2ntブログ

正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[本]トラウマイスタ中山先生の新作に胸が熱い!ヤンコミ付録に股間もアツい!

試験が近いというのに相変わらず漫画を読む毎日です。ゲームも進めたい。
はてさて、本日発売のヤングジャンプ33号は注目です。
中山敦支先生の新作読み切りが掲載されています!!

『ねじまきカギュー』

20100715085441.jpg

中山先生と言えば、少年サンデーで少年漫画の限界をブチ破るエキセントリックな展開を貫き全5巻の天寿を全うした名作・トラウマイスタの作者。(実際は3巻後半からラストまでがキレキレの超展開なわけですが)

昔からヤバい女の子ばかり引き寄せてしまう女難体質の主人公・葱沢。
今日も元気な女子学生から熱烈なラブコールを受けるわけですが
20100715085456.jpg ★元気な女子学生です★

そこに颯爽と現れた謎の人物!(最初の画像)
「愛は奪い取るものじゃない」と零し、葱沢に迫る女子学生を撃退!

20100715085452.jpg

( ゚д゚)、ペッ

そんな感じではたしてこの人物の正体とは!? という漫画です。

中山先生らしい破天荒なアクション、演出を楽しめる楽しい読み切りになっています。
バトルあり、コメディあり、ラブありで非常に賑やかな作品w
20100715085459.jpg (クリック拡大)
こういうのを見るとトラウマイスタを思いだしますねぇw
こんなのばかりではなく、ちゃんと可愛い女の子も出てきますので…!→ (微妙にネタバレ) 要するにどう転んでも主人公の女難は続くよってことでしょうねw
気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。週刊なのでお早めに。


あと久しぶりにヤンジャン買いましたが、「馬鹿者のすべて」が面白そうでした。
単行本出たら買おう。チェックチェック。


↓でヤンコミのこと。

続きを読む ≫

[本]キスしたければ先生になればいいじゃない! 『恋愛専科』1巻 

試験第一陣が終わって一休み。まぁ来週から最大級の波がドーンと来るわけですが…
恋愛専科 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)恋愛専科 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
(2010/07/12)
ミズタマ

商品詳細を見る

   ちゃんとキスっ させてみせますから…っ

表紙買い余裕でした。
こんな目で見つめられたらもう買うしかないです。白旗です。舐めたいです。
さてそんな「恋愛専科」1巻、内容も素敵にラブコメっててなかなか満足です。

女性恐怖症を克服すべく名門女子高・櫻小路学園に赴任してきた薮田。
しかし任されたのは特例で入学してきた少女5人クラス「恋愛専科」の担任で
加えてそのクラスの生徒たちに課せられたのは先生からの愛あるキスを貰うこと!
薮田は女性恐怖症のまま、個性豊かな少女たちに狙われることになった…!

という清々しいほどのあざとさが素晴らしくニヤニヤできる作品。
ヒロインたちもツボを抑えたキャラを揃えていて楽しめますね。
能天気な小動物系こころ・ギャル系ひんぬー茜・茜に恋心寄せる百合きょぬー雪緒・麗しい黒髪恥ずかしがり屋の香澄・そして堂々と表紙を飾ったツンツンお嬢様の京。
それぞれ特徴的な女の子らしさを持っていて、実に可愛らしいのです!
ルックスならこころちゃんが一番好きなんですが、しかし1巻ではほとんど活躍なし…。
2巻以降に期待ということですかねー。
自分はラブコメ作品だと、基本的に大人しくていざというとき勇気が出ない…みたいな女の子を好きになるタイプでして、なんだかんだで香澄ちゃんを一番に応援してしまいそうですw
メンバー中唯一の黒髪系というのもポイント高いですし
20100712230308.jpg
不測の事態で目を回しちゃう様子が可愛くて可愛くてもう!
しかもこれをきっかけに先生争奪戦に加わることを決意…!ニヤニヤするなぁもうw

じっくりと話数をかけて描かれた雪緒ちゃんのエピソードもよかったですね。
茜に救われたという意識から、彼女に並々ならぬ感情を抱く彼女。
恋愛専科に属しているのにも関わらず、まったく義務を果たす意思がない問題児です。
最終的には彼女も先生に好きになってもらう努力をするようになるわけですが
その理由というのも、やっぱり茜が強く関連してて、いい百合っぷりじゃないかとw
わりと貴重な巨乳さんなので、今後もっと活躍してもらいたいなと!
茜と2人の時以外、誰にも見せない彼女の笑顔。
彼女の今後にも注目していきたいと思います。
それと、キスしてもらおうと自分から誘っておいて、いざハプニングで胸触られると
20100712230249.jpg
こうなっちゃう茜ちゃんはまじデキる女の子。(何が
くっそおおおおなんだこれ!超ニヤニヤしますわああああー!

まとめとしては。
安易に下着などを描写しない、正統派ラブコメとして楽しめるはずです。
下品さもありませんし、女性もわりと安心して読めるのではないでしょうか。
魅力的なヒロインも多くいますし、表紙裏ラフの未登場キャラ達に期待が高まります!
まぁぶっちゃけ掃いて捨てるほど存在するハーレム系ラブコメの一つではあるのですが
可愛ければいいじゃない、と声を大にして言いたいわけですよ!
2巻も素敵なキスシーンに期待していますw

20100712230316.jpg (クリック拡大)

『恋愛専科』1巻 ………★★★☆
おもわずキス顔になってしまうほどの破壊力ある表紙。買ってよかったです(笑顔

[本]闘争こそ本能。時代も国も世界も飛び越えた夢の歴史大戦! 『ドリフターズ』1巻

ドリフターズ 1巻 (ヤングキングコミックス)ドリフターズ 1巻 (ヤングキングコミックス)
(2010/07/07)
平野 耕太

商品詳細を見る

   面白きものよなあ この浮世は   

平野先生最新作「ドリフターズ」の1巻がようやく発売!
今回は単行本発売直前に延期でやや混乱が起きたようですが
その濃密な漫画世界は、流石はヒラコーと言ったところで素晴らしいですね。
歴史上名高い有名人物たちが次々登場する、歴史好きにはたまらない作品なってます。
関ヶ原を戦った島津豊久・説明不要の織田信長・源平合戦期の那須与一。
この3人が共闘するっていうんですよ。時代を超えた関係に胸熱。
相対するは土方歳三・ジャンヌダルク・アナスタシアを率いた謎の黒王軍。
時代どころか国境も超えた組織に胸熱。まさにドリームマッチ!!

獅子奮迅の活躍をしたものの負傷し、さ迷うばかりの首狩り侍、島津豊久。
朦朧とする意識の中、彼は突如おかしな空間に飛ばされる。
20090501182228.jpg
謎の男によって別世界に召喚されてしまった豊久。
そこはエルフ、ドワーフ、ドラゴンたちの住む国。
そして古今東西の様々な人物が次々やってくる、魅惑的な世界だった。

ただでさえ熱い設定なのに、それだけに収まらないのが本作。
今回もヒラコー独特の台詞回しが実に素敵なのです。特に痺れたのがこちら。

20100710225304.jpg

「日本語しゃべれねぇんなら 死ねよ」

自分がこの世界にとって異質なものであると分かっているはずなのにこのセリフ。
基準が自分なんですよね。それに合わせられない奴には首にしか興味ない。
ゆるぎない自分をがっしりと持っている。なんてこった滅茶苦茶格好いい。
けれど受けた恩にはきちんと答えようとする律義な面も。これぞいい男!(ぉ

印象的だったシーンは、エルフの村でのやりとり。
首狩り大好きな豊久クンですが、どうやら根っからのクズ野郎の首には狩る価値も無いらしく
「貴様の首はいらん 命だけ置いてけ!!」と言い放ちます。
自分に酔ったような剣技を繰り出す敵側大将。それを鼻で笑うかのように剣技ではなく体技でねじ伏せ鮮やかに敵をフルボッコする豊久さん。
もはや虫の息…と言ったところで立ち上がり、親族を殺されたエルフの男へ…
20100710225229.jpg
伝わらない言葉。しかし豊久の訴えていることはすぐに理解される。
ヤツを殺すべきなのは部外者である豊久ではなく、エルフのはず。
傷を負い、大切なものを失い続け、それでも黙るしかなかった彼ら。
彼らには、報復の権利がある。
度重なる残虐な差別行為によって殺ぎ落とされた、エルフ族の闘争本能。
鎮めるしかなかった怒り、悲しみ、怨み…。
それを再び呼び覚まそうとする豊久。そしてエルフは再び剣をとる…!

いんやぁ熱い!エグいですが、そうじゃなきゃな!って所を的確に突いてくる展開だなぁ。
ここだけに限らずこの作品は、現段階では非常に王道です。
「ここで来てくれなきゃダメだろ!」というベストなタイミングでアクションが起きる。
凄くスムーズに読み進められたのはそういうのもあるのかな。
あと相変わらずアクションシーンが最高にカッチョいいのですよ!!大きい画像!
20100710231822.jpg (クリック拡大)
骨太なタッチの迫力とこのスピード感……複製原画で飾りたいです。

まだまだ序盤ですが数多くのキャラが登場し、スタートダッシュは上々。
漂流物と廃棄物が時代も国も超えて入り乱れる戦場が楽しみすぎます…!
特に豊久、与一、スキピオ、アナスタシアがお気に入りですかねぇ。
与一はヒラコーらしい色っぽい美男子キャラ。俺のハートまで打ち抜いた。
スキピオはハンニバルを救おうとしたあの口上がカッコよかった。
アナスタシアさんはあの病みきったレイプ目が素晴らしくえっちぃです
あとはいきなりやってきて世界観をブチ壊した菅野デストロイヤー直。
ドラゴンと戦闘機が並んで飛行する絵が凄かったwある意味この漫画らしいw
本人も破天荒な性格で、どう戦場を引っかき回すか楽しみですww

しかしどういう基準に2つに分かれるんでしょうねぇ。
現在に遺体が発見されていない人物=漂流物(ドリフターズ)
強い怨恨を抱いたまま絶命した人物=廃棄物(エンズ) ……かな。
廃棄物サイドが明らかに人の限界を超えた力を持っているのが気になりますねぇ。
さらに軍隊としての規模が凄すぎますし…漂流物サイドに勝ち目はあるのか?
また彼らを世界へと送りだしている謎の男と「EASY」の存在や
この世界の秘密を知っていそうな「十月機関」にも注目ですね。
まだまだ全貌は明かされないまま……想像する楽しみもありますねw

どんな時代でも、どんな世界でも、闘争の本質は変わらない。
人として、生物としての根本的な本能。
心のどこかで戦争を望む、退廃的なまでの好奇心と闘争心。
だからこそ、この漫画は面白い。
読む者を興奮させるこの不思議な感覚はたまりませんね!
ヘルシングはそれを突き詰めた作品でしたが、さて今回はどうなるでしょうか。
先の展開が実に楽しみな、期待の新シリーズです!

『ドリフターズ』1巻 ………★★★★
ギャグ、アクション、キャラ、台詞回し、どれも切れ味抜群な新シリーズ第1巻。
連載状況がヘルシング後半と比べて格段に良くなってるのも嬉しいですね!

[本]あなたのためにできること 『フェアリアルガーデン』5巻

試験期間につき更新が遅れがちです。
耳すまを見て溢れまくるパッションをツイッターでリアルタイム解消してました。
ちと雑な記事になってしまって申し訳ありません。
フェアリアルガーデン(5) (BLADE COMICS)フェアリアルガーデン(5) (BLADE COMICS)
(2010/05/10)
桜野みねね

商品詳細を見る

   絶対 守るから

桜野みねねさんの復帰作「フェアリアルガーデン」もついに終了。
約3年の連載、お疲れさまでした。
みねねさんらしさがいっぱいに詰まった作品になったと思います。
さて5巻は、能力によってのあの過去へと潜るクレアからスタート。
しょっぱなからマキの展開です。



わりとネタバレ満載なので注意。

クレアが見たのは、自分が生まれる前。クレアの鉢を拾ってきてからの、のあの姿。
のあは自分が鉢を拾ってしまったことを後悔していた。
過去に大切なフェアリアを死なせてしまったことのトラウマ。
直接手を下したのは彼の親であるにしろ、手を離してしまったのは、自分なのだ。
このまま枯れた方がいいのかもしれない。
それはクレアからすれば、自分と過ごすはずの未来の日々の全否定。
けれどのあは芽を育て続けた。愛し続けた。クレアと出会ってしまった。
それが正しかったとは、まだ分からないまま…。
クレアの無垢な瞳はそれを映し、彼女に一つの意思が生まれる。
のあのために、何かしてあげたい。

クレアが生まれる前、鉢を拾う前、笑顔を無くす前……
つぎつぎとのあの思いの変遷をたどっていき、彼の知らない真実を、現代ののあに届けるべきメッセージを受け取るクレア。
自分が出来ること―――のあが知らなかった、声なきメッセージを届けてあげること。
ぎこちなく、つたない、途切れ途切れのことばたち。
過去から拾い集めた、伝わらなかった大切な大切な想い。
そしておきざりのままだった少年の心が、ついに晴れる。
20100708001018.jpg (クリック拡大)
ここでのあが笑ってくれたから、この作品を好きになって良かったと思いました。
なんて優しい笑顔だろう。
儚く脆い印象しかなかった少年は、ついに傷を負ったままでも笑えるようになったのです。
そしてずっと施設内で幽閉されているカトレアの過去も…。

キャラクターの髄とも言える深い部分を解消・解明させたところで
物語はついに2人の恋と、未来の行方の話に入ります。
というか、いきなり三ツ木がのあに告白して、怒涛のごとく展開していきます。
のあの頭はクレアのことばかりで、すぐに告白には答えられませんでしたが
ようやくここで、恋愛対象としてのクレアに、真正面から向き合います。

「ごめん クレア ………俺 お前のこと…もう」
20100710000009.jpg
「妖精だって 思えない」

こんなロリ妖精にこの発言ってどんな変態だよと思われるかも知れませんが
クレアは身長を3パターン自由に使いこなせるので安心ですね!
その日の気分に合わせていろんなプレイを楽しめてしまうわけです。
ちなみにこのセリフを言うとき、のあはクレアに「小さくなっててくれ」と言います。
大きいクレアが相手では自分がなにしてしまうか分からない精神状態だったようです。
外見は可愛くても、のあも男の子なのです!
ちっちゃな妖精さんの全身コキってのもアリですよね?
しかし2人の幸せな時間は、ほんの一瞬…
ほんの僅かに触れ合うのみで、終焉を迎えてしまいます。

ラストはまさにみねね先生節と言わんばかりの展開。
存在がのあの両親に知れてしまったクレア。恰好の研究材料であるフェアリアル。
一度この手を離してしまえば、もう2度と会えなくなるかもしれない。
そのことをのあは、痛いほど理解している。
けれどのあは立ち向かうことを選択してみせる。
クレアと過ごした日々が、届けられた言葉たちが、彼を支えている。
しかし一方でクレアは決意する。
ずっとのあが笑えるように、笑ってくれるように、のあと自分は一緒にいるべきではないと。

悲しいことにかつてのあが愛したルピーも、のあの笑顔のために生きていました。
そしてクレアまでもが、のあのことを想うためにのあのそばから離れてしまう…。
2度までも大切なものを失い、のあは絶望のどん底に………と思ったら、ねぇ!!
ハッピーエンドではありません。安直なバッドエンドでもありません。
そう、ただこれは、人と妖精のふれあいがもたらした一つの小さな変化で、
奇跡に他なりません。

簡単にまとめると愛の力です。



この5巻に関してはやたら展開が早かったです。
最終話も、あともう一話使ってじっくり描いて欲しかったな…と思いました。
もちろん素敵なエンディングを見せてもらって満足していますけどねw
ただ正直なところ、あと1巻あればもっとよくまとまっていたのではと感じます。
そこは悔しいところですが…桜野みねね先生の復活を知らしめるには十分な作品に仕上がっていると思います。守護月天関連でガッカリしちゃった人たち、みねね先生は生き帰りました。安心安全のウルトラセンチメンタルを心行くまで味あわせてくれます。
読めば読むほど、春の朝日のような優しさが増してくる作品。
雪が溶けるように、心癒される物語です。

ちょっと焦って更新したせいでまとまりのない更新になって申し訳ありません。
最後に個人的に悶絶レベルに可愛かったクレアを紹介して終わります。
20100710000038.jpg

20100708001033.jpg

かわいいなと思ったらガツンとドップリ買いましょう

改めまして桜野みねね先生、連載お疲れ様でした。次回作楽しみにしてます。
なにやらネーム作業したということで、新作が読めるのも近い?

『フェアリアルガーデン』5巻 ………★★★★
みねね先生完全復活。とにかくミニサイズのクレアがかわいいのでおススメ。


なんだかいつも以上に中学生のポエムみたいな文章が散在する記事となりましたね。

[本]静謐に潜む恋の哲学。ようするに恋愛はステキだ。 『薔薇だって書けるよ』

やること沢山すぎてヤバいけど睡眠時間は削らない!決して!
薔薇だって書けるよ―売野機子作品集薔薇だって書けるよ―売野機子作品集
(2010/03/26)
売野 機子

商品詳細を見る

   まるで夢みたいに柔らかな手のひらでした

期待の新人作家・売野機子さんの初単行本「薔薇だって書けるよ」。
「楽園」やWebで読んだ作品が多かったのですが、やはり単行本で読むとまた面白い。
装丁も綺麗ですね~。こういうギミックあるデザイン大好き。
では短編集ということで個別感想。長くなったかも知れません。

薔薇だって書けるよ

表題作。初めて読んだ売野さんの作品もこれです。
楽園1号で読んだ時、新人離れした画力・演出にびっくりしたものです。
こりゃ凄い人が出てきたぞと。単行本オビにも納得です。

物書き・八朔が一目惚れして結婚した少女・点子。
しかし彼女は、一般常識をほとんど持たなかった。なにも出来ない妻との新婚生活。
最初は「自分が全てやってあげよう」「全て教えてあげよう」と意気込む八朔だが
手応えのない、無意味なような生活に疲れ、しだいに離れていく心――
ついにとある出来事をきっかけに、八朔は離婚を決意してしまう。

16歳の少女から完全に依存される、といういろいろ羨ましいシチュではありますが
実際このような生活をしたら、大体みんな心が折れてしまいそう。
何もできない妻。だから教える自分。出来ない、教える、上手く出来ない、教える……
まるでおかしなロボットをプログラムで動かしているだけのよう。
背負いこみ過ぎた八朔には、妻の「出来ない」ことしか見えなくなった彼には、次第に点子の気持ちがまったく見えなくなっていってしまう。
けれど点子には、明らかな意思があります。
八朔に喜んで欲しい。たったそれだけ。
だから自分が不器用であると知りつつも家事をこなそうとするし、薔薇も買う…
そのひたむきな想いからついに罪を犯し、八朔の心も離れていく。
むちゃくちゃ歯がゆく、切ない展開……。
その分、ラストには清々しい救済があって嬉しかったです。

点子をめぐる描写はどれも詩的というか、深みがあるような気がします。
例えばこの作品は「点子はとりわけ駈け上がるのが得意だった」で始まります。
20100628160826.jpg
駈け上がる点子と、呼び止めてプロポーズする八朔という構図。
んで回想で描かれる、点子が八朔を特別だと認めた日。
20100628160821.jpg
やっぱりここも、駈け上がる点子と、下から呼び止める八朔。
まぁ100%意図した演出でしょうねこれは。
ついでに八朔が想像する、離婚届を役所に届ける点子も、やはり階段を駆け上がっている。
具体的な別れのビジョンも、やっぱり「駈け上がる点子」なのです。
ここでなんとなく八朔の深層心理が見えてくるような。
一度彼女を突き放したけど、駈け上がっていく(=遠くに行く)点子を見るのは嫌だという。
八朔は離婚届を届けに行く点子の想像をした。しかしその場に、彼女を呼びとめるべき自分がいない。いられるはずがない。そのことへの恐怖にも似た焦りが、彼を走らせたのでは。ようやく自分のことが分かったのか。
そしてラスト付近では2階の点子へ恒例の朝のプロポーズをする八朔。
最初から最後まで、八朔は駈け上がる点子を見上げ続けるのです。
その胸にある想いは、作中では揺れ動きますが、きっとこの先は、変わらないまま。


「薔薇だって書けるよ」は、凄く印象的なタイトルですが理解がちょっと難しかった。
薔薇=真の愛 描ける=知った という解釈でいいのかな。八朔は作家ですし。
八朔の心情を現したタイトルではないかと思っているのですが、どうなんでしょうか。
よーくみると表紙のタイトル「薔薇」「書」の部分が手書きなのも、ニヤリ。

日曜日に自殺

本作で一番好きな作品は、と聞かれれば、相当悩んでこれを選ぶかなぁ
自殺をしたミュージシャンが、自分が死んでからの世界を見ていくお話。
バンドメンバーは誰一人自分の死に脚を止めてはいなかった。むしろ喜んですらいる。
テレビを見ても自分の死はどこにもなかった。新聞の隅に、ほんの少しだ。
伝説になるために死を選んだのに、意味がないじゃないか。
落胆するミュージシャンですが、そこで一人の少女の姿を見つける。
自分のバンドの音楽を聴いて、ひっそり涙を流す少女を。

自分の夢を見失った。伝説になるべく自殺した。
身勝手だよなぁ。
まぁそれだけ行き詰ってしまったんでしょうけれど。
夢を叶えるために歩んだ道で、いつのまにか夢は擦り切れてしまった。
それはきっととても悲しくて、わりとありがちなことでもあると思う。
けれど、身勝手な死を選んだ彼だからこそ、最後に少女に送った言葉が「いつか子供を産むんだ」だったのかな。生きることで繋がっていくべきだと、死んでから分かったから。
世界に絶望して死に、死んでから自分の生きた意味を見つけ、新しい夢を少女に託した。
鮮やかな流れ。同時に、もうそれを成せない彼自身が切ないです。しょうがないですが。

20100628160810.jpg

ちっぽけな男の、くだらない人生の存在証明。
それはこの世界の、未来にめぐる生命の中にある。

遠い日のBOY

時代劇SF。未来からやってきた男と出会う女性の話。
男曰く、彼女は運命の女、らしい…。
しかし彼女にはすでに縁談が来ており、嫁入り前の身。
一人の女性の心の揺れ動きを丁寧に描いた作品です。

未来人は積極的な存在アピールはしてこないし
主人公の日高も、彼に対する明確な恋愛感情は持ち合わせていなかったように思います。
けれど2人でいることが日常になるにつれ、日高は彼にどんどん自分の胸の内を明かすようになっていきます。なんの土台もない人間関係の中だからこそ、吐き出せる感情もあるはず。
常に日陰の存在でいた日高。
けれど未来人の彼は、自分だけを見てくれていた。
20100705232651.jpg
そういう存在は本当に得難く、大切です。

最後の夜、そして2人はキスをする。
罪悪感と、ほんのすこしの安心感。
ホッとしたってのが面白いですね。
彼と過ごした時間が彼女にとってとても尊いものだったと、改めて気付かされます。

というか未来人は漫画の中ではかなりの存在感ですが
読んでいてなんとなーく、この男は日高の想像なんじゃないかと思ったり。
とか思っていたら、ラストのラストで視点が変わり、日高姉のモノローグ。
「未来人云々は口にしない」
どことなく含みがある言い回しです。
姉も実は未来人と関係が?と考えると、やはり未来人の男は存在したのですかねー。
ああ、夢の中の未来人に足があったってのも、そういう意味か。
まぁ深読みしすぎてる感じもしますが…うーむ。

あとこのお話は小道具の使い方が上手いですね。
飴、煙、湯気、雨。
日高の感情を切り取ったような、効果的な使い方をしています。
それと和風な風景が実に心地いい!
どこか幻想的な未来人の存在がが、日本らしさをより強調しているみたいです。

晴田の犯行

シンプルなお話。
失恋したものの、それでも恋心をくすぶらせ続ける晴田さん。
その相手の結婚式に招待されるのですが、そこで彼女はある犯行をするのです。

ネタバレなのでこれから読む人はつまらなくなりそうなので注意ですが…。

20100705232639.jpg
タイトルにある「犯行」とは、指輪を返すこと
大切に想い続けていたと、思い知らせること。
そしてこの行動は、同時に晴田の恋の終わりも意味する…。
うわーーー、切ない!
多分相手はよく分からないだろうし、完全に晴田さんの自己満足な行動なんですけどね。

少女は歳を重ねても、どこかに少女の部分も持ち続けるのかも。
にしたってももうちょっと報われてもいいと思いますが…
現実なんて往々にしてそういうものなのかもしれません。よく分からないけどw

オリジン・オブ・マイ・ラブ シリーズ

各編の合間合間に置かれた連作ショート作品。
素直に同性愛を描いていて、いいフックになってました。百合BL混合。
収められた他の作品の多くが、わりと感情をストレートに伝えるので
このシリーズは逆に、想いを伝えられないままの切ない空気がたまりません。
普通じゃない恋だと、自分でも分かっているからこそ。
ただ近くにそばにいる。ずっと見ている。「友人」として。
そんなスタンスで暴発も暴走もせず、わりと冷静な登場人物たち。
しかしついに動いた!ってところで収録分はおしまい。
20100706000618.jpg
もっともっと続きが読みたいです…!
続編もまた単行本になってくれれば嬉しいんですが、どうなるんでしょうねー。


以上、こんな感じの作品集。
切なかったり難解だったり…けれど恋愛は見る者の心を強く揺さぶりますねぇ。
絵ががっしりしているのもいいし、独特のテンポやモノローグがクセになります。
応援し続けたい作者さんです。

『薔薇だって書けるよ』 ………★★★★☆
すごい作家さんが出てきましたね。恋愛だけに収まらない、人間の深いトコロを描いた作品集。
落ち着いた空気の中にある渦巻いた感情。答えなんかない哲学みたい。

≪ BackHomeNext ≫

引っ越し先

ブログを引っ越しました。 当ブログは更新を停止し、新ブログにて更新をしています。 https://sazanami233.hatenablog.com/

楽園に花束を

プロフィール

漣

Author:漣
「さざなみ」と読みます。
漫画と邦ロックとゲーム。
好きなのは思春期とかラブコメとか終末。

連絡先。
omuraisu0317あっとyahoo.co.jp(あっと→@に)

ツイッター
ツイッターのログ

Twitter

基本毎日います。記事にしない漫画感想とかもたまにつぶやいてますので、宜しければどうぞ。

記事

カテゴリー

コメント

トラックバック

カウンター

カレンダー

月別アーカイブ

03  02  12  11  07  05  04  02  01  12  11  10  09  08  07  05  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07 

検索

リンク