[漫画]今、別れの時。お嬢様は泣いて強くなれ。『ジゼル・アラン』3巻
ジゼル・アラン 3 (ビームコミックス) (2012/06/15) 笠井スイ 商品詳細を見る |
自分の大事なものは ちゃんと大事にするんだ!
ジゼル・アランお嬢様活動記録、結構お久しぶりの第3巻が発売しています。
1年1ヶ月ぶりですかね。これくらいのペースで続いていくと思います。と言っても2巻までの流れが3巻で一旦終わってしまうので、これからどんな展開になるのかわかりません。
まったり続いていくといいんですが、内容は結構心が苦しくなる方向に・・・!
そんな注目の第3巻の感想をー。
前巻→ジゼルお嬢様の、ちょっとした昔話。『ジゼル・アラン』2巻
1人で仕事を頑張るジゼルアラン嬢。3巻はそんなエピソードで幕を開ける。
今までは結構エリックや他の大人たちが側にいましたが、これに関してはジゼルだけが仕事に向かっている。はたして上手くいくのかなーという。
ジゼルが直接大活躍をするわけではない。けれど時に戸惑い立ち止まった人は、ジゼルの真っ直ぐさに何かを気付かされる。そしてまた立ち上がる。そんな姿が印象的なエピソードでした。
何らかの形で、ジゼルの清さや愚直ながんばりが周りにいい影響を及ぼす、というのがこの作品の王道であり、気持ちのいい展開です。
社会のルールを無視した少女の暴走が、最終的には肯定されてしまう。
下手すると作品のリアリティが失われそうなんですが、この作品は上手いことそれができていて、ジゼル嬢の魅力である破天荒さに直結させてストレスなく仕上げている印象。
とんでもない失敗したらどうするんだよ、ってハラハラさせられることも多いですがw
しかし、今後しばらく(?)はジゼルの側にはエリックはいない。
2巻のラストの読むからに、2人のこの先の道が別々のものになっていくことは予想していましたが、いざその瞬間がやってくればなんて寂しい・・・!
個人的に3巻で一番に印象的だったのもこの2人をめぐるシーン。
特にやはり、ジゼルとエリックの別れのシーンは・・・様々な感情がグルグルめぐって寂しいやら切ないやら辛いやら・・・。
引越しの準備をすすめるエリック。机から出てきたのは、古いキャンディー。
このキャンディーに関してのエピソードもしんみりと心に来る。これはエリックがジゼルと初めてあった日に、彼女からもらったもの。ジゼルはそんなこと、きっと覚えちゃいないけれど。
そして部屋の落とされて、拾い上げられぬまま放置される飴玉・・・なんかもう、未練たらたらのエリックの心理をそのまま表しているようです。思い出も今の気持ちも、置き去りです。
けどそうするしかなかった。「夢を叶えたい」「ジゼルの側にいたい」という思いは拮抗していたんだろうけど、結局彼が選んだのは夢だった。それが正しい。でもすごく未練がある。
そしていざ出発というシーン。その裏面で渦巻く感情やその葛藤が素晴らしい。
淡くも苦しい緊張感にドキドキさせられます。
「私もエリック好きだぞ」
嬉しい言葉だ。けれどそこに、エリックが心から嬉しい意味は込められていない。
子供だからこその残酷さが、本人の知らぬ所でエリックをちくりと苦しめる。
そして目の前の別れの寂しさに、エリックはうまく笑ってやることもできない。
なんだろうな、こののっぺりした感じの笑顔は。笑顔なんだけど笑えてない。
こういう微妙な表情の描写すごいですねえ。もともと画力は高いのですが、このシーンはまた格別にグッときました。いい表情を描く作家さんだ、笠井スイ先生。
別れた後のジゼルの凄まじい寂しがりっぷりを見たら、エリックは喜ぶかなぁ。いや心配するだろうな。今の状態はけっこうそわそわしてしまうので、早くまた一緒に戻ってほしいが・・・!
ジゼルの「好き」は恋愛としてのものなのか、それとも友人としての強いつながりが込められたものなのか、なかなかどっちつかずなように見えます。というか必ずしもそのどちらかを選択しなきゃならないわけでもないか。好きは好きさ。
恋愛としての好きをジゼルに求めても意味がないって、エリックも薄々わかってるだろうし。
でもだからこそ見てみたい!初恋にときめくジゼル嬢のなやましい表情が!
ところでジゼル嬢って、ピュアすぎて無防備なエロスを感じる瞬間があります。
例えばこんな朝のシーン。光で寝間着が透けて体の輪郭が分かるあたりとか。うむ、健康的かつ爽やかなエロス。いいですね!
3巻はエリック関連が胸を打ちましたが、他にも面白いエピソードが多い。
リュカくんの再登場なんかも実に胸をほっこりさせられ、そしてニヤニヤできる。
17話で宇宙を舞台にしたファンタジーをイラスト化したシーンがあるのですが、この部分の迫力や美しさもお気に入り。冷たい水の瀬から惑星の外へ突き抜けていく爽快感!
オマケ漫画も多くて、雑誌で読んでいる自分も満足です。
このシリーズは単行本の描きおろしオマケがとても可愛くて見逃せないな。
しかしまぁ、これからどうなっていくのかが怖いやら楽しみやら。
夢を追って掴んだと思ったと思いきや、現実は・・・。
エリックの死んだような目が、また前みたいに輝いてくれるといいんだけど。
でも今は1人でも頑張って働こう、ジゼル嬢。次の依頼はなんだろう。
『ジゼル・アラン』3巻 ・・・・・・・・・★★★☆
新展開へ入った第3巻。離れてもなんとなく想いあっている2人が微笑ましく切ない。
[漫画]波乱のコンクールが幕を開ける『四月は君の嘘』3巻
四月は君の嘘(3) (講談社コミックス月刊マガジン) (2012/05/17) 新川 直司 商品詳細を見る |
次は――――お前の番だ 有馬公生
「四月は君の嘘」3巻が発売されました。
今勢いのある作品のうちの1つだと思っていますが、実際面白いんですよ本当に!
2巻は興奮がいけるところまで上り詰めたような、凄まじい熱気を帯びた展開でしたが、3巻は新たな目標に向けて練習を重ねていく内容となっていました。
その中でコンクールを盛り上げる新キャラの顔見せなども行われます。それ他にも大事件はなくとも細かく変化がやってきて、やはり見逃せない内容になっていると言えます。
→輝きだした、かけがえのない春。 『四月は君の嘘』1巻
→熱狂がぼくらの背中を押す『四月は君の嘘』2巻
●2人の新キャラ
かをりに背中を押されるように、再びピアノコンクールを目指す有馬公生。
ゆっくり穏やかに、しかし確実にピアノを取り戻していく公生くんです。
あれほどふさぎこんでいた彼ですが、しがらみもトラウマも何もかも吹き飛ばすくらい、かをりとの演奏が衝撃だったんだなあ。
彼の心に食らいついて離れない音楽。
演奏家が忘れられるわけがないんだ、あの興奮を、あの賞賛を。
そして公生のコンクール復帰を知り、高揚するピアニストも大勢。
かつては神童として名を馳せたあの公生が戻ってくるのだから、同年代のライバルたちも黙ってはいない。大人たちもざわめきだって、公生の存在感を改めて実感しますね。
けれど彼らの大半は公生の身になにが起こったのかなんて知らないわけで。
でも一度コンクールに出たら、過去を言い訳にすることなんでできません。
真正面から闘いの舞台に乗り込んだわけで、これは気になる展開ですよ。
そう、それで新キャラが登場するのですよ。
圧倒的な存在感を放った幼少のころの公生。彼にコンクール1位をかっさらわれ続け、けれど突然その背を見失い、いつかまた戦える日を夢見てピアノを弾き続けたヤツらが。
公生が突然表舞台から消えたあの日から、年経った。
彼の過去を知り、今を知らない彼らは血をたぎらせる。「やっとまた戦えるのだ」と。
1人は少年・相座武士。相当の実力者ながらもずっと1位を公生に奪われ続けた男。
もう1人は少女・井川絵見。ギラギラの闘争心を剥き出しにした女の子。
公生を「待っていた」2人のピアニストの登場は、物語を一掃熱くさせます。
井川さんはいい表情しますなー!この獰猛そうな笑みがいいですね!
相座は派手な見た目とは裏腹に、真摯でストイックな人格が3巻の時点で伺えます。
●かをりの存在感
新キャラも登場してテンション上がりますが、この巻の見所は、公生が静かに確実に自らを高めていく様子にあり。
2巻のようなド派手なイベントはないこの3巻。しかし着実に、次の絶頂みたいな興奮への足がかりを作っているような展開なのです。
そして再び歩き出した公生は、苦しみながらもまたピアノと向きあう。
公生をここまで突き動かした張本人、かをりは今回が今回も存在感を放ちます。
今回なんて演奏シーンなどの特別なシーンもなかったのに。
公生がいつもいつもかをりを見て、かをりのことを考えているもんだから、作品としても彼女の存在感がどんどん強まっているような気がします。
そんなかをりにまつわる、3巻で特に印象的なシーンがここ。
「ごめんね、ごめんね」と謝る。涙をこぼしてまで。
公生にピアノをもう一度ひけと、コンクールに出ろと公生を導いたのになぜ。
なんて思ったけどよく考えてみれば当然なものかも知れない。
彼女のせいで、公生はピアノで再び苦しむはめになった。それは同じ音楽家同士だから分かることかも知れない。こんな苦しい場所にまたしても連れてきてしまったのだ。それも公生の場合は単純な話ではない。乗り越えるべきものはとてつもなく巨大。
でもかをりは自分の行動を後悔してないはずなのだ。もう一度ひけと、公生を動かしたことは彼女が強く望んだことだから。でも涙をこぼしてしまう。
「何もかも乗り越えて、音楽を奏でろ」なんて、ある意味恐ろしく傲慢なことで。そんな無責任で残酷な自分をわかっているからこそ謝罪をする。本当は恨まれてるんじゃないかって不安になってしまう。音の高みを目指すことでしか幸せになれない音楽家の業の深さがかいま見える部分でもあるかも。
けど公生のピアノを聞くと、いつもすごくいい表情をするんだよね、この娘。
ああ、いいなぁかをりちゃん。素直で強い。でも脆くもある。
恋愛感情に限定せず、公生がかをりへの思いを強めていく(憧れや尊敬や)様子はこれでもかと強調されていきますが、瞬間的に爽快な気持ちにさせてくれる一瞬があったりします。
個人的にはコンクール前に緊張してフラフラになった公生にむけたこの一声。
「星は君の頭上に輝くよ」
その笑顔とその言葉は、読んでてなぜか自分も救われたような気持ちに。
だってねえ、もう、あなたが光ですよ。かをりちゃんが公生を照らす光。
このシーンの他にも、戸惑う公生の背中を支える力強い言葉をいつもくれるのだ。
オリジナリティのない自分の演奏に落ち込む公生に向けた「君はどうせ君だよ」の言葉にもグサーッと。「どうせ」の使い方がすごくいいんだ。どこか突っぱねるような、けど全部包み込むような包容力があってすごく暖か。
操り人形だとか機会だとか言われた過去。ピアノに自分もねりこんだオリジナリティある音楽への飛翔が、今後の目標の1つなんでしょう。その一端は見せていますが、まだ爆発はしてない。
その他きになった点など。
「私を見て」と嫉妬心をのぞかせる椿ちゃんも切なかったなぁ・・・今回。
音楽面だけでなく、淡い恋心が交差する多角関係も強い魅力を放っているのです。
青春の痛みとかままならない現実とかも描いてくるので、気持よくなるばかりの作品ではありません。けどそれがこの作品の力強くもどこか儚げな雰囲気を支えている。
そうそう、今回の全体的にモノローグがすごく染みた。
「四月は君の嘘」は全編すごく詩的な表現に彩られてる作品だと思います。
すっごく青臭くて、ダイレクトに痛みを飛ばしてくる感じ。
1巻の最初のころはそのポエミー全開モノローグが上滑りしてる気になったりもしましたが、しかし作品のテンションがガンガンに上がってきてる今、その詩的さは作品の確かな魅力になっていますね。読者の気分をゆさぶり高めてくれる。
こっ恥ずかしいくらいなんですけど、作品と合ってますね。
3巻はこんな感じで、相変わらず面白いですなー!2巻で沸騰しきったテンションを、熱いままにキープしつつ次の段階に進みだしています。どこまでいくのやら・・・!
公生復帰のコンクールはもう始まっています。こんな盛り上がる土台を用意されては、4巻の大盛上がりに期待するしかないでしょうが!4巻は9月発売!待ちきれない!
『四月は君の嘘』3巻 ・・・・・・・・・・★★★★
次の舞台へ、丁寧に盛り上げてきている第3巻。次の爆発への期待が止まらない・・・!
[漫画]仲間を貶されて許せるか『常住戦陣!!ムシブギョー』5巻
常住戦陣!!ムシブギョー 5 (少年サンデーコミックス) (2012/04/18) 福田 宏 商品詳細を見る |
仲間をバカにされると、頭に来るものだな!!!
「常住戦陣!!ムシブギョー」5巻が発売しています。
表紙にはドドンと虫奉行様がと登場してますね!内容はこれまででもかなり重要なエピソードである様子の「蟲奉行様救出作戦」編へと突入です。
こんなボリュームの話をやるのも連載が続いてきたからこそって感じがするかも。
じゃあさくっと感想でも。
前巻→必ずお守りしますから! 『常住戦陣!!ムシブギョー』4巻
●思えば前身作である無印「ムシブギョー」でも虫奉行様は登場していました。
しかしその多くは謎に包まれていましたし、主人公の仁兵衛ともほんのすこし接触したのみで終わってしまっていたんですよね。
今回の連載が始まった時にも蟲奉行様のエピソードをかなり楽しみにしました。
そうして4巻からついに始動した蟲奉行様をメインに据えたこんかいのエピソードが動き出したわけですが、話のボリュームも規模も、これまでからかなりスケールアップしたストーリーに。
味方サイドは仁兵衛ら「市中見廻り組」とともに「武家見廻り組」「寺社見廻り組」が活躍。
敵にはついに「蟲狩<ムシカリ>」が姿を現し、主要メンバーもお披露目!
ざっくり言えば、2チームが虫奉行様を目指し争うわけです。
仁兵衛を主軸に個人個人の活躍を描いてきたことが多い本作ですが、組織としての闘いを描くのが今回のエピソードの特徴的な部分でしょうか。
これまでとは違った雰囲気のバトルとなっており、新鮮な印象を受けました。
●この5巻は寺社見廻り組とのイザコザを描いたシリーズと、蟲奉行様の救出を目標としたシリーズをまたいで収録されているのですが、単行本で読んでみてこの構成はすごく良かったなと思いました。
それは寺社見廻り組リーダーである白榊の変化が分かりやすいから。
これまではいけすかない男として描かれた彼が、闘いのさなかに変わっていく!
寺社見廻り組編では市中見廻り組の力を認めつつ、しかし彼らの考えを上手く理解できない・理解する気もないという風に彼は立ち去って行きました。
「これ以上コイツらといると、バカが感染るわ」
市中見廻り組を根本的に見下した態度。最初の好感度最低な地点から「しょーもない奴らだな」くらいに改善された様子が見られたとは言え、やっぱりマイナス印象のままの終結。
そんな締めくくりでしたから、どうにも彼を好きになるのは難しかった。
まぁそういうキャラクターですからね。不遜で独裁的で、けど頼りになるような。
とか思ったら次のお話でこんなんですよ白榊さん!
「仲間をバカにされると、頭に来るものだな!!!」
なに言ってんだコイツ、燃える!!
1つの集団を率いる長としての誇りが、そして部下への愛情が熱を帯びた叫びを呼び起こす展開。
仲間をバカにされて湧き上がる怒り。それはなにも愚かではない。
白榊にもその熱い思いが宿っていたことに、自分はガッツポーズですよ!
相当の実力者ではあるんですが、視野がせまいのが彼の弱点なんでしょうね。自分の身に返ってきてからしか物事を考えられない。
けどそんな不器用なガンコものが、そんな熱い所を魅せつけてくれて、しかも「優雅に戦う」をモットーとした彼がやたらと泥臭い戦略をとる。
白榊のこの変化が一冊の中で楽しめるこの構成、やっぱり良かった!
●白榊様がかなり萌えるんすわという話で今回は結構満足なんですかあといくつか。
蟲奉行様、かわいいな!
仁兵衛との微妙に咬み合わない会話テンポだったり、すこしずつ仁兵衛への疑惑を氷解させていく様子だったり、短い中でも蟲奉行様の魅力は現れていたとおもいます。
闘い方も面白かったですね。これを生かした今後の展開も楽しみになるってものです。
5巻では、連載時に読者を驚かせたあの「変化」が収録されていませんし、これは6巻も奉行様尽くしの予感ですよ!というか確信ですけど。
5巻の表紙デザインを見るに、6巻は鏡写しのように別モードが登場してると面白そうですね。
そうそう、江戸を離れる長期シリーズに入ってしまいますので、お春さんの出番がかなーり少ないのですよ今回!お春さんといえば日常を司る癒しヒロイン。バトル展開になると火鉢へのラッキースケベが増える傾向にアリ。クッ、4巻でお春さんさんざんイチャコラやりぬいた反動か!
と思いきやわかってる、わかってますよ福田先生は。
巻末オマケでお春さんとうひょうひょできるよー!うむ、いいオマケですな!
男の子をアツくさせる少年漫画のお約束、カッコいいキャラクター・燃えるバトル・かわいいヒロイン・ちょっとエッチなイベントがずらっと揃った、やっぱり良質の少年漫画だと思いますね。
そういえばちょっとずつお春さんの顔立ちが変わってきたような気もしますが、可愛い可愛い。たっぷたぷしてて実にイイとおもいます。
とゆわけでそんな「常住戦陣!!ムシブギョー」5巻の感想でした。
作品の魅力自体は過去の更新で語りつくしてる部分も多いですが、せっかくなので更新を続けていきたいもんです。
5巻で蟲狩という敵集団のメンバーも登場しましたが、まだ詳しくは見えていないキャラクターがほとんどですし、相変わらずこれからの展開が楽しみです。
『常住戦陣!!ムシブギョー』5巻 ・・・・・・・・・★★★☆
ついに本格登場の蟲奉行様。しかし白榊様にニヤニヤしても仕方ない白榊様巻!!
[漫画]こんなにも賑やかな、女の子同士の日々。『総合タワーリシチ』1巻
総合タワーリシチ (1) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ) (2012/04/12) あらた 伊里 商品詳細を見る |
わからなくてイライラして でもどうしても気になって
あらた伊里先生の「総合タワーリシチ」1巻が出ました。「つぼみ」掲載時から単行本化を楽しみにしていましたが、出ましたね。やっほい。
あらたさんは小川麻衣子先生とのコンビ?で知った作家さんですが、これが初単行本。
メインに登場する女の子は6人。それぞれが個性的な彼女たちによる慌ただしい日常を描くコメディです。あっさり百合風味をプラス。
男は初老の先生1人しか出て来ません。保護よくをそそるおじちゃんです。
つぼみWEBで番外編が掲載されているので、どんな感じかは実際に読んでみては。
「総合タワーリシチ」ってけっこう不思議なタイトル。
タワーリシチってお酒の種類らしいのですが、ロシア語で「仲間」という意味もあるようです。
女子高に入学し、なりゆきで一緒に行動することが多くなった6人。それがもう、わいのわいの賑やかしいったら。シンプルでかわいらしい絵柄も、場面に応じてかなり崩されたギャグ絵になったり、テンポよく一気に楽しめる作品だと思います。
そのギャグ絵というのも魅力的で、特に主人公がすること多いんですが、いろんな表情をみせてくれるのがたのしくてしょうがないw
主人公の神奈は真面目系キャラなんですが、クルクルと周囲に翻弄されててかわいい。
神奈の周りも相当賑やかですけど、影響されて彼女自身も相当あわただしくなっています。
これはギャグ絵とは違いますけども、主人公がバタバタしてる様子ににんまり。
見ず知らずの状態から知り合い、そしてどう友達になっていけばいいのか、どう相手を知って行って、近づいていけばいいのか・・・
負けず嫌いな神奈が、すこしずつ他の女の子たちと馴染んでいく様子が描かれます。
ストーリーはあまりなく、友情の進展に集中した物語となっていますね。
最初は高校でも1番を撮りまくってやるぞと意気込んでた彼女でしたが、他の子たちの一分野に特化した才能をまのあたりにしてあえなく撃沈。
各分野に秀でた女の子たちが、本作の他のメインキャラ5人。
1巻の段階ではまだ深く掘り下げられていないキャラもいますが、しかしみんな揃ってわいわい盛り上がっている時の居心地のよさ・雰囲気の楽しさがいいですねー。
個人的にお気に入りなのが時任都さん。スポーツは大好きな女の子です。
破天荒な娘が多いこのメンバー内でも主人公と肩を並べるしっかり者といえるでしょう。テストの点よかったのに居残り組と一緒に勉強していたりしていました。
彼女はきっと何より友達のことが大好きで、一緒にいたいだけなんだなぁ。友達思い。
「相手を全部理解するってのは難しい気がするし」
「でもだから、分かりたくて知りたくて、恋焦がれるんじゃないかな」
これは主人公に語りかけたセリフですが、この言葉にこめられた真摯な思いは素敵ですね。都の心からのものなんだろうなと思います。友達のそばにいたい彼女だからこその。
そして友達づき合いの話なのに「恋焦がれる」なんていつのまにか恋愛話にすり替えているのも注目所なのか? 実はガチ百合っ娘の可能性もあるで。
普段はほんわかしてるのに、スポーツやってる時だけ妙にイキイキしてるのもいいw
もう1人、日下部ちはやもかなりのお気に入り!
絵を描くのが得意な女の子で、いつも明るくトラブルメーカー的ポジション。
クリッと大きな黒目だったり、天真爛漫な雰囲気だったり、素直にかわいい女の子。
追い詰められると(?)とたんに口が悪くなるのもツボですよw
彼女をメインとしたショート番外編も巻末に収録されており面白かったです。問題ありな娘ですが、それでも彼女がまわりから愛されてるのが分かりますね。
そしてこの2人が、作中でもわりとペアで描かれることが多くてニヤニヤしてしまう!
6人いますが、結構3組のペアでくくられている構成になっているような気もします。
そんな「総合タワーリシチ」1巻です。
百合要素は欠かしていませんが、しかしあっさりとしていて、今のところは友情モノという感じ。ギャグ漫画のようにテンポよく楽しめてるので、百合漫画にあまり触れていない人にも読みやすいのでは。
しかしギ繰り広げられる賑やかしい日々に、女の子同士の絆のつよさが垣間見えたり、抱きあうように一緒に寝る様子だったり、結構ドキドキさせる場面もあるんですよね。
切なくて胸が苦しい・・・という雰囲気はありません。でもだからこそか、日常に溶け込んだ女の子同士の自然なふれあいというものもオツなものです。
特別なことでもなんでもなく、この距離感を取る女の子たちですよ。ときめく。
6人もいろんなタイプの女の子が登場するので、お気に入りのキャラも見つかるかと。
主人公・神奈は等身大な悩みを抱く女の子で、彼女がどう変わっていくのかも気になるポイントです。当然、悠との関係も込み。
じっくりと続いていけば、いろんなエピソードを通じて作品そのものへの愛着もまして行きそうです。長いシリーズになってくれれば嬉しいですねえ、「ゆるゆり」みたいな。
読みやすいソフト百合漫画でした。2巻は冬発売予定とのこと。
『総合タワーリシチ』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
ほんのり百合が香るハイテンション女子高ライフ。ニヤニヤできるし読みやすい作品です。
[漫画]毛を巡る暴走思春期じょりじょりラブコメ『スイートプールサイド』
スイートプールサイド (少年マガジンコミックス) (2011/08/09) 押見 修造 商品詳細を見る |
…太田くん…剃ってくれない…?
押見修造先生の「スイートプールサイド」全一巻。
去年の夏に出ていたんですが買っておらず、今更ながらに読了。読んだらこれがまた面白いんだ・・・。「惡の華」にドハマりしてるのでこちらも早くに読んでおくべきだった。
「惡の華」と内容の繋がりはありませんが、雰囲気が通じ合うものがあるかも。
こちらも思春期の男の子と女の子とグラグラする心理描写が魅力的。
しかしジャンルがよくわからない。これはなんだ・・・剃毛ラブコメ?
体毛が薄いというか無いことが悩みの中学生・太田。
彼と同じ水泳部で同級生の後藤は、逆に女の子なのに体毛が濃いことが悩み。
ふとしたきっかけで後藤の秘密の悩みを知ってしまった太田は、ときどき学校で後藤の体毛を剃ってあげるという謎の関係性を築きあげる。
毛が濃い、なんて女の子にとってはきっと誰にも知られたくないプライベートすぎる大問題。
しかし相手のほうから「私の毛を剃って」と頼まれるこの意味不明な、でもすごくワクワクしそうな物語のスタート地点。
女の子の毛を剃るというのも、彼女の身体に触れるというのにも、刺激が強すぎる行為ですよ。思春期男子の心臓は爆発寸前というヤツです。
その興奮たるやこうした文面だけでも相当なものだけれど、本作は漫画としてそこの描写をじっくりやってのけているのでもうドッキドキしまくり。今まで味わったことのない興奮にゾクゾクしつつ没頭する少年もうまく描かれています。
この青くささ、照れくささ、そしてスパイスのようにきいた罪悪感、いい雰囲気だ。
見てはいけないものを見ている。してはいけないことをしている。それを自分だけは許されているというのは・・・なんだろう、「なんかエロい」。
通常有り得ないシチュエーションだからこそ、禁忌的で甘美な興奮がありました・・・。
まぁそういういい興奮だけでなく、女の子に生えるワキ毛をみてごっそり萎えまくる主人公の描写にもありましたが、そういうショックを受けるのも、そこからの少年の成長へつながる。
成長というか、マニアックな性癖を開花させかねませんが!
「毛の悩み」を軸に展開していくのも、思春期らしくていいなぁ。
体が大人になっていくこの時期、みんながみんな多分気にしている。「自分の体って、どこかおかしくないかな?」と。子供の頃からの明確な体の違いって、たしかに、毛だ。
だから「毛のコンプレックス」という要素だけでも、この時期特有の悶々とした感情がうまく閉じ込められているというか、象徴的に描かれている。昔を思い出していろいろシンクロするなあ。
加えて主人公・太田が得る興奮は、実に思春期らしいときめき。
女の子の身体。自分より先に迎えている第二次性徴。
主人公にとってふたつの未知が、眼前にあるという事態。それが彼に恐ろしいくらいのドキドキを与えるんですね。
それを踏まえてのラストも素晴らしかった。思春期の少年少女の背中を押す。
陰毛を綺麗なものとして、剃らないことを選択した印象的な結末は、「大人になることに怯えなくていい」と言っているかのようで。
変化を受け入れれればいいんだ、という優しいメッセージが込められているように感じます。
そういえば、女の子たちって中学生のころ毛の処理ってどうしてたんだろう。
昔は当然生えてないもんだと思っていた俺も、今は色々察せるようになりましたので、これは純粋に学術的興味です(キリッ
という訳でそんな作品です、「スイートプールサイド」。
思春期を描いた作品が大好きな自分はジャストミート。これだよこれ!言葉に出来ないような、得体のしれない興奮に胸高鳴らせる感じ!大好物!
毛がテーマの作品ということでかなり独特ですが、しかししっかりとそれを生かした作品であり納得させられます。単なるアイデア先行のイロモノではない。
そしてこんなことやっておいて、ちゃんとラブコメになってるというのもすごいなw
あとがきにもありましたが、思春期には「なんかエロい」の「なんか」が大切なのかもしれない。そういう正体不明な、でも本能に直接訴えかける何かに戸惑いながらも飲まれていく様子というのは、やっぱり自分のツボらしいです。
現在の押見先生の絵柄とはまた違っていますが、この時から作風は確立していたのだと分かりますし、絵も悪くはありません。むしろキャラ絵とか十分にかわいいくらい。
表題作ともう一つ、「超常眼球 沢田」という作品も収録。
これも思春期の性欲丸出しでとても楽しめる。全力でバカやってるなぁとw
一冊トータルでとても楽しめました。思春期漫画が好きな方なら。
『スイートプールサイド』 ・・・・・・・・・★★★☆
かつてヤンマガで連載された押見先生の連載デビュー作。未体験の興奮!