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正直どうでもいい(移転しました)

マンガ感想を主に書くブログ。移転につき凍結中。

[本]家族から家族へ。ほろり日常系ひよこコメディー。 『ぴよぴよ 水上悟志短編集Vol.2』

鬼畜課題がどっさり。
ぴよぴよ―水上悟志短編集Vol.2 (ヤングキングコミックス)ぴよぴよ―水上悟志短編集Vol.2 (ヤングキングコミックス)
(2007/01/26)
水上 悟志

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   そうか・・・・・・今巣立ったのか・・・

アワーズで「惑星のさみだれ」を完結させたばかりの水上悟志先生。
その内容等は最終巻発売時に触れますが、まとめるなら最高の物語だったと。
そんな水上先生が以前発売した短編集「ぴよぴよ」が素晴らしかったので、今日はその感想。
さみだれにハマった時点で過去作にさかのぼっていきたかったんですが
地元の本屋では全然見つからなくてですね・・・買うのに苦労しました。(通販あるだろ

ぴよぴよ

全3話の表題作。
水上さんらしい気の抜けるコメディとちょっとほろりと来る切なさが楽しめる1作。

女の子が神社で買ったひよこ。
お父さんの許可も貰い、おうちで育てることになりました。しかし3年後には・・・

20100917211654.jpg

ちょっと大きくなりすぎました。
こんな調子で、のんびりした世界観に妙におかしなファンタジー要素を詰め込んだ
独特のかわいらしくシュールな雰囲気がとてもツボw
まず異常なサイズのひよこ・源八郎がビジュアル的にすごいですしね。
タンコブから子供から誕生したり、結局正体は分からないままだったり、唐突に巨大化したり。
その上源八郎が「ぴぴ」しか言わないのにそれが理解されてるとして物語は進みますので、完全に読者はおいてけぼりを食らいます。けどそれも含めて「面白い」と感じられるからいいなぁwギャグですからねw

咥えて結構メッセージ性ある作品でもあります。
さみだれにもあるテーマですが、「人間」というのは、引き継いで引き継がれて続いていく。
それは家族の中でも言えることです。
娘すずめは1話では小学生、2話では高校生、3話では結婚前夜の女性として描かれます。
子はいつか巣立つもの。
「家族」はいつまでも同じ形を保ちません。作中でも、別れが描かれます。
この作品では2人(1人+1匹?)の親が登場しますが、第3話終盤でのやりとりは素晴らしい。
父はいつも無表情で、ボケるときも真面目な時もあわてた時も、そのスタンスを崩しません。
けれど娘の門出のこの日。
「幸せになるのだよ」と娘を見送ったにだけ、彼は満面の笑顔になるのです・・・!
まぁ自分はまだ具体的な感覚は到底分かりませんけれど
「家族」という特別な繋がりは、なんでもないように見えてドラマ性があるというか
非常に面白いものだなぁと思いますね。色んな感情が混じり合います。
家族に限らずとも、1つの「繋がり」で結ばれた集まりは
解散してしまってからも、「帰ることができる場所」として残り続けるのかな。

まぁうだうだ言わずとも、このなんとも言えない寂しさがたまらない・・・。
これかー・・・これが娘を嫁に出す父の気持ちかー・・・!
かと思いきや最終頁のまさかのオチでそのしんみりしたムードを吹き飛ばすオチがw
こういう落とし所の上手さも素敵だなぁwコメディーとして最後まで行った!
ちょっと泣けて、だいぶ切なくて、かなり笑える中編作品です。

20100917211652.jpg(クリック拡大)

このシーンまじほろり。

魔界斬妖剣・ドキドキ地獄変

うっわー恥ずかしいいい!!
でもまぁ自分も、こういう「好きだ」って大声で叫んじゃうような漫画が大好きですww
かなりの出オチですが、展開も早いですが、ボーイミーツガールものとして
なかなか面白い風に仕上がっていると思います。
ラストのページではニヤニヤせざるを得ない。

それと妹ちゃんかわいいから次回作ヒロイン化希望。さみだれでもちょっと出たけど。
20100917230631.jpg
兄を手玉にとるこの態度、挑発的な目つき。でもスカートはしっかりガード。
これはちょっとー・・・・・・イイですね。

がんばってちゃんとやめよーぜ

レベルが高い短編集ですが、個人的には「ぴよぴよ」と並んでこの短編が好き。
自分の中にある「現実的な怠惰」と「熱血漢的な情熱」をそれぞれキャラクターに見立てて脳内で争わせている少年のお話。いつもいつも、彼の中では前者の「やめよーぜ」君が勝ちます。
眼の前には、自分が何かできるかもしれないチャンスがある。
けれどふとそれによるデメリットや他人任せな姿勢が邪魔をする。
理想を叫ぶ「がんばってちゃん」が、毎度のように「やめよーぜ」に負ける姿は
現実ってそうだよなぁという諦めの思いを読者にも運んできます。

20100917211638.jpg

涙をあふれさせる「がんばってちゃん」は、主人公の素直な感情そのもの。
それが出来ればカッコいいんだろうな、気持いいんだろうな。
けれどためらいなく踏み出せるほど、自分はもう子供ではない。
理想ばかりじゃどうにもならないことを、知ってしまっているから。
そんな中からの“逆転劇”が最高にカッコよくて、最高に気持ちいいのですよ!

主人公は、きっとからも葛藤を繰り返すだろう。
けれど、まぁたまには踏み込んでくれるんじゃないかなと思う。
決して落とさないように、無くさないように、「がんばってちゃん」を背負っている彼だから。
最後のコマのシルエット、染みるなぁ。

えらぶみち

ちょっと抽象的だなぁと。と思ったら夢の話でした。
子供の頃夢描いた未来の自分に、今の自分はなれているだろうか。
そんな葛藤を描く短編です。

20100917211648.jpg

人生の話と、昔死んだ仲良しだった女の子の繋がりがやや弱いかな、と思いましたが
彼女は主人公が忘れていた「昔の自分」を再び蘇らせるための手段だったのかなと。
しかしラストは感動しました。ループものとしても面白かったです!
彼女は主人公を助けるためにこの夢を作りだしたけれど
思ったより話が弾んで、人生の話に行ってしまった感じか。
彼女にとってはちょっと残酷な結末かもしれないけれど、
そういうのを受け止めるのも、大人になるということなのかも。
子供のままの少女を思い泣いた主人公ですが
彼の言葉で、少女はちょっとだけ、大人になれたのかもしれないですね。

サンダーガールと百鬼町

百鬼町シリーズ。
残念ながら「散人左道」が未読なので、色々詳しくは言えない・・・。
サンダーガールさんと妖怪たちが、道の巨大岩を動かそうとするお話です。
最初はみんな白けていますが、主人公の行動が妖怪たちを動かす流れは
王道ではありますが、やはり盛り上がるというものw

しかし水上先生はやっぱりこういうデザインが好きなんだなぁと。
妖怪かわいい!

風穴頭と百鬼町

百鬼町シリーズ。
この短編集では数少ない、アクションをメイン?としたお話です。
自分はアクション中の衣類の動きを見るのが地味に好きなのですが
この話は布が武器ということで、個人的に大好きな結構好きなバトル方法w
「なかなか味のある顔してんな」も、綺麗なオチで好きです。

このシリーズはやはり本編を読んでこそな気がしますので
はやく「散人左道」も読んでみたいところです。



そんな感じの短編集。かなり面白かったです。
「げこげこ」から絵もかなりスッキリと上手くなっていますし、読みやすい。
「惑星のさみだれ」や「戦国妖狐」で水上先生を好きになった人も
気に入る短編がいくつもあるはずなので、未読の人は短編もオススメしたいです。
何度も読み返して楽しめる1冊になっているのでは。

『ぴよぴよ 水上悟志短編集Vol.2』 ・・・・・・・・・★★★★
レベルの高い短編集。全作結構メッセージ性が強いので、鼻につく人はいるかも?
短編集Vol.1『げこげこ』もオススメです。

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