[漫画]女の子の世界はやわく可愛く切なく危うい。『百合アンソロジー dolce』
百合アンソロジー dolce (マジキューコミックス) (2012/05/25) アンソロジー 商品詳細を見る |
女の子は ちょっとキケンなくらいが 一番かわいいんだから
最近の百合ジャンルの盛り上がりっぷりは、百合をテーマにしたアンソロジー雑誌が多く登場していることからも伺えますねえ。
エンターブレインから発売された「dolce(ドルチェ)」も良質な百合アンソロジーでした。
基本的に甘い作品ばかりで、わりと安心してニヤニヤ楽しめる仕上がりかと。
「dolce」は以前エンターブレインから発売されていた「amaro」の発展系なんですね。
amaroと言えば毎号違ったテーマを設けていたちょっと珍しい構成の雑誌でした。
例えば「初めて」「男装女子」「秘密」が過去のテーマでしたね。
→男の子、女の子、ほんとはどっち?男装女子アンソロジー『amaro』Vol.2ほか
今回のテーマは「百合」であり、「amaro」から「dolce」とタイトルを改めて再始動ということか。毎号テーマが変わったamaroの系譜なら、このdolceが今後も続くかはわかりませんが。
「amaro」は苦いという意味でいしたが、「dolce」は甘いという意味。
そのタイトルにふさわしく、幸せも甘さもいっぱいに詰まった一冊!
まー「amaro」の時から表紙の雰囲気に反してニヤニヤできる作品ばかりのシリーズでしたがw
公式の特集ページはこちら。今回はとくに好きだった作品いくつかの感想を。
●とりあえずは表紙ですよ。なもり先生による表紙イラスト、かわいいなぁ・・・!
ベッドの上に携帯が置いてあるのがミソでしょうね。状況から見るに、きっとそれまでは携帯をいじっていたはずなんだけれど、今この瞬間には後ろから伸ばされてきた愛おしい女の子の手を握っている。
携帯が外の世界とのつながりを示すなら、それを手放し相手の手を握っていることで、2人の世界がより強調されている形になっている。細かなアイテムの使い方が素晴らしい。一枚絵にドラマが閉じ込めています。妄想が《加速》する!
●離れられない世界/飴沢狛
個人的に大好きな飴沢さんの短編。大王ジェネシスで連載も始まったし、来てる来てる。
本作は双子の少女を描いたもの。甘くもあり、しかしかなり酷な一面もある作品ですね。最後には思いを飲み込んでしまうわけですし。けれど百合としてみれば正解。
「わたしがいればそれでいいじゃん・・・」というこのわがままさ、身勝手さ!でもそんな、むちゃくちゃな事を言っているとわかっても抑えが効かない様子も素敵。
少女の卑怯さと、受け止める大人らしさがいい塩梅ですなあ。この2人はずっとこんな調子でいそう。そして飴沢さんの描く女の子は本当にかわいい。
●ヒミツのトビラ/ぴかち
ぴかちさんはヒャッコ同人の人!ってイメージを引きずる俺ですがこれもナイス百合。
健康的なインモラルさというか、やましくもあり微笑ましくもある絶妙の雰囲気。
あと巻末コメでビビッと。「ファーストキスのシーンを見せなかった(作中で隠した)のは2人だけのモノにしたかったからです」ですって。あ・・・あンまー!!
その記憶は2人だけのもの!
●綴る秘め恋/百合原明
PNに百合の二文字を持つ作家さん・・・そしてこの本でも一二を争うお気に入り。
たった12ページですが脳内で強烈に膨らみ上がるストーリーで、余韻もいっぱい。
なくなった祖母の、唯一の友人だったという女性の元を尋ねる主人公の少女が出会ったのは・・・というもの。オチも予想できたけど大好きです。
この本の中では1番切ない短編だったと思います。百合漫画に切なさを求めがちなので、もちろん甘くて悶絶するようなラブストーリーも好きだけど、こういう作品もあってくれて嬉しかった。
●ワガママなセカイ/渡まかな
この作品はなんというか、百合に感じている面白さとか、どういう所にロマンがあるのかってところを言語化してくれてるなと思って好きになった。物語もいいんだけど、百合への力強い肯定を与えてくれるいい作品だなぁと。
特にこのモノローグ。
「手を繋いだりハグしたり、かわいいけどそれだけじゃなくて、触れたら溶けてしまいそうな、甘いような危ういような、ギリギリのバランスに酔う、わがままな世界の住人」
色々ひっくるめても愛ある視線で見守ってる感じ。心に突き刺さるモノローグ!
少女同士の恋の世界を知ってとまどうばかりの主人公もかわいいし
彼女にちょっかいをかけて遊ぶ女の子も魅惑的な目をする。イタズラな。
コメディ調でテンションの高い中に、百合への愛もぎゅっと詰め込まれてて満足!
●嘘吐きシガレット/やまもとまも
んあー!かーわーゆ!泥棒とそれを追う刑事をモチーフにした短編。
これはもう主人公の不良っ娘がかわいすぎてな!たまらんですなー!責められたら弱くてあわあわしちゃう様子とか見てるこっちも熱くなる・・・!
綺麗にまとまった甘い百合漫画で、この2人の物語続きが見たくなりました。
●The pace of two/MATSUDA98
生粋の女の子絵師たるMATSUDA98さんの百合漫画わほーーい。
なにはともあれ女の子の可愛さを噛み締めるのだ・・・!
ふわっふわで、なんだか儚げで、触れたら壊れてしまいそうで、きっとこの女の子らに触れるのは同じく女の子しかありえないわなと感じざるを得ない。
ストーリーはシンプル。もっとページ数があってもよかったかなと思いましたが、実に微笑ましいハッピーな百合漫画に仕上がっています。
ざっと感想を書いてきましたが、他にもいい作品がたくさんありましたね。
たくさんの作家さんが参加しており、バリエーションに富んだ誌面になっています。その反面1作1作のページ数が少なくなっていて、ちょっと物足りなさを感じたものもいくつか。
そして「dolce」の名があらわす通り、収録作は優しく微笑ましいハッピーエンドの百合漫画がほとんど。なもり先生が表紙を描いていますが、これにピンときた方は読んでみてハズレではないはず。
しかしこれ、今後も継続して出ていくかはわかりませんねえ。
次が出るなら大歓迎ですが、せっかくテーマを変えて変えてこれまでやってきているシリーズなので、次なる新しいテーマに挑戦してみてほしいという思いもあります。
そんなわけで、「amaro」シリーズを応援し続けたいなと思える一冊でした。
女の子の世界は甘くて甘くて切なくて、ちょっと泣けてくる。
[漫画]女子高生はやっぱり異常だな!『男子高校生の日常』6巻
男子高校生の日常(6) (ガンガンコミックスONLINE) (2012/05/22) 山内 泰延 商品詳細を見る |
かっこいい男の条件って何かな
男子高校生の日常、6巻が発売しています。
アニメ面白かったですねえ!どうなるかと思ってましたがずっごい出来よかったです。脇役に使うのかよってくらいいちいち声優に有名所が多かったのもギャグ。いやギャグじゃないけど。
好評のまま終わったアニメ版。それを見届けてから発売されたこの6巻の感想を。
表紙には「女子高生は異常」の3人が初進出。まったく女子高生は異常だぜ!的な。
「あれ、アニメでみた話が最新刊に入ってる!」
ってのを思いましたが、まぁ1話1話が短いショートコメディで、アニメにするとどんどん原作を消費しちゃいまして。ガンガンオンラインに掲載はされたけど単行本化はまだっていう話もアニメにされました。
(おかげでアニメの第2期は相当オリジナルを頑張らないと実現はそうとう先になります・・・)
ともかく、アニメで見ていた人はもう馴染みあるエピソードもいくつか収録されています。
しかしまぁ、ちゃんと原作漫画で読んでもおきたいのがファンとしてのなんとなくなアレ。
漫画と言えばパラッとめくればすぐに楽しめるお手軽さも魅力ですし、特にこの作品はなんとなーく手にとってなんとーなく読むってのが気楽で1番いい楽しみ方だと思ってます。
さて内容の方で。
ストーリーなんてほぼほぼ無いギャグ漫画なので、適当に気に入ったエピソードの話を。
まず第86話である。これがもう、さらっとひどいことしてて大好きw
個人的に本作トップクラスのお気に入りキャラ、りんごちゃんが登場!
と思いきや出番はこれだけなんですよ!食いかけのフランクフルトをいきなり顔面にたたきつけられて「ぐわっ!」と色気なく呻いて出番終了です・・・。
ツッコミも何もない。以降の流れでりんごちゃんの姿はどこにもない。ど、どういうことなんだ・・・。ヒドすぎる・・・!
そういえば前の5巻にはりんごちゃんの出番がほっとんどなくて結構寂しかったのですが
喜ばしいことに、6巻ではりんごちゃんの出番がそれなりに多い。
出てくればいつだって、あの愛すべきおバカさをみせつけてくれます。
ああ、やっぱウザい。そしてかわいい!第90話はまさしくりんごちゃん無双。
生徒会の面々が明らかに適当な相槌打ってるのにも笑ってしまう・・・。
5巻で出番が少なくちょっと不満だったのはりんごちゃんだけではないです。
文学少女ですよ!1巻の「でもこの風…少し泣いてます」のシーンは何度見てもニヤニヤしてしまいます。
最初のあんな出会いから、何度もヒデノリと会っては、なんだかんだで絆を深めてきている・・・のかは謎なんだけど・・・でもまぁとりあえず何度も顔は合わせているわけで・・・
この作品においては珍しくラブコメの匂いを感じる2人なわけで、文学少女が出てくると俄然テンションも上がってしまいます。
そんな文学少女をクローズアップする回も収録されていて、これがまた素晴らしいんだ。
こわいよ!無表情なのが余計にこわいよ!
相手がヒデノリを分かるやいなや、すぐに扉を閉めてエレベーターでふたりきりになる。
でもこれまで読んでいれば彼女がどれだけ不器用なのかはわかっているし、オチを確認すればなるほどなという感じに。
この第92話、ヒデノリの大混乱のモノローグも面白かったですが、もし文学少女のモノローグもあったらさらに笑えただろうなぁ。あのポーカーフェイスの内では凄まじい混乱と葛藤があったのだろうな。絶対焦りまくりで必死に表情を抑えていたんだろうw
めぐり合わせがいいんだか悪いんだかわからない2人だなー!
2人して頭の中がごっちゃごちゃになって暴走しちゃう感じが本当にかわいいw
文学少女は積極的にヒデノリに近づいていこうとしているのが見えます。この2人のエピソードはどれを読んでも好きだなぁ。ニヤニヤするじゃないですか。
本当にこの作品の女性キャラは、よくわかんないけど可愛く思えるってケースが多いな!
多くがギャグに突っ走ってるのに、そこになんだか愛嬌を感じてしまう不思議。
「男子高校生の日常」というタイトルではありますが、それを華やかに彩る女の子の存在は青春に欠かせないのではないだろうか!まぁ、あんまり青春してないけど!
りんごちゃん、文学少女の出番も多く満足の第6巻でした。
女の子だけでなく、いつもどおり男子たちもバカなことで遊んでるのでご安心を。
そして巻末オマケ「女子高生は異常」がやっぱり面白かったw
堂々とした陰湿さとか、ケンカの売り買いの仕方とかいちいち笑える。機嫌が悪いときの生島さんの目付きやばいわ・・・!女性キャラ全般に言えるかもだけど、やはり女子高生は異常である。
というわけで、個人的には充実の一冊となりました。
「最後にもう1ひねりあったら面白かったかな」という話もいくつかありましたが、独特のテンポで繰り広げられるギャグの数々に、たくさん楽しませてもらいましたね。
ギャグの切れ味は1巻がピークだったと思っていますが、面白さがそこから衰えていっているわけではなく、キャラへの愛着がましてきたことで作品の魅力もだんだん増えてきている。
なんとなーく読み返したりしてまったり楽しんでいきたいシリーズですね。
またアニメやってくんないかなーなんて期待してますが、いつになるやらだなぁ・・・!
『男子高校生の日常』6巻 ・・・・・・・・・・★★★☆
メインキャラがだいたいバランスよく?登場する楽しい第6巻。女子高生はやはり異常(迫真)。
[漫画]鋭さを増す少女たちの闘争本能!『鉄風』5巻
鉄風(5) (アフタヌーンKC) (2012/05/07) 太田 モアレ 商品詳細を見る |
キツイです でも…いいですねコレ……嬉しい……
待ちに待ってたと言える「鉄風」5巻が発売されています。
前々からそのタイトルだけは知ってて、NumberGirlの「鉄風鋭くなって」みたいなタイトルの漫画ね、とか非常にどうでもいいことを考えてたわけですが、4巻出ていたタイミングで一気読みしたら・・・なんだこれはと。安直な言い方しかできなくて悔しいですが、超面白いわ!
しかしGood!アフタヌーンという隔月雑誌で連載されているため、単行本発売ペースは結構遅めかもしれません。スピード感たっぷりな上に続きが気になってしかたない作品で、それはもうそわそわと5巻を待っておりましたよ。
それで発売された5巻を読んでみたら、もう、はぁ。たまらない。
女子格闘技を描いたこの作品。ここからまた、一層熱い展開に突っ込んでいきますよ!
女子の総合格闘技ルールにおける一大イベント「G-girl」。
その開催に向けてテンションを高めていく女子総合格闘界。名だたる有名選手たちが参加を表明するその大会に、主人公の石堂夏央も出場を目指します。馬渡ゆず子を叩き潰すために。
ということで5巻はG-girlの新人枠を狙い集った8人による、トーナメントが開催されます。
いやぁトーナメントですよトーナメント!
5巻ではこの少年漫画のバトルにありがちなトーナメント形式を採用して、またちょっと少年漫画っぽい印象を強めます。もとから迫力たっぷりのバトルとか、少年漫画ファンも反応しそうな出来でしたね。今回のトーナメント形式だって、それだけなんとなくワクワクしてしまう人も多いのでは。
けれどこの作品には、青年誌だからこその「少年漫画」という感触があります。少年漫画っぽい形式をとってみてはみるけれど、実際は・・・。間違いなく熱いんだけれども、それは王道のものではない。セオリーをあえて裏切るようなひねくれたセンスがキラリと輝く。
そしてそれは登場人物の『根っこ』の部分からくる印象が強い。
まぁまず主人公ですよね。夏央ちゃんですよ。すんごい性格悪いの。
「私は充実してる人間を許さない」と、しょっぱなからすごいこと言い出します。そして強い。彼女はビギナーの段階で強すぎる。努力して高みを目指す人間たちにとっては、無慈悲なほどに。
でも結局はもっと全力振り絞って、勝ったり負けたりで喜んだり悔しがったりしたいんだろうなあ。そういう思いは間違いなくあるんだけれど、過去のトラウマやら生まれ持っての才能やらでとことんまで捻くれてしまった。全力だして努力しないと渡り合えないような相手に、出会えなかったのだ。
というわけで嫌味なくらい才能を魅せつける。性格も悪い。なんか怖い。けれど憎めないのは、その性格の悪さが見ていて気持ちいいから。
普通じゃないようで、普通で。普通なようで、致命的に普通じゃない。上手く言葉に言い表せないバランス感覚。不安定なようで、ちゃんと筋が通ってるのが不思議。
5巻にも出てきた表現ですが、「ポジティブでネガティブ」キャラというのがすごく面白いキャラクターです。
そして夏央がが目標としている馬渡ゆず子という少女もすごい。得体が知れない。
すごく強くて、すごくまっすぐで、すごく輝いていて・・そんな、まるで少年漫画の主人公みたいな女の子。性格の悪い、残酷なひねくれ者たちが闊歩するこの作品において、作中トップレベルの実力者でありながらこんな正当性を全面に押し出したキャラをしてるという。
ゆず子もこの先どうなっていくのかなとっても楽しみなんですが、どう立ち向かえばゆず子を揺るがすことができるんでしょうねぇ。
5巻では「まっすぐすぎて逆に歪んでいる」と、気になる表現がされたゆず子。これからの動きが気になりますね。
そんなそんなキラッキラなゆず子に対し「頑張ってあの子の笑顔を潰してあげよう」と対抗心剥き出し(ゆず子の充実への嫉妬ももちろん込み)な夏央。
その2人がいよいよ公式戦の舞台でぶつかるか!?という今回のトーナメントは本当に続きが楽しみで楽しみで。でもこの2人だけに集中してるのだってもったいない、個性豊かなメンバーが揃っております。
バトルシーンにおける一瞬の駆け引きもうまく描き出していますし、それでテンポを悪くしてないのもお見事。読んでいて楽しいバトルになっていますことに加え、文句なしにストーリーにも引き込まれる展開になってきてますねー!
トーナメントが始まるまでの、様々な人物の思惑がからみあって集結していく様子なんか、王道の盛り上がり。やまったくもう王道なのかそうでないのか。本当に面白いことやってる作品ですよ。
さて話を変えます。前置きしておくと別にそこに特別な注目を注ぐべきではないとわかってます。作品のテーマを分かった上で、でもあえて外れたことを言ってしまうならば、「あれ?女の子がかわいいぞ?」です。
いや、この作品に登場する彼女らに向かって「かわいい」というのはちょっと的外れかもしれない。けどあえて・・・あえて言うならば・・・!・・・かわいいな。うん。
いや違くて。ロリ夏央ちゃんのかわいさに予想外の方向から飛んできた流れ弾に撃ちぬかれた感覚を否定はしませんが、それだけじゃない。
筋肉つけてがっしりフィジカル強そうな女の子が好み、というわけでもないはずなんだけれど・・・なんだろうなぁこの感覚。女性キャラにすごく心惹かれる作品なんですよね。
格闘技というあんまり女性がやらないであろう題材の影響か、戦う女の子ロマンのそれか・・・いやそれよりもまずは、自分にとってあまりにも未知の存在だからだろうな。
みんな複雑怪奇な思考回路。よく分からない。けれどみんなたくましくて、傲慢で、性格が悪くて(もう何度もこの表現をしている)・・・そんな所がなんだか愛おしい・・・気がする。外見的なものだけじゃなく、その人物の芯の部分をもっと知りたくなるキャラクターたち。
純情で、儚げで、可憐で・・・なんてイメージ微塵もまとわぬファイター揃いです。
生理中の話とか出ると、「うわ!なんか普通の女の子っぽい話題出てきたよ!」と逆にビックリする始末。いや女の子と認識してるんだけども、この作品の女子は得体のしれない連中が多すぎてな!
でも本当に純粋な連中なんですよ。ピュアもピュア。けれどそのピュアさがどこ向いてるかって、「相手をたたきつぶしてやりたい」とかそういうのですよ。うわぁ・・・。
個人的に我如古舞はこの5巻でビリビリッと来ましたよ!いい表情してましたね。
秘められし僕っ子属性も解禁して勢いに乗っております!
しかしまぁなには置いといてもロリ夏央は天使のかわいさであるよ。うん。
こんな娘がいつのまにやら性悪女に・・・いやあある意味すくすくまっすぐ育ちましたがw
5巻で気になったポイントに、「純粋さ」と「天才」の関係がありました。
敗れた浅野選手の本間が感じた「この子、純粋すぎる……」の一節がすごく面白いなと。(181P)
この作品、「純粋であること」と「強いこと」が必ずしもイコールにはなっていないんですね。純粋さがどこを向いているものなのかが、とても重要なんだろう。
本間が語る「大成できる人間」は2種類。業のある天才。才能が無いと思い込んでいる天才。その二種類なんだとか。意識的にでも無意識的にでもためらうことなく強さを追い求めることができる、人間。そして天才であることは不可欠だと。凡人には至れない場所があるという。
それでもってこの言葉を言うのが間違いなく天才側の人間である本間なんだから、この人もいい性格してるよなぁ。
ともかくそういう事らしく、なら夏央たちはどうかな?と考えてみたり。
夏央は前者だろうなぁきっと。どちらも多分当てはまらないゆず子の異常性が、ここで浮かび上がってくるわけですねえ。
とはいえ女子格闘技界は群雄割拠の天才だらけの様子。夏央たちはどこまでいけるかな。
夏央のまっすぐな異常性(字面として矛盾してそうだけどこれはきっと正しいはず)は、純粋さからくるエネルギーを感じますが、でも行き先が見えないものでもあるんですよね。例えばゆず子を倒したらそれからどうなるの、とか。
それと格闘家たちの会話を見ていてなんとなく感じたのが、この人たちすごく狭い世界で生きてるなーということ。自分と世界を共有できる人間としか深くは付き合って行かない。それが許される程度には強いのだ。そもそも1人で戦う世界に身をなげうってるわけで、そういう連中しかいない作品なのは分かり切ってる。
でもそういう連中だからこそ、勝つか負けるかで全てが別れる、シビアな勝負の世界が盛り上がるんだろうなぁ。
・・・と、とりとめなく思ったことをつらつら書いてきましたが、そんな感じの第5巻。
一気に読めてすごく心に印象を残してくる作品ですねえ。やはり面白い。
予告を見るに、次の第6巻は夏央と兄の過去が詳細に明かされそう?
5巻でもゆず子の充実ぶりに「それは駄目よ!!」とやたら反応をしめす夏央のシーンがありましたが、その時脳裏に浮かんでいるのは、兄との因縁が始まった日のことっぽい?
かなり根が深そうなイベントなだけに、どういうエピソードか期待。
女子格闘技・・・かなりマイナーな題材かと思われますが、詳しくを知らなくても問答無用に楽しませてくれるパワーがある作品です。リアル系格闘技バトルが好きな人はもちろん、刺激的な漫画が読んでみたいって人にもおすすめしたいシリーズ。ビリビリ来ますよ、すごいキャラばかりなんで。
『鉄風』5巻 ・・・・・・・・・★★★★
熱い、熱いよ鉄風!どんどん面白くなる雰囲気が出てて、本当に先が楽しみ。
[漫画]今はまだ遠い君の所に。『鉄楽レトラ』2巻
鉄楽レトラ 2 (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕) (2012/04/12) 佐原 ミズ 商品詳細を見る |
今のままじゃ辿り着けない、君の所まで・・・・・・・
ゲッサンにて連載中の「鉄楽レトラ」2巻が発売しています。
1巻から胸熱くさせられたこの作品ですが、2巻も十分に熱く仕上がっていますよ!
静かにけれど確実に、心の深いところから感情がせり上がってくるような作品。
優しく、そして力強い。ひたむきにそれぞれの闘いに挑んでいく。
しかしこの2巻・・・驚くべきはその加筆修正の多さですよ!
雑誌でも読んでいる人は相当ビックリしたと思います。加筆修正ってレベルじゃない。ストーリーも一部リライトされています。ストーリーまで変わってるってすごいなこれ!
では加筆修正についてもあわせて、2巻の感想を。
前巻→痛みを超えて、もう1度立ち上がれ。『鉄楽レトラ』1巻
●まず加筆修正の話を。
・・・と言っても、単行本派の人にとってはなにがなんやらって感じになりそうですが・・・。
ゲッサンのバックナンバー片手に読み比べてみたところ・・・修正箇所が多すぎて整理ができませんでした!なんだこれ!
背景の書き足しやコマの書き直しなど一般的な修正も沢山あるんですが、それだけじゃない。
一部はほぼ新作といえてしまうくらい、ストーリーが変わっているんですよね。
特に描き直されていたのは、第4話「放課後のリレー」第5話「救世主」。
このあたりはまるっとリメイクされており、雑誌で読んだ人もかなり新鮮なのでは。第4話はページ数も倍くらいに増えている。
そういえば現在出ているゲッサン5月号の巻末コメントのページに、編集が「本誌で連載を読んでいる人にも驚きの仕上がり」とあったので、こういうことだったんですね。
第6話以降は雑誌版のものとストーリーも統合されるので、6話に至るまでの過程をいじくった形というわけです。でもこれ、かなり面白い修正がされていますよ。
ではこの修正はどんな効果をもたらしているのか、というと
主人公以外の人間にもかなりスポットライトが当てられるようになっています。
視野を広めた、やや群像劇的な色合いを出していたことが印象的。
特にニヤリとさせられたのは、第5話に登場する女装した男性を交えたエピソード。
ここ、雑誌では主人公の鉄宇(きみたか)がオカマと出会うことになっていました。
これが雑誌版。
けれど単行本だと皐(たかし・表紙の子)に変更されています。
1巻のころは主人公が見た・感じた世界を中心にストーリーが構築されてましたが、
主人公からサブキャラへとメインを移し替えたこのエピソードからも、主人公から見える世界だけを描こうとしているわけでない、この作品のちょっとした方向性の変化が見えるかも。1巻の頃からもありましたが頻度が高くなってきたということかな。
こちらコミックス版。
単純にキャラクターを入れ替えただけでなく、その後の展開もかなり違う。
一方のみを知っていてももちろんいい話ですし、両方を知っているならIFの世界を覗き見ることができるニヤリとできる仕様となっています。
このエピソードは雑誌版のストーリーも捨てがたいような気がしますが、単行本には収録されないんでしょうかね、こういう修正がされていると。
●それと、皐のキャラクター自体も変わったような気がします。
雑誌の頃は穏やかなふんわりとした表情をしていることも多く、主人公との出会いのシーンでもなんでもないように女装して女の子のように接していたり、結構とらえどころのない正確だったように思います。
ところが単行本ではかなり突っ張った一面も持った男の子としても描かれます。
最初は主人公にたいしての好感度が低く、彼に突っかかったりもしています。
2巻の表紙が公開されたときも、最初皐くんだとわかりませんでしたよ。こんな凛々しい表情を見せるキャラクターでは、少なくとも雑誌連載時ではなかったのです。
皐に関しては単行本でいい修正が入ったなと感じました。彼のキャラにビシッと芯が生まれたような気がしますね。鉄宇と彼が少しずつ仲良くなっていく様子も単行本ならでは。
他にも雑誌になかった大きなシーンがあって、フラメンコを踊るおばあさんの場面。
ここは完全に新たに追加されたエピソードで実にあつい内容!
フラメンコはよくわかりませんけど、なんとも言えない迫力があり、彼女のひたむきさと胸に秘めた思いの強さを感じさせてくれます。言葉はなくとも、じんと胸に染み渡る。
知られざる努力と闘いの一幕。
2巻はそんな、主人公以外のキャラの内面描写や頑張りがじっくりと描かれてます。
違った立場での、違った舞台での、それぞれの「闘い」。
この作品の世界観が、いいふうに広がったように思います。
鉄宇はもちろん、おばさんも皐も、あのオカマの男性だってきっと闘っている。
誰かを力になったり、誰かから力をもらったり・・・そんな前向きなエネルギーで世の中がまわっていく様子が心をあっためてくれます。この感覚がこの作品の良さですねえ。
雑誌版のストーリーでも十分に面白かったと思うんですが、そこからさらに手間を賭けてリメイクというのは・・・すごいですなあ。こだわりが感じられます。
●さて、加筆修正の話を交えつつ面白かった部分を書いてみましたが2巻のハイライトは第7話なのかなとも感じます。鉄宇と、彼のあこがれである少女・宝がメインのお話。
しばらく顔を合わせていない、けれど相手のことを思っては自分を奮い立たせる・・・互いが互いを間接的に支えているような2人。
そんな距離感を保ってきた彼らが、ついに接近するのです。
・・・とは言え、まだ顔をあわせるわけにはいかない。
そう簡単に、そんななんでもないように、声をかけるわけにはいかない。
まだ満足してない。まだ頑張りきっていない。彼女が思い描いてくれている「強い鉄宇」に、近づいてからじゃないと。今はまだその勇気も足りないし、資格もない。
自分が満足する自分になっていないと、自分が納得できない。
特別言葉をかわしてもいない。けれど彼らは示し合わせたように同じ方向を向いて頑張っているのです。つまり「あの人に恥ずかしくない自分になりたい」と。
それは恋とか友情とかとも違った、複雑なようでシンプルな感情。
今回は主人公が宝を見つけ、宝の方が彼の存在に気づきませんでしたが
もし2人の立場が逆だったとしても、きっと宝は鉄宇に声をかけられなかったんじゃないかなって思ったりしました。2人ともまだ弱くて、誠実で、ムダにストイックだもんな。
鉄宇と宝の関係はもどかしすぎますが、そんな2人だからこそ、応援したくなる。
いつかしゃんと立って、誇れる自分で、君に会いに行くよ。なんて。
誰からの物か悟られないように、そっと忍ばせた応援のメッセージ…ほんとグッと来ます。
そんな「鉄楽レトラ」2巻でした。
1巻も素晴らしかったですが、2巻も大変たのしめました。
1巻の第3話のような涙腺ぬズガンと直撃するようなエピソードはありませんでしたが、心を芯から暖かくしてくれる、そして勇気をくれる、そんな力強いエピソードが並びます。
そうそう、開始当初はなんのこっちゃかわからないタイトルでしたが、説明が入りました。「レトラ」とはフラメンコの曲の「歌詞」を指す言葉なんだとか。
ちょっとずつ練習が始まり、音楽的な要素も入って来ましたね。続きが楽しみ。
実にまっすぐな人間ドラマ。読めば読むほど心動かされます。
心がいたんだり、切なくて身悶えするようなシーンも多いですが、それでも立ち上がり闘っているキャラクターたちの姿は、多くの人が何かを感じるんじゃないかなと。
『鉄楽レトラ』2巻 ・・・・・・・・・★★★★
安定のクオリティですね。切なく、凛々しく、たくましい人々の姿が描かれます。
[漫画]深く静かに心に染みる言葉たち。『同窓生代行 売野機子作品集2』
同窓生代行─売野機子作品集・2─ (2011/11/30) 売野機子 商品詳細を見る |
せめて笑ってくれたまえ
発売して結構経ってしまいましたが、売野機子先生の作品集第2弾が出ています。
前回の作品集「薔薇だって書けるよ」は個人的にとてもツボで、心の奥深いところに触れてくる不思議な一冊でした。反芻するように何度も読みましたねえ。
そしてこの第二弾「同窓生代行」も楽しみにしていました。そして、またしても素晴らしいなと。ページ数はバラバラですが、8作も収録された彩りある一冊です。
では特に好きな作品の感想を書いていこうかなと。
でも売野先生の作品って、その面白さをうまく言語化できないことが多くて・・・でもまぁそこをなんとかやってみたいなあという感じです。上手く形になってないふわっとした感覚を言葉にしていくのって結構楽しい。
今回の表題作。全身整形で生まれ変わった知り合いのカリスマモデル・庭野野ばらに頼まれ、彼女の同窓会に出席にすることになった主人公。●同窓生代行
赤の他人になりすまして先週した、誰も知り合いのいない同窓会で、主人公は野ばらという女性の過去に触れ、その中で自分を少しずつ変えていきます。
この作品は主人公のキャラクターがいいですねえ。
もう夢見るだけの女の子ではない。現実には辛いことも悲しいこともたくさんあると知った。期待したことが何でも叶えられるなんてことがないことも分かっている。オトナになった。
夢を手放してしまえば、心に残るのは乾いた諦観。
「いつか終わりそうでこわくて 素直に楽しめなくって」とは主人公のモノローグですが、この女の子には主人公は、結構共感ができてしまうんですよね。捻くれた考えかも知れないけれど、でも真理をついている気もする。
すべてを賭けるように一生懸命になることに抵抗が出てきてしまう、この寂しさ。現実の難しさに打ちひしがれちゃって、まっすぐに幸せを求めることに億劫になってしまって。
そんな女の子だからこそ、このお話が迎えるラストシーンは実に鮮やか。
「あたしハッピーエンドが好き」と結論にたどり着く、この流れがなんとも言えず感動的です。
たしかに美しいけれど、過去を完全に切り捨たモデル・野ばらの過去も面白い。
切り捨てたと思いきや、ひっそりと続いていた気持ちに精算をつけたのですが、でも彼女には過去に戻る気なんてさらさらない。それでも・・・と、思い出にして、凛と立つ野ばら。
なにより、ラスト3ページの余韻が素晴らしい。
卵とニワトリのやり取りとか、涙ぐむ主人公の表情とか。
なんかもっと深いところがあるみたいで、自分はまだこの作品を100%掴めてはいない気がしていますが、だからこそもっとじっくり読んでみたくなるんですね。そういう、不思議な余韻。
14ページのショート。しかしこれがやたら心に引っかかる。●訪問者
うっかり唇が触れた直後の乙女すぎるリアクションがめちゃくちゃかわいい!
・・・はずが恥ずかしさのあまりそのままかけ出して、主人公の手の届かないところにまで行ってしまうヒロイン。彼女に秘密に関しては読んでみてのお楽しみ?といったところですが、しかしこういうネタ弱いんですよね・・・。彼女は幸せになれたのかなぁ、なんて。
メガネで通じ合う男の子たちを描いた2作。ソフトなBL、かなあ。●もっともっとよく見て シリーズ
とても短いのでワンシーンを描いたのみのものですが、これがなんとも微笑ましい漫画!
間接メガネとは斬新が概念ですね!
悩みますが今回の作品集の個人的なベストはこれかな。●LAST CIRCUS
まずタイトルがいい。ゴロもよくカッコいいし、その意味が分かるラストシーンでの高揚感もピカイチ。けっして長くはないシナリオのそのラストを爽快なものにさせる流れもいいですねえ。
トリッキーな構成をしている(語り部は一体誰なのか、と言った点)もののそのタネを予想するのは難しくありません。
しかしその事実はちょっと、いや強烈に切ない気持ちを呼び起こします。
それを華麗に吹っ切って、意気揚々一歩を踏み出す主人公ですよ!
いや意気揚々とはちょっと違うか。彼自身、きっと自分がピエロになってしまうってことが分かっている。だからサーカス。
でも笑顔を届けるために無様を演じるピエロのように、彼は踏み出すんですよね。
センチメンタルに浸りつつもどこか清々しい!男の子らしい気取った言い回しもどこか意図的に「演じてやろう」といった気概が含んでいる気もしますねえ!
そして「せめて笑ってくれたまえ 魔法はないけど 俺のラストサーカスをかますぜ」ですよ・・・!単純にこのフレーズが好きなだけなんですけど!このフレーズが繰り出されるまでの過程が完璧にツボで参りますね!
やっぱり自分は売野先生が紡ぐ「言葉」に凄く憧れます。毎回のようにドキッとなる。
軽快に韻を踏むので、すごく印象に残るのです。
ざらっと個別感想を書いて行きましたが、そんな感じの1冊。
実は以前出した「楽園に花束を」という同人誌で売野先生作品について書いてますので、そっちもよろしければどぞ。ううん、なんで宣伝してるんだ。
まぁともかくいい本でしたよー。売野先生のセンスには何度だって唸らされる!
1冊目での単行本を気に入った人はもちろん、この単行本から買ってみても全然問題なし。
今回の単行本は本当の気持ちを伝えられない作品が多かったような気も。「薔薇だって書けるよ。」よりも切ない雰囲気がありました。切ないだけで終わらない作品ですが。
楽園本誌などで売野機子先生の漫画にはよく「少女漫画」と銘打たれているんですが、それはたしかに納得出来るもので。むしろ大人になってた人に向ける、大人の少女漫画と言った風です。
軽やかでありながら心にのこる言葉選び。ゆったりと感じられる余韻。飄々としたキャラクターたちや、しかし切実であり胸に迫るメッセージ・・・。1度読めば分かる、この独特の雰囲気。
古いわけでは無いんだけども、ややレトロな趣のある絵柄も素敵ですね。
言葉にするのは難しいんですけど、とりあえず言えるのは、とても魅了されています。
今から作品集第3弾を楽しみですなあ。
『同窓生代行 売野機子作品集2』 ・・・・・・・・・★★★★
満足度の高い作品集。作者のセンスにハマるとずるずる引きずり込まれてしまう。