[漫画]近くて遠いせなか合わせ 『せなかぐらし』2巻
せなかぐらし (2) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) (2012/03/12) カザマ アヤミ 商品詳細を見る |
どうしよう 可愛い…
カザマアヤミ先生の「せなかぐらし」2巻が出ています。
前回に「ひとりみ葉月さんと。」1巻で更新したので、どうせなら続けてこっちもと。
今度はちゃんと表紙で顔が出たよ!やったね巡くん!そして菓奈ちゃんのふとももが相も変わらず眩しい。今度は裏ふともも!カバー裏のオマケ漫画には笑わせてもらいましたw
さて、では2巻の感想にでもー。1巻の感想はこちら。
戸惑いながらも距離を縮め、良き隣人として絆を深めていったのが1巻の内容。
ただし主人公・巡はそれだけでない感情を抱きつつもある・・・といった具合で、ラブコメとしてニヤニヤできましたが、まだまだ破壊力あるイベントを温存している感はありましたよ。
しかし続くこの2巻。キましたよ、キましたよ!ラブ盛り上がって来ましたよ!明らかにラブ>コメ。待ってましたと叫びだしたい展開がぞくぞくと。
いろいろとモメたり悩んだりしていた2人でしたが、そんなことを繰り返してたらどんどん近づいて、そして相手が気になりだして・・・と。
こんなうれしいこと言われたらねえ。そりゃ落ちるというものか・・・!
菓奈としてはそこにはなんの裏もないセリフでした。彼女は恋愛的な意味では巡を好きにはなっていないし。けれどこのセリフからにじみ出る全幅の信頼。
1巻の最初のころを思えば、「ここまで来たか・・・」とある種達成感w
もとから彼女を女の子として意識しまくりだった巡も、この回くらいから完全に自分の気持ちに気づきだし、悶々とし出します。
まぁねえ、ラブコメは相手を意識しちゃってしょうがなくなってからが本番ですよ!
さて一方の菓奈の方はというと・・・
こっちも深まってる!深まってるぞー!
ある程度お互いの気持ちが恋愛的にあったまってきて、更に美味しくなって来てますな。
菓奈も2巻から巡のことを意識しだし、またなんで自分がドキドキしちゃってるのかも分からないような様子も見せています。恋に戸惑う女の子というのもまた素晴らしい!
2巻ラストの第14話を読んでる時の俺のテンションと言ったら、何だったんだろう・・・。
ラブコメ的な盛り上がりも素晴らしかったわけですが、作品のメインテーマでもある「背中合わせ」、そしてガラス越しであるシチュエーションの見せ方も光っていたと思います。
部屋を隔てる壁がスケスケのガラス、という奇妙な生活をスタートさせた2人。
だからこそ普通じゃありえない接近の方法ができてそこにドキドキさせられる作品で、でもどんなに近くてもガラスで見えてしまっていても、2人の間には壁がある。
いろんな場面でこういうガラス越しの2人が描かれます。もどかしい距離感を何度も意識させられてしまう、いい要素ですねえ。
なんでも見えてしまう開放的なものに見えて、お互いの気持ちや表情をこっそり隠しもするガラス。そして14話でもありましたけど、ふと近づきたくなった時には、1人だけの気持ちではそれを許さない壁としても立ちはだかる。
そういう意味で、やっぱり今回の第14話の展開は興奮するしかたなかったw
第2話では「お互いあそこを絶対に開けないってことでどう?」と菓奈から提案したのにね!
こんな場面ではあるけど、開けてしまったらこれからどうなるんだろうなーという興味も。盛り上がりすぎて歯止めが効かなくなったらどうするんですか!いけませんよそこはきららフォワードです!
というか、お風呂上がりの女の子とこんな距離感で会話できちゃうシチュって犯罪的に魅力的なんですけど!
しかしガラス越しというのはやはりステキなものだなぁと。
近くて遠い。ガラス越しだからこそ気楽に背中合わせができるってこともあるだろうし、でもガラス越しだから触れられないってのもある。
それまで特別抵抗なくガラス越しに背中を合わせていても、ガラスがないと背中をあわせるのにもビックリしちゃって緊張しちゃってドキドキしちゃって(第11話にて)。
これだけいい見せ方をしてくれる作品なのだから、これから先にどうこの設定を生かしたイベントを描いてくれるのか、楽しみ。
そんな「せなかぐらし」2巻。
完全にスイッチ入ってテンション上がりまくる一冊でしたよ!
相手を好きになってから、恋心持て余しちゃってもうどうすりゃいいんだーみたいに悶絶してる人たちを見て自分も悶絶するのが1番楽しいですな!うん!
1巻の時点ではまだまだ途上段階だった2人の関係も成熟し、しかしここからどう揺らいでいくのか分からない段階にやってきました。3巻でも身悶えするような展開が来るだろうな。
しかし欲を言えばもう1話収録してほしかった。こんなところで半年くらいお預けなんて・・・ツラすぎる・・・!!(なら雑誌買え
そうそう、巡にお礼言われて照れてしまう恵麻ちゃん(妹)もたまらん可愛さ。
それに煎餅アイスは気になるな・・・。ググったら本当にヒットしましたが。
まぁともかく、ガラス越しの半同棲ライフ、盛り上がってまいりました!しかしこの生活にもタイムリミットがあって、それが迫りつつもある。さてここからどうなるか。
『せなかぐらし』2巻 ・・・・・・・・・★★★★
主人公もヒロインも2人揃って悶々しだして自分も笑顔。後半からの気分の盛り上がりが異常。
[漫画]心ざわめく空の色。レッツ・ガガスバンダス。『空が灰色だから』1巻
空が灰色だから 1 (少年チャンピオン・コミックス) (2012/03/08) 阿部 共実 商品詳細を見る |
嫌い嫌い 大嫌い大嫌い大嫌い
「空が灰色だから」待望の1巻、ついに発売されました。
売り場でもギラギラ目立つ赤が特徴的な表紙ですねえ。これは警戒色。
もともとは3話のみの集中連載でしたが、現在は毎週連載となっている作品。1話ごとに登場人物を入れ替えて進行していくオムニバスシリーズです。
1話ごとにキャラも変われば雰囲気もガラリと変わっていくので1口には言えませんが、「問題作」と言うにふさわしい、エッジのきいた作品だと思います。
10代女子を中心に、うまくいかない日常を描くショートコミック。
この1巻には全部で12の短編を収録。
それぞれの話も楽しいのですが、1冊通しての構成がとてもよく感じられました。
内容的に、これを一気読みするのはなかなか疲れたりもしましたが・・・。
まず1話はこの作品らしい、不器用な女性を主人公にしたコメディ。
甘いお話ではありませんが十分に明るく、主人公のキャラもとてもかわいらしい。
ところが第2話で豹変するんですよ。
友人のグチを言う主人公が描かれ、やや気分は悪くなるもここからどう転ぶかなと楽観的な期待をしながら読んでいくわけですが、明らかに想像していた内容から外れていく。
だんだんと壊れていく主人公。それは読者にとっての「安心」を、ちょっと不幸だけどちゃんとハッピーエンドになっていくんだろうなー等の想像をも破壊する。
だっていちおう少年漫画で、こんなシビアなもの見せつけられるとは思わないんだもの・・・。
支離滅裂な言葉で吐き出される壮絶な嫌悪や、彼女の寂しさ、負ってしまった心の傷に、グッサグサ胸を突き刺さされるのです。
じっくり読み過ぎると自分の頭まで痛くなりそうな、残酷なカオス。
この「お前は私を大嫌いなお前が大嫌いな私が大嫌い」は結構ネットでも騒がれていたように思いますが、たしかにこの作品が持つ破壊力は凄まじかったです。
そしてこの2話以降が本番とも言えるのでは。
「最後に何が待っているかわからない」っていう意識を植えつけられた自分は、以降の短編でもめちゃくちゃドキドキしてしまうようになりました。
必ずしもハッピーエンドが待っているわけではなく、むしろ強烈に切ないものが待っていることがわかると、最初はどれだけ明るくコメディチックに始まった短編だって、身構えちゃうんですね。例えがちょっとおかしいですが、肝試しに似た感覚。
そしてそれがこの作品の1番面白いポイントなのかなと思います。
衝撃の2話の直後にやってくる第3話。個人的にこれが1番好き。なぜなら、1番ドキドキさせられたから。そしてその結末も大好きです。
母子家庭を描いたもので、何事にも一生懸命な母親が主人公です。
どうか彼女の誠意が報われますようにと願いながら読む。
最後のページをめくるときの緊張と言ったら・・・もう。娘さんのどんな表情が次ページで待ち受けているのか、めくることにすらおっかなビックリですよ。
でもこの娘さんの晴れやかな表情は、果たして本当なのかなとか、母親を安心させるためのウソのものなんじゃないかなとか、ラストシーンを読んだ後にももやもやの残滓があったり。
でも、手作りのシロツメクサの冠はに込められた思いは、きっと信じられるもの、かなあ。
単純に展開にビックリさせるだけでなく、このエンディングは本当にこういう解釈でいいのかな、というように額縁通り受けとることもちょっと怖くて、つい考えてしまう奥深さがあります。
「空が灰色だから手をつなごう」というタイトルも、すごくピタッと来ます。
なんといっても上の短期集中連載の全3話の構成が素晴らしい。
そして以降の短編でもまだまだ楽しませてくれるんですよね。
エピソードもキャラクターも、とにかく個性があってそれぞれが濃い!
第6話の記憶すり替えの話、第7話の幽霊の話、第9話の男らしい女の子の話が特にツボ。
第12話「ガガスバンダス」もヤバい。話が意味不明な上にループしてて独特の世界。
そしてやられたなーと思ったのは第10話。
単行本に後半にさしかかってやってくるこのお話は、2段構えのオチ仕様。
これまで読んできた読者の予想をあえて裏切ってくれて笑ってしまいましたw
濃ゆい話が多い単行本ですが、第11話は「生きるということ」は印象に残りまくり。
人の食事姿に異常に興奮するという、かなりアブない少年に絡まれた女の子の話。
・「食ってさ欲だよ 欲だよ欲 本来とってもプライベートなものであるべきなんだ。なのに学校が男女一緒に交わらせて昼食させるなんておかしいと思うんだ!!」
・「でも恥じらいをちゃんと持っている輪田さんの咀嚼物だからこそ情熱を感じるんだ」
言葉の意味はよく分からんがとにかくすごい勢いだ。なんか「なるほど」って納得しかけてしまいそうである。
しかしこのエンディングも絶妙に残念だったりで、かなりお気に入りな一話。
そんな「空が灰色だから」の1巻。単行本で読むと、かなりヘビーかも知れません。
こんなポップな絵柄で、辛辣なくらいの展開の数々繰り出されていくのも面白い。
しかし、衝撃の大きさから悲劇的なエピソードが目立ちがちですが、全体としてみればコメディだったり心温まるものだったりとバランスはとれています。
バランスがとれているからこそ、次に何が来るんだろうとドキドキするわけですが!
キャラクターが傷つく瞬間を、隠さずむしろ積極的に描く作品。
先にも書きましたが、1巻としてはこの構成は素晴らしいですねえ。
最初に度肝を抜く展開と、以降は様々な積み重ねで読者を牽制してくる感じ。
「こんなのはどう?」・・・といろんな料理が次々めのまえに運ばれてくるような。で、大体が最初の口当たりがいい。でも最終的にどんな味わいになるかは予想がつかない。
ある意味、非常にエンターティメント性に富んだ作品なんですよね。
甘みと一緒に、切なさとか痛みとか生々しい毒がグチャグチャ渦巻いてもいて。
1度は読んでみて欲しい作品ですが、広くオススメはしづらいですね。
でも個人的な感想としては、「凄く楽しませてくれる作品」です。
『空が灰色だから』1巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
読んだらみんなでガガスバンダスしなきゃ。え、何それって。読んだら分かりますよ多分。
[漫画]人も星も想いも、すべてめぐっていくんだ。『彗星★少年団』
今日やった更新がいつもより短めだったので、短め更新ふたつめ。
全部めぐるよ
倉薗紀彦先生の「彗星★少年団」。1巻完結の作品です。
元気な子供たちの日常をまったりと、しかしノスタルジックに描いた日常漫画!
倉薗先生といえばサンデー超で連載していた「魔法行商人ロマ」が、現時点では代表作になると思いますが、この作品はロマの連載が始まる前から続いていた作品。
1話6ページととても短く、しかもそれで月刊ペースだったので、4年もかけた連載です。
小学生の男女が主人公の漫画ってそれだけで好きなんですが、この作品も例外でなく好みだったので、感想をかいていきたいなと。とは言ってもさらりとですが。
作品の性質上、あまり長文を書き連ねるというのも逆に難しくて。
というのもこの作品、メインの小学生の5人の学校生活を淡々と描いていくもの。
1話完結形式でページ数も6ページと少なく、そうそう大きくストーリーを動かしません。小話をひたすら連続させていくようなスタイル。
しかしその小話には小学生ならではの生活習慣や、季節ごとの特色を強くフィーチャーした内容が多く、実に風味豊かな読み応えを与えてくれます。
しかしサザエさん形式ではなく、5年生の春から始まったこの物語は、少しずつでも確実に時を進めてゆくのです。その感覚がなんとももどかしいというか、キュンとくるというか。
この作品は本当に、特別なことはしないんです。
けどそんな日々の連続が、より「日常感」を強調してくれるんですね。
等身大の小学生!って感じがまたツボでした。
大冒険はないし、大事件もないけど、彼らが大人になってから少年時代を思い出したら、きっといつだって胸をあったくしてくれそうな。かけがえのない「日常」が広がっているのです。
そしてそんな「日常」は終わりへと向かい出す。
ものすごく居心地のいい世界だったものだから、終盤なんて自分も寂しくなっちゃって。
ダラダラと続くように見せかけて、実はクライマックスに向けてタネを巻きながら進行し、とっておきの展開へと着実に心を盛り上げてくれる。
なんでもないような日々を積み重ね、その大切さを感じさせてくれていたからこそ、それが終わってしまうことへの切なさにグッと来ます。
この終盤がやはりハイライト!
アルバムを一気にめくっていくように、それまでのいろんなシーンがフラッシュバックしてゆく。
なんでもない話の積み重なりが爆発し、、ラストで一気に切なくなる・・・!
正直このラストにやって来るまでは「普通の漫画」という気持ちだったんですけど、その「普通」の尊さというか眩しさというか、そういう想いがラストシーンで甘酸っぱさと一緒に胸いっぱいに広がる感覚に、思わずためいき。
そして最終話も秀逸。まぁ王道中の王道なんですけれども、彗星をモチーフに「すべてがめぐっていく」というテーマを上手く活かし、未来つながっていきます。
なにより物語の少年少女たちって、ラストで大人になった姿を見せてくれてこそかなと思うので、個人的にはとても嬉しくなりましたねw
そこに大きなカタルシスはなくとも、しみじみと味わい深い感動がありました。
そして1番最後に素晴らしい余韻を与えてくれる「あとがき」の存在も大きい。
作者自身からの言葉もいちいち胸打つのです。
そんな一冊でした。子供たちの日常は、いつだってちょっと眩しい。
「魔法行商人ロマ」が少年漫画にしてはちょっとダークな雰囲気の強い作品でしたが、こちらは全体的に微笑ましくかわいい作品となっていますね。
性別も年代も問わず読めるんじゃないかなと。嫌う人間は少ないんじゃないかなと思う作品です。さくっと読めて、読み返しても楽しめそうですねえ。ぼーっと何も考えなくても楽しめる。
そしてこの表紙、いいですねえ。走りまわる子供たちの夏の空はやっぱり合う!
表紙の雰囲気がそのまま本編にも通じているので、表紙買いで大丈夫!
なんでもないように続いていた日々が、思い出になった途端に輝き出す。
心地よく、懐かしい匂いの風を感じられるような作品でした。
『彗星★少年団』 ・・・・・・・・・★★★☆
まとまりある満足感を感じさせてくれる作品。小学生漫画の王道ですね。
彗星★少年団 (ぶんか社コミックス) (2012/02/17) 倉薗 紀彦 商品詳細を見る |
全部めぐるよ
倉薗紀彦先生の「彗星★少年団」。1巻完結の作品です。
元気な子供たちの日常をまったりと、しかしノスタルジックに描いた日常漫画!
倉薗先生といえばサンデー超で連載していた「魔法行商人ロマ」が、現時点では代表作になると思いますが、この作品はロマの連載が始まる前から続いていた作品。
1話6ページととても短く、しかもそれで月刊ペースだったので、4年もかけた連載です。
小学生の男女が主人公の漫画ってそれだけで好きなんですが、この作品も例外でなく好みだったので、感想をかいていきたいなと。とは言ってもさらりとですが。
作品の性質上、あまり長文を書き連ねるというのも逆に難しくて。
というのもこの作品、メインの小学生の5人の学校生活を淡々と描いていくもの。
1話完結形式でページ数も6ページと少なく、そうそう大きくストーリーを動かしません。小話をひたすら連続させていくようなスタイル。
しかしその小話には小学生ならではの生活習慣や、季節ごとの特色を強くフィーチャーした内容が多く、実に風味豊かな読み応えを与えてくれます。
しかしサザエさん形式ではなく、5年生の春から始まったこの物語は、少しずつでも確実に時を進めてゆくのです。その感覚がなんとももどかしいというか、キュンとくるというか。
この作品は本当に、特別なことはしないんです。
けどそんな日々の連続が、より「日常感」を強調してくれるんですね。
等身大の小学生!って感じがまたツボでした。
大冒険はないし、大事件もないけど、彼らが大人になってから少年時代を思い出したら、きっといつだって胸をあったくしてくれそうな。かけがえのない「日常」が広がっているのです。
そしてそんな「日常」は終わりへと向かい出す。
ものすごく居心地のいい世界だったものだから、終盤なんて自分も寂しくなっちゃって。
ダラダラと続くように見せかけて、実はクライマックスに向けてタネを巻きながら進行し、とっておきの展開へと着実に心を盛り上げてくれる。
なんでもないような日々を積み重ね、その大切さを感じさせてくれていたからこそ、それが終わってしまうことへの切なさにグッと来ます。
この終盤がやはりハイライト!
アルバムを一気にめくっていくように、それまでのいろんなシーンがフラッシュバックしてゆく。
なんでもない話の積み重なりが爆発し、、ラストで一気に切なくなる・・・!
正直このラストにやって来るまでは「普通の漫画」という気持ちだったんですけど、その「普通」の尊さというか眩しさというか、そういう想いがラストシーンで甘酸っぱさと一緒に胸いっぱいに広がる感覚に、思わずためいき。
そして最終話も秀逸。まぁ王道中の王道なんですけれども、彗星をモチーフに「すべてがめぐっていく」というテーマを上手く活かし、未来つながっていきます。
なにより物語の少年少女たちって、ラストで大人になった姿を見せてくれてこそかなと思うので、個人的にはとても嬉しくなりましたねw
そこに大きなカタルシスはなくとも、しみじみと味わい深い感動がありました。
そして1番最後に素晴らしい余韻を与えてくれる「あとがき」の存在も大きい。
作者自身からの言葉もいちいち胸打つのです。
そんな一冊でした。子供たちの日常は、いつだってちょっと眩しい。
「魔法行商人ロマ」が少年漫画にしてはちょっとダークな雰囲気の強い作品でしたが、こちらは全体的に微笑ましくかわいい作品となっていますね。
性別も年代も問わず読めるんじゃないかなと。嫌う人間は少ないんじゃないかなと思う作品です。さくっと読めて、読み返しても楽しめそうですねえ。ぼーっと何も考えなくても楽しめる。
そしてこの表紙、いいですねえ。走りまわる子供たちの夏の空はやっぱり合う!
表紙の雰囲気がそのまま本編にも通じているので、表紙買いで大丈夫!
なんでもないように続いていた日々が、思い出になった途端に輝き出す。
心地よく、懐かしい匂いの風を感じられるような作品でした。
『彗星★少年団』 ・・・・・・・・・★★★☆
まとまりある満足感を感じさせてくれる作品。小学生漫画の王道ですね。
[漫画]未来へつながる初期衝動 『THE DOG RACE 青山景初期作品集』
THE DOG RACE ~青山景初期作品集~ (IKKI COMIX) (2012/02/23) 青山 景 商品詳細を見る |
お前は僕に、「愛してる」としか言わなかった。
前回「よいこの黙示録」2巻の感想を書いたので今回は同時発売されたこちら、「THE DOG RACE」の感想でも書こうと思います。
「青山景初期作品集」と打たれるだけあって、収録作品はどれも昔のもの。
デビュー前の投稿作や、デビューにつながった作品、IKKIに掲載された読み切りなど。130ページにも及ぶ表題作「THE DOG RACE」は大学の卒業制作として描かれた作品だったりします。
まさに青山景先生の原石と言える作品がたっぷりと収録された1冊となっています。
学生時代の青山先生がどんなモチーフを好んでいたのか、全体的になんだか分かりやすい。
「THE DOG RACE」「FAKE FUR」「無題」といった、このコミックスの大半を占める作品群はどれもヤクザたちを描いた作品となっています。ヤクザ好きだったんだなー。
殺し屋たちのドライな世界観が広がりますが、しかしどこか愛嬌のあるキャラクターたちのおかげでコミカルな雰囲気になっています。
様々な点で未熟な部分は感じますが、しかしそれらは原石としての輝きも放っています。
しかしファン以外の人にオススメするには足らないかなぁと思ったりも。
個人的におっと思ったのは「黒いUFO」「リリカチュア」といった作品。
青山景先生の紡ぐ不安定な少年少女らの姿は心を揺さぶられてしまうのです。
「黒いUFO」は5ページのショートショート。
これも唐突にギャングが現れますが、メインは思い悩む主人公の女の子。
なんのドラマもなく、「仕事だから」と遠ざけられる少女の漠然とした悲しみとか不安がふわふわと漂っている作品です。でもラストにはUFOが!・・・だからなんなんだ。
続く「黒いUFO'05」にもラストにはUFOが。・・・だからなんなんだ!
脈絡なく現れるUFOはともかくとしても、思春期のモヤモヤが可愛らしいシリーズ。好き。
「リリカチュア」は自殺をしようとビルの屋上にやってきた女の子が、不思議な男性と出会うお話。
なかなか実験的な作品で、男性はまるで劇を演じるかのように熟年の刑事からガンコ親父、プロレスラー、サラリーマン、部活のコーチとキャラを変えていき、女の子と漫才(?)をします。
そうした中で女の子が自殺を考えなおし、生きる元気を得るというストーリー。
テンポよく切り替わっていく場面も見ていて楽しいですし、男性のあつっくるしくもコミカルな雰囲気も素敵。そしてラストシーンの2人のやりとりも、爽快な読後感を与えてくれます。
他にも「ドリップ」もかなり印象的な設定の作品でした。
Mな女子高生が自分の性器にバイブ型の爆弾を挿れている・・・ところに、性的に飢えたおじいさんがやって来る!・・・という不思議な漫画。
身悶えする女の子の挙動がいちいちエロいのはもちろん、ムダに壮大な世界観も見所。
見開きの放尿シーンはよくわからないけど迫力満点でした。
そしてIKKIで賞を受賞し、デビューのきっかけになった「茶番劇」も好き。
2人の小学生の、ちょっと特殊な友情を描いたもので。キャラクターの表情がとても豊かで、この単行本の作品群でもかなり力のこもった作品だと感じました。
シリアスなのに遊び心を加えて自分から茶化してる作風は、この作品でも見受けられます。
と、ざらっと気に入った作品について感想書いていきました。
目立つのはヤクザをメインにした作品たちで、次に少女を主人公にした作品。
しかし、のちに青山先生の作品で主軸となっていくのは、若者たちの青春だったり歪んだ暴走だったりと「青臭い」要素なのですが、この単行本でもその片鱗は見えています。
絵はさすがに、近年の丸っこく描き込みの多いタッチとはだいぶ違いますが、作品のテーマだったりちょくちょくヒネリを加えてくる作風は色濃く見受けられました。
ただ、やはりアマチュア時代の作品が多いので、近年の青山景作品のような面白さを求めると、肩透かしを食らうだろうなと。
個人的にも、期待していたほどの面白さが無かったというのは嘘ではありません。
でもファンならば抑えておきたい1冊だと思います。
後の主流になっていく、人間と人間が向き合って生じる面白さや温かみは、初期衝動たっぷりなこの作品群においても重視されています。ここから未来のあの素晴らしい作品達が飛び出していったのかと思うとワクワクするのです。
青山景という作家をより深く知りたいのであれば、きっと楽しめる本だと思います。
『THE DOG RACE 青山景初期作品集』 ・・・・・・・・・★★★☆
ファン以外はちょっと辛いかもしれない。ですがファンは抑えておきたい1冊かと。
[漫画]熱狂がぼくらの背中を押す『四月は君の嘘』2巻
四月は君の嘘(2) (講談社コミックス月刊マガジン) (2012/01/17) 新川 直司 商品詳細を見る |
君の音が聞こえる
出てから結構経ってしまいましたが「四月は君の嘘」2巻が出ています。
1巻が出てるだけの状態で2012年度マンガ大賞にノミネートされ、注目度を上げた・・・ような。実際、ノミネートされるのも納得の作品です。
特にこの2巻では開始以来、最高の盛り上がりが到来。大興奮で読み終えましたよ!
名作への階段を駆け登ってきた気がしました。いやあ、熱い熱い。
輝きだした、かけがえのない春。 『四月は君の嘘』1巻
コンクールにでるかをりの伴奏を依頼された公生。
トラウマから長らくピアノの表舞台から姿を消してきた彼が、再びステージに上がる。
男の意地を見える形でここにやってきた公生ですが、果たしてどんな演奏をするのか。
読んでいてドキドキが止まらない展開。そして彼らの版がやって来る・・・!
●2巻最大の見所はなんといっても、かをり・公生の演奏!
この巻とても早く読めてしまったんですが、それはこの緊張感とスピード感と、なにより物語の面白さで一気に読んでしまったから。そして胸に残る満足感の凄まじいこと凄まじいこと!
今回で間違いなくこの漫画に魅了されてしまいました。
頭から背筋へゾクゾクと走る痺れ。こんなに興奮させてくれるなんて、幸せです。
引きずりこまれる。震えたつ。
表現するならそんな感覚が、もうずーっと続く恐ろしい内容。
一気に駆け登っていく興奮。緊張が身体を縛り付ける。しかし体の奥から渦巻き膨れ上がる力が、強い熱を帯びなが面倒くさい感情を吹き飛ばす。ステージの上で、鍵盤の上でで開放される音楽。それがどんどん人の心を動かしていく。
演奏中の2人は直接言葉を交わしません。演奏中ですしそれは当然。
けれどお互いの目で、そして音楽で意思を通じ合わせる。
言葉でなくてもつながりあえる。応援や叱咤が音楽となって心を震わせる。
お互いに全力をふりしぼりながら間違いなくパートナーを意識している、この極限の信頼関係。いや、信頼というかもう闘いですこれは。その目は語りかけるのです。「もっと上へ、もっと先へ行くぞ」と。
互いが互いを挑発するように、どんどん高みへ登っていく。そして2つの音色は音楽として高密度に絡み合って、恐ろしい迫力でもってコンクールを支配する。
加えて公生はかをりの背中を見つめます。戦うかえおりの背中は、同じステージに立つ自分に諦めることさえ許してはくれない。公生は彼女に食らいつくように突き進んでいく。
1度は諦めて演奏をやめてしまう公生ですが・・・ああ、そこからの流れが壮絶!作中でもあった表現ですが、2人はまるで殴りあうように音楽を奏でる。
公生も伴奏という立場でありながら、主役のかをりを脅かすような存在感を発揮しだし、会場もどよめく。
あまりにも力強く光を放つ2人。本当に眩しくて、最高にテンションが上がる!
●痛快ですらある清々しいその演奏。
歓迎してくれるのは観客たちの歓声。絶頂に突き進んでいく観客たちの姿もまた魅力的!
そしてただ湧き上がる歓声を描くだけでなく、その演出もお見事。
公生が何度もその光景を思い出すように作品内でも繰り返し描かれる歓声は、そのたびにあの演奏シーンの興奮を自分の胸に甦らせてらせてくれる。どれだけ公生がその光景を大きく受け止めたのかも分かるここ2巻一連の流れはすばらしいものだったなと。
音楽漫画における「観客」の描かれ方って実はとても大事だよなぁと思います。
読者はもちろん主人公に感情移入しながら読むことが多いんですけど、物語を外部から見ている立場からすればむしろ観客に近い。そして音楽の凄さってのは具体的な把握は難しいので、観客がどんなリアクションをとるかって部分で自分は感情を高めることが多いです。
他作品ですが「爆麗音」なんかは湧き上がる観客の描写が凄まじく、好きでしたねえ。
そしてこの作品も、観客の描かれ方が印象的でした。上手い。順調な奏者にまずは期待をよせ、途中の挫折から不安・不満を抱き、そこからそれを一気に解消させるカタルシスに我も忘れる様。それがスムーズに展開されるのです。
同時に観客のすさまじい沸きぶりに違和感もない、雰囲気作りと盛り上げ方も上手い。
みるみる高まっていく作品の熱に当然のごとくあてられて、自分も拍手喝采ですよもう!
拍手喝采で称えられる。それはコンクールでの評価とは別の栄光であり
ふさぎこんでいた公生が掴み取った、1つの勝利の証なのかも知れません。
●コンクールを終えてからも、登場人物も読んでる自分も、あの興奮が忘れられない。
そんな中でやってくるのは、次なる課題の布石。
一回きりステージに立って拍手を浴びただけで満足か。違うだろう。あの熱狂に身をおいたら忘れられない。忘れられるわけがないんだ。
ボロボロになりながら歯食いしばって、泣きながらも這いつくばって必死にしがみついて、それを追っていく生き物なんだ。そんな演奏家としての力強いメッセージがガンガン飛び出す後半。
あの主人公がこんなにカッコよく変われたのだからすごいなぁ。まだ成長過程というか、乗り越えなきゃならないものはたくさんあるけれど、心底応援したくなります。
内容としてはよくありそうなものですが、この作品はなんでこう、次に何が起こるのかってワクワクしてしまうんだろうか!
●この2巻でキャラクター同士のつながりより見えたというか、強調されてきました。
男2人女2人がメインキャラで、それぞれが恋愛感情なり友情なりなんなりで関連しあっているんですが、それぞれの感情がより深化してきたことでさらにもどかしさが出てきました。
これぞ青春!な4人の今後の展開にも注目していきたいですねえ。
「もしかして好きなのかも?」なんてついオーバーな期待をしてしまう。そんな思春期男子くささもナイス。でも公生とかをりの関係は、恋愛抜きだからこそ面白いのかな。
色っぽい感情よりもっと野性味あって荒々しい、音楽家としてのつながりがある。
かをりの考え方は常に公生に影響を及ぼしてして、縛り付けの公生を解放させます。
今回でも、もともと性格な演奏がウリであった公生に向けて楽譜を「五線譜の檻」と言い放っちゃうところとかカッコよかった。公生はそこに必要なものはそこにあると教えてられてきたのに、楽譜を「檻」と言い切るその発想の自由さ!そしてそれを実現してみせた公生もよかった。
でもかをりがどうやら体が少し弱い?ことも示唆する描写も見られましたし、そこも今後気になるポイントでしょうか。
ざわざら書いていきましたが「四月は君の嘘」2巻感想でした。
そういえばこのタイトルに関するヒントみたいな描写も今回ありましたね。「嘘」というワードが登場しました。もう作中では4月は終わりそうですが、春という季節は今後も印象的に描かれていきそうな予感。あとは「君」は誰なのか気になるところ。
公生とかをりは互いに「君」と呼び合う場面がちらほら見れるので、やはりこれは主人公2人を指すダブルミーニング的含みがあるのかなーと妄想してます。
今回のオビには森川ジョージ先生が「音が視える。」とコメントを寄せていましたが、これにはなるほどなと思わされました。
この作品、音楽の音色に関して作中で擬音や効果音は登場しません。
しかし、その瞬間その瞬間に鳴り響いている音がハッキリと感じられるほどの臨場感!
常にモノローグや絵でどんな状況かを示してくれるし、暴れるような迫力を見せつける演奏描のおかげで、効果音無くとも淡白になっていない。この爽快な演奏描写も大きな魅力です。
モノローグも最初はクサいと感じていましたが、ここまでくると何から何までカッコいい・・・。青春の匂いを強く感じさせてくれる日常パートでの雰囲気もすばらしいです。
ストーリーにも繊細な心理描写にも大迫力の演奏にも、爽やかでかつ最高に熱い!
圧倒されそうなほどの熱量で描かれた物語で、読むものの心を震わせます。
1巻は導入をじっくりと描いた内容でしたが、いよいよ本筋が動きました。
3巻以降どうなっていくのか本当に楽しみ。
『四月は君の嘘』2巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
震えっぱなしの第2巻。最初の山を超えた感じです。期待がうなぎのぼり。