[小説]恋と友情絡まる、成功と挫折の青春物語 『さくら荘のペットな彼女』
前回のゲーム更新に引き続き、普段あまりやらない更新を。今回は小説。
今一番熱中してるライトノベルはこの作品かも知れません。
1巻の感想をずいぶん前に書いたきり、このブログでは直接取り上げてきてはいませんでしたが・・・最近の、特に4巻と5巻が素晴らしすぎて震えまくり・・・!!
現在コミカライズも始まっており、アニメ化も視野に入ってるんじゃないかなーとぼんやり思っているわけですが、さてどうなるやら。まぁそれはともかく、感想というか紹介のようなことを。
この作品のメインヒロイン・椎名ましろちゃんはもはや言わずもがな。
彼女と主人公が織りなす初々しいラブコメ模様はなんとも微笑ましいものです。
・・・というのが3巻までのこの作品の感想の大部分を占めたもので、浅はかな自分はこの作品を単純なラブコメであるようにしか捉えられていなかったのです。
ところがこの4巻を読んでようやく思いました。違う違う、こんなのどこが『単純なラブコメ』だ。もちろんラブコメ的にも面白いですが、想像以上に濃密に苦味を含んだ青春であることに気づけました。遅い・・・遅すぎる・・・!
学園の問題児?ばかりが集められるというアパート「さくら荘」の住人たちを描くこの作品。そんな場所なので全員が規格外というか、いろんな意味で濃いキャラクターばかり。
舞台は水明芸術大学付属高校という、様々な分野において、才能ある生徒が集まる学校。
才能のある『天才』と、なにもない『凡人』。その要素は1巻からあったものです。
しかしこの要素が4巻から一気に強まってきたように感じ、そこが個人的にこの作品に引き込まれた原因なのかなと。学校がそういう場所だからこそ、登場キャラクターたちは才能の有無、そして目標との差について、深く悩まされることになります。そういうところは、芸術系の学校だからこそのシビアな感覚かも。
恋とか愛とか、ただそういう甘い気持ちだけで盛り上がれるわけではない。自分の好きなことで、認められたい。そうじゃないと自分が納得できない。そうしてさくら荘の面々が、それぞれ複雑な思いを抱きながら走り出したのが、この4巻なのかもしれません。
4巻も色々見所はありましたが、1番印象的だったのが、ましろと空太(主人公)の関係。
何もできない、やれない空太とは違い、ましろはさくら荘にやってくる前からその才能を開花させ、美術家として世界中から認められていた存在でした。
そしてその道を絶ってまで新たに始めたこと、それが漫画家。これも連載が始まれば人気も上々、大好評となります。ましろは明らかに天才であり、それが空太を悩ませることに。
ましろと並び立つには、自分も何かを成し遂げなければ。ましろからもらった熱を胸に、彼もまた夢を追う道へと進んできたのでした。
ところが自分の目標だったましろが、今度は「普通の女の子らしいこと」をしたがる。生まれたときから普通とは縁遠かった彼女は、さくら荘での生活の中で、明らかに変わったのでしょう。
空太のために・・・と、喜んでもらいたい一心で慣れない料理もやってみます。
そのいじらしさには思わず顔がニヤけてしまうわけですが、それがちょっと空太は納得できないというか、許せないというか。
彼は目標であるましろを、あまりに理想化してしまった。
わき目もふらず、ただただ高みを目指して欲しい。才能があるなら、それを全力で活かしきって欲しい。身勝手だけどそう願わざるを得ない。それは「自分がそうなりたい」姿だから。
もともとましろちゃんは、そういう「普通」のことに目を向けていない女の子だったので、女の子らしいことをしたがる今の彼女に違和感があるのはもちろんなのでしょうけど、どうにも、『才能』に翻弄されてもやもやしてしまってるんですねぇ。
空太も必死に夢のために行動を起こす。何度も何度もゲームのアイデアを考えて、メーカーに応募する。けどことごとく不合格。その苛立ちは、自分の理想像どおりになってくれないましろに向かう。
あーこの全然上手くいかない感じ!すっげぇ青春って感じがしてたまんないですね!!
そして積もったフラストレーションが爽快にふっ飛ばされる終盤も最高・・・!
もの凄くストレートに青春を描いてる作品だと思います。ちょっと捻ってあるように感じる部分は、あまり見たくない部分をも見せて来ているからで、結局それは真実だったり。
恋愛というには成熟しきれていない感情に、劣等感やら嫉妬やらが合わさって、めちゃくちゃになってしまってる感じ。素晴らしい。これぞ、これぞ。
確実にましろが恋する女の子になっていってるのに、プライドというにはあまりにも不恰好で曖昧な感情で彼女のかわいらしい変化を受け止めてあげることができない主人公!
この野郎!この野郎!そういうところが大好きだ!
そして5巻。今のところの最新刊ですが、これもまた青春らしさがハンパない。
妹の優子ちゃんかわいいなぁとか、優子ちゃんメインキャラ化まだかなとか、色々見所はあるわけですが、5巻もやっぱり甘酸っぱいような、でもだいぶ苦いような仕上がり。
今回なんか特に、「バレンタイン」なんてラブコメにか欠かせないような甘いイベントに、とあるヘビーなイベントを被らせてます。本当に忙しく生きてるなぁ、その雰囲気も好き。
4巻はましろと空太のこじれについて書きましたが、同時に3年生の美咲と仁もこじれており、5巻では3年ペアのことが大きく取り上げられていました。
空太とましろと同じように、彼らもまた『才能』にかなり翻弄されてしまったいました。
しかし1巻ころから微妙な空気を引きずっていた彼らも、ここで収束です。
美咲も、ましろとおなじく既に圧倒的才能を発揮していて、世間から認められた存在。
仁は彼女の作品の脚本を担当しているイケメン。外泊ばかりしてます。
けれど幼馴染の美咲には特別な感情を抱いていて、何人も彼女を作ってうはうはやってるのに、美咲にだけは上手く真正面から向き合うことができない。
美咲は仁に大して丸分かりな愛情表現をしてるのですが、一切応じません。
それは彼が美咲に対して、本当に特別な感情を抱いているからこそなのですが、美咲はそれが上手くわからない。でも仁としても、今応えるわけにはいかないのです。
美咲を心底好きだからこそ、彼女と一緒にいるためには、今の自分では足りない。
「美咲と付き合える自分」は、仁にとっての目標なのだから。その資格がない今、美咲と付き合うわけにはいかないのですね。例え美咲を悲しませることになっても、自分の問題だ。
ある意味自分勝手なんですけど、これは分かるんですよ、分かりたくないんですけど絶対これはグッときてしまう。この場合の恋の資格なんて、人の感覚の中にしかない。けれどそれを律儀に守りぬかなきゃ、本当に心から満足することはできない。「妥協した」なんて意識を抱えて、好きな人と付き合うことなんてできるわけがない。自分の中の何かが、それを絶対に許さない。それはきっとズルだから。
1巻のころとかあの余裕たっぷりな様子がちょっとイヤなキャラクターだったんですけど
もう5巻での仁さんがステキすぎてヤバい。無茶苦茶カッコいい。こじらせてるなぁ。
そして空太は、境遇が似た仁さんに自己投影していたり。
空太と仁上の先輩・後輩の関係、この作品においてもとてもいいものだなと思います。
5巻は七海ちゃんをめぐるやりとりも強く印象に残っています。
彼女を友人と迎えに行くシーンは、男同士のムサい青春くささがあってお気に入り。
あー、ましろと空太のやりとりは5巻もニヤニヤさせていただきました。
ましろちゃんが空太にチョコ渡すシーンのかわいさはなんぞこれと!
初期を思うと、本当に彼女の変わりぶりには感動すら・・・・・・。
5巻はこの作品がこれまで描いてきたものを総括する内容でもあったように思います。
もちろんまだ決着の付かないものもたくさん、たくさんあるのですが・・・。
過去1番の大きな盛り上がりを見せたような気もしますね。
長い。なんでこう長くなるのか。まぁいいや。
さくら荘住人たちは、ただ一緒にバカさわぎをしてるだけじゃないです。
それぞれがそれぞれにちょっと歪なような、特別なような、言葉にしづらい感情を抱いては、互いに応援しあっているような、上へ上へといこうとしているというか、でも素直にそうすることもできないもやもやもあったりで、アパートまるごとで青春してるんですね。
キャラクター相関図のように、どのキャラがどのキャラにどんなことを思っているのか、考えてみると凄く面白い作品だとも思います。
天才、凡人。成功、挫折。男の子、女の子。
それぞれが面倒くさく絡み合ってて、それが最高に面白くもあるのです。
次はいよいよ卒業式・・・というところで、一旦短編集的なものをはさむようですが
5巻のヒキとか、続きが気になってしょうがないんですが!どうなってしまうんでしょうか。
これは引き続き買わなければ。本当にハマってしまっています。
結構な有名タイトルに成長してきたと思うので、自分が言うのもいまさらなのですが
かなり面白い作品だと思いますよ。オススメしたいです。青春サイコー!
さくら荘のペットな彼女(4) (電撃文庫) (2010/12/10) 鴨志田 一 商品詳細を見る |
今一番熱中してるライトノベルはこの作品かも知れません。
1巻の感想をずいぶん前に書いたきり、このブログでは直接取り上げてきてはいませんでしたが・・・最近の、特に4巻と5巻が素晴らしすぎて震えまくり・・・!!
現在コミカライズも始まっており、アニメ化も視野に入ってるんじゃないかなーとぼんやり思っているわけですが、さてどうなるやら。まぁそれはともかく、感想というか紹介のようなことを。
この作品のメインヒロイン・椎名ましろちゃんはもはや言わずもがな。
彼女と主人公が織りなす初々しいラブコメ模様はなんとも微笑ましいものです。
・・・というのが3巻までのこの作品の感想の大部分を占めたもので、浅はかな自分はこの作品を単純なラブコメであるようにしか捉えられていなかったのです。
ところがこの4巻を読んでようやく思いました。違う違う、こんなのどこが『単純なラブコメ』だ。もちろんラブコメ的にも面白いですが、想像以上に濃密に苦味を含んだ青春であることに気づけました。遅い・・・遅すぎる・・・!
学園の問題児?ばかりが集められるというアパート「さくら荘」の住人たちを描くこの作品。そんな場所なので全員が規格外というか、いろんな意味で濃いキャラクターばかり。
舞台は水明芸術大学付属高校という、様々な分野において、才能ある生徒が集まる学校。
才能のある『天才』と、なにもない『凡人』。その要素は1巻からあったものです。
しかしこの要素が4巻から一気に強まってきたように感じ、そこが個人的にこの作品に引き込まれた原因なのかなと。学校がそういう場所だからこそ、登場キャラクターたちは才能の有無、そして目標との差について、深く悩まされることになります。そういうところは、芸術系の学校だからこそのシビアな感覚かも。
恋とか愛とか、ただそういう甘い気持ちだけで盛り上がれるわけではない。自分の好きなことで、認められたい。そうじゃないと自分が納得できない。そうしてさくら荘の面々が、それぞれ複雑な思いを抱きながら走り出したのが、この4巻なのかもしれません。
4巻も色々見所はありましたが、1番印象的だったのが、ましろと空太(主人公)の関係。
何もできない、やれない空太とは違い、ましろはさくら荘にやってくる前からその才能を開花させ、美術家として世界中から認められていた存在でした。
そしてその道を絶ってまで新たに始めたこと、それが漫画家。これも連載が始まれば人気も上々、大好評となります。ましろは明らかに天才であり、それが空太を悩ませることに。
ましろと並び立つには、自分も何かを成し遂げなければ。ましろからもらった熱を胸に、彼もまた夢を追う道へと進んできたのでした。
ところが自分の目標だったましろが、今度は「普通の女の子らしいこと」をしたがる。生まれたときから普通とは縁遠かった彼女は、さくら荘での生活の中で、明らかに変わったのでしょう。
空太のために・・・と、喜んでもらいたい一心で慣れない料理もやってみます。
そのいじらしさには思わず顔がニヤけてしまうわけですが、それがちょっと空太は納得できないというか、許せないというか。
彼は目標であるましろを、あまりに理想化してしまった。
わき目もふらず、ただただ高みを目指して欲しい。才能があるなら、それを全力で活かしきって欲しい。身勝手だけどそう願わざるを得ない。それは「自分がそうなりたい」姿だから。
もともとましろちゃんは、そういう「普通」のことに目を向けていない女の子だったので、女の子らしいことをしたがる今の彼女に違和感があるのはもちろんなのでしょうけど、どうにも、『才能』に翻弄されてもやもやしてしまってるんですねぇ。
空太も必死に夢のために行動を起こす。何度も何度もゲームのアイデアを考えて、メーカーに応募する。けどことごとく不合格。その苛立ちは、自分の理想像どおりになってくれないましろに向かう。
あーこの全然上手くいかない感じ!すっげぇ青春って感じがしてたまんないですね!!
そして積もったフラストレーションが爽快にふっ飛ばされる終盤も最高・・・!
もの凄くストレートに青春を描いてる作品だと思います。ちょっと捻ってあるように感じる部分は、あまり見たくない部分をも見せて来ているからで、結局それは真実だったり。
恋愛というには成熟しきれていない感情に、劣等感やら嫉妬やらが合わさって、めちゃくちゃになってしまってる感じ。素晴らしい。これぞ、これぞ。
確実にましろが恋する女の子になっていってるのに、プライドというにはあまりにも不恰好で曖昧な感情で彼女のかわいらしい変化を受け止めてあげることができない主人公!
この野郎!この野郎!そういうところが大好きだ!
さくら荘のペットな彼女〈5〉 (電撃文庫) (2011/05/10) 鴨志田 一 商品詳細を見る |
そして5巻。今のところの最新刊ですが、これもまた青春らしさがハンパない。
妹の優子ちゃんかわいいなぁとか、優子ちゃんメインキャラ化まだかなとか、色々見所はあるわけですが、5巻もやっぱり甘酸っぱいような、でもだいぶ苦いような仕上がり。
今回なんか特に、「バレンタイン」なんてラブコメにか欠かせないような甘いイベントに、とあるヘビーなイベントを被らせてます。本当に忙しく生きてるなぁ、その雰囲気も好き。
4巻はましろと空太のこじれについて書きましたが、同時に3年生の美咲と仁もこじれており、5巻では3年ペアのことが大きく取り上げられていました。
空太とましろと同じように、彼らもまた『才能』にかなり翻弄されてしまったいました。
しかし1巻ころから微妙な空気を引きずっていた彼らも、ここで収束です。
美咲も、ましろとおなじく既に圧倒的才能を発揮していて、世間から認められた存在。
仁は彼女の作品の脚本を担当しているイケメン。外泊ばかりしてます。
けれど幼馴染の美咲には特別な感情を抱いていて、何人も彼女を作ってうはうはやってるのに、美咲にだけは上手く真正面から向き合うことができない。
美咲は仁に大して丸分かりな愛情表現をしてるのですが、一切応じません。
それは彼が美咲に対して、本当に特別な感情を抱いているからこそなのですが、美咲はそれが上手くわからない。でも仁としても、今応えるわけにはいかないのです。
美咲を心底好きだからこそ、彼女と一緒にいるためには、今の自分では足りない。
「美咲と付き合える自分」は、仁にとっての目標なのだから。その資格がない今、美咲と付き合うわけにはいかないのですね。例え美咲を悲しませることになっても、自分の問題だ。
ある意味自分勝手なんですけど、これは分かるんですよ、分かりたくないんですけど絶対これはグッときてしまう。この場合の恋の資格なんて、人の感覚の中にしかない。けれどそれを律儀に守りぬかなきゃ、本当に心から満足することはできない。「妥協した」なんて意識を抱えて、好きな人と付き合うことなんてできるわけがない。自分の中の何かが、それを絶対に許さない。それはきっとズルだから。
1巻のころとかあの余裕たっぷりな様子がちょっとイヤなキャラクターだったんですけど
もう5巻での仁さんがステキすぎてヤバい。無茶苦茶カッコいい。こじらせてるなぁ。
そして空太は、境遇が似た仁さんに自己投影していたり。
空太と仁上の先輩・後輩の関係、この作品においてもとてもいいものだなと思います。
5巻は七海ちゃんをめぐるやりとりも強く印象に残っています。
彼女を友人と迎えに行くシーンは、男同士のムサい青春くささがあってお気に入り。
あー、ましろと空太のやりとりは5巻もニヤニヤさせていただきました。
ましろちゃんが空太にチョコ渡すシーンのかわいさはなんぞこれと!
初期を思うと、本当に彼女の変わりぶりには感動すら・・・・・・。
5巻はこの作品がこれまで描いてきたものを総括する内容でもあったように思います。
もちろんまだ決着の付かないものもたくさん、たくさんあるのですが・・・。
過去1番の大きな盛り上がりを見せたような気もしますね。
長い。なんでこう長くなるのか。まぁいいや。
さくら荘住人たちは、ただ一緒にバカさわぎをしてるだけじゃないです。
それぞれがそれぞれにちょっと歪なような、特別なような、言葉にしづらい感情を抱いては、互いに応援しあっているような、上へ上へといこうとしているというか、でも素直にそうすることもできないもやもやもあったりで、アパートまるごとで青春してるんですね。
キャラクター相関図のように、どのキャラがどのキャラにどんなことを思っているのか、考えてみると凄く面白い作品だとも思います。
天才、凡人。成功、挫折。男の子、女の子。
それぞれが面倒くさく絡み合ってて、それが最高に面白くもあるのです。
次はいよいよ卒業式・・・というところで、一旦短編集的なものをはさむようですが
5巻のヒキとか、続きが気になってしょうがないんですが!どうなってしまうんでしょうか。
これは引き続き買わなければ。本当にハマってしまっています。
結構な有名タイトルに成長してきたと思うので、自分が言うのもいまさらなのですが
かなり面白い作品だと思いますよ。オススメしたいです。青春サイコー!
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