺々しかったり苦みもたっぷりときいているからこそ、ラストシーンのささやかな甘さがより染みます。
この距離感、男にはなかなか無いものだよなぁって思います。

この作家さん、BL作品で活躍してらっしゃる人なんですね。ふむ。
漫画家さんもどちらも描く方も結構いますし、BLとGLって親和性けっこうあるのかもですね。



こんな感じで。
5冊目になりましたが、どんどん改良が進んできている気がします。
箸休めのポジションにあるような、さらりと読めるコメディ色強めな4コマ作品も増えてきました。
これも個人的にはうれしい変化で、1冊の本としてバランスが整えられてきたような気がします。
前々から続いてるシリーズはもちろん、王嶋環先生の新連載もよかったです。
4コマの短編であっても、ちゃんと百合漫画していますね。

たっぷりと甘いものから、痛めつけられるように切ないもの、コメディ。漫画だけでなく小説も。さまざまなジャンルで百合をたっぷりと味わいつくせるアンソロジーになっています。
Vol.6は12月発売。カバーは釣巻和先生。初参戦に紺野キタ先生、四ツ原フリコ先生、佐藤沙緒理先生あたり。雨隠ギド先生、千石寛子先生もまた来てくれるようですよ。
いまから12月が楽しみになってきました。目指せ季刊化!ひとまずは!

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