[漫画]怯える幽霊と忘れられない華の影。『惡の華』8巻
惡の華(8) (惡の華 (8)) (2013/06/07) 押見 修造 商品詳細を見る |
私ね あのとき 「ざまあみろ」 ・・・って思った
「惡の華」8巻の感想です。今回の表紙は春日。
濃密な思春期の窒息感。そこから一歩抜けだした高校編の2巻目となりました。抜けだしたといってもいろんな人があの日々を引きずっている。生傷を抱えたまま無気力に漂っているような。
今回もかきむしられるような痛みに心がヤラれ、これこそが「惡の華」の醍醐味だよなと改めて思いましたよ…!
アニメも面白いですね。いよいよ決壊の時…最後まで楽しみです。
高校編は春日のあたらしい人間関係が築かれていきます。
その外見に仲村さんの面影を感じさせる少女・常磐さん。
実は文学少女であり小説も書いている常磐さんに、癒されているのか惹かれているのかそれとも両方か、ともかく距離が近くなっていく春日。
高校編に入ってからは静かに物語が進んできていましたが
ここに来て“あの人”も登場したりして、いよいよ話が再始動してきたよ!
前巻→その目に焼き付けてくれよ、僕らの”惡”を。『惡の華』7巻
●幽霊になった春日
忘れるわけがない。あの頃を。あの人を。
すべて遠ざけるために引っ越して、新しい生活を始めている春日。
でも過去をまっさらになるわけは無い。中学時代の残照はいまも強烈に春日の心を焼き続ける。
なんで今も生きているのか。こんな風に無様に生きているのか。
そんな葛藤を込めて、彼は自分のことを「幽霊」と呼びました。
文学少年と文学少女。話の合う常磐さんとの時間は、閉まりきっていた春日の心のトビラを少しずつ開かせていく。
けれど「幽霊」という自意識が、ふと彼の足を止まらせる。
上のシーンでは改めて春日の心に救う闇にゾクゾクさせられたなぁ。
乾ききった表情、沼の底みたいな瞳の濁り…!
ああ、まだ熱は冷めてない。今も春日の心をじわじわ苛めている。やり場のないまま、きっといつか爆発するかもしれない可能性を秘めたまま。
「幽霊」という言葉にハッとした常磐さんにも気になったけれど、後半でなんとなくわかった。彼女が書きためていた小説のプロットの内容にシンクロする部分があったんだな。
もしくは春日の生傷にシンクロするものが、常盤さん自身にあったのか。
どちらにせよ彼女のそのプロットを読ませてもらった春日は大興奮で
「これは僕だ!」
「この村…山に囲まれた…どこにも行けない田舎の…ここに書かれてるこの感じ…知ってるよ…!」
とまるきり自己投影。涙まで流して感動する。
小説としての面白さを評価ももちろんしているけれど、ここまで春日を突き動かしたのはやはり自分に距離が近い内容だったからなんだろうと思う。
中学時代に夢中になった詩集「惡の華」。あの頃の春日はこれをよすがとした感じでした。けれどそれは失われた。取り戻してはいけない過去になった。強烈な未練を残しているけれど・・・。
そこで常盤さんですよ。あの涙で春日の中の常磐さんは更に大きくなったんだな。
新しいよすがを、もしかしたら見つけてしまった…。
自分のアイデアにここまで心動かされた相手を見て、冷静でいられるわけもない。
常磐さんは緊張と羞恥でずっと熱っぽい表情をしていてとてもかわいかった。
はい。春日の精神状態のこともあるので素直に興奮することは最初読んだ時は出来なかったけれど、繰り返し読んだ今なら空気を読まず言える。顔を赤らめる常磐さん超かわいい!!!
感動する春日。常盤さんの必死な情熱。2人のボルテージはもうMAX!
でもあそこで嬉しそうに涙を流した春日を見て、
やはり春日はなにかしらで救われたがっているんだなぁ、と再確認。
仲村さんに最後の最後で突き放されたことがトラウマで「もう誰とも深く心通わせることなんて出来やしない」と考えていそうな春日。
でも否が応でも心打ち抜かれる瞬間はある。それが常盤さんとのあの出来事だったんだろう。
どうか彼の心に平穏が取り戻されたらいい。幸せになってくれたらいい。
でも心のどこかで「また惡の華が芽吹くのが見たい」「グチャグチャに汚れて崩壊していく人間が見たい」という欲求もあって、それはだってこの作品だから当然でしょう!
浮き足立つ春日。しかし彼を再び過去へ引き戻す『あの女』が再登場…!!
そりゃそうだ。惡の華だもの。待ってたぜェこの瞬間をよォ!
●過去からの使者
佐 伯 さ ん 襲 来
やっぱり来た!佐伯さん再登場!!
それもまぁーーー今の春日を試すような挑発的なセリフをバンバン吐き出して。
正直、煽ってたんだと思う。再会した時きっとワクワクしたんだろう。だから携帯のアドレスを聴きだしてすぐにまた会おうとする。
春日がいまも沼の底にいるのかどうかをきっと確かめるために。
自分を沼の底に引きずり落とした張本人が、今もちゃんと汚れているかどうかを見るために。
未来に踏み出し始めたばかりの春日の前に現れるタイミングも神がかっているよなぁ。エグいわぁ…。
もはや女神な佐伯さんはどこにもいない。ブラック佐伯さんである。
一度壊れたあと立ち上がっても、完全な再生なんてえりえない。墜落した心の痕はいつまでも残り続けるんだろう。
名言はされていないけれど、佐伯さんも完全に春日を引きずっている。佐伯さんの中の春日は、たぶん春日にとっての仲村のような存在なんだろうな。
自分を目覚めさせた引き金。象徴のような存在なのかもしれない。
仲村が春日を最後で解き放したように。
春日は佐伯さんと落ちて行くことを選ばなかった。
そのことが佐伯さんをきっと究極に追い詰めた。そしてそのことの復讐に近い感情も含めて、再び佐伯さんは春日の前に座ったんだろう。
「あのまま2人が死んでたら 悔しすぎて… 私どうしていいか分からなかったかも」
あの頃の佐伯さんを焦がした強烈な嫉妬は、もう晴れたんだろうか…。
高校生になってからは「普通に幸せ」と言う佐伯さんは、恋人がいる。
小泉くんというその少年は、かつての春日のような容貌です。
そのことを常磐さんはすぐに気づいて指摘し、そして春日はそれを否定する。29話とかで、最後まで「佐伯さんはそんな人じゃない…」と彼女を理想化してしまっていた春日。今もまだ、「自分なんかを意識しているわけがない」と考えているのかも。
単行本ラストの描きおろしページでは、春日と別れたあと彼氏と会う佐伯さんが描かれています。
この佐伯さんの表情がとても印象に残る。寂しげな、悲しげな表情。
現在の春日は、佐伯さんにとって残念なものだった。「がっかりした」。
でもだからこれからも春日に関係し続けてやろうというつもりは無さそうに見える。春日に見切りをつけたように見えるんですよね。
迎えに来てくれた小泉くんは、おとなしそうだけど本当に佐伯さんを大切にしているのが伝わってくる。彼の直向さに、佐伯さんは癒されているように見える。たしかに彼女はいま幸せなんだろう。
佐伯さんがまた登場することも有り得そうだけれど、コレ以降登場せずとも納得できる。「佐伯さんのストーリー」は、ここですっきりとまとまっていますように感じました。
佐伯さんは復讐をやり遂げたのかもしれない。最後の表情は、痛みを伴うも味わい深いほほ笑み。
でも何を考えているのか、本心が見えづらいキャラクターなので、油断はならないな。
●花と3人
各話の合間に描きおろしのイラストが載っています。
これがまた面白い。6巻のときと似た、「花を携えた3人」が描かれている。
左から春日、常磐、佐伯。
6巻の時は「惡の華」を持っていましたが、今回は普通の花です。
花びらの形態や小さくトゲがあるを見るに、これはバラかな。
↑これが6巻の時のものです。比較するといろいろ読みとれそう。
まず春日。またしても彼はうつむいて立ち止まってます。
前に進めていない。そのことが現れている感じ。
だけど花の持ち方が変わっていますね。手に持っているけどどう持てばいいのか分からず、ただじっと握り締めているように見えるかな。
次にまんなか常磐さん。うしろに回した手で花を持っています。
隠しているのかな。この花をどう捉えるかで意味合が変わってきそうです。シンプルにバラの花と捉えるなら、秘めた恋心みたいなイメージが湧く。
でもこれが綺麗なフリしてまっくろで、おおきな瞳のくっついた、醜悪な惡の華かもしれない。
恋心をこじらせて嫉妬でズブズブに身を堕とす惡の華ルートだってあるんだよなぁ、佐伯さんみたいに。普通の人は道徳・倫理で惡の華が咲くことを恐れて押し殺すけれど、種そのものは誰の心にだってきっとあるのだ。
後ろ手に花を持って歩いて行く常磐さん。
そして佐伯さん。
彼女はもはや、花を持っていない。足元に花びらが散っています。
足元を見ると、もしかして歩いてもいないのか…?片方の足のかかとが浮いていたら歩いていると分かりやすいんだけどなぁ。立ち止まっているように見えますね。
ならきっとそうなんだろう。佐伯さんは何も持たず、進めてもいない。
ちなみに41話後には道端に落ちているらしきバラの花が描かれています。ポツンと一輪。セットになるキャラクターはなし。
41話ラストで「いま仲村さんはどうなっているんだろう?」という話をしたあとにこのページが来るので、なんとなくこの落ちたバラは仲村さんを指していたように感じました。
なんの含みがあるがあるかは色々考えてみたいですね。意味はありそう。
「惡の華」8巻の感想でした。
高校編に入ってから中学編のあの熱狂が遠いものになっていて、結構寂しい感じもしていましいた。春日がゆっくりと痛い思い出と向き合う時間。カサカサと乾いた世界。
異常なくらい熱気ムンムンだった中学生時代とのギャップで、一層その感覚が強まる。絵柄も大人っぽい風に変わって来ましたよね。
しかし常磐さんとのふれあいの中で、そこにみずみずしい色が加わっていくのを感じました。
はぁー常磐さん女神ですなぁ。春日の心に寄り添い、そして上向きにしてくれている。
春日が抱える生傷や、彼の家族関係のきしみ等、これからどう再生されていくのかな。
今回の表紙は、うつろな目をして上へと手を伸ばす春日。
もがいてると言うほど必死さはない。沈んだ表情は希望を感じさせない。
それでも手を伸ばしてなにかに触れようとしているのは、彼がきっと救いを求めているからなんだろう。あるいは誰かを心の底から求めているのか。
76Pで常磐さんの横顔にメガネの幻を見てしまった春日に、やっぱりこの話が向かうべきはアイツだろーという気持ちを強めて〆。
佐伯さんも出てきたことだし…やっぱりあの人も再登場してくれないとさ…。
…山田くんの再登場をまっています!
『惡の華』8巻 ・・・・・・・・・★★★★
平穏がねじれていく一冊。向かうは崩壊か再生か。
キングレコードが公式で挙げていたので貼ろう。アニメのOP曲です。よく出来た曲ですよねえ。仲村・春日・佐伯編それぞれ別の独立した曲だと思ってたんだけど、まさかの同じ曲だったw
[漫画]心に青さとみずうみを。『あおくて堅い』
あおくて堅い (GUSH COMICS) (2013/05/10) 山田 酉子 商品詳細を見る |
恋はいつでも初恋の顔をしている
山田酉子さんのコミックス「あおくて堅い」の感想。BLです。
先月には「ばらのすべて」も発売しています。山田先生の作品が一気にたくさん読めて心がホクホクします。作品は冷え冷えとした空気ですけれど。
山田先生らしい叙情的な傷とあまやかな毒、飄々としたクールなリズムは今回も健在であり、この作風に惚れている俺としてはそれだけでも買ってよかったと思えるのである。
今回も恋に溺れてる切実な様子が心に突き刺さるなぁ。
「BL界の吟遊詩人」と作者紹介にありましたが、これはいい表現だと思うw
個人的には少女漫画も描いてほしいですねえ。前にbiancaに読み切り書きましたが、定着しないかな。BLでも買いますけどね!
これまでの山田酉子作品記事
刹那的、オンナノコ。『女の子のすべて』
カッコよくて弱くて泣き虫で強がりで 『クララはいつも傷だらけ』
自由に愛して自由に生きよう。『かなしい人はどこにもいない』
「好きだから」の先にあるもの『ロング&ビューチフルライフ』
深く息をして、僕らは悲しい恋をする。『ばらのすべて』
今回は表題作「あおくて堅い」から続く連作シリーズ4話と
一話完結の短編4つを収録した単行本となっています。
さくっとそれぞれの話の感想を書いていこう。
●あおくて堅い
表題作シリーズは歳の差もの。
予備校に務める先生・甲良と、19歳の浪人生・隆行の恋。
ところが隆行は自由で気まぐれで、なかなか構ってくれない。
そして「隆行が構ってくれないから」とかわざわざ口に出して泣いちゃう先生のこの情けなさ&かわいらしさ。
普段の様子とか見てるとオトナと子供としての立場は分かりやすく区分されているんだけれど、恋愛事になると年齢より人間性に左右されている感じで面白い。
このシリーズで面白いと思ったのが3話目に「過去の恋愛」に目を向けだしたこと。
それは作中で女性が「昔の男ってそそります」といったり、甲良が昔の恋人と再会したことに誘導されてのもの。思い出になることへの感傷に満ちている。
ああそうだ。「過去に結んだ関係」を思い出すのとても甘いものなのだろう。
いつかやってくるかもしれない、悲しい「終わり」を思いつつ、すてられんだろーなー、この子に
俺がいつかそうしたように、
でも俺は おまえの特別な 昔の男に なりたい
その先の途方も無い時間にすら愛情を向けている。
あの子の「昔の男」になれたらいいなぁ、なんて。
記憶としてふっと何気なく思い出してもらえるような存在になりたいのだと。そして懐かしんでもらいたいのだと。
どれだけこの恋を人生に刻むつもりだろうか。いいね!
愛しい人に付けられた傷は、何時まで経ってもきっと痛いまま、自分をノスタルジックに染める甘い束縛になる。
ところで「あおくて堅い」っていうこのタイトル。
最初に見た時、Grapevineの楽曲「マリーのサウンドトラック」の冒頭
「蒼くて堅くて破瓜のようで 遠くて不確かで 嘘」
を思い出しました。もしかして狙って引用したものなのかな。
なんとなく山田酉子とGrapevineの親和性は結構高いと思うんだw
乾いてて甘酸っぱくセンチメンタルで思考がまとまらない感じ。
●バースデイ
ほんのりヤクザもの。
優しい顔して意外とコワい男のヒト。さらりと口説いてきて、お気軽なキス。
暴力はそれ主導の話になると痛々しいけれど、物語を引き立てるスパイスとしてなら気持よくドキドキさせてくれるよな。世界の裏側にほんのすこし触れるような。
●ファンファーレ
あ~これ大好き。恋の傷がクッキリしてて、生々しくて、それでいてふわふわと宙に浮くような幸福な浮遊感まであって。最後にリードの持ち手が変わるのも鮮やか。
「恋の傷は恋で癒せよっ!」ってどっかの麻里さんも言ってた。
山田先生らしい軽やかなリズムが細部まで心のひだをくすぐってくれる。
それにしてもホモセックス目撃した周りの理解度の高さwww
こんなのを知っても動じないお姉さんが面白いしコワイし、きっと彼女に恋をした彼にとっては残酷なものだ。どうやっても彼は彼女の心を揺らせない。でもそれでいい。
●うぶにゃん
何時まで経っても「うぶ」なままでいられるというのはむずかしい。
好きも嫌いも慣れちゃって感情が希薄になっていくことだってある。
でも世の中にはもしかしたらいつまでも少年のようでいられるような男もいて、そういう奴は諦観してばかりの大人から眩しく見られて、そしてたぶんモテる。
BLモノではあるけれどそれと切り離しても通ずるロマンみたいなのがあるかも知れない。うぶにゃんは可愛すぎるけど、ちゃんと大人として仕事できそうだし。
●湖底
最後のモノローグがすごく染み入るけどよく考えなくても意味はわからない。
今回では1番に詩的でとらえどころのない短編だと思うけれど
喜怒哀楽がそっと溶かされた、淡くしずかな空気が絶品。
「みずうみ」というワードが神秘的な響きすら持って輝く。
そんな「あおくて堅い」でした。
今回は氏の単行本でも直接的な性描写が多いですね。わりとガッツリ目。
とは言え肉体的なものより心の機微をじっくり見つめるような視線が多くて、心が静かになる。気持ちいい。
今回はなんとなく水っぽいものがカギとなっている印象もあります。
そうなると「あおくて堅い」というタイトルも深いものを感じられるような。
2ヶ月連続で山田酉子先生の単行本が出るという幸せな時期が終わってしまったので、またしばらく待ちの時期!
『あおくて堅い』 ・・・・・・・・・★★★☆
お洒落ですねぇ。ふだん器用な人たちの不器用な部分がかわいいかな。
[漫画]めんまは、やっぱり笑った。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』漫画版3巻
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 3 (ジャンプコミックス) (2013/05/02) 泉 光 商品詳細を見る |
あの花は きっとどこかに咲き続けてる
めちゃくちゃ出来が良かった「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」のコミック版最終巻の感想です。
テレビアニメが自分にドストライクで、今年の夏に公開される映画版も見に行こうかなと思っていますが、いやいやアニメだけじゃない、漫画版も素晴らしい!作画、演出などのレベルがすごく高いし、アニメを漫画にする上での少々の改変もバッチリうまく行っている。
アニメのファンも、アニメを知らなくても楽しめる、純粋に漫画として非常にすっきりとしています。全3巻というボリュームも収まりがいい。
アニメ版も踏まえてのネタバレありの記事になってます。
1巻2巻と感想を書いていませんでしたね。この作品に関してはどう終わるかが注目どころではあったので、完結してから評価をしておきたいなーと思っていたのですが、見事なラストでした。
アニメは毎回のように泣きながら見ていたものですが、漫画版でもボロボロになりましたよ…特に、やはりこの3巻は、強烈。本当どーうかーしてーるーみたい(泣きながら)
各キャラクターの掘り下げ、心理描写、それぞれのトラウマとその向き合い方。
大切な人が死んだあとにずっと続いていく、それぞれの物語。
足を止めていた、心を閉ざしていた、目を背けていた人々が、自分の気持ちを消化して未来にむけて歩み出す、その姿の眩しいことよ。
何もかもがとても鮮やかに紡がれている。本当に丁寧に原作を再現してくれているため、アニメのファンとしては本当に嬉しいコミカライズなのです。
感動でも緊張でも、心が揺さぶられる瞬間のハッとさせられる演出は、漫画という媒体になったことでアニメとは違った方面から俺の涙腺を攻め立てる。
そしてそこの漫画版オリジナルな魅せ方に、さらに心揺さぶられるのですよ!
アニメの脚本に対してほとんど不満はなかったスタンスなのですが、漫画版ならではのやり方でエピソードの細かなリメイクがされている。しかもこれがまた素晴らしい仕事なのです。
特に今回の3巻収録分のエピソード、つまりアニメの最終2話ほどに関して言えば、アニメにも並ぶかもしくはそれ以上のお気に入り。
本当に細かな違いなのです。映す絵が違うとか、ちょっと行動が違うとか。話のメインストーリーはそのままに、ちょっとずつ変更点がある。
めんまの母親のセリフなんかは、読めてよかったなぁ。これは救われた。
アニメでやったみんなの夜の大懺悔大会はまるっとカット。
あそこで一気に心の闇が吹き出すのは強烈なカタルシスを感じたものです。アニメでかなり好きなシーンではあったので、そこがなかったのは残念かな。
ただあれを最終話Aパートに持ってきた影響で詰め込みすぎ感があったのも事実。
そのかわりに各キャラが抱えた闇は少しずつストーリーの中で吐露されており、違和感のないスムーズな進行。これは上手い。大事なピースが欠けたわけではない。別の形でストーリーの中でピタッとはまってくれていた。
原作エピソードの取捨選択や改変はコミカライズの価値を決める大切な部分ですが、そこはやはりこのコミカライズ版の技が光る。
ただ様々な変更点があるおかげで、ラストシーンはアニメ版とは少し違ったものになっていますね。これはこれで。髪型も違うし。
アニメ版最終話は本当に感動的なんだけれど、30分に詰め込みすぎてた感はやはり否めなかった。泣きつかれてうまく最後らへんは感動の飽和状態になるという異常事態になっていた俺である。
感情の波のコントロールというか、メリハリという言い方は正しいかわからないけれど、泣ける展開のオラオララッシュに体力を持っていかれる部分があったのも事実。そういうのも込みで俺はアニメあの花を最終話までひっくるめて大好きなんですけど。
で、そのアニメの最終話とくらべても、漫画版はある種さらに完成度を高めているのではないか、と思ったりもする。
なによりも涙腺崩壊したのは、めんまとのお別れのシーン。
作品の要とも言える超重要シーンでは、少年時代に超平和バスターズが、いなくなっためんまを見つける、という確かアニメでは無かったイメージが描写されており、問答無用の破壊力を見せつけてくれました。
これはやられた……。面白いくらい泣けるわ…。
誰かも言っていた気がしますが、このセリフを少年時代のバスターズに言わせたことに拍手を送りたい。
内容は同じ。でも演出や描写するものを変えるだけで、その物語の見え方が少しだけ変わってくる。宿した意味の解釈が広がる。最終話を読んで、文句なしに「素晴らしいコミカライズだった」と結論を出すことができたのです。
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」と、この意味深なタイトルが出てくるタイミングにも心底震えた。
あとは他におっと思ったポイントを2つほど。
1つ目につるこのこと。
なにげに漫画版で一番改変?補完?があったのは「つるこ」こと鶴見だったように思います。
超平和バスターズの裏のリーダー的ポジションであったということが、この漫画版では明確に描かれていました。その事からつるこが背負った罪悪感もより鮮明。漫画独自のキャラ掘り下げが好印象。
掘り下げというかむしろ別キャラに進化した感すらある。ドラマも深まっています。
これで超平和バスターズをめぐる人間模様はさらにおもしろくなっていたと思いますし、大正解。漫画版で嬉しかったポイントのひとつ。
小説版の内容をうけてのものなのかな、これは。いかんせん小説を読んでいなからわからないんですよね…。小説版もそのうち読みたいなぁ、オリジナル要素あるらしいし。
そして最後の単行本ラストの描きおろしイラストを見て確信した。
ああ、これ、間違いなく泉光さんがつるこ大好きなんだわ…!
2つ目は、あの日みた花。
これは多分アニメ版でも描写はあったけれど俺が見逃していて、この漫画版でようやく気づいたってだけのオチだろうと思う。でもやっと気づけたという意味でぶわーっと気持ちが高ぶったのでどうせなら書いておこう。
最終話のラストシーン、青い花(勿忘草)が咲くわけですが、これってめんまが最後に消えていったあの場所なのかな。あの樹の下。みんなが忘れられない思い出の場所に花は咲いたんだろうか。めんまは、生まれ変わって彼らにまた会えたのだろうか。
なぜ今まで気づかなかったのか…阿呆め。本当どうかしてるみたい(2度目)
しかも読み返したら過去にもこの樹は出てきていて、2巻の第8話冒頭にはこんな風にひとり取り残されためんまが描かれていました。
「ここにいるのに誰も見つけてくれない」そんな寂しい少女の風景。
そしてこの場所で「めんま、みーつけたっ!」が来ると。それ踏まえて読むと、さらにグッと来ますね。
コミカライズにもその質はいろいろありますが、正直この「あの花」のコミカライズは完成度が高くてビビる!
カットされてしまって残念なシーンはあったけれどお話としては過不足無く、カットされたシーンも大事な要素を拾って他のシーンに挿入されている。アニメからエピソードの整理がされなおされています。オリジナル要素も、アニメを見た身としても「読めてよかった」と確信できる出来。
作画担当の泉光先生はオリジナルの読み切り漫画を読んだことがありますが、きちんと話を作れる期待の新人さんと思っていたので、最初コミカライズをやると知った時は「ちょっと勿体無いな」と感じたものです。でも今や華麗な掌返し。
そりゃあ、自分が大好きな原作が、素敵な漫画にもなったら嬉しいものだよ!
出来がいいだけじゃなくすごく愛を感じるんですよね。幸福なコミカライズでした。素晴らしい漫画をありがとうございました。
次は泉光さんのオリジナルの連載を読んでみたいなー。
「あの花」そのものがまず作家さんとの相性が良かったんだろうな、ともなんとなく思いましたね。こだわりと情熱がある。背景の書き込みも凄まじい!
しっとりとした情感が宿ったみずみずしい夏の風景は、それだけで何かノスタルジックな物語を感じさせてくれるかのようです。
さて、漫画も終わってしまったし、あとは8月末の映画。
めんま視点のストーリーになってるとかで、また違った角度からこの甘酸っぱいお話を堪能できそうで、楽しみです。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』漫画版3巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
大成功のコミカライズ。ここまでのはなかなかお目にかかれないかも。
[漫画]それでも歩もう。だから手をつなごう。『朝霧の巫女』9巻
朝霧の巫女 9 (ヤングキングコミックス) (2013/04/30) 宇河 弘樹 商品詳細を見る |
まるで 朝霧のようだ
大・団・円!ついに終わったー!
「朝霧の巫女」9巻感想です。ながーく続いた作品も、ついに完結巻!
2000年連載開始、07年終了。しかし単行本作業は終わらず、連載終了から6年で最終巻発売。
この作家さんは本当に職人気質で、こだわりが強いということは作品を読んでいて伝わってきます。じっくりと作業が進められてきた単行本は、本当に鬼気迫る。
自分は当時雑誌では読めていませんでしたが、単行本化するにあたり変更点は非常に多いようですね。加筆・修正は山ほどあるんだとか。
雑誌掲載版を電子書籍でもいいので出してくれると嬉しいんだけど、まぁ無理だろうなぁ…。
正直言って内容は後半から難解になってきました。稲生物怪録や日本神話の知識にとぼしい自分では、内容の半分ももしかしたら理解できてないのかも知れません。
しかしそれでも作品の迫力、深い愛情と憎悪、込められたエネルギーに圧倒される!
いやむしろ、自分の知らない知識が至る所に散りばめられていたからこそ、なんだろう、知識欲みたいなのも刺激されたりしていた。そういうのも含めて、いっぱい楽しめた作品。
現代と幽世、そして神話が交差する物語と風景には本当に魅了されました。
様々なキャラクターの想いが結集される最終巻は怒涛の盛り上がり。
攫われた巫女。黄泉から溢れ出る異形と神々。まさに最終決戦。
死者と生者、そして人ならざるもの。その隔たりが今にもなくなる。
ものすごいスケールの戦争が描かれており、テンション上がるしか無い!
そして絶妙に厨二心をくすぐる作品なのですよ。かっこいい口上とか、神話とかさ。
以下、ネタバレ含みますので注意。
前巻→妄執の果てになにがあるのか。いざ、最終局面へ。『朝霧の巫女』8巻
最終巻。人々の思いや執着はどこに辿りつくのか。
ラストということでこれまでの伏線を回収しつつ、それぞれが自分の気持ちに決着をつけていきます。
この作品は血や因縁や輪廻転生など、『つながり』を様々な形で描いて来ました。
(絆と言うとポジティブなイメージが強くなるので『つながり』と言う)
つながりの中で宿る、一言では言い表せない感情とともに、非常に丁寧に。
それは深い愛情であったり、消せない憎しみであったり、尊敬、畏怖、嫉妬、侮蔑、未練、懺悔、哀れみ、慈しみ…。
それら感情を宿す多彩な人間関係。
親と子。怪と人。男と女。友人。主従。嫁姑。生者と死者。そして神と人。
人と人がどうつながり合っているのか。そこにどんな感情があるのか。
結い上げられた想いのドラマに、自分はこの作品に面白さがあったと思います。
特にこの作品なネガティブな『つながり』こそしっかりと描かれており、話を支配する重要な要素でした。そこから重厚な人間ドラマが展開されてきたのです。
それはまさに呪縛。人に土地にすべてのその者を縛り付ける、呪いのようなつながりです。
だからこそ各キャラクターが出した結論に興奮したり涙したり、ともかくクライマックスに相応しい読み応えがありましたよ!!
最終巻で各キャラどんな結論を出していったのか、それをひとつひとつ挙げていくのは手に負えない大変な作業になってしまいますが、印象深いものを書いて行きたいと思います。
●花於と倉子
花於との別離がトラウマとなっている倉子。黄泉の世界が溢れでたことで、花於と再会することになりました。
8巻の一番最後で花於ちゃんが出てきたときはめちゃくちゃテンション上がったものです。
人と怪の、叶えられなかった友情。それを司る、種族の異なる女たち。
倉子がどんな結論を出すのかは本当に気になっていた所でしたが
ホッとするような、しかし強烈に切ない結末でした。
人間のエゴではありますが、結局そこからは逃れられない。
もう一度花於ちゃんの手を振りほどくこと。泣きそうでも、泣いてしまっても、力の限り悲しみながら、現実を生きること。勇気ある結論であり、人間の強さを示した場面でもあったのかもしれません。
●忠尋とこま
死ぬことで望みを叶えたこまさん(8巻)。未だこまさんを求める忠尋。
第32話の2で彼は死んだこまの盲愛(の幻?)に呑み込まれてしまいます。
この時は左目と巫女委員会の介入で助けられますが、同時進行的に描かれていた倉子がちゃんと花於に別れを告げることができたこととの対比で、忠尋の脆さを改めて感じさせられた場面でした。
でもその後でちゃんと忠尋は自分から柚子への想いを取り戻し、こまさんの幻影を振り払うことができました。死者の想いを振りほどく覚悟は、どれほどのものだったろうか。血の繋がった愛おしい存在に、みずから「さよなrら」を告げる。
こまさんとの最後の離別のシーンは名場面ですわ。
最後は本当に静かにそっと、りんと解けた。妄執は晴れたのだろうか。
思わずこまさんの過去話を「妖の寄る家」で読み返したことは言うまでもない。
そしてこまさんの消えた後、立ち尽くす忠尋からただよう空虚感…。
完全な気持ちの整理はつかない。死別はつらい。
けど生きている者は、未来に生きていかなければならない。歩いていかねばならない。
そしてそれを死者は見つめる…。
生者が死者を見送るだけではない。死者が生者を見送る様子も描いています。
これまでの積み重ねで、このこまさんを見た時には、思わず涙ですよ…!
なんて暖かな視線を向けているんだろうか。彼女の想いは、ここまで晴れたか。
こまさんについては後で「母親」について書くときにも追記しよう。
●乱裁道宗と熊沢菊里
死んでは生まれ、輪廻し続けてきた2人。想い合っているのに、結ばれない男女。
いやむしろ男だから女だからという領域を超えている。
7巻で2人の壮絶なつながりを読んでから、非常に気になっていた2人。
愛の怨霊のような菊理。使命のために彼女の想いを退け、けれど本当に大切に守っている。
クライマックスでは主を失ったことで現世に乱裁を縛っていた呪いが消えたのか、彼もまた…。
最後の最後まで愛しあい、けれど結ばれなかった。
乱裁が消えてしまった後、嗚咽しながら凄まじい顔で苦しみ号泣する菊理もすごい。
めちゃくちゃ心揺さぶられる。このカットは本当に読んでいて苦しかった。
「皆と歩め。俺の分まで生き抜け」
「それが兄の望みだ」
そう言い残しあんな晴れやかな顔で逝かれたら…残された方はどうすんの。
でも乱裁は分かっていたから安心して任せたんだろう。
菊理は決して独りにはならないと。共にいてくれる者達がすでにいることを。
乱裁が最後に見せたのは、妹に手向けた強烈な愛情と
立場上やむなく敵となってしまった忠尋たちへの、信頼だったのだろう。
忠尋たちを信じて、妹を託して逝けたんだろう。いい男だった…。
●日瑠子陛下バンザーイ!
バンジャーイ!日瑠子陛下バンジャーイ!
美少女天皇の日瑠子様、怒涛の大活躍。彼女がいたからこその「朝霧の巫女」のラストであったと断言できるでしょう。
おいおい、最初のころなんか病状みたいに描かれていたのに…
長説法は無用!
あなた方が改心して矛を差し出すまで
わたしの鉄拳は緩みません!!!
血を啜り泥に這っても
人々の命を取り戻し、共に生き抜き歩む道を残したいからです
カッコよすぎるだろ。なんて逞しい!
あまりにも大きな人類愛を持ったお方ですよ!
「道を残したい」という言葉が、あまりにも重い…!!
そんな陛下に忠誠を誓う1番の臣下が斎藤である。
めちゃくちゃカッコよくて強いマッシュルームかブロッコリーみたいな老人。
最終的にはなんか船になってスサノオに激突してたよ。
意味わかんないけどとりあえず最高の爺さんだったということである!!!
日瑠子様は神と同化してしまったようだけれど、きっとなんでもできる斎藤のことなので、なんかしてずっと陛下の傍にいるんだろう。ロリ天皇と老人の永遠の主従。ロマンティックじゃない。
しかし改めて、「歩む」という言葉が本当にグッとくる使い方をされている。
人の営みとして。未来へ進んでいくために。自分の意志で足を踏み出すこと。
生きていくために背負っていかねばならないことはたくさんある。
それでもちゃんと歩いでいくんだろう。そうして歴史を作っていく。
●朝霧の巫女は「母の物語」
この作品は「母」の物語だったのとも思います。
印象深いのがこまさんと結実、2人の母親同士のの確執。
こまさんの忠尋への妄執。忠尋と結実の亀裂。
最終的には日瑠子陛下もスサノオを自らに宿し、母親(母神?)となりますしね。
とくに忠尋(子)をめぐっての女同士の争いは壮絶で、これほどまでに親の執念を見せつけられて恐ろしくなるほどまでの体験をした作品は無いような気がする。
そこに複雑な心中の主人公・忠尋が介入し、さらに胸締め付けられる親子のドラマも展開。
こまさんと結実さんは、それぞれ違った性質の「母親」の想いを作中に溢れされていました。
子を想う親の気持ち。親を想う子の気持ち。これらがこの作品の大事な要素でもあった。
自分は結実さんのモノローグを読むと心が苦しくなる。
途方も無い後悔と今も続く苦悩が、言葉の細部からすらにじみ出ていて。
母になることを棄てたわたしは
かわりに守るべきものを探し続けていたのかもしれぬ
さまよいながら生きてきて、気づけばここにたどり着いていた
現実から、子から逃げ出した母親。
本当は愛したかった。けれどそれは叶えられなかった女の苦しみ。
こまさんの描写はこれまでたくさんありましたが、意外と結実さんの心を捉えた場面はそれほど多くはなかった印象。最終巻にして彼女の傷がしかと見えてきて、痛々しかった…。
結実さんに関しては単行本最後のページを見てほっこりするのも忘れちゃいけない。
ともかく。
いろんな要素が絡み合った作品ですが、「母」というものの描き方は本当に印象深い。
人間臭さ満点な女性として。または新しいものを作り出す神秘的な存在として。
諸々ひっくるめて母親への敬意、畏怖、みたいなものが込められているのかもしれない。
日本神話に出てくる母親エピソードも、チラッと調べてみたらだいぶ面白かったです。(俺はマジで日本神話の知識がないのです)
古来から母親というのは、ドラマを背負っているんだろうな。
次の世代へと受け継がれていく、つながれていく血のバトン。
そういうのに深いロマンを感じるのも、この作品のテーマとしてしっくり来る。
クライマックスでは主人公のご先祖たちが現れますね。ここは名シーンやで…。こまさんバイバイしてるしよ…。
子を信じて未来に送り出す、親側の決意。
朝霧の巫女が完結したのは、こまさんのこの結論を出したからかもしれない。
●糸の話
運命の人とつなぐのは赤い糸ともよく言いますが。
「朝霧の巫女」でも、糸は重要な役がありましたね。
人がほどければ糸に戻る。むしろ世界すら、高天原で成された織物。
人と人とつなぐものの表現としての糸。存在をなすものとしての糸。
改めてこれら人の世界を『糸』と表すことに面白さを感じました。
糸という言葉に宿るイメージがなんとも好きだ。なんだろう、奥ゆかしさや頼りなさ。一本だけでつながっていてもつぐにプツリと切れてしまいそうだけど、2本で撚り合わせればもっと強くなれる所とか。
弱いそうで強いようで、けれど縁の力を感じるような、いい表現ですね。糸。
「けして独りで離れぬように。迷わぬように」
手をつないだ表紙の2人は、最終巻を飾るに相応しい。
自らの手でほどけた糸を海から見つけ出した、正真正銘の運命の糸。
糸を束ねれば紐。紐という言葉も、所々で出てきたな。
●まとめ
短篇集「妖の寄る家」からじっくり丁寧に描かれてきた長い物語「朝霧の巫女」。
いかにして未来と向き合っていくのか。
この弱い世界で生きていく意志を見せていくか。
どう決着がつくんだろうかとワクワクしながら読みましたが
時に残酷に時に優しく、エンディングは晴れやかな心地で迎えられました。
しかし願わくば、その戻ってきた日常をエピローグとして見てみたかったなぁという気持ちが強いです。あと数ページ、日常描写を入れて完結してくれたら、もっと気持ちよかったかも。
特に菊理の傷はそう簡単に癒えるはずもないもので、彼女がこれにどう向き合っていくか、もうちょっと見て安心感を得たかったという思い。
単行本ラストでは、これから登校しようっていうキャラクターたちが描かれています。
でもこれでも足りない!長く続いたこの作品のエピローグを、もっとじっくり味わいたかった。ワガママな読者だよまったく!
だけど十分、彼らの未来を信じることができる終幕。
となりの人と、大切な人を手をつなぐ。シンプルなたったそれだけのことがどれほど尊いのか。
親と子。怪と人。男と女。友人。主従。嫁姑。生者と死者。神と人。
いろんな関係性を内包した作品でした。
人の感情の恐ろしさも描いてきて、その迫力にゾクゾクさせられてばかりでした。最初はラブコメだったはずなのに、後半からガチシリアスですからね…。
けれどとても前向きな決着。その切なくも暖かな感触に、心も安らぎました。
死者と向き合うという切実なテーマも、自分は大好きだったなぁ。
そし神秘的な世界観と背景描写。最高に雰囲気がよかった…。
思えばアワーズの漫画ではヘルシングよりトライガンより先に読んだなぁ。
中学生の時から追っていた作品だったので、終わってしまうのは寂しいですが
それでも忍耐強くこれだけ美しくヘヴィな傑作を仕上げてくれた宇河先生には、本当に感謝しかありません。
まだまだ読み解けていない部分もたくさんあります。これからも思い出したように読み返しては、「朝霧の巫女」の世界にどっぷり浸かりたいなぁ。
カバー裏オマケ漫画、最高に余韻をブチ壊してくれました。これぞ朝霧の巫女!
『朝霧の巫女』9巻(完結) ・・・・・・・・・★★★★☆
綺麗なだけではない命の苦悩、叫び。ずっしりと心に響く作品でした。
[漫画]あの超カオスなアマガミが帰ってきたぞ!『あまがみっ!SS+plus』
あまがみっ!SS+ plus (ファミ通クリアコミックス) (2013/04/15) ピアイ才 商品詳細を見る |
う~んウナギ 我ながら旨かったな…
うわーどうしようおもしれー!感想書きたいけど、でも手におえたもんじゃないw
「アマガミ」販売元のエンターブレインが直々に世に出してしまった、ピアイ才先生の「あまがみっ!」シリーズは、読む者を置いてきぼりにしそうな超疾走感で突き抜ける強烈なギャグ漫画。
アマガミのコミカライズシリーズは本当に出来が多いものが多くて、ファンとしては喜ばしい限りでした。しかし中でもこの「あまがみっ!」はとびきり異質。原作を弄り倒しすぎて影もカタチもない有様ですよ!
好き勝手やりすぎ!それでいて原作ゲームやアニメの小ネタを拾ってむりやり話をこじ開けていく豪快さが楽しいw話のスジはムッチャクチャなんですが、この漫画だからこそ許されるノリが最高に愛おしい!
これが同人誌じゃなく公式のコミカライズで出てるってのがすごすぎますよww
こういう自由さもアマガミのメディアミックスの面白さだったよなぁ。また新しいのが読めて嬉しいです(ホロリ
1巻 アマガミ・・・ですよねこれ?『あまがみっ!』1巻
2巻 キャラ崩壊の嵐!破天荒すぎるアマガミ 『あまがみっ!』2巻
基本はアニメ版2期、「アマガミSS+」に沿った内容。
でも全然沿ってないのでオリジナルのギャグ漫画みたいなものかもしれない。パッション君とかシカとか、細かいネタ拾ってますけど、マジメに原作に従おうなんて気はさらさらないのです。この作品はそれでいいw
アマガミと言えばの主人公、橘さんですよ!
ぬるぬるする液体で遊びながら主人公登場。これは吹き出す。
これが連載第1話目の最初の1コマですよ。もう意味分かんない。でもこれが平常運転。
しかもこれが出オチにならず、ずっとこんなテンションが続いてるんだからもう頭イカれてるんじゃねーかと。ピアイ才先生の才気迸る…。
今回の収録分ではこの登場シーンがもっとも面白いとどこかで評判らしいですがw
全7話で、主要ヒロイン6人のメイン回と、最後に番外編の温泉回。
ヒロインの順番なんかも完全にアニメ2期通りなのですが、ヒロインたちも見事にぶっ壊れてるので原作を知っていればそれだけ面白いし、むしろ知ってなくても楽しいと思うw
ただでさえキャラが濃い連中ばかりだった「アマガミ」ですが、それをさらにカオスに煮詰めています。行き過ぎてキャラ崩壊の嵐!それがイイ!
絢辻さんはそもそも原作の時点でアクが強かったですが、さらに恐ろしく、そしてあざとくキャラを深めてますねえ。ロリ辻さんとはどうしようもねえかわいさだわ。
リンゴを握りつぶすアヤツジサン!
食欲のみで稼動するひどいキャラ崩壊を食らった梨穂子ですが、今回ではなんと1番のラブコメ要員となっています。夏バテにより食欲が減退したらやっと食べること以外にも考えが行くようになりました。これまでがホントに弄られてばかりだったので、ようやく報われたと言ってもいいw
七咲はマジメな娘なのでギャグ方向に弄りにくそうだと思うんですが、ピアイ才先生はさすが。でも濃ゆいキャラが多すぎて七咲埋もれ気味かもしれないが、彼女に頑張れという方が無茶かwオチの適当感に笑ったw あとM字まくらネタ見たかったなー!
モジャかわいい棚町薫!扉絵の浴衣姿がめちゃくちゃかわいい!寿司屋の息子が心底ヒドいキャラになっている。突拍子もなく現れてUMAを探してまた森に消えていくなど相変わらず森島先輩はぶっ飛んでた。
漲るおっぱいパワーでモテモテになった中多紗江ちゃん。マジメなようでいて、一度勢いづくとほっといてもナチュラルにぶっ壊れたことしだすのが彼女らしいと言えば、そうなのかも知れないな…たぶん…。
森島先輩はメイン回じゃなくてもだいたい毎回出てきて存在感放ちまくりでしたが、ついにやってきた主役回でも頭おかしい(褒め言葉)。もちろんアニメに出てきたジェシカと2人揃って頭おかしい。
でもこの森島先輩のノリが「あまがみっ!」を象徴しているようにも思うw
そして最終回。まさかのうなぎEND。温泉回だというのに温泉に入ったの橘さんだけでした!残念!あとみゃーが撃ち落とされてました!
そんな…感じの…「あまがみっ!SS+plus」でした…(ガクッ)。感想書くの難しすぎぃ!!
面白すぎるストーリー&キャラ崩壊。こういうのがコミカライズとして公式で出版されるということが、アマガミという作品の懐の深さを裏付ける。
アニメ2期も終わって、あーもうアマガミ関連は出尽くしたかなーと思ったら、遅れてこんなプレゼントがやってきてくれたので、本当に嬉しいですよ!
憎いのが、ちゃんと可愛いヒロインたちも書けるということ。
たまーに崩し絵じゃないマジメ絵が出てくるんですが、そのクオリティの高さに「この作画で一冊やってください」と思わんでもない…でもピアイ才先生だしそんなのはしてくれないだろうw
お腹いっぱいのコミカライズ(?)でした。なんとレベルの高いギャグ漫画か!
ここまでめちゃくちゃなのに好感度が高いのは、純粋にギャグが面白いのもありますが、作者さんが「わかってる」からなんですよね。細かい小ネタの拾い方とか本当にこの作品を愛して何度も触れ直したんだろうなぁと思うし、キャラをブチ壊すにしても愛がある。原作へのリスペクトと作者のやりたいギャグが一体となっていることが、このシリーズのなにより素晴らしいところです。
カバー裏の表紙案、4とか8とかも見てみたかったなw
『あまがみっ!SS+plus』 ・・・・・・・・・★★★★
まさかの復活を果たした原作ガン無視コミカライズ。清々しいまでのカオス。