[漫画]Reborn.『惡の華』9巻
タイトルは大好きなsyrup16gというバンドの、やさしい曲から。個人的には9巻に合う歌。
「時間は流れて 僕らは年をとり 汚れて傷ついて 生まれ変わっていくのさ」
完結となる第11巻が発売だ!ということで、まる1年できていなかった「惡の華」のコミックス感想を再開…。いまさらかよ!でも今やらなかったら本当にタイミングなくなってしまうよ!
書けていなかった9巻と10巻をやっていきます。そのあとに最終巻の感想を書く予定。
今日は9巻の感想記事です。
僕がきみの幽霊を殺す
いつまでも、ひとりぼっちなような気がしていた。
けれど分かち合える人と出会えて、手を取ることができた。
9巻は、そんなふうに、少年が生まれ変わるための物語だった。
もちろん本当にまっさらに生まれ変わることなんて出来ない。
過去と未来は地続きで、過去をなくすことも過去と無関係な未来を歩むこともできない。
けれど生まれ変わる。ここからが、彼の思春期のエンディングだ。
前巻→怯える幽霊と忘れられない華の影。『惡の華』8巻
●幽霊から生まれ変わるのだ
常磐さんの小説にはキーワードとして「幽霊」が使われている。
この言葉は春日の心を貫き、ひたすらに彼を虜にした。
そこにいるのに、こんなにも膨大な気持ちが溢れそうなのに、誰にも気付かれず、誰とも繋がれずにひとりぼっちの存在。
それを一言で「幽霊」と表現し、それはまるで自分のことだと春日は言う。
第44話「罪深い僕の心が求めるのは」は、1話単位で考えるならこれまででトップクラスに好きな一話となりました。
この回は春日の精神世界と、その自問自答、自己嫌悪との戦いが描かれていて、高校生・春日高男のその時点のすべてが炸裂しているような。
畳み掛けるような刺激的な言葉と印象深いカットの連発で、最高のカタルシスがこちらに体当りしてくるエピソードです。ここから彼は生まれ変わった。
仲村の幻影がうしろから見つめてくる。内なる自分が語りかけてくる。過去の罪の汚い嗤い声が響く。それでも春日の胸にいたのはひとりの女の子だった。
この44話では、囚われた屋敷に佇む2人の幽霊が描かれました。
これがそのシーン。春日と常磐がふたり、幽霊となって屋敷にとらわれている。
この時点で春日が、「常磐と付き合いたい」と思っていてそれが具現化したイメージがこれだった…とは思わない。そういう肉体的な欲求とは違う。
ふたりで幽霊となっているというこのイメージを浮かべたということは、
春日がそれだけ、常磐の中に自分とおなじ空気や温度を感じ取ったということだろうなと思う。
「一緒にいたい」というより「一緒にいなきゃいけない」という使命感に突き動かされたような感触ですね。
「キミはずっと…ひとりで悩んで…幽霊みたいに…」
「僕にはできない 一生 幽霊の世界で生きていくなんて」
そして春日は走り、「僕と生きてくれ」と、手を差し伸べる。
春日ってやっぱり行動力はあるよなぁ…!本作トップクラスの燃えシーンですよ!!
「生きてくれ」というのは、プロポーズのような重みを感じるフレーズだし
同時に「幽霊のきみを救ってみせる」という、彼女のナイーヴな部分に言及し、ふたりにしかわからないメッセージ性を宿した、とっておきの言葉だった。
そして春日自身の、幽霊としての自分から変わろうとする意思も含まれている。
ともに幽霊の世界から抜けだして、変わっていこうという強い覚悟が溢れる。
しかし「僕がきみの幽霊を殺す」と告白するのって……すごく……うん…うん!!!!!(身震いしながら) こういう文学的な言葉でやってしまうのが彼らしさであるし、こういう所に、常磐さんも心掴まれてしまったのかもしれないな。
抱きしめあって「あったかい」と言ったら、照れた恋人に叩かれてしまった。
そんな幸福な夜が、春日にもやってきた。
●「ただいま」
あれから影の落ちたままの春日一家。
そっけなく、過去には触れようとせず、恐れるように距離をとった家族。
しかし春日は、ようやく、「ただいま」を言うことが出来た。
それは再生の合言葉だったのかもしれない。
この「ただいま」は、簡単な言葉ではなかった。
外出して戻ってきたからの「ただいま」ではなくて、きっと数年来もの。
1人さまよって、寂しがっても1人で、涙を流したのもきっと1人だった。しかしこれからは違ってくる。誰かをともに生きる、平凡な世界へ、帰っていく。
親からしても、待ちわびた、希望の鐘のような一言だったに違いない。ここから再生する。
●握りつぶした惡の華
印象的だったのが、春日が惡の華を握りつぶした場面。
第44話は先ほども書きましたが彼の内面における葛藤が渦巻いていました。
その最後に、彼は惡の華を握りつぶす。そして常磐への告白へと駆け出すのです。
これが、個人的には、春日の思春期のエンディングのためのカギだった。
それはかつて彼が大切にしていた美しいものであり、魅力的な世界の象徴だった。
心に渦巻く闇や、破滅的な諦観や、暴れ狂う自意識や……様々なものが内包された、彼の思春期の象徴。それを彼は握りつぶした。彼の決意をこれほど強く表したシーンも無い。
第47話では、握りつぶしたあとの右手に惡の華の残骸がこびりついているシーンがあります。これが面白かったですね。「華」を握りつぶしたとて、その手が綺麗になるわけではない。心に黒くこびり付き、過去を忘れさせないための証となる。もしくは、忘れないための戒め。
また単行本巻末には、見開きで3枚のイラストが描かれています。
1枚目は「惡の華」の文庫本。佐伯さんの体操着。そびえ立つ山と降り注ぐ雨。
2枚目は無数に咲いた惡の華。燃え盛る炎。包丁。
これらのアイテムは物語の進行を表しているように思えます。
そして3枚目。これが良い。とてもいい。
「惡の華」の文庫本。バラの花。惡の華の残骸。階段に足をかける少年。
彼を惑わす「惡の華」はもう咲かない。かわりに咲くのは、愛の象徴である、バラの花。けれどかつて拠り所とした文庫本は今もある。そして少年は階段を登る。
春日が過去を乗り越えつつあることがわかる、素敵なイラストなのです。
「惡の華」9巻感想でした。過去最高に、ポジティブな内容だった……!!
わりとすぐに、つぎの10巻の感想にも着手します。
この9巻は、緊張で震えながら読みました…。
雑誌で読んでいたのですが、毎回毎回、凄まじいくらいのストーリーのうねり!
思春期のドロドロとした不安や疑心暗鬼や自意識をこれでもかとページにたたきつけていた中学生編。高校生編はそれよりも趣が違っていました。消せない過去、消せない罪を背負った、静かで残酷な傷だらけの日々。
けれど9巻は、春日が過去最高に前向きで格好良く、自分でなにかをつかみとろうとする必死さが、最高だった。間違いなく彼の人生のターニングポイント。
表情。言葉。心象風景。9巻はどれも絶品でした。
高校生編は特に、その場に流れている時間の流れや感触を描くことに、執念のような情熱を感じます。常磐と散歩して空を見上げたら、春日が泣いてしまう場面なんかは、こっちまで泣けてきた。
中学生編がリビドーと破壊衝動の爆発だったことを考えれば作品としてかなり雰囲気がかわりましたが、そういった面でもテクニックを感じますね。
ああ、もう、幸せそうで、良かったぞ、春日。よかったな。
『惡の華』9巻 ・・・・・・・・・★★★★
幽霊の世界から飛び出した。締め付けられるような切なさと高揚感に、全身震えてしまった巻でした。彼女が出来て幸福恐怖症な春日くんがかわいい。
「時間は流れて 僕らは年をとり 汚れて傷ついて 生まれ変わっていくのさ」
完結となる第11巻が発売だ!ということで、まる1年できていなかった「惡の華」のコミックス感想を再開…。いまさらかよ!でも今やらなかったら本当にタイミングなくなってしまうよ!
書けていなかった9巻と10巻をやっていきます。そのあとに最終巻の感想を書く予定。
今日は9巻の感想記事です。
惡の華(9) (少年マガジンコミックス) (2013/08/09) 押見 修造 商品詳細を見る |
僕がきみの幽霊を殺す
いつまでも、ひとりぼっちなような気がしていた。
けれど分かち合える人と出会えて、手を取ることができた。
9巻は、そんなふうに、少年が生まれ変わるための物語だった。
もちろん本当にまっさらに生まれ変わることなんて出来ない。
過去と未来は地続きで、過去をなくすことも過去と無関係な未来を歩むこともできない。
けれど生まれ変わる。ここからが、彼の思春期のエンディングだ。
前巻→怯える幽霊と忘れられない華の影。『惡の華』8巻
●幽霊から生まれ変わるのだ
常磐さんの小説にはキーワードとして「幽霊」が使われている。
この言葉は春日の心を貫き、ひたすらに彼を虜にした。
そこにいるのに、こんなにも膨大な気持ちが溢れそうなのに、誰にも気付かれず、誰とも繋がれずにひとりぼっちの存在。
それを一言で「幽霊」と表現し、それはまるで自分のことだと春日は言う。
第44話「罪深い僕の心が求めるのは」は、1話単位で考えるならこれまででトップクラスに好きな一話となりました。
この回は春日の精神世界と、その自問自答、自己嫌悪との戦いが描かれていて、高校生・春日高男のその時点のすべてが炸裂しているような。
畳み掛けるような刺激的な言葉と印象深いカットの連発で、最高のカタルシスがこちらに体当りしてくるエピソードです。ここから彼は生まれ変わった。
仲村の幻影がうしろから見つめてくる。内なる自分が語りかけてくる。過去の罪の汚い嗤い声が響く。それでも春日の胸にいたのはひとりの女の子だった。
この44話では、囚われた屋敷に佇む2人の幽霊が描かれました。
これがそのシーン。春日と常磐がふたり、幽霊となって屋敷にとらわれている。
この時点で春日が、「常磐と付き合いたい」と思っていてそれが具現化したイメージがこれだった…とは思わない。そういう肉体的な欲求とは違う。
ふたりで幽霊となっているというこのイメージを浮かべたということは、
春日がそれだけ、常磐の中に自分とおなじ空気や温度を感じ取ったということだろうなと思う。
「一緒にいたい」というより「一緒にいなきゃいけない」という使命感に突き動かされたような感触ですね。
「キミはずっと…ひとりで悩んで…幽霊みたいに…」
「僕にはできない 一生 幽霊の世界で生きていくなんて」
そして春日は走り、「僕と生きてくれ」と、手を差し伸べる。
春日ってやっぱり行動力はあるよなぁ…!本作トップクラスの燃えシーンですよ!!
「生きてくれ」というのは、プロポーズのような重みを感じるフレーズだし
同時に「幽霊のきみを救ってみせる」という、彼女のナイーヴな部分に言及し、ふたりにしかわからないメッセージ性を宿した、とっておきの言葉だった。
そして春日自身の、幽霊としての自分から変わろうとする意思も含まれている。
ともに幽霊の世界から抜けだして、変わっていこうという強い覚悟が溢れる。
しかし「僕がきみの幽霊を殺す」と告白するのって……すごく……うん…うん!!!!!(身震いしながら) こういう文学的な言葉でやってしまうのが彼らしさであるし、こういう所に、常磐さんも心掴まれてしまったのかもしれないな。
抱きしめあって「あったかい」と言ったら、照れた恋人に叩かれてしまった。
そんな幸福な夜が、春日にもやってきた。
●「ただいま」
あれから影の落ちたままの春日一家。
そっけなく、過去には触れようとせず、恐れるように距離をとった家族。
しかし春日は、ようやく、「ただいま」を言うことが出来た。
それは再生の合言葉だったのかもしれない。
この「ただいま」は、簡単な言葉ではなかった。
外出して戻ってきたからの「ただいま」ではなくて、きっと数年来もの。
1人さまよって、寂しがっても1人で、涙を流したのもきっと1人だった。しかしこれからは違ってくる。誰かをともに生きる、平凡な世界へ、帰っていく。
親からしても、待ちわびた、希望の鐘のような一言だったに違いない。ここから再生する。
●握りつぶした惡の華
印象的だったのが、春日が惡の華を握りつぶした場面。
第44話は先ほども書きましたが彼の内面における葛藤が渦巻いていました。
その最後に、彼は惡の華を握りつぶす。そして常磐への告白へと駆け出すのです。
これが、個人的には、春日の思春期のエンディングのためのカギだった。
それはかつて彼が大切にしていた美しいものであり、魅力的な世界の象徴だった。
心に渦巻く闇や、破滅的な諦観や、暴れ狂う自意識や……様々なものが内包された、彼の思春期の象徴。それを彼は握りつぶした。彼の決意をこれほど強く表したシーンも無い。
第47話では、握りつぶしたあとの右手に惡の華の残骸がこびりついているシーンがあります。これが面白かったですね。「華」を握りつぶしたとて、その手が綺麗になるわけではない。心に黒くこびり付き、過去を忘れさせないための証となる。もしくは、忘れないための戒め。
また単行本巻末には、見開きで3枚のイラストが描かれています。
1枚目は「惡の華」の文庫本。佐伯さんの体操着。そびえ立つ山と降り注ぐ雨。
2枚目は無数に咲いた惡の華。燃え盛る炎。包丁。
これらのアイテムは物語の進行を表しているように思えます。
そして3枚目。これが良い。とてもいい。
「惡の華」の文庫本。バラの花。惡の華の残骸。階段に足をかける少年。
彼を惑わす「惡の華」はもう咲かない。かわりに咲くのは、愛の象徴である、バラの花。けれどかつて拠り所とした文庫本は今もある。そして少年は階段を登る。
春日が過去を乗り越えつつあることがわかる、素敵なイラストなのです。
「惡の華」9巻感想でした。過去最高に、ポジティブな内容だった……!!
わりとすぐに、つぎの10巻の感想にも着手します。
この9巻は、緊張で震えながら読みました…。
雑誌で読んでいたのですが、毎回毎回、凄まじいくらいのストーリーのうねり!
思春期のドロドロとした不安や疑心暗鬼や自意識をこれでもかとページにたたきつけていた中学生編。高校生編はそれよりも趣が違っていました。消せない過去、消せない罪を背負った、静かで残酷な傷だらけの日々。
けれど9巻は、春日が過去最高に前向きで格好良く、自分でなにかをつかみとろうとする必死さが、最高だった。間違いなく彼の人生のターニングポイント。
表情。言葉。心象風景。9巻はどれも絶品でした。
高校生編は特に、その場に流れている時間の流れや感触を描くことに、執念のような情熱を感じます。常磐と散歩して空を見上げたら、春日が泣いてしまう場面なんかは、こっちまで泣けてきた。
中学生編がリビドーと破壊衝動の爆発だったことを考えれば作品としてかなり雰囲気がかわりましたが、そういった面でもテクニックを感じますね。
ああ、もう、幸せそうで、良かったぞ、春日。よかったな。
『惡の華』9巻 ・・・・・・・・・★★★★
幽霊の世界から飛び出した。締め付けられるような切なさと高揚感に、全身震えてしまった巻でした。彼女が出来て幸福恐怖症な春日くんがかわいい。
[漫画]悲しい運命が脈動する。優しい戦士は笑いかける。『ブレイクブレイド』13巻
ブレイクブレイド(13) (メテオCOMICS) (2014/05/12) 吉永裕ノ介 商品詳細を見る |
馬鹿め… …勝った奴が… 泣くな…
ブレイクブレイド最新刊、第13巻の感想。
ロボット戦記モノらしい、バッチリと格好良くキマった表紙にしびれる!!
冷たい眼をしたゼス。涙を流すライガット。交差するゴゥレム!
11巻12巻とわりと平和なイラストだったのですが、今回の表紙は緊迫感があってたまりません。このままポスターで欲しい。
しかし作者コメントを見たら「表紙詐欺は続くよどこまでも」と書いています。いやそれを言っちゃあおしめえよ。たしかに今回のゼス様は、ほぼ良いとこナシだったからな!!
前巻の感想→避けられぬ衝突!戦争への加速!『ブレイクブレイド』12巻
戦場復帰したゼスと、国の英雄となったライガットが相見える。
2人の直接対決は第3巻以来。あの一戦で脚を負傷したゼスは治療のため戦線を離脱。そしてボルキュスが率いる進軍が始まった。そして戦争。そして決着。
いまやゼスの立場も激変している。いまや危機的状況に陥ったアテネスの東方討伐軍・筆頭将軍として、あまりに多くのものを背負う身となっている。
さぁ!いよいよ切ない展開に入ってきましたよ!
つまり、かつての仲良し4人組がいかに引き裂かれ、苦悩し、運命に翻弄されるのか!
「運命に、抗おう―――」という本作の重要なコピーがあります。
つまり運命の苛酷さがまずある。それは13巻のここに至るまで多数の死のドラマを踏み越えていることから理解しています。けれどここからはいよいよ、主人公たちがその渦中に飛び込んでいく。
囚われたシギュン。彼女の処刑を目論むゼス。それを止めたいライガット。国王として身動きのとれないホズル。
いいぞ…こういうのがたまらないんだ…!ハッピーエンドを望みつつ、途方も無い悲しみや離別や喪失だってきっと待ち受けているんだ。
引き裂かれた昔なじみ4人のドラマについて言えば、シリーズ最大級の盛り上がりへと突入していく!
この13巻、ゼス関連の謎がサクサクと種明かしがされていくのが意外でした。
・ゼスとライガットが共有していた秘密――ゼスがアッサム国立士官学校に入学した理由とはなんなのか。
・ゼスが抱えるロキス書記長への“負い目”とは、過去に何があったものなのか。
これらが見えてくることで頑ななゼスの現在にも納得がいくし、4人の絆のルーツを知ったことで更なるセンチメンタルが加速する。最初から…なにもかも、うまくいくはずがなかったのだ……!!!
それにしても、もっと勿体ぶって種明かししていくかと思った。
そして始まるゼスとの対決。
しかしこれはまぁー、ライガットさん強すぎィ!!
11巻予告の「お前は…誰だ…?」がまさかゼスがライガットに向けて言ったセリフだったとは。ゼスは作中だと強キャラなのにライガット相手だとそれがイマイチ実感しづらい、なんという不幸イケメン…。
まぁそれは「手加減はしないぞ。貴様を殺す(キリッ」とか言っても心のどこかでブレーキがかかっているのか、はたまたライガットがマジでヒーローすぎるのか。
まるでお手玉のように、2本の武器を空に投げてはキャッチして攻撃、投げては次のをキャッチして攻撃……片手二刀流という離れ業まで披露する圧倒的魅せプレイ。闘争本能全開のライガットさん。
ゼスを圧倒し、腕部を破壊した時のライガットの表情が、絶品なのですよ。
この乾いたような、諦めたような、悟ったような表情は。いったい何だ。
親友と呼ぶべき相手と国をかけて殺し合いをしなければならない、非情なこの場面において、なんて静かな表情をするんだろう。
正直、自分はまだこのシーンでのライガットを掴みきれてはいない。
やりきれない現実の中、死と隣り合わせの戦場で、いまなおゼスのことを信じてしまう。甘すぎる。しかしこうでなきゃライガットではないんだ。
復讐の狂気に駆られたボルキュス戦以降、ライガットは不安定な精神状態にあります。彼本来の性格とは別に、恐ろしいほどに冷たく残酷な別人格を秘めている。
この2面性が今後のライガットの描かれ方において注目したいポイント。今後ゼスとの戦いにおいて、どんな表情を見せてくれるのだろうか。
正直「ゼスの覚悟を甘く見過ぎだろ、大丈夫かよ」と思うけれどなぁ。
この一戦、予想していたものとはかなり違った内容となったが、ゼスとはじめての戦いを思い出させるようなカットがあったり、過去との対比によって「変わったしまったこと」を深々を感じさせる、バトルの高揚の中にもの淋しい寂寥がにじむ一戦だったなと思う。
話は移り、サーブラフ家の軸にストーリーは更なる急展開を見せる。
カギを握るのは、クレオ。
クレオの揺れる思いに関しては前々からじっくりと描写が深められていました。クリシュナの捕虜となるもシギュンに保護された段階から、「本当にクリシュナは蛮族なのか?」という疑問を抱き、過去受けた教育と現実とのギャップに苦しんでいた。
しかしシギュンの処刑が迫る中で、誰より勇気ある行動をとったのはその彼女だったのだ!
ずっと暖め続けられていた想いが実を結んだ。
微笑みかける。全部全部、なくしてしまうのを覚悟して。優しい戦士はここにいる!
クレオはドジッ娘キャラでありつつ才能を秘めたキャラクターですが
彼女の真髄は、自分のすべてを投げ捨てるほどに誰かに優しくできる、その心にあると言える。こんな決断を下せるまでに、シギュンは彼女の心を深く癒やすことができたんだ。
こうなってくるとクレオもまた、もうひとりの主人公だな。物語を突き動かすプラスエネルギーだ。背負ったドラマが層をなして分厚くなってきたし、応援できる。かわいいし(大事)。
この時、わずか12歳の幼いクレオの決断を後押しした大人たちがいる。
それは彼女の母親と祖母。いざというときには女が強いもんだわ!
幼い娘の一世一代の決意を無下にしない。それどころか最大限のバックアップとフォロー!
凛として娘と寄り添う。すべてを捨てて共に生きる。
この時のクレオママンのきっぱりとした口調がめちゃくちゃ格好良かった……!母親としてか、いやそれよりもっと原始的な、人間としての強さを感じる。
あまりに格好良すぎるし、いいオンナすぎたので、死亡フラグのようなものをうっすらと感じてしまったんですが…大丈夫でしょうか…。
個人的にはブレイクブレイドで1番エロスを感じる女性なので(1番エロスを感じる男性はチート眼鏡でした)、退場はどうか、どうか…。
クレオママンはね、部屋着でも胸元がパッカリしたラフオサレスタイルだからね、とってもイイんですよ。
そんな「ブレイクブレイド」13巻でした。
サクサクと進んでいるというか、グイグイと未来に引っ張られていくような展開。
テンポがよくて嬉しいですが、益々緊迫感が増してきており
キャラを殺すのに躊躇のない作品だけに、いつ誰が退場するやら…
そんな不安やら楽しさを胸に、また次の巻を楽しみにしています。
この作品はバトルもアツイですが、人間関係にやきもきして悶々して切なくなるのが大好きなので、そういった要素が色濃い最近の展開はたまんのですよ!
ライガットが、ゼスを相手に、まさかここまで余裕の戦いを見せるなんて…!
この展開に衝撃を受けた読者は多いことでしょう。
ライガットさん、いつのまにかめっちゃ頼れる男になっちまったわ…。
けれどこの戦いの結果で、戦争はさらに混沌する。すれ違ったまま、戦争の心臓は脈動する。
あの頃には戻れない。
砕け散った思い出のカケラは心に突き刺さって、血の流れない痛みを戦士たちに与えるのだ。
『ブレイクブレイド』13巻 ・・・・・・・・・★★★★
着々とアツい展開を突っ走る!迫力あるロボットバトルとセンチメンタルMAXな人間模様がたまらない。
余談ですが、ブレイクブレイドは最近、WEB掲載より先にコミックスで最新話が読める試みをしており、こういうスケジュール調整はネット漫画ならではのフットワークなのかなーと思ったりします。